JP5682918B2 - X線吸収端法による元素別定量分析方法及び元素別定量分析装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、放射光を利用するには、高エネルギーの電子蓄積リング等のような大がかりな装置が必要であり、材料製造プロセス等における種々の工程などにおいて、小型の装置により吸収端ジャンプを利用して機動的に元素別定量分析を行うことは不可能であった。
(1)炭素系冷陰極電子源、チタンよりも原子番号の小さい導電性の軽元素としての炭素又は炭化ケイ素からなり、冷陰極電子源から放出された電子が入射面に入射され、入射方向に対して前方にX線を放出するターゲット、及び、該ターゲットで発生したX線以外のX線を遮蔽する遮蔽部材を具備し、軽元素の種類に応じた所定値以上のエネルギー領域において特性X線のピークの無い連続X線を被測定物に照射することのできる連続X線光源からの連続X線を被測定物に照射し、その透過X線をエネルギー弁別型検出器で検出し、被測定物のX線吸収スペクトルにおける含有各元素の吸収端ジャンプ量を求め、あらかじめ標準試料等で決定した元素別の元素1g/cm 3 の密度の光路長1cmあたりの吸収端ジャンプである質量吸収端ジャンプ係数と前記含有各元素の吸収端ジャンプ量とに基づき、被測定物に含有される各元素についてX線透過経路上の面密度を求めることを特徴とする元素別定量分析方法。
(2)エネルギー弁別型検出器として面上に並べた二次元検出器を用いるか、又は、被測定物を照射X線に対し直角方向の二次元で動かして各領域を測定することにより、含有元素ごとの密度分布を求める上記(1)に記載の元素別定量分析方法。
(3)炭素系冷陰極電子源、チタンよりも原子番号の小さい導電性の軽元素としての炭素又は炭化ケイ素からなり、冷陰極電子源から放出された電子が入射面に入射され、入射方向に対して前方にX線を放出するターゲット、及び、該ターゲットで発生したX線以外のX線を遮蔽する遮蔽部材を具備し、軽元素の種類に応じた所定値以上のエネルギー領域において特性X線のピークの無い連続X線を被測定物に照射することのできる連続X線光源と、該被測定物を透過するX線のX線強度を検出するエネルギー弁別型検出器と、エネルギー弁別型検出器の検出値に基づき被測定物のX線吸収スペクトルにおける含有各元素の吸収端ジャンプ量を求めるとともに、あらかじめ標準試料等で決定した元素別の元素1g/cm 3 の密度の光路長1cmあたりの吸収端ジャンプである質量吸収端ジャンプ係数と該含有各元素の吸収端ジャンプ量とに基づき、被測定物に含有される各元素についてX線透過経路上の面密度を求める分析装置とを備えることを特徴とする元素別定量分析装置。
(4)連続X線光源からのX線を分光し、分光X線を非測定物に照射する結晶分光装置をさらに備えることを特徴とする上記(3)に記載の元素別定量分析装置。
(5)ターゲットは、板状で、電子の入射面と反対の面からX線を放出するものであることを特徴とする上記(3)に記載の元素別定量分析装置。
(6)ターゲットは、その入射面に対し電子を45度以下の角度で入射するものであることを特徴とする上記(3)に記載の元素別定量分析装置。
(7)エネルギー弁別型検出器として面上に並べた二次元検出器を用い、分析装置が含有元素ごとの密度分布を求める上記(3)〜(6)のいずれか1項に記載の元素別定量分析装置。
(8)被測定物を照射X線に対し直角方向の二次元で動かす被測定物駆動手段をさらに備え、分析装置が含有元素ごとの密度分布を求める上記(3)〜(6)のいずれか1項に記載の元素別定量分析装置。
本発明では、ターゲットに選択した軽元素の種類に応じた所定値以上のエネルギー領域において特性X線のピークの無い連続的なX線スペクトルのX線を発生する連続X線光源を用いるので、所定の原子番号の大きい全ての含有元素(大気中では、Ti以上の重い元素、光路をヘリウム置換や真空にした場合には、ターゲットに用いた元素よりも原子番号が大きい元素)について、吸収端が観察された位置のジャンプ量を測定することにより、それら全ての含有元素の含有率や絶対量等を容易に定量することができる。
