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JP5769003B2 - マグネシウム合金材 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車や航空機などの輸送機器のボディーやその他の部材、電気・電子機器類の筐体などといった各種の部材やその素材に好適なマグネシウム合金材に関するものである。特に、塑性加工材の素材に適した広幅材や長尺材であって、生産性に優れるマグネシウム合金材に関するものである。
マグネシウムに種々の添加元素を含有したマグネシウム合金が、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータといった携帯用電気・電子機器類の筐体、ホイールカバーやパドルシフトといった自動車部品などの各種の部材の構成材料に利用されてきている。
マグネシウム合金材は、ダイカスト法やチクソモールド法による鋳造材(ASTM規格のAZ91合金)が主流である。近年、ASTM規格のAZ31合金に代表される展伸用マグネシウム合金からなる板にプレス加工を施した部材が使用されつつある。特許文献1は、ASTM規格におけるAZ91合金相当の合金からなり、双ロール連続鋳造により作製した鋳造材に特定の圧延加工を施すことで、プレス加工性に優れるマグネシウム合金板を提案している。
特開2007-098470号公報
マグネシウム合金板に関し、より幅が広い広幅材や、より長さが長い長尺材が望まれている。
広幅材や長尺材をプレス加工や鍛造加工、曲げ加工、深絞り加工などの種々の塑性加工の素材に利用すると、一度に大型な成形体を形成したり、素材の連続供給が可能であったりするため、種々の大きさの成形体を量産でき、成形体の工業生産性の向上に寄与することができる。また、自動車などの車両や航空機などの飛行機、電車などの輸送機器に代表される比較的大型な機器類の部材(特に、ボディーなど)を製造する場合、広幅材や長尺材を利用することが望まれる。
しかし、広幅材や長尺材の全幅、全長に亘って均質な組成や組織を有するものを製造することは難しく、従来、好ましい製造方法が知られていない。
特に、ダイカスト法やチクソモールド法では、製造可能な寸法に限界が有り、300mm以上、更に500mm以上といった広幅材や、0.5m以上、更に1m以上といった長尺材の製造が難しい。また、ダイカスト法やチクソモールド法による鋳造材は、厚さ2mm以下といった薄板であっても、結晶組織が比較的粗大で十分な強度を有しておらず、強度などの機械的特性の更なる向上が望まれる。
一方、特許文献1に記載されるように、双ロール連続鋳造法といった連続鋳造法を利用すると、長尺な薄板を作製でき、急冷凝固が可能であるため、上記ダイカスト材などよりも微細な結晶組織を有すものにすることができる。従って、この連続鋳造材は、上記ダイカスト材よりも機械的特性に優れる。しかし、広幅材を製造しようとすると、巨大な設備が必要である上に、幅方向の品質制御が困難になる。長尺材を製造しようとすると、鋳造開始時から鋳造終了時までの時間が長くなることから、長時間に亘る溶湯の温度管理などが可能な設備が必要である。即ち、新たな設備の開発が必要である。
他方、特許文献1に記載されるように、上記双ロール連続鋳造法による鋳造材に圧延を施すことで、組織の微細化などにより強度の向上などを図ることができる。しかし、上述のように素材となる鋳造材の大きさに限界があり、設備の変更などを伴うことなく、更なる広幅化や長尺化が難しい。
そこで、本発明の目的の一つは、広幅材や長尺材であり、生産性に優れるマグネシウム合金材を提供することにある。本発明の他の目的は、接合領域を有しながら、塑性加工が施されたマグネシウム合金材を提供することにある。
本発明者らは、広幅材や長尺材を一度に作製するのではなく、複数の素材を用意し、これらの素材を接合することにより、広幅材や長尺材を作製することを検討した。一般に、接合材は、素材同士を接合する接合領域やこの近傍が素材自体よりも強度や硬度が低くなる傾向にあり、接合領域やその近傍が破断や破壊の起点、即ち、機械的弱点になる。従って、接合材は、塑性加工が難しいとされる。これに対し、素材を特定の機械的特性を有するものとし、これらの素材を摩擦撹拌接合により接合することで、接合領域やその近傍が素材自体の機械的特性と同等以上の特性を有する、という驚くべき知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。
本発明マグネシウム合金材は、マグネシウム合金からなる複数の合金片と上記合金片間に形成される接合領域とを具える接合材である。上記接合領域は、上記マグネシウム合金から構成される。上記各合金片の室温での引張強さが165MPa以上、上記各合金片の室温でのビッカース硬度Hvが55以上である。そして、上記接合領域のビッカース硬度Hvが上記合金片のビッカース硬度Hvと同等以上である。
