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JP5748489B2 - 樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は樹脂組成物の製造方法に関し、特には、エチレン含有量20〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物を主成分とする系に少量のエチレン含有量70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(B)を大吐出量の押出機で溶融混練する樹脂組成物の製造方法に関するものである。
特にはサイレージフィルム用の樹脂組成物の製造方法に関するものである。
一般に、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)は、透明性、帯電防止性、耐油性、耐溶剤性、ガスバリア性、保香性などに優れているが、耐衝撃性、耐屈曲疲労性、延伸性、熱成形性、ヒートシール性、吸湿又は吸水時のガスバリア性は低いという欠点も有する材料である。
このため、目的に応じて各種の樹脂および添加剤を配合し、ガスバリア性、香気保持性、食品の変色防止性などのEVOHの特性を維持しながら、耐屈曲疲労性、熱成形性、ヒートシール性、防湿性などのEVOHの欠点を補い各種包装用途に利用されることがある。
例えば、低温下での過酷な屈曲疲労、振動疲労および落下衝撃に対しても優れたガスバリア性を保持することができ、被包装物の変質を防止するために有効な積層包装材として、樹脂組成物層を含む特定積層構成を有し、かつ該樹脂組成物が、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物100重量部に対してオレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体及び/又はそのケン化物1〜100重量部を配合してなることを特徴とする積層包装材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
かかるエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物としてエチレン含有量が20〜60モル%のものが記載されており、オレフィン−カルボン酸ビニルエステル共重合体及び/又はそのケン化物としてエチレン含有量が70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物が記載されている。
特開2001−79999号公報
しかしながら、エチレン含有量20〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(A)(以下、EVOH樹脂(A)と称することがある)とエチレン含有量70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(B)(以下、EVAケン化物(B)と称することがある)は相溶性が十分ではないため、両者を混合した場合に均一な混合物が得られない傾向がある。
従って、機械的に樹脂同士がよく混練される小型の押出機(低吐出量の押出機)を用いた場合には問題が発見され難いが、大型の工業的押出機(大吐出量の押出機)で大量生産した場合、機械的に樹脂同士が混練され難いためかサージングが発生し、ストランドが切れるなどして、生産性が低下することが問題であった。押出機を使用して押し出しを行う際に、系内の溶融樹脂の流れに脈動が生じ、押出機の運転が不安定になる事がある。この様な挙動は、一般的にサージングと呼ばれている。
本発明は上記実情に鑑み鋭意検討した結果、エチレン含有量20〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(A)およびエチレン含有量70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(B)とカルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)(以下、酸変性EVA(C)と称することがある)を含み、上記EVOH樹脂(A)100重量部に対して酸変性EVA(C)を重量部の特定量含有する樹脂組成物を採用することで、吐出量100〜500kg/hrという大吐出量の押出機で溶融混練する場合であっても、サージングが抑制され、ストランド切れが発生せず、優れた生産性で工業生産を行うことが可能となった。
なお、かかるEVAケン化物(B)は、エチレン含有量が70モル%以上と高いエチレン−酢酸ビニル系共重合体の酢酸ビニル成分をケン化することによって得られるものであり、EVOH樹脂(A)と同様に非水溶性の樹脂であるが、エチレン含有量が高いためにEVOH樹脂(A)のような高度なガスバリア性を有さない。従って、当業者にとってEVAケン化物(B)は、EVOH樹脂(A)とは全く異なる樹脂として認識されている。
また、かかるEVAケン化物(B)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(一般にEVA樹脂と呼ばれ、柔軟性を有する樹脂である)とも水酸基の有無の点で明らかに異なる。EVAケン化物(B)は水酸基を有するため、水酸基を有さないEVA樹脂よりも高い極性を有する一方、柔軟性には乏しいという特徴があり、当業者にとってEVA樹脂とEVAケン化物(B)は全く異なる樹脂として認識されている。
また、カルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)は、エチレン含有量が70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体に不飽和カルボン酸またはその無水物を化学的に結合させて得られるものである。かかる酸変性EVA(C)は、水酸基を有さず、高度なガスバリア性はなく、EVOH樹脂(A)ともEVAケン化物(B)とも全く異なる樹脂として認識されている。
すなわち、本発明の要旨は、エチレン含有量20〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(A)とエチレン含有量70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(B)を吐出量100〜500kg/hrの押出機で溶融混練するにあたり、上記(A)100重量部に対して、カルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)を重量部含有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法に存する。
