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JP5634042B2 - 骨再生医療材料 - Google Patents

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JP5634042B2
JP5634042B2 JP2009190977A JP2009190977A JP5634042B2 JP 5634042 B2 JP5634042 B2 JP 5634042B2 JP 2009190977 A JP2009190977 A JP 2009190977A JP 2009190977 A JP2009190977 A JP 2009190977A JP 5634042 B2 JP5634042 B2 JP 5634042B2
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Description

本発明の骨再生医用材料は、歯や骨などの欠損部に使用する生体用移植材などの構造体に関する。本発明の人工骨類再生材、特に人工歯根は、骨と早期に良好な結合を示す。本発明の人工骨類再生材は、人工歯根だけでなく、他の骨の接合時に再生材として有用である。
従来、外科手術に伴う組織切除欠損部には、周辺の組織を移植する事が多く行われており、骨切除を伴う手術による骨欠損では力学的強度を持つ補填材(医用材料)、いわゆる構造体が必要となる。欠損部への治療にはリン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイトなどの骨組織親和性充填材が用いられている。
再生医療的な観点からは、単に骨組織親和性のみならず、骨形成細胞を補填材に付着させ、周囲の骨組織との一体化が検討されている。また、構造体を多孔質構造にして、細胞を付着させたり、絡ませたり、あるいは培養技術によって構造体表面から細胞侵入を促す工夫も行われている。その具体的先行技術としては特許文献1があげられる。
この文献によれば、治療に必要十分な量の物質を材料内部に均一に拡散分布させることができる構造を有する医用材料を提供する目的で、空隙率が20〜97%である直方体状の多孔質三次元構造体と、その本体内部に形成される中空孔とから構成されている医用材料が記載されている。また、この中空孔からリン酸カルシウム、セラミックスアパタイトなどの物質および生理活性を持つ細胞や組織、蛋白、それにそれらの機能を発揮させるにふさわしい物質が導入されるというものである。
国際公開WO2006/090777
従来の医用材料を骨再生用に用いた場合に、骨が当該多孔質三次元構造体の内部へと侵入しないという問題を有していた。本発明は、骨が多孔体内部に成長し、骨と接合しやすい骨再生医療材料を提供することを目的とする。
本発明(1)は、活性水素を有するポリオールとポリイソシアネートとを反応させてな
る末端イソシアネート基を有するプレポリマーと、水系分散媒にチタン粉末を懸濁してな
るスラリーとを混合させ、反応させることにより、チタン粉末を含有するポリウレタン発
泡中間体を得た後、前記中間体に熱処理を施し、前記中間体を脱脂および焼結させることによって製造されたものであり、
複数の気泡が互いに連結してなる連続気泡を含む、前記チタン粉末が焼結してなる発泡チタン焼成体材料で構成されたものであり、前記発泡チタン焼成体材料の平均流量細孔径が20〜80μmであることを特徴とする骨再生医療材料。
本発明(2)は、前記発泡チタン焼成体材料の最大細孔径が80〜180μmであることを特徴とする、前記発明(1)の骨再生医療材料である。
本発明(3)は、前記発泡チタン焼成体材料のセル骨格形状が略三角形であり、セル骨格表面が粒子形状に凹凸していることを特徴とする、前記発明(1)又は(2)の骨再生医療材料である。
本発明(4)は、前記発泡チタン焼成体材料は、前記チタン粉末の粒子同士が連結し、三次元の網目構造を構築してなるものであることを特徴とする前記発明(1)ないし(3)のいずれかの骨再生医療材料である。
本発明(5)は、前記スラリーは、水を分散媒とし、該分散媒に平均粒径0.5〜30μmの前記チタン粉末を懸濁してなるものであり、
前記プレポリマー中の前記イソシアネート基の含有率は、3〜26質量%であり、
前記プレポリマー中のポリオールは、エチレンオキサイドユニットを少なくとも60モル%含むポリエーテル系ポリオールであることを特徴とする前記発明(1)ないし(4)のいずれかの骨再生医療材料である。
本発明(6)は、前記チタン粉末は、アトマイズ法により製造されたものであることを特徴とする前記発明(1)ないし(5)のいずれかの骨再生医療材料である。
本発明(7)は、前記発泡チタン焼成体材料が厚さ0.1〜10mmのシート形状に成形されており、前記発泡チタン焼成体材料の外周にセラミックスアパタイトがコートされている
ことを特徴とする前記発明(1)ないし(6)のいずれかの骨再生医療材料である。
本発明(8)は、前記発泡チタン焼成体材料の内部に注入する物質は生理機能を持ち、
各種細胞、骨髄細胞、骨髄液、骨髄液から分離された幹細胞、臍帯血由来細胞、末梢血由来細胞、組織細切片、各種蛋白、脂質、多糖類、酵素、抗生物質、抗菌物質、ホルモン、サイトカイン、血液凝固促進剤、細胞成長因子、遺伝子操作された細胞からの抽出物、遺伝子操作された細胞から産生される物質、血管内皮細胞増殖因子(VEGF),platelet-
inducedgrowthfactor(PIGF)、治療効果因子ベータ1(TGF.beta.1)、酸性繊維芽細胞(aFGF)、塩基性繊維芽細胞(bFGF)、治療効果因子アルファ(TGF.alph.)、上皮細胞増殖因子、オステオネクチン、アンティオポエチン(ANG1)
、ANG2、血小板由来増殖因子AB、血小板由来増殖因子BB、骨形成蛋白質(BMP
)、肝細胞増殖因子(HGF)、細胞外マトリックス、コラーゲンあるいはそれらのいずれかの複合体もしくは誘導体、等のグループから選ばれた少なくとも一つ以上であること
を特徴とする前記発明(1)から(7)のいずれかの骨再生医療材料である。
本発明(9)は、基材と、
その基材の外周にチタン粉末を焼成・連結することによって形成された、前記発明(1)ないし(8)のいずれかの骨再生医療材料からなるチタン多孔シート層を備えている人工骨類再生材である。
本発明(10)は、前記人工骨類再生材が人工歯根であることを特徴とする前記発明(
9)の人工骨類再生材である。
本発明(11)は、活性水素を有するポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなる末端がイソシアネート基を有するプレポリマーと、水系分散媒にチタン粉末を懸濁してなるスラリーとを混合させ、反応させることにより、チタン粉末を含有するポリウレタン発泡中間体を得る中間体製造工程と、発泡チタン材料の中間体に対して熱処理を施すことにより、この中間体を脱脂して脱脂体を得る脱脂工程と、脱脂体を焼結させる焼結工程とを有することを特徴とする骨再生医療材料の製造方法である。
本発明(12)は、前記発泡チタン材料の平均流量細孔径が20〜80μmであることを特徴とする、前記発明(11)の骨再生医療材料の製造方法である。
本発明(1)によれば、骨再生医療材料として用いると、骨が多孔体内部に成長し、骨と接合しやすいという効果を奏する。
本発明(2)によれば、構造体の内側にまで注入する物質を充填させることができ、各種細胞の優れた誘導性および着床性を維持することができるという効果を奏する。
本発明(3)によれば、多孔体の表面積が大きくなり、骨の生体細胞が着床する機会が増えるという効果を奏する。
本発明(4)によれば、チタン粉末粒子同士が連結し、三次元網目構造を有することにより、いかなる方向から外力を加えたとしても、立体的に広がる網目構造が応力の局所集中を防止することができる。また、セル骨格表面が粒子形状に起因する凹凸を有しているため、骨の生体細胞が付着しやすくなるという効果を奏する。
本発明(5)によれば、プレポリマーが中間体製造工程においてスラリーと接触した際に、スラリー中の水に対する十分な反応性を有するものとなるので、生成する発泡チタン材料の中間体は、適度な機械的強度と柔軟性とを併せ持つものとなり、最終的に、高い機械的強度と高い空孔率とを両立させた発泡チタン材料が得られるという効果を奏する。