目的元素が希薄な場合には、X線光源強度の代わりに目的元素を含まない被測定物の基材等をブランクとして同一条件で測定して光源強度とすることにより、目的元素のみの吸収スペクトルが得られ、目的元素の感度を向上させることができる。
Δμ=CΔμDl (1)
(Δμは測定された吸収端ジャンプ量、Dは元素の密度(g/cm3)、lは光路長(cm))
Dl=Δμ/CΔμ (2)
被測定物のl(cm)が分かれば密度D(g/cm3)が得られ、面積がわかれば全量(g)が得られることになる。
本発明者らは、これまでに放射光を利用して精密セルを用いて、各元素の標準液により質量吸収端ジャンプ係数を決定してきた。その決定手順は次のとおりである。
吸収端ジャンプを示す吸収スペクトルにおいて、吸収端近傍の微細構造の影響を取り除くため、図5に示すように吸収端より低エネルギー側の部分をVictoreen式に定数項を加えた式(3)で最適化により定数項Aを決定する。
本発明者がこの方法により種々の元素に対して得た質量吸収端ジャンプ係数CΔμの値を表1、表2に示す。
上記(A)の方法で得られた質量吸収端ジャンプ係数の値をK吸収端の質量吸収端ジャンプ係数をべき乗関数でフィッティングした結果、原子番号(Z)に対してCΔμ=exp(18.10-3.702 ln Z)の関係にあることがわかった(Z=29-78の範囲で)。L吸収端についても同様の関係が得られる。
この経験式に基づき、標準液が得られない元素についても原子番号から質量吸収端ジャンプ係数を推定することができる。
上記(A)で述べた放射光の場合と同様の処理をすれば、さらに精度の高い吸収端ジャンプとそれに基づく精度の高い面密度を求めることができる。
そのような遮蔽部材としては、例えば、モリブデン等のX線吸収係数の高い元素からなり、貫通孔を形成したコリメータを用いることができる。貫通孔としては、径が変化しない直孔であっても良いし、径が変化するテーパ孔であっても良い。適宜のテーパ孔を選択することにより、照射域における照射範囲を適宜に調整することもできる。
また、二次元検出器を用いなくても、試料を二次元で動かして各領域を測定することにより、元素ごとの密度分布図を描くことができる。
被測定物の全体の密度分布図から、被測定物中に含まれる各元素の全量を得ることができる。
さらに被測定物を回転させて得た密度分布図から三次元分布図に変換することも可能である。
図7に産業技術総合研究所のABS樹脂中の有害金属4種(Cr925±30mg/kg,Hg928±38mg/kg,Pb926±24mg/kg,Cd92.1±4.9mg/kg)を含む認証標準物質(CRM8116-a)のディスク(直径30mm厚さ2mm、面積7.0686cm2)一枚(1.47g)を測定した例を示す。含有金属に比べて樹脂の吸収が大きいために、大気中で測定した光源スペクトルを入射X線として用いた場合には測定が困難であるが、金属を含まない樹脂ディスクをブランクとして測定することにより、検出器のダイナミックレンジはほぼ同じになり、積算時間(8000秒)を長くすることにより、微量の金属のスペクトルが測定できた。図8はCr K吸収端、図9はHgおよびPbのL吸収端近傍のスペクトルである。Cdは含有量が少なく本積算時間では吸収端が認められなかった。
Cr(K) CΔμ=486.45cm2/g (McMaster)
Δμ=0.069 Dl=1.4184×10-4g/cm2
ディスク1枚中 1.0026×10-3g,682.067mg/kg,認証値の 74%
Hg(L3) CΔμ=97.459cm2/g (McMaster)
Δμ=0.0153029 Dl=1.5701884×10-4g/cm2
ディスク1枚中 1.1099 ×10-3g,755.036 mg/kg,認証値の 81%
Pb(L3) CΔμ=93.586cm2/g (McMaster)
Δμ=0.017165 Dl=1.8341418×10-4g/cm2
