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JP4321638B2 - 歯科用インプラントの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、歯科用インプラントの製造方法に関するものである。
様々な理由により喪失した歯の機能を回復させる目的で、広くインプラント(歯科用インプラント)が用いられている。
歯科用インプラントとしては、一般に、顎骨に固定されるフィックスチャーと、フィックスチャーに螺設するアバットメントとを有している。そして、歯科用インプラント(フィックスチャーに螺設されたアバットメント)上に、歯冠修復物を被覆し、これを歯科用セメントで固定することにより、本来の歯に対応する形状に仕上げる。
従来、インプラントの構成材料としては、生体に対する適合性や、強度等の観点から、一般に、チタンまたはチタン合金が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。
一方、歯冠修復物の構成材料としては、外観上、生体の歯との違いが目立たないように、一般に、セラミックスが用いられているが、噛み合わせを改善したり、歯冠修復物の割れ等を確実に防止する等の目的で、その内面(インプラント側の面)に、金合金等で構成された金属部(金属層)を設けられる。すなわち、歯冠修復物としては、金属で構成された金属部(金属層)と、セラミックスで構成された層とを有する積層体が、広く用いられている。
しかしながら、歯冠修復物が上記のような金属部を有するものである場合、この金属部と、チタンで構成されたインプラントとの間でガルバノ電池が形成されることにより、金属が体内に溶出し、生体に悪影響を及ぼすことが懸念される。
このような問題を防止する目的で、例えば、比較的多量の歯科用セメントを用いて、インプラントと歯冠修復物の金属部とが、接触しないように固定することも考えられるが、このような場合、歯科用インプラントに固定される歯冠修復物の高さや角度等を、設計通りに調整するのが困難になるとともに、十分な接合強度を得るのが困難となる。また、インプラントを構成するチタンまたはチタン合金と、歯冠修復物の金属部とが接触するのを防止するために、インプラントを構成するチタンまたはチタン合金を、絶縁性のセラミックスで被覆することも考えられるが、セラミックスは、一般に、金合金等の接合性には優れているものの、チタン、チタン合金との接合性には劣っているため、チタン、チタン合金で構成された部位と、セラミックスで構成された部位との接合強度を十分に優れたものとするのが困難となり、不適合(がたつき等の問題)等の問題が発生しやすく、使用感に劣ったものとなる。
特開2000−24004号公報(第3頁右欄第40〜42行目参照)
本発明の目的は、歯科用インプラントを口腔内に適用した際における金属の溶出が確実に防止されるとともに、装着時における不適合(がたつき等)の発生を確実に防止することができる歯科用インプラントを製造する方法を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の歯科用インプラントの製造方法は、チタンまたはチタン合金で構成された粉末と結合材とを含むチタン成形体形成用組成物を成形して、チタン成形体を得るチタン成形体製造工程と、
酸化物系セラミックスで構成された粉末と結合材とを含むセラミックス成形体形成用組成物を成形して、セラミックス成形体を得るセラミックス成形体製造工程と、
前記チタン成形体と前記セラミックス成形体とを螺合により組み立て、組立体を得る組立工程と、
前記組立体に対して脱脂処理を施すことにより、前記チタン成形体中に含まれる前記結合材、および、前記セラミックス成形体中に含まれる前記結合材を除去し、前記チタン成形体をチタン脱脂体とし、前記セラミックス成形体をセラミックス脱脂体とする脱脂工程と、
前記脱脂処理が施された前記組立体に対して焼結処理を施すことにより、前記チタン脱脂体を焼結体であるチタン部材にするとともに、前記セラミックス脱脂体を焼結体であるセラミックス部材とする焼結工程とを有することを特徴とする。
これにより、歯科用インプラントを口腔内に適用した際における金属の溶出が確実に防止されるとともに、装着時における不適合の発生を確実に防止することができる歯科用インプラントを製造する方法を提供することができる。
本発明の歯科用インプラントの製造方法では、前記チタン成形体、前記セラミックス成形体のうち一方が雄ねじ部を有するものであり、他方が前記雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有するものであり、
前記雌ねじ部を有する成形体の方が、前記雄ねじ部を有する成形体よりも、前記結合材の含有率が高いことが好ましい。
これにより、チタン部材とセラミックス部材との密着性、接合強度を特に優れたものとすることができ、装着時における不適合の発生等をより効果的に防止することができる。
本発明の歯科用インプラントの製造方法では、前記雄ねじ部を有する成形体中における前記結合材の含有率は、3〜35wt%であることが好ましい。
これにより、優れた成形性で雄ねじ部を有する成形体を得ることができるとともに、最終的に得られる歯科用インプラントにおいて、チタン部材とセラミックス部材との密着性、接合強度を特に優れたものとすることができる。また、雄ねじ部を有する成形体が、脱脂処理等において、不本意な変形をしてしまうのを効果的に防止することができるため、最終的に得られる歯科用インプラントの寸法精度を特に優れたものとすることができる。
本発明の歯科用インプラントの製造方法では、前記雄ねじ部を有する成形体中における前記結合材の含有率は、6〜40wt%であることが好ましい。
これにより、雌ねじ部を有する成形体が、脱脂処理等において、不本意な変形をしてしまうのを効果的に防止しつつ、最終的に得られる歯科用インプラントにおいて、チタン部材とセラミックス部材との密着性、接合強度を特に優れたものとすることができる。また、優れた成形性で雌ねじ部を有する成形体を得ることができる。
本発明の歯科用インプラントの製造方法では、前記雌ねじ部を有する成形体中における前記結合材の含有率をC[wt%]、前記雄ねじ部を有する成形体中における前記結合材の含有率をC[wt%]としたとき、3≦C−C≦15の関係を満足することが好ましい。
これにより、最終的に得られる歯科用インプラントにおいて、チタン部材とセラミックス部材との密着性、接合強度を特に優れたものとすることができるとともに、雄ねじ部を有する成形体、雌ねじ部を有する成形体が、脱脂処理等において、不本意な変形をしてしまうのを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる歯科用インプラントを、機械的安定性および寸法精度が特に優れたものとすることができる。
本発明の歯科用インプラントの製造方法では、前記セラミックス部材は、前記チタン部材を構成する材料とは異なる組成の金属が当接する当接面を有するものであることが好ましい。
これにより、歯科用インプラントを口腔内に適用した際における金属の溶出を確実に防止することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の歯科用インプラントの好適な実施形態を示す図であり、(1a)は、フィックスチャーとアバットメントとを螺合させた状態の正面図、(1b)は、フィックスチャーとアバットメントとを螺合させていない状態での正面図、(1c)は、フィックスチャーとアバットメントとを螺合させていない状態での縦断面図である。また、図2は、歯科用インプラントを用いた手術方法(術式)を説明するための図、図3は、本発明の歯科用インプラントの製造方法の好適な実施形態を示す工程図、図4は、組み立て状態にあるチタン成形体とセラミックス部材との螺合部付近の状態、および、焼結工程を行った後のチタン部材とセラミックス部材との螺合部付近の状態を説明するための縦断面図である。なお、本明細書で参照する図面は、構成の一部を誇張して示したものであり、実際の寸法等を正確に反映したものではない。
<歯科用インプラント>
まず、本発明の歯科用インプラントについて説明する。
歯科用インプラント10は、顎骨に固定されるフィックスチャー1と、フィックスチャー1に螺設するアバットメント2とを備えている。
[1]フィックスチャー
フィックスチャー1は、歯科用インプラント10を用いた術式において、顎骨に固定される部材である。
フィックスチャー1は、有底筒状をなすものであり、フィックスチャー1の外周面には、雄ねじ部11が設けられている。これにより、フィックスチャー1を、切削等によりねじ切りされた顎骨に、螺合により固定することができる。
また、雄ねじ部11の一部には、フィックスチャー1の軸方向に、らせん状の溝が設けられていない所定長さの切り欠き部111が設けられている。これにより、手術時においては、フィックスチャー1の顎骨への螺設を容易かつ確実に行うことができるとともに、手術後においては、切り欠き部111に対応する部位で骨芽細胞による骨形成が進行させることができるため、ねじの緩み等が生じてしまうのを効果的に防止することができる。
