以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の蒸気滅菌器1の構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態の蒸気滅菌器1は、ガーゼ、メスなどの医療器具に代表される被滅菌物を収容可能なチャンバ10を備える。チャンバ10は、その一側部に装着された開閉可能な開閉蓋11を含む。開閉蓋11を開放することで、チャンバ10内への被滅菌物の搬出入が可能となる。一方、開閉蓋11を閉じることで、チャンバ10の内部は密閉状態に保持される。
チャンバ10の内底部には、チャンバ10内に供給された水を加熱して蒸気を発生させるヒータ12が設置されている。ヒータ12は、チャンバ10の内底部に沿って延びるように配置されている。ヒータ12の上方には、図示しない被滅菌物を載置可能な載置台13が、チャンバ10の内底部に対して略平行に設けられている。
チャンバ10の内底部にはまた、チャンバ10内に供給された水の水位を検出する上限水位センサ14と下限水位センサ15とが、内底部から立設するように配置されている。上限水位センサ14と下限水位センサ15とは、所定量の水がチャンバ10内に入ったことを検出する。蒸気滅菌器1は、チャンバ10内の下限水位を検出する水位センサとしての下限水位センサ15と、チャンバ10の上限水位を検出する第二の水位センサとしての上限水位センサ14とを備える。
上限水位センサ14と下限水位センサ15とは、その突端に設けられた金属などの導電性材料製のセンサ部と、セラミックに代表される絶縁材料製の根元部と、を含んで構成される。上限水位センサ14と下限水位センサ15とは、上限水位センサ14のセンサ部がチャンバ10の底部から突起する高さが、下限水位センサ15のセンサ部がチャンバ10の底部から突起する高さよりも大きいように、形成されている。
上限水位センサ14は、チャンバ10内の水位の上限値である上限水位を検出する。つまり、上限水位センサ14がオン状態になり、チャンバ10内の水位が上限水位以上となった時点で、チャンバ10への給水が終了するように、蒸気滅菌器1は制御される。チャンバ10内の水位が上限水位センサ14に達したか否かにより、チャンバ10への給水停止が制御される。
下限水位センサ15は、チャンバ10内の水位の下限値である下限水位を検出する。つまり、チャンバ10内の水位が下限水位センサ15のセンサ部の位置よりも低い場合、ヒータ12によるチャンバ10内の水の加熱が行なわれず、チャンバ10の空焚きを防止するように、蒸気滅菌器1は制御される。
チャンバ10の、開閉蓋11と対向する一内側面には、チャンバ10内の温度を検出する温度センサ16が取り付けられている。温度センサ16は、チャンバ10内の気体の温度を計測する。
蒸気滅菌器1は、チャンバ10内に注入される水を貯留する貯水槽20を備える。貯水槽20の内部空間には、水が存在する液相部21と、空気が存在する気相部22とが含まれる。チャンバ10と貯水槽20とは、貯水槽20からチャンバ10へ水を供給する給水経路30と、チャンバ10から貯水槽20へ水を排出する排水経路40と、チャンバ10から貯水槽20へ空気と水蒸気との混合気を排出する排気経路50と、によって連通されている。
給水経路30は、給水管31を含む。給水管31の一端は貯水槽20内部の液相部21に連結され、他端はチャンバ10の底部の外側に設けられた連結部17に連結されている。給水管31の一端は、貯水槽20の底部の取水口に連結されている。給水管31は、貯水槽20と連結部17とを連通する。給水経路30は、給水管31の途中に配置された、給水ポンプ32と給水電磁弁33とを含む。給水ポンプ32は、給水経路30の上流側(貯水槽20に近い側)に配置され、給水電磁弁33は給水経路30の下流側(チャンバ10に近い側)に配置されている。
給水ポンプ32は、貯水槽20からチャンバ10へ向かって流れる方向に水を移送して、チャンバ10内へ水を供給する。給水電磁弁33は、給水ポンプ32に対して給水経路30の下流側に配置されており、給水経路30を開閉する。給水電磁弁33は、貯水槽20からチャンバ10へ水が流れ得る開状態と、貯水槽20からチャンバ10への水の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
排水経路40は、主排水管41と、第一排水枝管42と、第二排水枝管44とを備える。主排水管41の一端は、チャンバ10の底部の連結部17に連結される。第一排水枝管42と第二排水枝管44とは、各々の一端が主排水管41に連結される。第一排水枝管42の他端は、貯水槽20内部の液相部21に連結される。第二排水枝管44の他端は、貯水槽20内部の気相部22に連結される。
チャンバ10から水および水蒸気を排出するための排水経路40は、二系統化されており、貯水槽20内の液相部21へ水および水蒸気を排出する第一排水枝管42と、貯水槽20内の気相部22へ水蒸気を排出する第二排水枝管44と、を含む。チャンバ10から貯水槽20へ向かう水は、主排水管41から第一排水枝管42を経由して貯水槽20の液相部21へ流れることができ、または、主排水管41から第二排水枝管44を経由して貯水槽20の気相部22へ流れることができる。
第一排水枝管42の途中には、第一排水電磁弁43が配置されている。第一排水電磁弁43は、第一排水枝管42を経由してチャンバ10から貯水槽20へ水が流れ得る開状態と、チャンバ10から貯水槽20への水の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。第二排水枝管44の途中には、第二排水電磁弁45が配置されている。第二排水電磁弁45は、第二排水枝管44を経由してチャンバ10から貯水槽20へ水が流れ得る開状態と、チャンバ10から貯水槽20への水の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
排気経路50は、排気管51を含む。排気管51の一端はチャンバ10の天井部に連結され、他端は貯水槽20内部の気相部22に連結されている。排気経路50は、排気管51の途中に配置された排気電磁弁52を含む。排気電磁弁52は、チャンバ10から貯水槽20へ気体が流れ得る開状態と、チャンバ10から貯水槽20への気体の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