ディスク1枚中 1.29648×10-3g,881.960mg/kg,認証値の 95%
金属の絶対量が微量のため誤差が大きくなったが、認証値に対し20%程度の誤差で一致した。
図10に本発明の元素別定量分析装置の別実施例を示す。結晶分光装置(集光型分光結晶)を用い、連続X線光源からのX線を結晶分光装置で分光し非測定物(試料)に照射することにより、高分解能のX線吸収スペクトルの測定が可能である。これにより吸収端ジャンプによる定量精度が向上し、同時に吸収端の構造から吸収元素の化学状態(酸化数や化学結合状態、配位子など)や局所構造の情報が得られ、化学状態別、局所構造別の定量を行うことが可能である。
Claims (8)
- 炭素系冷陰極電子源、チタンよりも原子番号の小さい導電性の軽元素としての炭素又は炭化ケイ素からなり、冷陰極電子源から放出された電子が入射面に入射され、入射方向に対して前方にX線を放出するターゲット、及び、該ターゲットで発生したX線以外のX線を遮蔽する遮蔽部材を具備し、軽元素の種類に応じた所定値以上のエネルギー領域において特性X線のピークの無い連続X線を被測定物に照射することのできる連続X線光源からの連続X線を被測定物に照射し、その透過X線をエネルギー弁別型検出器で検出し、被測定物のX線吸収スペクトルにおける含有各元素の吸収端ジャンプ量を求め、あらかじめ標準試料等で決定した元素別の元素1g/cm 3 の密度の光路長1cmあたりの吸収端ジャンプである質量吸収端ジャンプ係数と前記含有各元素の吸収端ジャンプ量とに基づき、被測定物に含有される各元素についてX線透過経路上の面密度を求めることを特徴とする元素別定量分析方法。
- エネルギー弁別型検出器として面上に並べた二次元検出器を用いるか、又は、被測定物を照射X線に対し直角方向の二次元で動かして各領域を測定することにより、含有元素ごとの密度分布を求める請求項1に記載の元素別定量分析方法。
- 炭素系冷陰極電子源、チタンよりも原子番号の小さい導電性の軽元素としての炭素又は炭化ケイ素からなり、冷陰極電子源から放出された電子が入射面に入射され、入射方向に対して前方にX線を放出するターゲット、及び、該ターゲットで発生したX線以外のX線を遮蔽する遮蔽部材を具備し、軽元素の種類に応じた所定値以上のエネルギー領域において特性X線のピークの無い連続X線を被測定物に照射することのできる連続X線光源と、該被測定物を透過するX線のX線強度を検出するエネルギー弁別型検出器と、エネルギー弁別型検出器の検出値に基づき被測定物のX線吸収スペクトルにおける含有各元素の吸収端ジャンプ量を求めるとともに、あらかじめ標準試料等で決定した元素別の元素1g/cm 3 の密度の光路長1cmあたりの吸収端ジャンプである質量吸収端ジャンプ係数と該含有各元素の吸収端ジャンプ量とに基づき、被測定物に含有される各元素についてX線透過経路上の面密度を求める分析装置とを備えることを特徴とする元素別定量分析装置。
- 連続X線光源からのX線を分光し、分光X線を被測定物に照射する結晶分光装置をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の元素別定量分析装置。
- ターゲットは、板状で、電子の入射面と反対の面からX線を放出するものであることを特徴とする請求項3に記載の元素別定量分析装置。
- ターゲットは、その入射面に対し電子を45度以下の角度で入射するものであることを特徴とする請求項3に記載の元素別定量分析装置。
- エネルギー弁別型検出器として面上に並べた二次元検出器を用い、分析装置が含有元素ごとの密度分布を求める請求項3〜6のいずれか1項に記載の元素別定量分析装置。
- 被測定物を照射X線に対し直角方向の二次元で動かす被測定物駆動手段をさらに備え、分析装置が含有元素ごとの密度分布を求める請求項3〜6のいずれか1項に記載の元素別定量分析装置。
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