主成分のEVOH樹脂(A)にEVAケン化物(B)を配合した樹脂組成物において、特定量の酸変性EVA(C)が存在することで、EVOH樹脂中にEVAケン化物(B)を均一に分散させることができる。それにより樹脂組成物のムラが無くなった為、製造時のサージングやストランド切れが解消され、大量生産時においても、良好な形状のペレットやフィルム等の成形物を優れた生産性で得ることができる。
さらにEVOH樹脂(A)に柔軟性を付与するために、EVAケン化物(B)を配合する場合、EVAケン化物(B)がEVOH樹脂(A)中に均一に分散しない傾向があったが、特定量のカルボキシル基を含有するエチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)を樹脂組成物に含有させることで、酸変性EVA(C)を介して、EVOH樹脂(A)中のEVAケン化物(B)の分散状態が良好となったためか、溶融成形に良好なメルトフローレート(MFR)を有する樹脂組成物が得られる。
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
はじめに本発明で用いられる樹脂組成物について説明する。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、エチレン含有量20〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(A)およびエチレン含有量70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(B)とカルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)を含有し、上記(A)100重量部に対して(C)を重量部含有する樹脂組成物である。
以下、各成分について、順に説明する。
〔EVOH樹脂(A)〕
樹脂組成物の主成分となるEVOH樹脂(A)は、非水溶性の樹脂であり、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体を、ケン化することによって得られる。エチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造され、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
本発明の樹脂組成物に用いられるEVOH樹脂(A)のエチレン含有量は、ISO14663に基づいて測定したエチレン構造単位の含有量のことを意味し、20〜60モル%である。そして、好ましくは25〜55モル%、さらに好ましくは35〜50モル%、特に好ましくは38〜48モル%である。エチレン構造単位の含有量が少なすぎると、フィルムの柔軟性が低下する傾向にある。一方、エチレン構造単位の含有量が高くなりすぎると、ガスバリア性が不十分となる傾向にある。
また、酢酸ビニル成分のケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOH樹脂は水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測定した値で、通常95モル%以上であり、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。ケン化度が低くなると、ガスバリア性が低下する傾向にあるからである。
さらに、EVOH樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)においては、210℃、荷重2160g条件下で、通常0.1〜100g/10分であり、好ましくは0.5〜50g/10分であり、特に好ましくは1〜20g/10分である。MFRの値が小さすぎる場合、押出成形時にスクリュトルクや樹脂圧が高くなりすぎたり、得られるフィルムに縦スジが発生するという傾向があり、一方、MFRの値が大きすぎる場合、押出成形性が不安定になったり、得られるフィルムの膜厚がばらついたりする傾向がある。
本発明の樹脂組成物に用いられるEVOH樹脂(A)としては、上記要件を充足するEVOH樹脂であれば、エチレン含有量、ケン化度、MFRが異なる2種以上を混合して用いてもよい。
また、本発明に用いられるEVOH樹脂としては、共重合体中に更に少量のプロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のα−オレフィン、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、3―ブテン―1,2―ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物などのヒドロキシ基含有α−オレフィン誘導体、不飽和カルボン酸又はその塩・部分アルキルエステル・完全アルキルエステル・ニトリル・アミド・無水物、不飽和スルホン酸又はその塩、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレン等のコモノマーを共重合したものであっても差し支えない。さらに、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化、エポキシ化等「後変性」されていても差し支えない。
特にヒドロキシ基含有α−オレフィン類を共重合したEVOH樹脂は、成形性や延伸性が良好になる点で好ましく、中でも1,2−ジオールを側鎖に有するEVOH樹脂が好ましい。
本発明で用いられるEVOH樹脂(A)には、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般的にEVOH樹脂に配合される熱安定剤を含有することがあり、かかる熱安定剤としては、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させる目的で、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸類またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛族金属塩(亜鉛等)などの塩;または、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛族金属塩(亜鉛等)などの塩等の添加剤を添加してもよい。これらのうち、特に、酢酸、リン酸、ホウ酸およびその塩を含むホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加することが好ましい。
