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JP5658585B2 - 組合せピストンリング - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関用ピストンリングに関し、特にガスシール性に優れた組合せピストンリングに関する。
自動車のエンジン等の内燃機関に使用されるピストンには、シリンダボア内を摺動する際のガスシール性、オイルシール性、シリンダボアへの伝熱性を得るため、一般的には、ピストン外周に設けられたリング溝に略円環状の金属製ピストンリングが配される。通常3本のピストンリングがリング溝に装着され使用されるが、ピストンリングには、外周張力を発生させるため、またピストンへの装着の際の拡張のために切り欠き(以下「合口」という。)が円周の一部に設けられる。エンジンの低温始動時や高温運転時の合口突き当たりによるピストンリングやシリンダへの傷付きや焼付発生を防止するため、合口の隙間は一定量以上必要であり、よって、そこから不可避的に燃焼ガスが漏出する。燃焼ガスの漏出はエンジンの圧縮率を低下させ、結果的にピストンに与える仕事量としては不十分になる。
漏出する燃焼ガス(以下「ブローバイガス」という。)を少なくする手段として、金属製ピストンリングに通称「ダブルアングル合口」(特許文献1)なる特殊合口を用いて、合口からのガス漏出面積を縮小する構造が使用されている。しかし、ダブルアングル合口の加工は複雑で難しく、加工費の上昇、合口部の折損等の問題がある。
また、特許文献2には合成樹脂製ピストンリングにステップ状合口が形成されたものが開示されている。この合口形状は、薄刃カッターを用いた押し切りにより比較的容易に形成される。さらにトランスミッション等のオイルシールに使用されるシールリングでは、射出成形により成形されたトリプルステップ形状の合口をもつシールリングが使用されている(特許文献3)。このように樹脂材を用いれば、複雑形状の合口をもつピストンリングの成形も比較的容易に行われるが、金属製ピストンリングに比べ耐熱性が低く、燃焼室側からの燃焼ガスの影響で、特に樹脂製ピストンリングの燃焼室側側面に局部的な変形や溶融が生じる虞もあり未だ実用化されていない。
実開昭59−126158号公報 実開平4−41153号公報 特開2003−1584号公報
本発明の目的は、ブローバイ対策に有効な特殊合口の形成を工業的に可能とする樹脂材を使用するという前提で、燃焼室側からの燃焼ガスを受けても燃焼室側側面に局部的な変形や溶融が生じないピストンリングを提供することである。すなわち、特にガスシール性に優れた組合せピストンリングを提供することを目的とする。
本発明の組合せピストンリングは、高強度耐熱樹脂からなり上下側面及び外周面からみてステップ形状となる合口部を有する(以下「トリプルステップ合口形状」という。)ピストンリング本体と、前記ピストンリング本体の内周部に装着されて前記ピストンリング本体を半径方向外方に押圧するバネとからなる組合せピストンリングにおいて、少なくとも前記ピストンリング本体の燃焼室側側面に耐熱性皮膜を有することを特徴とする。この場合、まず基本的に、ピストンリング本体を構成する樹脂は高強度耐熱樹脂からなることが重要であり、また、ピストンリング本体の燃焼室側側面に形成する皮膜も、燃焼ガスを受けても十分耐えうるピストンリング本体以上の耐熱性を備えている必要がある。燃焼ガスからの熱エネルギーをピストンリング本体ではなくシリンダに逃がすという観点では、熱伝導性の高い皮膜が適しており、逆に燃焼ガスからの熱エネルギーをピストンリング本体に伝えないという観点では、熱伝導性の低い皮膜が適している。
ピストンリング本体を構成する高強度耐熱樹脂は、いわゆる耐熱性に優れたスーパーエンジニアリングプラスチックであれば使用できるが、特にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)からなるグループから選択された少なくとも一つを含む樹脂であることが好ましい。また、これらの高強度耐熱樹脂がカーボン繊維又はガラス繊維で強化されていることがさらに好ましい。
ピストンリング本体の燃焼室側側面に形成する皮膜は、まず、燃焼ガスからの熱エネルギーをピストンリング本体ではなくシリンダに逃がすという観点では、一般的な、金属皮膜が使用できるが、導電性をもたない樹脂にも適用可能な無電解めっきによる金属皮膜が便利に使用できる。特にCu若しくはNiの金属めっき皮膜が好ましく、Cu若しくはNiにP、Co、Cr、Mo、Ti、SiC、Si3N4、Al2O3、B4C、ダイヤモンド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、BN、黒鉛からなるグループから選択された少なくとも一つを複合した複合めっき皮膜は耐摩耗性も付与されているためさらに好ましい。熱伝導性に注目すれば、皮膜がダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon、「DLC」ともいわれる。)を含むことも好ましい。