従来の一般的な金属片同士の接合材、代表的には、溶接材では、接合領域に形成される溶接こぶが機械的弱点になる。例えば、マグネシウム合金の薄板材を突合せ溶接した溶接板に絞り加工を施した場合、接合領域に亀裂が生じて絞り加工品が成形できない。これに対して、上記本発明マグネシウム合金材は、複数の合金片が接合された接合材でありながら、接合領域の機械的特性が、接合された合金片自体の機械的特性と遜色が無く、当該接合領域が機械的弱点となり難い。即ち、上記本発明マグネシウム合金材は、接合領域を有していながらも、機械的特性上は、接合領域を有しておらず一様な組成で構成される合金材と同様のものとして取り扱える。従って、本発明マグネシウム合金材は、所望の広幅材や長尺材、或いはこれら広幅材や長尺材を成形した成形体とすることができる。
かつ、上記特定の機械的特性を有する合金片を複数用意し、これら合金片を接合することで本発明マグネシウム合金材(代表的な形態では接合板)を容易に製造可能である上に、各合金片は広幅材や長尺材である必要が無く、それぞれを容易に製造可能である。即ち、本発明マグネシウム合金材の製造にあたり、一様な組成からなる広幅材や長尺材を製造するための設備が不要であり、本発明マグネシウム合金材は、生産性にも非常に優れる。
また、上記本発明マグネシウム合金材(代表的な形態では接合板)は、機械的特性に優れることで、高強度、高硬度や軽量などが求められる種々の分野の部材の素材に好適に利用できる。また、当該素材により成形された成形体(本発明の一形態)も機械的特性に優れる上に、軽量である。その他、上記成形体は、大型物や長尺体とすることができる。
本発明の一形態として、上記マグネシウム合金材の室温での引張強さが280MPa以上である形態が挙げられる。
上記形態は、接合部を含めたマグネシウム合金材全体が高強度であり、上述の成形体の素材に好適に利用することができる。また、得られた成形体も高強度である。
本発明の一形態として、上記各合金片が板材であり、その厚さが3mm以下である形態、或いはその厚さが1.5mm以下である形態が挙げられる。
上記形態は、厚さ3mm以下といった比較的薄い広幅板や長尺板とすることができる。このような薄い広幅板や長尺板は、プレス加工などの塑性加工が施されてなる塑性加工材の素材に好適に利用できる上に、当該塑性加工材の製造にあたり、一度に大量に、或いは連続的に素材の供給が可能であるため、当該塑性加工材の生産性の向上に寄与することができる。特に、厚さ1.5mm以下といった薄板を利用することで、素材の軽量化を図ることができる上に、上記塑性加工材の軽量化や薄型に寄与することができる。即ち、得られた塑性加工材も厚さが3mm以下、更に1.5mm以下と薄肉材である。
本発明の一形態として、上記接合領域が摩擦撹拌接合により形成された形態が挙げられる。
上記形態は、接合領域が固相結合により形成されることで、溶接などの積極的な加熱を伴って形成された場合と比較して、接合領域に熱変質相の形成が少なく、或いは実質的に無い。そのため、接合領域は、各合金片を構成するマグネシウム合金と実質的に同質のマグネシウム合金から構成され、上述のように各合金片と遜色ない機械的特性を有する。なお、接合領域において、接合時に接合用プローブが接触した側は、溶接こぶのような凸部がないものの、撹拌されて荒れた表面状態になっており、上記プローブが接触していない側は、合金片の継ぎ目が存在するだけの滑らかな表面状態(合金片自体の表面状態が維持された状態)になっている。
本発明の一形態として、上記接合領域と上記合金片とが滑らかな表面で構成された形態が挙げられる。
上述のように摩擦撹拌接合を行った場合、接合領域において接合用プローブが接触していない側は、合金片自体の表面状態が維持されることで、特別な処理を施すことなく、接合領域と合金片とが滑らかな表面で構成される。一方、接合用プローブが接触した側であっても、研磨などの表面処理を施して表面粗さを小さくする(例えば、表面粗さRaで0.5μm以下とする)ことで、合金片の表面粗さと同程度に滑らかにすることができ、接合領域と合金片とが滑らかな表面で構成される。上記形態は、このような滑らかな表面(好ましくは、表面粗さRaで0.5μm以下)を有しており、この滑らかな面を外面とした場合、一様な外観を有することから、美観に優れる。なお、接合領域において接合用プローブが接触していない側にも上記研磨などを施しても勿論よい。
本発明の一形態として、複数のマグネシウム合金板材が少なくとも一つの接合領域により接合された接合板に塑性加工が施されてなる塑性加工材である形態が挙げられる。特に、上記接合領域の少なくとも一部に塑性加工が施された形態が挙げられる。
上記接合板に具える接合領域は、上述のように十分な機械的特性を有するため、板材部分だけでなく、接合領域自体にもプレス加工などの種々の塑性加工を施すことが可能であり、上記接合板を利用して上記塑性加工材の形態とすることができる。上記形態は、塑性加工が施されていることで、塑性硬化により強度に更に優れる。
本発明マグネシウム合金材を構成するマグネシウム合金は、種々の元素を添加元素とするもの(残部Mg及び不純物)が挙げられる。特に、本発明の一形態として、上記マグネシウム合金が、Al,Zn,Mn,Y,Zr,Cu,Ag,Be,Sn,Li及びSiから選択される少なくとも1種の元素(以下、第一元素と呼ぶ)を1元素あたり0.01質量%以上20質量%以下含有し、残部がMg及び不純物からなる形態が挙げられる。
また、本発明の一形態として、上記マグネシウム合金が、上記第一元素と共に、Caを0.001質量%以上16質量%以下含有する形態が挙げられる。
