以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、本実施形態の走行支援装置1を備えた自車両Vの概略構成を示す図である。
図1中に示すように、走行支援装置1は、左側障害物検出手段2と、右側障害物検出手段4と、車速検出手段6と、操舵トルク検出手段8と、操舵角検出手段10と、操舵コントローラ12と、トルク付与手段14を備えている。
左側障害物検出手段2は、例えば、音波を送受信可能なソナーを用いて形成されており、自車両Vの前側において、車幅方向左側に配置されている。また、左側障害物検出手段2は、自車両Vの車幅方向左側へ向けて音波を送信する。そして、左側障害物検出手段2は、送信されて障害物等に反射した音波を受信すると、音波の送信時間及び受信時間を含む情報信号を、操舵コントローラ12へ出力する。
右側障害物検出手段4は、左側障害物検出手段2と同様、例えば、音波を送受信可能なソナーを用いて形成されており、自車両Vの前側において、車幅方向右側に配置されている。また、右側障害物検出手段4は、自車両Vの車幅方向右側へ向けて音波を送信する。そして、右側障害物検出手段4は、送信されて障害物等に反射した音波を受信すると、音波の送信時間及び受信時間を含む情報信号を、操舵コントローラ12へ出力する。
したがって、左側障害物検出手段2と右側障害物検出手段4は、自車両Vの車幅方向両側において、自車両Vの障害物(壁W等)への近接度合いを検出可能に形成されている。
車速検出手段6は、自車両Vの車速を検出し、この検出した車速を含む情報信号を、操舵コントローラ12へ出力する。
操舵トルク検出手段8は、例えば、ステアリングホイール16を回転自在に支持するステアリングコラム18に取り付けられている。また、操舵トルク検出手段8は、運転者がステアリングホイール16へ入力した操舵トルクを検出し、この検出した操舵トルクを含む情報信号を、操舵コントローラ12へ出力する。
操舵角検出手段10は、操舵トルク検出手段8と同様、例えば、ステアリングコラム18に取り付けられている。また、操舵角検出手段10は、運転者によるステアリングホイール16の操舵角を検出し、この検出した操舵角を含む情報信号を、操舵コントローラ12へ出力する。
操舵コントローラ12は、左側障害物検出手段2、右側障害物検出手段4、車速検出手段6、操舵角検出手段10及び操舵トルク検出手段8が出力した情報信号の入力を受ける。なお、各検出手段(2、4、6、8、10)と操舵コントローラ12との間における情報信号の出入力は、例えば、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークを経由して行う。
また、操舵コントローラ12は、各検出手段(2、4、6、8、10)から入力された各種の情報信号に基づいて、ステアリングホイール16へ出力するトルクを含む制御信号を、トルク付与手段14へ出力する。なお、操舵コントローラ12の具体的な構成については、後述する。また、ステアリングホイール16へ出力するトルクとは、運転者に対して操舵操作を支援するための走行支援トルク以外に、電動パワーステアリングが通常の動作としてステアリングホイール16へ出力するトルクである、操舵支援トルクがある。
ここで、走行支援トルクは、操舵トルク検出手段8が検出した操舵トルクとは、逆方向のトルクである。
なお、本実施形態では、一例として、車速検出手段6が検出した自車両Vの車速が、30[km/h]以下である場合に、操舵コントローラ12が、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御を行う状態を前提とする。これは、車速が高い走行状態では、自車両Vに対して幅の狭い狭路(例えば、幅が4m以内の道路)において、走行支援トルクによる操舵操作の支援が困難となるためである。
トルク付与手段14は、例えば、公知の電動パワーステアリング(Electric Power Steering)を用いて形成されており、ステアリングホイール16へトルクを出力可能な電動モータ(図示せず)を有している。なお、本実施形態では、トルク付与手段14を形成する電動パワーステアリングとして、運転者の操舵操作を補助するための倍力装置として一般的な構成である、電子制御型のパワーステアリングを用いる。しかしながら、トルク付与手段14を形成する構成は、電動パワーステアリングに限定するものではなく、例えば、油圧制御式のパワーステアリングであってもよい。
また、トルク付与手段14は、操舵コントローラ12から入力された制御信号に基づいて電動モータを駆動させ、ステアリングホイール16へトルク(走行支援トルク、操舵支援トルク)を出力する。
(操舵コントローラ12の具体的な構成)
以下、操舵コントローラ12の具体的な構成について説明する。
図2は、操舵コントローラ12の具体的な構成を示す図である。
図2中に示すように、操舵コントローラ12は、制御開始/終了判定部20と、操舵支援電流計算部22と、モータ指令値計算部24を備えている。
制御開始/終了判定部20は、左側障害物検出手段2、右側障害物検出手段4、車速検出手段6、操舵角検出手段10及び操舵トルク検出手段8が出力した情報信号に基づいて、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御の必要性を判断する。これに加え、制御開始/終了判定部20は、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御における制御モードを設定する。なお、制御モードに関する説明は、後述する。
ここで、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御の必要性の判断とは、以下に示す(X)または(Y)の判断である。
(X):ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力していない状態において、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御を開始するか否かの判断。なお、以下、(X)の判断を、「制御を開始するか否かの判断」と記載する場合がある。
(Y):ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力している状態において、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御を停止するか否かの判断。なお、以下、(Y)の判断を、「制御を停止するか否かの判断」と記載する場合がある。
また、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御の必要性を判断した制御開始/終了判定部20は、その判断結果を含む情報信号を、モータ指令値計算部24へ出力する。これに加え、制御モードを設定した制御開始/終了判定部20は、その設定した制御モードを含む情報信号を、モータ指令値計算部24へ出力する。
なお、制御開始/終了判定部20が、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御の必要性を判断する際の処理と、制御モードを設定する際の処理については、後述する。
操舵支援電流計算部22は、車速検出手段6及び操舵トルク検出手段8が出力した情報信号に基づいて、ステアリングホイール16へ出力する操舵支援トルクを算出し、この算出した操舵支援トルクに応じた電流である操舵支援電流を計算する。また、操舵支援電流を計算した操舵支援電流計算部22は、この計算した操舵支援電流を含む情報信号を、モータ指令値計算部24へ出力する。
モータ指令値計算部24は、ステアリングホイール16へ出力するトルクを算出する。この算出は、左側障害物検出手段2、右側障害物検出手段4、操舵角検出手段10、操舵トルク検出手段8、制御開始/終了判定部20及び操舵支援電流計算部22が出力した情報信号に基づいて行う。
また、ステアリングホイール16へ出力するトルクを算出したモータ指令値計算部24は、算出したトルクに応じた電流であるモータ指令電流値を計算し、この計算したモータ指令電流値を含む制御信号を、トルク付与手段14へ出力する。
(モータ指令値計算部24の詳細な構成)
以下、モータ指令値計算部24の詳細な構成について説明する。
図3は、モータ指令値計算部24の詳細な構成を示す図である。
図3中に示すように、モータ指令値計算部24は、フィードバック誤差計算部26と、システム介入制御指令値計算部28と、操舵支援実電流計算部30と、加算処理部32と、レートリミッタ34を備えている。