排気経路50は、滅菌処理時にチャンバ10内部を蒸気で満たそうとするときの空気と蒸気との混合気の出口となる経路を形成する。排気経路50の他端が貯水槽20内部の気相部22に連結されていることにより、当該混合気は、貯水槽20内の気相部22に放出される。貯水槽20には、貯水槽20の外部空間と気相部22とを連通するための、図示しない排気口が形成されている。この排気口は、貯水槽20の気相部22から蒸気滅菌器1を使用する操作者へ向かって気体が噴出しないように、位置を調整されて形成されている。
蒸気滅菌器1はまた、チャンバ10内に空気を送り込む送風経路60を備える。送風経路60は、一端がチャンバ10に連結された送風管61と、送風管61の他端に取り付けられたエアフィルタ62と、送風管61の途中に配置された送風ポンプ63および送風電磁弁64とを含む。エアフィルタ62は、送風管61への空気の取り込み口として機能する。エアフィルタ62を経由して取り込まれた空気は、送風管61の内部を流通する。送風ポンプ63は、送風管61の他端から一端へ向かって流れる方向に空気を移送する。送風電磁弁64は、送風ポンプ63に対しチャンバ10に近い側の、送風管61の途中に配置されている。送風電磁弁64は、送風経路60を経由してチャンバ10内へ外気が流れ得る開状態と、チャンバ10内への外気の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
送風経路60は、蒸気滅菌器1のチャンバ10内で被滅菌物が滅菌処理された後に、チャンバ10の内部に空気を送り込む。チャンバ10内に残留する水蒸気は、チャンバ10内に送り込まれた空気の圧力により、排気経路50を経由してチャンバ10外へ排出される。チャンバ10の内部の水蒸気が湿度の低い空気によって置換されることにより、チャンバ10の内部を乾燥させる乾燥処理が行なわれる。チャンバ10の内部に空気を送り込むことにより、チャンバ10の内圧が下げられる。これにより、蒸気滅菌器1を使用する操作者は、安全に開閉蓋11を開けて、滅菌処理後の被滅菌物を安全にチャンバ10から取り出すことができる。
図2は、実施の形態1の蒸気滅菌器1の電気的構成を示すブロック図である。図1に示すように、蒸気滅菌器1は、蒸気滅菌器1の動作を制御する制御部70を備える。制御部70は、上限水位センサ14、下限水位センサ15および温度センサ16に電気的に接続されており、各センサからチャンバ10の内部の状態に係る検出値を入力される。制御部70はまた入力部71を有する。蒸気滅菌器1を使用する操作者は、加熱温度、滅菌時間および乾燥時間などの設定値を、入力部71から制御部70に入力する。制御部70はさらに、所定時間を計測するタイマー72を有する。タイマー72は、被滅菌物の滅菌時間および乾燥時間を制御するために使用され、また、チャンバ10内への給水のタイミングの制御のために使用される。
制御部70は、蒸気滅菌器1の各制御ステップに対応して、ヒータ12、排気電磁弁52、第一排水電磁弁43、第二排水電磁弁45、給水電磁弁33、給水ポンプ32、送風電磁弁64および送風ポンプ63などの、蒸気滅菌器1に含まれる各機器に制御信号を出力する。制御部70からの制御信号を受けて各機器が適切に動作することにより、蒸気滅菌器1による被滅菌物の滅菌処理が確実に行なわれる。
図3は、図1に示す連結部17の詳細を示す拡大断面図である。図3に示すように、連結部17は、T字状の管継手であるT継手18を含む。T継手18の形成するT字形状の横線部分には、給水経路30の給水管31と、排水経路40の主排水管41とが、連結されている。T継手18の形成するT字形状の縦線部分は、チャンバ10に直接連結され、チャンバ10の底部を貫通するように底部に形成された貫通孔19にT継手18の内部の経路が繋げられている。T継手18は、チャンバ10と一体化されるように、T字形状の縦線部分がチャンバ10に固定されている。
T継手18を介在させて、給水管31とチャンバ10の内部空間とが連通し、主排水管41とチャンバ10の内部空間とが連通し、また給水管31と主排水管41とが連通している。そのため、連結部17は、チャンバ10内へ水を供給するときの給水口として機能し、かつ、チャンバ10から水を排出するときの排出口としても機能する。
図4は、排水経路40の詳細を示す模式図である。図4に示すように、本実施の形態の排水経路40において、主排水管41は、チャンバ10の底部の連結部17に連結された一端と、主排水管41が第一排水枝管42および第二排水枝管44に分岐する他端との間に、鉛直方向に立ち上がる立上り部41aを含む。チャンバ10から貯水槽20へ向かって流れる水は、立上り部41aの内部において、鉛直方向上方へ向かって流れる。主排水管41の、立上り部41aに対して下流側(貯水槽20に近い側)には、主排水管41において最も高い位置に配置された、頂上部41bが設けられている。頂上部41bは、チャンバ10内部の水の水位WLよりも高い位置に配置されている。頂上部41bは、チャンバ10内の水位WLの上限を規定する上限水位センサ14のセンサ部と比較して、より高い位置に配置されている。
排水経路40の、貯水槽20内の液相部21に連結される第一排水枝管42には、コンデンサ部46が形成されている。コンデンサ部46は、第一排水枝管42が屈曲され形成された複数個の環状部分が同心に重なる筒状に形成され、貯水槽20内の液相部21に水没する第一排水枝管42の管長を増大する。コンデンサ部46は、コンデンサ部46の内部を通過する高温の水の温度を低下させ、水が貯水槽20内に排出するときの騒音を低減する静音機能を有する。コンデンサ部46は上記の形状に限られず、たとえば蛇行形状など、第一排水枝管42の管長を増大できる任意の形状を有してもよい。
貯水槽20は、底部が一段低く形成された、低床部23を有する。コンデンサ部46は、この低床部23によって形成された窪んだ空間内に配置されている。そのため、第一排水枝管42の端部47を確実に液相部21内に配置し、第一排水枝管42を経由して流れるチャンバ10からの排水を確実に貯水槽20内の水中に排出できるように、排水経路40が形成される。