或いは、本発明の一形態として、上記マグネシウム合金が、上記列挙した第一元素と共に、Ca,Au,Pt,Sr,Ti,B,Bi,Ge,In,Te,Nd,Nb,La及び希土類元素から選択される少なくとも1種の元素(以下、第二元素と呼ぶ)を1元素あたり0.001質量%以上5質量%未満含有する形態が挙げられる。但し、上記希土類元素は、上記列挙する元素(第一元素:Y,第二元素:Nd,La)と重複する元素を除く。
上記各形態によれば、添加元素の種類にもよるが、強度や硬度、耐衝撃性といった機械的特性、耐食性、難燃性、耐熱性、制振性といった種々の特性に優れる。合金片において製造工程により区別した場合の形態(鋳造材、圧延材など)に応じて、引張強さ:165MPa以上、ビッカース硬度Hv:55以上を満たすように、上記元素の種類、含有量を選択することができる。特に、添加元素の濃度が高い合金、具体的には合計含有量が7.3質量%以上であるマグネシウム合金は、上記各種の特性に更に優れる。
第一元素の1元素あたりの含有量は、1質量%以上12質量%以下がより好ましく、第一元素の合計含有量は、3質量%以上15質量%以下が好ましい。第二元素の1元素あたりの含有量は、1質量%以上3質量%以下がより好ましく、第二元素の合計含有量は、2質量%以上5質量%以下が好ましい。
上記第一元素のうち、Alを含有するMg-Al系合金は、耐食性に優れる上に、強度、耐塑性変形性といった機械的特性にも優れる。Alの含有量が多いほど上記効果が高い傾向にあり、4.5質量%以上、更に7質量%、特に、7.3質量%以上が好ましい。但し、Alの含有量が12質量%を超えると塑性加工性の低下を招くことから、塑性加工性を考慮すると、上限は12質量%、更に11質量%が好ましい。
Mg-Al系合金のより具体的な組成は、例えば、ASTM規格におけるAZ系合金(Mg-Al-Zn系合金、Zn:0.2質量%〜1.5質量%)、AM系合金(Mg-Al-Mn系合金、Mn:0.15質量%〜0.5質量%)、Mg-Al-RE(希土類元素)系合金、AX系合金(Mg-Al-Ca系合金、Ca:0.2質量%〜6.0質量%)、AJ系合金(Mg-Al-Sr系合金、Sr:0.2質量%〜7.0質量%)などが挙げられる。Alを7.3質量%以上12質量%以下含有する形態、特にAlを8.3質量%〜9.5質量%含有する形態は、強度に優れる上に耐食性にも優れる。Alを8.3質量%〜9.5質量%含有する合金として、更にZnを0.5質量%〜1.5質量%含有するMg-Al-Zn系合金、代表的にはAZ91合金が挙げられる。
CaやY、希土類元素(Yを除く)を含有するマグネシウム合金は、耐熱性、難燃性に優れる。特に、Caは微量でも上記効果が得られる。Caのより好ましい含有量は、0.1質量%以上3質量%以下である。
本発明マグネシウム合金材は、高強度、高硬度であり、広幅材や長尺材とする場合にも生産性に優れる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
[マグネシウム合金材]
本発明マグネシウム合金材は、複数の合金片と、これらを接合する接合領域とを具える。
(全体の形態)
本発明マグネシウム合金材の代表的な形態は、矩形状の板材から構成される合金片同士が接合領域により接合された矩形状の板材(接合板)が挙げられる。この場合、広幅な板材や長尺な板材として好適に利用できる。接合領域は、一箇所だけでなく、複数箇所具える形態とすることができる。例えば、上記矩形状の板材の二辺の周縁や四辺の周縁に接合領域を具える形態とすることができる。
その他、合金片が適宜な形状、例えば、半円状や多角形状などの少なくとも接合可能な周縁を有する形状であり、これらの周縁を接合した接合領域を有する異形状の板材(例えば、一対の半円状材を接合してなる円形状板材、一対の三角形状材を接合してなる矩形状板材、一対の多角形状材を接合してなる多角形状板材など)が挙げられる。後述するように本発明マグネシウム合金材に具える接合領域は、優れた機械的特性を有することから、上述した矩形状の板材の他、上記接合領域を有する異形状の板材であっても、圧延やプレス加工、曲げなどの塑性加工を施す素材に利用できる。即ち、所望の塑性加工材の形状に応じて、所望の形状の合金片が接合領域により接合された本発明マグネシウム合金材(接合板)を利用できる。
本発明マグネシウム合金材を素材として塑性加工が施された塑性加工材も接合領域を有することから、本発明の一形態として、接合領域を含む少なくとも一部に塑性加工が施された塑性加工材が挙げられる。本発明マグネシウム合金材として、その全体に塑性加工が施された形態として、圧延材やプレス加工などによる成形体、ロールフォーミングによるパイプ材などが挙げられる。パイプ材は、少なくとも板材の両縁の合わせ目に接合領域を具える形態が挙げられる。上記塑性加工材は、合金片のみに塑性加工が施された形態や合金片及び接合領域の一部のみに塑性加工が施された形態でもよい。
その他、少なくとも一部に、ボスなどが接合されていたり、表裏に貫通する孔などを有する形態が挙げられる。