フィードバック誤差計算部26は、左側障害物検出手段2、右側障害物検出手段4及び制御開始/終了判定部20から入力された情報信号に基づいて、フィードバック誤差を計算する。そして、フィードバック誤差を計算したフィードバック誤差計算部26は、計算したフィードバック誤差を含む情報信号を、システム介入制御指令値計算部28へ出力する。
ここで、「フィードバック誤差」とは、左側障害物検出手段2及び右側障害物検出手段4において、それぞれ、音波の送信時刻と受信時刻との差であり、自車両Vと障害物との距離を反映する値である。
なお、フィードバック誤差計算部26によるフィードバック誤差の計算は、制御開始/終了判定部20から入力された情報信号に、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御が必要であると判断した判断結果が含まれている場合に行う。
システム介入制御指令値計算部28は、左側障害物検出手段2、右側障害物検出手段4及びフィードバック誤差計算部26から入力された情報信号に基づいて、トルク付与手段14へ出力する走行支援トルクの指令値である制御指令値を計算する。そして、制御指令値を計算したシステム介入制御指令値計算部28は、計算した制御指令値を含む情報信号を、加算処理部32へ出力する。
ここで、システム介入制御指令値計算部28が制御指令値を計算する際には、左側障害物検出手段2及び右側障害物検出手段4が検出した、現在の自車両Vと障害物との距離を、フィードバック誤差を用いて補正する。そして、自車両Vと障害物との距離が減少、すなわち、自車両Vの位置が障害物へ接近するにつれて、自車両Vの位置が障害物から離れる方向へステアリングホイール16を回転させる大きさ及び回転方向の、制御指令値を計算する。
すなわち、システム介入制御指令値計算部28は、操舵トルクと逆方向のトルクである走行支援トルクを算出する。この算出は、左側障害物検出手段2及び右側障害物検出手段4により検出した、自車両Vの障害物への近接度合いと、操舵トルク検出手段8が検出した操舵トルクに基づいて行なう。
操舵支援実電流計算部30は、操舵角検出手段10、操舵トルク検出手段8、制御開始/終了判定部20及び操舵支援電流計算部22が出力した情報信号に基づいて、操舵支援トルクに応じた実際の電流値を計算する。そして、操舵支援トルクに応じた実際の電流値を計算した操舵支援実電流計算部30は、計算した実際の電流値を含む情報信号を、加算処理部32へ出力する。
実際の電流値の計算は、以下に示す手順により行う。
制御開始/終了判定部20から入力された情報信号に、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御が必要であるとの判断結果が含まれている場合、操舵支援電流計算部22が計算した操舵支援電流に対する減少割合を計算する。そして、この計算した減少割合を操舵支援電流計算部22が計算した操舵支援電流に乗算し、この乗算した値を、操舵支援トルクに応じた実際の電流値とする。
ここで、操舵支援トルクに対する減少割合の計算は、操舵角検出手段10が検出した現在の操舵角と、操舵トルク検出手段8が検出した現在の操舵トルクを用いて行う。
一方、制御開始/終了判定部20から入力された情報信号に、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御が必要ないとの判断結果が含まれている場合、操舵支援電流計算部22が計算した操舵支援電流に対する減少割合を計算しない。この場合は、操舵支援電流計算部22が計算した操舵支援電流を、操舵支援トルクに応じた実際の電流値とする。
加算処理部32は、システム介入制御指令値計算部28が計算した制御指令値に、操舵支援実電流計算部30が計算した、操舵支援トルクに応じた実際の電流値を加算して、ステアリングホイール16へ出力するトルクに応じたトルク電流値を演算する。
そして、ステアリングホイール16へ出力するトルクに応じたトルク電流値を演算した加算処理部32は、演算したトルク電流値を含む情報信号を、レートリミッタ34へ出力する。
すなわち、上記のように、制御開始/終了判定部20から出力された情報信号に、走行支援トルクを出力する制御が必要ないとの判断結果が含まれている場合、加算処理部32が演算したトルク電流値は、操舵支援電流計算部22が計算した操舵支援電流となる。
レートリミッタ34は、加算処理部32及び制御開始/終了判定部20から入力された情報信号に基づいて、トルク電流値に対するフィルタリングを行い、トルク電流値を滑らか(連続的)に変化する値に補正する。なお、トルク電流値に対するフィルタリングは、制御モードを変化させた際に、トルク電流値の急激な変化を抑制して、ステアリングホイール16に急激な挙動が発生することを抑制するために行う。このため、制御開始/終了判定部20から入力された情報信号に含まれる制御モードが変化していない場合、レートリミッタ34は、トルク電流値に対するフィルタリングを行なわない。
そして、トルク電流値を補正したレートリミッタ34は、補正したトルク電流値を含む情報信号を、トルク付与手段14へ出力する。また、制御モードが変化していない場合、レートリミッタ34は、補正していないトルク電流値を含む情報信号を、トルク付与手段14へ出力する。
なお、レートリミッタ34によるトルク電流値の補正は、制御開始/終了判定部20から入力された情報信号に、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御が必要であると判断した判断結果が含まれている場合に行う。また、制御モードの変化は、制御開始/終了判定部20から入力された情報信号に含まれている、制御開始/終了判定部20が設定した制御モードに応じて行う。
したがって、制御開始/終了判定部20から出力された情報信号に、走行支援トルクを出力する制御が必要ないとの判断結果が含まれている場合、レートリミッタ34からトルク付与手段14へ出力される情報信号は、次に示す内容となる。すなわち、走行支援トルクを出力する制御が必要ない場合、レートリミッタ34からトルク付与手段14へ出力される情報信号に含まれるモータ指令電流値は、操舵支援電流計算部22が計算した操舵支援電流となる。
ここで、上述した制御モードの変化について説明する。
制御モードの変化とは、例えば、自車両Vが走行している走行路の両側に障害物がある場合と、走行路の片側のみに障害物がある場合等、障害物の検知状態により制御ゲインの変更を行うような設計にした場合に行う。これは、走行時において、当初は走行路の両側にあった障害物が、走行中に片側のみになった場合等を想定している。
このような場合、フィルタ(レートリミッタ34)による補正を行わないと、大きなトルク変化が生じて、運転者に違和感が与えられることとなる。よって、例えば、時間的に変化する一次遅れ系のゲイン等と電流指示値を乗算することにより、ある時定数で、上述した電動モータへの出力を徐々に目標値へ近づける処理が有効であるため、この処理を行うために、レートリミッタ34による補正を行う。
したがって、モータ指令値計算部24は、システム介入制御指令値計算部28が算出した、操舵トルクと逆方向のトルクである走行支援トルクを、トルク付与手段14を介してステアリングホイール16へ出力する。
以上により、モータ指令値計算部24から、最終的にトルク付与手段14へ出力される情報信号は、障害物との衝突を避けるための制御目標位置と、自車両Vの現在位置との差を基に計算される。さらに、モータ指令値計算部24から、最終的にトルク付与手段14へ出力される情報信号は、運転者が入力した操舵トルクより計算された支援電流との加算により決定され、各制御信号の重み付けは、自車両Vと障害物との距離に応じて適切に計算される。
また、上述したように、操舵コントローラ12は、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する機能に加え、電子制御型のパワーステアリングのコントローラを制御する機能、すなわち、操舵支援トルクを出力する機能も有している。
(制御開始/終了判定部20による、制御を停止するか否かの判断を行う処理)
以下、制御開始/終了判定部20が行う処理のうち、制御を停止するか否かの判断を行う処理について、詳細に説明する。
本実施形態では、上述した走行支援トルクと操舵トルクとの関係を用いて運転者の意図を判定し、この判定した運転者の意図に基づいて、制御を停止するか否かの判断を行う処理について説明する。
ここで、制御を停止するか否かの判断は、ステアリングホイール16へ走行支援トルクが出力されており、運転者と走行支援装置1が、ステアリングホイール16の操舵を介して協調している状態で行う。
なお、以下の説明では、走行支援トルクを、「Tsys」と記載する場合がある。同様に、以下の説明では、操舵トルクを、「Tdr」と記載する場合がある。ここで、操舵トルク(Tdr)は、操舵トルク検出手段8により検出する。また、操舵トルク(Tdr)は、これ以外にも、操舵支援電流計算部22が算出した操舵支援トルクを用いて検出してもよい。