また、フィックスチャー1の筒状部12には、後述するアバットメント2が挿入される。フィックスチャー1の内周面には、アバットメント2(チタン部材21)の雄ねじ部211と螺合可能な雌ねじ部13が設けられている。
フィックスチャー1は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、生体適合性、強度等の観点から、チタンまたはチタン合金で構成されたものであるのが好ましい。
[2]アバットメント
アバットメント2は、歯科用インプラント10を用いた術式において、フィックスチャー1に固定される部材であり、また、審美的外観の向上や優れた噛み合わせを得る目的等で用いられる歯冠修復物3により、被覆される部材である。
アバットメント2は、チタンまたはチタン合金で構成されたチタン部材21と、酸化物系セラミックスで構成されたセラミックス部材22とを有するものである。
[2.1]チタン部材
チタン部材21は、アバットメント2を構成する部材のうち、前述したフィックスチャー1の雌ねじ部13に螺合する部材であり、フィックスチャー1の雌ねじ部13に螺合する雄ねじ部211を有している。
チタン部材21は、チタンまたはチタン合金で構成されたものであるが、フィックスチャー1の構成材料と同一の組成を有する材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、フィックスチャー1とアバットメント2との密着性を、特に優れたものとすることができるとともに、フィックスチャー1の構成材料とアバットメント2の構成材料との電位差により、ガルバノ電池が形成されてしまい、口腔内における金属材料が溶出する等の問題が発生するのを確実に防止することができる。
また、図示の構成では、チタン部材21は、後述するセラミックス部材22に螺合する雄ねじ部212を有している。雄ねじ部212は、後述するセラミックス部材22が有する雌ねじ部222に対応する形状を有するものである。また、チタン部材21は、後述するセラミックス部材22に固着・一体化されたものである。したがって、チタン部材21とセラミックス部材22とは強力に固定されており、アバットメント2は、機械的安定性に優れ、口腔内に装着した際における、不適合(がたつき等)等の問題の発生が確実に防止される。
[2.2]セラミックス部材
セラミックス部材22は、後述する歯冠修復物3により被覆される部材である。
図示の構成では、セラミックス部材22は、前述したチタン部材21の雄ねじ部212に螺合する雌ねじ部222を有している。雌ねじ部222は、前述したチタン部材21が有する雄ねじ部212に対応する形状を有するものである。また、セラミックス部材22には、前述したチタン部材21に固着しており、これらは一体化している。したがって、セラミックス部材22とチタン部材21とは強力に固定されており、アバットメント2は、機械的安定性に優れ、口腔内に装着した際における、不適合(がたつき等)等の問題の発生が確実に防止される。また、セラミックス部材22とチタン部材21とが螺合により固定されることにより、以下のような効果が得られる。すなわち、セラミックス部材を構成する酸化物系セラミックスは、表面化学的に、チタン部材21を構成するチタン、チタン合金に対する親和性が低いものである。したがって、螺合ではなく、単に、歯科用セメント等により、チタン部材とセラミックス部材とを接合した場合には、チタン部材とセラミックス部材との接合強度を十分に優れたものとすることが困難である。これに対し、チタン部材21とセラミックス部材22とを螺合により固定することにより、チタン部材21とセラミックス部材22との固定強度は優れたものとなり、歯科用インプラント10を口腔内に装着した際における、不適合等の問題の発生を確実に防止することができる。
また、セラミックス部材22は、歯科用インプラントが後述するような歯冠修復物3で被覆される際に、歯冠修復物3の金属部32と接触する金属接合面(当接面)224を有している。
上述したように、セラミックス部材22は、酸化物系セラミックスで構成されたものである。酸化物系セラミックスは、各種材料(特に、各種セラミックス材料)の中でも、特に優れた生体適合性を有し、生体為害性が極めて低い材料であるとともに、汚れ等の付着が生じにくく、高硬度で強度に優れる等の特性を有する材料である。
セラミックス部材22を構成する酸化物系セラミックスとしては、例えば、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ホウ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化リチウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、セラミックス部材22は、主としてジルコニウムで構成されたものであるのが好ましい。ジルコニアは、各種酸化物系セラミックスの中でも、生体親和性や強度等が、特に優れたものである。したがって、セラミックス部材22が、主としてジルコニアで構成されたものであると、歯科用インプラント10の安全性を特に優れたものとすることができ、歯科用インプラント10適用後における歯ぐきの退縮等の問題の発生をより確実に防止することができるとともに、歯科用インプラント10の耐久性を特に優れたものとすることができる。また、ジルコニアは、各種酸化物系セラミックスの中でも、チタン、チタン合金との密着性が特に低い材料であるため、接着剤等を用いた方法では、チタン、チタン合金で構成された部材と、ジルコニアで構成された部材との密着性、接合強度は非常に低いものとなるが、本発明によれば、チタン部材とセラミックス部材との密着性、接合強度を十分に優れたものとすることができる。すなわち、セラミックス部材が主としてジルコニアで構成されたものであると、本発明による効果は、より顕著なものとして発揮される。なお、本明細書中、「主として」とは、対象とする部材、組成物を構成する材料のうち最も含有量の多い成分のことを指し、その含有量は特に限定されないが、対象とする部材、組成物を構成する材料の50wt%以上であることが好ましく、55wt%以上であることがより好ましく、60wt%以上であることがさらに好ましい。
<歯科用インプラントを用いた手術方法(術式)>
次に、上記のような歯科用インプラント10を用いた手術(術式)について、図2を参照しつつ説明する。
[フィックスチャー埋設処理]
患者に麻酔処理を施した後、ねじ切りされた顎骨50に、フィックスチャー1を螺合させる(2a)。
その後、必要に応じて、フィックスチャー1を歯ぐき(歯肉)60で覆う。
[アバットメント螺合処理]
フィックスチャー埋設処理から、所定期間(通常、3〜6ヶ月程度)経過し、骨芽細胞による骨形成が十分に進行し、フィックスチャー1と顎骨50との結合(オッセオインテグレーション)が十分に進行した後に、アバットメント2を、顎骨50に固定されたフィックスチャー1に螺合する(2b)。
なお、フィックスチャー1が歯肉60で覆われている場合等には、アバットメント2の螺合に先立ち、必要に応じて、歯肉60の切開を行い、フィックスチャー1を露出させる。
[歯冠修復物被覆処理]
次に、型取りにより成形された歯冠修復物3を、アバットメント2のセラミックス部材22に固定する(2c)。
歯冠修復物3は、本手術を行った後に外観上視認されるセラミックスで構成されたセラミックス部31と、その内表面側に設けられ金属材料で構成された金属部32とを有している。歯冠修復物3がこのような構成であることにより、手術後の外観を優れたものとしつつ、噛み合わせを改善したり、歯冠修復物3の割れ等を確実に防止することができる。
セラミックス部31を構成するセラミックスとしては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ホウ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化リチウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン等が挙げられる。
また、金属部32を構成する金属材料は、一般に、チタン部材21の構成材料とは異なる組成を有するものであり、通常、金または金合金が用いられる。金属部32が、金または金合金で構成されたものであると、噛み合わせを改善したり、歯冠修復物3の割れ等を防止する効果がより顕著に発揮される。
歯冠修復物3は、金属部32が、セラミックス部材22の金属接合面224に当接するように、アバットメント2上に被覆される。この際、金属部32は、セラミックス部材22(金属接合面224)には当接するものの、チタン部材21やフィックスチャー1には接触しない。なお、アバットメント2と歯冠修復物との接合には、必要に応じて、歯科用セメント等を用いてもよい。
なお、アバットメント螺合処理の際に、歯肉60の切開を行った場合には、通常、アバットメント螺合処理の後、1〜6週間程度の期間をおき、歯ぐき60の腫れが治まったのを確認してから、本処理を行う。
<歯科用インプラントの製造方法>
次に、上述したような歯科用インプラント10の製造方法について説明する。
[チタン成形体製造工程]