上述のように本発明マグネシウム合金材を広幅材や長尺材として、圧延やプレス加工などの塑性加工の素材に利用する場合、そのままでも利用することができるが、合金片及び接合領域の表面の少なくとも一部に研磨(特にベルトやブラシなどを利用した機械的研磨。湿式研磨が好ましい。)、化成処理や陽極酸化処理といった防食処理、各種の塗装が施された形態とすることができる。塑性加工前に研磨や防食処理などを施すと、処理対象が平坦な形状であるため、処理が行い易い。本発明マグネシウム合金材を上記塑性加工材とする場合もそのまま利用してもよいし、上述のように合金片及び接合領域の表面の少なくとも一部に上記研磨、防食処理、各種の塗装が施された形態としてもよい。後者の形態は、外観、耐食性、商品価値などの向上を図ることができる。特に、接合領域が摩擦撹拌接合により形成されている場合、上述のようにプローブの接触側は、その周囲よりも若干凹んだ荒れた状態であるため、研磨や塗装などを行うことで、合金片の領域と接合領域とを均一的な厚さにしたり、溶接こぶのような段差がなく、合金片と接合領域とが滑らかで平坦な表面で構成された形態とすることができる。即ち、本発明マグネシウム合金材の少なくとも一面全体が滑らかな表面を有する形態とすることができる。特に、塗装することで接合領域を分かり難くすることができ、一様な外観を有する塑性加工材とすることができる。
(組成)
上記合金片を構成するマグネシウム合金は、上述のように種々の添加元素を含む形態が挙げられる。不純物は、例えば、FeやNiなどが挙げられる。各合金片の組成は、同一であることが好ましい。組成が異なると、機械的特性に差が生じて、接合された合金片のうち、特性に劣るものが機械的弱点となるからである。但し、機械的特性の差が小さい場合(引張強さの差が8MPa以内、ビッカース硬度のHv差が2以内)、異なる組成からなる合金片を含む形態を許容する。例えば、各合金片を構成するマグネシウム合金中のAlの含有量が8.3質量%〜9.5質量%の範囲で異なる形態などが挙げられる。各合金片の引張強さ及びビッカース硬度が異なる場合、接合領域のビッカース硬度は、合金片のビッカース硬度の最大値以上とする。
接合領域は、上記合金片を構成するマグネシウム合金から構成される。即ち、接合領域の構成成分と合金片の構成成分とは実質的に同一である。上述のように組成が異なる合金片同士が接合されている場合、接合領域は、接合されている合金片同士が混合された組成により構成される。
(合金片の形態)
本発明者らが調べたところ、特定の製造条件で作製した素材、具体的には双ロール連続鋳造法といった連続鋳造法により製造した連続鋳造材や、この連続鋳造材に更に複数パスの圧延を施した圧延材は、高強度・高硬度である上に、摩擦撹拌接合により接合した場合、接合領域の機械的特性が接合された合金片と同等以上である、との知見を得た。従って、本発明マグネシウム合金材を構成する合金片の形態は、製造工程により区別した場合、連続鋳造法により製造された連続鋳造材、上記連続鋳造材に圧延を施した圧延材、上記連続鋳造材や圧延材に熱処理、矯正加工、研磨の少なくとも一つを施した加工・処理材、上記圧延材や加工・処理材の少なくとも一部にプレス加工、深絞り加工、鍛造、曲げ加工などの塑性加工が施された塑性加工材などが挙げられる。つまり、接合前の合金片として、塑性加工が施されたもの、或いは一部に塑性加工部を具えるものを利用することができる。
上記合金片の形態は、形状により区別した場合、代表的には、矩形状の板材、特に厚さが3mm以下であるものが挙げられる。上述のように連続鋳造材やこの連続鋳造材に圧延を施した場合、3mm以下といった比較的薄い板材を容易に製造できる。特に、圧延材は、厚さが2mm以下、更に1.5mm以下、とりわけ1mm以下といった更に薄板とすることができ、薄型、軽量の部材(代表的には筐体やボディー、カバンなど)の素材に好適に利用できる。また、接合前の合金片が板材であると摩擦撹拌接合が行い易く、マグネシウム合金材の生産性に優れる。なお、摩擦撹拌接合による接合領域の厚さは、研磨などを行わない場合、上述のように合金片の厚さと同等以下となる傾向にある。
(機械的特性)
上記合金片は、引張強さ:165MPa以上、ビッカース硬度Hv:55以上とする(いずれも室温)。引張強さ及びビッカース硬度が高いほど、高強度なマグネシウム合金材とすることができる。引張強さは、280MPa以上、更に300MPa以上が好ましく、ビッカース硬度Hvは、57以上、更に60以上が好ましい。引張強さや硬度が上記範囲を満たすように、上述のように添加元素の種類や添加量、製造条件(連続鋳造条件、圧延条件など)などを調整して、合金片を製造するとよい。
そして、上記接合領域のビッカース硬度は合金片と同等以上とする。接合領域のビッカース硬度が上記範囲を満たすように、上記特定の機械的特性を満たす合金片を用いる。また、接合方法には、摩擦撹拌接合が好適に利用できる。接合領域は、塑性加工などを行う際に機械的弱点にならなければよく、接合領域のビッカース硬度と合金片のビッカース硬度との差は5以内でも十分であると考えられる。
[製造方法]
本発明マグネシウム合金材は、代表的には、以下の準備工程、及び接合工程を具える製造方法により製造することができる。
準備工程:マグネシウム合金からなる複数の合金片を準備する工程。
接合工程:上記合金片を摩擦撹拌接合により接合する工程。
特に準備工程で用意する合金片は、双ロール連続鋳造法により製造された連続鋳造材、或いは、上記連続鋳造材に複数パスの温間圧延を施した圧延材であることが好ましい。
以下、製造方法をより詳細に説明する。
(鋳造)