酢酸を添加する場合、その添加量は、EVOH樹脂(A)100重量部に対して通常0.001〜1重量部、好ましくは0.005〜0.2重量部、特に好ましくは0.01〜0.1重量部である。酢酸の添加量が少なすぎると、酢酸の含有効果が十分に得られない傾向があり、逆に多すぎると厚みや外観が均一なフィルムを得ることが難しくなる傾向がある。
リン酸を添加する場合、その添加量は、EVOH樹脂(A)100重量部に対して(硫酸と硝酸で加熱分解してリン酸根を原子吸光度法にて分析)通常0.0005〜0.1重量部、好ましくは0.001〜0.05重量部、特に好ましくは0.002〜0.03重量部である。リン酸の添加量が少なすぎると、リン酸の含有効果が十分に得られない傾向があり、逆に多すぎると厚みや外観が均一なフィルムを得ることが難しくなる傾向がある。
また、ホウ素化合物を添加する場合、その添加量は、EVOH樹脂(A)100重量部に対してホウ素換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.001〜1重量部であり、好ましくは0.002〜0.2重量部であり、特に好ましくは0.005〜0.1重量部である。ホウ素化合物の添加量が少なすぎると、ホウ素化合物の添加効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると厚みや外観が均一なフィルムを得るのが困難となる傾向がある。
また、酢酸塩、リン酸塩(リン酸水素塩を含む)の添加量としては、EVOH系樹脂(A)100重量部に対して金属換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で通常0.0005〜0.1重量部、好ましくは0.001〜0.05重量部、特に好ましくは0.002〜0.03重量部である。かかる添加量が少なすぎるとその含有効果が十分に得られないことがあり、逆に多すぎると得られるフィルムが着色したり臭気が発生したりする傾向がある。尚、EVOH系樹脂(A)に2種以上の塩を添加する場合は、その総量が上記の添加量の範囲にあることが好ましい。
EVOH樹脂(A)に酢酸、リン酸、ホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加する方法については、特に限定されず、i)含水率20〜80重量%のEVOH樹脂(A)の多孔性析出物を、添加物の水溶液と接触させて、添加物を含有させてから乾燥する方法;ii)EVOH樹脂(A)の均一溶液(水/アルコール溶液等)に添加物を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断して円柱状のペレットとしたり、アンダーウォーターカット法により球状のペレットとしたりして、さらに乾燥処理をする方法;iii)EVOH樹脂(A)と添加物を一括して混合してから押出機等で溶融混練する方法;iv)EVOH樹脂(A)の製造時において、ケン化工程で使用したアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を酢酸等の有機酸類で中和して、残存する酢酸等の有機酸類や副生成する塩の量を水洗処理により調整したりする方法等を挙げることができる。
本発明の効果をより顕著に得るためには、添加物の分散性に優れるi)、ii)の方法、有機酸およびその塩を含有させる場合はiv)の方法が好ましい。
〔EVAケン化物(B)〕
本発明の樹脂組成物の2つ目の必須成分は、エチレン含有量70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化物(B)である。
かかるEVAケン化物(B)は、エチレン含有量70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル系共重合体の酢酸ビニル成分をケン化することによって得られるものであり、エチレン含有量においてEVOH樹脂(A)とは異なるものである。
上記EVAケン化物(B)は、エチレンおよび酢酸ビニルを公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合等により製造し、公知の方法でケン化したものである。かかるEVAケン化物(B)のエチレン含有量は、ISO14663に基づいて測定したエチレン構造単位の含有量が70モル%以上であることが必要であり、その上限は通常98モル%以下である。かかるエチレン含有量について、好ましくは75〜95モル%、より好ましくは80〜95モル%である。エチレン含有量が少なすぎた場合、フィルム状の成形物とした時に、突き刺し強度や引っ張り破断伸び性の向上効果が不足する傾向にある。
また、上記EVAケン化物(B)のケン化度としては、JIS K6726に基づいて測定した値で、通常20モル%以上であり、好ましくは40〜100モル%、特に好ましくは80〜100モル%である。上記ケン化度が低すぎた場合、EVOH樹脂(A)との親和性が不足し、分散性が低下する傾向がある。
上記EVAケン化物(B)のメルトフローレート(MFR)(190℃、荷重2160g)としては、通常0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、より好ましくは2〜30g/10分であることが、分散性に優れ本発明の効果に優れる点で好ましい。
また、上記EVAケン化物(B)の密度は通常500〜1500kg/m、好ましくは800〜1200kg/m、特に好ましくは900〜1100kg/mである。
上記EVAケン化物(B)は、本発明の趣旨を阻害しない範囲で、上記EVOH樹脂(A)と同様の、共重合可能な他のモノマーを共重合していてもよい。
上記EVAケン化物(B)は、本発明の趣旨を阻害しない範囲で不飽和カルボン酸またはその無水物を、付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性体であってもよい。かかる変性量は、例えば具体的には10モル%以下が好ましい。上記不飽和カルボン酸またはその無水物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸や、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸やその無水物、ハーフエステル等があげられ、中でも、無水マレイン酸が好適に用いられる。