まず、チタンまたはチタン合金で構成された粉末と結合材とを含むチタン成形体形成用組成物を成形して、チタン成形体21’を得る(3a)。本実施形態では、チタン成形体21’を、雄ねじ部212’を有する成形体として製造する。
以下、チタン成形体形成用組成物について、詳細に説明する。
(粉末)
チタン成形体形成用組成物を構成する粉末(金属粉末)の平均粒径は、特に限定されないが、0.3〜100μmであるのが好ましく、0.5〜50μmであるのがより好ましい。粉末の平均粒径が前記範囲内の値であることにより、優れた成形性(成形のし易さ)でチタン成形体21’、およびかかる成形体を脱脂、焼結してなるチタン部材(焼結体)21を製造することができる。また、得られるチタン部材21の密度をより高いものとすることができ、焼結体の機械的強度、寸法精度等の特性をより優れたものとすることができる。これに対し、粉末の平均粒径が前記下限値未満であると、チタン成形体21’の成形性が低下する。また、粉末の平均粒径が前記上限値を超えると、チタン部材21の密度を十分に高めるのが困難となり、チタン部材21の特性が低下するおそれがある。
なお、本発明において、「平均粒径」とは、対象となる粉末の粒度分布において、体積の累積で50%の部分に分布する粉末の粒径を指す。
このような粉末としては、いかなる方法で製造されたものでもよいが、例えば、水アトマイズ法等の液体アトマイズ法(例えば、高速回転水流アトマイズ法、回転液アトマイズ法等)、ガスアトマイズ法等の各種アトマイズ法や、粉砕法、水素化法、水素化−脱水素法等で得られたものを用いることができる。
雄ねじ部212’を有するチタン成形体21’を製造するのに用いる、チタン成形体形成用組成物(チタン成形体21’)中における粉末の含有率は、特に限定されないが、後述するセラミックス成形体形成用組成物(雄ねじ部212’に螺合する雌ねじ部222’を有するセラミックス成形体22’を製造するのに用いるセラミックス成形体形成用組成物(セラミックス成形体22’))中における粉末の含有率よりも、高いものであるのが好ましい。これにより、チタン成形体形成用組成物(チタン成形体21’)中における結合材の含有率を相対的に低いものとすることができ、チタン成形体形成用組成物(チタン成形体21’)中における結合材の含有率を、セラミックス成形体形成用組成物(セラミックス成形体22’)中における結合材の含有率よりも低いものとすることができる。したがって、後述する焼結工程における成形体(脱脂体)の収縮率を、チタン成形体の方が、セラミックス成形体に比べて小さいものとすることができる。その結果、最終的に得られるアバットメント2において、チタン部材21(雄ねじ部212を有する部材としてのチタン部材21)と、セラミックス部材(雌ねじ部222を有する部材としてのセラミックス部材22)との密着性、接合強度を特に優れたものとすることができる。
チタン成形体形成用組成物(チタン成形体21’)中における粉末の含有率の具体的な値は、65〜97wt%であるのが好ましく、68〜95wt%であるのがより好ましい。粉末の含有率が下限値未満であると、得られるチタン部材21の機械的強度、寸法安定性が低下する可能性があるとともに、最終的に得られるアバットメント2において、セラミックス部材22に対するチタン部材21の固着強度を十分に優れたものとするのが困難となる可能性がある。一方、粉末の含有率が上限値を超えると、相対的に後述する結合材の含有率が低くなり、成形時等におけるチタン成形体形成用組成物の流動性が低くなり、操作性が低下する可能性がある。
(結合材)
結合材は、チタン成形体形成用組成物の成形性(成形のし易さ)、チタン成形体21’およびチタン脱脂体21’’の形状の安定性(保形性)に大きく寄与する成分である。チタン成形体形成用組成物が、このような成分を含むことにより、寸法精度に優れた焼結体としてのチタン部材21を容易かつ確実に製造することができる。
結合材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンカーボネート、またはこれらの共重合体等の各種樹脂や、各種ワックス、パラフィン、高級脂肪酸(例:ステアリン酸)、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
雄ねじ部212’を有するチタン成形体21’を製造するのに用いる、チタン成形体形成用組成物(チタン成形体21’)中における結合材の含有率は、特に限定されないが、後述するセラミックス成形体形成用組成物(雌ねじ部222’を有するセラミックス成形体22’を製造するのに用いるセラミックス成形体形成用組成物(セラミックス成形体22’))中における結合材の含有率よりも、低いものであるのが好ましい。これにより、後述する焼結工程における成形体(脱脂体)の収縮率を、チタン成形体21’の方が、セラミックス成形体22’に比べて小さいものとすることができる。その結果、最終的に得られるアバットメント2において、チタン部材21(雄ねじ部212を有する部材としてのチタン部材21)と、セラミックス部材(雌ねじ部222を有する部材としてのセラミックス部材22)との密着性、接合強度を特に優れたものとすることができる。
チタン成形体形成用組成物(チタン成形体21’)中における結合材の含有率の具体的な値は、3〜35wt%であるのが好ましく、5〜32wt%であるのがより好ましい。結合材の含有率が下限値未満であると、成形時等におけるチタン成形体形成用組成物の流動性が低くなり、操作性が低下する可能性がある。一方、結合材の含有率が上限値を超えると、得られるチタン部材21の機械的強度、寸法安定性が低下する可能性があるとともに、最終的に得られるアバットメント2において、セラミックス部材22に対するチタン部材21の固着強度を十分に優れたものとするのが困難となる可能性がある。
(その他の成分)
また、チタン成形体形成用組成物中には、上記以外の成分が含まれていてもよい。
このような成分としては、例えば、分散剤(滑剤)、可塑剤、酸化防止剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これにより、各成分が有する種々の機能をチタン成形体形成用組成物に発揮させることができる。
中でも、チタン成形体形成用組成物が分散剤を含むものであると、粉末の周囲に分散剤を付着させ、チタン成形体形成用組成物中における粉末の分散性を向上させることができ、後述する工程で得られるチタン脱脂体21’’、チタン焼結体(チタン部材21)は、各部位での組成、特性の均一性が、特に優れたものとのなる。また、チタン成形体形成用組成物が分散剤を含むことにより、チタン成形体21’を成形する際における、チタン成形体形成用組成物の流動性を特に優れたものとすることができ、成形型内への充填性を高めることができ、均一な密度のチタン成形体21’をより確実に得ることができる。
分散剤としては、例えば、ステアリン酸、ジステアリン酸、トリステアリン酸、リノレン酸、オクタン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ナフテン酸のような高級脂肪酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸等のアニオン性有機分散剤、4級アンモニウム塩等のカチオン性有機分散剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等の非イオン性有機分散剤、燐酸三カルシウム等の無機系分散剤等が挙げられる。これらの中でも、分散剤としては、高級脂肪酸を主成分とするものが好ましい。高級脂肪酸は、粉末の分散性等に特に優れるものである。
また、高級脂肪酸は、その炭素数が16〜30であるのが好ましく、16〜24であるのがより好ましい。高級脂肪酸の炭素数が前記範囲内であることにより、チタン成形体形成用組成物は、成形性の低下を防止しつつ、保形性に優れたものとなる。また、炭素数が前記範囲内であることにより、高級脂肪酸は、比較的低温でも容易に分解し得るものとなる。
また、チタン成形体形成用組成物が可塑剤を含むものであると、チタン成形体形成用組成物の柔軟性を特に優れたものとすることができ、チタン成形体形成用組成物の成形性を特に優れたものとすることができる。その結果、成形型内への充填性を高めることができ、均一な密度のチタン成形体21’をより確実に得ることができる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル(例:DOP、DEP、DBP)、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、セバシン酸エステル等が挙げられる。
また、酸化防止剤は、結合材を構成する樹脂の酸化を防止する機能を有するものである。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられる。
上記のような各成分を含むチタン成形体形成用組成物は、例えば、各成分に対応する粉末等を混合することにより調製することができる。
