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JP5746959B2 - フッ素ゴム組成物およびそれを用いた複合シール部材 - Google Patents

フッ素ゴム組成物およびそれを用いた複合シール部材 Download PDF

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Description

本発明は、各種工業分野でシール材として使用されるフッ素ゴム組成物およびそれを用いた複合シール部材に関し、特に、耐熱水性に優れたフッ素ゴム組成物およびそれを用いた複合シール部材に関する。
従来より各種の工業分野で使用されるガスケット、パッキンなどのいわゆるシール材は、金属や樹脂などの基体に、ゴムを加硫接着させた複合シール部材として市場に提供されることが一般的である。
このような複合シール部材は、使用環境に応じた種々の特性が要求されており、その要求特性のひとつに耐熱水性がある。
耐熱水性を有するシール材を考えた場合、用いるゴム材料として、まず最初に挙げられるのはフッ素ゴムである。フッ素ゴムは他のゴムと比較して耐熱性が非常に優れているためである。
フッ素ゴムは、その架橋手法としてポリオール架橋可能なものと、パーオキサイド架橋可能なものとの2つに大別され、熱に対してより耐性があるものは、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムであると言われている。
そして、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムを用いて金属部材(または樹脂部材)と加硫接着させる場合には、シラン系接着剤を介在させることが接着性等を向上させるために好ましいとされている。
しかしながら、一般に、シラン系接着剤は、耐熱水性が十分でないといわれている。そのため、当該接着剤を介して接合構成されるパーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムと金属部材(または樹脂部材)との複合シール部材は、耐熱水性が要求される環境下での使用は、あまり積極的であるとは言えなかった。そのため、耐熱水性が要求される環境下での使用は、むしろポリオール架橋可能なフッ素ゴムと、当該ゴムと接着性の相性が良くしかも耐熱水性が良いとされるエポキシ系接着剤が主流として使用されているのが現状である。
特開2010−202804公報
しかしながら、ポリオール架橋可能なフッ素ゴムを用いたものでは、そのゴム自体の耐熱水性が十分であると言えず、さらなる耐熱水性を向上させた新規なフッ素ゴム組成物およびそれを用いた複合シール部材の提案が望まれている。なお、適度なゴム硬度や弾性を有し、良好なシール性を備えることも勿論要求される。
このような実状のもとに本発明は、創案されたものであり、その目的は、良好なシール性を備えることはもとより、熱水中で十分な耐久性を有する(いわゆる耐熱水性に優れる)フッ素ゴム組成物およびそれを用いた複合シール部材を提供することにある。
すなわち、本発明は、金属部材または樹脂部材と、接着剤層を介して接合して用いられるフッ素ゴム組成物であって、当該フッ素ゴム組成物は、種の単量体を共重合させて得られるパーオキサイド架橋タイプのフッ素ゴム100重量部と、カーボンブラック55〜90重量部と、ゴム硬度の調整用としての液状フッ素ゴムと、を含有し、デュロA(Duro-A)硬度が70〜80であり、前記カーボンブラックの平均粒子径は240〜320nmであり、前記液状フッ素ゴムは、常温で液体のフッ素ゴムであり、架橋しないゴム成分としての物性を備えてなるように構成される。
また、本発明のフッ素ゴム組成物の好ましい態様として、前記パーオキサイド架橋タイプのフッ素ゴムは、フッ化ビニリデン(VDF)と、テトラフルオロエチレン(TFE)と、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とを共重合して得られる三元系共重合体のフッ素ゴムから構成される。
また、本発明のフッ素ゴム組成物の好ましい態様として、前記カーボンブラックは、サーマルブラックから構成される。
本発明は、金属部材の基体の上に、接着剤層を介して前記記載のフッ素ゴム組成物を接合してなる複合シール部材であって、前記接着剤層は、基体との接合面に形成されたフェノール系接着剤層と、フッ素ゴム組成物との接合面に形成されたビニルシラン系接着剤層を有するように構成される。