双ロール連続鋳造法は、特に、WO/2006/003899に記載の方法を利用することが好ましい。連続鋳造法は、急冷凝固が可能であるため、結晶粒の微細化、酸化物や偏析などの欠陥の抑制、割れの起点になり得る10μm超といった粗大な晶析出物の生成の抑制、などを図ることができる。従って、連続鋳造材は、従来のダイカスト材やチクソモールド材と比較して高強度・高硬度である。また、この連続鋳造材は、上述のように微細で欠陥が少ない組織であることで圧延性にも優れる上に、得られた圧延材も機械的特性に優れる。この連続鋳造材を合金片とする場合、厚さを5mm以下、更に3mm以下とすると、偏析が生じ難く、上記機械的特性に優れる。この連続鋳造材に圧延を施す場合、厚さは10mm以下、更に5mm以下が利用し易い。鋳造材の幅は、適宜選択することができる。本発明では、接合することで広幅が可能であることから、鋳造板の幅は細くてもよい。
(溶体化)
上記連続鋳造材に溶体化処理を施すと、組成を均質化したり、Alといった元素を固溶させることができて好ましい。溶体化処理は、添加元素の種類や含有量にもよるが、保持温度:350℃以上、特に、保持温度:380℃〜420℃、保持時間:60分〜2400分(1時間〜40時間)とすることが好ましい。保持時間は、Alといった添加元素の含有量が多いほど長くすることが好ましい。上記保持時間からの冷却工程において、水冷や衝風といった強制冷却などを利用して、冷却速度を速めると(好ましくは1℃/min以上、より好ましくは50℃/min以上)、粗大な析出物の析出を抑制することができて好ましい。
(圧延工程)
上記連続鋳造材や溶体化処理材に圧延を施すにあたり、素材(圧延途中のものを含む)を加熱することで塑性加工性を高められるため、少なくとも1パスは温間圧延とする。但し、素材の加熱温度が高過ぎると、析出物の過度な成長や過度の析出を招いたり、素材の焼き付きが発生したり、素材の結晶粒が粗大化して得られた圧延材の機械的特性が低下したりする。そのため、温間圧延における素材の加熱温度は、300℃以下、特に150℃以上280℃以下が好ましい。複数回(多パス)の圧延を施すことで、所望の板厚にできると共に、素材の平均結晶粒径を小さくしたり(例えば、30μm以下、更に20μm以下、特に10μm以下、好ましくは5μm以下)、圧延やプレス加工といった塑性加工性を高められる。圧延は、公知の条件、例えば、素材だけでなく圧延ロールも加熱したり、特許文献1に開示される制御圧延などを組み合わせて利用してもよい。仕上げ圧延などで圧下率が小さい圧延では、冷間で圧延を施してもよい。圧延のパス数、1パスあたりの加工度、総加工度、後述する圧延途中や圧延後の熱処理などの条件は、所望の引張強さや硬度を有する圧延材が得られるように、適宜選択することができる。圧延材の幅は、適宜選択することができる。本発明では、接合することで広幅が可能であることから、圧延板の幅は細くてもよい。
多パスの圧延を行う場合、パス間に中間熱処理を行ってもよい。中間熱処理を行うことで、当該熱処理までの塑性加工(主として圧延)により加工対象である素材に導入された歪みや残留応力、集合組織などを除去、軽減できる。その結果、当該熱処理後の圧延で不用意な割れや歪み、変形を防止でき、より円滑に圧延を行える。中間熱処理の保持温度も300℃以下、特に250℃以上280℃以下とすると、上記析出物の成長や結晶粒の粗大化などを防止できて好ましい。
(圧延後の加工・処理)
上記圧延材に、特許文献1に記載されるように最終熱処理(最終焼鈍)を施してもよい。或いは、最終熱処理を施さず、矯正加工を施してもよい。矯正加工は、圧延板を100℃〜300℃、好ましくは150℃以上280℃以下に加熱して行う温間矯正が挙げられる。矯正加工には、例えば、温間矯正を行う場合、圧延材を加熱可能な加熱炉と、加熱された圧延材に連続的に曲げ(歪)を付与するために複数のロールが上下に対向して千鳥状に配置されたロール部とを具えるロールレベラ装置を好適に利用できる。上記矯正加工が施された矯正材では、プレス加工といった塑性加工を施す場合、塑性加工時に動的再結晶化が生じることで塑性加工性に優れる。
その他、上記圧延材や熱処理材、矯正材に研磨を施してもよい。研磨は、研磨粉の飛散防止のため、湿式研磨が好ましい。特に、ベルト研磨は、板材に対して連続的に研磨を施すことができ、作業性に優れる。
(塑性加工)
接合前の合金片を、上記圧延材や熱処理材、矯正材、研磨材の一部(接合に利用される周縁部を除く領域)にプレス加工といった塑性加工を施した塑性加工部を具える形態とする場合、200℃〜300℃の温度域で塑性加工を行うと、素材の塑性加工性を高められる。上記塑性加工後に更に熱処理を施して、塑性加工により導入された歪みや残留応力の除去、機械的特性の向上を図ることができる。この熱処理条件は、加熱温度:100℃〜300℃、加熱時間:5分〜60分程度が挙げられる。
(素材を特定の温度域に保持する総合計時間)
上述のように鋳造材に溶体化処理を施す場合、この溶体化工程以降、接合に供する合金片を得るまでの工程において、素材を150℃以上300℃以下の温度域に保持する総合計時間が12時間以内となるように素材の温度を制御すると共に、素材を300℃超に加熱しないことが好ましい。上記温度域は、析出物が生成、成長し易い領域である。従って、上記温度域の保持時間を特定の範囲に制御することで、特定量の微細な析出物が分散して存在する組織からなる合金片が得られる。そして、この分散組織により、強度や硬度、耐衝撃性といった機械的特性に優れる上に、耐食性にも優れる合金片が得られる。