本発明(6)によれば、チタン粉末が均一に懸濁したスラリーが得られ、更に、より球形に近い形状のチタン粉末を得ることができるため、チタン粉末の流動性が向上し、スラリーは流動性の高いものとなる。その結果、プレポリマーとスラリーとを混合する際の作業性向上を図ることができ、全体が均質なポリウレタン発泡中間体を得ることができるという効果を奏する。
本発明(7)によれば、骨細胞との親和性を高めることができるという効果を奏する。
本発明(8)によれば、生理機能を持つ物質を共存させることができるという効果を奏する。
本発明(9)によれば、骨が多孔体内部に成長し、他の骨に接合しやすい人工骨類再生材を提供することが可能になるという効果を奏する。
本発明(10)によれば、骨が多孔体内部に成長し、他の骨に接合しやすい人工歯根を提供することが可能であるという効果を奏する。
図1は、本最良形態に係る人工歯根の概略構成図(a)及び概略断面図(b)である。 図2は、本最良形態に係る発泡チタン材料の中間体のSEM写真(300倍)である。 図3は、本最良形態に係る発泡チタン材料のSEM写真{(a)100倍、(b)300倍}である。 図4は、比較例の繊維多孔体のSEM写真(200倍)である。 図5は、本最良形態に係る金属発泡体をラットの頭蓋骨の骨膜下に埋植し6週間後の組織像の様子を示した写真である。 図6は、比較例の繊維多孔体をラットの頭蓋骨の骨膜下に埋植し6週間後の組織像の様子を示した写真である。
《発泡チタン材料の構成》
本発明に係る骨再生医療材料は、末端イソシアネート基を有するプレポリマーと、水系分散媒にチタン粉末を懸濁してなるスラリーとを混合させ、反応させることにより、チタン粉末を含有するポリウレタン発泡中間体を得た後、前記中間体に熱処理を施し、前記中間体を脱脂および焼結させることによって製造されたものであり、複数の気泡が互いに連結してなる連続気泡を含む発泡チタン材料で構成されている。本発明の骨再生医療材料では、これらの空孔が連続して連なることが好適である。本最良形態に係る骨再生医療材料は、発泡チタン材料であり、該材料内部に中空孔、中空部を持つ事が基本となる。そのため骨芽細胞などの足場依存性細胞をはじめとする各種細胞の誘導性および着床性が優れており、細胞成長性が格段に高い。また、当該発泡チタン材料は、厚さ0.1〜10mmのシート形状に成形されていることが好適である。
平均流量細孔径が20〜80μm(好適には30〜70μm)であることが好適である。
平均流量細孔径は、ハーフドライ法(ASTM E1294−89)にて測定する。平均流量細孔径が小さいほど多孔体の表面積が大きくなり、骨の生体細胞が着床する機会が増えるという効果を奏する。製造プロセス的にウレタンフォームのセル径が小さくなるほどフォームの表面積が大きくなり、当該フォームを焼成すると、焼成後のチタン多孔体の平均流量細孔径が小さくなる。
空孔の最大細孔径が80〜180μm(好適には100〜160μm)であることが好適である。最大細孔径は、バブルポイント法(ASTM F316−86, JIS K 3832)にて測定する。即ち、当該測定法により値が得られるということは、連続気泡の物体であることが前提である。更に、最大細孔径の値は、発泡体の中における細孔の連通の程度を反映する値とも解釈できる。発泡チタン材料内部に必要十分な量の物質を注入・充填する事が細胞による組織形成促進には好都合であるが、発泡チタン材料を構成するチタン多孔体は、最大細孔径が前記の範囲であることにより、連続気泡構造を有していることが明らかで有り、注入物質を可能な限り構造体内部に均質に注入させることができる。これにより、構造体の内側にまで注入する物質を充填させることができ、各種細胞の優れた誘導性および着床性を維持することができる。
発泡チタン材料内に設けられた中空孔、中空部は単純な一本の孔ではなく、枝分かれした曲がりくねったチャネルとなっているため、中空孔、中空部を介することで治療に必要十分量の細胞成長物質等の成長因子を構造体内に均一に拡散分布させ、また、骨を再生・成長させることができる。
上述の発泡チタン材料は、使用部位に合わせた形状を持つ構造体を有することが好適である。使用部位によってそれにかかる力学的強度、細胞分布の必要度などで構造体の形状と、それを構成する素材の選択と空隙率の適正な設定を行うことが好適である。特に限定されないが、力学的強度の設計は、一般的に、前歯部では耐強度を小さく、臼歯では耐強度を大きくすることが好適である。大臼歯での咬合の場合、垂直に60kg、最大100kgといわれており、特に限定されないが、これに耐えうる強度であることが好適である。但し、前記の荷重には、発泡チタン材料の内部に骨が充填されたときに耐えることができればよい。また、骨で充実された場合、発泡チタンは、骨よりも強くなる。
尚、発泡チタン材料の引張強度は、特に限定されないが、2MPa以上が好適である。引張強度の上限は特に限定されないが、例えば、300MPa以下である。また、発泡チタン材料の引張伸びは、特に限定されないが、0.5%以上が好適である。引張伸びの上限は、特に限定されないが、例えば、40%以下である。圧縮強度(25%)は、特に限定されないが、2〜300MPaが好適である。曲げ強度は、特に限定されないが、2〜300MPaが好適である。曲げ弾性率は、特に限定されないが、100〜10,000MPaが好適である。尚、これらの数値の測定方法は実施例記載の方法による。
なお、発泡チタン材料内部への注入物質として、リン酸カルシウム、セラミックスアパタイトのいずれかを該構造体の少なくとも一部に含む事で、骨細胞との親和性を高めることができ、好都合である。
前記発泡チタン材料の内部に生理機能を持つ物質を注入することが好適である。ここで、当該物質としては、各種細胞、骨髄細胞、骨髄液、骨髄液から分離された幹細胞、臍帯血由来細胞、末梢血由来細胞、組織細切片、各種蛋白、脂質、多糖類、酵素、抗生物質、抗菌物質、ホルモン、サイトカイン、血液凝固促進剤、細胞成長因子、遺伝子操作された細胞からの抽出物、遺伝子操作された細胞から産生される物質、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、platelet-inducedgrowthfactor(PIGF)、治療効果因子ベータ1(TGF.beta.1)、酸性繊維芽細胞(aFGF)、塩基性繊維芽細胞(bFGF)、治療効果因子アルファ(TGF.alph.)、上皮細胞増殖因子、オステオネクチン、アンティオポエチン(ANG1)、ANG2、血小板由来増殖因子AB、血小板由来増殖因子BB、骨形成蛋白質(BMP)、肝細胞増殖因子(HGF)、細胞外マトリックス、コラーゲンあるいはそれらのいずれかの複合体もしくは誘導体、等のグループから選ばれた少なくとも一つ以上が挙げられる。
《発泡チタン材料の製造方法》
以下、本発明の発泡チタン材料(発泡チタン焼結体)の製造方法について、好適実施形態に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、いわゆる「発泡チタン」と呼ばれる多孔質のチタン材料を製造する方法について説明する。
発泡チタン材料の製造方法は、末端がイソシアネート基を有するプレポリマーと、水系分散媒にチタン粉末を懸濁してなるスラリーとを混合させ、反応させることにより、チタン粉末を含有するポリウレタン発泡中間体を得る中間体製造工程と、発泡チタン材料の中間体に対して熱処理を施すことにより、この中間体を脱脂して脱脂体を得る脱脂工程と、脱脂体を焼結させる焼結工程とを有する。これにより、本最良形態に係る発泡チタン材料が得られる。以下、各工程について順次説明する。
中間体製造工程
まず、発泡チタン材料の中間体の原料として、プレポリマーとスラリーとを使用する。このうち、プレポリマーは、末端にイソシアネート基を有するものである。