本発明は、樹脂部材の基体の上に、接着剤層を介して前記記載のフッ素ゴム組成物を接合してなる複合シール部材であって、前記接着剤層は、ビニルシラン系接着剤層を有するように構成される。また、当該複合シール部材の好ましい態様として、前記接着剤層は、フッ素ゴム組成物との接合面に形成された前記ビニルシラン系接着剤層と、基体との接合面に形成されたフェノール系接着剤層を有するように構成される。
また、本発明の複合シール部材の好ましい態様として、前記接着剤層は、前記基体側からフェノール系接着剤層/ビニルシラン系接着剤層の2層積層体からなるように構成される。
また、本発明の複合シール部材の好ましい態様として、前記ビニルシラン系接着剤層は、主成分としてビニルエトキシシランを含むように構成される。
また、本発明の複合シール部材の好ましい態様として、前記金属部材または樹脂部材の基体の接合面は、表面処理による凹凸面が形成されているように構成される。
また、本発明の複合シール部材の好ましい態様として、前記金属部材または樹脂部材の基体の接合面の最大高さ粗さRyが、5μm以上であるように構成される。
また、本発明の複合シール部材の好ましい態様として、前記樹脂部材がポリフェニレンサルフィド樹脂(PPS)であるように構成される。
本発明のゴム組成物は、金属部材または樹脂部材と、接着剤層を介し接合して用いられるフッ素ゴム組成物であって、当該フッ素ゴム組成物は、2種以上の単量体を共重合させて得られるパーオキサイド架橋タイプのフッ素ゴム100重量部と、カーボンブラック55〜90重量部と、を含有し、DuroA硬度が70〜80であるように構成されているので、良好なシール性を備えることはもとより、熱水中で十分な耐久性を有する(いわゆる耐熱水性に優れる)という効果が発現する。
特に、本発明のフッ素ゴム組成物は、カーボンブラック55〜90重量部を含有しているので、ゴム本体そのものが熱水バリア的な作用を奏する。従って、金属部材または樹脂部材の基体の上に、接着剤層を介してフッ素ゴム組成物を接合した複合シール部材の構成に基づく耐熱水性を考察した場合、接合界面における耐熱水性が失われる大きな原因は、ゴム本体の内部を通過した熱水が接合界面をアタックすることが主要因であろうと推測されるに至っている。そのため、接合界面における側面からのアタックはほとんど無視することができる。それは、接着層の膜厚が極めて薄いこと、および接合面の凹凸によって、その側面近傍は実質的にフッ素ゴム組成物に覆われてブロックされている状態となっていると見做すことができるからである。
図1は、本発明の複合シール部材の構成をシンプル化させて描いた概略斜視図であり、金属部材または樹脂部材の基体の上に、接着剤層を介してフッ素ゴム組成物を接合させた複合シール部材の概略斜視図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明のフッ素ゴム組成物は、本発明の複合シール部材の構成の主要部となるものである。従って、まず最初に、本発明のフッ素ゴム組成物を含む複合シール部材の好適な態様例を、図1を参照しつつ説明する。
〔本発明の複合シール部材の構造の説明〕
図1には、本発明の複合シール部材10の構成を特にシンプル化させて描いた概略斜視図が示される。図1に示されるように、本発明の複合シール部材10は、金属部材または樹脂部材から構成される基体20の上に、接着剤層30を介してフッ素ゴム組成物40(ゴム層40)が接合された構成を有している。なお、図1の二点鎖線で示される部材は、後述するテストピースを作製する際に使用される円盤であり、以下の実施例の構成説明では、無視して頂きたい。
以下、各構成要件ごとに説明する。
<フッ素ゴム組成物40(ゴム層40)の説明>
本発明におけるフッ素ゴム組成物40(ゴム層40)は、2種以上の単量体(特に2種または3種の単量体が好ましい)を共重合させて得られるパーオキサイド架橋タイプ(架橋剤としてパーオキサイドが用いられる)のフッ素ゴムを主成分とする。
フッ素ゴムの具体例としては、フッ化ビニリデン /テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/フッ化ビニリデン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/フッ化ビニル共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/トリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/ペンタフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン共重合体等の三元系共重合体や;フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体等の二元系共重合体が挙げられる。