ここで、走行支援トルクと操舵支援トルクとの関係は、大別すると、以下に示す三通り(R1〜R3)の関係に分類される。
R1:Tsys<Tdr(操舵トルク検出手段8の検出した操舵トルクが反時計回り方向のトルク)
R2:Tsys>Tdr(操舵トルク検出手段8の検出した操舵トルクが時計回り方向のトルク)
R3:Tsys≒Tdr(操舵トルク検出手段8の検出した操舵トルク≒0)
以下、走行支援トルクと操舵トルクとの関係が、上記R1の関係である場合において、運転者の意図を判定し、この判定した運転者の意図に基づいて、制御を停止するか否かの判断を行う処理について説明する。
ここで、走行支援トルクと操舵トルクとの関係が、上記R1の関係である場合とは、走行支援トルクと操舵トルクとの偏差が、予め設定したトルク偏差閾値以上となる場合である。また、「予め設定したトルク偏差閾値」とは、予め設定した値であり、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御を終了する際に基準となる、操舵トルクの許容値である。
また、走行支援トルクと操舵トルクとの関係が、上記R1の関係である場合とは、走行支援トルクが操舵支援トルク未満の状態であり、結果として、ステアリングホイール16が反時計回り方向に回転している状態である。これは、自車両Vが、障害物へ接近する方向へ前進している状態である。
走行支援トルクと操舵トルクとの関係が、上記R1の関係である場合、制御開始/終了判定部20は、運転者が走行支援トルクを出力する制御を必要としていない、または、障害物に気づいていない等の意図を持っていると判定する。なお、運転者が走行支援トルクを出力する制御を必要としていない場合とは、例えば、自車両Vを、障害物(壁)に近い位置で停車・駐車させる場合である。
運転者が走行支援トルクを出力する制御を必要としていない、または、障害物に気づいていない等の意図を持っていると判定すると、制御開始/終了判定部20は、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい意図があるか否かを判定する。
ここで、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい意図があるか否かの判定は、走行支援トルク、または、走行支援トルクを発生させるための電流値の符号と、操舵トルク検出手段8の検出した操舵トルクの符号とが逆である場合に実施する。
そして、制御開始/終了判定部20は、操舵トルク検出手段8の検出した操舵トルクを用いて、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい(ステアリングオーバライド)意図があると判定する。具体的には、操舵トルク検出手段8の検出した操舵トルクが大きく、且つ操舵トルクが大きい状態が、予め設定した規定時間以上継続した場合に、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい意図があると判定する。
運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい意図があると判定すると、制御開始/終了判定部20は、走行支援トルクを抑制した後に停止した後、操舵支援トルクを出力する制御へ移行する処理を行う。これは、運転者が走行支援トルクを出力する制御を必要としていない場合には、走行支援トルクを出力する制御を続行すると、違和感を招く可能性があるためである。
なお、走行支援トルクを「抑制」する処理とは、具体的に、走行支援トルクを徐々に減少させる(弱める)処理である。また、走行支援トルクを「停止」する処理とは、徐々に減少させた走行支援トルクが「0」となり、走行支援トルクを出力する制御を停止する処理である。
一方、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい意図が無いと判定すると、制御開始/終了判定部20は、走行支援トルクを出力する制御を続行する処理を行う。
次に、走行支援トルクと操舵トルクとの関係が、上記R2の関係である場合において、運転者の意図を判定し、この判定した運転者の意図に基づいて、制御を停止するか否かの判断を行う処理について説明する。
ここで、走行支援トルクと操舵トルクとの関係が、上記R2の関係である場合とは、上記R1の関係と同様、走行支援トルクと操舵トルクとの偏差が、予め設定したトルク偏差閾値以上となる場合である。
また、走行支援トルクと操舵トルクとの関係が、上記R2の関係である場合とは、走行支援トルクが操舵支援トルクよりも大きい状態であり、結果として、ステアリングホイール16が時計回り方向に回転している状態である。これは、自車両Vが、障害物から離れる方向へ前進している状態である。
走行支援トルクと操舵トルクとの関係が、上記R2の関係である場合、運転者が、障害物に気づいてステアリングホイール16の把持力を緩めた、または、何らかの原因でステアリングホイール16から手を離した等の意図を持っていると判定する。なお、運転者が何らかの原因でステアリングホイール16から手を離した場合とは、例えば、段差等により自車両Vが急激に上下方向へ振動した場合や、自車両Vの前方に、車両や人員等が飛び出してきた場合等である。
運転者が、障害物に気づいてステアリングホイール16の把持力を緩めたと判定すると、制御開始/終了判定部20は、運転者が冷静な精神状態を保っていると判定し、走行支援トルクを抑制する処理を行う。さらに、制御開始/終了判定部20は、抑制した走行支援トルクが「0」となり、走行支援トルクを出力する制御を停止した後、操舵支援トルクを出力する制御へ移行する処理を行う。これにより、走行支援トルクを出力する制御から操舵支援トルクを出力する制御へと移行し、ステアリングホイール16の制御権を、運転者へ違和感なく受け渡す。
一方、運転者が何らかの原因でステアリングホイール16から手を離したと判定すると、制御開始/終了判定部20は、運転者がパニックに陥っている、または、とっさにどうすべきか分からない状況であると判定する。
運転者がパニックに陥っている、または、とっさにどうすべきか分からない状況であると判定すると、制御開始/終了判定部20は、走行支援トルクを即座に「0」として、走行支援トルクを出力する制御を即座に停止する処理を行う。
ここで、運転者が冷静な精神状態を保っているか、運転者がパニックに陥っている、または、とっさにどうすべきか分からないかの違いを判断する際には、制御開始/終了判定部20は、次に示す処理を行う。すなわち、操舵トルク検出手段8の検出した操舵トルクの変化率及び操舵角検出手段10が検出した操舵角のうち、少なくとも一方を参照して、上記の違いを判断する。
これは、一般的に、運転者が冷静ではない状況におけるステアリングホイール16の操舵操作は、運転者が冷静である状況と比較して雑となる。このため、運転者が冷静ではない状況では、操舵角の変化率及び操舵トルクの変化率のうち少なくとも一方が大きくなる傾向があるためである。
したがって、操舵角の変化率及び操舵トルクの変化率のうち少なくとも一方に対する許容変化率が、規定値以下である場合は、上記のように、ステアリングホイール16の制御権を運転者へ違和感なく受け渡す制御を行う処理を行う。一方、操舵角の変化率及び操舵トルクの変化率のうち少なくとも一方に対する許容変化率が、許容変化率以上の場合は、走行支援トルクを出力する制御を即座に停止させる処理を行う。
次に、走行支援トルクと操舵トルクとの関係が、上記R3の関係である場合において、運転者の意図を判定し、この判定した運転者の意図に基づいて、制御を停止するか否かの判断を行う処理について説明する。
なお、走行支援トルクと操舵トルクとの関係が、上記R3の関係である場合は、走行支援トルクと操舵支援トルクが均衡している状態であり、結果として、ステアリングホイール16は回転していない、または、微速で回転している状態である。ここで、走行支援トルクと操舵トルクとの関係が、上記R3の関係である状態には、運転者によるステアリングホイール16の操舵角が、ステアリングホイール16の遊びの範囲内に収まっている状態が含まれる。
走行支援トルクと操舵トルクとの関係が、上記R3の関係である場合、運転者の意図を明確に予測することが困難である。このため、制御開始/終了判定部20は、走行支援トルクを出力する制御を続行する。
以上により、制御開始/終了判定部20は、走行支援トルクTsysと操舵トルクTdrとの偏差が、予め設定したトルク偏差閾値以上の場合に、走行支援トルクTsysの出力を停止する、走行支援トルク停止手段を形成している。