このようなプレポリマーは、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーであれば、いかなるものでもよいが、例えば、ポリオールと化学当量を超えるポリイソシアネート(多官能イソシアネート)と反応により生成するものが使用可能である。このようなプレポリマーは、優れた反応性と、優れた機械的特性(柔軟性及び弾力性)とを併せ持つものとなる。したがって、中間体製造工程において、プレポリマーとスラリー中に含まれる水分との反応性を高めることができ、機械的特性に優れたポリウレタン発泡中間体が得られ、最終的に、機械的特性に優れた発泡チタン材料が得られる。
ポリイソシアネートは、1分子中にイソシアネート基(−NCO)を2個以上有する化合物である。一方、ポリオールは、1分子中に活性水素基(水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基等)を2個以上有する化合物である。これらポリイソシアネートとポリオールとを混合すると、ポリイソシアネート中のイソシアネート基とポリオール中の活性水素基とが反応して、プレポリマーが形成される。
ここで、本発明で用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、トリフェニル−メタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ベンゼン−1,3,5−トリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート、ジフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシレンジイソシアネート、クロロフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、キシレン−α,α’ジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレン−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−スルホニルビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−メチレンジ−オルソ−トリイソシアネート、エチレンジイソシアネート、エチレンジイソチオシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジイソシアネート等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、これらのポリイソシアネートは、芳香族系ポリイソシアネートと脂肪族系ポリイソシアネートとに分けられる。
また、これらの中でも、ポリイソシアネートは、芳香族系ポリイソシアネートであるのが好ましい。芳香族系ポリイソシアネートは、反応性が特に高く、ポリオールと反応することによって機械的特性に優れた化合物が得られる。このため、発泡チタン材料の中間体の機械的特性及び保形性を高めることができ、最終的に、機械的強度及び寸法精度に優れた発泡チタン材料が得られる。また、芳香族系ポリイソシアネートは、安価で入手が容易であるという利点も有する。
また、本発明で用いられるポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシエチレンテトロール、ポリオキシエチレンヘキソール、ポリオキシエチレンオクトールのようなポリエーテル系ポリオール、ポリ(ブチレンアジペート)ジオールのようなアジペート系ポリオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオールのようなカプロラクトン系ポリオール等のポリエステル系ポリオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオールのようなポリカーボネート系ポリオール等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの中でも、ポリオールは、エチレンオキサイドユニットを少なくとも50モル%、より好ましくは60モル%含むポリエーテル系ポリオールであるのが好ましい。ポリエーテル系ポリオールは、エーテル鎖を含んでいるため屈曲性に富み、低温特性に優れている。また、エチレンオキサイドユニットを少なくとも50モル%を含むポリエーテル系ポリオールは、親水性のエチレンオキサイドユニットを含むため、得られるプレポリマーは親水性を示し、多量の水分を含むスラリーとの混合が容易となり、また水との反応及び発泡安定性に優れる。エチレンオキサイドユニットが60モル%であれば、より親水性となるのでより好ましい。更に、ポリエーテル系ポリオールは、酸化による分子鎖の切断が起き易いことから、熱分解によって容易に除去することができる。これにより、速やかな脱脂が可能な発泡チタン材料の中間体を得ることができる。
また、このようなポリオールの重量平均分子量は、特に限定されないが、200〜20000程度であるのが好ましく、600〜6000程度であるのがより好ましい。
さらに、発泡チタン材料の中間体が三次元網目構造の発泡体を構成できるようにするため、前記イソシアネート基末端プレポリマーの製造には、架橋剤として、多官能性であってかつイソシアネート基と反応性を有するものを使用してもよい。そのような架橋剤として、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリレン−2,4,6−トリアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ヒドラジントリエタノールアミン、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、ニトリロトリ酢酸、クエン酸、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)等が挙げられ、更にいわゆるポリオールを使用してイソシアネート基と反応させてもよい。それらの中でも、グリセリン、トリメチロールプロパンが好ましいものである。
また、プレポリマーにおいて、ポリイソシアネート中のイソシアネート基のモル数は、ポリオール中の活性水素基のモル数に対して、1.1〜10倍程度であるのが好ましく、1.5〜5倍程度であるのがより好ましい。これにより、プレポリマー中において活性水素基よりイソシアネート基が確実に過剰な状態となる。その結果、プレポリマーは、イソシアネート基を末端に有するプレポリマーとすることができ、中間体製造工程において、スラリー中の水に対して確実に反応することができる。尚、ポリオール中の活性水素基としては、前述したように、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基等が挙げられる。このようなポリイソシアネートとポリオールとを反応させることによりプレポリマーが作製されるが、この反応は、イソシアネート基が空気中の水分と反応しないようにするため不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましく、具体的には、窒素ガス、アルゴンガス雰囲気下で行うのが好ましい。
また、ポリイソシアネートとポリオールとの混合・反応は、ポリイソシアネートとポリオールとを各種混合機、各種攪拌機等に投入し、混合・攪拌することによって行われる。
尚、ポリイソシアネートとポリオールとを混合する際の温度は、特に限定されないものの、好ましくは、40〜140℃程度、より好ましくは、50〜120℃程度とされる。また、混合時間は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10時間程度、より好ましくは1〜5時間程度とされる。
以上のようにしてプレポリマーが得られる。
尚、本発明で用いられるプレポリマーは、前述したように、末端イソシアネート基を有していればよいが、このイソシアネート基の割合(NCO%)は、プレポリマーの全質量を基準として、3〜26質量%程度であるのが好ましく、5〜15質量%程度であるのがより好ましい。これにより、プレポリマーは、中間体製造工程においてスラリーと接触した際に、スラリー中の水に対する十分な反応性を有するものとなる。また、このプレポリマーとスラリー中の水との反応により生成する発泡チタン材料の中間体は、適度な機械的強度と柔軟性とを併せ持つものとなり、最終的に、高い機械的強度と高い空孔率とを両立させた発泡チタン材料が得られる。
