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JP5691564B2 - 電動車両の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、回転数制御とトルク制御を行う電動モータを走行用駆動源に備える電動車両の制御装置に関する。
従来、回転数制御とトルク制御を行う電動モータを走行用駆動源に備え、走行状況や車両状況に応じて回転数制御とトルク制御を切り替える制御を行うハイブリッド車両の駆動制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この従来装置は、電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御の最終モータ出力トルクからトルク制御開始時の目標モータトルクに差が発生した場合、所定の変化率をつけてモータトルクを変化させる制御を行うようにしている。
特開平10−174209号公報
しかしながら、従来装置にあっては、モータ制御を切り替える際、モータトルクのトルク変化率を一定値により与えるようにしている。このため、トルク変化率を、駆動力のレスポンスを確保するように大きな値により与えると、コースト減速中のローギヤ段へのダウン変速後、モータ制御を切り替える際、パワートレイン系の捩れ振動ショックが悪化する。一方、トルク変化率を、捩れ振動ショックを防止する小さな値により与えると、アクセル踏み込み時のダウン変速後、モータ制御を切り替える際、駆動力のレスポンスが悪化する。したがって、トルク変化率を一定値により与える場合、大きく乖離した2つの値の中間的な値に設定されることになる。このため、捩れ振動ショックに対しても駆動力レスポンスに対しても妥協的な値となり、ドライブダウン変速時に駆動力レスポンスを確保できないし、コーストダウン変速時に捩れ振動ショックを低減できない、という問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、電動モータを回転数制御からトルク制御に切り替える際、アクセル操作と自動変速機の変速種により判別される走行シーンに対応し、走行シーン毎に異なる要求性能を達成することができる電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の電動車両の制御装置は、電動モータと、モータ制御切り替え手段と、自動変速機と、トルク変化率選択処理手段と、モータトルク変化処理手段と、を備える手段とした。
前記電動モータは、走行用駆動源に設けられる。
前記モータ制御切り替え手段は、前記電動モータの制御を、制御目標を目標モータ回転数とする回転数制御と、制御目標を目標モータトルクとするトルク制御と、の間で切り替える。
前記自動変速機は、前記電動モータと駆動輪の間に介装され、車両状態に応じて自動的に変速比を変更する。
前記トルク変化率選択処理手段は、前記電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える切り替え開始条件が成立すると、アクセル操作と前記自動変速機の変速種により判別される走行シーンが、駆動力レスポンスが要求される走行シーンであるほど大きな値のトルク変化率を選択し、捩れ振動ショック低減が要求される走行シーンであるほど小さな値のトルク変化率を選択する。
前記モータトルク変化処理手段は、前記電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御の最終モータ出力トルクとトルク制御開始時の目標モータトルクのモータトルク差分を、選択された前記トルク変化率で変化する目標モータトルクにより繋ぐ。
よって、電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える切り替え開始条件が成立すると、アクセル操作と自動変速機の変速種により判別される走行シーンが、駆動力レスポンスが要求される走行シーンであるほど大きな値のトルク変化率が選択され、捩れ振動ショック低減が要求される走行シーンであるほど小さな値のトルク変化率が選択される。そして、電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御の最終モータ出力トルクとトルク制御開始時の目標モータトルクのモータトルク差分が、選択されたトルク変化率で変化する目標モータトルクにより繋がれる。
すなわち、電動モータの下流位置に自動変速機が配置されるパワートレイン系では、アクセル操作と自動変速機の変速種を監視することにより、要求性能が異なる走行シーンが判別される。この走行シーンの判別に基づき、各走行シーンに適合するトルク変化率を選択することで、異なる要求性能が達成される。
例えば、判別される走行シーンが、駆動力レスポンス要求が高いにもかかわらず、大きなモータトルク差分になることがあるドライブダウン変速介入の走行シーンでは、かなり大きな値によるトルク変化率を選択することで、駆動力レスポンスが確保される。
例えば、判別される走行シーンが、捩れ振動ショック低減要求が高いにもかかわらず、捩れ振動によるショック感度が高いコーストダウン変速介入の走行シーンでは、かなり小さな値によるトルク変化率を選択することで、捩れ振動ショックが低減される。
この結果、電動モータを回転数制御からトルク制御に切り替える際、アクセル操作と自動変速機の変速種により判別される走行シーンに対応し、走行シーン毎に異なる要求性能を達成することができる。
実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両のパワートレインを示すパワートレイン構成図である。 実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す制御システム構成図である。 実施例1の統合コントローラを示す演算ブロック図である。 実施例1の制御装置で用いられる定常目標トルクマップ(a)とMGアシストトルクマップ(b)を示すマップ図である。 実施例1の制御装置で用いられるエンジン始動停止線マップを示すマップ図である。 実施例1の制御装置で用いられるバッテリSOCに対する走行中要求発電出力を示す特性図である。 実施例1の制御装置で用いられるエンジンの最良燃費線を示す特性図である。 実施例1の自動変速機における変速線の一例を示す変速マップ図である。 実施例1の制御装置においてモータ制御が回転数制御からトルク制御に切り替えられるときのモータトルク変化処理の概要を示すタイムチャートである。 実施例1の統合コントローラの変速制御部にて実行される変速制御処理の構成と流れを示すフローチャートである。 実施例1のモータコントローラにてメインルーチンとして実行される回転数制御とトルク制御の切り替え処理およびモータトルク変化処理の構成と流れを示すフローチャートである。 