上記EVAケン化物(B)は、上記の範囲内においてエチレン含有量、ケン化度、分子量、MFR、密度、変性基やその変性量等の異なるEVAケン化物を2種以上併せて用いることができる。
〔酸変性EVA(C)〕
本発明の樹脂組成物の3つ目の必須成分は、カルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)である。
かかる変性EVA(C)は、エチレン含有量が70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体に不飽和カルボン酸またはその無水物を化学的に結合させて得られるものであり、ケン化をしないため、水酸基を有さず、高度なガスバリア性はなく、EVOH樹脂(A)ともEVAケン化物(B)とも全く異なる樹脂である。
かかる酸変性EVA(C)は、不飽和カルボン酸またはその無水物をエチレン−酢酸ビニル共重合体に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られる。かかる不飽和カルボン酸又はその無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、中でも、無水マレイン酸が好適に用いられる。具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−アクリル酸メチル共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−アクリル酸エチル共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。
酸変性EVA(C)に含有される不飽和カルボン酸又はその無水物の変性量は、0.001〜3重量%、更には0.01〜1重量%、特には0.03〜0.5重量%が好ましく、変性量が少ないと相溶性の向上効果に乏しく、逆に多いと樹脂組成物の熱安定性が悪くなることがあり好ましくない。
上記酸変性EVA(C)のメルトフローレート(MFR)(190℃、荷重2160g)としては、通常0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、より好ましくは2〜30g/10分である。
また、上記酸変性EVA(C)の密度は、通常500〜1500kg/mであり、好ましくは800〜1200kg/m、より好ましくは900〜1000kg/mである。
上記酸変性EVA(C)は、上記の範囲内においてエチレン含有量、分子量、MFR,密度、変性基やその変性量の異なる酸変性EVA(C)を2種以上併せて用いることができる。
〔配合比〕
本発明の樹脂組成物の各成分の配合比は、上記EVOH樹脂(A)100重量部に対して酸変性EVA(C)が2〜5重量部である。
EVAケン化物(B)は、EVOH樹脂(A)100重量部に対し、通常10〜40重量部配合するのが好ましく、更に好ましくは15重量部超30重量部、特に好ましくは15超25重量部未満である。
EVAケン化物(B)と酸変性EVA(C)の配合比率(重量基準)、EVAケン化物(B)/酸変性EVA(C)は通常1〜400であり、好ましくは2〜100、より好ましくは3〜50、特に好ましくは4〜20である。
3成分を配合比率(重量基準)で表すと、通常、EVOH樹脂(A)/EVAケン化物(B)/酸変性EVA(C)=90.8/9.11/0.09〜67/27/6であり、好ましくはEVOH樹脂(A)/EVAケン化物(B)/酸変性EVA(C)=80/19.5/0.5〜80/16/4である。
本発明においては、主成分のEVOH樹脂(A)にEVAケン化物(B)を配合した樹脂組成物において、特定量の酸変性EVA(C)が存在することで、EVOH樹脂中にEVAケン化物を均一に分散させることができると考えられる。それにより樹脂組成物のムラが無くなった為、製造時のサージングやストランド切れが解消され、良好な形状のペレットやフィルム等の成形物を優れた生産性で得ることができる。さらに、特定量の酸変性EVA(C)が存在することで、EVOH樹脂(A)中のEVAケン化物(B)が適度に分散するためか、上記樹脂組成物は溶融成形に非常に適したMFRを有する。樹脂組成物の好ましいMFRとしては、210℃で荷重2160gの場合、2.5〜4.5g/10分、更に好ましくは、3.0〜4.3g/10分、特に好ましくは3.5〜4.3g/10分である。
〔その他の成分〕
上記樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば通常樹脂組成物の20重量%未満、好ましくは10重量%未満)にて、上記EVOH樹脂(A)、EVAケン化物(B)、酸変性EVA(C)の他に、必要に応じて、EVOH樹脂(A)、EVAケン化物(B)、酸変性EVA(C)以外の熱可塑性樹脂や添加剤を含有していても良い。
上記EVAケン化物(B)以外の熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂;ビニルエステル系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ビニルエステル系樹脂にマレイン酸等の不飽和カルボン酸を付加反応またはグラフト反応することによって得られるカルボキシル基含有樹脂などが挙げられる。
上記添加剤としては、例えば酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤等が挙げられる。これらの添加剤はあらかじめ(A)〜(C)成分に配合させておいても良い。
すなわち、上記樹脂組成物において(A)成分と(B)成分と(C)成分の総量は、通常80〜100重量%であり、好ましくは90〜100重量%である。
〔樹脂組成物の調製〕
上記樹脂組成物は、各成分を混合することによって調製する。かかる混合方法としては、溶融混合法、溶液混合法、機械的混合法(例えばペレットドライブレンド)等が挙げられる。
溶融混合方法としては、各成分を溶融状態で混合する方法であり、例えば、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、プラストミルなどの公知の溶融混練装置を使用して行うことができるが、通常は単軸又は二軸の押出機を用いることが工業上好ましく、特に混練効果に優れる二軸押出機が好ましく、また、必要に応じて、ベント吸引装置、ギヤポンプ装置、スクリーン装置等を設けることも好ましい。また、樹脂の熱酸化劣化を抑制する目的で、ホッパー内を窒素などの不活性ガスでシールすることも好ましい。