また、本実施形態では、上述したように、操舵角の変化に加え、操舵トルクの変化も参照することにより、走行支援トルクTsysの出力を停止する処理を行う。
これは、以下に示す理由による。
従来の技術では、ステアリングホイール16に操舵支援トルクを付加する制御を徐々に解除し、最終的には制御を終了している(例えば、上述した背景技術を参照)。なお、従来の技術としては、LDP(Lane Departure Prevention)システム等があり、このシステムは、システムからの運転者が行う判断の遅れや、運転者に与える違和感を低減するためのシステムである。また、上述した制御の解除及び終了は、ステアリングホイール16の操舵角が、走行車線の外枠を形成する白線と反対方向へ、所定の許容角度以上転舵されたことを検知して行う。
上記のLDPシステムと同様の考え方により、操舵角が制御終了の判定において基準となる角度を通過(クロス)することを判断条件として、制御終了の判断を実施すると、制御終了の判定が遅れることとなり、運転者に違和感を与えることになる。なお、制御終了の判定の遅れは、障害物の回避時に必要となる操舵角が大きいために発生するものである。また、上述した制御終了の判断は、LDPシステムよりも低車速で作動する、狭路走行を支援するシステムにおいて行うものである。
そこで、本発明の発明者等は、運転者に違和感を与える課題を解決するための方法としては、制御終了の判断を、操舵角の変化のみでなく、操舵トルクの変化も参照して行なう方法を考案した。この方法であれば、迅速、且つ正確に、運転者の意図を推定することが可能となるため、運転者の意図を反映した制御終了の判断が可能となる。
これは、一般的に、ステアリングホイール16へ出力するトルクの値は、操舵角の変化よりも先行して計測可能である。このため、操舵角の変化のみによる制御終了判定よりも早く、且つ確実に、運転者の意図を反映して、走行支援トルクTsysの出力を停止することが可能となることに起因する。
(動作)
次に、図1から図3を参照しつつ、図4から図8を用いて、本実施形態の走行支援装置1が行なう動作の一例について説明する。
図4は、本実施形態の走行支援装置1を備えた自車両Vの挙動を示す図である。具体的には、走行支援装置1を備えた自車両Vが、狭路を前進走行している状態において、運転者が、走行支援装置1による操舵支援を受けている状態を示す図である。
本実施形態の走行支援装置1は、自車両Vが狭路を前進走行する際に、障害物(図4中に示す状況では、壁W)への接触・衝突を避けるために、適切な走行支援トルクをステアリングホイール16へ出力して、操舵支援を行なう。なお、障害物としては、壁Wの他に、例えば、ガードレールや路肩等、地面(路面)からある程度の高さを有する物体を対象としている。
具体的には、図4中に示すように、自車両Vの車幅方向における両側に壁Wが存在する場合、走行支援装置1は、自車両Vと両側の壁Wとの間の距離を、それぞれ、センサ等の手段(音波を利用したソナー等)により検知する。なお、図4中では、自車両Vの車幅方向における左側の壁Wを、「壁WL」と示し、自車両Vの車幅方向における右側の壁Wを、「壁WR」と示している。
そして、自車両Vに近い側の壁Wへの接触・衝突を避けるために、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御を行う。なお、図4中には、両側の壁Wのうち、左側の壁WLが、自車両Vに近い側の壁Wである状態を示している。なお、以下の説明は、図4中に示すような、狭路を前進走行中の自車両Vが、障害物である左側の壁WLへ接近している状態を前提として行う。
すなわち、走行支援装置1は、狭路を前進走行中の自車両Vが左側の壁WLへ接近するにつれて、自車両Vと左側の壁WLとの間の距離に基づき、自車両Vが左側の壁WLから離れる方向にステアリングホイール16を回転させる走行支援トルクを出力する。これにより、自車両Vの運転者に、障害物を回避するための操舵操作(時計回り方向への操舵操作)を促す。この場合、ステアリングホイール16を回転させる方向は、時計回り方向となる。
次に、自車両Vが図4中に示す挙動を行う際に、本実施形態の走行支援装置1が行う処理について説明する。
図5は、本実施形態の走行支援装置1が行う全般的な処理を示すフローチャートである。なお、以下に示す各ステップにおける詳細な動作(処理)は、後述する。
図5中に示すフローチャートは、自車両Vの前進走行時において、自車両Vの運転者により、走行支援装置1を作動させるスイッチが操作(ON)された状態からスタート(図5中に示す「開始」)する。なお、走行支援装置1を作動させるスイッチは、運転席において、例えば、ステアリングコラム18付近に配置されており、自車両Vがこれから走行する走行路が狭路であると判断した運転者が、意図的に操作するスイッチである。図5中に示すフローチャートを開始すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS100の処理へ移行する。
ステップS100では、操舵コントローラ12が、各検出手段(2、4、6、8、10)が出力した情報信号の入力を受け、各情報信号を読み込む(ステップS100に示す「各信号の読み込み」)。なお、操舵コントローラ12による、各情報信号の読み込みは、例えば、10[msec]毎等、所定のサンプリング時間毎に行う。ステップS100において、各情報信号を読み込むと、走行支援装置1が行う処理は、ステップS102へ移行する。
ステップS102では、操舵支援電流計算部22により、ステアリングホイール16へ出力する操舵支援トルクを算出し、この算出した操舵支援トルクに応じた電流である操舵支援電流を計算する。すなわち、ステップS102では、電動パワーステアリングが通常の動作としてステアリングホイール16へ出力するトルクを計算(ステップS102に示す「通常のパワステ支援指令電流値を計算する」)する。そして、操舵支援電流を計算した操舵支援電流計算部22は、計算した操舵支援電流を含む情報信号を、モータ指令値計算部24へ出力する。ステップS102において、操舵支援電流を計算すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS104の処理へ移行する。
ステップS104では、制御開始/終了判定部20により、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御の必要性を判断(ステップS104に示す「制御の必要性がある?」)する。
ステップS104において、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御の必要性がある(図中に示す「Yes」)と判断すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS106へ移行する。
一方、ステップS104において、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御の必要性が無い(図中に示す「No」)と判断すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS108へ移行する。
ステップS106では、モータ指令値計算部24により、ステアリングホイール16へ出力するトルクに応じたトルク電流値を計算する。
ここで、ステップS106においてモータ指令値計算部24が行う処理は、ステップS104において、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御の必要性があると判断した場合に行う処理である。したがって、ステップS106では、モータ指令値計算部24により、ステアリングホイール16へ出力する走行支援トルクに応じたトルク電流値を計算(ステップS106に示す「走行支援トルクに応じたトルク電流値を計算する」)する。ステップS106において、走行支援トルクに応じたトルク電流値を計算すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS108へ移行する。
ステップS108では、ステップS106においてモータ指令値計算部24が計算したトルク電流値を含む情報信号を、トルク付与手段14へ出力(ステップS108に示す「EPSモータへ指令信号を出力する」)する。これにより、トルク付与手段14において、モータ指令値計算部24から入力された指令信号に基づいて、電動モータに供給する電流を制御する。
このとき、走行支援装置1が行う処理が、上述したステップS104からステップS106を経由してステップS108へ移行した場合は、ステアリングホイール16へ出力されるトルクは、走行支援トルクとなる。このため、運転者は、ステアリングホイール16へ出力された走行支援トルクにより、障害物から離れる方向(時計回り方向)へステアリングホイール16を操舵操作することとなる。これにより、自車両Vは、障害物(左側の壁WL)から離れる方向(右側の壁WRの方向)に移動することとなる。
