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JP5620733B2 - ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法 - Google Patents

ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、型内成形に好適に用いられるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法に関する。
近年、地球環境に対する意識が高まっており、従来の石油資源を原料とする汎用樹脂に変わる、カーボンニュートラルな材料としてポリ乳酸系樹脂が注目されている。ポリ乳酸系樹脂は、とうもろこし等の植物を出発原料として作られるものであり、カーボンニュートラルの観点から環境低負荷型の熱可塑性樹脂である。かかるポリ乳酸系樹脂は、環境に優しい植物由来の発泡用汎用樹脂として用いられることが期待されており、ポリ乳酸系樹脂を原料とする発泡体の研究が行われている。其の中でも、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体は、従来のポリスチレン樹脂発泡粒子成形体やポリオレフィン樹脂発泡粒子成形体と同様に形状的な制約を受けずに所望の形状の発泡体を型内成形により得ることができ、軽量性、緩衝性、断熱性などの目的に応じた物性設計も容易にできる可能性を有するものとして特に有望であり、特許文献1〜7に記載の発明がなされている。
前記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法として、従来においては、ガス含浸予備発泡方法が試みられたことが特許文献1〜5等に開示され、押出発泡方法が試みられたことが特許文献6、7等に開示されている。
特開2000−136261号公報 特開2004−83890号公報 特開2006−282750号公報 特開2006−282753号公報 特開2009−62502号公報 特開2007−100025号公報 国際公開公報WO2008/123367
特許文献1には、結晶化度が0〜20%の範囲となるような温度範囲で、n−ペンタン等の揮発型発泡剤を含浸させた、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルの発泡性樹脂粒子を金型内に充填し熱風により該樹脂粒子を発泡させると同時に粒子同士を相互に融着せしめて発泡粒子成形体を得るというガス含浸予備発泡方法に属する方法が開示されている。しかし、特許文献1に記載の方法で得られた発泡粒子成形体は、該成形体の部分間の密度ばらつきが比較的大きく、発泡粒子同士の融着性、寸法安定性が不十分で、機械的物性も不十分であるという問題点を有するものであった。
特許文献2には、乳酸成分単位を50モル%以上含み、熱流束示差走査熱量測定における吸熱量と発熱量との差が0J/g以上30J/g未満であり、且つ吸熱量が15J/g以上のものであるという、未だ結晶化が十分に進んでいない状態のポリ乳酸系樹脂からなる樹脂粒子を、密閉容器内に入れて二酸化炭素を圧入して発泡性樹脂粒子を得、該発泡性樹脂粒子を予備発泡機に充填し加熱媒体を導入して発泡させるガス含浸予備発泡方法が実施例に開示されている。しかし、特許文献2に記載の方法で得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、型内成形時の発泡粒子相互の融着性、二次発泡性の点で改良が認められるものであったが、複雑な形状の発泡粒子成形体を得ようとすると、発泡粒子相互の融着が不十分となる場合があり、厚みが大きい成形体を得ようとすると、成形体の中心部の発泡粒子相互の融着が不十分となる場合があるなど、融着性の点で改善すべき余地を残すものであった。
特許文献3、特許文献4には特定の熱融着性改良剤を含有するポリ乳酸系樹脂粒子を密閉容器に入れ、二酸化炭素を圧入して発泡性樹脂粒子とし、次いで該発泡性樹脂粒子を予備発泡機に充填した後、スチームを導入して発泡粒子を得るという、ガス含浸予備発泡方法が実施例に開示されている。しかし、特許文献3、特許文献4に記載の方法で得られた発泡粒子も、特許文献2に記載の発泡粒子と同様に複雑な形状や厚みが大きい発泡粒子成形体を得ようとする場合の発泡粒子相互の融着性の点で改善すべき余地を残すものであった。
特許文献5には、水性媒体と樹脂粒子とを密閉容器内に入れて、物理発泡剤を圧入して発泡性樹脂粒子とし、得られた発泡性樹脂粒子を予備発泡機に充填しスチームを導入して発泡させるガス含浸予備発泡方法により得られる発泡粒子において、熱処理後の特定の吸熱量と、熱処理前の特定の吸熱量(Bendo:J/g)と発熱量(Bexo:J/g)が特定の関係を有し、発泡粒子の表層部の特定の発熱量(Bs:J/g)と中央部の特定の発熱量(Bc:J/g)との関係が特定の関係を有しているポリ乳酸系樹脂発泡粒子が実施例に開示されている。このものは、発泡粒子の結晶化が全体的には進んでいない状態のものであって、且つ発泡粒子の中央部よりも表層部の結晶化が進んでいない状態の発泡粒子であり、発泡粒子相互の融着性に優れ、大きい厚みを有する成形体や複雑な形状を有する成形体が製造可能なものである。
しかし、発泡粒子相互の融着性を良くするために、発泡粒子の結晶化度を制御する必要があり、そのために厳密な温度管理などが必要であり、生産性において課題を有するものであった。例えば、樹脂粒子製造時に急冷して、結晶化度の非常に低い樹脂粒子を得ることは比較的容易であるが、発泡剤を含浸する工程、また発泡剤を含んだ樹脂粒子を加熱して発泡する工程で、厳密な温度や時間の管理を行わないと、得られる発泡粒子において発泡倍率や熱特性の再現性が乏しくなってしまい、該発泡粒子の型内成形においては安定して融着性の良好な発泡粒子成形体が得られなくなり、発泡粒子成形体の生産性の点で更なる改良が望まれるものであった。
また、特許文献6には、押出発泡体を製造し、これを切断して発泡粒子を得るという押出発泡方法が開示されている。この方法によれば、型内成形により耐熱性や機械的強度に優れるポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体を得ることはできる。しかし、耐熱性を向上させるために、比較的結晶性の高いポリ乳酸系樹脂を用いることから、発泡粒子を構成するポリ乳酸樹脂の結晶化度が高くなりやすいので、融着性の良好な成形体が安定して得られないという問題を有している。
特許文献7には、発泡剤を含有するポリ乳酸系樹脂を押出機からノズル金型を通して押出し、押出物を発泡させながら回転刃によって切断して、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造し、該発泡粒子を切断応力によって飛散させて、ノズル金型の前方に配設した冷却部材に衝突させて冷却するポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法が開示されている。この方法によれば、型内成形性の良好な発泡粒子を得るために押出発泡直後の急冷操作が欠かせないが、該急冷操作のため発泡倍率の高い発泡粒子を得ることが難しいという問題を有している。
以上説明したように、上記のガス含浸予備発泡方法や押出発泡方法では、得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の型内成形性の観点から、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の結晶化度を高くしてしまうと型内成形時の発泡粒子相互の融着性が不充分になるため、高結晶化度に繋がってしまう操作、即ち、物理発泡剤含浸量を増加させることや、適切な発泡温度で充分な発泡時間を確保することは出来るだけ避けなければならなかった。そのために、上記の発泡方法では高い発泡倍率の発泡粒子を得ることが難しかった。特に、ガス含浸予備発泡方法においては発泡性樹脂粒子中の物理発泡剤の含浸量に応じて、ポリ乳酸系樹脂の結晶化温度が変化する為、発泡性樹脂粒子を構成しているポリ乳酸系樹脂の結晶化度の調整が難しく、発泡粒子の型内成形時に安定した融着性を示す発泡粒子を得るための発泡性樹脂粒子の温度管理などが難しいという課題を有するものであった。
したがって、従来のガス含浸予備発泡方法や押出発泡方法では、型内成形時の熱融着性と耐熱性が共に優れるポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることにおいて課題を残すものであり、型内成形時の熱融着性に優れると共に低い見かけ密度のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることも難しいものであった。更に、ガス含浸予備発泡方法では、発泡性樹脂粒子の結晶化度を制御することも容易なことではなかった。
本発明は、結晶化度の制御にとらわれずに発泡粒子相互の融着性に優れた発泡成形体を安定して製造できるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法を提供することを課題とするものである。
また、型内成形時の成形可能温度範囲が広いポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることができる発泡粒子の製造方法、型内成形時の熱融着性に優れると共に低い見かけ密度のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることができる発泡粒子の製造方法を教示するものである。