また、必要に応じて、混合の後に、混練等を行ってもよい。これにより、例えば、チタン成形体形成用組成物の流動性が高くなり、組成の均一性も向上するため、チタン成形体21’をより高密度で均一性の高いものとして得ることができ、チタン脱脂体21’’、チタン焼結体(チタン部材21)の寸法精度も向上する。
混合物の混練は、例えば、加圧または双腕ニーダー式混練機、ロール式混練機、バンバリー型混練機、1軸または2軸押出機等の各種混練機を用いて行うことができる。
混練条件は、用いる粉末の粒径、結合材の組成、およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げると、混練温度:50〜200℃、混練時間:15〜210分とすることができる。
また、得られた混練物(コンパウンド)は、必要に応じ、粉砕されてペレット(小塊)化される。ペレットの粒径は、例えば、1〜10mm程度とされる。
混練物のペレット化には、ペレタイザ等の粉砕装置を用いて行うことができる。
上記のようなチタン成形体形成用組成物を、所定の方法により成形することにより、チタン成形体21’が得られる。チタン成形体21’の成形方法は、特に限定されないが、成形すべきチタン成形体21’は、微小で複雑な形状を有するものであるため、通常、射出成形が用いられる。なお、射出成形後に、得られた成形体に対しては、例えば、ばり取りや、溝等の微小構造の形成等の目的で、機械加工、放電加工、レーザー加工、エッチング等を施してもよい。チタン成形体形成用組成物を用いて成形される成形体は、比較的高い含有率で、結合剤を含むものであるため、後述するチタン脱脂体21’’やチタン焼結体(チタン部材21)に比べて、加工が容易であるため、このような加工も容易に行うことができる。
[セラミックス成形体製造工程]
他方、酸化物系セラミックスで構成された粉末と結合材とを含むセラミックス成形体形成用組成物を成形して、セラミックス成形体22’を得る(3b)。本実施形態では、セラミックス成形体22’を、雌ねじ部222’を有する成形体として製造する。
以下、セラミックス成形体形成用組成物について、詳細に説明する。
(粉末)
セラミックス成形体形成用組成物を構成する粉末(酸化物系セラミックス粉末)の平均粒径は、特に限定されないが、0.3〜100μmであるのが好ましく、0.5〜50μmであるのがより好ましい。粉末の平均粒径が前記範囲内の値であることにより、優れた成形性(成形のし易さ)でセラミックス成形体22’、およびかかる成形体を脱脂、焼結してなるセラミックス部材(焼結体)22を製造することができる。また、得られるセラミックス部材22の密度をより高いものとすることができ、焼結体の機械的強度、寸法精度等の特性をより優れたものとすることができる。これに対し、粉末の平均粒径が前記下限値未満であると、セラミックス成形体22’の成形性が低下する。また、粉末の平均粒径が前記上限値を超えると、セラミックス部材22の密度を十分に高めるのが困難となり、セラミックス部材22の特性が低下するおそれがある。
このような粉末としては、いかなる方法で製造されたものでもよいが、例えば、気相反応法、粉砕法、共沈法、加水分解制御法、エマルジョン法、ゾル−ゲル法等で得られたものを用いることができる。
雌ねじ部222’を有するセラミックス成形体22’を製造するのに用いる、セラミックス成形体形成用組成物(セラミックス成形体22’)中における粉末の含有率は、特に限定されないが、前述したチタン成形体形成用組成物(雄ねじ部212’を有するチタン成形体21’を製造するのに用いるチタン成形体形成用組成物(チタン成形体21’))中における粉末の含有率よりも、低いものであるのが好ましい。これにより、セラミックス成形体形成用組成物(セラミックス成形体22’)中における結合材の含有率を相対的に高いものとすることができ、セラミックス成形体形成用組成物(セラミックス成形体22’)中における結合材の含有率を、チタン成形体形成用組成物(チタン成形体21’)中における結合材の含有率よりも高いものとすることができる。したがって、後述する焼結工程における成形体(脱脂体)の収縮率を、セラミックス成形体の方が、チタン成形体に比べて大きいものとすることができる。その結果、最終的に得られるアバットメント2において、寸法精度を十分に優れたものとしつつ、チタン部材21(雄ねじ部212を有する部材としてのチタン部材21)と、セラミックス部材(雌ねじ部222を有する部材としてのセラミックス部材22)との密着性、接合強度を特に優れたものとすることができる。
セラミックス成形体形成用組成物(セラミックス成形体22’)中における粉末の含有率の具体的な値は、60〜94wt%であるのが好ましく、65〜92wt%であるのがより好ましい。粉末の含有率が下限値未満であると、得られるセラミックス部材22の機械的強度、寸法安定性が低下する可能性がある。一方、粉末の含有率が上限値を超えると、相対的に後述する結合材の含有率が低くなり、成形時等におけるセラミックス成形体形成用組成物の流動性が低くなり、操作性が低下する可能性があるとともに、最終的に得られるアバットメント2において、チタン部材21に対するセラミックス部材22の固着強度を十分に優れたものとするのが困難となる可能性がある。
(結合材)
結合材は、セラミックス成形体形成用組成物の成形性(成形のし易さ)、セラミックス成形体22’およびセラミックス脱脂体22’’の形状の安定性(保形性)に大きく寄与する成分である。セラミックス成形体形成用組成物が、このような成分を含むことにより、寸法精度に優れた焼結体としてのセラミックス部材22を容易かつ確実に製造することができる。
結合材としては、例えば、前述したチタン成形体形成用組成物の構成材料として例示したものを用いることができる。
雌ねじ部222’を有するセラミックス成形体22’を製造するのに用いる、セラミックス成形体形成用組成物(セラミックス成形体22’)中における結合材の含有率は、特に限定されないが、前述したチタン成形体形成用組成物(雄ねじ部212’を有するチタン成形体21’を製造するのに用いるチタン成形体形成用組成物(チタン成形体21’))中における結合材の含有率よりも、高いものであるのが好ましい。これにより、後述する焼結工程における成形体(脱脂体)の収縮率を、チタン成形体21’の方が、セラミックス成形体22’に比べて小さいものとすることができる。その結果、最終的に得られるアバットメント2において、チタン部材21(雄ねじ部212を有する部材としてのチタン部材21)と、セラミックス部材(雌ねじ部222を有する部材としてのセラミックス部材22)との密着性、接合強度を特に優れたものとすることができる。
また、セラミックス成形体形成用組成物(セラミックス成形体22’)中における結合材の含有率は、6〜40wt%であるのが好ましく、8〜35wt%であるのがより好ましい。結合材の含有率が下限値未満であると、成形時等におけるセラミックス成形体形成用組成物の流動性が低くなり、操作性が低下する可能性があるとともに、最終的に得られるアバットメント2において、チタン部材21に対するセラミックス部材22の固着強度を十分に優れたものとするのが困難となる可能性がある。一方、結合材の含有率が上限値を超えると、得られるセラミックス部材22の機械的強度、寸法安定性が低下する可能性がある。
また、チタン成形体21’(雄ねじ部を有する成形体)中における結合材の含有率をC[wt%]、セラミックス成形体22’(雌ねじ部を有する成形体)中における結合材の含有率をC[wt%]としたとき、3≦C−C≦15の関係を満足するのが好ましく、4≦C−C≦12の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、最終的に得られる歯科用インプラント10において、チタン部材21とセラミックス部材22との密着性、接合強度を特に優れたものとすることができるとともに、チタン成形体21’、セラミックス成形体22’が、脱脂処理等において、不本意な変形をしてしまうのを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる歯科用インプラント10を、機械的安定性および寸法精度が特に優れたものとすることができる。
(その他の成分)
また、セラミックス成形体形成用組成物中には、上記以外の成分が含まれていてもよい。
このような成分としては、例えば、前述したチタン成形体形成用組成物の構成成分として例示したものを用いることができる。これにより、上記と同様な効果が得られる。
上記のような各成分を含むセラミックス成形体形成用組成物は、例えば、各成分に対応する粉末等を混合することにより調製することができる。
また、必要に応じて、混合の後に、混練等を行ってもよい。これにより、例えば、セラミックス成形体形成用組成物の流動性が高くなり、組成の均一性も向上するため、セラミックス成形体22’をより高密度で均一性の高いものとして得ることができ、セラミックス脱脂体22’’、セラミックス焼結体(セラミックス部材22)の寸法精度も向上する。
混合物の混練は、前述したチタン成形体形成用組成物に関する説明で述べたのと同様の方法、条件により行うことができる。