一方、走行支援装置1が行う処理が、上述したステップS104からステップS106を経由せずにステップS108へ移行した場合は、ステアリングホイール16へ出力されるトルクは、操舵支援トルクとなる。このため、運転者は、ステアリングホイール16へ出力された操舵支援トルクにより操舵操作をアシストされながら、任意の方向へステアリングホイール16を操舵操作することとなる。
ステップS108において、モータ指令値計算部24が計算したトルク電流値を含む情報信号を、トルク付与手段14へ出力すると、走行支援装置1が行う処理は終了(図5中に示す「終了」)する。なお、走行支援装置1を作動させるスイッチが操作(ON)された状態を維持している場合、走行支援装置1が行う処理は、ステップS100へ移行する。一方、走行支援装置1を作動させるスイッチが解除(OFF)された場合、走行支援装置1の動作は終了し、自車両Vは、通常の走行(操舵支援トルクのみの出力)へ移行する。
次に、上述したステップS104の処理、すなわち、制御開始/終了判定部20が行う、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御の必要性を判断する処理について、詳細に説明する。
図6は、制御開始/終了判定部20が行う処理のうち、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御の必要性を判断する処理を示すフローチャートである。
図6中に示すフローチャートは、図5中に示すフローチャートのステップS102において操舵支援電流を計算した状態からスタート(図6中に示す「START(CALL)」)する。図6中に示すフローチャートを開始すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS200の処理へ移行する。
ステップS200では、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御を実施中か否か(ステップS200に示す「cont_flug=1?」)を判定する。すなわち、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御を実施中である状態とは、制御フラグ(「cont_flug」)が成立している(「1」)状態である。
ステップS200において、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御を実施中である(図中に示す「Yes」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS202へ移行する。
一方、ステップS200において、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御を実施中ではない(図中に示す「No」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、終了及びステップS200へ復帰(図6中に示す「END(Return)」)する。
ステップS202では、操舵トルク検出手段8が検出した操舵トルクの絶対値「|T|」[Nm]が、終了判定トルク閾値「α」[Nm]以下であるか否か(ステップS202に示す「|T|≦α?」)を判定する。
ここで、操舵トルク検出手段8が検出した操舵トルクの絶対値|T|とは、走行支援トルクTsysと操舵トルクTdrとの偏差であり、上述したR1の場合及びR2の場合の両方に適用する値である。
また、終了判定トルク閾値αとは、予め設定した値であり、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御を終了する際に基準となる、操舵トルクの許容値である。すなわち、終了判定トルク閾値αは、上述した「予め設定したトルク偏差閾値」に対応している。
なお、終了判定トルク閾値αは、例えば、自車両Vの前進走行時において、操舵トルク検出手段8が出力する情報信号に含まれるノイズ値よりも大きな値に設定することにより、ノイズ値による誤動作を抑制することが可能となる。また、終了判定トルク閾値αは、例えば、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御を停止する条件のうち、大部分を占める条件下において、運転者へ違和感を与えないような値に調節することが好適である。
ステップS202において、操舵トルクの絶対値|T|が終了判定トルク閾値α以下である(図中に示す「Yes」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS204へ移行する。
一方、ステップS202において、操舵トルクの絶対値|T|が終了判定トルク閾値α未満である(図中に示す「No」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、終了及びステップS200へ復帰(図6中に示す「END(Return)」)する。
ステップS204では、走行支援トルクTsysが操舵トルクTdrを超えているか否か(ステップS204に示す「Tsys>Tdr?」)を判定する。
ステップS204において、走行支援トルクTsysが操舵トルクTdrを超えている(図中に示す「Yes」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS206へ移行する。
一方、ステップS204において、走行支援トルクTsysが操舵トルクTdr以下である(図中に示す「No」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS210へ移行する。
ステップS206では、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい意図があるか否か(ステップS206に示す「override_flug=0?」)を判定する。ここで、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい意図がない状態とは、走行支援トルクを出力する制御を停止させたいオーバーライドフラグ(「override_flug」)が成立していない(「0」)状態である。なお、ステップS206における詳細な処理については、後述する。
ステップS206において、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい意図がある(図中に示す「Yes」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、終了及びステップS200へ復帰(図6中に示す「END(Return)」)する。
一方、ステップS206において、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい意図がない(図中に示す「No」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS208へ移行する。
ステップS208では、走行支援トルクを徐々に弱めていき、走行支援トルクを出力する制御を終了するとの判断結果を含む情報信号を、モータ指令値計算部24へ出力する。すなわち、ステップS208では、走行支援トルクを出力する制御を、即座に停止するのではなく、走行支援トルクの出力を徐々に弱めながら停止(ステップS208に示す「Normal_end=1」)させる。走行支援トルクの出力を徐々に弱める制御は、トルク電流値を滑らかに変化させることにより行う。走行支援トルクを徐々に弱める制御を行うと、ステアリングホイール16へ出力されるトルクは、走行支援トルクから操舵支援トルクへ、円滑に移行するため、運転者に与える違和感を抑制することが可能となる。
ステップS208において、走行支援トルクの出力を徐々に弱めながら、走行支援トルクを出力する制御を停止させる情報信号を出力すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS218へ移行する。
ステップS210では、操舵角検出手段10が検出した運転者によるステアリングホイール16の操舵角を用いて、単位時間当たりの操舵角速度「ω」を算出する。そして、算出した操舵角速度ωが、許容角速度「β」[degree/sec]未満であるか否か(ステップS210に示す「ω<β?」)を判定する。ここで、許容角速度βとは、予め設定した値であり、運転者が冷静であるか否かを判定する際に基準となる、操舵角速度の許容値である。