本発明によれば、以下に示すポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法が提供される。
[1]
ポリ乳酸系樹脂粒子を耐圧容器内で分散媒と共に、発泡剤存在下かつ加熱条件下で、分散させて得られる発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を、分散媒と共に耐圧容器内から該耐圧容器内よりも低い圧力下に放出して発泡させるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法であって、
該ポリ乳酸系樹脂粒子がポリ乳酸系樹脂から形成される芯層とポリ乳酸系樹脂(但し、芯層を形成するポリ乳酸系樹脂を除く。)から形成される外層とからなり、
芯層を形成するポリ乳酸系樹脂の軟化点(A)[℃]と外層を形成するポリ乳酸系樹脂の軟化点(B)[℃]との関係が下記(1)式を満足し、
熱流束示差走査熱量測定法に準拠し下記条件1にて求められる、ポリ乳酸系樹脂粒子の吸熱量(R:endo)[J/g]が下記(2)式を満足することを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法。
105[℃]≧[軟化点(A)−軟化点(B)]>0[℃] ・・・(1)
R:endo≧25 ・・・(2)
条件1
吸熱量(R:endo)の測定は、ポリ乳酸系樹脂粒子1〜4mgをJIS K7122(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、融解ピーク終了温度より30℃高い温度まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度2℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度2℃/minにて40℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度2℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱して溶融させる際に得られるDSC曲線に基づいて求められる値とする。
[2]
前記1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法において、少なくとも芯層を形成するポリ乳酸系樹脂が、カルボジイミド化合物にて改質された変性ポリ乳酸系樹脂であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法。
[3]
前記1又は2に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法において、該ポリ乳酸系樹脂粒子中にポリテトラフルオロエチレンが含まれていることを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法。
[4]
前記1〜3のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法において、該発泡剤が無機系物理発泡剤であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法。
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法は、発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を高温高圧の密閉容器から低圧域に分散媒と共に放出する発泡方法(所謂、ダイレクト発泡法)によりポリ乳酸系樹脂発泡粒子を製造する方法であって、ポリ乳酸系樹脂粒子が芯層と外層とからなり、芯層を形成するポリ乳酸系樹脂と外層を形成するポリ乳酸系樹脂との軟化点が特定の関係を満足し、ポリ乳酸系樹脂粒子の吸熱量(R:endo)[J/g]が特定の値であることにより、予備発泡前後において発泡操作以外に特別な温度管理などを行わなくても、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の型内成形時において、良好な発泡粒子相互の融着性を示す発泡粒子を得ることが出来る。そして、得られる発泡粒子の融着性が発泡粒子の結晶化度に大きく左右されることが無いことから、高い発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得ることが容易である。また、ダイレクト発泡法によれば、発泡温度や発泡温度付近での保持時間の調整にて発泡粒子の結晶化度を適宜調整することが容易であり、発泡粒子の結晶化度を程よく高めることにより発泡粒子の耐熱性を向上させて、良好な発泡粒子成形体を得ることが出来る型内成形時の成形温度範囲が広い発泡粒子となる。
また、本発明方法においては、ポリテトラフルオロエチレンをポリ乳酸系樹脂粒子中に含有させることにより、発泡粒子の平均気泡径を容易に調整することができ、発泡粒子の二次発泡性等の型内成形性を更に向上させることも出来る。
また、本発明方法において、芯層、好ましくは芯層及び外層を形成するポリ乳酸系樹脂として、カルボジイミド化合物にて改質された変性ポリ乳酸系樹脂を用いることにより、ポリ乳酸系樹脂粒子の製造工程、発泡工程、型内成形工程でのポリ乳酸系樹脂加水分解を抑制することができ、発泡粒子の独立気泡率の低下、樹脂物性の低下等に伴う、発泡粒子やその成形体の機械的物性低下の抑制に繋がる。
また、本発明方法において、発泡剤として無機系物理発泡剤を用いることにより、環境に対する負担を軽減すると共に、高い発泡倍率の発泡粒子、更に高い発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体を得ることができる。
熱流束示差走査熱量計により求められる測定試料の吸熱量(R:endo)を示すDSC曲線の例示。 熱流束示差走査熱量計により求められる測定試料の吸熱量(R:endo)を示すDSC曲線の例示。 熱流束示差走査熱量計により求められる測定試料の発熱量(Bfc:exo)及び吸熱量(Bfc:endo)を示すDSC曲線の例示。 熱流束示差走査熱量計により求められる測定試料の発熱量(Bfc:exo)及び吸熱量(Bfc:endo)を示すDSC曲線の例示。 熱流束示差走査熱量計により求められる測定試料の発熱量(Bfc:exo)及び吸熱量(Bfc:endo)を示すDSC曲線の例示。
以下、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法について詳細に説明する。
本発明の製造方法は、樹脂粒子を耐圧容器内で分散媒と共に発泡剤存在下かつ加熱条件下で分散させて得られる発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を、分散媒と共に耐圧容器内から該耐圧容器内よりも低い圧力下に放出して発泡させる発泡方法、所謂、ダイレクト発泡法により、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子(以下、単に発泡粒子ともいう。)を製造する方法である。ダイレクト発泡法は、樹脂粒子製造工程にて得られたポリ乳酸系樹脂粒子(以下、単に樹脂粒子ともいう。)を、耐圧容器内で樹脂粒子を分散媒に分散させながら発泡剤を含浸させて発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子(以下、単に発泡性樹脂粒子ともいう。)とする発泡剤含浸工程と、該発泡性樹脂粒子を分散媒と共に耐圧容器内から該耐圧容器内よりも低い圧力下に放出して発泡させる発泡工程とからなる方法である。
本発明方法において、使用される樹脂粒子および得られる発泡粒子はポリ乳酸系樹脂からなる。該ポリ乳酸系樹脂は、ポリ乳酸、或いはポリ乳酸と他の樹脂との混合物からなる。なお、該ポリ乳酸は、乳酸に由来する成分単位を50モル%以上含むポリマーであることが好ましい。該ポリ乳酸としては、例えば(a)乳酸の重合体、(b)乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(c)乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(d)乳酸と脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(e)乳酸と脂肪族多価アルコールとのコポリマー、(f)これら(a)〜(e)の何れかの組合せによる混合物等が包含される。また、該ポリ乳酸には、ステレオコンプレックスポリ乳酸、ステレオブロックポリ乳酸と呼ばれるものも包含される。なお、乳酸の具体例としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの環状2量体であるL−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド又はそれらの混合物が挙げられる。