これらの中でも特に、フッ化ビニリデン(VDF)と、テトラフルオロエチレン(TFE)と、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とを共重合して得られる三元系共重合体、またはテトラフルオロエチレン(TFE)と、プロピレン(P)とを共重合して得られる二元系共重合体のフッ素ゴムを用いることが好ましい。
フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体の共重合組成については、50/5/45〜65/30/5(モル比)が好ましい。テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体の共重合組成については、40/60〜60/40(モル比)が好ましい。
フッ素ゴムの架橋剤としては、上述したように、パーオキサイド(有機過酸化物)が用いられる。パーオキサイド(有機過酸化物)の架橋剤により架橋されるタイプのゴムが特に耐熱水性に優れるからである。本発明でいうパーオキサイド架橋タイプのフッ素ゴムとは、架橋剤としてパーオキサイドを用いることを前提とする趣旨である。
具体的な架橋剤としては、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサンー2,5−ジヒドロパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α−α´−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が挙げられる。このような架橋剤の含有量は、フッ素ゴム100重量部に対して、0.1〜5重量部程度とされる。
本発明におけるフッ素ゴム組成物は、架橋助剤を含有することが好ましい。具体的架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアネート、トリアリルイソシアネート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、ジプロパルギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタールアミド、トリアリルホスフェート等が挙げられる。このような架橋助剤の含有量は、フッ素ゴム100重量部に対して、0.1〜15重量部程度とされる。
本発明のフッ素ゴム組成物は、カーボンブラックを含有しており、その含有量は、フッ素ゴム100重量部に対して、55〜90重量部、より好ましくは55〜65重量部とされる。
この含有量が90重量部を超えると、ゴム自体の硬度が極度に増大し始め、後述する硬度調整のために液状フッ素ゴムの添加量を多量に用いなければならず、ゴムとしての必要な強度および弾性が劣化し、実用に供することが極めて困難となる傾向が生じる。また、含有量が55重量部未満となってしまうと、本願の目的である良好なシール性と耐熱水性の両方の特性が同時に得られないという不都合が生じる。
用いられるカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等が挙げられる。このようなカーボンブラックとしては、平均粒子径15〜350nm、比表面積7〜150m2/gの範囲のものが好適に使用可能である。特に、後述する液状フッ素ゴムの使用適量領域に合わせ易くゴム硬度の調整の簡便化を図るためには、平均粒子径240〜320nm、比表面積7〜11m2/gの範囲のサーマルブラックを用いるのが好適であるが、必ずしも、この範囲の物性のものに限定されるわけではない。
さらに、本発明のフッ素ゴム組成物には、液状フッ素ゴムが含有される。液状フッ素ゴムとは、常温で液体のフッ素ゴムであり、ソリッドのフッ素ゴムの加工性改良や低硬度化などの用途に使用される。また、液状フッ素ゴムは、架橋しないゴム成分である。特に、本発明においては、シール部材として適切な範囲のゴム硬度を維持・調整するために使用される。すなわち、一般的な使用量と掛け離れて過多に添加されるカーボンブラックによって高硬度化されたゴムを、適切な範囲までに下げる作用を奏させるために含有される。
従って、本発明のフッ素ゴム組成物は、通常、使用されない多量のカーボンブラックが含有させているにもかかわらず、デュロA(Duro-A)硬度が70〜80の範囲を満たし、シール部材として適切な弾性・硬さを維持することができる。
このような液状フッ素ゴムは、一般に、水に不溶であり、低級のケトンやエステルに可溶の溶解性を有する。具体的な製品名の一例として、「ダイエル(登録商標)G−101」を挙げることができる。