ステップS210において、操舵角速度ωが許容角速度β未満である(図中に示す「Yes」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS212へ移行する。
一方、ステップS210において、操舵角速度ωが許容角速度βを超えている(図中に示す「No」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS216へ移行する。
ステップS212では、操舵トルク検出手段8が検出した操舵トルクを単位時間で微分したトルク変化率「dT/dt」を算出する。そして、算出したトルク変化率dT/dtが、許容トルク変化率「γ」[Nm/sec]未満であるか否か(ステップS212に示す「dT/dt<γ?」)を判定する。ここで、許容トルク変化率γとは、予め設定した値であり、運転者が冷静であるか否かを判定する際に基準となる、トルク変化率の許容値である。すなわち、ステップS210及びステップS212では、運転者の操舵操作による、ステアリングホイール16の操舵角の変化が早いか否かを判定する。
ステップS212において、トルク変化率dT/dtが許容トルク変化率γ未満である(図中に示す「Yes」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS214へ移行する。
一方、ステップS212において、トルク変化率dT/dtが許容トルク変化率γを超えている(図中に示す「No」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS216へ移行する。
ステップS214では、ステップS208と同様、走行支援トルクを徐々に弱めていき、走行支援トルクを出力する制御を終了するとの判断結果を含む情報信号を、モータ指令値計算部24へ出力する。すなわち、ステップS214では、走行支援トルクを出力する制御を、即座に停止するのではなく、走行支援トルクの出力を徐々に弱めながら停止(ステップS214に示す「Normal_end=1」)させる。この制御は、ステップS208と同様、トルク電流値を滑らかに変化させることにより行う。ステップS214において、走行支援トルクの出力を徐々に弱めながら、走行支援トルクを出力する制御を停止させる情報信号を出力すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS218へ移行する。
ステップS216では、走行支援トルクの出力を即座に停止させて、走行支援トルクを出力する制御を終了するとの判断結果を含む情報信号を、モータ指令値計算部24へ出力する。すなわち、ステップS216では、走行支援トルクを出力する制御を、即座に停止(ステップS216に示す「Immediate_end=1」)させる。この制御は、トルク電流値を即座に「0」とすることにより行う。走行支援トルクを出力する制御を即座に停止させる制御を行うと、ステアリングホイール16への走行支援トルクの出力が即座に停止するため、自車両Vの挙動が、運転者の意図によらず走行支援トルクによって決まることが防止される。
ステップS216において、走行支援トルクを出力する制御を即座に停止させる情報信号を出力すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS218へ移行する。
ステップS218では、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御を停止させる情報信号を、モータ指令値計算部24へ出力する。すなわち、ステップS218では、上述した制御フラグ(「cont_flug」)を未成立(「0」)状態(ステップS218に示す「cont_flug=0」)とする。ここで、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御が停止すると、電動パワーステアリングは、通常の動作として、ステアリングホイール16へ操舵支援トルクを出力する。
ステップS218において、走行支援トルクを出力する制御を停止させる情報信号をモータ指令値計算部24へ出力すると、走行支援装置1が行う処理は、終了及びステップS200へ復帰(図6中に示す「END(Return)」)する。
次に、上述したステップS206の処理、すなわち、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい意図があるか否かを判定する詳細な処理について説明する。
図7は、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい意図があるか否かを判定する詳細な処理を示すフローチャートである。
図7中に示すフローチャートは、図6中に示すフローチャートのステップS204において、走行支援トルクTsysが操舵トルクTdrを超えている(図中に示す「Yes」)と判定した状態からスタート(図7中に示す「START(CALL)」)する。図7中に示すフローチャートを開始すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS300の処理へ移行する。
ステップS300では、走行支援トルクを発生させるための電流値の符号と、操舵トルク検出手段8の検出した操舵トルクの符号が逆であるか否か(ステップS300に示す「符号が逆?」)を判定する。
ステップS300において、走行支援トルクを発生させるための電流値の符号と、操舵トルク検出手段8の検出した操舵トルクの符号が逆である(図中に示す「Yes」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS302へ移行する。
一方、ステップS300において、上述した電流値の符号と上述した操舵トルクの符号が逆ではない(図中に示す「No」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、終了及びステップS300へ復帰(図7中に示す「END(Return)」)する。
ステップS302では、操舵トルク検出手段8が検出した操舵トルクの絶対値「|T|」[Nm]が、オーバーライド判定トルク閾値「A」[Nm]以上であるか否か(ステップS302に示す「|T|≧A?」)を判定する。ここで、オーバーライド判定トルク閾値Aとは、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい意図があると判断する際に基準となる値であり、自車両Vの大きさや操舵能力(最小旋回半径等)に応じて、予め設定する。
ステップS302において、操舵トルクの絶対値|T|がオーバーライド判定トルク閾値A以上である(図中に示す「Yes」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS304へ移行する。
一方、ステップS302において、操舵トルクの絶対値|T|がオーバーライド判定トルク閾値A未満である(図中に示す「No」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS306へ移行する。
ステップS304では、操舵トルクの絶対値|T|がオーバーライド判定トルク閾値A以上である時間を計測(カウント)(ステップS304に示す「counter+1」)する。ステップS304において、操舵トルクの絶対値|T|がオーバーライド判定トルク閾値A以上である時間を計測すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS308へ移行する。
ステップS306では、ステップS304と異なり、操舵トルクの絶対値|T|がオーバーライド判定トルク閾値A以上である時間を計測(ステップS306に示す「counter=0」)しない処理を行う。ステップS306において、操舵トルクの絶対値|T|がオーバーライド判定トルク閾値A以上である時間を計測しない処理を行うと、走行支援装置1が行う処理は、ステップS308へ移行する。
ステップS308では、ステップS304で計測した、操舵トルクの絶対値|T|がオーバーライド判定トルク閾値A以上である時間が、オーバーライド判定時間「B」[sec]以上であるか否か(ステップS308に示す「counter≧B?」)を判定する。ここで、オーバーライド判定時間Bとは、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい意図があると判断する際に基準となる閾値であり、自車両Vの大きさや操舵能力(最小旋回半径等)に応じて、予め設定する。
ステップS308において、操舵トルクの絶対値|T|がオーバーライド判定トルク閾値A以上である時間が、オーバーライド判定時間B以上である(図中に示す「Yes」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS310へ移行する。