上記(b)における他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられる。また、上記(c)及び(e)における脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等が挙げられる。また、上記(c)及び(d)における脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
本発明で用いられるポリ乳酸の製造方法の具体例としては、例えば、乳酸又は乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の混合物を原料として、直接脱水重縮合する方法(例えば、米国特許第5310865号に示されている製造方法)、乳酸の環状二量体(ラクチド)を重合する開環重合法(例えば、米国特許2758987号に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状2量体、例えば、ラクチドやグリコリドとε−カプロラクトンを、触媒の存在下、重合する開環重合法(例えば、米国特許4057537号に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸の混合物を、直接脱水重縮合する方法(例えば、米国特許第5428126号に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸とポリマーを、有機溶媒存在下に縮合する方法(例えば、欧州特許公報第0712880 A2号に開示されている製造方法)、乳酸重合体を触媒の存在下、脱水重縮合反応を行うことによりポリエステル重合体を製造するに際し、少なくとも一部の工程で、固相重合を行う方法、等を挙げることができるが、その製造方法は、特に限定されない。また、少量のグリセリンのような脂肪族多価アルコール、ブタンテトラカルボン酸のような脂肪族多塩基酸、多糖類等のような多価アルコール類を共存させて、共重合させても良く、又ポリイソシアネート化合物等のような結合剤(高分子鎖延長剤)を用いて分子量を上げてもよい。また、ペンタエリスリット等の多価脂肪族アルコールに代表される分岐化剤にて分岐化させたものであってもよい。
また、本発明で用いられるポリ乳酸は、分子鎖末端が封鎖されていることが好ましい。これにより、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造過程での加水分解をより確実に抑制することができ、型内成形に耐えうる発泡粒子が得られやすくなる。更には型内成形により得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体(以下、単に発泡粒子成形体ともいう。)の耐久性が向上する。
上記末端封鎖剤としては、例えばカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物等を用いることができる。これらの中でも、カルボジイミド化合物が好ましい。
具体的には、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミドなどの芳香族モノカルボジイミド(例えば、ラインケミー社製Stabaxol 1−LF)、芳香族ポリカルボジイミド(例えば、ラインケミー社製Stabaxol P、ラインケミー社製Stabaxol P400)、ポリ(4−4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)などの脂肪族ポリカルボジイミド(例えば日清紡ケミカル(株)製カルボジライトLA−1)などが挙げられる。
これらの末端封鎖剤は単独で使用しても良く、あるいは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
また、末端封鎖剤の配合量は、ポリ乳酸100重量部あたりに0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。
このように、本発明で用いられるポリ乳酸は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、及びイソシアナート化合物から選ばれる1種以上の改質剤にて改質された変性ポリ乳酸であることが好ましく、カルボジイミド化合物にて改質された変性ポリ乳酸であることがより好ましい。
また、該発泡粒子を構成する基材樹脂には、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において上記の通り他の樹脂を混合することができる。なおこの場合、本発明における前記軟化点、吸熱量などの構成要件は、他の樹脂を混合することにより値が変動するため、ポリ乳酸と他の樹脂との混合樹脂を基材樹脂とする場合の本発明における後記軟化点、吸熱量の構成要件に関しては、混合樹脂からなる基材樹脂ではなく該他の樹脂を混合していない状態の基材樹脂を構成するポリ乳酸が、本発明における該軟化点、吸熱量などの構成要件を満足することが必要となる。ポリ乳酸と他の樹脂との混合樹脂中にはポリ乳酸が50重量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上である。
なお、ポリ乳酸と混合できる他の樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられ、中でも脂肪族エステル成分単位を少なくとも35モル%含む生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。この場合の脂肪族ポリエステル系樹脂としては、上記ポリ乳酸系樹脂以外のヒドロキシ酸重縮合物、ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物、及びポリブチレンサクシネート,ポリブチレンアジペート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸との重縮合物等が挙げられる。
また、前記基材樹脂には、例えば、黒、灰色、茶色、青色、緑色等の着色顔料又は染料を添加することができる。これにより基材樹脂を着色することができ、着色されたポリ乳酸系樹脂粒子を用いれば、着色された発泡粒子及び発泡粒子成形体を得ることができる。なお、本発明においては発泡粒子がダイレクト発泡法により製造されるので、耐圧密閉容器内に、ポリ乳酸系樹脂粒子、分散媒、発泡剤を仕込む際に着色顔料又は染料を同時に添加することにより、着色されたポリ乳酸系樹脂発泡粒子、更に発泡粒子成形体を得ることも可能である。
着色剤としては、有機系、無機系の顔料、染料などが挙げられる。このような、顔料及び染料としては、公知のものを用いることができる。
また、添加剤としては着色剤の他にも、難燃剤、帯電防止剤、耐候剤、導電性付与剤等の添加剤を基材樹脂に混合することも可能である。なお、廃棄やリサイクルを想定すると、上記添加剤を高濃度で添加することは好ましくない。
また、基材樹脂に添加剤を添加する場合には、添加剤をそのまま基材樹脂に練り込むこともできるが、通常は分散性等を考慮して添加剤のマスターバッチを作製し、それと基材樹脂とを混練することが好ましい。
上記添加剤は、添加剤の種類によっても異なるが、通常、基材樹脂100重量部に対して0.001〜20重量部、更に0.01〜5重量部とすることが好ましい。
本発明方法により得られる発泡粒子は、前記ポリ乳酸系樹脂から形成される芯層と、該芯層を覆うポリ乳酸系樹脂から形成される外層とからなる多層発泡粒子である。該多層発泡粒子は、ポリ乳酸系樹脂から形成される芯層と、該芯層を覆うポリ乳酸系樹脂(但し、芯層を形成するポリ乳酸系樹脂を除く。)から形成される外層とからなる多層樹脂粒子を発泡させることにより得られるものである。但し、多層樹脂粒子及び/又は多層発泡粒子において、外層は芯層全体を必ずしも覆っている必要はなく、本発明の目的効果が達成される範囲において、芯層の一部が樹脂粒子及び/又は発泡粒子表面に露出していてもよい。

前記芯層を形成するポリ乳酸系樹脂の軟化点(A)[℃]と外層を形成するポリ乳酸系樹脂の軟化点(B)[℃]とは下記(1)式の関係を満足することを要する。
105[℃]≧[軟化点(A)−軟化点(B)]>0[℃] ・・・(1)
該外層を構成するポリ乳酸系樹脂の軟化点(B)は、該芯層を構成するポリ乳酸系樹脂の軟化点(A)よりも低く、かつ該軟化点(A)と該軟化点(B)との差[(A)−(B)]が0℃を超え105℃以下であることにより、得られる発泡粒子を構成するポリ乳酸系樹脂の結晶化度(主に発泡粒子芯層を構成するポリ乳酸系樹脂の結晶化度)に大きく影響されることなく、型内成形時の融着性に優れた発泡粒子を得ることができる。上記観点から、該差が15〜105℃、更に20〜105℃であることが好ましい。
なお、外層を構成するポリ乳酸系樹脂の軟化点は、樹脂粒子や発泡粒子の取り扱い性および得られる発泡粒子成形体の耐熱性の観点から、芯層を構成するポリ乳酸系樹脂の軟化点との関係が上記範囲であると共に、50℃以上、更に55℃以上、特に65℃以上が好ましい。
本明細書における軟化点とは、JIS K7206(1999年)に基づく、A50法で測定されたビカット軟化温度を意味する。測定試験片としては、ポリ乳酸系樹脂を、真空オーブンを使用して充分に乾燥させた後、200℃、20MPaの条件下で加圧し、必要に応じて空気抜き操作を行い気泡が混入しないようにして縦20mm×横20mm×厚み4mmの試験片を作製し、該試験片を80℃のオーブン内で24時間アニーリング処理した後に測定に用いる。測定装置としては、株式会社上島製作所製「HDT/VSPT試験装置 MODEL TM−4123」などを使用することができる。