上記のようなセラミックス成形体形成用組成物を、所定の方法により成形することにより、セラミックス成形体22’が得られる。セラミックス成形体22’の成形方法は、特に限定されないが、成形すべきセラミックス成形体22’は、微小で複雑な形状を有するものであるため、通常、射出成形が用いられる。なお、射出成形後に、得られた成形体に対しては、例えば、ばり取りや、溝等の微小構造の形成等の目的で、機械加工、レーザー加工、エッチング等を施してもよい。セラミックス成形体形成用組成物を用いて成形される成形体は、比較的高い含有率で、結合剤を含むものであるため、後述するセラミックス脱脂体22’’やセラミックス焼結体(セラミックス部材22)に比べて、加工が容易であるため、このような加工も容易に行うことができる。
本工程で得られるセラミックス成形体22’は、セラミックス部材22が有する雌ねじ部222に対応する形状の雌ねじ部222’を有している。すなわち、脱脂工程、焼結工程での収縮分に対応する分だけ、セラミックス部材22の方が、セラミックス成形体22’に比べて小さい以外は、セラミックス部材22とセラミックス成形体22’とは、同様な形状を有している。
[組立工程]
次に、上記のようにして得られたチタン成形体21’と、セラミックス成形体22’とを螺合により組み立て、組立体を得る(3c)。
本工程では、図4(4a)に示すように、セラミックス成形体22’の雌ねじ部222’(セラミックス部材22が有する雌ねじ部222に対応する雌ねじ部222’)が、チタン成形体21’が有する雄ねじ部212’(チタン部材21が有する雄ねじ部212に対応する雄ねじ部212’)に螺合するようにして、チタン成形体21’と、セラミックス成形体22’とを組み立てる。
[脱脂工程]
次に、チタン成形体21’とセラミックス成形体22’との組立体に対して脱脂処理を施す。これにより、チタン成形体21’中に含まれる結合材、セラミックス成形体22’中に含まれる結合材を除去し、チタン成形体21’をチタン脱脂体21’’とし、セラミックス成形体22’をセラミックス脱脂体22’’とする(3d)。
この脱脂処理は、特に限定されないが、非酸化性雰囲気中、例えば真空または減圧状態下(例えば1×10−1〜1×10−6Torr(13.3〜1.33×10−4Pa))、または、窒素ガス、アルゴンガス等のガス中で、熱処理を行うことによりなされる。
また、脱脂工程(熱処理)における処理温度は、特に限定されないが、100〜780℃であるのが好ましく、150〜720℃であるのがより好ましい。
また、脱脂工程(熱処理)における処理時間(熱処理時間)は、0.5〜20時間であるのが好ましく、1〜10時間であるのがより好ましい。
また、このような熱処理による脱脂は、種々の目的(例えば、脱脂時間の短縮等の目的)で、複数の工程(段階)に分けて行ってもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で脱脂するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。また、チタン成形体21’とセラミックス成形体22’とが、互いに異なる結合材を含む材料で構成されたものである場合、例えば、まず、一方の成形体(より低温で除去される結合材を含む成形体)から優先的に結合材を除去するような条件で、第1の脱脂処理を行い、その後、他方の成形体(より高温で除去される結合材を含む成形体)から優先的に結合材を除去するような条件で、第2の脱脂処理を行ってもよい。
また、上記のような脱脂処理後に、チタン脱脂体21’’とセラミックス脱脂体22’’とからなる組立体に対して、例えば、ばり取りや、溝等の微小構造の形成等の目的で、機械加工、放電加工、レーザー加工、エッチング等を施してもよい。脱脂体(チタン脱脂体21’’、セラミックス脱脂体22’’)は、焼結体(チタン部材21、セラミックス部材22)に比べて加工が容易である。
なお、成形体(チタン成形体21’、セラミックス成形体22’)中に含まれていた結合材は、本工程において、完全に除去されていなくてもよい。このような場合であっても、後述する焼結工程で、残存する結合材を好適に除去することができる。
[焼結工程]
次に、脱脂処理が施された組立体に対して焼結処理を施すことにより、チタン脱脂体21’’をチタン部材(焼結体)21にするとともに、セラミックス脱脂体22’’をセラミックス部材(焼結体)22とし、これにより、チタン部材21とセラミックス部材22とが螺合により固定されたものとする(3e)。これにより、チタン部材21とセラミックス部材22とが接合したアバットメント2が得られる。このようにして得られるアバットメント2は、チタン部材21とセラミックス部材22とが螺合により、強力に固定されたものである。このため、アバットメント2は、機械的安定性に優れ、口腔内に装着した際における、不適合等の問題の発生が確実に防止される。
特に、本実施形態では、チタン成形体21’とセラミックス成形体22’とを螺合により組み立てた組立体に対して脱脂処理および焼結処理を施すことにより、チタン部材21をセラミックス部材22に強力に固着・一体化させることができる。これは、以下のように説明することができる。すなわち、組立体を構成するチタン成形体21’とセラミックス成形体22’とは、螺合により固定されているが、脱脂工程、焼結工程における収縮により、螺合部を構成する雌ねじ部、雄ねじ部のピッチも小さくなる(図4(4b)参照)。このため、チタン部材21とセラミックス部材22との固定強度は、チタン成形体21’とセラミックス成形体22’との固定強度に比べて、高いものとなる。特に、チタン成形体21’(雄ねじ部を有する成形体)中における結合材の含有率と、セラミックス成形体22’(雌ねじ部を有する成形体)中における結合材の含有率とが、前述したような関係を満足する場合、両者の収縮率の違いにより、より強固に密着・一体化することとなり、歯科用インプラントの機械的安定性は、さらに優れたものとなる。また、一般に、セラミックス成形体22’を構成する酸化物形セラミックスは、チタン成形体21’を構成するチタン、チタン合金に比べて、融点が高いものである。したがって、焼結工程において、セラミックス脱脂体22’’を確実に焼結させた場合、チタン部材21は、セラミックス脱脂体22’’(セラミックス部材22)に比べて、変形しやすい状態になる。このため、チタン部材21のセラミックス部材22の表面への固着が進行したり、チタン部材21を構成するチタンまたはチタン合金の一部が、セラミックス部材22(セラミックス脱脂体22’’)の空孔内に侵入したしする。その結果、得られるアバットメント2において、チタン部材21とセラミックス部材22との接合強度は、非常に高いものとなる。なお、焼結工程においては、上記のように、セラミックス部材22に比べて、チタン部材21は変形を生じやすいが、上述したような範囲の温度であれば、チタン部材21についても、不本意な変形を十分に防止することができる。
これに対し、例えば、歯科用セメントを用いて、それぞれ別々に作製したセラミックス部材とチタン部材とを接合することも考えられるが、一般に、チタン、チタン合金は、セラミックスとの接合性(接着性)に劣るものである。したがって、単に、セラミックス部材とチタン部材とを歯科用セメントで接合しただけでは、十分な接合強度が得られず、生体に適用した後に、歯科用インプラントが崩壊してしまう可能性がある。また、セラミックス部材とチタン部材との接合に、一般的な歯科用セメントよりも強力な接着剤を用いることも考えられるが、このような場合、接着剤中に含まれる成分が、歯科用インプラントが適用された生体に対して悪影響を及ぼす危険性がある。
この焼結処理は、特に限定されないが、非酸化性雰囲気中、例えば真空または減圧状態下(例えば1×10−2〜1×10−6Torr(133〜1.33×10−4Pa))、または、窒素ガス、アルゴンガス等のガス中で、熱処理を行うことによりなされる。
なお、焼結工程を行う雰囲気は、工程の途中で変化してもよい。例えば、最初に減圧雰囲気とし、途中で不活性雰囲気に切り替えるようにしてもよい。
また、焼結工程は、2段階またはそれ以上に分けて行ってもよい。これにより、焼結の効率が向上し、より短い焼結時間で焼結を行うことができる。
また、焼結工程は、前述の脱脂工程と連続して行うのが好ましい。これにより、脱脂工程は、焼結前工程を兼ねることができ、脱脂体(チタン脱脂体21’’、セラミックス脱脂体22’’)に予熱を与えて、脱脂体をより確実に焼結させることができる。
また、焼結工程(熱処理)における処理温度は、特に限定されないが、1000〜1500℃であるのが好ましく、1050〜1450℃であるのがより好ましい。処理温度が前記範囲内の値であると、焼結時における不本意な変形を防止しつつ、チタン部材21とセラミックス部材22とがより強固に接合・一体化したアバットメント2を、確実に得ることができる。
また、焼結工程(熱処理)における処理時間(熱処理時間)は、0.5〜20時間であるのが好ましく、1〜15時間であるのがより好ましい。
また、このような熱処理による焼結は、種々の目的(例えば、焼結時間の短縮等の目的)で、複数の工程(段階)に分けて行ってもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で脱脂するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。