実施例1のモータコントローラにてモータジェネレータを回転数制御からトルク制御に切り替える際にサブルーチンとして実行されるトルク変化率選択処理および変速段対応トルク変化率選択処理の構成と流れを示すフローチャートである。 図12にて判定される各走行シーンに応じて選択されるトルク変化率の設定例を示すトルク変化率特性図である。 実施例1の制御装置に有する自動変速機が3→2ドライブダウン変速介入の走行シーンでモータジェネレータが回転数制御からトルク制御に切り替えられるときのアクセル開度(APO)・回転数制御フラグ・ギヤ段・回転・トルク・加速度の各特性を示すタイムチャートである。 実施例1の制御装置に有する自動変速機が3→2コーストダウン変速介入の走行シーンでモータジェネレータが回転数制御からトルク制御に切り替えられるときのアクセル開度(APO)・回転数制御フラグ・ギヤ段・回転・トルク・加速度の各特性を示すタイムチャートである。 実施例1の制御装置に有する自動変速機による変速が介入しないギヤ比固定の走行シーンでモータジェネレータが回転数制御からトルク制御に切り替えられるときのアクセル開度(APO)・回転数制御フラグ・ギヤ段・回転・トルク・加速度の各特性を示すタイムチャートである。
以下、本発明の電動車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両(電動車両の一例)のパワートレインを示すパワートレイン構成図である。以下、図1に基づき、パワートレイン構成を説明する。
実施例1のハイブリッド車両のパワートレイン系には、図1に示すように、エンジン1と、モータジェネレータ2(電動モータ;以下、「MG」と記載する。)と、自動変速機3(以下、「AT」と記載する。)と、第1クラッチ4(以下、「CL1」と記載する。)と、第2クラッチ5(以下、「CL2」と記載する。)と、ディファレンシャルギア6と、タイヤ7,7(駆動輪)と、を備えている。つまり、エンジン1と1モータ・2クラッチをパワートレイン系に備えた構成としている。
前記エンジン1は、エンジン出力軸とモータジェネレータ2のモータ入力軸とが、トルク容量可変の第1クラッチ4を介して連結される。前記モータジェネレータ2は、モータ出力軸と自動変速機3の変速機入力軸とが、直接連結される。前記自動変速機3は、変速機出力軸にディファレンシャルギア6を介して駆動輪であるタイヤ7,7が連結される。
前記第2クラッチ5は、自動変速機3のシフト状態に応じて異なる変速機内の動力伝達を担っているトルク容量可変のクラッチ・ブレーキによる複数の摩擦締結要素のうち、1つの摩擦締結要素を選択して用いている。これにより自動変速機3は、第1クラッチ4を介して入力されるエンジン1の動力と、モータジェネレータ2から入力される動力と、を合成してタイヤ7,7へ出力する。
前記第1クラッチ4としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる乾式単板クラッチや乾式多板クラッチ等を用いればよい。前記第2クラッチ5としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキ等を用いればよい。このパワートレイン系には、第1クラッチ4の接続状態に応じて2つの運転モードがあり、第1クラッチ4を切断したCL1開放状態では、モータジェネレータ2の動力のみで走行するEVモード(電気自動車走行モード)である。一方、第1クラッチ4を接続したCL1締結状態では、エンジン1とモータジェネレータ2の動力で走行するHEVモード(ハイブリッド車走行モード)である。
前記パワートレインには、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転センサ10と、モータジェネレータ2の回転数を検出するMG回転センサ11と、自動変速機3の入力軸回転数を検出するAT入力回転センサ12と、自動変速機3の出力軸回転数を検出するAT出力回転センサ13と、が設けられる。
図2は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両の制御システムを示す制御システム構成図である。以下、図2に基づいて、制御システム構成を説明する。
実施例1の制御システムは、図2に示すように、統合コントローラ20と、エンジンコントローラ21と、モータコントローラ22と、インバータ8と、バッテリ9と、ソレノイドバルブ14と、ソレノイドバルブ15と、アクセル開度センサ17と、ブレーキ油圧センサ23と、SOCセンサ16と、を備えている。
前記統合コントローラ20は、パワートレイン系の動作点を統合制御する。この統合コントローラ20では、アクセル開度APOと、バッテリ充電状態SOCと、車速VSP(自動変速機出力軸回転数に比例)と、に応じて、運転者が望む駆動力を実現できる運転モードを選択する。そして、選択した運転モードに応じ、モータコントローラ22に対し目標MGトルクもしくは目標MG回転数を指令し、エンジンコントローラ21に対し目標エンジントルクを指令し、ソレノイドバルブ14,15に対し駆動信号を指令する。
前記エンジンコントローラ21は、エンジン1を制御する。前記モータコントローラ22は、モータジェネレータ2を制御する。前記インバータ8は、モータジェネレータ2を駆動する。前記バッテリ9は、電気エネルギーを蓄える。前記ソレノイドバルブ14は、第1クラッチ4の油圧を制御する。前記ソレノイドバルブ15は、第2クラッチ5の油圧を制御する。前記アクセル開度センサ17は、アクセル開度(APO)を検出する。前記ブレーキ油圧センサ23は、ブレーキ油圧(BPS)を検出する。前記SOCセンサ16は、バッテリ9の充電容量状態を検出する。
図3は、実施例1の統合コントローラ20を示す演算ブロック図である。以下、図3に基づいて、統合コントローラ20の構成を説明する。
前記統合コントローラ20は、図3に示すように、目標駆動トルク演算部100と、モード選択部200と、目標発電出力演算部300と、動作点指令部400と、変速制御部500と、を備えている。
前記目標駆動トルク演算部100は、図4(a)に示す目標定常駆動トルクマップと、図4(b)に示すMGアシストトルクマップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPから、目標定常駆動トルクとMGアシストトルクを算出する。
前記モード選択部200は、車速VSPおよびアクセル開度APOと、図5に示すエンジン始動停止線マップと、を用いて、運転モード(HEVモード、EVモード)を演算する。エンジン始動線とエンジン停止線は、エンジン始動線(SOC高、SOC低)とエンジン停止線(SOC高、SOC低)の特性に代表されるように、バッテリSOCが低くなるにつれて、アクセル開度APOが小さくなる方向に低下する特性として設定されている。なお、エンジン始動は、EVモード状態で図5に示すエンジン始動線をアクセル開度APOと車速VSPによる運転点が超えた時点で、スリップ締結状態が実現可能なように第2クラッチ5の締結トルク容量をドライバー要求駆動トルク相当に制御する。そして、第2クラッチ5がスリップ開始したとの判断後に第1クラッチ4の締結を開始してエンジン回転を上昇させる。エンジン回転が初爆可能な回転数に達成したらエンジン1を燃焼作動させ、モータ回転数とエンジン回転数が近くなった時点で第1クラッチ4を完全に締結する。その後、第2クラッチ5をロックアップさせてHEVモードに遷移させる処理により行われる。