以上の構成を備える蒸気滅菌器1の動作について、以下に説明する。図5は、蒸気滅菌器1の基本動作工程を示す流れ図である。図5に示す流れ図に従って、蒸気滅菌器1による被滅菌物の滅菌のための各工程における、蒸気滅菌器1の動作について説明する。まず工程(S10)において、蒸気滅菌器1の電源をオンにし、蒸気滅菌器1を起動する。電源起動時に、排気電磁弁52が開かれる。これにより、チャンバ10の内部空間と貯水槽20内の気相部22とが連通し、チャンバ10内の空気圧と外気圧とが一定にされる。
次に工程(S20)において、チャンバ10への給水が行なわれる。給水電磁弁33を開き、給水ポンプ32を起動することにより、給水が開始され、貯水槽20からチャンバ10へ水が供給される。チャンバ10内の下限水位センサ15の先端のセンサ部が水没し、次に上限水位センサ14の先端のセンサ部が水没すれば、給水は完了する。以下、この給水工程(S20)について、詳細に説明する。
図6は、実施の形態1の給水工程(S20)の詳細を示す流れ図である。図6に示すように、実施の形態1の給水工程(S20)では、まず工程(S101)において、上限水位センサ14がオン状態であるか、すなわちチャンバ10内の水位WLが上限水位センサ14のセンサ部以上であり、水位WLが上限水位以上であるか否かを判断する。
図7は、上限水位センサ14がオンの場合の蒸気滅菌器1の各機器の動作を示すタイミングチャートである。図7を参照して、上述した通り、蒸気滅菌器1の電源起動時に、排気電磁弁52が開かれる。また蒸気滅菌器1の電源起動時に、チャンバ10内の水位WLが上限水位よりも高ければ、上限水位センサ14と下限水位センサ15との両方が、蒸気滅菌器1の電源起動と同時にオンになる。
続いて給水を開始したとき、工程(S101)において上限水位センサ14がオン状態であると判断された場合、所定時間(本実施の形態では3秒。図7参照)経過後に上限水位センサ14がオンであることを検出できれば、給水ポンプ32は停止されたまま、また給水電磁弁33と第二排水電磁弁45とは閉のままの状態で、直ちにチャンバ10内へ給水するプロセスが完了し、続いて蒸気発生工程へ移る。
図8は、下限水位センサ15のみオンの場合の蒸気滅菌器1の各機器の動作を示すタイミングチャートである。図8を参照して、蒸気滅菌器1の電源起動時に、チャンバ10内の水位WLが下限水位センサ15の位置よりも高く上限水位センサ14の位置よりも低ければ、下限水位センサ15のみが蒸気滅菌器1の電源起動と同時にオンになり、上限水位センサ14はオフのままとされる。
続いて給水を開始したとき、工程(S101)において上限水位センサ14がオフ状態であると判断された場合、次に工程(S102)において、下限水位センサ15でチャンバ10内の水位WLを検出し、下限水位センサ15がオン状態であるか、すなわちチャンバ10内の水位WLが下限水位センサ15のセンサ部以上であるか否かを判断する。工程(S102)において下限水位センサ15がオン状態である、すなわちチャンバ10内の水位が下限水位以上であると判断された場合、工程(S103)において、チャンバ10内へ給水するプロセスが続けて開始される。
図9は、チャンバ10内へ給水するプロセスの流れ図である。図8および図9を併せて参照して、工程(S210)において、給水電磁弁33が開けられ、給水ポンプ32が起動されるとともに、第二排水電磁弁45が開けられる。このとき、上限水位センサ14および下限水位センサ15によって、チャンバ10内の水位WLが監視されている。
続いて工程(S240)において、上限水位センサ14がオン状態であるか否かを判断する。上限水位センサ14がオフ状態であると判断されれば、チャンバ10への給水が続行され、工程(S250)において所定時間(本実施の形態では60秒)以内に上限水位センサ14がオン状態に変わるか否かを判断する。所定時間以内に上限水位センサ14がオンにならない、つまり、所定時間以内に上限水位センサ14のセンサ部の高さにまで水位WLが到達しない場合には、工程(S260)において給水ポンプ32が停止され、給水電磁弁33が閉じられ、第二排水電磁弁45が閉じられて、タイムアウトエラーとして給水を中止する。
工程(S240)において上限水位センサ14がオン状態であると判断された場合、所定時間(本実施の形態では3秒。図6参照)経過後に上限水位センサ14がオンであることを検出できれば、工程(S270)において給水ポンプ32が停止され、給水電磁弁33が閉じられ、第二排水電磁弁45が閉じられることにより、チャンバ10への給水が停止されて、工程(S103)のチャンバ10内へ給水するプロセスが完了する。
図6に戻って、工程(S102)において下限水位センサ15がオフ状態である、すなわちチャンバ10内の水位が下限水位未満であると判断された場合、工程(S104)において、ヒータ12を冷却するプロセスが開始される。
図10は、両方の水位センサがオフの場合の蒸気滅菌器1の各機器の動作を示すタイミングチャートである。図10に示すように、蒸気滅菌器1の電源起動時に、チャンバ10内の水位WLが下限水位センサ15の位置よりも低く、水位WLが下限水位未満であれば、上限水位センサ14と下限水位センサ15との両方がオフのままとされる。
図11は、ヒータ12を冷却するプロセスの流れ図である。図10と図11とを併せて参照して、工程(S110)に示すように、ヒータ12冷却開始時に、給水電磁弁33が開かれるとともに給水ポンプ32が起動され、給水経路30を経由してチャンバ10へ水を流入させる。これにより、ヒータ12は、チャンバ10内へ流入する水に放熱して冷却される。ヒータ12冷却開始時にはまた、第二排水電磁弁45が開操作され、チャンバ10の内部空間と貯水槽20の気相部22とが連通される。チャンバ10への給水時に、よりチャンバ10内に水を入れやすくするように、第二排水電磁弁45が開かれ、排水経路40を経由してチャンバ10から水を排出可能な状態にする。
続いて図7に示す工程(S120)において、ヒータ12冷却開始から所定時間経過したか否かを判断する。給水開始から所定時間経過後、工程(S130)において、給水電磁弁33が一旦閉じられるとともに、給水ポンプ32が停止される。本実施の形態では、給水開始から6秒経過後に給水電磁弁33が閉じられ、給水ポンプ32が停止される。このとき第二排水電磁弁45は、開状態に保たれている。
その後工程(S140)において、給水ポンプ32の停止後所定時間経過したか否かを判断する。所定時間経過後、工程(S150)において、第二排水電磁弁45が閉じられて、ヒータ12を冷却するプロセスが完了する。本実施の形態では、給水電磁弁33の閉操作および給水ポンプ32の停止から5秒経過後、つまりヒータ12冷却開始から11秒経過後に、第二排水電磁弁45が閉じられる。このようにして、図6に示す工程(S104)のヒータ12を冷却するプロセスが完了する。