また、上記のような焼結処理後に、得られた焼結体に対して、例えば、ばり取りや、溝等の微小構造の形成等の目的で、機械加工、放電加工、レーザー加工、エッチング等を施してもよい。焼結体は、成形体(チタン成形体21’、セラミックス成形体22’)や脱脂体(チタン脱脂体21’’、セラミックス脱脂体22’’)に比べて、製造すべき部材(チタン部材21、セラミックス部材22)に近い形状、大きさを有するものである。このため、成形体や脱脂体に対して機械加工、放電加工、レーザー加工、エッチング等を施す場合に比べて、最終的に得られるアバットメント2(チタン部材21、セラミックス部材22)を、より寸法精度の高いものとすることができる。
[フィックスチャーの製造]
上記のように、アバットメント2を製造する一方で、フィックスチャー1の製造を行う。
フィックスチャー1の製造方法は、特に限定されないが、フィックスチャー1の構成材料で構成された粉末と結合材とを含む成形体形成用組成物を成形して、フィックスチャー用成形体を得る成形工程(フィックスチャー用成形体製造工程)と、前記フィックスチャー用成形体に対して脱脂処理を施すことにより、前記フィックスチャー用成形体中に含まれる前記結合材を除去し、前記フィックスチャー用成形体をフィックスチャー用脱脂体とする脱脂工程(フィックスチャー用成形体脱脂工程)と、前記フィックスチャー用脱脂体に対して焼結処理を施す焼結工程(フィックスチャー用脱脂体焼結工程)とを有する方法により製造されたものであるのが好ましい。上記のような方法を用いることにより、微細な構造を有する歯科用インプラント10に用いられるフィックスチャー1であっても、容易に、かつ、寸法精度よく成形することができる。上記のような方法でフィックスチャー1を製造する場合、フィックスチャー用成形体は、上述したチタン成形体と同様にして、製造することができる。また、フィックスチャー用成形体に対する脱脂処理、および、その後に行われる焼結処理は、上記の脱脂工程(組立体に対して施す脱脂工程)、焼結工程(組立体に対して施す焼結工程)で説明したのと同様な方法、条件により行うことができる。
上記のようにして、フィックスチャー1およびアバットメント2を製造することにより、インプラント10が得られる(3f)。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、歯科用インプラント(特に、アバットメント)の製造方法では、必要に応じて、任意の工程を追加することもできる。
また、前述した実施形態では、歯科用インプラントが、フィックスチャーとアバットメントとを備えるものとして説明したが、チタン部材とセラミックス部材とが上述したように接合した構造を有するものであればよく、例えば、本発明の歯科用インプラントは、チタン部材およびセラミックス部材のみからなるものであってもよい。
また、前述した実施形態では、チタン成形体とセラミックス成形体とを螺合により組み立てた後に、脱脂処理、焼結処理を施すものとして説明したが、予め、脱脂処理を施した脱脂体を用いて組立体を得てもよい。また、本発明の歯科用インプラントは、それぞれ、脱脂処理、焼結処理を施すことにより得られた焼結体としてのチタン部材およびセラミックス部材を螺合により組み立ててもよい。すなわち、本発明の歯科用インプラントは、脱脂処理、焼結処理を施した後に、得られた焼結体としてのチタン部材とセラミックス部材とを螺合により組み立てることにより得られたものであってもよい。また、本発明の組立体は、チタン部材とセラミックス部材とが螺合により固定されたものであればよく、例えば、成形体と脱脂体との組立体、成形体と焼結体との組立体、脱脂体と焼結体との組立体等を用い、その後、必要に応じて、脱脂処理、焼結処理等の処理を施すことにより製造されたものであってもよい。
また、前述した実施形態では、チタン成形体(チタン部材)が雄ねじ部を有するものであり、セラミックス成形体(セラミックス部材)が雌ねじ部を有するものとして説明したが、例えば、チタン成形体(チタン部材)が雌ねじ部を有するものであり、セラミックス成形体(セラミックス部材)が雄ねじ部を有するものであってもよい。
また、前述した実施形態では、アバットメントが2つの部材からなるものとして説明したが、3つ以上の部材からなるものであってもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.歯科用インプラントの製造
(実施例1)
1−1.フィックスチャーの製造
まず、ガスアトマイズ法により製造された平均粒径20μmのTi粉末を用意した。
このTi粉末:91wt%に、ポリスチレン(PS):2.7wt%、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA):2.7wt%およびパラフィンワックス:2.3wt%から構成される結合材と、ジブチルフタレート(可塑剤):1.3wt%とを混合し、これらを加圧ニーダー(混練機)にて100℃×60分の条件で混練した。この混練は、窒素雰囲気中で行った。
次に、この混練物を粉砕して、平均粒径5mmのペレットとし、該ペレットを用い、材料温度:130℃、射出圧力:10.8MPa(110kgf/cm)という成形条件で、射出成形機にて射出成形を繰り返し行い、所定数量のフィックスチャー用成形体を得た。
次に、上記のようにして得られたフィックスチャー用成形体に対し、温度:450℃、時間:1時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)という脱脂条件で脱脂処理を施すことにより、フィックスチャー用成形体中に含まれる結合材を除去し、フィックスチャー用成形体をフィックスチャー用脱脂体とした。
次に、温度:1200℃、時間:3時間、雰囲気:真空という焼結条件で、フィックスチャー用脱脂体に焼結処理を施し、焼結体を得た。
その後、得られた焼結体に対して、機械加工を施し、切り欠き部(図1(1a)参照)を形成することにより、目的とするフィックスチャーを得た。
1−2.アバットメントの製造
<チタン成形体製造工程>
まず、ガスアトマイズ法により製造された平均粒径20μmのTi粉末を用意した。
このTi粉末:91wt%に、ポリスチレン(PS):2.7wt%、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA):2.7wt%およびパラフィンワックス:2.3wt%から構成される結合材と、ジブチルフタレート(可塑剤):1.3wt%とを混合し、これらを加圧ニーダー(混練機)にて100℃×60分の条件で混練した。この混練は、窒素雰囲気中で行った。
次に、この混練物を粉砕して、平均粒径5mmのペレットとし、該ペレットを用い、材料温度:130℃、射出圧力:10.8MPa(110kgf/cm)という成形条件で、射出成形機にて射出成形を繰り返し行い、所定数量のチタン成形体(セラミックス成形体に螺合する雄ねじ部を有するチタン成形体)を得た(図3(3a)参照)。得られたチタン成形体の組成は、製造に用いた混合物(組成物)の組成と同一であった。
<セラミックス成形体製造工程>
まず、共沈法により製造された平均粒径0.5μmのジルコニア粉末を用意した。
このジルコニア粉末:84wt%に、ポリスチレン(PS):4.8wt%、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA):3.8wt%およびパラフィンワックス:4.8wt%から構成される結合材と、ジブチルフタレート(可塑剤):2.6wt%とを混合し、これらを加圧ニーダー(混練機)にて100℃×60分の条件で混練した。この混練は、窒素雰囲気中で行った。
次に、この混練物を粉砕して、平均粒径3mmのペレットとし、該ペレットを用い、材料温度:140℃、射出圧力:10.8MPa(110kgf/cm)という成形条件で、射出成形機にて射出成形を繰り返し行い、所定数量のセラミックス成形体(チタン成形体に螺合する雌ねじ部を有するセラミックス成形体)を得た(図3(3b)参照)。得られたセラミックス成形体の組成は、製造に用いた混合物(組成物)の組成と同一であった。
<組立工程>
次に、上記のようにして得られたチタン成形体と、セラミックス成形体とを、螺合により組み立て、組立体とした(図3(3c)参照)。
<脱脂工程>
次に、上記のようにして得られた組立体に対し、温度:450℃、時間:2時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)という脱脂条件で脱脂処理を施すことにより、チタン成形体中に含まれる結合材、および、セラミックス成形体中に含まれる結合材を除去することにより、チタン成形体をチタン脱脂体とし、セラミックス成形体をセラミックス脱脂体とした(図3(3d)参照)。
<焼結工程>
次に、温度:1400℃、時間:5時間、雰囲気:アルゴンガス(大気圧)という焼結条件で焼結処理を施すことにより、チタン脱脂体を焼結体であるチタン部材にするとともに、セラミックス脱脂体を焼結体であるセラミックス部材とし、チタン部材をセラミックス部材に固着・一体化させた(図3(3e)参照)。