更に、ポリ乳酸系樹脂粒子の下記測定条件1での吸熱量(R:endo)[J/g]が下記(2)式を満足することを要し、好ましくは30J/g以上であり、より好ましくは35J/g以上である。(R:endo)が下記(2)式を満足するということは、樹脂粒子を構成しているポリ乳酸の結晶化が充分に進む条件にて熱処理した場合、該ポリ乳酸の結晶成分の量が多い状態になることを意味している。すなわち、充分な熱処理により発泡粒子や発泡粒子成形体を構成しているポリ乳酸の結晶化度を高めることにより、結晶化度の高められた発泡粒子成形体を得ることができることを意味している。したがって、最終的に得られる発泡粒子成形体の機械的強度、高温時の圧縮強さ等の耐熱性が高められることが期待できる。よって、吸熱量(R:endo)が25J/g未満では、最終的に発泡粒子成形体の耐熱性、機械的強度が不十分なものとなる虞がある。
R:endo≧25 ・・・(2)
条件1
吸熱量(R:endo)の測定は、1〜4mgの範囲内でポリ乳酸系樹脂粒子一粒、或いは複数粒を測定試料とする。なお、該樹脂粒子の重量が4mgを超える場合には樹脂粒子を2等分するなど同形状に等分して1〜4mgの範囲内で測定試料を調整する。次いで、上記測定試料をJIS K 7122(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、融解ピーク終了温度より30℃高い温度まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度2℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度2℃/minにて40℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度2℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱して溶融させることによりDSC曲線(以下、2回目のDSC曲線ともいう。)を得る。該吸熱量(R:endo)は、得られた2回目のDSC曲線に基づいて求められる値とする。
上記2回目のDSC曲線において、吸熱量(R:endo)は、図1に示すように、DSC曲線の吸熱ピークの低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点aとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点bとして、点aと点bとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から求められる値とする。また、ベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することとし、どうしても図2に示すようにベースラインが湾曲してしまう場合には、吸熱ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点a、吸熱ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ吸熱ピークが戻る点を点bとする。
なお、上記吸熱量(R:endo)の測定において、測定試料のDSC曲線の測定条件として、110℃での120分間の保持、2℃/minの冷却速度および2℃/minの加熱速度を採用する理由は、ポリ乳酸系樹脂からなる測定試料の結晶化が極力進ませた状態での吸熱量(R:endo)を求めることを目的としている為である。
本発明方法にて得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、発泡粒子全体が特定の吸熱量(R:endo)を有することにより、熱処理した発泡粒子の型内成形、或いは発泡粒子の型内成形後の発泡粒子成形体の熱処理にて、耐熱性、機械的強度が高い発泡粒子成形体が得られる。
また、本発明方法により得られる発泡粒子においては、下記条件2にて求められる該発泡粒子表層の吸熱量(Bfc:endo)[J/g]と、発泡粒子中心部の吸熱量(Bfc:exo)[J/g]との関係が下記(3)式を満足することが好ましい。
40>[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]>10・・・(3)
条件2
[測定試料の調整]
(発泡粒子中心部の吸熱量測定試料)
発泡粒子の表面全面を切削除去し、切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/5〜1/3の重量となる発泡粒子残部を測定試料として採取することとする。具体的には、発泡粒子の表面を含まない内部の発泡層を切り出すことを目的にカッターナイフ等で切削処理を行い、該発泡粒子中心部を測定に供すればよい。但し、この際の留意点としては、1個の発泡粒子の表面全面を必ず切除し、且つ発泡粒子の中心とできる限り同じ中心をもつように切削処理前の発泡粒子の粒子重量の5分の1〜3分の1の範囲内で発泡粒子中心部を切り出す。この際、切り出された測定試料は、切削処理前の発泡粒子の形状とできる限り相似の関係にあることが好ましい。
[吸熱量および発熱量の測定]
吸熱量(Bfc:endo)および発熱量(Bfc:exo)の測定は、発泡粒子の中心部から採取された測定試料1〜4mgをJIS K 7122(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、加熱速度2℃/minにて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱して溶融させる際に得られるDSC曲線(以下、1回目のDSC曲線ともいう。)に基づいて求められる値とする。なお、1個の発泡粒子から得られる測定試料が1〜4mgに満たない場合は上記測定試料採取操作を複数個の発泡粒子に対して行う1〜4mgの範囲内で測定試料を調整する必要がある。
尚、本明細書において発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)および吸熱量(Bfc:endo)は、前記の通り、JIS K7122(1987年)に記載される熱流束示差走査熱量測定(前記条件2)によって求められる値であり、発熱量(Bfc:exo)および吸熱量(Bfc:endo)の測定は次の基準で行なわれる。
発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)は1回目のDSC曲線の発熱ピークの低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点cとし、発熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点dとして、点cと点dとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる発熱量を示す部分の面積から求められる値とする。また、発泡粒子の吸熱量(Bfc:endo)は、該DSC曲線の吸熱ピークの低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点eとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点fとして、点eと点fとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から求められる値とする。
但し、1回目のDSC曲線におけるベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することする。また、どうしてもベースラインが湾曲してしまう場合は、発熱ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点c、発熱ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ発熱ピークが戻る点を点dとする。更に、吸熱ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから吸熱ピークが離れる点を点e、吸熱ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ吸熱ピークが戻る点を点fとする。