このような液状フッ素ゴムの含有量は、カーボンブラックの含有量やそれに伴うゴム硬度等を考慮しつつ適宜、設定することができる。液状フッ素ゴムの含有量があまりに多くなり過ぎると、ゴム弾性が失われてしまい、シール材としての本来のゴム機能がなくなってしまうという不都合が生じる。
その他の添加剤として、充填剤(カーボンブラックを除く)、滑剤等の加工助剤、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤等を含有させてもよい。
充填剤としては、例えば、フッ素樹脂、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。加工助剤としては、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等が挙げられ、特に、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩が好ましい。
本発明に用いられるフッ素ゴム組成物の製造方法としては、例えば、フッ素ゴム、液状フッ素ゴム、カーボンブラック、架橋剤、架橋助剤、その他の添加剤を配合・添加した後、ニーダー等の混練機を用いて混練すればよい。
<金属部材または樹脂部材の基体20の説明>
基体20として用いられる金属部材または樹脂部材の選定は、特に制限されるものではない。すなわち、金属部材としては各種の金属あるいは合金が使用され、樹脂部材としては、各種の熱可塑性樹脂、熱ないし光硬化性樹脂等が使用され得る。ただし、ゴム加硫のための加熱温度等を考慮すれば、樹脂部材のなかでは、いわゆる耐熱性樹脂が好ましい。
金属部材または樹脂部材の基体の接合面は、表面処理による凹凸面が形成されていることが好ましい。上述したように接合面の凹凸の形成によって、その側面近傍は実質的にフッ素ゴム組成物に覆われてブロックされている状態となっていると見做すことができ、側面からの耐熱水性が向上するからである。特に、表面処理面の最大高さ粗さRyが、5μm以上(特に、9〜15μm程度)に設定されることが好ましい。なお、最大高さ粗さRyは、粗さ曲線の山高さRpの最大値と谷高さRvの最大値の和であり、本発明では表面粗さ計(東京精密(株)製サーフコム2800E)を使用して測定する。
<接着剤層30の説明>
金属部材または樹脂部材の基体20の上には、接着剤層30が形成され、この上に、上術したフッ素ゴム組成物40が接合される。
接着剤層30は、本実施の形態ではフェノール系接着剤層31(下塗り層)/ビニルシラン系接着剤層35(上塗り層)の2層積層体からなり、基体20との接合面にフェノール系接着剤層31を設け、フッ素ゴム組成物40との接合面にビニルシラン系接着剤層35を設けるように構成することが好ましい。
なお、樹脂部材の基体を用いる場合は、フェノール系接着剤層31を設けることなく、ビニルシラン系接着剤層35のみの1層構成にすることができる。
フェノール系接着剤層31はいわゆる下塗り剤(プライマー)としての機能を有するものであり、上述のごとく金属部材または樹脂部材の基体20側に形成される。フェノール系接着剤層31としては、好適な具体的商品としてメタロックPH−50が例示できる。
ビニルシラン系接着剤層35としては、塗布の段階で、ビニルアルコシキシランを主成分として含有するものが好ましく、特に、ビニルトリエトキシシランを主成分とするものが好ましい。例えば、塗布液としてビニルトリエトキシシラン10〜20%がエタノール溶液に含有されるものが例示できる。ビニルシラン系接着剤層35としては、好適な具体的商品として、CILBOND R−6829(新商品名 CINBOND 36と同義)が例示できる。
以下、具体的な実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
<実施例1サンプルの作製>
(フッ素ゴム)
フッ素ゴムとして下記の2種類を準備した。
・タイプ1:フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン3元共重合体(商品名「テクノフロンP−757」;ソルベイソレクシス社製)
・タイプ2:テトラフルオロエチレン/プロピレン2元共重合体(商品名「アフラス150P」;旭硝子社製)
実施例1では、上記の2種の中で、タイプ1の3元共重合体を用いた。
(液状フッ素ゴム)
・ダイエルG−101(ダイキン工業社製)
(カーボンブラック)
・サーマックスN990(cancarb 社製);平均粒子径280nm
(架橋剤)
・パーカドックス((化薬アクゾ社製);1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン)
(架橋助剤)
・TAIC:日本化成社製、トリアリルイソシアネート
上記の配合用の原料を用いて、下記表1に示される配合内容で、ゴムコンパウンドを得た。