前記目標発電出力演算部300は、図6に示す走行中発電要求出力マップを用いて、バッテリSOCから目標発電出力を演算する。また、現在の動作点から図7で示す最良燃費線までエンジントルクを上げるために必要な出力を演算し、前記目標発電出力と比較して少ない出力を要求出力として、エンジン出力に加算する。
前記動作点指令部400では、アクセル開度APOと目標定常トルク,MGアシストトルクと目標モードと車速VSPと要求発電出力とを入力する。そして、これらの入力情報を動作点到達目標として、過渡的な目標エンジントルクと目標MGトルクと目標CL2トルク容量と目標変速比とCL1ソレノイド電流指令を演算する。
前記変速制御部500は、目標CL2トルク容量と目標変速比とから、これらを達成するように自動変速機3内のソレノイドバルブを駆動制御する。図8に変速制御で用いられる変速線マップの一例を示す。変速制御は、車速VSPとアクセル開度APOによる運転点と変速線マップに基づいて、現在のギヤ段から次ギヤ段をどのギヤ段にするかを判定する。そして、運転点が変速線マップのアップ変速線(図8の実線)またはダウン変速線(図8の点線)を横切るとアップ変速要求またはダウン変速要求を出し、変速要求に対応する自動変速機3の摩擦締結要素を締結/開放制御して変速させる。なお、実施例1では、変速時に自動変速機3の入力側に有するモータジェネレータ2による回転数制御を加えることで、油圧制御だけによる変速制御の場合に比べ、イナーシャフェーズ領域でのギヤ比変化を滑らかにする変速制御を行うようにしている。
図9は、実施例1の制御装置においてモータ制御が回転数制御からトルク制御に切り替えられるときのモータトルク変化処理の概要を示す。以下、図9に基づいてモータトルク変化処理の概要を説明する。
モータジェネレータ2の制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、アクセル操作と自動変速機3の状態監視により判別される走行シーンに適合するトルク変化率が選択される。
ここで、自動変速機3の状態監視により判別される走行シーンとは、自動変速機3での変速種(ドライブ/コーストによるダウン変速やアップ変速、等)や変速段の種類(1速段、2速段、3速段、等)を監視することにより判別される走行シーンをいう。
そして、回転数制御の最終モータ出力トルクとトルク制御開始時の目標モータトルク(最終)のモータトルク差分が、図9の枠内に示すように、選択されたトルク変化率で変化する目標モータトルクにより繋がれる。
例えば、判別される走行シーンが、駆動力レスポンス要求が高いにもかかわらず、大きなモータトルク差分になることがあるドライブダウン変速介入の走行シーンのときは、かなり大きな値によるトルク変化率Aが選択される。
例えば、判別される走行シーンが、捩れ振動ショック低減要求が高いにもかかわらず、捩れ振動によるショック感度が高いコーストダウン変速介入の走行シーンのときは、かなり小さな値によるトルク変化率Bが選択される。
例えば、判別された走行シーンが、ドライブダウン変速やコーストダウン変速以外の走行シーンのときは、中間的な値によるトルク変化率Cが選択される。
図10は、実施例1の統合コントローラ20の変速制御部500にて実行される変速制御処理の構成と流れを示す。以下、図10の各ステップについて説明する。
ステップS1では、現ギヤ段と次ギヤ段が異なっていて、現ギヤ段から次ギヤ段への変速開始、もしくは、変速中であるか否かを判断する。YES(変速開始、もしくは、変速中)の場合はステップS2へ進み、NO(ギヤ段固定)の場合はステップS8へ進む。
ステップS2では、ステップS1での変速開始、もしくは、変速中であるとの判断に続き、変速時開放クラッチに開放指令を出力し、ステップS3へ進む。
ここで、変速に際しては、そのときの変速に関与する2つのクラッチのうち、一方のクラッチを開放し、他方のクラッチを締結するクラッチ掛け替えにより行われる。このクラッチ掛け替え時の開放側クラッチを「変速時開放クラッチ」といい、締結側クラッチを「変速時締結クラッチ」という。
ステップS3では、ステップS2での変速時開放クラッチへの開放指令出力に続き、スリップ判定成立(自動変速機3の入力回転数と出力回転数の差が、確実にクラッチスリップしていると判定できる回転差閾値になった場合)であるか否かを判断する。YES(スリップ判定成立)の場合はステップS4へ進み、NO(スリップ判定不成立)の場合はリターンへ進む。
ここで、変速制御は、変速開始フェーズ→トルクフェーズ→イナーシャフェーズ→変速終了フェーズを経過して行われるが、イナーシャフェーズが開始されると自動変速機3の入力回転数と出力回転数に差が生じる。よって、このスリップ判定は、言い換えると、イナーシャフェーズ領域に入ったイナーシャフェーズ開始判定ということができる。
ステップS4では、ステップS3でのスリップ判定成立であるとの判断に続き、回転数制御フラグを、回転数制御フラグ=0(トルク制御)から回転数制御フラグ=1(回転数制御)に書き換え、ステップS5へ進む。
ステップS5では、ステップS4での回転数制御フラグ=1への書き換えに続き、変速時締結クラッチに締結指令を出力し、ステップS6へ進む。
ステップS6では、ステップS5での変速時締結クラッチへの締結指令出力に続き、回転数制御フラグ=0(図11のステップS25)、かつ、変速処理終了であるか否かを判断する。YES(変速終了条件成立)の場合はステップS7へ進み、NO(変速終了条件不成立)の場合はリターンへ進む。
ここで、変速処理終了は、例えば、変速時開放クラッチが完全開放で、変速時締結クラッチの油圧が所定値以上となった時をいう。
ステップS7では、ステップS6での変速終了条件成立であるとの判断に続き、変速を終了し、リターンへ進む。
ステップS8では、ステップS1でのギヤ段固定であるとの判断に続き、第2クラッチ5のスリップ要求が有りか否かを判断する。YES(CL2スリップ要求有り)の場合はステップS9へ進み、NO(CL2スリップ要求無し)の場合はリターンへ進む。
ここで、ギヤ段固定での走行中、例えば、エンジン始動要求やエンジン停止要求等があるとき、エンジン始動ショックやエンジン停止ショックの発生を未然に防止するため、第2クラッチ5のスリップ締結が要求される。
ステップS9では、ステップS8でのCL2スリップ要求有りとの判断に続き、回転数制御フラグを、回転数制御フラグ=0(トルク制御)から回転数制御フラグ=1(回転数制御)に書き換え、リターンへ進む。
すなわち、CL2スリップ要求に対し、クラッチ出力回転数を上回る回転数を目標クラッチ入力回転数とするモータジェネレータ2の回転数制御を実行することで、第2クラッチ5のスリップ締結状態を確保する。
