JP5744816B2 - サブマージアーク溶接用ボンドフラックス - Google Patents
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Description
本発明のボンドフラックスは、MgOが30〜40質量%でもよい。
また、Al2O3が10〜20質量%でもよい。
更に、CaF2が10〜20質量%でもよい。
更にまた、金属Si、Si合金及びSi酸化物の総含有量(Si換算値)と、金属Ti、Ti合金及びTi酸化物の総含有量(Ti換算値)との比(総Si量/総Ti量)は5〜10でもよい。
MgOは、塩基度を高めると共に、脱酸剤として溶接金属中の酸素を抑える働きをするため、酸素低減に効果がある。しかしながら、フラックス中のMgO量が25質量%未満の場合、前述した酸素低減効果が得られない。一方、フラックス中のMgO量が45質量%を超えると、スラグ剥離性及びビード外観が劣化する。よって、MgO含有量は25〜45質量%とする。なお、MgO含有量は30〜40質量%であることが好ましく、これにより溶接金属中の酸素量低減効果、スラグ剥離性及びビード外観を更に高めることができる。
Al2O3は、スラグ形成剤として作用すると共に、アークの集中性及び安定性を高める効果もある。しかしながら、フラックス中のAl2O3量が5質量%未満の場合、アークが不安定化し、溶接が困難になる。一方、フラックス中のAl2O3量が25質量%を超えると、溶接金属中の酸素量が増加し、靭性が劣化する。よって、Al2O3含有量は5〜25質量%とする。なお、Al2O3含有量は10〜20質量%であることが好ましく、これによりアーク安定性が向上すると共に、溶接金属の靭性を高めることができる。
CaF2には、一般的に知られている生成スラグの融点を調整し、ビードのなじみ及び外観を改善するという作用と共に、溶接金属中の酸素量を低減させる効果もある。しかしながら、フラックス中のCaF2量が5質量%未満の場合、前述した効果が得られない。一方、フラックス中のCaF2量が25質量%を超えると、アークが不安定になり、ビード形状が劣化すると共に、ビード上にポックマークが発生することがある。よって、CaF2含有量は5〜25質量%とする。なお、生成スラグの融点調整によるビードのなじみ性改善効果、溶接金属中の酸素量低減効果、アーク安定性及びビード外観向上の観点から、CaF2含有量は10〜20質量%であることが好ましい。
金属炭酸塩は、溶接熱によりガス化し、アークを大気から遮断(シールド)して溶接金属中の酸素量を低下させる効果がある。しかしながら、フラックス中の金属炭酸塩量が、CO2換算で2質量%未満の場合、前述した効果が発揮されない。一方、フラックス中の金属炭酸塩量が、CO2換算で10質量%を超えると、スラグの剥離性が低下し、ビード上にポックマークが発生するなどして、ビード外観を劣化させる。よって、金属炭酸塩含有量は、CO2換算で2〜10質量%とする。なお、本実施形態のボンドフラックスに添加される金属炭酸塩としては、例えばCaCO3及びBaCO3などが挙げられる。
CaO及びBaOは、MgOと同様に、塩基度を高め、溶接金属中の酸素低減に効果がある。しかしながら、CaO及びBaOの総含有量が2質量%未満の場合、前述した効果が発揮されず、また、CaO及びBaOの総含有量が10質量%を超えると、アーク安定性及びビード外観が劣化する。よって、CaO及びBaOは、いずれか一方又は両方を、合計で2〜10質量%となるように添加する。
金属Si及びSi合金は溶接金属中の酸素量を抑制する脱酸効果を有し、Si酸化物はスラグ形成剤としてビード外観及びビード形状を整える作用がある。ただし、ボンドフラックスにおけるこれらの総含有量(総Si量)が、Si換算で2質量%未満の場合、前述した脱酸効果やスラグ形成剤としての効果が発揮されない。一方、金属Si、Si合金及びSi酸化物の総含有量(総Si量)が、Si換算で10質量%を超えると、溶接金属中の酸素量が増加して靭性が低下する。
本実施形態のボンドフラックスでは、前述した金属Si、Si合金及びSi酸化物の総含有量と共に、金属Si及びSi合金の総含有量も規定する。具体的には、金属Si及びSi合金の総含有量を、Si換算で0.3〜2.0質量%の範囲にする。これは、金属Si及びSi合金の総含有量がSi換算で0.3質量%未満の場合、前述した脱酸効果が得られず、また、2.0質量%を超えると、脱酸効果が向上しなくなり、溶接金属の靭性が劣化すると共に強度が高くなり過ぎるからである。