一方、スラリーは、チタン粉末と水とを含む液体、換言すれば、水系分散媒にチタン粉末を懸濁(分散)してなる分散液である。
このうち、チタン粉末は、最終的に発泡チタン材料を構成するチタン材料の原料となる粉末である。またここで、チタンとは、純チタンのみならず、酸化チタン、チタン合金も含まれる。
ここで、本発明では、金属粉末を分散する分散媒として水を使用することから、用いる金属粉末として、水によるイオン化または酸化による変質が起こり難いことが好ましい。具体的には、例えばK、Ca、Na等イオン化傾向が比較的大きい金属より、イオン化傾向の比較的小さい金属材料で構成された金属粉末を用いることにより、この金属粉末が水と接触したとしても、金属粉末がイオン化し難く、その結果、金属粉末が酸化に伴って発熱するのを抑制し、その結果、プレポリマーとスラリーとの反応が不安定になるのを抑制することができる。この点、チタンはイオン化傾向が小さくアルミニウム程度であるので、好ましい。また、チタンは酸化物が非常に安定で侵されにくく、表面が酸化物の皮膜によって保護される空気中では、プラチナ(白金)や金とほぼ同等の強い耐蝕性を持つ。室温では酸や食塩水(海水)などとは殆ど反応しないため、チタンの水分散液を用いることは好ましい。したがって、チタンを水分散液として利用する際にも、酸化に伴ってチタン粉末の特性(化学的特性、機械的特性および電気的特性)が劣化するのを抑制することができ、目的とする特性を有するポリウレタン発泡中間体を得ることができる。
尚、金属粉末を構成する金属材料には、特に、その比重が10以下であるものが好ましく、8以下であるものがより好ましい。このような比較的比重の軽い金属材料で構成された粉末であれば、スラリー中において水系分散媒に容易に懸濁することができる。これにより、金属粉末の分離・沈降が生じ難いスラリーを得ることができる。その結果、中間体製造工程において、プレポリマーとスラリーとを混合した際に、プレポリマーとスラリーとをムラなく混合することができ、全体が均質な発泡金属材料の中間体、ひいては発泡金属材料を得ることができる。また、全体が均質であることにより、金属粉末の粒子同士の接触機会が十分に多くなり、金属粉末が密につながったポリウレタン発泡中間体を得る事ができ、その後の焼結時に、融点が高くて加熱溶融しにくい金属であっても、粒子同士の接合されることが確保されやすくなるため、発泡金属材料の機械的強度を向上させることができる。この点、チタンの比重は、4.5であり、酸化チタンの比重は4.23であるため、上記要件を満たす。
また、本発明に用いるチタン粉末の平均粒径は、0.5〜60μm程度であるのが好ましく、1〜30μm程度であるのがより好ましい。尚、チタン粉末の平均粒径は、レーザー回折・散乱法により測定する。平均粒径を前記範囲に設定されたチタン粉末であれば、スラリー中において水系分散媒に容易に懸濁することができる。これにより、チタン粉末の分離・沈降が特に生じ難いスラリーが得られる。その結果、中間体製造工程において、プレポリマーとスラリーとを混合した際に、プレポリマーとスラリーとをムラなく混合することができ、全体が均質な発泡チタン材料の中間体を得ることができる。また、機械的強度を高めつつ、より微細な三次元網目構造を構築可能な中間体を得ることができる。また、平均粒径を前記範囲に設定されたチタン粉末であれば、より微細な三次元網目構造を形成することができるので、表面積が特に大きく、かつ柔軟性および弾力性に特に優れたチタン粉末含有ポリウレタン発泡中間体を得ることができる。さらに、前記粉末の平均粒径を前記範囲に設定することにより、チタン粉末の粒子同士の接触機会がより多くなるので、本発明の発泡チタン材料の強度のさらなる向上を図ることができる。また、焼結後のチタン発泡材料の表面積を大きくすることができ、骨細胞が付着しやすくなる。なお、チタン粉末の平均粒径が前記下限値未満である場合、チタン粉末の取り扱いが極めて困難となるばかりか、粒子同士の凝集が顕在化し、均一なスラリーを得ることが難しくなる。一方、チタン粉末の平均粒径が前記上限値を上回る場合、スラリー中において、チタン粉末の著しく沈降しやすくなる。このため、やはり、均一なスラリーを得ることが難しくなる。
このようなチタン粉末には、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、高速回転水流アトマイズ法のようなアトマイズ法、還元法、カルボニル法、粉砕法等、いかなる方法で製造されたものでも用いることができるが、特にアトマイズ法により製造されたものが好ましく用いられる。アトマイズ法によれば、微細で粒度分布の狭い(粒径の揃った)チタン粉末が効率よく得られる。したがって、スラリーがアトマイズ法で製造されたチタン粉末を含んでいることにより、チタン粉末が均一に懸濁したスラリーが得られる。
また、アトマイズ法によれば、より球形に近い形状のチタン粉末を得ることができる。これにより、チタン粉末の流動性が向上し、スラリーは流動性の高いものとなる。その結果、プレポリマーとスラリーとを混合する際の作業性向上を図ることができ、全体が均質なポリウレタン発泡中間体を得ることができる。
具体的には、チタン粉末の各粒子のアスペクト比の平均値は、0.5〜1であるのが好ましく、0.7〜1であるのがより好ましい。これにより、チタン粉末の流動性が特に向上するとともに、各粒子間の充填性も特に高くなる。その結果、最終的に、発泡チタン材料の機械的特性を特に高めることができる。尚、各粒子のアスペクト比とは、各粒子の短径を長径で除した値である。
一方、水は、プレポリマー中のイソシアネート基と接触すると反応して、二酸化酸素等のガスを発生させる。このガスにより、プレポリマーとスラリーとの混合物が発泡し、外部空間と連通する空孔が混合物中に生成される。また、プレポリマーとスラリーとの反応によって生じる反応生成物の作用により、混合物が架橋する。
本発明に用いられる水としては、特に限定されず、純水、イオン交換水、水道水、RO水が挙げられる。
また、スラリー中には、チタン粉末と水以外に、その他の成分を含んでいてもよい。
具体的には、水エマルジョン等である。即ち、スラリーに、軟化点20〜100℃の樹脂を分散させた水エマルジョンとを混合してもよい。
水エマルジョンに含まれる樹脂としては、具体的にはアクリル酸エステル重合体、ポリエステル、ポリエチレン等を挙げることができる。特に、アクリル酸エステル重合体は、水エマルジョンに含まれる樹脂として好適なものである。これらの樹脂を含むことにより、エマルジョン中の樹脂によって金属粉末がポリウレタン発泡体の骨格から脱落し難くなり、金属粉末の粉落ちを防ぐことができる。さらに、樹脂は、樹脂を分散させた水エマルジョンとしてポリウレタン原料に含まれているため、樹脂がポリウレタン原料に均一に分散し易く、金属粉末をポリウレタン発泡体の骨格に樹脂で効果的に固定することができる。
次に、プレポリマーとスラリーとを混合する。これにより、前述したように、プレポリマー中のイソシアネート基とスラリー中の水とが反応して、二酸化炭素等のガスが発生するとともに、樹脂化反応も進行していく。このガスがプレポリマーとスラリーとの混合物から外部空間に抜け出ることにより、混合物中に気泡が生成される。この泡化反応とともに樹脂化反応が進行することにより、この混合物が発泡する。また、プレポリマーとスラリーとの反応によって生じる反応生成物(例えば、一級アミン等)の作用により、プレポリマーとスラリーとの混合物中に、(ウレタン結合)、ウレア(尿素)結合、ビュレット結合、(アロファネート結合)等が生成されるとともに、これらの結合が三次元的に架橋する。これにより、プレポリマーとスラリーとの混合物が架橋して三次元の網目構造を形成し、発泡チタン材料の中間体が製造される。
かかる発泡チタン材料の中間体は、図3に示すように、チタン粉末を含む樹脂材料が三次元の網目構造を構築し、いわゆるスポンジ状の形態をなすものとなる。また、ポリウレタン発泡中間体は、図3に示すように、網目構造の中に、チタン粉末の粒子を取り込んでいる。このため、ポリウレタン発泡中間体に外力を繰り返し加えたとしても、網目構造からチタン粉末の粒子が脱落することが確実に防止される。これにより、ポリウレタン発泡中間体は、次工程までの間に、チタン粉末の粒子同士がウレタンポリマー内部に緻密に連結された状態を維持することができる。そして、かかる網目構造を有する中間体を用いることにより、最終的に、チタン粉末の粒子同士が連結してなる三次元の網目構造を有し、等方性の機械的特性を有する優れた発泡チタン材料が得られる。