溶液混合方法としては、例えば各成分を共通の良溶媒に溶解して混合し、共通の貧溶媒中で析出させる方法等が挙げられる。
溶融混合法、溶液混合法で混合した樹脂は、例えば粉末状、球形や円柱形のペレット状、フレーク状等の形状にて用いることができる。
機械的混合法としては、樹脂をフィルム等の製品製造用押出機に供給する前に予めドライブレンドし、一括して製品製造用押出機に供給する方法である。
また、各成分を混合する順序は特に限定されないが、
<1>(A)〜(C)成分を一括で混合した後に溶融混練する方法
<2>一部の成分を予め溶融混練した後に、残りの成分を添加して更に溶融混練する方法
<3>(A)〜(C)成分を溶解可能な溶剤中で均一に溶解して混合した後に該溶剤を除去する方法
<4>(A)〜(C)成分を溶解可能な溶剤中で、一部の成分を溶解した後に残りの成分を添加して溶解し、該溶剤を除去する方法
<5>共通の良溶媒を用いて一部の成分を予め溶液混合した後に溶剤を除去し、得られた組成物と残りの成分を溶融混合する方法などが挙げられる。
中でも、<1>の方法が、装置の簡便さ、コスト面等でも実用的で好ましい。
従って、最も好ましい混合方法は、EVOH樹脂(A)とEVAケン化物(B)と酸変性EVA(C)を押出機に供給する前に一括にドライブレンドし、押出機内で溶融混練させる方法である。
本発明の樹脂組成物を得る場合、上記押出機の吐出量としては、100〜500kg/hrであり、好ましくは150〜450kg/hrで、更に好ましくは200〜400kg/hrである。吐出量が大きすぎるとサージングが発生してストランド切れが多発する傾向があり、少ないと生産性が落ちるため好ましくない。
押出機の設定温度は、通常100〜300℃であり、好ましくは150〜270℃である。
またスクリューの直径は通常、35mm〜75mmであり、長さは直径の20〜60倍のものが一般的である。
使用するスクリューの形状としては、二軸押出機の場合、数箇所のニーディングブロックを設けることが好ましい。
<フィルム>
本発明のフィルムは、上記樹脂組成物層を少なくとも1層有することを特徴とする。つまり、上記樹脂組成物のみの単層フィルムとして用いてもよいし、樹脂組成物層を少なくとも1層有する多層構造体として用いても良い。なお、上記したように、本発明の樹脂組成物中には通常20重量%未満にて他の熱可塑性樹脂や添加剤を含むことが可能であるものである。
本発明においては、ガスバリア層である樹脂組成物層を水分や機械的衝撃から保護し、さらに突き刺し強度や引っ張り破断伸び性に優れたフィルムが得られる点から、上記樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する多層構造体であることが好ましい。
上記多層構造体を構成する、樹脂組成物層以外の層として用いる樹脂としては、特に限定しないが、水分による樹脂組成物のガスバリア性能の低下を防ぐ目的で、疎水性熱可塑性樹脂が挙げられる。
例えば具体的には、ポリオレフィン系樹脂:直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超低密度直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン類(各々メタロセン触媒製を含む)、およびエチレン−αオレフィン共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリペンテン等;これらポリオレフィン類を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したグラフト化ポリオレフィン類、環状ポリオレフィン系樹脂;アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のハロゲン化ポリオレフィン、芳香族または脂肪族ポリケトン等が挙げられる。
中でも機械的強度や成形加工性の点で、好ましくはポリオレフィン系樹脂であり、特に好ましくはポリエチレン、ポリプロピレンである。
特に、フィルムの突き刺し強度や引っ張り破断強度を向上するために、超低密度直鎖状ポリエチレン、メタロセン触媒製低密度直鎖状ポリエチレン、ポリオレフィン・プラストマーからなる少なくとも1種を低密度ポリエチレンと共に使用することが好ましい。
尚、上記の疎水性熱可塑性樹脂には、耐紫外線剤や粘着性成分を配合することが好ましい。耐紫外線剤としては、例えば紫外線吸収剤(具体的にはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オギザニリド系紫外線吸収剤等)、光安定剤(具体的にはヒンダートアミン系光安定剤、ニッケル系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤)、着色剤等が挙げられ、紫外線吸収材は光安定剤と併用することにより、連鎖開始阻害剤とラジカル補足剤としての相乗効果が得られるため好ましい。
かかる耐紫外線剤の配合量は上記疎水性熱可塑性樹脂に対して通常0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%である。かかる配合量が少なすぎた場合、紫外線によって疎水性熱可塑性樹脂が劣化しやすくなるが、多く配合するほど耐紫外線効果が比例して向上するとは限らない。
また粘着性成分とは、例えばポリイソブテン等の脂肪族飽和炭化水素系樹脂や、脂環族飽和炭化水素樹脂等が挙げられ、上記疎水性熱可塑性樹脂に対して通常1〜30重量%、好ましくは2〜22重量%、特に好ましくは5〜20重量%である。かかる配合量が適切であればサイレージを本発明のフィルムにて覆う際にフィルム同士が圧着され、密封しやすく、フィルム同士が剥離されにくくなる。少なすぎる場合、フィルムが剥離して隙間が発生し、空気が流入する危険性が高くなり、多すぎる場合、フィルムのブロッキングが起こり、巻きつけ時に不具合が起こりやすくなる傾向がある。
上記疎水性熱可塑性樹脂層のメルトフローレート(MFR)は、210℃、荷重2160g条件下で、通常0.1〜100g/10分であり、好ましくは0.5〜50g/10分であり、特に好ましくは0.5〜20g/10分である。MFRの値が小さすぎる場合、押出成形時にトルクが高くなりすぎたり、得られるフィルムに縦スジが発生するという傾向があり、一方、MFRの値が大きすぎる場合、押出成形性が不安定になったり、得られるフィルムの膜厚がばらついたりする傾向がある。また、EVOH樹脂組成物のMFRとの差が小さいほうが好ましい。