図11は、実施例1のモータコントローラ22にてメインルーチンとして実行される回転数制御とトルク制御の切り替え処理およびモータトルク変化処理の構成と流れを示す(モータ制御切り替え手段、モータトルク変化処理手段)。以下、図11の各ステップについて説明する。
ステップS20では、回転数制御フラグ=1であるか否かを判断する。YES(回転数制御フラグ=1)の場合はステップS21へ進み、NO(回転数制御フラグ=0)の場合はステップS26へ進む。
つまり、変速制御処理を示す図10のステップS4またはステップS9にて回転数制御フラグ=1に書き換えられるとYESと判断され、後述するステップS25にて回転数制御フラグ=0に書き換えられるとNOと判断される。
ステップS21では、ステップS20での回転数制御フラグ=1であるとの判断に続き、現ギヤ段と次ギヤ段で決まる変速モード、あるいは、固定ギヤ段に応じ、エンジン1にて実現する目標エンジントルクを算出し、ステップS22へ進む。
ステップS22では、ステップS21での目標エンジントルクの算出に続き、現ギヤ段と次ギヤ段で決まる変速モード、あるいは、固定ギヤ段に応じ、モータジェネレータ2にて実現する目標MG回転数を算出し、ステップS23へ進む。
ここで、回転数制御の目標値である目標MG回転数は、アップ変速の場合、現ギヤ段での変速機入力回転数から徐々に次ギヤ段での変速機入力回転数まで低下するように算出される。一方、ダウン変速の場合、現ギヤ段での変速機入力回転数から徐々に次ギヤ段での変速機入力回転数まで上昇するように算出される。また、エンジン始動要求やエンジン停止要求の場合、第2クラッチ5のスリップ締結状態を確保する回転数とされる。
ステップS23では、ステップS22での目標MG回転数算出に続き、目標MG回転数に追従するようにモータトルクを算出し、ステップS24へ進む。
ステップS24では、ステップS23でのモータトルクの算出に続き、回転数制御終了条件が成立しているか否かを判断する。YES(回転数制御終了条件成立)の場合はステップS25へ進み、NO(回転数制御終了条件不成立)の場合はリターンへ進む。
ここで、回転数制御終了条件成立とは、変速の場合、変速後の次ギヤ段でのギヤ比により決まる変速機入力回転数と変速機出力回転数の差が、ロックアップしていると判定できる回転差になったときをいう。言い換えると、変速機入力回転数が、変速後の次ギヤ段による変速機入力回転数に収束し、イナーシャフェーズ領域から抜け出したイナーシャフェーズ終了を判定していることになる。また、エンジン始動要求やエンジン停止要求の場合、CL2スリップが要求される領域から抜け出したとき、あるいは、設定時間を経過したときをいう。
ステップS25では、ステップS24での回転数制御終了条件成立であるとの判断に続き、回転数制御フラグを、回転数制御フラグ=1(回転数制御)から回転数制御フラグ=0(トルク制御)に書き換え、リターンへ進む。
ステップS26では、ステップS20での回転数制御フラグ=0であるとの判断に続き、トルク制御を行う場合の目標値である目標エンジントルクと目標モータトルクを算出し、ステップS27へ進む。
ステップS27では、ステップS26での目標エンジントルク・目標モータトルクの算出に続き、回転数制御フラグの前回値が回転数制御フラグ=1で、かつ、今回値が回転数制御フラグ=0であるか否か、つまり、回転数制御からトルク制御への切り替え開始条件が成立しているか否かを判断する。YES(切り替え開始条件成立)の場合はステップS28へ進み、NO(切り替え開始条件不成立)の場合はステップS29へ進む。
ステップS28では、ステップS27での切り替え開始条件成立であるとの判断に続き、図12のサブルーチンによるフローチャートにしたがって、トルク変化率選択処理および変速段対応トルク変化率選択処理を実行し、ステップS30へ進む。
ステップS29では、ステップS27での切り替え開始条件不成立であるとの判断に続き、回転数制御からトルク制御への切り替え時点での最終モータ出力トルクから、モータトルク変化処理により上昇してきたモータ出力トルク(実モータトルク)が、ステップS26で算出された目標モータトルク(最終)に到達したか否かを判断する。YES(目標モータトルクに到達)の場合はリターンへ進み、NO(目標モータトルクに未達)の場合はステップS30へ進む。
ステップS30では、ステップS28でのトルク変化率選択処理、あるいは、ステップS29での目標モータトルクに未達であるとの判断に続き、回転数制御からトルク制御へ切り替える際、トルク制御での目標モータトルクと回転数制御終了時の最終モータ出力トルクの差分を、ステップS28にて選択したトルク変化率により繋ぐモータトルク変化処理を行い、リターンへ進む。
図12は、実施例1のモータコントローラ22にてモータジェネレータ2を回転数制御からトルク制御に切り替える際にサブルーチンとして実行されるトルク変化率選択処理および変速段対応トルク変化率選択処理の構成と流れを示す(モータトルク変化処理手段、変速段対応モータトルク変化処理手段)。以下、図12の各ステップについて説明する。
ステップS281では、アクセル踏み込みによるドライブダウン変速であるか否かを判断する。YES(ドライブダウン変速)の場合はステップS282へ進み、NO(ドライブダウン変速以外)の場合はステップS283へ進む。
ステップS282では、ステップS281でのドライブダウン変速であるとの判断に続き、ドライブダウン変速時のトルク変化率を選択し、エンドへ進む。
ここで、ドライブダウン変速時のトルク変化率は、図13に示すように、要求される駆動力レスポンスに適合させ、時間に対するトルクの変化勾配が最も高い大きな値に設定される。
ステップS283では、ステップS281でのドライブダウン変速以外であるとの判断に続き、アクセル足離しによるコーストダウン変速であるか否かを判断する。YES(コーストダウン変速)の場合はステップS284へ進み、NO(コーストダウン変速以外)の場合はステップS285へ進む。
ステップS284では、ステップS283でのコーストダウン変速であるとの判断に続き、コーストダウン変速時のトルク変化率を選択し、エンドへ進む。
ここで、コーストダウン変速時のトルク変化率は、図13に示すように、要求される捩れ振動ショック低減に適合させ、時間に対するトルクの変化勾配が最も低い小さな値に設定される。なお、コーストダウン変速時のトルク変化率は、所定時間までは小さな値を維持するが、所定時間を超えるとそれまでより大きな値とし、捩れ振動ショック低減要求に応えつつ、レスポンスを確保するように、折れ線特性により設定される。
ステップS285では、ステップS283でのコーストダウン変速以外であるとの判断に続き、変速段毎に設定したトルク変化率のうち、回転数制御からトルク制御への切り替え開始時に選択されている変速段のトルク変化率を選択し、エンドへ進む。