ここで、プレポリマーとスラリーとの混合は、プレポリマーとスラリーとを、各種混合機、各種攪拌機等に投入して行うことができる。
プレポリマーとスラリーとを混合する際、プレポリマーとスラリーとの混合比は、プレポリマー中のイソシアネート基のモル数をnとし、スラリー中の水のモル数をnとしたとき、n/nが6.5〜390を満足する比率であるのが好ましく、20〜200を満足する比率であるのがより好ましい。プレポリマーとスラリーとの混合比を前記範囲内に設定することにより、イソシアネート基と水とが必要かつ十分に反応し、最終的に、柔軟性及び弾力性に優れ、機械的強度に優れた発泡チタン材料が得られる。
また、イソシアネート基は、チタン材料に対しても高い反応性を示す。これは、セラミックス材料やガラス材料等に比べて、チタン材料の表面には、より高密度で水酸基(OH基)が露出していることに起因するものであると考えられる。すなわち、チタン粉末の表面に水酸基が高密度に存在していると、プレポリマーとスラリーとを混合したときに、プレポリマーとチタン粉末との親和性が高くなる。このため、プレポリマーとスラリーとの反応によって生成される樹脂成分と、チタン粉末の粒子とが、強固に結び付き、これらの接着強度が特に高くなる。その結果、樹脂成分とチタン粉末との接着界面が剥離し難くなり、柔軟性および弾力性に優れたポリウレタン発泡中間体が得られる。
さらに、イソシアネート基を有するプレポリマーとチタン粉末とを均一かつ十分に混合することができ、気泡がほぼ均一に分布してなるポリウレタン発泡中間体を得ることができる。そして、このように気泡がほぼ均一に分布してなるポリウレタン発泡中間体は、優れた弾力性を示すものとなる。
また、プレポリマーとスラリーとを混合した混合物を作製する際、混合物の水を除く質量に対するチタン粉末の質量の割合は、50〜90質量%程度であるのが好ましく、70〜85質量%程度であるのがより好ましい。チタン粉末の割合が前記範囲内になるように、スラリー中のチタン粉末の割合を調整したり、プレポリマーとスラリーとの混合比を調整することにより、発泡チタン材料の中間体中において、チタン粉末の含有率が最適化される。これにより、発泡チタン材料の中間体は、成形後の保形性および機械的強度に優れたものとなる。その結果、かかる中間体を、後述する脱脂工程および焼結工程を経て得られる発泡チタン材料は、寸法精度および機械的強度に優れたものとなる。
なお、プレポリマーとスラリーとを混合する際の温度は、特に限定されないものの、好ましくは10〜140℃程度、より好ましくは15〜120℃程度とされる。
また、使用するプレポリマーは、ポリイソシアネートの一部とポリオールの一部とを反応させておき、本中間体製造工程において、残りのポリイソシアネートとポリオールとを反応させるようにしてもよい。
また、この中間体製造工程では、プレポリマーとスラリーとを混合する際に、さらに界面活性剤を混合するのが好ましい。これにより、発泡チタン材料の中間体中に生成される空孔がより微細で均一なものとなる。すなわち、界面活性剤が整泡剤として機能する。
このような界面活性剤としては、いかなる界面活性剤をも用いることができるが、例えば、各種陰イオン(アニオン)性界面活性剤、各種陽イオン(カチオン)性界面活性剤、各種両性界面活性剤、各種非イオン(ノニオン)性界面活性剤等を用いることができる。
このうち、特に非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。具体的には、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルのようなエステル型、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのようなエーテル型の他、これらを組み合わせたエステル・エーテル型の各種非イオン性界面活性剤等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、界面活性剤は、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物系界面活性剤であるのが好ましい。これにより、界面活性剤の混合の有無や混合量を調整することによって、発泡チタン材料の中間体中に生成される空孔がさらに微細で均一なものとなる。
このようなポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物系界面活性剤としては、例えば、プルロニックL−62(BASF社製)等が挙げられる。
また、この中間体製造工程では、プレポリマーとスラリーとを混合する際に、さらにプレポリマーとスラリーとの反応を促進する触媒を混合するのが好ましい。これにより、プレポリマーとスラリーとの反応がより速やかに進むこととなり、反応に要する時間を短縮することができる。また、低温下であっても、プレポリマーとスラリーとを確実に反応させることができる。
さらに、中間体製造工程では、界面活性剤、触媒の他に、鎖延長剤、架橋剤、可塑剤、離型剤等の添加剤を混合してもよい。
なお、上記の界面活性剤、各種添加剤は、本中間体製造工程で混合してもよいが、あらかじめ、プレポリマー及びスラリーのいずれか一方または双方に添加しておいてもよい。
また、本中間体製造工程により得られた発泡チタン材料の中間体を所望の形状に成形する場合には、成形型内において、プレポリマーとスラリーとを混合する。これにより、成形型内において中間体が得られる。次いで、成形された中間体を成形型から脱型する(離型する)。これにより、所望の大きさおよび形状に成形された発泡チタン材料の中間体を得ることができる。その結果、最終的に、様々な大きさや形状の発泡チタン材料を容易に得ることができる。
なお、中間体の成形に用いる成形型は、キャビティの一部が開放されたものでもよいが、キャビティが閉空間になった成形型であれば、形成すべき形状の中間体を確実に得ることができる。また、プレポリマーの発泡に伴って、プレポリマーとスラリーとの混合物の体積が増大する。しかしながら、キャビティが閉空間になっているため、中間体は、周囲から圧縮されるような圧力が付与された状態で架橋する。これにより、中間体の密度がやや増大する。したがって、キャビティの容積を適宜設定することにより、最終的に発泡チタン材料の密度および空孔率を調整しやすくなる。
なお、発泡チタン材料の中間体を成形する場合、その成形寸法は、後述する脱脂工程および焼結工程における中間体の収縮分を見込んで決定される。
また、必要に応じて、発泡チタン材料の中間体を乾燥させる。これにより、中間体中に残存した水分を除去する。
この乾燥は、中間体に対して、加熱する方法、ガスを噴射する方法、赤外線を照射する方法等により行うことができる。
このうち、中間体を加熱する場合、その加熱条件は、温度30〜100℃×0.1時間〜2週間程度であるのが好ましく、温度50〜80℃×0.2時間〜3日間程度であるのがより好ましい。また、加熱雰囲気は、特に限定されないが、不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気であるのが好ましい。
また、ガスを噴射する場合、用いるガスは、不活性ガスまたは還元性ガスであるのが好ましい。
また、発泡チタン材料の中間体を乾燥させる前または乾燥させた後に、必要に応じて、中間体に切削、切断、切り出し、研削、研磨等の後加工を施してもよい。中間体は、後述する中間体を脱脂してなる脱脂体や、脱脂体を焼結してなる発泡チタン材料に比べて柔軟性、靭性に優れるとともに、硬度が低い。このため、中間体に後加工を施すことにより、脱脂体や発泡チタン材料に後加工を施す場合に比べて、所望の形状への加工を容易かつ高精度に行うことができる。