例えば、図3に示す場合には、上記の通り定められる点cと点dとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる発熱量を示す部分の面積から発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)を求め、上記の通り定められる点eと点fとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から発泡粒子の吸熱量(Bfc:endo)を求める。また、図4に示すような場合には、上記のように点dと点eを定めることが困難である為、上記の通り定められる点cと点fとを結ぶ直線とDSC曲線との交点を点d(点e)と定めることにより、発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)及び吸熱量(Bfc:endo)を求める。また、図5に示すように、吸熱ビークの低温側に小さな発熱ピークが発生するような場合には、発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)は、図5中の第1の発熱ピークの面積Aと第2の発熱ピークの面積Bとの和から求められる。即ち、該面積Aは第1の発熱ピークの低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点cとし、第1の発熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点dとして、点cと点dとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる発熱量を示す部分の面積Aとする。そして、該面積Bは第2の発熱ピークの低温側のベースラインから第2の発熱ピークが離れる点を点gとし、吸熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点fとして、点gと点fとを結ぶ直線とDSC曲線との交点を点eと定め、点gと点eとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる発熱量を示す部分の面積Bとする。一方、図5において、発泡粒子の吸熱量(Bfc:endo)は点eと点fとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から求められる値とする。
なお、上記発熱量(Bfc:exo)および吸熱量(Bfc:endo)の測定において、DSC曲線の測定条件として、2℃/minの加熱速度を採用する理由は、発熱ピークと吸熱ピークとをなるべく分離し、正確な吸熱量(Bfc:endo)および[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]を熱流束示差走査熱量測定にて求める際に、2℃/minの加熱速度が好適であるという発明者の知見に基づくものである。
上記(3)式における差[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]は、熱流束示差走査熱量測定を行う際に既に発泡粒子中心部が有していた結晶化部分と、該測定時の昇温過程において発泡粒子中心部が結晶化した部分とが融解する際に吸収するエネルギーである吸熱量(Bfc:endo)と、熱流束示差走査熱量測定の昇温過程において発泡粒子中心部が結晶化することにより放出されるエネルギーである発熱量(Bfc:exo)との差を表し、該差が小さいほど熱流束示差走査熱量測定前において発泡粒子中心部の結晶化が、進んでいなかったことを意味し、該差が大きく(Bfc:endo)の値に近いほど発泡粒子中心部の結晶化が該測定前において進んでいたことを意味する。差[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]は、発泡粒子の型内成形時の良好な二次発泡性と型内成形時において良好な発泡粒子成形体が得られる成形温度範囲が広くなる観点から上記の範囲内であることが好ましい。更に二次発泡性の観点から、35J/g以下、特に30J/g以下であることが好ましい。
一方、型内成形時の温度調整の容易性、型内発泡成形体の収縮防止の観点から差[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]は、更に15J/g以上、特に20J/g以上であることが好ましい。
本発明にて得られる発泡粒子においては、吸熱量(Bfc:endo)は30〜70J/gであることが好ましい。この吸熱量(Bfc:endo)が大きいほど発泡粒子を構成するポリ乳酸系樹脂が熱処理によって結晶化度が高くなるものであり、最終的に発泡粒子成形体の機械的強度が高いものに調整することが出来る。一方、該吸熱量(Bfc:endo)が小さすぎる場合には、最終的に発泡粒子成形体の機械的強度、特に高温時の機械的強度が不十分なものとなる虞がある。この観点から、吸熱量(Bfc:endo)は、更に35J/g以上が好ましい。また、吸熱量(Bfc:endo)の上限は、概ね70J/g、更に60J/gである。
また、発熱量(Bfc:exo)は、差[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]と、吸熱量(Bfc:endo)との調整の関係で5〜30J/g、更に10〜25J/gであることが、発泡粒子の優れた二次発泡性や成形性の観点から好ましい。この発熱量(Bfc:exo)が大きいほど、結晶性のポリ乳酸系樹脂からなる発泡粒子中心部の結晶化が、熱流束示差走査熱量測定前において、進んでいなかったことを意味する。
本発明の樹脂粒子製造工程においては、該芯層と外層とからなる樹脂粒子は、例えば、特公昭41−16125号公報、特公昭43−23858号公報、特公昭44−29522号公報、特開昭60−185816号公報等に記載された共押出成形法技術を利用して製造することができる。
前記共押出法においては、一般的に、芯層形成用押出機と外層形成用押出機とが、共押出ダイに連結された装置が用いられる。芯層形成用押出機にポリ乳酸系樹脂と、必要に応じて添加剤とを供給して溶融混練すると共に、外層形成用押出機に他のポリ乳酸系樹脂と、必要に応じて添加剤とを供給して溶融混練する。それぞれの溶融混練物を前記ダイ内で合流させて円柱状の芯層と、芯層の側面を被覆する外層とからなる多層構造として、押出機先端のダイ出口に付設された口金の細孔から多層構造のストランド状押出物を押出し、該ストランド状押出物を水没させることにより急冷した後、樹脂粒子の重量が所定重量になるようにペレタイザーで切断して、多層構造の樹脂粒子が製造される。或いは、多層構造のストランド状の押出物を、樹脂粒子の重量が所定重量になるように切断後又は切断と同時に、急冷することによっても樹脂粒子が製造される。
前記ストランド状の押出物の切断は、ストランドカット法、アンダーウォーターカット法等により製造することが可能である。
該樹脂粒子の1個当りの平均重量は、0.05〜10mgにすることが好ましく、0.1〜4mgにすることがより好ましい。
該平均重量が軽すぎる場合には、樹脂粒子の製造が特殊なものになる。一方、該平均重量が重すぎる場合には、得られる発泡粒子の密度分布が大きくなったり、型内成形時の充填性が悪くなったりするおそれがある。
該樹脂粒子の形状は、円柱状、球状、角柱状、楕円球状、円筒状等を採用することができる。かかる樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子は、発泡前の樹脂粒子形状に略対応した形状となる。
芯層を形成している樹脂と外層を形成している樹脂の重量比は、芯層を形成している樹脂と外層を形成している樹脂の共押出時の吐出量にて調整することができる。なお、芯層を形成している樹脂と外層を形成している樹脂の重量比は、99.9:0.1〜80:20であることが好ましく、より好ましくは99.7:0.3〜90:10、更に好ましくは99.5:0.5〜92:8である。樹脂粒子の外層を形成している樹脂の重量比が小さすぎると、得られる発泡粒子の融着性改善の効果が不十分となる虞がある。一方、外層を形成している樹脂の重量比が大きすぎると、発泡時に外層を形成している樹脂が必要以上に発泡してしまい、融着性が低下する虞がある。更には、発泡粒子成形体の機械的物性が低下し易くなる虞がある。なお、本発明における外層を形成している樹脂が発泡していることを必ずしも排除するものではない。
従って、樹脂粒子の芯層を形成している樹脂と外層を形成している樹脂との重量比が前記範囲内にあることにより、最終的に得られる発泡粒子成形体は、発泡粒子間の融着強度が強くなることから、機械的物性に優れたものとなり、また、発泡粒子の物性に主に寄与している芯層の割合が大きくなることにより更に機械的物性に優れたものとなる。
本発明方法では、少なくとも芯層を形成するポリ乳酸系樹脂が、カルボジイミド化合物などの前記末端封鎖剤にて改質された変性ポリ乳酸系樹脂であることが好ましい。また、芯層と外層を形成するポリ乳酸系樹脂が、カルボジイミド化合物などの前記末端封鎖剤にて改質された変性ポリ乳酸系樹脂であることが更に好ましい。前記末端封鎖剤にて改質された変性ポリ乳酸系樹脂は、例えば、前記末端封鎖剤をポリ乳酸系樹脂と共に芯層或いは外層形成用押出機に供給することにより適宜得ることができる。樹脂粒子を構成するポリ乳酸系樹脂が末端封鎖処理されていることで、樹脂粒子製造時、発泡粒子製造時、発泡粒子型内成形時のポリ乳酸系樹脂の加水分解が抑制でき、各工程での安定生産性向上に繋がる。更には、得られる発泡粒子や発泡粒子成形体が高温多湿下で物性変化抑制効果や耐久性向上効果が期待できる。
樹脂粒子製造工程においては、基材樹脂の構成成分であるポリ乳酸系樹脂を予め乾燥させておくことが好ましい。この場合には、ポリ乳酸系樹脂の加水分解による劣化を抑制することができる。また、ポリ乳酸系樹脂の加水分解による劣化を抑制するために、ベント口付き押出機を使用して、真空吸引を行ってポリ乳酸系樹脂から水分を除去する方法も採用することができる。ポリ乳酸系樹脂の水分を除去することにより、樹脂粒子中に気泡が発生することを抑制し、押出製造時の安定性を向上させることができる。