ここで、複数の変速段のうち1つの変速段が選択されているときのトルク変化率は、図13に示すように、変速段毎の設定であって、通常変速時のトルク変化率に基づき、ドライブダウン変速時のトルク変化率とコーストダウン変速時のトルク変化率との間の値に設定される。そして、変速段が減速側(1速側)であるほど大きな値に設定され、変速段が等速(5速)あるいは増速側(7速側)であるほど小さな値に設定される。
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の課題」の説明を行う。続いて、実施例1のハイブリッド車両の制御装置における作用を、「モータ制御切り替え作用」、「ドライブダウン変速介入時のモータトルク変化処理作用」、「コーストダウン変速介入時のモータトルク変化処理作用」、「変速が介入しない時のモータトルク変化処理作用」に分けて説明する。
[比較例の課題]
例えば、モータ制御を切り替える際にトルク変化率を、アクセル踏み込みのドライブダウン変速後に生じる大きなモータトルク差分に対し、駆動力レスポンスを確保する一つの大きな値により与える。この場合、ドライブダウン変速に適合する変化率ではあるが、コーストダウン変速には変化率が大き過ぎてしまい、モータトルク差分を繋ぐトルク変化勾配が急になる。このため、コースト減速中のローギヤ段へのダウン変速後の回転数制御からトルク制御に切り替わる際、プロペラシャフト等のパワートレイン系の捩れ振動ショックが発生しやすい。
一方、モータ制御を切り替える際にトルク変化率を、コースト減速中のダウン変速後に生じるモータトルク差分に対し、捩れ振動ショックの発生を抑える一つの小さな値により与える。この場合、コーストダウン変速に適合する変化率ではあるが、ドライブダウン変速には変化率が小さ過ぎてしまい、モータトルク差分を繋ぐトルク変化勾配が緩やかになる。このため、アクセル踏み込みによるドライブダウン変速後に生じる大きなモータトルク差分に対し、駆動力レスポンスを確保することができない。
したがって、モータ制御を切り替える際、トルク変化率として、一つの値を与えるときは、駆動力レスポンスを確保する大きな値と、捩れ振動ショックを低減する小さな値の中間的な値となる。この中間的な値をトルク変化率として与えるものを比較例とする。
この比較例の場合、回転数制御からトルク制御に切り替える際、変化率が一つの中間値により与えられるため、ドライブダウン変速の時、大きなモータトルク差分の発生に対しドライバーが要求する駆動力レスポンスを確保するまでには至らない。一方、コーストダウン変速の時、ショック感度が高いコースト状態でパワートレイン系の捩れ振動ショックを低減するまでには至らない。
このように、比較例の場合、一つの中間的なトルク変化率によりモータトルク差分を繋ぐもので、トルク変化率の設定が、ドライブダウン変速時における大きなモータトルク差分の発生やコーストダウン変速時における高いショック感度を考慮していない妥協的な値の設定になる。このため、駆動力レスポンスの確保と捩れ振動ショックの低減という2つの要求性能を同時に満足するには至らなく、逆に、駆動力レスポンスの遅れと捩れ振動ショックの発生という2つの課題を同時に露呈させてしまう結果になる。
[モータ制御切り替え作用]
上記のように、本技術は、モータ制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、モータトルク差分を、如何に繋ぐかに係るものである。以下、前提となるモータ制御切り替え作用を説明する。
まず、変速の介入があるとき、イナーシャフェーズが開始されてなくスリップ判定不成立である間は、図10のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、変速動作としては、ステップS2において、変速時開放クラッチに対し開放指令が出力されるだけである。
そして、イナーシャフェーズが開始されることでスリップ判定が成立すると、図10のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、イナーシャフェーズの開始が判定されると、ステップS4において、回転数制御フラグが0から1に書き換えられ、トルク制御から回転数制御へと切り替えられる。
さらに、ステップS2とステップS5において、変速時開放クラッチと変速時締結クラッチに対し指令を出力することにより変速の進行が図られる。
そして、変速終了条件が成立すると、図10のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→リターンへと進み、ステップS7にて変速を終了する。
変速の介入がないとき、CL2スリップ要求がない間は、図10のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS8→リターンへと進む流れが繰り返される。しかし、エンジン始動要求等によりCL2スリップ要求があると、図10のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS8→ステップS9→リターンへと進み、ステップS9において、回転数制御フラグが0から1に書き換えられ、トルク制御から回転数制御へと切り替えられる。
そして、図10の変速制御処理のステップS4またはステップS9において、回転数制御フラグが0から1に書き換えられると、図11のフローチャートにおいて、ステップS20→ステップS21→ステップS22→ステップS23→ステップS24→リターンへと進む流れが繰り返される。すなわち、ステップS24にて回転数制御終了条件が成立するまで、目標値を目標MG回転数とする回転数制御が継続されることになる。
そして、変速介入の有無にかかわらず、ステップS24にて回転数制御終了条件が成立すると、図11のフローチャートにおいて、ステップS24からステップS25→リターンへと進む。つまり、イナーシャフェーズの終了が判定されると、ステップS25において、回転数制御フラグが1から0に書き換えられる。次の制御周期からは、図11のフローチャートにおいて、ステップS20からステップS26以降へ進み、回転数制御からモータトルク変化処理を挟んでトルク制御へと切り替えられる。
上記のように、変速介入の有無にかかわらず、回転数制御からトルク制御に切り替えることが行われる。この際、自動変速機3の状態監視により判別される走行シーンに適合するトルク変化率が選択される。そして、トルク制御での目標モータトルクと回転数制御終了時のモータトルク差分が発生していると、このモータトルク差分を選択したトルク変化率により繋ぐモータトルク変化処理が行われる。
[ドライブダウン変速介入時のモータトルク変化処理作用]
上記比較例の課題を解決するには、ドライブダウン変速介入時に駆動力レスポンスを確保することが必要である。以下、これを反映するドライブダウン変速介入時のモータトルク変化処理作用を説明する。