燃焼ガスからの熱エネルギーをシリンダに逃がすためには、燃焼室側側面に被覆された皮膜が直接シリンダ壁に接触することが好ましく、そのためにはピストンリング本体の外周面にも燃焼室側側面の皮膜と一体で同材質の皮膜を被覆することが好ましい。もちろんピストンリング全面に被覆することも好ましい。
次に、燃焼ガスからの熱エネルギーをピストンリング本体に伝えないという観点では、耐熱性があって熱伝導性の低いスーパーエンジニアリングプラスチックのコーティング皮膜が使用できるが、特にポリベンゾイミダゾール(PBI)及び/又はポリイミド(PI)を含む樹脂皮膜、又はオルガノポリシロキサン(P-Si)を含む皮膜が好ましい。
以上の組合せピストンリングをさらに確実に機能させるためには、ピストンリング本体の燃焼室側側面に皮膜を有する上記のピストンリング本体の燃焼室側側面に、ピストンリング本体の幅よりも薄幅の金属製ピストンリングを、さらに配置することが好ましい。
本発明の組合せピストンリングは、上下側面及び外周面からみてステップ形状となるトリプルステップ形状の特殊合口部を有しているので、合口からのガス漏出面積を著しく縮小することができ、またピストンリング本体が射出成形可能な高強度耐熱樹脂からできているので、加工費上昇や合口部の折損等の問題も解決される。さらに、ピストンリング本体の燃焼室側側面に十分な耐熱性を備えた皮膜を有しているので、燃焼ガスによるピストンリング本体への熱負荷が低減され、燃焼室側側面に局部的な変形や溶融が生じるという問題を回避することができ、ガスシール性に極めて優れた組合せピストンリングを提供することが可能となる。
本発明のピストンリング本体の合口部を斜め上方からみた射視図である。 ピストンのリング溝に装着され、ピストンリング本体を押圧するバネが板バネからなる本発明の組合せピストンリングを示す図である。 ピストンのリング溝に装着され、ピストンリング本体を押圧するバネがコイルバネからなる本発明の組合せピストンリングを示す図である。 ピストンのリング溝に装着され、ピストンリング本体の燃焼室側側面と外周面に同材質の皮膜が形成された本発明の組合せピストンリングを示す図である。 ピストンのリング溝に装着され、ピストンリング本体の燃焼室側側面に薄幅の金属製ピストンリングをさらに配置し、ピストンリング本体を押圧するバネが板バネからなる本発明の組合せピストンリングを示す図である。 ピストンのリング溝に装着され、ピストンリング本体の燃焼室側側面に薄幅の金属製ピストンリングをさらに配置し、ピストンリング本体を押圧するバネがコイルバネからなる本発明の組合せピストンリングを示す図である。
まず、本発明の組合せピストンリングのピストンリング本体1は、上下側面及び外周面からみてステップ形状となる合口部2を有する。この合口形状は、図1に示すいわゆるトリプル(上下側面と外周面の3個所)ステップ形状であって、幾何学的には完全に遮断された合口形状となる。したがって、ブローバイガスを極度に縮小することが可能となりガスシール性に優れたピストンリングを提供することができる。このような複雑形状の合口部を金属製ピストンリングで形成することは極めて困難であるため、本発明では金属に代わって高強度耐熱樹脂を使用する。高強度耐熱樹脂としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)やポリフェニレンサルファイド(PPS)に代表されるスーパーエンジニアリングプラスチックが使用できるが、さらに耐熱性の高いポリベンゾイミダゾール(PBI)も好ましく使用できる。これらの高強度耐熱樹脂は射出成形が可能であり、複雑形状の合口部も容易に形成できる。もちろん粉末からリング状に圧縮成形し合口部を薄刃カッターで形成することも可能である。
上記高強度耐熱樹脂は、カーボン繊維やガラス繊維を含むことによりさらに耐熱性を高め、また高強度化することができる。すなわち、繊維強化した高強度耐熱樹脂とすることができる。このようなカーボン繊維やガラス繊維の配合割合は10〜40重量%が好ましい。
図2(a)及び図2(b)は、本発明の組合せピストンリングをピストン6のリング溝5に装着し、シリンダ7のボア内に挿入した状況を示している。本発明の組合せピストンリングは、ピストンリング本体1とピストンリング本体1を半径方向外方に押圧するバネ4(4′)とからなり、ピストンリング本体の燃焼室側側面には皮膜3を有している。バネ4(4′)は図2(a)では板バネ4、図2(b)ではコイルバネ4′を示しているが、ピストンリング本体1を半径方向外方に押圧する機能があれば、これらに限定されるものではない。また、シリンダ壁7と摺動するピストンリング本体の外周面1は、ストレート形状だけでなく用途に応じ、バレルフェース、テーパーフェース等、様々な形状にすることができる。例えば、トップリング(燃焼室側から数えて1番目のピストンリング)に使用される場合はバレルフェースが好ましく、セカンドリング(燃焼室側から数えて2番目のピストンリング)に使用される場合はテーパーフェースが好ましい。