一方、ステップS308において、操舵トルクの絶対値|T|がオーバーライド判定トルク閾値A以上である時間が、オーバーライド判定時間B未満である(図中に示す「No」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS312へ移行する。
ステップS310では、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたいオーバーライドフラグを成立させる(ステップS310に示す「override_flug=1」)。ステップS310において、オーバーライドフラグを成立させると、走行支援装置1が行う処理は、終了及びステップS300へ復帰(図7中に示す「END(Return)」)する。
ステップS312では、ステップS310と異なり、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたいオーバーライドフラグを成立させない(ステップS312に示す「override_flug=0」)処理を行う。ステップS312において、オーバーライドフラグを成立させない処理を行うと、走行支援装置1が行う処理は、終了及びステップS300へ復帰(図7中に示す「END(Return)」)する。
次に、上述したステップS104からステップS108の処理、すなわち、制御開始/終了判定部20及びモータ指令値計算部24が行う処理のうち、モータ指令値計算部24が行う処理について、詳細に説明する。
図8は、制御開始/終了判定部20及びモータ指令値計算部24が行う処理を示すフローチャートである。
図8中に示すフローチャートは、図5中に示すフローチャートのステップS102において操舵支援電流を計算した状態からスタート(図8中に示す「開始」)する。図8中に示すフローチャートを開始すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS400の処理へ移行する。
ステップS400では、制御開始/終了判定部20により、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御の必要性を判断する。これにより、ステップS400では、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御を開始する制御開始フラグが成立しているか否か(ステップS400に示す「制御開始フラグ?」)を判定する。すなわち、ステップS400の処理は、上述したステップS104の処理と同様である。
ステップS400において、制御開始フラグが成立している(図中に示す「Yes」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS402へ移行する。
一方、ステップS400において、制御開始フラグが成立していない(図中に示す「No」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS420へ移行する。
ステップS402では、フィードバック誤差計算部26により、左側障害物検出手段2及び右側障害物検出手段4から入力された情報信号に基づいて、フィードバック誤差を計算する。すなわち、ステップS402では、フィードバック誤差計算部26にて、フィードバック誤差を計算(ステップS402に示す「フィードバック誤差計算部にて、フィードバック誤差を計算する」)する。ステップS402において、フィードバック誤差を計算すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS404へ移行する。
ステップS404では、システム介入制御指令値計算部28により、フィードバック誤差計算部26が計算したフィードバック誤差と、左側障害物検出手段2及び右側障害物検出手段4から入力された情報信号に基づいて、制御指令値を計算する。すなわち、ステップS404では、システム介入制御指令値計算部28にて、制御指令値を計算(ステップS404に示す「システム介入制御指令値計算部にて、制御指令値を計算する」)する。ステップS404において、制御指令値を計算すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS406へ移行する。
ステップS406では、制御開始/終了判定部20により、ステアリングホイール16へ走行支援トルクを出力する制御における制御モードが変化しているか否かを判断する。これにより、ステップS406では、制御モードが変化していることを示すモード変化フラグが成立しているか否か(ステップS406に示す「モード変化フラグ?」)を判定する。
ステップS406において、モード変化フラグが成立していない(図中に示す「No」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS408へ移行する。
一方、ステップS406において、モード変化フラグが成立している(図中に示す「Yes」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS410へ移行する。
ステップS408では、レートリミッタ34において、トルク電流値に対するフィルタリングを行う際に用いるゲインを「1」と設定(ステップS408に示す「レートリミッタゲイン=1」)する。ステップS408において、トルク電流値に対するフィルタリングを行う際に用いるゲインを「1」と設定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS416へ移行する。
ステップS410では、レートリミッタ34において、トルク電流値に対するフィルタリングを行う際に用いるゲインを演算(ステップS410に示す「レートリミッタゲイン演算」)する。ステップS410において、トルク電流値に対するフィルタリングを行う際に用いるゲインを演算すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS412へ移行する。
ステップS412では、ステップS410において演算したゲインが「1」であるか否か(ステップS412に示す「ゲイン=1?」)を判定する。
ステップS412において、ステップS410で演算したゲインが「1」である(図中に示す「Yes」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS414へ移行する。
一方、ステップS412において、ステップS410で演算したゲインが「1」ではない(図中に示す「No」)と判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS416へ移行する。
ステップS414では、制御開始/終了判定部20により、ステップS410で演算したゲインが「1」であることにより、実質的にはモード変化フラグが成立していないと(ステップS414に示す「モード変化フラグ=0」)判定する。これにより、レートリミッタ34において、トルク電流値に対するフィルタリングを行う際に用いるゲインが、「1」と設定される。ステップS414において、実質的にはモード変化フラグが成立していないと判定すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS416へ移行する。
ステップS416では、操舵支援実電流計算部30により、操舵支援電流計算部22が計算した操舵支援電流に対する減少割合を、操舵支援電流計算部22が計算した操舵支援電流に乗算して、操舵支援トルクに応じた実際の電流値を計算する。すなわち、ステップS416では、操舵支援実電流計算部30にて、操舵支援電流に対する減少割合を、操舵支援電流に乗算(ステップS416に示す「操舵支援実電流計算部30にて、操舵支援電流に対する減少割合を、操舵支援電流に乗算する」)する。ステップS416において、操舵支援電流に対する減少割合を操舵支援電流に乗算すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS418へ移行する。
ステップS418では、加算処理部32により、ステップS404で計算した制御指令値と、ステップS416で計算した実際の電流値とを加算して、ステアリングホイール16へ出力するトルクに応じたトルク電流値を演算する。さらに、レートリミッタ34により、加算処理部32が演算したトルク電流値に対してゲインを乗算してフィルタリングを行い、トルク電流値を、滑らかに変化する値に補正する。すなわち、ステップS418では、制御指令値と実際の電流値とを加算したトルク電流値に、レートリミッタ34によるゲインを乗算(ステップS418に示す「S404で得た電流値とS416で得た電流値を加算し、レートリミッタ値と乗算する」)する。ステップS418において、トルク電流値を補正すると、走行支援装置1が行う処理は、ステップS420へ移行する。すなわち、ステップS402からステップS418の処理は、上述したステップS106の処理と同様である。