次いで、φ12mm、厚さ6mmの円盤と、その下部にφ15.8mm、厚さ4mmの円盤(図1の二点鎖線で示される部材)を一体化した形状のステンレス鋼板(SUS)を、金属部材からなる基体20として準備し、当該接続面である円形表面をサンドブラスト処理し、次いでアルカリ洗浄により脱脂処理することにより粗面化処理した。
表面処理面の最大高さ粗さRyは、10.8μmであった。
上記処理後のステンレス鋼板(SUS)の接続面である円形表面の全体に下塗り剤としてのプライマー(「メタロックPH−50」:東洋化学社製)を塗布した後、160℃、15分の焼付け処理を行なった。このような下塗り層の上にビニルシラン系の接着剤(CILBOND R−6829)を塗布形成し、150℃、20分での焼き付け処理を行なった。
このように形成された上塗り層の上に、上記のゴムコンパウンドを接着させた後、一次加硫170℃、10分、二次加硫200℃、4時間の処理を行なって本願の複合シール部材を得た。
なお、後述する接着強度試験を行なうために、ゴムコンパウンドを接着剤層を介して2つのステンレス鋼板(SUS)で挟んだ形態のテストピース、すなわち、ステンレス鋼板(SUS)/下塗り層/上塗り層/ゴムコンパウンド(フッ素ゴム組成物)/上塗り層/下塗り層/ステンレス鋼板(SUS)からなるテストピースを作製した。
<他の実施例および比較例サンプルの作製>
上記実施例1のサンプル作製に準じ、下記表1に示されるような配合要領で、実施例サンプルおよび比較例サンプルを作製した。なお下記表1に示される配合内容からも分かるように、各実施例および比較例において、ゴムコンパウンド(フッ素ゴム組成物)、上塗り層/下塗り層の配合は、適宜変更されている。
さらに、他の実験サンプル構成例として、下記表1に記載のフッ素ゴム組成物(実施例サンプル1〜8、比較例サンプル1〜3、および参考例2)について、基体をステンレス鋼板(SUS)からポリフェニレンサルフィド樹脂(PPS)へ変更した以外は、上記の方法に準じ、ポリフェニレンサルフィド樹脂(PPS)/下塗り層/上塗り層/ゴムコンパウンド(フッ素ゴム組成物)/上塗り層/下塗り層/ポリフェニレンサルフィド樹脂(PPS)からなるテストピースを作製した。この時のポリフェニレンサルフィド樹脂(PPS)の表面処理面の最大高さ粗さRyは、9.2μmであった。
作製した各サンプルについて、下記の要領で、(1)ゴム残存率(%)、(2)デュロA(Duro-A)硬度、(3)引張強さ(MPa)、および(4)伸び(%)のゴム物性を求めた。
<ゴム物性の測定>
(1)ゴム残存率(%)
上述したようにフッ素ゴム組成物を、接着剤層を介して2つの円盤状の基体(ステンレス鋼板(SUS)またはポリフェニレンサルフィド樹脂(PPS))で挟んだ形態のテストピースを作製し、当該テストピースを100℃の熱水中に168時間浸漬させた。
しかる後、フッ素ゴム組成物の上面と下面にそれぞれ接着された円盤状の基体を引っ張り試験機に固定し、上下に徐々に引っ張った。ゴムが分断した後、基体にゴム切断面がどのくらいの割合で残っているかを調べた(ゴム残存率の測定)。ゴム残存率100%は、ゴムと基体の接着界面が100%ゴムに覆われている状態であり、ゴム残存率0%は、ゴムが基体の表面箇所から外れた状態である。
ゴム残存率の評価内容は以下の3段階とした。
◎…ゴム残存率80%以上
○…ゴム残存率70%以上80%未満
×…ゴム残存率70%未満
本発明のゴム残存率の目標値は、70%以上である。
(2)デュロA(Duro-A)硬度
JIS K6253に基づいて求めた。
本発明の目標値は、70〜80の範囲である。
(3)引張強さ(MPa)
JIS K6251に基づいて試験値を求めた。
本発明の目標値は、15MPa以上である。
(4)伸び(%)
JIS K6251に基づいて試験値を求めた。
本発明の目標値は、230%以上である。
なお、上記の(2)デュロA(Duro-A)硬度、(3)引張強さ(MPa)、(4)伸び(%)の値は、100℃の熱水中に168時間浸漬させるという処理の前に測定した値である。
実験結果を下記表1に示した。
Figure 0005746959
Figure 0005746959
<基体による接着性比較試験(参考例2の説明)>
表1に記載の実施例4に係るフッ素ゴム組成物(カーボンブラック量:70重量部)について、基体をステンレス鋼板(SUS)のものと、ポリフェニレンサルフィド樹脂(PPS)のもの、それぞれを用いたテストピースを作製した。この時、接着剤層は1層とした。