上記150℃〜300℃の温度域に保持する総合計時間が12時間を超えたり、素材を300℃超に加熱して圧延などすると、粒径が1μm以上の粗大な析出物が存在した組織や析出物が過剰に存在した組織が得られる。圧延などの塑性加工に十分な加熱時間を確保するには、上記150℃〜300℃の温度域に保持する総合計時間は0.01時間以上、更に0.5時間以上、特に1時間以上が好ましい。より好ましくは、温度域:150℃以上280℃以下、総合計時間:8時間以下、特に6時間以下となるように、圧延工程における各パスの加工度や総加工度、予備加熱時間、中間熱処理などの種々の熱処理・矯正・塑性加工などの各工程における加熱条件などを制御する。特に、Alといった添加元素が多いほど、析出物が析出し易いため、上記総合計時間は、添加元素の含有量に応じても調整することが好ましい。
(前処理:エッジの形成)
上記種々の工程を経て得られた素材(鋳造材、溶体化材、圧延材、熱処理材、矯正材、研磨材、塑性加工部を有するものなど)が合金片となり、当該合金片の周縁部のうち、接合に利用される個所(以下、接合縁と呼ぶ)同士を接触させ、この接触箇所を接合することで、接合領域を形成できる。上記素材における接合縁の端面は、上記種々の工程を経たままであると、当該素材の表面と当該端面とがなす角が直角となっておらず、接合し合う素材の端面同士を精度良く接触できない場合がある。そこで、上記素材の接合縁を切断して、当該素材の表面と当該切断面とが直交するように、新たな接合縁を形成する。即ち、当該素材の表面と端面とが直交し(エッジが立った状態とし)、当該素材の端面(切断面)が平面からなるものとすると、当該端面(切断面)同士を精度よく接触できる。従って、このようなエッジを形成した素材を合金片とすることが好ましい。上記エッジの形成には、適宜なカッタを利用してもよいし、研磨により行ってもよい。
(接合)
摩擦撹拌接合には、工具鋼や超硬合金といった硬質材から構成され、撹拌に利用される小径部と装置本体に取り付けられる大径部とを具える接合用プローブを利用する。特に、厚さ3mm以下といった薄い板状の合金片同士を接合する場合、上記プローブの小径部の先端径:3mm〜6mm、小径部の高さ:接合する合金片の厚さの60%〜100%、大径部における小径部側の径:8mm〜15mm、小径部及び大径部において先端面と側面とがなす角:90°〜150°といったプローブが好適に利用できる。接合条件は、プローブの回転数:500r.p.m〜5000r.p.m、送り速度:0.1m/min〜1.0m/min、押込量:接合する合金片の厚さの60%〜100%、プローブの角度:プローブ送り方向とプローブ中心軸とのなす角が90°〜96°、隣り合う一対の合金片の並列方向(代表的には、合金片同士を接触することで形成される境界線に対して直交方向。合金片が矩形状板材である場合、幅方向)とプローブの中心軸とがなす角が90°が挙げられる。
複数の合金片を接合する場合、上記接合用プローブを複数用意して、同時に複数箇所の接合を行うと、接合時間が短く、接合作業性に優れ、一つの接合用プローブで行う場合、設備を簡素化できる。
(後処理)
上記接合後に、上述した研磨や圧延、塗装を施すことで、合金片の厚さと接合領域の厚さとのばらつきを低減したり、外観や機械的特性の向上を図ることができる。この接合後の研磨や圧延には、上述した圧延材や研磨材からなる合金片を製造する場合の条件と同様の圧延条件や熱処理条件、研磨条件を利用することができる。総圧下率は10%〜20%が好ましい。その他、上記接合後に、熱処理を施したり、熱処理後に例えば、上記条件により圧延を施したりすることで、合金片の特性と接合領域の特性とのばらつきを是正できる。この熱処理条件は、加熱温度:100℃〜300℃、加熱時間:5分〜60分程度が挙げられる。
上記接合後に上述のようにプレス加工や曲げなどの塑性加工、この塑性加工に加えて熱処理を施してもよい。塑性加工条件は、上述した合金片に塑性加工部を形成する場合と同様の条件、熱処理条件は、上述した、接合後に圧延を行って更に熱処理する場合の熱処理条件と同様の条件とすることができる。
[試験例1]
以下の条件でマグネシウム合金板(合金片)を複数作製して、摩擦撹拌接合により接合してマグネシウム合金材(接合板)を作製し、機械的特性を調べた。
(試料No.1)
AZ91合金相当の組成(Mg-9.0%Al-1.0%Zn-0.15%〜0.5%Mn(全て質量%))を有するマグネシウム合金からなり、双ロール連続鋳造法により得られた連続鋳造材(厚さ4mmの板材)を複数用意した。得られた各連続鋳造材に、400℃×24時間の溶体化処理を施した。溶体化処理を施した各溶体化材に以下の圧延条件で複数パスの圧延を施し、板幅:250mm、厚さ0.85mmの圧延材を作製した。特に、圧延工程の各パスにおいて、圧延対象となる素材の加熱時間及び圧延速度(ロール周速)を調整することで、素材が150℃〜300℃の温度域に保持される総合計時間が12時間以内となるようにした。かつ、溶体化以降、300℃超の加熱を行っていない。
(圧延条件)
加工度(圧下率):5%/パス〜40%/パス
板の加熱温度:250℃〜280℃
圧延ロール温度:100℃〜250℃