ピストンリング本体1の燃焼室側側面の皮膜3は、前述したように、燃焼ガスを受けても十分耐えうるピストンリング本体1以上の耐熱性を備えている必要がある。さらに、燃焼ガスからの熱エネルギーをピストンリング本体1ではなくシリンダボアに逃がすという観点では、熱伝導性の高い皮膜が適しており、逆に燃焼ガスからの熱エネルギーをピストンリング本体1に伝えないという観点では、熱伝導性の低い皮膜が適している。いずれの皮膜にせよ、皮膜3は、塗布、スプレー、ディッピング、めっき、物理蒸着、化学蒸着等により形成できる。熱伝導性の高い金属皮膜を被覆するには、ピストンリング本体が樹脂であることから、特に無電解めっきが便利に使用でき、前述したCu若しくはNiの金属めっき皮膜、又はCu若しくはNiにP、Co、Cr、Mo、Ti、SiC、Si3N4、Al2O3、B4C、ダイヤモンド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、BN、黒鉛からなるグループから選択された少なくとも一つを複合した複合めっき皮膜が好ましい。無電解めっき皮膜の厚さは、1〜50μmが好ましく、5〜30μmがさらに好ましい。また、DLCは物理蒸着又は化学蒸着で被覆でき、ダイヤモンドに構造的に近い水素含有量の少ないものは物理蒸着で形成される。生産性を考慮すると化学蒸着により形成するのが好ましい。DLC皮膜の厚さは、0.1〜10μmが好ましく、2〜7μmがさらに好ましい。図3は、燃焼ガスからの熱エネルギーをピストンリング本体1ではなくシリンダ壁7に逃がすという観点にたった実施態様であり、ピストンリング本体1の外周面にも燃焼室側側面の皮膜3と一体で同材質の皮膜3′を被覆している。熱伝導性の低い皮膜であるポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリイミド(PI)、オルガノポリシロキサン(P-Si)の皮膜については、塗布、スプレー、ディッピング等により被覆される。皮膜3の厚さは0.5〜50μmが好ましく、1〜30μmがさらに好ましい。これらの皮膜3の適用部分は、少なくとも燃焼室側側面としているが、もちろん外周面を除くその他の面に被覆してもよい。生産性等を考慮のうえ決定されればよい。なお、当然のことではあるが、過酷な摺動面となる外周面には、耐摩耗性皮膜を適宜被覆することができる。燃焼室側側面の皮膜3と同材質である必要はない。
図4(a)及び図4(b)は、本発明の組合せピストンリングの燃焼室側側面に、ピストンリング本体の幅よりも薄幅の金属製ピストンリング8をさらに配置した状況を示している。薄幅金属ピストンリング8の配置により、ピストンリング本体1への熱負荷を著しく低減することができ、よって、この組合せピストンリングは、特に過酷な場合、例えばトップリングに好ましく適用される。薄幅金属ピストンリング8としては、組合せオイルリングのサイドレールとして知られている張力のほとんどないピストンリングを使用することができる。図4(a)はバネに板バネを使用した例で、ピストンリング本体だけでなく薄幅金属ピストンリング8をも半径方向外方に押圧できるような幅を持たせた例であり、ピストンリングの外周シール部分を二重構造とすることができ、ブローバイガスを著しく低減することが可能となる。また、図4(b)では、薄幅金属ピストンリング8を半径方向外方に押圧できず、ピストンリング本体の燃焼室側側面を単に熱遮蔽する機能のみを有する例である。燃焼ガスからの熱エネルギーをシリンダボアに逃がすという観点では、薄幅金属ピストンリング8をも半径方向外方に押圧しシリンダ壁と接触させることが好ましい。
実施例1(J1)
粉末状ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)に炭素繊維を配合し、押出機においてペレットを所定量作製した。次に、合口トリプルステップ形状、外周ストレート形状のピストンリングに、所定の条件にて前記ペレットを用いて射出成形した。ここで、ピストンリング側面の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で0.4 μmであった。得られたピストンリングを2枚ずつ重ね合わせ、ピストンリング側面の一方がめっき液に触れるように所定の治具に合計50枚セットし、さらに外周面をテープでシールし、Ni-Pの無電解めっきを行った。Ni-P皮膜の厚さは約20μmであった。これにより、一方の側面にNi-P皮膜が形成された炭素繊維強化PEEK材のトリプルステップ合口形状のピストンリングが作製された。