モータジェネレータ2の制御が、回転数制御からトルク制御へと切り替えられると、最初の制御周期は、図11のフローチャートにおいて、ステップS20→ステップS26→ステップS27→ステップS28へ進み、ステップS28において、トルク変化率選択処理が行われる。このとき、変速の種類がアクセル踏み込みによるドライブダウン変速のときは、図12のフローチャートにおいて、ステップS281→ステップS282→エンドへと進み、ステップS282では、ドライブダウン変速時のトルク変化率が選択される。
そして、図11のステップS28からステップS30→リターンへと進み、次の制御周期からは、ステップS20→ステップS26→ステップS27→ステップS29→ステップS30→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、ステップS30にて、トルク制御での目標モータトルクと回転数制御終了時の最終モータ出力トルクの差分を、ステップS28にて選択したドライブダウン変速時のトルク変化率により繋ぐモータトルク変化処理が行われる。
したがって、大きなモータトルク差分になることがあるドライブダウン変速時には、駆動力レスポンス要求に応え、大きなモータトルク差分が急勾配のトルク変化率により繋がれることで、回転数制御からトルク制御への駆動力レスポンスが確保される。
以下、3→2ドライブダウン変速介入時にモータジェネレータ2が回転数制御からトルク制御に切り替えられるときの各特性をあらわす図14のタイムチャートを用い、ドライブダウン変速介入時のモータトルク変化処理作用を説明する。
図14において、時刻t1はアクセル踏み込み開始時を示す。時刻t2はアクセル踏み込み終了時を示す。時刻t3は3速から2速へのダウン変速要求時を示す。時刻t4はトルク制御から回転数制御への切り替え時を示す。時刻t5は回転数制御からトルク制御への切り替え時を示す。時刻t6は実施例1でのモータトルク変化処理の終了時を示す。時刻t7は比較例でのモータトルク変化処理の終了時を示す。
3→2ドライブダウン変速介入時には、回転数制御からトルク制御への切り替える際、負のモータトルクから正の目標トルクまでの大きなモータトルク差分になる。このとき、比較例のように、中間値による変化率によりモータトルク変化処理を行うと、切り替え時刻t5から目標モータトルクに到達する時刻t7までは、図14の細実線のモータトルク特性に示すように、緩勾配のトルク変化率により繋がれる。つまり、図14の点線による加速度特性に示すように、モータトルクの傾きが緩やかで、切り替え時間ラグが大となり、要求される駆動力レスポンスに応えることができない。
これに対し、実施例1のように、ドライブダウン変速に適合するトルク変化率によりモータトルク変化処理を行うと、切り替え時刻t5から目標モータトルクに到達する時刻t6までは、図14の太実線のモータトルク特性に示すように、急勾配のトルク変化率により繋がれる。つまり、図14の実線による加速度特性に示すように、モータトルクの傾きが急になり、切り替え時間ラグが小となり、要求される駆動力レスポンスに応えることができる。
上記のように、実施例1では、判別される走行シーンが、アクセル踏み込みによるドライブダウン変速介入による走行シーンであるとき、選択するトルク変化率を、要求される駆動力レスポンスに適合する大きな値に設定する構成を採用した。
この構成により、モータジェネレータ2の制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御とトルク制御の大きなモータトルク差分が、選択したドライブダウン変速時のトルク変化率による急勾配のトルクにて繋がれる。
したがって、ドライブダウン変速介入時にモータジェネレータ2を回転数制御からトルク制御に切り替える際、大きなモータトルク差分の発生にかかわらず、要求される駆動力レスポンスが確保される。
[コーストダウン変速時のモータトルク変化処理作用]
上記比較例の課題を解決するには、コーストダウン変速介入時に捩れ振動ショックを低減することが必要である。以下、これを反映するコーストダウン変速介入時のモータトルク変化処理作用を説明する。
モータジェネレータ2の制御が、回転数制御からトルク制御へと切り替えられると、最初の制御周期は、図11のフローチャートにおいて、ステップS20→ステップS26→ステップS27→ステップS28へ進み、ステップS28において、トルク変化率選択処理が行われる。このとき、変速の種類がアクセル足離しによるコーストダウン変速のときは、図12のフローチャートにおいて、ステップS281→ステップS283→ステップS284→エンドへと進み、ステップS284では、コーストダウン変速時のトルク変化率が選択される。
そして、図11のステップS28からステップS30→リターンへと進み、次の制御周期からは、ステップS20→ステップS26→ステップS27→ステップS29→ステップS30→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、ステップS30にて、トルク制御での目標モータトルクと回転数制御終了時の最終モータ出力トルクの差分を、ステップS28にて選択したコーストダウン変速時のトルク変化率により繋ぐモータトルク変化処理が行われる。
したがって、ショック感度が高いコーストダウン変速時には、捩れ振動ショック低減要求に応え、モータトルク差分が緩勾配のトルク変化率により繋がれることで、回転数制御からトルク制御への切り替え時に捩れ振動ショックが低減される。
以下、3→2コーストダウン変速介入時にモータジェネレータ2が回転数制御からトルク制御に切り替えられるときの各特性をあらわす図15のタイムチャートを用い、コーストダウン変速介入時のモータトルク変化処理作用を説明する。
図15において、時刻t1はアクセル足離し開始時を示す。時刻t2はアクセル足離し終了時を示す。時刻t3は3速から2速へのダウン変速要求時を示す。時刻t4はトルク制御から回転数制御への切り替え時を示す。時刻t5は回転数制御からトルク制御への切り替え時を示す。時刻t6は比較例でのモータトルク変化処理の終了時を示す。時刻t7は実施例1でのモータトルク変化処理の終了時を示す。
3→2ドライブダウン変速介入時には、回転数制御からトルク制御への切り替える際、負のモータトルクから負の目標トルクまでの小さなモータトルク差分になる。このとき、比較例のように、中間値による変化率によりモータトルク変化処理を行うと、切り替え時刻t5から目標モータトルクに到達する時刻t6までは、図15の細実線のモータトルク特性に示すように、急勾配のトルク変化率により繋がれる。つまり、図15の点線による加速度特性に示すように、モータトルクの傾きがきつく、加速度変動が大となり、要求される捩れ振動ショックの低減に応えることができない。
これに対し、実施例1のように、コーストダウン変速に適合するトルク変化率によりモータトルク変化処理を行うと、切り替え時刻t5から目標モータトルクに到達する時刻t7までは、図15の太実線のモータトルク特性に示すように、かなり緩勾配のトルク変化率により繋がれる。つまり、図15の実線による加速度特性に示すように、モータトルクの傾きが緩やかになり、加速度変動が小となり、捩れ振動ショックの低減要求に応えることができる。