得られた各圧延材に、ロールレベラ装置を用いて、温間矯正を行った(圧延材の加熱温度:220℃)。得られた矯正材の長手方向(幅方向に直交する方向)の周縁部をカッタにより切断して、エッジを形成した。切断は、切断面の精度が中心線平均粗さRaの標準数列(JIS B 0601(2001年)):6.3μm以下(三角表示による仕上げ記号:▽2つ以上)となるように行った。エッジを形成した矯正材の表面に湿式ベルト式研磨を施し、表面を平滑にした研磨材を得た。この研磨材(板幅:210mm、厚さ:0.8mm)を合金片とする。
作製した合金片において形成したエッジの周縁部同士を接触させ、この状態で摩擦撹拌接合により接合した。以下に使用したプローブ、及び接合条件を示す。なお、プローブの先端径を小さくすると、接合領域が小さく、外観に優れた接合材が得られる。
(プローブの仕様)
材質:工具鋼
小径部の先端径:3mm 高さ:0.72mm(合金片の厚さ:0.8mmの90%)
小径部の先端面と側面とがなす角:120°
大径部の先端径(小径部側):10mm
大径部の先端面と側面とがなす角:120°
(接合条件)
回転数:5000r.p.m. 送り速度:0.5m/min
押込量:0.72mm(合金片の厚さ:0.8mmの90%)
傾斜角度(プローブ送り方向とプローブ中心軸とのなす角):92°
上記工程により、合金片と、摩擦撹拌接合による接合領域とを有し、幅420mmのマグネシウム合金材が得られる。このマグネシウム合金材を試料No.1とする。
(試料No.100)
比較として市販の鋳造材(AZ91合金、厚さ1.0mmの板)を複数用意した。この鋳造材に、試料No.1と同様の条件でエッジの形成、湿式研磨を施した後、得られた素材に試料No.1と同様の条件で摩擦撹拌接合を行い、接合領域を有するマグネシウム合金材を作製した。この鋳造材を用いたマグネシウム合金材を試料No.100とする。
得られた試料No.1,100について、室温(20℃〜25℃程度)における引張強さ、室温(20℃〜25℃程度)におけるビッカース硬度Hvを測定した。その結果を表1に示す。ここでは、各試料No.1,100において接合領域を含む領域、接合領域を含まず合金片のみの領域のそれぞれから試験片を適宜採取して、上記引張強さ及びビッカース硬度の測定に利用した。引張強さは、市販の試験機を用いてJIS Z 2241(1998)に基づいて行った。ビッカース硬度は、市販の試験機を用い、圧子をそれぞれの領域に押し当てて測定した。
Figure 0005769003
引張試験の結果、試料No.1において接合領域を含む試験片では、合金片部分で破断した。そのため、試料No.1では、接合領域の引張強さが合金片の引張強さ:298MPa以上であることが分かる。これに対し、試料No.100では、接合領域で破断した。このことから、特定の機械的特性を有する合金片を摩擦撹拌接合といった接合法により接合することで、接合領域は、上記合金片と同等以上の機械的特性を有することが分かる。また、この接合領域は、合金片と同様の組成により構成されている。つまり、特定の機械的特性を有する合金片が当該合金片を構成するマグネシウム合金と同様の組成からなる接合領域により接合された試料No.1のマグネシウム合金材は、接合領域を有しておらず、かつ一様な組成からなる広幅材や長尺材と同様の材料と見なすことができる。従って、このマグネシウム合金材は、広幅材や長尺材が望まれる種々の分野の部材の素材に好適に利用できると期待される。なお、この試験例では、幅が大きくなるように接合しているが、長さが長くなるように接合することも勿論可能である。
これに対し、ダイカスト材といった連続鋳造法以外の鋳造法による鋳造材を接合用素材とすると、当該素材自体が機械的特性に劣る上に、上記試料No.1のマグネシウム合金材を製造するときの接合条件と同じ条件で接合を行っても、接合領域の機械的特性が素材自体よりも低いことが分かる。即ち、試料No.100のマグネシウム合金材は、接合領域が機械的弱点になると言える。
その他、試料No.1の各合金片の厚さ方向の断面を走査電子顕微鏡:SEMで観察したところ、微細な金属間化合物(ここではAl12Mg17)の粒子が均一的に分散した組織を有しており、この粒子は、丸みを帯びたものであった。これらの粒子の平均粒径(視野中の各粒子の円相当径を視野内の粒子の数で除した値)は、0.5μm以下であり(0.1μm〜0.3μm程度)、粗大で異形の金属間化合物が存在した試料No.100と比較して、微細であった。また、上記粒子の面積割合(視野中の粒子の合計面積を視野の面積で除した値)は、11%以下であった(3%〜11%程度)。更に、試料No.1は、上記厚さ方向の断面において巣といった欠陥が実質的に見られなかったのに対し、試料No.100は、最大径が20μmを超えるような粗大な巣が見られた。加えて、上記厚さ方向の断面において、結晶粒の平均粒径(視野内の各結晶粒の円相当径を視野内の粒子の数で除した値)は、30μm以下であった。その他、塩水を用いた腐食試験を行ったところ、試料No.1は、試料No.100よりも腐食減量やMgの溶出量が非常に少なく、耐食性に優れることも確認できた。
[試験例2]
試験例1と同様に複数のマグネシウム合金板(合金片)を作製して、摩擦撹拌接合により接合した接合板を用意し、接合板にプレス加工を施した。