ステップS420では、ステップS418において補正したトルク電流値を含む情報信号を、トルク付与手段14へ出力(ステップS420に示す「EPSモータへ指令信号を出力する」)する。これにより、トルク付与手段14において、モータ指令値計算部24から入力された指令信号に基づいて、電動モータに供給する電流を制御する。すなわち、ステップS420の処理は、上述したステップS108の処理と同様である。
ステップS420において、補正したトルク電流値を含む情報信号を、トルク付与手段14へ出力すると、走行支援装置1が行う処理は終了(図8中に示す「終了」)する。
以上により、図8中に示す処理では、ステップS406からステップS414における処理において、制御モードの変化があった場合に、レートリミッタ34において、トルク電流値を、滑らかに変化する値に補正する。これにより、トルク電流値の急激な変化を抑制して、ステアリングホイール16に急激な挙動が発生することを抑制する。
なお、上述したように、本実施形態の走行支援装置1の動作で実施する走行支援方法は、運転者の操舵トルクと逆方向のトルクである走行支援トルクを算出し、この算出した走行支援トルクをステアリングホイール16へ出力する。そして、走行支援トルクと操舵トルクとの偏差が、予め設定したトルク偏差閾値以上の場合に、走行支援トルクの出力を停止する方法である。ここで、走行支援トルクは、自車両Vの車幅方向両側のうち少なくとも一方における自車両Vの障害物(壁W)への近接度合いと、操舵トルクとに基づいて算出する。
以上により、左側障害物検出手段2及び右側障害物検出手段4は、近接度合検出手段に対応し、システム介入制御指令値計算部28は、走行支援トルク算出手段に対応している。また、モータ指令値計算部24及びトルク付与手段14は、走行支援トルク出力手段に対応し、制御開始/終了判定部20は、走行支援トルク停止手段に対応している。
(第一実施形態の効果)
(1)走行支援トルク停止手段が、走行支援トルク出力手段が出力した走行支援トルクと操舵トルク検出手段が検出した操舵トルクとの偏差が、予め設定したトルク偏差閾値以上の場合に、走行支援トルクの出力を停止する。
このため、自車両の狭路走行時において、障害物を回避するために走行支援トルクを出力する制御を、運転者が入力する操舵トルクを用いて推定した運転者の意図に基づいて停止させることが可能となる。
その結果、操舵角の変化よりも先行して検出可能な操舵トルクを用いて、運転者の意図を反映した制御を行うことが可能となり、狭路における走行時の操舵支援において運転者に与える違和感を低減させることが可能となる。
(2)走行支援トルク停止手段が、操舵トルク検出手段の検出した操舵トルクが、走行支援トルク出力手段が出力した走行支援トルク以上の場合に、走行支援トルクの出力を停止する。
その結果、運転者が冷静な精神状態を保っていると予測される状態や、運転者がパニックに陥っている、または、とっさにどうすべきか分からない状況等において、安全性を向上させることが可能となる。
(3)走行支援トルク停止手段が、運転者によるステアリングホールの操舵角速度が予め設定した許容角速度未満であり、且つ操舵トルク検出手段が検出した操舵トルクの変化率が予め設定した許容トルク変化率未満の場合に、走行支援トルクの出力を抑制した後に停止する。
その結果、運転者が冷静な精神状態を保っていると予測される状態において、ステアリングホイールの制御権を、運転者へ違和感なく受け渡すことが可能となる。
(4)走行支援トルク停止手段が、運転者によるステアリングホールの操舵角速度が予め設定した許容角速度以上及び操舵トルク検出手段が検出した操舵トルクの変化率が予め設定した許容トルク変化率以上のうち少なくとも一方が成立すると、走行支援トルクの出力を即座に停止する。
その結果、運転者がパニックに陥っている、または、とっさにどうすべきか分からない状況等において、自車両の挙動が、運転者の意図によらず走行支援トルクによって決まることを防止することが可能となる。
(5)走行支援トルク停止手段が、操舵トルク検出手段の検出した操舵トルクが、走行支援トルク出力手段が出力した走行支援トルク未満であり、且つ偏差が予め設定したオーバーライド判定トルク閾値以上である時間が予め設定したオーバーライド判定時間以上であると、走行支援トルクの出力を抑制した後に停止する。
その結果、運転者が走行支援トルクを出力する制御を停止させたい意図があると予測される状態において、ステアリングホイールの制御権を、運転者へ違和感なく受け渡すことが可能となる。
(6)本実施形態の走行支援方法では、走行支援トルクと操舵トルクとの偏差が、予め設定したトルク偏差閾値以上の場合に、走行支援トルクの出力を停止する。
このため、自車両の狭路走行時において、障害物を回避するために走行支援トルクを出力する制御を、運転者が入力する操舵トルクを用いて推定した運転者の意図に基づいて停止させることが可能となる。
その結果、操舵角の変化よりも先行して検出可能な操舵トルクを用いて、運転者の意図を反映した制御を行うことが可能となり、狭路における走行時の操舵支援において運転者に与える違和感を低減させることが可能となる。
(変形例)
(1)本実施形態の走行支援装置1では、自車両Vの前進走行時において、自車両Vの運転者が走行支援装置1を作動させるスイッチを操作することにより、走行支援装置1を動作させる構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、自車両Vの走行路に対して、左側障害物検出手段2及び右側障害物検出手段4により、自車両Vと障害物(壁Wや他車両)との距離を検出する。そして、この検出した距離が予め設定した所定の距離以下である場合に、走行支援装置1を自動的に動作させる構成としてもよい。
すなわち、走行支援装置1の構成を、狭路判定手段を備える構成としてもよい。この狭路判定手段は、自車両Vが走行する走行路の幅が、自車両Vの車幅に対して予め設定した幅以下であると判定すると、上述した走行支援トルク出力手段へ、走行支援トルクをステアリングホイールへ出力させる指令信号を出力するように形成する。
なお、上記の「予め設定した所定の距離(幅)」とは、例えば、自車両Vの車幅に応じて設定する。これ以外には、例えば、自車両Vの車幅方向両側に壁Wがある場合等は、左側の壁WLと右側の壁WRとの距離が4[m]以下であることを検出した場合に、走行支援装置1を自動的に動作させる構成としてもよい。
また、上記の狭路判定手段は、車速検出手段6が検出した自車両Vの車速が、予め設定した車速以下である場合のみ、自車両Vが走行する走行路の幅が、自車両Vの車幅に対して予め設定した幅以下であるか否かを判定する構成としてもよい。
この場合、上記の「予め設定した車速」は、左側障害物検出手段2及び右側障害物検出手段4の性能や、狭路における走行時の安全性確保を考慮して、例えば、30[km/h]と設定する。
(2)本実施形態の走行支援装置1では、左側障害物検出手段2及び右側障害物検出手段4により、近接度合検出手段を形成したが、これに限定するものではない。すなわち、左側障害物検出手段2及び右側障害物検出手段4に加え、自車両Vの車両前後方向前方に、自車両Vの車両前後方向前方へ向けて音波を送信し、送信されて障害物等に反射した音波を受信可能な前方障害物検出手段を配置してもよい。この場合、前方障害物検出手段は、単数でも複数でもよい。これにより、左側障害物検出手段2及び右側障害物検出手段4に加え、前方障害物検出手段により、近接度合検出手段を形成してもよい。
この場合、自車両Vの車幅方向両側(側方)に加え、自車両Vの前進方向に存在する障害物(停止車両等)と自車両Vとの距離を検出することが可能となるため、走行支援装置1が行う制御の精度を向上させることが可能となる。
(3)本実施形態の走行支援装置1では、近接度合検出手段を、左側障害物検出手段2及び右側障害物検出手段4により形成したが、これに限定するものではない。すなわち、左側障害物検出手段2または右側障害物検出手段4により、近接度合検出手段を形成してもよい。この場合、例えば、主に、車両が左側通行である場合が一般的である国(日本等)で用いる車両では、左側障害物検出手段2のみにより、近接度合検出手段を形成する。これにより、自車両Vの車幅方向両側のうち、少なくとも障害物が自車両Vに近いと予測される側において、自車両Vの障害物への近接度合いを検出することが可能となる。