金属Ti及びTi合金は、前述した金属Si及びSi合金と同様に、溶接金属中の酸素量を抑制する脱酸効果を有し、更に、溶接金属の微細化に関わり低温靭性の向上に非常に有効である。一方、Ti酸化物は、スラグ形成剤としてスラグの粘性や流動性を調整し、ビードの外観となじみを改善する効果がある。
前述したように、金属Si、Si合金、金属Ti及びTi合金は、溶接金属中の酸素量を抑える脱酸効果を持つとと共に、凝固過程における酸化反応により、酸化物としてスラグ形成に関与する。また、Si酸化物やTi酸化物は、スラグ形成剤としての効果を有する。
金属B、B合金及びB酸化物は、溶接金属中で、冷却時にオーステナイト粒界に生成する初析フェライトを抑制して焼入性を高め、溶接金属の靭性を向上させる効果がある。ただし、金属B、B合金及びB酸化物の総含有量が、B換算で0.05質量%未満の場合、前述した溶接金属の靭性向上の効果が得られず、また、0.3質量%を超えると、靭性が劣化する。
Sは、溶融池の表面エネルギーを下げ、溶接作業性、特に開先面でのなじみを良好にして、ビード外観及び止端形状を整える効果がある。しかしながら、フラックス中のS量が0.005質量%未満の場合、前述した効果が発揮されず、疲れ強さが低下する。一方、フラックス中のS量が0.15質量%を超えると、延性及び靭性が劣化する。なお、Sは硫化鉄鉱などの形態で添加することができる。
金属Al及びAl合金は、一般に、溶接金属中の酸素量を抑える脱酸剤として、フラックスに添加される。しかしながら、これら金属Al及びAl合金には、溶接金属中に粗大なAl系酸化物を形成して溶接金属の靭性を劣化させることに加えて、前述した金属Si、Si合金、金属Ti及びTi合金の酸化反応を阻害し、溶接金属の強度を過度に上昇させる作用もある。
図1は溶接試験で用いた試験片の開先形状を示す図である。溶接試験では、板厚25mmの溶接構造用圧延鋼材(JIS G3106 SM400B)を、図1に示すV開先に加工し、溶接条件を500〜650A−26〜30V−30cpm(ワイヤ径:4.8mmφ、予熱・パス間温度:150℃)として、溶接を行った。その後、溶接金属から引張試験片(JIS Z3111 A2号)、シャルピー衝撃試験片(JIS Z3111 V ノッチ)を採取し、各種試験を実施した。
Claims (5)
- MgO:25〜45質量%、
Al2O3:5〜25質量%、
CaF2:5〜25質量%、
金属炭酸塩(CO2換算):2〜10質量%、
CaO及び/又はBaO:合計で2〜10質量%、
金属Si、Si合金及びSi酸化物のうち少なくとも1種(Si換算):合計で2〜10質量%、
金属Ti、Ti合金及びTi酸化物のうち少なくとも1種(Ti換算):合計で0.4〜0.9質量%、
金属B、B合金及びB酸化物のうち少なくとも1種(B換算):合計で0.05〜0.3質量%、
S:0.005〜0.15質量%、
を含有すると共に、
金属Al及びAl合金の総含有量(Al換算値)が0.1質量%以下に規制され、
金属Si及びSi合金の総含有量(Si換算値)が0.3〜2.0質量%であり、
かつ、金属Si、Si合金及びSi酸化物の総含有量(Si換算値)と、金属Ti、Ti合金及びTi酸化物の総含有量(Ti換算値)との比(総Si量/総Ti量)が5〜15である、
サブマージアーク溶接用ボンドフラックス。 - MgOが30〜40質量%であることを特徴とする、請求項1に記載のサブマージアーク溶接用ボンドフラックス。
- Al2O3が10〜20質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のサブマージアーク溶接用ボンドフラックス。
- CaF2が10〜20質量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のサブマージアーク溶接用ボンドフラックス。
- 金属Si、Si合金及びSi酸化物の総含有量(Si換算値)と、金属Ti、Ti合金及びTi酸化物の総含有量(Ti換算値)との比(総Si量/総Ti量)が5〜10であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のサブマージアーク溶接用ボンドフラックス。
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