チャンバ10内の水位が下限水位よりも低い場合、前回の滅菌処理が終了した後の、排気電磁弁52のみが開とされ、チャンバ10の内部は高温のままである状態であることが想定される。下限水位をヒータ12の少なくとも一部が水に浸る水位として設定した場合、チャンバ10内の水位が下限水位未満であると、ヒータ12は水に浸っておらず高温の状態のままであると考えられる。給水開始時に、チャンバ10内のヒータ12が高温の状態であるとき、チャンバ10内に供給された水がヒータ12に接触すると、チャンバ10内に急激に蒸気が発生し、チャンバ10内の圧力が急上昇する。チャンバ10内の圧力が高く、チャンバ10の内圧が給水ポンプ32から移送され連結部17へ到達した水の圧力よりも高い状態では、チャンバ10に水を流入させようとしても水はチャンバ10内へ入ることができない。
そこで、本実施の形態の蒸気滅菌器1は、チャンバ10へ水を供給する給水経路30と、チャンバ10から水を排出する排水経路40と備え、制御部70は、給水経路30を経由してチャンバ10へ水を流入させるとき、チャンバ10内から水を排出するための排水経路40の開閉を制御する第二排水電磁弁45を開状態にし、排水経路40を経由してチャンバ10から水を排出可能な状態にするように、蒸気滅菌器1を制御する。第二排水電磁弁45の開閉操作によって、チャンバ10から排水不可能な状態から排水経路40を経由してチャンバ10から水を排出可能な状態に、容易に切り換えられる。
このようにすれば、ヒータ12が高温の状態でチャンバ10へ水を流入した場合に、チャンバ10内の高温のヒータ12に水が触れて発生した蒸気は、排水経路40を経由してチャンバ10の外部へ排出される。このとき、蒸気が発生してチャンバ10の内圧が上昇することにより、チャンバ10に流入しヒータ12により加熱された高温の水もまたチャンバ10から押し出されて、排水経路40を経由してチャンバ10の外部へ排出される。蒸気がチャンバ10から排出されることで、チャンバ10内の圧力が低下する。
チャンバ10の内圧が給水ポンプ32によって移送される水の水圧を下回ると、水がチャンバ10内へ流入できる状態、すなわちチャンバ10へ給水可能な状態になる。蒸気が発生することでチャンバ10内の圧力が上昇するとチャンバ10への水の流入が困難となるが、蒸気をチャンバ10の外へ排出することでチャンバ10の内圧を低下させることができるので、短時間でチャンバ10へ給水可能な状態へ戻すことができる。
この状態では、冷却開始時にチャンバ10内に供給された低温の水によってヒータ12が冷却されており、冷却開始時よりもヒータ12の温度は低くなっている。この状態でチャンバ10内に流入した水がヒータ12に触れて蒸気が発生すると、上記と同様に、高温の蒸気および水が排水経路40を経由してチャンバ10から排出される。
ヒータ12が十分に冷却されるまで、チャンバ10内への水の流入と、チャンバ10内で発生した高温の蒸気および水の流出と、が繰り返される。チャンバ10の内圧が低下したときに温度の低い水がチャンバ10へ流入し、低温の水にヒータ12が接触することにより、ヒータ12の温度をより短い時間で下げることができる。低温の水でヒータ12を冷やすことにより、ヒータ12の温度低下に要する時間を短縮できる。そして、水がヒータ12に触れても蒸気が発生しなくなる程度にヒータ12が十分に冷却されると、チャンバ10内に水が供給されてヒータ12に水が接触しても、蒸気が発生してチャンバ10の内圧が上昇することがなく、チャンバ10への給水を連続的にスムーズに行なうことができる。
チャンバ10内に水を流入するときにチャンバ10から水を排出する経路を開状態に保つことにより、チャンバ10の内圧によってヒータ12で加熱された水がチャンバ10から排出され、その後に新たに低温の水をチャンバ10へ供給することができる。チャンバ10内への温度の低い水を断続的に流入させることにより、ヒータ12の温度を早く下げることができる。つまり、冷却開始当初のチャンバ10内へ水が入りにくい状態を、より短い時間でチャンバ10内へ水が連続的に供給可能な状態に変えることができる。したがって、ヒータ12が高温の状態で給水開始した場合の、給水完了までの所要時間を、大幅に短縮することができる。
給水経路30にチャンバ10へ向かう方向に水を移送する給水ポンプ32が含まれることにより、給水ポンプ32によって加圧された水がチャンバ10へ供給されるので、チャンバ10の内圧がより高い状態でチャンバ10へ水を流入させることが可能となる。したがって、水が高温のヒータ12に触れてチャンバ10内に蒸気が発生した場合に、より短い時間でチャンバ10への給水を再開することができるので、チャンバ10への給水完了までの所要時間をより短縮することができる。
このとき、チャンバ10へ最初の水の流入を行なった後に、図7に示す工程(S130)で給水ポンプ32が停止され、チャンバ10への給水が一旦休止される。このようにチャンバ10への給水を制御することにより、チャンバ10内に発生した水蒸気およびヒータ12で加熱された水は、給水休止時間中に、水蒸気の圧力によってチャンバ10から確実に押し出され、排水経路40を経由してチャンバ10から排出される。給水休止時間中にチャンバ10の内圧を十分に低下させることができれば、給水ポンプ32を再起動してチャンバ10への給水を再開したときに、容易に水をチャンバ10内へ流入させることができる。
またこのとき、図10に示すように、チャンバ10への給水開始後の所定時間、上限水位センサ14および下限水位センサ15による、チャンバ10内の水位WLの監視が行なわれない。本実施の形態では、給水ポンプ32が最初に起動され、その後停止され、続いて第二排水電磁弁45が閉じられるまでの11秒間、チャンバ10内の水位WLを監視しないように、制御部70は設定されている。制御部70は、ヒータ12の冷却のためのチャンバ10への水の流入開始後の所定時間、上限水位センサ14によるチャンバ10内の水位の検出にかかわらず、チャンバ10へ水を流入し続ける。これにより、上限水位センサ14がチャンバ10内の水位WLを誤検出することが、抑制されている。