この試験では、合金片として、板幅:250mm、長さ:650mm、厚さ0.8mmのマグネシウム合金板を用意した。この合金片は、試験例1と同様の組成(Mg-9.0%Al-1.0%Zn-0.15%〜0.5%Mn(全て質量%))の圧延材を試験例1と同様の条件(連続鋳造⇒溶体化⇒圧延)で作製し、この圧延材に試験例1と同様の条件で温間矯正を施した後、エッジを形成した研磨材である。この合金片を3枚用意し、これらを板幅方向に摩擦撹拌接合により接合し、板幅:750mm、長さ:650mm、厚さ0.8mmのマグネシウム合金材(接合板)を作製した。接合条件は、試験例1と同様にした。この接合板から試験例1と同様に試験片を採取して、試験例1と同様に室温での引張強さ及びビッカース硬度を測定したところ、試験例1の試料No.1と同様の結果が得られた。
上記作製した接合板に温間プレス加工(素材の加熱温度:250℃)を施し、底面と、底面に立設する側壁とを具える断面]状の筐体(底面:320mm×440mm、深さ:50mm)を作製した。その結果、接合領域の一部にも曲げを加えたが、割れなどが生じることなく、また、接合領域で破断することなく、プレス加工を施すことができた。即ち、接合領域も、合金片部分と同様に曲げ(塑性加工)が加えられていた。また、得られた筐体の接合領域において、接合用プローブが接触していない側は、用意した合金片(研磨材)同士の境界が確認できるものの、当該合金片の表面状態が実質的に維持されており、滑らかな表面を有していた。
上記試験結果から、特定の機械的特性を有するマグネシウム合金からなる合金片を摩擦撹拌接合などの接合方法により接合することで、接合領域を有していても、プレス加工などの塑性加工の素材に好適に利用できることが確認された。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、マグネシウム合金の組成、合金片の厚さ、合金片の形態・形状、製造条件などを適宜変更することができる。例えば、接合前の合金片として、連続鋳造材や熱処理材、矩形以外の多角形状などの板材などを利用できる。また、各合金片が特定の機械的特性を満たす範囲で各合金片の組成が異なる形態とすることができる。
本発明マグネシウム合金材は、高強度・高硬度、軽量、耐衝撃性などの特性が望まれる種々の分野の部材、例えば、自動車などの車両、電車、航空機などの飛行機といった輸送機器の構成部材(特に、ボディーなどの大型な部材)、その他、各種の電気・電子機器類の構成部材(筐体など)、カバンや収納ケースなどの各種の収納部材、及びこれら部材の素材に好適に利用できる。

Claims (9)

  1. マグネシウム合金からなる複数の合金片と、
    前記合金片間に形成され、前記マグネシウム合金から構成される接合領域とを具え、
    前記各合金片は、圧延が施された板材であり、その厚さが3mm以下であり、
    前記各合金片の室温での引張強さが165MPa以上であり、
    前記各合金片の室温でのビッカース硬度Hvが55以上であり、
    前記接合領域が摩擦撹拌接合により形成されており、
    前記接合領域のビッカース硬度Hvが、前記合金片のビッカース硬度Hvと同等以上であり、
    前記合金片と前記接合領域とを含めた室温での引張強さが280MPa以上であるマグネシウム合金材。
  2. 前記各合金片の厚さが1.5mm以下である請求項1に記載のマグネシウム合金材。
  3. 前記接合領域と前記合金片とが滑らかな表面で構成されている請求項1又は請求項2に記載のマグネシウム合金材。
  4. 前記マグネシウム合金材は、前記複数の合金片が少なくとも一つの接合領域により接合された接合板に、プレス加工、鍛造加工、曲げ加工、及び深絞り加工から選択される1種の塑性加工が施されてなる塑性加工材であり、前記接合領域の少なくとも一部に塑性加工が施されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のマグネシウム合金材。
  5. 前記マグネシウム合金は、Al,Zn,Mn,Y,Zr,Cu,Ag,Be,Sn,Li及びSiから選択される少なくとも1種の元素を1元素あたり0.01質量%以上20質量%以下含有し、残部がMg及び不純物からなる請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のマグネシウム合金材。
  6. 前記マグネシウム合金は、Caを0.001質量%以上16質量%以下含有する請求項5に記載のマグネシウム合金材。
  7. 前記マグネシウム合金は、Ca,Au,Pt,Sr,Ti,B,Bi,Ge,In,Te,Nd,Nb,La及び希土類元素(前記列挙する元素と重複する元素を除く)から選択される少なくとも1種の元素を1元素あたり0.001質量%以上5質量%未満含有する請求項5又は請求項6に記載のマグネシウム合金材。
  8. 前記マグネシウム合金は、AZ系合金である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のマグネシウム合金材。
  9. 前記各合金片は、金属間化合物が分散した組織を有し、
    前記金属間化合物の平均粒径が0.5μm以下であり、
    前記金属間化合物の面積割合が11%以下である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のマグネシウム合金材。
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