具体的には、基体の接続面に上記で用いたビニルシラン系の接着剤(CILBOND R−6829)を塗布し、160℃、15分の焼付け処理をした後、さらなる接着剤による処理をしなかった。つまり、ビニルシラン系の接着剤の一層の接着剤層とした。それ以外は、上記実施例と同様の方法により、基体/接着剤層(1層)/ゴムコンパウンド(フッ素ゴム組成物)/接着剤層(1層)/基体、という積層構成のテストピースを、ステンレス鋼板(SUS)のものと、ポリフェニレンサルフィド樹脂(PPS)のもの、それぞれについて作製した。
上記で作製したテストピース2種を100℃の熱水中に168時間浸漬させ、上記同様の接着性試験を行った。結果を表1(参考例2)に示す。
上記の実験により、ステンレス鋼板(SUS)の金属部材からなる基体20に代えて、ポリフェニレンサルフィド樹脂(PPS)等の樹脂材料からなる耐熱性樹脂の基体20を用いた場合、より良好な実験結果が得られることが確認された。
上記に示される実験結果より、本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明のゴム組成物は、金属部材または樹脂部材と、接着剤層を介し接合して用いられるフッ素ゴム組成物であって、当該フッ素ゴム組成物は、2種以上の単量体を共重合させて得られるパーオキサイド架橋タイプのフッ素ゴム100重量部と、カーボンブラック55〜90重量部と、を含有し、DuroA硬度が70〜80となるように構成されているので、良好なシール性を備えることはもとより、熱水中で十分な耐久性を有する(いわゆる耐熱水性に優れる)という効果が発現する。
耐熱水性が要求されるフッ素ゴム組成物およびそれを用いた複合シール部材の工業分野に利用可能である。
10…複合シール部材
20…基体
30…接着剤層
31…フェノール系接着剤層(下塗り層)
35…ビニルシラン系接着剤層(上塗り層)
40…フッ素ゴム組成物

Claims (11)

  1. 金属部材または樹脂部材と、接着剤層を介して接合して用いられるフッ素ゴム組成物であって、
    当該フッ素ゴム組成物は、種の単量体を共重合させて得られるパーオキサイド架橋タイプのフッ素ゴム100重量部と、
    カーボンブラック55〜90重量部と、
    ゴム硬度の調整用としての液状フッ素ゴムと、を含有し、
    デュロA(Duro-A)硬度が70〜80であり、
    前記カーボンブラックの平均粒子径は240〜320nmであり、
    前記液状フッ素ゴムは、常温で液体のフッ素ゴムであり、架橋しないゴム成分としての物性を備えてなることを特徴とするフッ素ゴム組成物。
  2. 前記パーオキサイド架橋タイプのフッ素ゴムは、フッ化ビニリデン(VDF)と、テトラフルオロエチレン(TFE)と、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とを共重合して得られる三元系共重合体のフッ素ゴムである請求項1に記載のフッ素ゴム組成物。
  3. 前記カーボンブラックは、サーマルブラックである請求項1または2に記載のフッ素ゴム組成物。
  4. 金属部材の基体の上に、接着剤層を介して請求項1ないし請求項のいずれかに記載のフッ素ゴム組成物を接合してなる複合シール部材であって、
    前記接着剤層は、前記基体との接合面に形成されたフェノール系接着剤層と、前記フッ素ゴム組成物との接合面に形成されたビニルシラン系接着剤層を有するように構成されてなることを特徴とする複合シール部材。
  5. 樹脂部材の基体の上に、接着剤層を介して請求項1ないし請求項のいずれかに記載のフッ素ゴム組成物を接合してなる複合シール部材であって、
    前記接着剤層は、ビニルシラン系接着剤層を有するように構成されてなることを特徴とする複合シール部材。
  6. 前記接着剤層は、前記フッ素ゴム組成物との接合面に形成された前記ビニルシラン系接着剤層と、前記基体との接合面に形成されたフェノール系接着剤層を有するように構成されてなる請求項に記載の複合シール部材。
  7. 前記接着剤層は、前記基体側から前記フェノール系接着剤層/前記ビニル系接着剤層の2層積層体である請求項または請求項に記載の複合シール部材。
  8. 前記ビニルシラン系接着剤層は、主成分としてビニルエトキシシランを含む請求項4ないし請求項7のいずれかに記載の複合シール部材。
  9. 前記金属部材または前記樹脂部材の基体の接合面は、表面処理による凹凸面が形成されている請求項ないし請求項のいずれかに記載の複合シール部材。
  10. 前記金属部材または前記樹脂部材の基体の接合面の最大高さ粗さRyが、5μm以上である請求項に記載の複合シール部材。
  11. 前記樹脂部材がポリフェニレンサルフィド樹脂(PPS)である請求項ないし請求項10のいずれかに記載の複合シール部材。
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