つまり、ヒータ12が高温の場合にチャンバ10内に水が流入すると、ヒータ12に接触した水が加熱され急速に温度上昇して、水の一部はチャンバ10内に飛び跳ねる。この飛び跳ねた水が上限水位センサ14のセンサ部に降りかかり、上限水位センサ14がチャンバ10内の水位WLを誤検出すると、制御部70は、給水停止するように指令する制御信号を発信する。その結果、チャンバ10内の水量が不十分な状態で給水が停止してしまう。この状態でヒータ12をオンにして加熱を開始すると、チャンバ10内が空焚きされ過熱状態となり、蒸気滅菌器1の各機器および蒸気滅菌器1の周辺の環境に悪影響をおよぼす可能性がある。
そこで、本実施の形態においては、ヒータ冷却開始から所定時間チャンバ10内の水位WLの監視をせず、上限水位センサ14および下限水位センサ15の水位WLの検出とは関係なくチャンバ10内への水の供給を一定時間続けるようにする。冷却開始当初、チャンバ10内の水位WLの検出でチャンバ10への給水を制御するのではなく、それに替えて給水を時間で制御する。このようにすれば、高温のヒータ12に水が接触してチャンバ10内に水の飛び跳ねが発生しても、上限水位センサ14によるチャンバ10内の水位WLの誤検出を防止でき、給水途中のチャンバ10内の水量が不十分な状態で給水が停止することを回避することができる。
上述したように、当該所定時間にチャンバ10内に温度の低い水を供給することにより、ヒータ12の温度を水の飛び跳ねが発生しない程度まで短時間で十分に下げることができる。当該所定時間経過後には、ヒータ12の温度が十分低いために、給水ポンプ32の運転によってチャンバ10内に連続的に給水することができる。したがって、給水完了までの所要時間を大幅に短縮することができる。
また本実施の形態では、図4に示すように、排水経路40の主排水管41には立上り部41aが形成されており、立上り部41aの下流側の頂上部41bはチャンバ10内の水位WLよりも高く配置されている。給水経路30からチャンバ10の底部の連結部17を経由してチャンバ10の内部空間へ至る経路と、給水経路30から連結部17および排水経路40を経由して貯水槽20の気相部22へ至る経路とを比較した場合に、前者の経路を流れるために必要な水のエネルギー(水頭)が相対的に小さくなっている。つまり、給水経路30から供給され連結部17を経由して流れる水は、排水経路40へ向かってより流れにくく、チャンバ10へ向かってより流れ易くなっている。
そのため、図10に示すように排気電磁弁52が開状態に保たれ、図1に示すチャンバ10の内部空間と貯水槽20の気相部22とが排気経路50によって連通している状態で、チャンバ10の内圧が十分に低下しチャンバ10と貯水槽20の気相部22との内圧が等しくなったとき、給水ポンプ32によって連結部17へ移送された水は、チャンバ10の内部へその大部分が流入する。したがって、給水工程中に第二排水電磁弁45を開状態に保ち排水経路40を水が流通し得る状態に保っても、供給される水の大部分を連結部17からチャンバ10へ流入させ、確実にチャンバ10内へ給水することができる。
排水経路40を流通するために必要な水のエネルギーがより大きくなるように排水経路40を形成することにより、給水経路30から連結部17へ到達した水が、チャンバ10に流入する方向へより流れ易くなっている。そのため、本実施の形態では、給水経路30から連結部17へ到達した水が排水経路40へ流れるのを防止するための制御調整を必要としない。したがって、連結部17からチャンバ10へ流入する水の流量が不足するのを確実に回避でき、より簡易な制御でチャンバ10への給水を制御することができる。
図6に戻って、工程(S104)のヒータ12を冷却するプロセスの完了後、続いて工程(S103)において、チャンバ10内へ給水するプロセスが開始される。図12は、両方の水位センサがオフの場合のチャンバ10内へ給水するプロセスの流れ図である。図10および図12を併せて参照して、図11に示すヒータ12を冷却するプロセスの完了後、工程(S210)において、給水電磁弁33が再度開けられ、給水ポンプ32が再起動されるとともに、第二排水電磁弁45が再度開けられる。このとき同時に、上限水位センサ14および下限水位センサ15によるチャンバ10内の水位WLの監視を開始する。
続いて工程(S220)において、下限水位センサ15がオン状態であるか否かを判断する。下限水位センサ15がオフ状態であると判断されれば、チャンバ10への給水が続行され、工程(S230)において、所定時間(本実施の形態では60秒)以内に下限水位センサ15がオン状態に変わるか否かを判断する。所定時間以内に下限水位センサ15がオンにならない、つまり、所定時間以内に下限水位センサ15のセンサ部の高さにまで水位WLが到達しない場合には、工程(S260)において給水ポンプ32が停止され、給水電磁弁33が閉じられ、第二排水電磁弁45が閉じられて、タイムアウトエラーとして給水を中止する。
工程(S220)において下限水位センサ15がオン状態であると判断されれば、続いて工程(S240)において、上限水位センサ14がオン状態であるか否かを判断する。上限水位センサ14がオフ状態であると判断されれば、チャンバ10への給水が続行され、工程(S250)において所定時間(本実施の形態では60秒)以内に上限水位センサ14がオン状態に変わるか否かを判断する。所定時間以内に上限水位センサ14がオンにならない、つまり、所定時間以内に上限水位センサ14のセンサ部の高さにまで水位WLが到達しない場合には、工程(S260)において給水ポンプ32が停止され、給水電磁弁33が閉じられ、第二排水電磁弁45が閉じられて、タイムアウトエラーとして給水を中止する。
工程(S240)において上限水位センサ14がオン状態であると判断された場合、所定時間(本実施の形態では3秒。図6参照)経過後に上限水位センサ14がオンであることを検出できれば、工程(S270)において給水ポンプ32が停止され、給水電磁弁33が閉じられ、第二排水電磁弁45が閉じられることにより、チャンバ10への給水が停止されて、工程(S103)のチャンバ10内へ給水するプロセスが完了する。このようにして、図5に示す給水工程(S20)が完了する。
図5に戻って、給水工程(S20)の完了後、工程(S30)において、チャンバ10内での蒸気発生が開始される。チャンバ10内の底面にあるヒータ12をオンにすることで、チャンバ10内に供給された水がヒータ12で加熱され、同時に載置台13に載置された被滅菌物も加熱される。