また、前記芯層形成用押出機と必要に応じて外層形成用押出機に発泡助剤を供給することにより、樹脂粒子中に、見かけ密度の低下(発泡倍率の向上)及び気泡径の均一化を目的として発泡助剤を予め添加しておくことができる。該発泡助剤としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、シリカ等の無機物や、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンワックス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、シリコーン、メタクリル酸メチル系共重合体及び架橋ポリスチレン等の高分子量体を採用することができる。
上記発泡助剤のうち、本発明では、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンワックス、架橋ポリスチレン等が好ましく、更に、疎水性のポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
なお、ポリ乳酸系樹脂は加水分解し易いことから、基材樹脂に配合する添加剤としてはできるだけ親水性の物質を避け、疎水性物質を選択して添加することが好ましい。例えば、前記の通り発泡助剤として疎水性発泡助剤を採用することにより、ポリ乳酸系樹脂の加水分解による劣化を抑えながら発泡助剤としての効果が得られる。この場合には、ポリ乳酸系樹脂の加水分解を十分に抑制しつつ、後記の見かけ密度の低下(発泡倍率の向上)及び気泡径の均一化を図ることができる。
基材樹脂に発泡助剤を添加する場合には、発泡助剤をそのまま基材樹脂に練り込むこともできるが、分散性等を考慮して通常は発泡助剤のマスターバッチを作製し、それと基材樹脂とを混練することが好ましい。
本発明方法において得られる発泡粒子の見かけ密度及び気泡径は発泡助剤の添加量によっても変化するため、それらの調整効果が期待できる。通常、基材樹脂100重量部に対して、発泡助剤を0.001〜5重量部添加することが好ましく、より好ましくは0.005〜3重量部、さらに好ましくは0.01〜2重量部である。
次に、ダイレクト発泡法における発泡剤含浸工程と発泡工程について説明する。
ダイレクト発泡法においては、前記の通り、例えば樹脂粒子を加圧可能な耐圧密閉容器(例えば、オートクレーブ)中の分散媒に分散させると共に分散媒に分散剤を添加し、所要量の発泡剤を耐圧密閉容器内に圧入して該容器内を加圧し所要時間加熱下に撹拌して発泡剤を樹脂粒子に含浸させた後、容器内容物を容器内圧力より低圧域下に放出して樹脂粒子を発泡させることにより、発泡粒子が得られる。この放出時には容器内に背圧をかけて放出することが好ましい。また、上記の方法で得られた発泡粒子を通常行われる大気圧下での養生工程を経た後、加圧可能な密閉容器に充填し、空気、窒素、二酸化炭素などの加圧気体により例えば0.01〜0.10MPa(G)の圧力にて加圧処理して発泡粒子内の圧力を高める操作を行った後、該発泡粒子を発泡機内にて、熱風やスチームや空気とスチームとの混合物などの加熱媒体を用いて加熱することにより、更に低い見かけ密度の発泡粒子を得ることができる(この工程を以下、二段発泡という)。
前記樹脂粒子を分散させる分散媒としては、前記ポリ乳酸系樹脂粒子を溶解させないものであればこれを使用することができる。例えば水、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられる。好ましくは水がよい。
また、樹脂粒子を分散媒に分散させるに際しては、上記のとおり、分散剤を分散媒に添加することができる。
該分散剤としては、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、カオリン、マイカ、及びクレー等の無機物質や、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの水溶性高分子保護コロイド剤が挙げられる。また、分散助剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤などを分散媒に添加することもできる。
これら分散剤は、樹脂粒子100重量部あたり0.05〜3重量部使用することができ、これら分散助剤は、樹脂粒子100重量部あたり0.001〜0.3重量部使用することができる。
前記発泡剤としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素や脂環式炭化水素、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、テトラクロロジフルオロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素などの有機系物理発泡剤、二酸化炭素、窒素、空気、水などの無機系物理発泡剤が好ましく用いられ、これらを単独で又は2種以上併用して用いることができる。これらの物理発泡剤のなかでも、二酸化炭素、窒素、空気等の無機系物理発泡剤を主成分とする物理発泡剤を用いることが好ましい。より好ましくは二酸化炭素がよい。
なお、無機系物理発泡剤を主成分とするとは、全発泡剤100モル%中の無機系物理発泡剤が50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含まれることを意味する。
前記物理発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、添加剤等の配合量、目的とする発泡粒子の見かけ密度等に応じて適宜調整することができる。例えば無機系物理発泡剤は、基材樹脂100重量部あたり概ね0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜15重量部、更に好ましくは1〜10重量部使用することがよい。
発泡剤含浸工程における温度制御については、芯層を形成するポリ乳酸系樹脂の融点を基準として、該融点−30℃〜該融点−10℃の温度範囲で充分な時間(通常、5〜60分)保持することが好ましい。上記保持温度、保持時間の保持工程を設けることにより、芯層を構成するポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進させ、得られる発泡粒子の中心部の結晶化度を適当な値に安定化させることができるため、型内成形時の成形温度範囲を広げることができ、結果的に発泡粒子相互の融着性が一層優れたものとなる。なお、上記保持時間は、ポリ乳酸系樹脂の加水分解抑制の観点から更に5〜30分、特に5〜15分とすることが好ましい。また、前記発泡工程における発泡温度は、芯層を形成するポリ乳酸系樹脂の融点を基準として、通常、該融点−50℃〜該融点−10℃の温度範囲で行われる。
樹脂粒子の外層の具体的な厚みについては、また、発泡粒子成形体の強度との観点から、厚みが薄い方が好ましいが、あまりに薄すぎる場合には得られる発泡粒子同士の融着性改善効果が低下する虞がある。従って、樹脂粒子の外層の平均厚みは、目的とする発泡粒子の発泡倍率などによっても異なるが、概ね2〜100μm、更に3〜70μm、特に5〜50μmが好ましい。
樹脂粒子の外層の厚みは、前記樹脂粒子製造工程において、前述の芯層を形成している樹脂と外層を形成している樹脂の重量比の調整と同様にして調整することができる。
前記樹脂粒子の外層の平均厚みは以下により測定される。樹脂粒子を略二等分し、その拡大断面の写真から、該断面の上下左右の4箇所の外層の厚みを求め、その平均を一つの樹脂粒子の外層の厚さとする。この作業を10個の発泡粒子について行い、各樹脂粒子の外層の厚さを相加平均した値を樹脂粒子における外層の平均厚みとする。なお、外層が芯層の周囲に部分的に形成されている場合は、上記4箇所の外層の厚みをどうしても測定できない場合があるが、その場合は測定できる任意の4箇所の外層厚みを求め、その平均を一つの樹脂粒子の外層の厚さとする。また、樹脂粒子の外層の厚みが分かり難いときには、予め外層を構成する樹脂に着色剤を添加して樹脂粒子を製造することが好ましい。
本発明方法にて得られる発泡粒子の見かけ密度は、軽量性、型内成形性、及び機械的物性に優れるという観点から、25〜200g/L、更に30〜135g/L、特に35〜120g/Lであることが好ましい。見かけ密度が小さすぎると、型内成形後の発泡粒子成形体の収縮率が大きくなる虞れがあり、見かけ密度が大きすぎると、発泡粒子の見かけ密度のばらつきが大きくなり易く、型内にて加熱成形する際の発泡粒子の膨張性、融着性、発泡粒子成形体の見かけ密度のばらつきに繋がり、得られる発泡粒子成形体の物性低下の虞がある。
本明細書における発泡粒子の見かけ密度は次のように測定する。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置する。次に、同恒温室内にて、10日間放置した約500mlの発泡粒子群の質量W1(g)を測定し、重量測定を測定した発泡粒子群を金網などの道具を使用して温度23℃の水の入ったメスシリンダー中に沈める。次に、金網等の道具の体積を差し引いた、水位上昇分から読みとられる発泡粒子群の容積V1(L)を測定し、メスシリンダーに入れた発泡粒子群の質量W1を容積V1で割り算(W1/V1)することにより見かけ密度を求める。
また、本発明方法にて得られる発泡粒子の平均気泡径は、型内成形性、得られるは発泡粒子成形体の外観が更に向上するという観点から、30〜500μmであることが好ましく、50〜250μmであることがより好ましい。