上記のように、実施例1では、判別される走行シーンが、アクセル足離しによるコーストダウン変速介入による走行シーンであるとき、選択するトルク変化率を、要求される捩れ振動ショックに適合する大きな値に設定する構成を採用した。
この構成により、モータジェネレータ2の制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御とトルク制御のモータトルク差分が、選択したコーストダウン変速時のトルク変化率による緩勾配のトルクにて繋がれる。
したがって、コーストダウン変速介入時にモータジェネレータ2を回転数制御からトルク制御に切り替える際、ショック感度が高いコースト減速中であるにもかかわらず、要求される捩れ振動ショックの低減が達成される。
[変速が介入しない時のモータトルク変化処理作用]
変速が介入しない時には、ある変速段に固定されているが、各変速段でギヤ比(トルク分担比)が異なるため、トルク変化率を一定値により与えると、駆動力レスポンスや捩れ振動ショックが悪化することがあり、これらをうまく回避する必要がある。以下、これを反映する変速が介入しない時のモータトルク変化処理作用を説明する。
モータジェネレータ2の制御が、回転数制御からトルク制御へと切り替えられると、最初の制御周期は、図11のフローチャートにおいて、ステップS20→ステップS26→ステップS27→ステップS28へ進み、ステップS28において、トルク変化率選択処理が行われる。このとき、変速の種類がドライブダウン変速でもコーストダウン変速でもないときは、図12のフローチャートにおいて、ステップS281→ステップS283→ステップS285→エンドへと進み、ステップS285では、変速段毎に設定したトルク変化率の中から、そのときの変速段のトルク変化率が選択される。
そして、図11のステップS28からステップS30→リターンへと進み、次の制御周期からは、ステップS20→ステップS26→ステップS27→ステップS29→ステップS30→リターンへと進む流れが繰り返される。つまり、ステップS30にて、トルク制御での目標モータトルクと回転数制御終了時の最終モータ出力トルクの差分を、ステップS28にて選択した変速段対応のトルク変化率により繋ぐモータトルク変化処理が行われる。
したがって、駆動力レスポンス要求が高いアンダードライブ側の変速段が選択されている時には、要求に適合する急勾配側のトルク変化率により繋がれることで、モータ制御の切り替え時に駆動力レスポンスが確保される。一方、ショック感度が高いオーバードライブ側の変速段が選択されている時には、要求に適合する緩勾配側のトルク変化率により繋がれることで、モータ制御の切り替え時に捩れ振動ショックが低減される。
以下、3速固定で変速が介入しない時にモータジェネレータ2が回転数制御からトルク制御に切り替えられるときの各特性をあらわす図16のタイムチャートを用い、変速が介入しない時のモータトルク変化処理作用を説明する。
図16において、時刻t1は加速度の低下開始時を示す。時刻t2は加速度が減速側に移行した時を示す。時刻t3は目標回転数の上昇開始時を示す。時刻t4はトルク制御から回転数制御への切り替え時を示す。時刻t5は回転数制御からトルク制御への切り替え時を示す。時刻t6は比較例でのモータトルク変化処理の終了時を示す。時刻t7は実施例1でのモータトルク変化処理の終了時を示す。
3速固定で変速が介入しない減速中においては、回転数制御からトルク制御への切り替える際、負のモータトルクから負の目標トルクまでの小さなモータトルク差分になる。このとき、比較例のように、中間値による変化率によりモータトルク変化処理を行うと、切り替え時刻t5から目標モータトルクに到達する時刻t6までは、図16の細実線のモータトルク特性に示すように、急勾配のトルク変化率により繋がれる。つまり、図16の点線による加速度特性に示すように、モータトルクの傾きがきつく、加速度変動が大となり、要求される捩れ振動ショックの低減に応えることができない。
これに対し、実施例1のように、変速段(3速)に適合するトルク変化率によりモータトルク変化処理を行うと、切り替え時刻t5から目標モータトルクに到達する時刻t7までは、図16の太実線のモータトルク特性に示すように、中間値より緩勾配のトルク変化率により繋がれる。つまり、図16の実線による加速度特性に示すように、モータトルクの傾きが緩やかになり、加速度変動が小となり、捩れ振動ショックの低減要求に応えることができる。
上記のように、実施例1では、複数の変速段のうち1つの変速段の選択による走行シーンであるとき、トルク変化率を変速段毎に設定した。変速段がローギヤ比側であるほど大きな値に設定し、変速段がハイギヤ比側であるほど小さな値に設定する構成を採用した。
この構成により、モータジェネレータ2の制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御とトルク制御のモータトルク差分が、変速段に応じて選択したトルク変化率による勾配のトルクにて繋がれる。
したがって、変速が介入しない時にモータジェネレータ2を回転数制御からトルク制御に切り替える際、ローギヤ比のときに要求される駆動力レスポンスを確保し、ハイギヤ比のときに要求される捩れ振動ショックの低減が達成される。
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 走行用駆動源に設けられる電動モータ(モータジェネレータ2)と、
前記電動モータ(モータジェネレータ2)の制御を、制御目標を目標モータ回転数とする回転数制御と、制御目標を目標モータトルクとするトルク制御と、の間で切り替えるモータ制御切り替え手段(図10)と、
前記電動モータ(モータジェネレータ2)と駆動輪(タイヤ7,7)の間に介装され、車両状態に応じて自動的に変速比を変更する自動変速機3と、
前記電動モータ(モータジェネレータ2)の制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、アクセル操作と前記自動変速機3の変速種により判別される走行シーンが、駆動力レスポンスが要求される走行シーンであるほど大きな値のトルク変化率を選択し、ショック低減が要求される走行シーンであるほど小さな値のトルク変化率を選択し、回転数制御の最終モータ出力トルクとトルク制御開始時の目標モータトルクのモータトルク差分を、前記トルク変化率で変化する目標モータトルクにより繋ぐモータトルク変化処理手段(図11,図12)と、
を備える。
このため、電動モータ(モータジェネレータ2)を回転数制御からトルク制御に切り替える際、アクセル操作と自動変速機3の変速種により判別される走行シーンに対応し、走行シーン毎に異なる要求性能を達成することができるができる。つまり、駆動力レスポンスが要求される走行シーンにおいて、要求に応えて駆動力レスポンスを確保できるし、ショック低減が要求される走行シーンにおいて、要求に応えて捩れ振動ショックを低減することができる。