例えば、中間体の成形に用いる成形型が、キャビティの一部が開放されたものである場合、プレポリマーが発泡した際に、この開放された部分からプレポリマーとスラリーとの混合物があふれ出るおそれがある。そこで、このあふれ出た部分を後加工によって除去することにより、形成すべき形状の中間体を容易に得ることができる。
なお、発泡チタン材料の中間体の見かけ密度は、チタン粉末の構成材料によって若干異なるが、300〜800kg/m程度であるのが好ましく、500〜700kg/m程度であるのがより好ましい。
また、このようにして製造された発泡チタン材料の中間体において、チタン粉末の含有率は、50〜90質量%程度であるのが好ましい。これにより、中間体は、保形性を維持するのに必要な樹脂成分を含むとともに、チタン粉末の含有率も十分に高いので、焼結性が高いものとなる。したがって、このような中間体を後述する脱脂・焼成工程に供することにより、短時間での脱脂・焼結が可能であるとともに、構造部材として十分な機械的強度を有する発泡チタン材料が得られる。
脱脂工程
次に、発泡チタン材料の中間体に熱処理を施す。これにより、中間体が脱脂され、脱脂体が得られる。
この脱脂における熱処理条件は、温度300〜700℃×0.1〜20時間程度であるのが好ましく、温度400〜600℃×1〜5時間程度であるのがより好ましい。これにより、チタン粉末を焼結させることなく、中間体中から樹脂成分(有機成分)を確実に分解・除去することができる。その結果、脱脂体中に樹脂成分が残留するのを確実に防止することができ、発泡チタン材料中に樹脂成分が残留するのを確実に防止することができる。
すなわち、脱脂における熱処理条件が前記下限値を下回った場合、中間体の脱脂が不十分になるおそれがある。一方、脱脂における熱処理条件が前記上限値を上回った場合、中間体中のチタン粉末が焼結してしまうおそれがある。
なお、脱脂工程は、複数回に分けて行うようにしてもよい。その場合、徐々に熱処理温度を上げるようにすれば、より脱脂を促進させることができる。
また、熱処理を行なう際の雰囲気は、いかなる雰囲気であってもよいが、窒素ガス、アルゴンガスのような不活性ガス雰囲気であるのが好ましい。不活性ガス雰囲気によれば、チタン粉末が酸化してしまうのを確実に防止しつつ、中間体中の樹脂成分を分解・除去することができ、中間体の脱脂が確実になされる。
焼結工程
次に、脱脂体に熱処理を施す。これにより、脱脂体中のチタン粉末が焼結し、焼結体となり、発泡チタン材料(本発明の発泡チタン材料)が得られる。
図3は、本発明の発泡チタン材料の走査型電子顕微鏡による観察像の一例、および、この観察像を模式的に示す図である。
発泡チタン材料では、チタン粉末の粒子同士が焼結によって相互に拡散し、図3に示すように、チタン粉末の粒子同士が連結(ネッキング)している。また、連結された粒子は、立体的(三次元)に広がる網目構造を構築している。このような網目構造を有する発泡チタン材料では、いかなる方向から外力を加えたとしても、立体的に広がる網目構造が応力の局所集中を防止することができる。これにより、発泡チタン材料は、低密度(軽量)であるにもかかわらず、チタン材料に特有の高い機械的特性と、導電性および熱伝導性とを示す材料となる。
また、この発泡チタン材料が有する網目構造の間には空隙部が形成されている。この空隙部は、複数のものが互いに連結されており、いわゆる「連続空孔」となっている。すなわち、本発明の発泡チタン材料の製造方法によれば、かかる連続空孔を有し、表面積が極めて大きく、かつ、通気性および通液性に優れた発泡チタン材料を効率よく作成することができる。
さらに、空隙部の形状は、球形状または球形状に類似した形状をなしている。このため、網目構造は、必然的に等方性の高い構造、換言すれば、異方性の低い構造をとることとなる。その結果、発泡チタン材料の機械的特性における等方性がより高くなる。
この焼結における熱処理条件は、チタン粉末の構造材料に応じて若干異なるものの、温度800〜1500℃×0.1〜20時間程度であるのが好ましく、温度1100〜1500℃×1〜5時間程度であるのがより好ましい。これにより、チタン粉末を確実に焼結させるとともに、過焼結を防止することができる。
すなわち、焼結における熱処理条件が前記下限値を下回った場合、脱脂体の焼結が不十分になり、機械的強度が低下するおそれがある。一方、熱処理温度が1500℃超になると、高温によって熱処理装置(焼成炉等)が著しく劣化するおそれがある。また、1500℃超の高温下では、脱脂に伴って発生するガス(例えば、アミン系ガス)の活性が特に高くなり、このガスによって発泡チタン材料や熱処理装置に変質・劣化をもたらすおそれがある。特に、本発明の発泡チタン材料の製造方法においては、脱脂体中に多量の樹脂成分が残存するおそれがあるため、焼結工程の際に、この樹脂成分が分解されて発生するガスが多量にかつ長時間にわたって放出されることとなる。このガスは、焼成炉等の熱処理装置の内部に付着したり、装置の劣化を促進したりするおそれがあるため、これらの問題を最小限にする観点から、脱脂体に対する熱処理は1500℃以下で行うことが好ましい。さらに、焼結における熱処理条件が前記上限値(1500℃)を上回った場合、チタン粉末の構成材料によっては、脱脂体の焼結が進み過ぎてしまい、脱脂体が三次元の網目構造を維持できずに崩壊してしまうおそれがある。
なお、焼結工程は、複数回に分けて行うようにしてもよい。
また、熱処理を行う際の雰囲気は、いかなる雰囲気であってもよいが、窒素ガス、アルゴンガスのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧してなる減圧雰囲気(真空雰囲気)等の非酸化性雰囲気であるのが好ましい。非酸化性雰囲気によれば、チタン粉末の酸化を確実に防止しつつ、チタン粉末を焼結させることができる。
尚、水素ガスのような還元性ガス雰囲気によれば、水素脆性の危険があり、焼結は進行するが強度的に脆くなる可能性がある。
また、脱脂工程および焼結工程は、途中で温度を低下させることなく、連続して行なうようにしてもよい。
また、前述したように、発泡チタン材料は、チタン粉末の粒子同士が連結したことにより構築されているが、チタン材料は、一般に、セラミックス材料やガラス材料等の脆性材料に比べて、優れた靭性を有している。一方、セラミックス材料やガラス材料等の脆性材料では、靭性が低いため、仮にこれらの脆性材料の粉末を用いて発泡材料を製造したとしても、そのような発泡材料は非常に脆いものとなる。したがって、発泡材料中の三次元の網目構造のうち、一部が破壊すると、その衝撃が他の網目構造に容易に伝搬してしまい、破壊が連鎖的に進展することとなる。その結果、脆性材料の粉末を用いた発泡材料は、機械的特性が著しく低いものとなる。
これに対し、本発明の発泡チタン材料では、三次元の網目構造のうち、一部の網目構造が破断したとしても、チタン材料が有する優れた靭性によって、破壊の影響が他の網目構造に及ぶことが確実に防止される。したがって、発泡チタン材料は、機械的特性に優れたものとなる。
このような発泡チタン材料の圧縮強度は、チタン粉末の構成材料や空孔率等に応じて若干異なるものの、1MPa以上であるのが好ましく、2MPa以上であるのがより好ましい。このような発泡チタン材料は、構造部材として十分な機械的強度を有するものとなる。また、本発明の発泡チタン材料の製造方法によれば、かかる高強度の発泡チタン材料を容易かつ確実に製造することができる。
また、発泡チタン材料の空孔率は、70〜99.5%程度であるのが好ましく、80〜99%程度であるのがより好ましい。これにより、発泡チタン材料における表面積の増大と機械的強度の向上との両立を図ることができる。
なお、発泡金属材料の密度は、この空孔率と、発泡金属材料の作製に用いられた金属粉末の組成とから算出することができ、例えば、金属粉末としてSUS−316L(真密度:7950kg/m)の粉末を用いて作製された空孔率88.3%の発泡金属材料の場合、発泡金属材料の見かけ密度は、930kg/m{=7950×(1−0.883)}となる。
以上、本発明の発泡チタン材料の製造方法および発泡チタン材料について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明の発泡チタン材料の製造方法では、必要に応じて、任意の工程を追加することもできる。
人工歯根