発泡粒子の平均気泡径は、次のようにして測定される。
発泡粒子を略二等分した切断面を顕微鏡で撮影した拡大写真に基づき、以下のとおり求めることができる。発泡粒子の切断面拡大写真において発泡粒子の一方の表面から他方の表面に亘って、気泡切断面の略中心を通る4本の線分を引く。ただし、該線分は、気泡切断面の略中心から切断粒子表面へ等間隔の8方向に伸びる放射状の直線を形成するように引くこととする。次いで前記4本の線分と交わる気泡の数の総数N(個)を求める。4本の各線分の長さの総和L(μm)を求め、総和Lを総数Nで除した値(L/N)を発泡粒子1個の平均気泡径とする。この作業を10個の発泡粒子について行い、各発泡粒子の平均気泡径を相加平均した値を発泡粒子の平均気泡径とする。
また、本発明方法にて得られる発泡粒子の独立気泡率は、80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。独立気泡率が小さすぎると、発泡粒子の二次発泡性が劣るとともに、得られる発泡粒子成形体の機械的物性も劣ったものとなりやすい。発泡粒子の基材樹脂を構成するポリ乳酸系樹脂として、少なくとも芯層を構成するポリ乳酸系樹脂が前述のとおり分子鎖末端が封鎖されているものであることが、上記発泡粒子の独立気泡率が高いものを得る上で好ましい。
発泡粒子の独立気泡率は、次のようにして測定される。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置し養生する。次に同恒温室内にて、10日間放置した嵩体積約20cmの発泡粒子を測定用サンプルとし下記の通り水没法により正確に見かけの体積Vaを測定する。見かけの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM−D2856−70に記載されている手順Cに準じ、東芝・ベックマン株式会社製空気比較式比重計930により測定される測定用サンプルの真の体積の値Vxを測定する。そして、これらの体積値Va及びVxを基に、下記の(4)式により独立気泡率を計算し、N=5の平均値を発泡粒子の独立気泡率とする。

独立気泡率(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ)・・・(4)
ただし、
Vx:上記方法で測定される発泡粒子の真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(cm
Va:発泡粒子を、水の入ったメスシリンダーに沈めて、水位上昇分から測定される発泡粒子の見かけの体積(cm
W:発泡粒子測定用サンプルの重量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm
本発明方法により得られる発泡粒子は、型内成形することにより発泡粒子成形体となる。次に該発泡粒子成形体及びその製造方法について説明する。
前記発泡粒子の型内成形により得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体の形状は、特に制約されず、板状、柱状、容器状、ブロック状はもとより、三次元の複雑な形状のものや、特に厚みの厚いもの等が挙げられる。
該発泡粒子成形体は、本発明方法により得られる発泡粒子からなるものであることにより、常に発泡粒子相互の熱融着性に優れると共に、発泡粒子を構成するポリ乳酸系樹脂の熱処理により耐熱性、剛性に優れ、更に圧縮強度や曲げ強度、引張り強度等の機械的強度に優れる発泡粒子成形体となる。
前記のようにして得られる発泡粒子成形体の密度は、軽量であると共に機械的物性に優れるという観点から、15〜200g/L、更に25〜150g/L、特に30〜120g/Lであることが好ましい。
該発泡粒子成形体の独立気泡率は、前記発泡粒子と同様に、60%以上が好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。該独立気泡率が低すぎると発泡粒子成形体の圧縮強度等の機械的物性が低下する虞がある。
発泡粒子成形体の独立気泡率測定は、発泡粒子成形体断面中央部より25×25×30mmのサンプルを切出し(スキンはすべて切り落とす)、測定用サンプルとする他は、前記発泡粒子の独立気泡率の測定と同様にして求めることができる。
また、発泡粒子成形体は発泡粒子同士の融着性に優れるものであり、その融着率は50%以上、更に60%以上、特に80%以上であることが好ましい。融着率が高い発泡粒子成形体は機械的物性、特に曲げ強度に優れる。
なお、該融着率は、発泡粒子成形体を破断した際の破断面発泡粒子の個数に基づく材料破壊率を意味し、融着していない部分は材料破壊せず、発泡粒子の界面で剥離する。
前記発泡粒子成形体の製造にあたっては、公知の型内成形方法を採用することができる。
例えば、従来公知の発泡粒子成形金型を用い、圧縮成形法、クラッキング成形法、加圧成形法、圧縮充填成形法、常圧充填成形法(例えば、特公昭46−38359号公報、特公昭51−22951号公報、特公平4−46217号公報、特公平6−22919号公報、特公平6−49795号公報等参照)などが挙げられる。
通常好ましく行なわれる型内成形法としては、加熱及び冷却が可能であって且つ開閉し密閉できる従来公知の熱可塑性樹脂発泡粒子型内成形用の金型のキャビティー内に発泡粒子を充填し、飽和蒸気圧が0.01〜0.25MPa(G)、好ましくは0.01〜0.20MPa(G)の水蒸気を供給して金型内で発泡粒子同士を加熱することにより膨張、融着させ、次いで得られた発泡粒子成形体を冷却して、キャビティー内から取り出すバッチ式型内成形法や、後述する連続式の型内成形法等が挙げられる。
前記水蒸気の供給方法としては、一方加熱、逆一方加熱、本加熱などの加熱方法を適宜組み合わせる従来公知の方法を採用できる。特に、予備加熱、一方加熱、逆一方加熱、本加熱の順に発泡粒子を加熱する方法が好ましい。
また、前記発泡粒子成形体は、発泡粒子を通路内の上下に沿って連続的に移動するベルトによって形成される型内に連続的に供給し、水蒸気加熱領域を通過する際に飽和蒸気圧が0.01〜0.25MPa(G)の水蒸気を供給して発泡粒子を膨張、融着させ、その後冷却領域を通過させて冷却し、次いで得られた発泡粒子成形体を通路内から取り出し、適宜長さに順次切断する連続式型内成形法(例えば特開平9−104026号、特開平9−104027号及び特開平10−180888号等参照)により製造することもできる。
前記型内成形に先立ち、前記方法で得られた発泡粒子を加圧可能な密閉容器に充填し、空気などの加圧気体により加圧処理して発泡粒子内の圧力を高める操作を行って発泡粒子内の圧力を0.01〜0.15MPa(G)に調整した後、該発泡粒子を容器内から取り出して型内成形を行なうことにより、発泡粒子の型内成形性をより一層向上させることが出来る。
次に、本発明を実施例によりさらに詳述に説明する。
実施例1〜9、比較例2、4、5
内径65mmの芯層形成用押出機および内径30mmの外層形成用押出機の出口側に多層ストランド形成用の共押ダイを付設した押出機を用いた。
芯層形成用押出機および外層形成用押出機に、それぞれ表1に示す芯層および外層を形成するポリ乳酸樹脂を、それぞれ表1に示す割合で、夫々の押出機に供給し、溶融混練した。その溶融混練物を前記の共押ダイに導入してダイ内で合流して押出機先端に取り付けた口金の細孔から、芯層の側面に外層が形成された多層ストランドとして共押出し、共押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで重量が略2mgとなるように切断し、乾燥して多層樹脂粒子を得た。
なお、芯層のポリ乳酸樹脂には気泡調整剤としてポリテトラフルオロエチレン粉末(商品名:TFW−1000、(株)セイシン企業製)を含有量が1000重量ppmとなるようにマスターバッチで供給した。
次に、前記樹脂粒子を用いてポリ乳酸樹脂発泡粒子を作製した。
具体的には、まず、前記のようにして得られた樹脂粒子1kgを分散媒としての水3Lと共に撹拌機を備えた5Lの密閉容器内に仕込み、更に分散媒中に、分散剤として酸化アルミニウム0.1重量部、界面活性剤(商品名:ネオゲンS−20F、第一工業製薬社製、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を有効成分量として0.01重量部を添加した。次いで、撹拌下で表1に示す保持温度(表1中:1段目の保持温度)まで昇温し、密閉容器内に発泡剤としての二酸化炭素を表1に示す圧力(表1中:1段目の密閉容器内圧力)になるまで圧入し表1に示す保持温度、保持時間の条件で保持した。次いで、表1に示す発泡温度まで昇温し、表1に示す圧力(表1中:2段目の密閉容器内圧力)になるまで二酸化炭素を圧入し、表1に示す発泡温度で保持時間(表1中:2段目の保持時間)の条件で保持した。その後、二酸化炭素にて背圧を加えながら発泡性樹脂粒子を分散媒と共に大気圧下に放出して表1に示す見かけ密度のポリ乳酸樹脂発泡粒子を得た。ただし、実施例9においては、1段目の保持を行わず、表1に示す発泡温度での保持後、他の実施例と同様にしてポリ乳酸樹脂発泡粒子を得た。
なお、上記分散剤、界面活性剤の添加量(重量部)は、ポリ乳酸樹脂粒子100重量部に対する量である。
ポリ乳酸樹脂発泡粒子の製造条件(密閉容器内圧力、及び発泡温度)を表1に示す。
また、得られた発泡粒子の諸物性を測定した結果を表1に示す。
比較例1、比較例3