(2) 前記モータトルク変化処理手段(図11,図12)は、前記判別される走行シーンが、アクセル踏み込みによるドライブダウン変速介入の走行シーンであるとき、前記トルク変化率を、要求される駆動力レスポンスに適合する大きな値に設定する(ステップS282、図13)。
このため、上記(1)の効果に加え、ドライブダウン変速介入時に電動モータ(モータジェネレータ2)を回転数制御からトルク制御に切り替える際、大きなモータトルク差分の発生にかかわらず、要求される駆動力レスポンスを確保することができる。
(3) 前記モータトルク変化処理手段(図11,図12)は、前記判別される走行シーンが、アクセル足離しによるコーストダウン変速介入の走行シーンであるとき、前記トルク変化率を、要求されるショック低減に適合する小さな値に設定する(ステップS284、図13)。
このため、上記(1),(2)の効果に加え、コーストダウン変速介入時に電動モータ(モータジェネレータ2)を回転数制御からトルク制御に切り替える際、ショック感度が高いコースト減速中であるにもかかわらず、要求される捩れ振動ショックの低減を達成することができる。
(4) 前記自動変速機4は、車両状態に応じて自動的にギヤ比が異なる複数の変速段を変更する有段変速機であり、
前記複数の変速段のうち1つの変速段の選択による走行シーンであるとき、前記トルク変化率を、変速段毎の設定であって、変速段が減速側であるほど大きな値に設定し、変速段が等速あるいは増速側であるほど小さな値に設定する変速段対応モータトルク変化処理手段を備える(ステップS285、図13)。
このため、上記(1)〜(3)の効果に加え、変速が介入しない時に電動モータ(モータジェネレータ2)を回転数制御からトルク制御に切り替える際、ローギヤ比のときに要求される駆動力レスポンスを確保することができ、ハイギヤ比のときに要求される捩れ振動ショックの低減を達成することができる。
以上、本発明の電動車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、自動変速機として、複数の変速段を有する有段階の自動変速機3の例を示した。しかし、自動変速機としては、変速比を無段階に制御するベルト式無段変速機やトロイダル式無段変速機等による無段変速機の例であっても良い。また、自動変速機が無段変速機の場合、目標変速比や目標入力回転数が固定されている場合、目標変速比や目標入力回転数に応じてトルク変化率を設定する例としても良い。
実施例1では、第2クラッチCL2を、有段式の自動変速機ATに内蔵した摩擦要素の中から選択する例を示した。しかし、自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設けても良く、例えば、モータ/ジェネレータMGと変速機入力軸との間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例や、変速機出力軸と駆動輪の間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例も含まれる。
実施例1では、HEVモードとEVモードを切り替えるモード切り替え手段として、第1クラッチ4を用いる例を示した。しかし、HEVモードとEVモードを切り替えるモード切り替え手段としては、例えば、プラネタリギア等のように、クラッチを用いることなくクラッチ機能を発揮するような差動装置や動力分割装置を用いる例としても良い。
実施例1では、本発明の制御装置をハイブリッド車両に対し適用した例を示した。しかし、走行用駆動源にモータジェネレータを備えた電気自動車や燃料電池車、等の他の電動車両に対しても適用することができる。また、実施例1で示した1モータ・2クラッチのハイブリッド車両以外の駆動系形式によるハイブリッド車両に対しても勿論適用することができる。
1 エンジン
2 モータジェネレータ(電動モータ)
3 自動変速機
4 第1クラッチ
5 第2クラッチ
6 ディファレンシャルギア
7 タイヤ(駆動輪)
8 インバータ
9 バッテリ
10 エンジン回転センサ
11 MG回転センサ
12 AT入力回転センサ
13 AT出力回転センサ
14,15 ソレノイドバルブ
16 SOCセンサ
17 アクセル開度センサ
20 統合コントローラ
21 エンジンコントローラ
22 モータコントローラ
23 ブレーキ油圧センサ

Claims (4)

  1. 走行用駆動源に設けられる電動モータと、
    前記電動モータの制御を、制御目標を目標モータ回転数とする回転数制御と、制御目標を目標モータトルクとするトルク制御と、の間で切り替えるモータ制御切り替え手段と、
    前記電動モータと駆動輪の間に介装され、車両状態に応じて自動的に変速比を変更する自動変速機と、
    前記電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える切り替え開始条件が成立すると、アクセル操作と前記自動変速機の変速種により判別される走行シーンが、駆動力レスポンスが要求される走行シーンであるほど大きな値のトルク変化率を選択し、捩れ振動ショック低減が要求される走行シーンであるほど小さな値のトルク変化率を選択するトルク変化率選択処理手段と
    前記電動モータの制御を回転数制御からトルク制御に切り替える際、回転数制御の最終モータ出力トルクとトルク制御開始時の目標モータトルクのモータトルク差分を、選択された前記トルク変化率で変化する目標モータトルクにより繋ぐモータトルク変化処理手段と、
    を備えることを特徴とする電動車両の制御装置。
  2. 請求項1に記載された電動車両の制御装置において、
    前記トルク変化率選択処理手段は、前記判別される走行シーンが、アクセル踏み込みによるドライブダウン変速介入の走行シーンであるとき、前記トルク変化率を、要求される駆動力レスポンスに適合する大きな値に設定する
    ことを特徴とする電動車両の制御装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載された電動車両の制御装置において、
    前記トルク変化率選択処理手段は、前記判別される走行シーンが、アクセル足離しによるコーストダウン変速介入の走行シーンであるとき、前記トルク変化率を、要求されるショック低減に適合する小さな値に設定する
    ことを特徴とする電動車両の制御装置。
  4. 請求項1から請求項3までの何れか1項に記載された電動車両の制御装置において、
    前記自動変速機は、車両状態に応じて自動的にギヤ比が異なる複数の変速段を変更する有段変速機であり、
    前記トルク変化率選択処理手段は、複数の変速段のうち1つの変速段の選択による走行シーンであるとき、前記トルク変化率を、変速段毎の設定であって、変速段が減速側であるほど大きな値に設定し、変速段が等速あるいは増速側であるほど小さな値に設定す
    ことを特徴とする電動車両の制御装置。
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