次に工程(S40)において、置換工程が行なわれる。工程(S30)の蒸気発生工程が行なわれるとき、排気経路50の排気電磁弁52が依然として開状態に保たれているために、ヒータ12により水が加熱されて発生した蒸気でチャンバ10内の空気が押し出され、押し出された空気は排気経路50を介してチャンバ10の外部へ排気される。チャンバ10内の空気を水蒸気にて押し出し、チャンバ10内の空気と水蒸気とを入れ替える工程を、置換工程とする。
チャンバ10内に残留した空気をできるだけチャンバ10外に排気するため,チャンバ10内温度が(沸点−1)℃になったことを温度センサ16により検出してから、120秒間置換工程を継続する。120秒後に排気電磁弁52が閉じられ、チャンバ10が密閉される。排気電磁弁52を閉じることにより、チャンバ10の内圧が上昇できる状態となり、チャンバ10内を過熱蒸気で充満させてチャンバ内の温度を100℃以上に上昇させることができるようになる。
次に工程(S50)において、チャンバ10内が被滅菌物の滅菌処理のために必要な温度+0.5℃に達するまで、ヒータ12がオン状態に維持され、チャンバ10内の加熱を行なう。たとえば、滅菌温度を115℃、121℃または135℃に設定してもよい。但し、115℃は瓶内に収容された薬液を滅菌するための滅菌温度であるが、チャンバ10内の水蒸気と瓶内の液体との間には温度差があると考えられ、そのため、設定温度を117℃の設定とする。加熱の途中にヒータ12のオン動作とオフ動作とを適宜繰り返し、なだらかに117.5℃まで加熱する。
チャンバ10内が所定の滅菌処理のための必要温度に達すると、次に工程(S60)において、各設定温度における最低滅菌時間以上の時間、被滅菌物の滅菌処理を行なう。たとえば、所定の菌の死滅数を満たすための条件として、135℃で7分間以上滅菌処理を行なってもよく、121℃で24分間以上滅菌処理を行なってもよい。滅菌処理中、ヒータ12のオン動作とオフ動作とを適宜繰り返し、チャンバ10内の温度が所定の滅菌温度を下回らないよう、所定温度+0.5℃〜+1.0℃を目標に、チャンバ10内の温度を管理する。
工程(S60)で所定時間が経過し滅菌処理が終了した後、次に工程(S70)において、ヒータ12をオフし,チャンバ10内部の水および水蒸気を貯水槽20へ排出する排蒸工程が行なわれる。
チャンバ10の内圧が高いうちは、第一排水電磁弁43を開状態にし、第一排水枝管42を経由させて、高温の水および水蒸気を貯水槽20内の水中に排出する。チャンバ10内の蒸気圧によって水および水蒸気がチャンバ10から押し出され、貯水槽20内の水中に水および水蒸気を排出する、水中排蒸が行なわれる。これにより、高温の水および水蒸気が貯水槽20内の水で冷却されるので、水および水蒸気を排出するときの騒音を低減でき、静音化が図られている。
チャンバ10の内圧が下がり、チャンバ10中の水が十分排出された後は、第一排水電磁弁43を閉にし第二排水電磁弁45を開にして、第二排水枝管44を経由させて、水蒸気を貯水槽20内の空気中に排気する。チャンバ10の内圧が十分低下した後は、貯水槽20内の水のチャンバ10への逆流の恐れがあるため、貯水槽20内の空気中に水蒸気を排出する気中排蒸が行なわれる。このときチャンバ10の内部に水はほとんど残存しておらず、気体がチャンバ10から排出されるので、排出時の音は大きくなく、貯水槽20内の気相部22に水蒸気を排出しても、騒音の観点からは差し支えない。
たとえば、第一排水電磁弁43を開にしてから30秒経過後に第一排水電磁弁43を閉にすると同時に第二排水電磁弁45を開にして、水中排蒸と気中排蒸とを切り換え、その後、第二排水電磁弁45を30秒間開に保ってもよい。
なお、115℃の滅菌温度で瓶内の液体を滅菌する場合、チャンバ10内の温度および圧力が急激に変化すると瓶が割れてしまう恐れがある。そのため、チャンバ10内の温度が110℃になるまで待機し、110℃で排蒸する。
次に工程(S80)において、被滅菌物の乾燥を行なう。排蒸工程(S70)完了時に第二排水電磁弁45を閉じ、排気電磁弁52を開いて、チャンバ内のヒータ12と、チャンバ10外部の上部を覆っている図示しない乾燥ヒータとを一定サイクルで通電加熱する。このとき同時に、送風電磁弁64を開くとともに送風ポンプ63を起動し、送風経路60を経由して外部からチャンバ10内へ送風する。このようにして、被滅菌物の乾燥が所定の時間行われる。
なお、115℃の滅菌温度で瓶内の液体を滅菌する場合、上記乾燥処理に替えて、被滅菌物を冷却する冷却処理が行なわれる。この場合、ヒータ12および上述した乾燥ヒータはオフとされ、ヒータの制御は行われず、送風経路60を経由したチャンバ10内への送風のみが行なわれる。
所定の乾燥時間を経過した後に、ヒータ12および乾燥ヒータが停止され、送風ポンプ63が停止するとともに送風電磁弁64が閉じられることにより、乾燥が終了して、工程(S90)に示すように被滅菌物の滅菌のための全工程が完了となる。この状態で、ヒータ12はオフであり、チャンバ10と貯水槽20の気相部22とを連通する排気電磁弁52のみ開いている。
排蒸工程(S70)および乾燥工程(S80)においてチャンバ10から水が排出され、チャンバ10内の水位WLは低下する。そのため、工程(S90)終了後、蒸気滅菌器1の各機器の動作において図6に示す電源オンのタイミングと同じ状態であり、ヒータ12は停止した直後の高温である状態が形成される。この状態で、チャンバ10の開閉蓋11を開放し、滅菌の完了した被滅菌物をチャンバ10から取り出し、新たな被滅菌物をチャンバ10内に載置して、次回の滅菌処理を開始することができる。
滅菌処理完了後のヒータ12が高温の状態のまま直ちに次回の滅菌処理を開始しても、チャンバ10内に短時間で給水することができ、滅菌処理を連続して行なうことができる。チャンバ10への給水完了までの所要時間を大幅に短縮することができ、滅菌処理完了後に次回の滅菌処理を開始するまでの時間を従来の蒸気滅菌器と比較して大幅に短縮できるので、連続滅菌処理が可能となる。したがって、1回の滅菌処理に必要な時間を短縮でき、1日当たりの滅菌処理回数を増加させることができる。