上記疎水性熱可塑性樹脂層の融点は、通常100〜300℃である。
また、これらの樹脂の他に、紙、金属箔、1軸又は2軸延伸プラスチックフイルム又はシート、織布、不織布、金属綿、木質面、アルミやシリカ蒸着と組み合わせた多層構造体であってもよい。
これらのうち、水のバリア性に優れた疎水性熱可塑性樹脂層を外表面層とし、樹脂組成物層を中間層とする構成の多層構造体が好ましく用いられる。
該多層構造体の製造方法としては、樹脂組成物を溶融した状態で成形する方法(溶融成形法)と、樹脂組成物を溶媒に溶解して成形する方法(例えば溶液コート法)等に大別される。中でも生産性の観点から、溶融成形法が好ましい。
具体的には、例えば、EVOH樹脂組成物の成形品(例えばフィルムやシート)に疎水性熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、疎水性熱可塑性樹脂等の基材に樹脂組成物層を溶融押出する方法、樹脂組成物層と疎水性熱可塑性樹脂層とを共押出する方法が挙げられ、詳細にはT−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、異型押出等が採用される。特に、インフレーション押出法を採用する場合、サイレージフィルムの機械強度の点からそのブローアップ比は、通常1〜10であり、好ましくは2〜8である。
なお、かかる溶融成形に用いる押出機についても、上記と同様にして、押出機の吐出量としては、100〜500kg/hrであり、好ましくは110〜400kg/hrで、更に好ましくは120〜300kg/hrである。大きすぎるとサージングが発生してフィルムの厚みや外観が不均一になる傾向があり、少ないと生産性が落ちるため好ましくない。
押出機の設定温度は、通常100〜300℃であり、好ましくは150〜280℃である。
使用するスクリューの形状としては、フルフライトタイプが好ましい。またスクリューの直径は40mm〜65mm、長さは直径の20〜45倍のものが一般的である。
また、通常かかる押出機は、上記と同様に、単軸又は二軸押出機を用いることが工業上好ましいが、製膜する場合は単軸押出機を用いることが一般的である。
さらには、樹脂組成物フィルムと疎水性熱可塑性樹脂フィルム等の基材とを、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエチレンイミン系化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン系化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法、接着剤なしで熱ラミネートする方法、接着性樹脂層を介層させてラミネートする方法等が採用される。
接着性樹脂層を構成する接着性樹脂としては特に限定されず、種々のものを使用することができるが、一般的には、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(前述の広義のポリオレフィン系樹脂)に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができ、具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれる1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。
多層構造体の層構成は、樹脂組成物層をa(a1、a2、・・・)、EVOH樹脂以外の疎水性熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、通常3〜20層、好ましくは3〜15層、特に好ましくは3〜10層である。例えば具体的には、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能である。
また、該多層構造体を製造する過程で発生する端部や不良品等を再溶融成形して得られる、樹脂組成物とEVOH以外の疎水性熱可塑性樹脂の混合物を含むリサイクル層をRとするとき、b/a/R、R/b/a、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。
さらに上記した多層構造体の層間には上記したような公知の接着性樹脂を用いても良い。
中でも、樹脂組成物層のガスバリア性能の低下防止のために、樹脂組成物層への水分の透過を防止できるように、樹脂組成物層が中間層となり、疎水性熱可塑性樹脂層が両外側層となるような多層構造が最も好ましい。例えば、具体的には、疎水性熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層/疎水性熱可塑性樹脂層、または、疎水性熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/疎水性熱可塑性樹脂層や、疎水性熱可塑性樹脂層/疎水性熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/疎水性熱可塑性樹脂層/疎水性熱可塑性樹脂層等が挙げられる。
上記の中でも、疎水性熱可塑性樹脂層/疎水性熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/樹脂組成物層/接着性樹脂層/疎水性熱可塑性樹脂層/疎水性熱可塑性樹脂層を構成単位とする多層構造体が最も好ましい。
本発明の多層構造体の厚みとしては、その全厚みが、通常5〜500μm、好ましくは10〜300μm、より好ましくは20〜200μm、特に好ましくは20〜50μmである。
また、多層構造体中の疎水性熱可塑性樹脂層の厚みは、特に限定しないが、通常0.5〜200μm、好ましくは1〜100μm、特に好ましくは1〜10μmである。樹脂組成物層の厚みは、特に限定しないが、通常0.1〜100μm、好ましくは0.5〜50μm、特に好ましくは0.5〜5μmである。接着性樹脂層の厚みは、特に限定しないが、通常0.5〜50μm、好ましくは1〜30μm、特に好ましくは1〜5μmである。
なお、それぞれの層において、層が複数ある場合には、その各層の厚みが上記厚みとなることを意味している。