本発明に係る骨再生医療材料は、人工歯根に使用することができる。図1に示す本発明の人工歯根100は、基材101と、その基材の外周に設けられた発泡チタン材料からなるチタン多孔シート層102と、とからなる。尚、人工歯根は、当該人工歯根と螺合可能なアバットメント200及び人工歯300と組み合わせて使用する。
基材101は、円柱状の金属製ロッドであり、その直径が1〜5mm、長さが5〜20mmのものである。この金属基材は生体適合性の高い金属からなり、特に、チタン、チタン合金、金、金合金が挙げられる。この基材の外側面には、螺旋状溝を形成してチタン多孔シート層102と強固に固定することが好適である。また、基材の上部101aには、アバットメント200と螺合するための、螺合孔101bが形成されている。この基材の上部101aが歯茎から突出し、アバットメント200及び人工歯300と係合する。
チタン多孔シート層102は、円柱状の発泡チタン材料の中心に孔を空けてチタンロッドを挿入し、真空焼結することにより形成される。このチタン多孔シートは、本最良形態に係る発泡チタン材料である。このような発泡チタン材料は骨芽細胞が好んで定着する三次元構造を有しており、この発泡チタン材料からなるチタン多孔シート層102は骨芽細胞を誘導する硬組織形成誘導層として働く。
つまり、チタン多孔シート層に誘導される骨芽細胞は、チタン多孔シート層(発泡チタン材料)内において分化誘導され、硬組織層を形成する。ここで硬組織層を形成する骨芽細胞とチタン多孔シート層(発泡チタンシート)とは三次元的に物理的結合をするため、人工歯根と生体とを強固に結合する。
人工歯根100は次のようにして製造する。
円柱形又はテーパ形の発泡チタン材料に、ドリルでネジ式またはフラットの孔を開け、底にネジ式又はフラットのチタンロッドを挿入した後、適切な材料の鋳型中で、強く圧接下で真空焼結する。なお、発泡チタン材料は、前記中間体製造工程の段階で型を用いて、あらかじめ円柱形又はテーパ形の中心に孔を有する発泡チタン材料に成形しておいてもよいし、基材の周辺に発泡チタン材料中間体を形成して、その後、脱脂工程及び焼結工程を経た後に真空焼結してもよい。尚、真空焼結は周知の方法により行なうことが可能である。更に、通常の最高真空下で行なうことが好適である。
また、チタン多孔シート層102、に骨形成タンパク質(BMP)および線維芽細胞増殖因子(FGF)などのサイトカインを含む溶液に浸らせることにより、これらのサイトカインを担持させてもよい。さらに、吸収性高分子膜の外周に炭酸アパタイトを含む溶液を用いて、炭酸アパタイトを担持させてもよい。これらの担持方法は特に限定されるものではない。
(実施例1)
ポリエチレングリコール(第一工業製薬製、平均分子量1000)2モル、トリメチロールプロパン1モル、及び2,4−及び2,6−トルエンジイソシアネートの80/20の混合物(日本ポリウレタン工業社製、T−80)7.7モルを混合した後、混合物を2時間攪拌し、NCO%が11%のイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを作製した。
次にガスアトマイズ法により製造されたチタン粉末を用意した。なお、このチタン粉末は、平均粒径は23μm、比重4.6であった。さらに、純水100重量部中にチタン粉末600重量部と水エマルジョン樹脂(日本ゼオン(株)製、LX852)100重量部を混合してなるスラリーを得た。高さ200mm×縦200mm×横200mmのキャビティを有する成形型内にプレポリマーとスラリー、プルロニックL−62(ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、BASF製)とを混合し、攪拌した。これにより、混合物が発泡するとともに架橋した。その後、架橋物を成形型内から取り出し、立方体形状の発泡金属焼結体の中間体を得た。なお、プレポリマー、チタン粉末、純水、水エマルジョン樹脂、L−62の混合比は重量比で100:600:100:100:1とした。
これにより得られた中間体を乾燥炉に入れ、温度70℃で2日間乾燥させた。乾燥後の中間体の密度をJIS K 6400に規定の方法に従って測定したところ、密度は452kg/mであった。なお、このときの写真を図2に示す(SEM、300倍)。セル骨格の断面は、内側に窪んだ三角形の断面形状をしている。プレポリマー混合物が発泡する際に各セル(空孔)の気泡が押し合って、残りの(合成により生じたウレタン)樹脂成分がセル骨格を形成するため、三角形の断面形状となる。
次に、中間体を脱脂焼結炉内に入れ、以下の脱脂条件で脱脂を行なった。これにより、脱脂体を得た。
<脱脂条件>
・脱脂温度: 500℃
・脱脂時間: 昇温 0.5℃/min 保持1時間
・脱脂雰囲気: 窒素
続いて、脱脂体を以下の焼結条件で焼結させた。これにより、発泡金属焼結体を得た。
<焼結条件>
・焼結温度: 1135℃
・焼結時間: 2時間
・焼結雰囲気: 真空
上記の方法により焼結されたチタン発泡体の断面写真を図3に示す{SEM、(a)100倍、(b)300倍}。チタン粒子が、六方最密充填、または、立方最密充填のように菱面体充填に近い形態で、各チタン粒子が連なった状態で、結合していることがわかる。中間体におけるセル骨格の断面形状である三角形に近い形でチタン粒子がつながっている。これは、(1)チタンの溶融温度が非常に高温であり、かつ、(2)チタンの高濃度なスラリーからチタンを良分散させて、発泡させることによりチタン含有ウレタン発泡体(中間体)を得ることができたためである。
このように、中間体のセル骨格の断面形状が窪んだ略三角形であり、セル骨格が三角柱状となっているため、チタン粒子がウレタンフォームのセル骨格の形状に合わせて敷き詰められた構造となり、上記のようなチタン粒子の粒々を連ねてなる焼結体のセル構造を得ることができる。
これにより、焼結体のセル骨格形状(略三角形)およびそのセル骨格表面が粒子形状に起因する凹凸をしているため、骨の生態細胞が付着しやすい表面構造となっている。
以上より、骨細胞の成長性に優れるという効果をもたらす。
また参考までに、以下に焼結後のチタン発泡体の強度物性を示す。これにより、人工歯根として使用可能な程度の強度を有する。
〈条 件〉 試験環境温度・湿度:23℃50%RH
圧縮試験:試験片10×10×1.6mmt 圧縮速度1mm/min 4000Nまで圧縮
引張試験:試験片5.5×53×1.6mmt 速度1mm/min つかみ具間距離40mm
曲げ試験:試験片13 or 5.5×53×1.6mmt 速度2mm/min 支点間距離40mm 治具先端R5mm、 (※各試験N=3にて測定。)
また、自動細孔径分布測定器(POROUS MATERIALS社製、Perm−Prometer)を用いて、バブルポイント法(ASTM F316−86, JIS K 3832)及びハーフドライ法(ASTM E1294−89)に基づいて、最大細孔径及び平均流量細孔径を測定した。
最大細孔径: 127.7ミクロン
平均流量細孔径: 53.9ミクロン
(実施例2)
L−62に代えて、Brij58(添加量も同じ)を使用した以外は、実施例1と同
じにして、発泡金属焼結体を得た。(プレポリマー、チタン粉末、純水、水エマルジョン樹脂、Brij58の混合比を重量比で100:600:100:100:1とした。)なお、Brij58とは、ICI Americas.Inc製のポリエチレングリコールモノセチルエーテルである。最大細孔径は、176.8ミクロン、平均流量細孔径は、77.3ミクロンであった。
(実施例3)
プレポリマー、チタン粉末、純水、水エマルジョン樹脂、L−62の混合比を重量比で100:600:70:70:0.5とする以外は、実施例1と同じに方法より、発泡金属焼結体を得た。最大細孔径は、83.4ミクロン、平均流量細孔径は、22.4ミクロンであった。
(比較例)
繊維多孔体
繊維径: 50μm、 密度(目付け): 900g/m
厚み: 1.5mm、 空孔率 : 87%
最大細孔径: 202.6ミクロン
平均流量細孔径: 106.4ミクロン
200倍のSEM写真を図4に示す。チタン繊維の繊維断面が円形でなく、四角形となっており、工夫されている。また、気孔率という数値自体は、本発明から得られるチタン発泡体と近似した値をとっている。