上述した説明と一部重複する部分もあるが、本実施の形態の特徴的な構成を以下に列挙する。本実施の形態の蒸気滅菌器1は、被滅菌物を収納するチャンバ10と、チャンバ10内に供給された水を加熱するヒータ12とを備え、ヒータ12の加熱により発生した蒸気で被滅菌物を滅菌する。蒸気滅菌器は、チャンバ10内の水位を検出する下限水位センサ15と、蒸気滅菌器1の動作を制御する制御部70と、を備える。チャンバ10への給水を開始するとき、制御部70は、下限水位センサ15でチャンバ10内の水位を検出し、チャンバ10内の水位が下限水位未満であると判断された場合、ヒータ12を冷却した後に給水を開始する。
このようにすれば、チャンバ10内の水位が下限水位未満であって、チャンバ10内のヒータ12が高温である可能性のある場合にのみ、ヒータ12を冷却した後にチャンバ10への給水が開始される。チャンバ10内の水位が下限水位以上であれば、チャンバ10内に液体状の水が一定量貯水されているので、ヒータ12は高温ではないと考えられる。ヒータ12が高温でなく冷却を必要としない場合に、不要な工程を省略して、給水時間を短縮することができる。したがって、短時間で水をチャンバ10内へ供給することができ、給水完了までの所要時間を短縮することができる。
また、本実施の形態の蒸気滅菌器1では、チャンバ10の下限水位は、ヒータ12の少なくとも一部が水に浸る水位であるように設定される。このようにすれば、チャンバ10内の水位が下限水位以上であるとき、ヒータ12の少なくとも一部が水に浸っており、ヒータ12は水によって冷却されている。したがって、チャンバ10内の水位が下限水位以上であるときにはヒータ12が高温ではないように、より確実に設定することができる。
また、本実施の形態の蒸気滅菌器1では、制御部70は、チャンバ10内の水位が下限水位以上である場合、続けて給水を開始する。このようにすれば、チャンバ10内の水位が下限水位以上であり、ヒータ12が高温でなく冷却を必要としない場合に、より短時間で水をチャンバ10内へ供給することができる。
また、本実施の形態の蒸気滅菌器1では、ヒータ12は、チャンバ10内へ流入する水に放熱して冷却される。このようにすれば、ヒータ12を水冷することでより短時間にヒータを冷却することができる。
また、本実施の形態の蒸気滅菌器1は、チャンバ10の上限水位を検出する上限水位センサ14をさらに備え、制御部70は、チャンバ10内の水位が上限水位以上である場合、チャンバ10への給水を停止する。このようにすれば、チャンバ10内の水位が上限水位を超えたとき、上限水位センサ14によって確実に検出することができる。
また、本実施の形態の蒸気滅菌器1では、制御部は、ヒータ12の冷却のためのチャンバ10への水の流入開始後の所定時間、下限水位センサ15によるチャンバ10内の水位の検出にかかわらず、チャンバ10へ水を流入し続ける。このようにすれば、ヒータ12が高温の状態でチャンバ10への水の流入を開始した場合に、高温のヒータ12に水が触れてチャンバ10内での水の飛び跳ねが発生し、上限水位センサ14のセンサ部に飛び跳ねた水がかかったとしても、上限水位センサ14による水の検出は無視されて、所定時間水の流入が続行される。そのため、チャンバ10内に水の飛び跳ねが発生しても、上限水位センサ14によるチャンバ10内の水位WLの誤検出を防止でき、給水途中のチャンバ10内の水量が不十分な状態で給水が停止することを回避することができる。
本実施の形態の蒸気滅菌器1の制御方法は、被滅菌物を収納するチャンバ10と、チャンバ10内に供給された水を加熱するヒータ12と、チャンバ10内の水位を検出する下限水位センサ15と、を備え、ヒータ12の加熱により発生した蒸気で被滅菌物を滅菌する、蒸気滅菌器1の制御方法である。当該方法は、下限水位センサ15でチャンバ10内の水位を判断する工程と、チャンバ10内に給水する工程とを備え、上記判断する工程においてチャンバ10内の水位が下限水位未満であると判断された場合、ヒータ12を冷却する工程の後、給水する工程が開始される。
このようにすれば、チャンバ10内の水位が下限水位未満であって、チャンバ10内のヒータ12が高温である可能性のある場合にのみ、ヒータ12を冷却した後にチャンバ10への給水が開始される。チャンバ10内の水位が下限水位以上であれば、チャンバ10内に液体状の水が一定量貯水されているので、ヒータ12は高温ではないと考えられる。ヒータ12が高温でなく冷却を必要としない場合に、不要な工程を省略して、給水時間を短縮することができる。したがって、短時間で水をチャンバ10内へ供給することができ、給水完了までの所要時間を短縮することができる。
(実施の形態2)
図13は、実施の形態2の給水工程の詳細を示す流れ図である。図13に示す実施の形態2の給水工程は、図6に示す実施の形態1の給水工程と比較して、チャンバ10から排水するプロセスを含む点において異なっている。
具体的には、実施の形態2の給水工程では、図13に示すように、まず工程(S301)において、下限水位センサ15でチャンバ10内の水位WLを検出し、下限水位センサ15がオン状態であるか、すなわちチャンバ10内の水位WLが下限水位センサ15のセンサ部以上であるか否かを判断する。工程(S301)において下限水位センサ15がオン状態である、すなわちチャンバ10内の水位が下限水位以上であると判断された場合、次に工程(S302)において、チャンバ10から排水するプロセスが行なわれる。
図14は、チャンバ10から排水するプロセスの流れ図である。図14に示すように、まず工程(S310)において、給水開始時に開であった排気電磁弁52(図7および図8参照)が閉じられ、チャンバ10の内部空間と貯水槽20の気相部22とを非連通状態とする。同時に、第二排水電磁弁45が開けられ、チャンバ10内の水を排水経路40を経由してチャンバ10から排出できる状態にする。さらに、送風ポンプ63が起動されるとともに送風電磁弁64が開けられ、送風経路60を経由してチャンバ10内へ空気が送られる。
チャンバ10の内部空間へ外部から空気が送られることにより、チャンバ10内の気圧が上昇する。このチャンバ10の内圧によって、チャンバ10内の水がチャンバ10外へ押し出されてチャンバ10から排出されることにより、チャンバ10からの排水が開始される。