また、疎水性熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層の厚み比は、疎水性熱可塑性樹脂への水分混入を抑制する目的から、疎水性熱可塑性樹脂層のほうが厚いことが好ましく、各層が複数ある場合は、最も厚みの厚い層同士の比で、通常1超〜30であり、好ましくは2〜10である。接着性樹脂層/樹脂組成物層の厚み比は、通常0.1〜2であり、好ましくは0.2〜1である。
本発明の多層構造体は、上記のように、他の疎水性熱可塑性樹脂や基材と積層したのみ(延伸処理を行わない)の多層構造体であるが、必要に応じて延伸処理されていてもよい。
なお、延伸については、公知の延伸方法でよく、例えば、一軸延伸、二軸延伸等が挙げられる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸方法としては、例えばテンター式延伸やダブルバブル式延伸などが挙げられる。延伸温度は、多層構造体の温度(多層構造体近傍温度)で、通常50〜200℃、好ましくは80〜160℃程度の範囲から選ばれる。
本発明の樹脂組成物を後述するサイレージフィルムとして用いる場合は、サイレージ密封時に常温にてフィルムを延伸する場合があるため、本延伸工程においては、延伸倍率を、後ほど常温延伸する余地が残る程度にとどめるほうがよい。
<サイレージの作成方法>
本発明のフィルムはサイレージフィルムとして用いるのが好ましい。本発明のサイレージフィルムを用いたサイレージの作成方法は特に限定するものではない。
サイレージ原料としては、常用される原料が適宜用いられ、通常は牧草である。例えば具体的には、オーチャードグラス、チモシー、ペレニアンライグラス、イタリアンライグラス、ケンタッキーブルーグラス、トールフェスク、スーダングラス、ワラ等のイネ科植物;シロクローバー、アカクローバー、アルファルファ等のマメ科植物;トウモロコシ類;その他あぜ草、野草、野菜屑等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を併用してもよい。
また、オールインサイレージのように、上記の牧草に、0.1〜30重量%にて穀類、ぬか類、大豆、大豆粕、ビール粕、などの濃厚飼料や未利用・低利用飼料資源などの副資材を一緒に混ぜてサイレージ化することも可能である。
本発明のサイレージフィルムは、牧草サイレージ用として用いることが好ましく、特には牧草を70〜99.9重量%にて含有するサイレージを包装するフィルムとして用いることが好ましい。
サイレージ化の方法としては、通常のサイレージを作る方法を採用する。たとえば、原料を必要に応じて適度な水分含量(通常、30〜70重量%)に乾燥し、これを、各種のサイロ形状に応じて密封条件下におく。
このとき、サイレージ原料を細断したり、踏圧したりしてサイレージ原料密度を上げ、フィルム内の酸素残存量を少なくするようにした場合、好気性細菌の活動やカビの発生が抑制され、良いサイレージが得られる傾向がある。
上記のようにサイレージを各種サイロに密封し、嫌気性条件下で貯蔵し、発酵させればよい。かかる貯蔵期間は、通常1〜36ヶ月、さらには2〜24ヶ月である。
本発明のサイレージフィルムを用いるサイロの形態としては、特に限定されるものではなく、例えば上記したようなバンカーサイロ、地下型(もしくは半地下型)サイロ、バッグサイロ、チューブサイロ、スタックサイロ、ラップサイロ等、種々の形態が挙げられる。
特に、ラップサイロを作成する場合には、まず牧草を所望の容量(例えば0.1〜50m、好ましくは1〜30m)に牧草を整形する。たとえば円筒状のロールベールサイロの場合、その大きさは通常直径0.5〜3m、好ましくは1〜2m、高さは通常0.5〜3m、好ましくは1〜2mである。
そして、整形した牧草に通常のラップ巻きつけ機を使用して本発明のサイレージフィルムを巻きつけ、サイレージを密封する。かかるフィルムの巻きつけ時には、サイレージ中に残存する空気を可能な限り減少させることが好ましいため、フィルムに張力をかけて延伸しながら巻きつけ、サイレージに対してフィルムを密着させることが好ましい。
かかる延伸倍率は通常1.1〜5倍であり、好ましくは1.3〜3倍であり、特に好ましくは1.5〜2倍である。
また、フィルムの巻きつけ回数は、通常2〜10重、好ましくは2〜8重、特に好ましくは2〜5重である。
本発明の樹脂組成物をサイレージフィルムとした場合、ガスバリア性、突き刺し強度や引っ張り伸び性に優れるため、サイレージフィルムの性能に大きく左右されるラップサイロ用途に特に有用である。
サイレージ化した飼料は、そのまま飼料として与えても良いし、穀類、ぬか類、大豆などの蛋白質含量の高い濃厚飼料を添加して混合飼料として調整をしても良い。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、実施例中「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
実施例1
(樹脂組成物ペレットの製造)
EVOH樹脂(A)として、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物[日本合成化学工業(株)製“ソアノールAT4403”、エチレン含有量44モル%、ケン化度99.7モル%、MFR(210℃、2160g)3.5g/10分]、EVAケン化物(B)として、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物[東ソー(株)製“メルセンH0051K”、エチレン含有量89モル%、ケン化度99モル%、MFR(190℃、2160g)6.5g/10分]、酸変性EVA(C)として、無水マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体[DuPont(株)製“Fusabond C MC190D”、エチレン含有量89モル%、MFR(190℃、2160g)16g/10分、密度950kg/m]を重量比にして(A)/(B)/(C)=80/17/3として用いた。すなわち、上記EVOH樹脂(A)100重量部に対して、EVAケン化物(B)21重量部、酸変性EVA(C)4重量部である。
上記樹脂をドライブレンドし、下記条件で溶融混練してストランド状に押し出した。かかるストランドをペレタイザーでカットして、円柱形ペレット状の樹脂組成物を得た。
押出機:直径(D)44mm、二軸押出機、L/D=52、JSW社製TEX44
スクリュー形状:ニーディングブロック2箇所 C10とC13の箇所
スクリーンパック:50メッシュの2枚重ね
スクリュー回転数:550rpm
C6から窒素ガスシール、C14から真空引きを実施