<機械加工工程>
その後、チタン部材に対し機械加工を施し、フィックスチャーと螺合する側の雄ねじ部の形状を調整することにより、目的とするアバットメントが得られた(図1参照)。このようにして得られたアバットメントは、チタン部材の雄ねじ部と、セラミックス部材の雌ねじ部とが、螺合により、強固に固着・一体化したものであった。
そして、上記のようにフィックスチャーとアバットメントとからなる歯科用インプラントを得た。
(実施例2〜7)
アバットメント(チタン部材、セラミックス部材)の製造に用いる組成物(混練物)の組成を変更するとともに、フィックスチャーの製造に用いる組成物(混練物)として、チタン成形体に用いた組成物を同一のものを用い、さらに、表1に示すように、アバットメントの製造条件を変更した以外は、前記実施例1と同様にして、歯科用インプラントを製造した。
(比較例1)
アバットメントを、前記各実施例で製造したものと同様の外形を有し、かつ、チタンで一体的に形成された部材として製造した以外は、前記実施例1と同様にして歯科用インプラントを製造した。
以下、本比較例でのアバットメントの製造方法について、より詳細に説明する。
まず、ガスアトマイズ法により製造された平均粒径20μmのTi粉末:91wt%に、ポリスチレン(PS):2.7wt%、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA):2.7wt%およびパラフィンワックス:2.3wt%から構成される結合材と、ジブチルフタレート(可塑剤):1.3wt%とを混合し、これらを加圧ニーダー(混練機)にて100℃×60分の条件で混練した。この混練は、窒素雰囲気中で行った。
次に、この混練物を粉砕して、平均粒径5mmのペレットとし、該ペレットを用い、材料温度:130℃、射出圧力:10.8MPa(110kgf/cm)という成形条件で、射出成形機にて射出成形を繰り返し行い、目的とするアバットメントに対応する形状を有する成形体を、所定数量製造した。なお、この際、後の脱脂工程、焼結工程での収縮分を考慮して、成形体の大きさを決定した。
次に、上記のようにして得られた成形体に対し、温度:450℃、時間:1時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)という脱脂条件で脱脂処理を施すことにより、成形体中に含まれる結合材を除去し、成形体を脱脂体とした。
次に、脱脂体に対し、温度:1200℃、時間:3時間、雰囲気:アルゴンガス(大気圧)という焼結条件で焼結処理を施すことにより、焼結体を得た。
その後、得られた焼結体に対し機械加工を施し、雄ねじ部の形状を調整することにより、目的とするアバットメントが得られた。
(比較例2)
アバットメントを、前記各実施例で製造したものと同様の外形を有し、かつ、ジルコニアで一体的に形成された部材として製造した以外は、前記実施例1と同様にして歯科用インプラントを製造した。
以下、本比較例でのアバットメントの製造方法について、より詳細に説明する。
まず、共沈法により製造された平均粒径0.5μmのジルコニア粉末:84wt%に、ポリスチレン(PS):4.8wt%、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA):3.8wt%およびパラフィンワックス:4.8wt%から構成される結合材と、ジブチルフタレート(可塑剤):2.6wt%とを混合し、これらを加圧ニーダー(混練機)にて100℃×60分の条件で混練した。この混練は、窒素雰囲気中で行った。
次に、この混練物を粉砕して、平均粒径3mmのペレットとし、該ペレットを用い、材料温度:140℃、射出圧力:10.8MPa(110kgf/cm)という成形条件で、射出成形機にて射出成形を繰り返し行い、目的とするアバットメントに対応する形状を有する成形体を、所定数量製造した。なお、この際、後の脱脂工程、焼結工程での収縮分を考慮して、成形体の大きさを決定した。
次に、上記のようにして得られた成形体に対し、温度:500℃、時間:2時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)という脱脂条件で脱脂処理を施すことにより、成形体中に含まれる結合材を除去し、成形体を脱脂体とした。
次に、脱脂体に対し、温度:1450℃、時間:3時間、雰囲気:大気(空気)という焼結条件で焼結処理を施すことにより、焼結体を得た。
その後、得られた焼結体に対し機械加工を施し、雄ねじ部の形状を調整することにより、目的とするアバットメントが得られた。
(比較例3)
それぞれ別々に作製されたチタン部材(焼結体)とセラミックス部材(焼結体)とを歯科用セメントを用いて接合することにより、アバットメントを製造した以外は、前記実施例1と同様にして歯科用インプラントを製造した。なお、アバットメントの外形は、前記各実施例で製造したものと同様になるようにした。
以下、本比較例でのアバットメントの製造方法について、より詳細に説明する。
<チタン部材の製造>
まず、ガスアトマイズ法により製造された平均粒径20μmのTi粉末:Ti粉末:91wt%に、ポリスチレン(PS):2.7wt%、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA):2.7wt%およびパラフィンワックス:2.3wt%から構成される結合材と、ジブチルフタレート(可塑剤):1.3wt%とを混合し、これらを加圧ニーダー(混練機)にて100℃×60分の条件で混練した。この混練は、窒素雰囲気中で行った。
次に、この混練物を粉砕して、平均粒径5mmのペレットとし、該ペレットを用い、材料温度:130℃、射出圧力:10.8MPa(110kgf/cm)という成形条件で、射出成形機にて射出成形を繰り返し行い、図5に示すようなアバットメントの下部側(フィックスチャーに螺合する部材)に対応する形状のチタン成形体を、所定数量製造した。なお、この際、後の脱脂工程、焼結工程での収縮分を考慮して、チタン成形体の大きさを決定した。
次に、上記のようにして得られたチタン成形体に対し、温度:450℃、時間:1時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)という脱脂条件で脱脂処理を施すことにより、チタン成形体中に含まれる結合材を除去し、チタン成形体をチタン脱脂体とした。
次に、チタン脱脂体に対し、温度:1200℃、時間:3時間、雰囲気:アルゴンガス(大気圧)という焼結条件で焼結処理を施すことにより、チタン焼結体を得た。
その後、得られたチタン焼結体に対し機械加工を施し、雄ねじ部の形状を調整することにより、目的とするチタン部材が得られた。
<セラミックス部材の製造>
まず、共沈法により製造された平均粒径0.5μmのジルコニア粉末:84wt%に、ポリスチレン(PS):4.8wt%、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA):3.8wt%およびパラフィンワックス:4.8wt%から構成される結合材と、ジブチルフタレート(可塑剤):2.6wt%とを混合し、これらを加圧ニーダー(混練機)にて100℃×60分の条件で混練した。この混練は、窒素雰囲気中で行った。
次に、この混練物を粉砕して、平均粒径3mmのペレットとし、該ペレットを用い、材料温度:140℃、射出圧力:10.8MPa(110kgf/cm)という成形条件で、射出成形機にて射出成形を繰り返し行い、図5に示すようなアバットメントの上部側(歯冠修復物で被覆される部材)に対応する形状を有するセラミックス成形体を、所定数量製造した。なお、この際、後の脱脂工程、焼結工程での収縮分を考慮して、セラミックス成形体の大きさを決定した。
次に、上記のようにして得られたセラミックス成形体に対し、温度:500℃、時間:2時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)という脱脂条件で脱脂処理を施すことにより、セラミックス成形体中に含まれる結合材を除去し、セラミックス成形体をセラミックス脱脂体とした。
次に、セラミックス脱脂体に対し、温度:1450℃、時間:3時間、雰囲気:アルゴンガス(大気圧)という焼結条件で焼結処理を施すことにより、セラミックス部材を得た。
<チタン部材とセラミックス部材との接合(アバットメントの完成)>
その後、上記のように、別々に作製されたチタン部材(焼結体)とセラミックス部材(焼結体)とを歯科用セメント(GC社製、グラスアイオノマー)を用いて接合することにより、アバットメントを製造した。
各実施例および各比較例についてのフィックスチャー、アバットメントの製造条件を表1にまとめて示し、各実施例および各比較例の歯科用インプラントの構成を表2にまとめて示した。なお、表1中、雌ねじ部の有無の欄には、チタン成形体と螺合する雌ねじ部の有無を示し、雄ねじ部の有無の欄には、セラミックス成形体と螺合する雄ねじ部の有無を示した。また、表2中、雌ねじ部の有無の欄には、チタン部材と螺合する雌ねじ部の有無を示し、雄ねじ部の有無の欄には、セラミックス部材と螺合する雄ねじ部の有無を示した。また、比較例3については、脱脂工程の欄には、上段にチタン成形体に対する脱脂工程の処理条件を示し、下段にセラミックス成形体に対する脱脂工程の処理条件を示し、焼結工程の欄には、上段にチタン脱脂体に対する焼結工程の処理条件を示し、下段にセラミックス脱脂体に対する焼結工程の処理条件を示した。また、表2中、比較例1、2については、フィックスチャーに螺合される部位(本発明でのチタン部材に対応する部位)についての条件をチタン部材の欄に示し、歯冠修復物で被覆される部位(本発明でのセラミックス部材に対応する部位)についての条件をセラミックス部材の欄に示した。