内径65mmの芯層形成用押出機の出口側にストランド形成用ダイを付設した押出機を用い、単層のポリ乳酸樹脂粒子を作製した以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造条件(密閉容器内圧力、及び発泡温度)を表1に示す。
また、得られた発泡粒子の諸物性を測定した結果を表1に示す。
「見かけ密度」
前記の方法により測定した。
「独立気泡率」
前記の方法により測定した。
「平均気泡径」
前記の方法により測定した。
次に、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を作製した。
まず、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を縦200mm×横250mm×厚さ20mmの平板成形用金型に充填し、スチーム加熱による加圧成形により型内成形を行なって板状の発泡粒子成形体を得た。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行ったのち、固定側のドレン弁を開放した状態で移動側よりスチームを5秒間供給し、次いで移動側のドレン弁を開放した状態で固定側よりスチームを10秒間供給した後、表2に示す成形加熱スチーム圧力で加熱した。
加熱終了後、放圧し、発泡粒子成形体の発泡力を検出する金型に取り付けた表面圧力計が0.02MPa(G)に低下するまで水冷したのち、金型を開放し発泡粒子成形体を金型から取り出した。得られた発泡粒子成形体は70℃のオーブンにて15時間養生した後、室温まで徐冷した。このようにして、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体を得た。
このようにして得られた発泡粒子成形体について、下記の各種物性を評価し、その結果を表2に示す。
「外観」
外観評価は、発泡粒子成形体の表面を観察し、表面に発泡粒子の二次発泡不良による粒子間隙が目立たない場合を「○」として評価し、目立つ場合を「×」として評価することにより行った。
「融着性」
融着性評価は、発泡粒子成形体を破断した際の破断面に露出した発泡粒子のうち、材料破壊した発泡粒子の数の割合(融着率)に基づいて行った。具体的には、発泡粒子成形体を、カッターナイフで発泡粒子成形体の厚み方向に約3mmの切り込みを入れた後、切り込み部から発泡粒子成形体を破断させた。次に、破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定し、(n)と(b)の比(b/n)を百分率で表して融着率(%)とした。融着率の値を表2に示す。
「成形体の密度」
発泡粒子成形体の密度は、次のように測定した。
温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上放置した発泡粒子成形体の外形寸法から嵩体積を求めた。次いで該発泡粒子成形体の質量(g)を精秤した。発泡粒子成形体の質量を嵩体積にて除し、単位換算することにより発泡粒子成形体の密度(g/L)求めた。
「粒子内圧」
発泡粒子成形体を作製する際、或いは二段発泡する際の発泡粒子の内圧は、型内成形機充填直前、或いは二段発泡機投入直前の発泡粒子の一部(以下、発泡粒子群という)を使用して次のように測定した。
加圧タンク内にて内圧が高められた型内成形機充填直前、或いは二段発泡機投入直前の発泡粒子群を加圧タンクから取り出してから60秒以内に、発泡粒子は通過させないが空気は自由に通過できるサイズの針穴を多数穿設した70mm×100mm程度の袋の中に収容して気温23℃、相対湿度50%の大気圧下の恒温恒湿室に移動した。続いてその恒温恒湿室内の秤に発泡粒子群の入った袋を乗せて重量を読み取った。この重量の測定は、上記した発泡粒子群を加圧タンクから取り出してから120秒後におこなった。この時の重量をQ(g)とした。続いてその発泡粒子群の入った袋を同恒温恒湿室に10日間放置した。発泡粒子内の加圧空気は時間の経過とともに気泡壁を透過して外部に抜け出すため発泡粒子群の重量はそれに伴って減少し、10日間後では平衡に達しているので実質的にその重量は安定した。よってこの10日間後に再度その発泡粒子群の入った袋の重量を同恒温恒湿室内にて測定し、この重量をU(g)とした。Q(g)とU(g)の差を増加空気量W(g)とし、下記の(5)式により発泡粒子の内圧P(MPa)を計算した。なお、この内圧Pはゲージ圧に相当する。
P=(W÷M)×R×T÷V ・・・(5)
但し、上式中、Mは空気の分子量であり、ここでは28.8(g/モル)の定数を採用する。Rは気体定数であり、ここでは0.0083(MPa・L/(K・mol))の定数を採用する。Tは絶対温度を意味し、23℃の雰囲気を採用されているので、ここでは296(K)の定数である。Vは発泡粒子群の見かけ体積から発泡粒子群中に占める基材樹脂の体積を差し引いた体積(L)を意味する。
なお、発泡粒子群の見かけ体積は、10日間後に袋から取り出された発泡粒子群の全量を直ちに同恒温恒湿室内にて23℃の水100cmが収容されたメスシリンダー内の水に水没させた時の目盛り上昇分から、発泡粒子群の体積Y(cm)を算出し、これをリットル(L)単位に換算することによって求められる。発泡粒子群中に占める基材樹脂の体積(L)は、上記発泡粒子群重量(U(g)と上記の針穴を多数穿設した袋の重量Z(g)との差)を、発泡粒子をヒートプレスにて脱泡して得られる樹脂の密度(g/cm)にて除し、単位換算して求められる。また、この場合の発泡粒子群の見かけ密度(g/cm)は、上記発泡粒子群重量(U(g)とZ(g)との差)を体積Y(cm)で除すことにより求められる。
なお、以上の測定においては、上記発泡粒子群重量(U(g)とZ(g)との差)が0.5000〜10.0000gで、かつ体積Yが50〜90cmとなる量の複数個の発泡粒子群が使用される。
「耐熱性」
発泡粒子成形体の耐熱性を評価した。JIS K 6767(1999年)に記載されている熱的安定性(高温時の寸法安定性・B法)に準拠して、120℃に保ったギアオーブン内に試験片を入れ22時間加熱を行った後取り出し、23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室に1時間放置し、加熱前後の寸法より下記(6)式より加熱寸法変化率を求めた。
加熱寸法変化率(%)=(加熱後の寸法−加熱前の寸法)/加熱前の寸法 ×100
・・・(6)

Claims (4)

  1. ポリ乳酸系樹脂粒子を耐圧容器内で分散媒と共に、発泡剤存在下かつ加熱条件下で、分散させて得られる発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を、分散媒と共に耐圧容器内から該耐圧容器内よりも低い圧力下に放出して発泡させるポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法であって、
    該ポリ乳酸系樹脂粒子がポリ乳酸系樹脂から形成される芯層とポリ乳酸系樹脂(但し、芯層を形成するポリ乳酸系樹脂を除く。)から形成される外層とからなり、
    芯層を形成するポリ乳酸系樹脂の軟化点(A)[℃]と外層を形成するポリ乳酸系樹脂の軟化点(B)[℃]との関係が下記(1)式を満足し、
    熱流束示差走査熱量測定法に準拠し下記条件1にて求められる、ポリ乳酸系樹脂粒子の吸熱量(R:endo)[J/g]が下記(2)式を満足することを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法。
    105[℃]≧[軟化点(A)−軟化点(B)]>0[℃] ・・・(1)
    R:endo≧25 ・・・(2)
    条件1
    吸熱量(R:endo)の測定は、ポリ乳酸系樹脂粒子1〜4mgをJIS K7122(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、融解ピーク終了温度より30℃高い温度まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度2℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度2℃/minにて40℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度2℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱して溶融させる際に得られるDSC曲線に基づいて求められる値とする。
  2. 請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法において、少なくとも芯層を形成するポリ乳酸系樹脂が、カルボジイミド化合物にて改質された変性ポリ乳酸系樹脂であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法において、該ポリ乳酸系樹脂粒子中にポリテトラフルオロエチレンが含まれていることを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法において、該発泡剤が無機系物理発泡剤であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法。
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