設定温度:C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/C9/C10/C11/C12/C13/C14/C15/D=50/80/100/100/100/100/150/180/220/220/220/220/220/220/240℃
吐出量:250kg/hr
〔評価方法〕
(1)ストランドの観察
上記溶融混練後に押し出されたストランドを観察し、サージングの状態を観察した結果を表1に示す。なお、ストランドが切れた場合は、切れたストランドの端を鋏でカッティングしてから再びペレタイザーまで導入するという操作をしてペレット化作業を継続した。
(2)MFR
210℃、荷重2160g条件下でのMFRを測定した結果を表1に示す。
比較例3
実施例1において、樹脂組成物の配合比を重量比にして(A)/(B)/(C)=80/19/1として用いた以外は同様に円柱形ペレット状の樹脂組成物を得、評価した。すなわち、EVOH樹脂(A)100重量部に対して、EVAケン化物(B)24重量部、酸変性EVA(C)1重量部である。
参考例1
実施例1において、樹脂組成物の配合比を重量比にして(A)/(B)/(C)=80
/15/5として用いた。すなわち、EVOH樹脂(A)100重量部に対して、EVA
ケン化物(B)19重量部、酸変性EVA(C)6重量部である。
上記樹脂をドライブレンドし、下記条件で溶融混練してストランド状に押し出した。か
かるストランドをペレタイザーでカットして、円柱形ペレット状の樹脂組成物を得、MF
Rを評価した。
押出機:直径(D)30mm、二軸押出機、L/D=44、プラスチック工学研究所社製
スクリュー形状:ニーディングブロック2箇所
スクリーンパック:90メッシュの2枚重ね
スクリュー回転数:150rpm
設定温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/D=150/170/190
/200/200/200/200/200℃
吐出量:20kg/hr
参考例2
参考例1において、樹脂組成物の配合比を重量比にして(A)/(B)/(C)=80/12/8として用いた以外は同様にペレット状の樹脂組成物を得、MFRを評価した。
すなわち、EVOH樹脂(A)100重量部に対して、EVAケン化物(B)15重量部、酸変性EVA(C)10重量部である。
比較例1
実施例1において、樹脂組成物の配合比を重量比にして(A)/(B)/(C)=80/20/0として用いた以外は同様に円柱形ペレット状の樹脂組成物を得、評価した。すなわち、EVOH樹脂(A)100重量部に対して、EVAケン化物(B)25重量部、酸変性EVA(C)0重量部である。
参考例3
参考例1において、樹脂組成物の配合比を重量比にして(A)/(B)/(C)=80/9/11として用いた以外は同様にペレット状の樹脂組成物を得、MFRを評価した。
すなわち、EVOH樹脂(A)100重量部に対して、EVAケン化物(B)11重量部、酸変性EVA(C)14重量部である。
Figure 0005748489
上記の結果より、EVOH樹脂(A)とEVAケン化物(B)のみで酸変性EVA(C)を配合量しなかった比較例1においては、サージングがかなり認められ、得られたペレットの形状が不均一であった。また、ストランド切れが頻発し、復旧作業を頻繁に行ったため、生産効率が非常に低い結果となった。
これに対して、EVOH樹脂(A)とEVAケン化物(B)の存在下で、酸変性EVA(C)をEVOH樹脂(A)100重量部に対して4重量部配合した実施例1においては、サージングの発生が抑えられ形状が均一なペレットが得られ、かつストランド切れが抑制されたため、生産効率が非常に良い結果となった。
一方、EVOH樹脂(A)とEVAケン化物(B)の存在下で、酸変性EVA(C)をEVOH樹脂(A)100重量部に対して14重量部配合した参考例3においては、酸変性EVA(C)と、EVOH樹脂(A)およびEVAケン化物(B)とが反応しすぎたためか、MFRが2.1g/10分と非常に高粘度となり、溶融成形樹脂として取り扱いにくい結果となった。
以上の結果より、EVOH樹脂(A)とEVAケン化物(B)の存在下で、酸変性EVA(C)をEVOH樹脂(A)100重量部に対して重量部含有する本発明の樹脂組成物は、高吐出量の押出機においても優れた生産性で生産が可能であり、得られた樹脂組成物はMFRが溶融成形に非常に適するという顕著な効果が得られることがわかる。
なお、EVOH樹脂(A)100重量部に対して、EVAケン化物(B)21重量部、酸変性EVA(C)4重量部配合した実施例1における樹脂組成物を用いた場合、製造時にストランド切れもなく、MFRが最も好ましい範囲となり、最も良好な結果となった。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、樹脂組成物のムラをなくし、製造時のサージングやストランド切れを解消し、生産性をあげることができるため有用である。更に本発明の樹脂組成物は溶融成形に最適なメルトフローレートの樹脂組成物となる。
従って、本発明の樹脂組成物の製造方法および樹脂組成物を用いた場合、形状が良好なペレットやフィルム等の溶融成形品を生産性良く得ることができ、特にサイレージフィルムとして好適に用いることができる。

Claims (2)

  1. エチレン含有量20〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(A)とエチレン含有量70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(B)を、吐出量100〜500kg/hrの押出機で溶融混練するにあたり、上記(A)100重量部に対して、カルボキシル基含有エチレン−酢酸ビニル系共重合体(C)を2〜5重量部含有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
  2. エチレン含有量20〜60モル%のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(A)100重量部に対してエチレン含有量70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル系共重合体ケン化物(B)を10〜40重量部含有する請求項1記載の樹脂組成物の製造方法。
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