しかし、上記の電顕写真によれば、空隙が非常にルーズにつながっていて、表面形状も凹凸が少ない。よって、骨細胞が着床しにくいものと思われる。
(参考例)
金属粉末を、平均粒径4.0μmのセラミックス粉末(アルミナ)に置き換えた以外は、前記実施例と同様にして、発泡セラミックス焼結体を得た。
《発泡金属焼結体の評価》
実施例で得られた発泡金属焼結体の圧縮強度を測定したところ、人工歯根として使用可能な程度の優れた強度を有していた。ここで、実施例で得られた発泡金属焼結体の走査型電子顕微鏡による外観写真を図3に示す。
これらの図から明らかなように、実施例で得られた発泡金属焼結体では、立体的(三次元)にネットワークのように広がる網目構造が観察された。また、網目構造の間には、多数の空隙部が形成されていた。また、隣接する空隙部が連結されていることが認められた。さらに、各空隙部の形状は、それぞれ球形状またはそれに類似した形状をなしていた。
このような本発明に特徴的な網目構造が観察されたが、この網目構造を形成するセル骨格の形状は、骨の形成・成長の向上の一因になっているものと考えられる。
《ラット頭蓋骨埋植試験》
生後12週間のウィスター系オスのラットを、ネンブタール腹腔内注射(0.71 ml/kg body weight)による完全麻酔下にて、頭部皮下を切開し、頭蓋骨の骨膜下に、厚さ1.5 mm 直径4 mmの円盤状に成型した発泡チタンを骨面に平行に埋植した。対象として、比較例1の繊維多孔体(厚さ0.5 mm,4 mmの円盤)を埋植した。埋植6週後に、エーテル深麻酔にて安楽死させ、頭蓋骨を摘出し10%中性ホルマリン固定した。
固定試料は、通法にしたがってエタノール系列脱水した。次にリゴラック(昭和高分子)で包埋してブロックを作製し、0.4−0.5 mmの厚さに切断後,150 μmの厚さまで研磨した。さらに薄片の両面にリゴラックを5 μmの厚さにコートし片面を80 μmの厚さまで研磨した。耐水研磨紙(#1200)で最終研磨し、Coleのヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を行い、光学顕微鏡にて観察した。同様に、実施例1〜3の金属発泡材料についても、試験を行なった。
培養試験の結果を図5及び6に示す。図6は、比較例1の繊維多孔体であり、図5は、実施例1の金属発泡体をラットの頭蓋骨の骨膜下に埋植後6週間の組織像の様子を示す。幾何学的構造の効果により、発泡チタン焼結体には骨が内部成長するが、比較例の繊維多孔体には骨が当該繊維多孔体内部に入らないことを明らかに示している。図5に示すように、発泡チタンの拡大像では、融合したチタン粒子(平均直径30 μm)が形成する立体空間、すなわちチタン粒子が形成する壁に囲まれた立体空間の大きさは縦、横、高さの広がりは200〜400ミクロンになっており、この最適空間に誘導されて骨が立ち登って内部成長(Ingrowth)していることが明瞭である。尚、図5及び6は、黒色で現れた部分が発泡チタンの骨格であり(図中1、カラー写真では黒色で現れる)、当該発泡チタン骨格よりも明るい部分が空孔部分であり(図中2、カラー写真では灰色で現れる)、当該気泡部分よりも暗い色であり黒色よりも明るい部分が骨部分である(図中3、カラー写真では赤色で現れる)。実施例2、3の試験においても、骨の内部成長が見られた。

Claims (12)

  1. 活性水素を有するポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなる末端イソシアネート基を有するプレポリマーと、水系分散媒にチタン粉末を懸濁してなるスラリーとを混合させ、反応させることにより、チタン粉末を含有するポリウレタン発泡中間体を得た後、
    前記中間体に熱処理を施し、前記中間体を脱脂および焼結させることによって製造されたものであり、
    複数の気泡が互いに連結してなる連続気泡を含む、前記チタン粉末が焼結してなる発泡チタン焼成体材料で構成されたものであり、前記発泡チタン焼成体材料の平均流量細孔径が20〜80μmであることを特徴とする骨再生医療材料。
  2. 前記発泡チタン焼成体材料の最大細孔径が80〜180μmであることを特徴とする、請求項1に記載の骨再生医療材料。
  3. 前記発泡チタン焼成体材料のセル骨格形状が略三角形であり、セル骨格表面が粒子形状に凹凸していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の骨再生医療材料。
  4. 前記発泡チタン焼成体材料は、前記チタン粉末の粒子同士が連結し、三次元の網目構造を構築してなるものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の骨再生医療材料。
  5. 前記スラリーは、水を分散媒とし、該分散媒に平均粒径0.5〜30μmの前記チタン粉末を懸濁してなるものであり、
    前記プレポリマー中の前記イソシアネート基の含有率は、3〜26質量%であり、
    前記プレポリマー中のポリオールは、エチレンオキサイドユニットを少なくとも60モル%含むポリエーテル系ポリオールであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の骨再生医療材料。
  6. 前記チタン粉末は、アトマイズ法により製造されたものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の骨再生医療材料。
  7. 前記発泡チタン焼成体材料が厚さ0.1〜10mmのシート形状に成形されており、前記発泡チタン焼成体材料の外周にセラミックスアパタイトがコートされている
    ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の骨再生医療材料。
  8. 前記発泡チタン焼成体材料の内部に注入する物質は生理機能を持ち、
    各種細胞、骨髄細胞、骨髄液、骨髄液から分離された幹細胞、臍帯血由来細胞、末梢血由来細胞、組織細切片、各種蛋白、脂質、多糖類、酵素、抗生物質、抗菌物質、ホルモン、サイトカイン、血液凝固促進剤、細胞成長因子、遺伝子操作された細胞からの抽出物、遺伝子操作された細胞から産生される物質、血管内皮細胞増殖因子(VEGF),platelet-inducedgrowthfactor(PIGF)、治療効果因子ベータ1(TGF.beta.1)、酸性繊維芽細胞(aFGF)、塩基性繊維芽細胞(bFGF)、治療効果因子アルファ(TGF.alph.)、上皮細胞増殖因子、オステオネクチン、アンティオポエチン(ANG1)、ANG2、血小板由来増殖因子AB、血小板由来増殖因子BB、骨形成蛋白質(BMP)、肝細胞増殖因子(HGF)、細胞外マトリックス、コラーゲンあるいはそれらのいずれかの複合体もしくは誘導体、等のグループから選ばれた少なくとも一つ以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の骨再生医療材料。
  9. 基材と、
    その基材の外周にチタン粉末を焼成・連結することによって形成された、請求項1ないし8のいずれかに記載された骨再生医療材料からなるチタン多孔シート層を備えている人工骨類再生材。
  10. 前記人工骨類再生材が人工歯根であることを特徴とする請求項9に記載の人工骨類再生材。
  11. 活性水素を有するポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなる末端がイソシアネート基を有するプレポリマーと、水系分散媒にチタン粉末を懸濁してなるスラリーとを混合させ、反応させることにより、チタン粉末を含有するポリウレタン発泡中間体を得る中間体製造工程と、発泡チタン材料の中間体に対して熱処理を施すことにより、この中間体を脱脂して脱脂体を得る脱脂工程と、脱脂体を焼結させる焼結工程とを有することを特徴とする骨再生医療材料の製造方法。
  12. 前記発泡チタン材料の平均流量細孔径が20〜80μmであることを特徴とする請求項11に記載の骨再生医療材料の製造方法。
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