Figure 0004321638
Figure 0004321638
2.歯冠修復物の接着
前記各実施例で得られた歯科用インプラントについて、フィックスチャーとアバットメントを螺合した状態で、アバットメントのフィックスチャーに螺合している側とは反対の面(金属接合面(図1参照))に、歯科用セメント(サンメディカル社製、スーパーボンド)を介して、歯冠修復物を接着した。歯冠修復物としては、内表面側(アバットメントに対向する面側)に金(Au)で構成された金属層を有し、外表面側に(アバットメントに対向する面とは反対の面側)に、酸化ケイ素(シリカ)および酸化アルミニウム(アルミナ)で構成されたセラミックス部を有するものを用いた。
その後、歯科用セメントを硬化させることにより、歯冠修復物を歯科用インプラントに固定した。
また、前記各比較例で得られた歯科用インプラントについても、上記と同様に、前記各実施例のアバットメントの金属接合面に対応する部位に、歯科用セメント(サンメディカル社製、スーパーボンド)を介して、歯冠修復物を被覆し、その後、歯科用セメントを硬化させた。
3.評価
3−1.金属イオンの溶出量の測定
上記のようにして歯冠修復物を接着した前記各実施例および各比較例の歯科用インプラントについて、それぞれ、以下のような方法で、金属イオンの溶出量を求めた。
歯冠修復物を接着したアバットメントを1wt%乳酸溶液80mL中に3ヶ月間浸漬した。その後、溶液中へのチタンの溶出量を、プラズマ発光分析装置を用いて分析した。
3−2.固定強度の測定
上記のようにして歯冠修復物を接着した前記各実施例および各比較例の歯科用インプラント(上記の「3−1.金属イオンの溶出量の測定」に用いたものとは異なるもの)について、それぞれ、以下のような方法で、歯科用インプラントと歯冠修復物との固定強度(接合強度)を求めた。
図6に示すような治具を用い、アバットメントを固定台に取り付け雄ねじ部にチャックを装着した。これを引張試験機に装着し、引き抜き法による強度試験を行った。
3−3.落下試験
上記のようにして歯冠修復物を接着した前記各実施例および各比較例の歯科用インプラント(上記の「3−1.金属イオンの溶出量の測定」、「3−2.固定強度の測定」に用いたものとは異なるもの)について、それぞれ、以下のような方法で、落下試験を行った。
歯冠修復物を接着した前記各実施例および各比較例の歯科用インプラント(各10個)を、高さ2mから、厚さ2cmのステンレス鋼製の板材上に、100回繰り返し落下させ、その際の外観を目視により観察し、以下の4段階の基準に従い評価した。
A:歯科用インプラントの割れ、欠け等が一切認められない。
B:1〜5個の歯科用インプラントにおいて、わずかな割れ、欠け等が認められる。
C:1〜5個の歯科用インプラントにおいて、顕著な割れ、欠け等が認められる。また は、6〜10個の歯科用インプラントにおいて、わずかな割れ、欠け等が認められ
る。
D:6〜10個の歯科用インプラントにおいて、顕著な割れ、欠け等が認められる。
これらの結果を、表3にまとめて示す。
Figure 0004321638
表3から明らかなように、本発明では、いずれも、金属イオンの溶出量が十分に少ないものであった。また、本発明の歯科用インプラントは、歯冠修復物との固定強度(接合強度)に優れていた。また、本発明の歯科用インプラントは、歯冠修復物との間での不適合、チタン部材とセラミックス部材との間での不適合等がなかった。
これに対し、各比較例では、満足のいく結果が得られなかった。すなわち、アバットメントがチタンのみで構成された比較例1では、金属イオンの溶出量が非常に多かった。また、アバットメントがセラミックス(ジルコニア)のみで構成された比較例2では、機械的強度が低く、落下試験の評価が非常に低かった。また、アバットメントが、チタン部材とセラミックス部材とが単に歯科用セメントで接合されたものである比較例3では、チタン部材とセラミックス部材との接合強度が不十分で、比較的弱い力で、チタン部材とセラミックス部材とが分離してしまった。また、比較例3では、機械的強度が低く、落下試験の評価が非常に低かった。
また、比較例1については、歯科用インプラント(アバットメント)と歯冠修復物との接合に用いる歯科用セメントの利用量を増やし、アバットメントと歯冠修復物とが直接接触しないようして、前記と同様な評価を行ったところ、歯科用インプラントと歯冠修復物との固定強度(接合強度)が著しく低下すること(接合強度:9MPa)が確認された。また、このように、歯科用セメントの利用量を増やした場合、歯冠修復物をアバットメントに接着する際、歯科用インプラントに固定される歯冠修復物の高さや角度等を、設計通りに調整するのが非常に困難であった。
本発明の歯科用インプラントの好適な実施形態を示す図であり、(1a)は、フィックスチャーとアバットメントとを螺合させた状態の正面図、(1b)は、フィックスチャーとアバットメントとを螺合させていない状態での正面図、(1c)は、フィックスチャーとアバットメントとを螺合させていない状態での縦断面図である。 歯科用インプラントを用いた手術方法(術式)を説明するための図である。 本発明の歯科用インプラントの製造方法の好適な実施形態を示す工程図である。 組み立て状態にあるチタン成形体とセラミックス部材との螺合部付近の状態、および、焼結工程を行った後のチタン部材とセラミックス部材との螺合部付近の状態を説明するための縦断面図である。 比較例3で製造したアバットメントの縦断面図である。 固定強度の測定に用いた治具の構成を模式的に示す図、固定強度の測定方法を説明するための図である。
符号の説明
10…歯科用インプラント 1…フィックスチャー 11…雄ねじ部 111…切り欠き部 12…筒状部 13…雌ねじ部 2…アバットメント 21…チタン部材(焼結体) 211…雄ねじ部 212…雄ねじ部 21‘……チタン成形体 212’…雄ねじ部 21’’…チタン脱脂体 212’’…雄ねじ部 22…セラミックス部材 222…雌ねじ部 224…金属接合面(当接面) 22’…セラミックス成形体 222’…雌ねじ部 22’’…セラミックス脱脂体 222’’…雌ねじ部 3…歯冠修復物 31…セラミックス部 32…金属部 50…顎骨 60…歯ぐき(歯肉)

Claims (6)

  1. チタンまたはチタン合金で構成された粉末と結合材とを含むチタン成形体形成用組成物を成形して、チタン成形体を得るチタン成形体製造工程と、
    酸化物系セラミックスで構成された粉末と結合材とを含むセラミックス成形体形成用組成物を成形して、セラミックス成形体を得るセラミックス成形体製造工程と、
    前記チタン成形体と前記セラミックス成形体とを螺合により組み立て、組立体を得る組立工程と、
    前記組立体に対して脱脂処理を施すことにより、前記チタン成形体中に含まれる前記結合材、および、前記セラミックス成形体中に含まれる前記結合材を除去し、前記チタン成形体をチタン脱脂体とし、前記セラミックス成形体をセラミックス脱脂体とする脱脂工程と、
    前記脱脂処理が施された前記組立体に対して焼結処理を施すことにより、前記チタン脱脂体を焼結体であるチタン部材にするとともに、前記セラミックス脱脂体を焼結体であるセラミックス部材とする焼結工程とを有することを特徴とする歯科用インプラントの製造方法。
  2. 前記チタン成形体、前記セラミックス成形体のうち一方が雄ねじ部を有するものであり、他方が前記雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を有するものであり、
    前記雌ねじ部を有する成形体の方が、前記雄ねじ部を有する成形体よりも、前記結合材の含有率が高い請求項1に記載の歯科用インプラントの製造方法。
  3. 前記雄ねじ部を有する成形体中における前記結合材の含有率は、3〜35wt%である請求項2に記載の歯科用インプラントの製造方法。
  4. 前記雄ねじ部を有する成形体中における前記結合材の含有率は、6〜40wt%である請求項2または3に記載の歯科用インプラントの製造方法。
  5. 前記雌ねじ部を有する成形体中における前記結合材の含有率をC[wt%]、前記雄ねじ部を有する成形体中における前記結合材の含有率をC[wt%]としたとき、3≦C−C≦15の関係を満足する請求項2ないし4のいずれかに記載の歯科用インプラントの製造方法。
  6. 前記セラミックス部材は、前記チタン部材を構成する材料とは異なる組成の金属が当接する当接面を有するものである請求項1ないし5のいずれかに記載の歯科用インプラントの製造方法。
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