次に工程(S320)において、下限水位センサ15がオフ状態であるか、すなわちチャンバ10内の水位WLが下限水位センサ15のセンサ部の高さを下回る下限水位未満の位置にあるか否かを判断する。下限水位センサ15がオフ状態でない(つまり下限水位センサ15がオン状態に保たれている)と判断されれば、チャンバ10からの排水が続行され、続いて工程(S330)において、所定時間(本実施の形態では20秒)以内に下限水位センサ15がオフ状態に変わるか否かを判断する。所定時間以内に下限水位センサ15がオフにならない、つまり、所定時間以内に下限水位センサ15のセンサ部の高さを下回るまでチャンバ10内の水位WLが低下しない場合には、工程(S340)において排気電磁弁52が開けられ、第二排水電磁弁45が閉じられ、送風ポンプ63が停止され、送風電磁弁64が閉じられて、タイムアウトエラーとしてチャンバ10からの排水を停止する。
工程(S320)において下限水位センサ15がオフ状態であると判断されれば、続いて工程(S350)に示す所定時間(本実施の形態では5秒)経過後に、工程(S360)において排気電磁弁52が開けられ、第二排水電磁弁45が閉じられ、送風ポンプ63が停止され、送風電磁弁64が閉じられて、図14に示すチャンバ10から排水するプロセスが完了する。続いて図13に示す工程(S303)において、チャンバ10内へ給水するプロセスが行なわれる。工程(S302)でチャンバ10内の水位が下限水位未満になるまでチャンバ10から排水した後に、チャンバ10への給水が開始される。
図13の工程(S301)において下限水位センサ15がオフ状態である、すなわちチャンバ10内の水位が下限水位未満であると判断された場合、続いて工程(S304)において、ヒータ12を冷却するプロセスが行なわれる。工程(S304)のヒータ12を冷却するプロセスの完了後、続いて工程(S303)において、チャンバ10内へ給水するプロセスが行なわれる。工程(S303)のプロセスは図11に示す実施の形態1のヒータ12を冷却するプロセスと同じであり、工程(S304)のプロセスは図12に示す実施の形態1のチャンバ10内へ給水するプロセスと同じであるので、これらのプロセスは説明を省略する。
なお、上述したチャンバ10から排水するプロセスでは、工程(S310)において第二排水電磁弁45が開けられるとともに送風ポンプ63が起動されたが、変形例として、工程(S310)では第二排水電磁弁45を閉じた状態で送風ポンプ63を起動して、空気をチャンバ10内に送り、チャンバ10内の圧力を一旦上昇させてもよい。チャンバ10内の気圧が十分に上昇した時点で、次なる工程において、第二排水電磁弁45が開けられる。これにより、チャンバ10の内圧によって、チャンバ10内の水がチャンバ10外へ押し出されてチャンバ10から排出されることにより、チャンバ10からの排水が開始される。このとき、第二排水電磁弁45の開操作と同時に送風ポンプ63を停止させてもよく、送風ポンプ63の運転を継続してもよい。すなわち、排水時に、送風ポンプ63は起動していてもしていなくてもどちらでもよい。
以上説明した実施の形態2の給水工程によると、給水開始時に下限水位センサ15がオン状態であって既にチャンバ10内に水が存在している場合に、一旦チャンバ10から排水する。チャンバ10内の水位WLを下げて下限水位センサ15と上限水位センサ14との両方をオフにすることで、下限水位センサ15の検出が正しいことを確認する。その後改めてチャンバ10内への給水を開始し、上限水位センサ14がオンになった時点で給水を停止する。
つまり、実施の形態2の蒸気滅菌器1では、制御部70は、チャンバ10内の水位が下限水位以上である場合、チャンバ10内の水位が下限水位未満になるまでチャンバ10から排水し、その後給水を開始する。このようにすれば、上限水位センサ14と下限水位センサ15との両方ともについて、オン状態とオフ状態との両方を検出して、チャンバ10内の水位WLの検出が行なわれる。そのため、上限水位センサ14と下限水位センサ15とが正常に作動しているのかどうかを、より確実に確認することができる。
蒸気滅菌器1の動作において、最も回避すべきなのは、チャンバ10の空焚き、すなわちチャンバ10内に水が無い状態でヒータ12をオンにして加熱することである。上限水位センサ14と下限水位センサ15とのいずれかが故障し、実際にはチャンバ10に水がないにもかかわらず、チャンバ10内に所定の水位WLの水があると誤検出した場合に、チャンバ10の空焚きが発生する可能性があり危険である。
そこで、実施の形態2のように、上限水位センサ14と下限水位センサ15との正常な動作を確認すれば、給水完了までの時間は若干長くなるものの、上限水位センサ14または下限水位センサ15の故障によりチャンバ10の空焚きが発生することを、より確実に防止することができる。
なお、実施の形態1および2の説明においては、給水経路30に給水ポンプ32が設けられており、給水ポンプ32が貯水槽20から移送する水がチャンバ10へ供給される例について説明した。但し、蒸気滅菌器1は給水ポンプ32を必ずしも備えなくてもよい。つまり、貯水槽20の配置および貯水槽20からチャンバ10へ水を供給する給水経路30の配置を適切に設計することにより、貯水槽20内の水位とチャンバ10内の水位の差によってチャンバ10へ給水する自然給水が可能なようにすれば、給水ポンプ32を設けなくてもよい。但し、給水ポンプ32を備えることにより、上述した通り、チャンバ10への給水完了までの所要時間をより短縮できる効果が得られると考えられる。
また、実施の形態1および2の説明においては、給水開始時にヒータ12が高温の場合、チャンバ10内へ流入する水にヒータ12から放熱させることによりヒータ12の冷却を行なったが、ヒータ12の冷却はこれに限られない。たとえば、ヒータ12が十分に冷却されるまでの待ち時間を設定してもよく、またはチャンバ10内へ送風することによりヒータ12を冷却してもよい。但し、ヒータ12を水冷すれば、上述した通り、ヒータ12をより短時間で冷却できる効果が得られるので好ましい。
また、実施の形態1および2の説明においては、チャンバ10内に上限水位センサ14と下限水位センサ15との、二つの水位センサが配置されている例について説明した。水位センサは、チャンバ10の空焚きを防止できるとともに、チャンバ10内の水位WLが所定の値に達したことを検出して給水停止する制御のために使用される機能を果たすことができればよい。上記の機能を果たすことができるものであれば、チャンバ10内に一つのみの水位センサを配置する構成であってもよい。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。