エンジン試験(1)
水冷4サイクルの自然吸気式ガソリンエンジンを用いて、Ni-P皮膜が燃焼室側に配置されるように、且つ約5Nの張力が働くように内周側に板バネをセットした実施例1のピストンリングをピストンのトップリング溝(セカンドリング及びオイルリングについては前記エンジンにセットされていたものを使用)に装着し、ブローバイ量の測定を行った。運転条件は、4,000rpm、全負荷(WOT: Wide Open Throttle)条件とした。後述する比較例1のブローバイ量を100とするとき、実施例1のブローバイ量は約12となり、約1/8に低減することが確認された。
エンジン試験(2)
エンジン試験(1)の終了後、実施例1のピストンリングをセットしたまま、5000rpm、全負荷で48時間連続運転の耐久試験を行った。終了後、ピストンリングを取り出し観察したが、特に表面に凹凸等の損傷は見られなかった。また、燃焼室側面の表面粗さについて、試験前と試験後の10点平均粗さ(Rz)を測定した結果、それぞれ、3.1μmと3.3μmであった。
比較例1(H1)
上記エンジンに本来セットされていたトップリング(外周CrN皮膜付バレルフェース、合口ストレート形状、合口隙間0.25 mm)を用いて、上記エンジン試験(1)によるブローバイ量の測定を行った。その結果を前述したように100とした。実施例1に比べ約8倍のブローバイ量が観察された。
比較例2(H2)
ピストンリング側面に何も被覆しない実施例1の炭素繊維強化PEEK材のトリプルステップ合口形状のピストンリングについて、上記エンジン実験(2)を行った。終了後、ピストンリングを取り出し観察した結果、表面にむしれや凹凸が観察された。燃焼室側面の試験前と試験後のRzは、それぞれ、2.1μmと18.4μmであった。
実施例2〜3(J2〜J3)
Ni-Pの無電解めっきの代わりに、Cuの無電解めっき及びSi3N4を分散したNi-P無電解複合めっきとした以外は実施例1と同様にして炭素繊維強化PEEK材のトリプルステップ合口形状のピストンリングを作製した。実施例2〜3の皮膜種類、皮膜厚さ、エンジン実験(1)の4,000 rpmにおけるブローバイ量、エンジン実験(2)によるピストンリング側面の試験前及び試験後の表面粗さRzと外観観察結果について、実施例1及び比較例2の結果とともに、表1に示す。なお、各実施例のブローバイ量は、比較例1のブローバイ量を100として、それぞれ比率換算したものである。
実施例4(J4)
Ni-Pの無電解めっきの代わりに、CH4ガスを原料、H2ガスをキャリアガスとしてプラズマCVDによるダイヤモンドライクカーボン(DLC)皮膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維強化PEEK材のトリプルステップ合口形状のピストンリングを作製した。ピストンリングの一方の側面にDLC皮膜を形成する方法としては、実施例1で使用した無電解メッキ用の治具に類似の治具を用いた。但し、外周をシールするテープには耐熱テープを用いた。実施例2〜3と同様に、エンジン実験(1)及びエンジン実験(2)による試験結果を表1に示す。
実施例5〜6(J5〜J6)
実施例3及び実施例4の側面に形成したSi3N4分散Ni-P皮膜及びDLC皮膜が、外周面にも被覆された炭素繊維強化PEEK材のトリプルステップ形状のピストンリングを作製した。無電解めっきの皮膜厚さは外周面も側面もほぼ同じ厚さであったが、DLCについては外周面のほうが約1.7倍厚かった。実施例2〜4と同様に、エンジン実験(1)及びエンジン実験(2)による試験結果を表1に示す。
実施例7〜8(J7〜J8)
Ni-Pの無電解メッキの代わりに、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリアミド(PA)をバインダーとして二硫化モリブデンを10質量%分散した樹脂皮膜をメタルマスク印刷により形成した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維強化PEEK材のトリプルステップ合口形状のピストンリングを作製した。実施例2〜6と同様に、エンジン実験(1)及びエンジン実験(2)による試験結果を表1に示す。
Figure 0005658585
実施例1〜8(J1〜J8)の何れにおいてもブローバイ量は比較例1を100とすると、4,000 rpmで13以下であり、比較例1(H1)のストレート合口のスチールリングに比べ大幅に低減された。また、ピストンリングの燃焼室側側面にNi-P、Cu、Si3N4分散Ni-Pの無電解めっき、DLC皮膜、又はPBI、PAの樹脂皮膜を形成したピストンリングは、比較的過酷な条件のエンジン試験においても表面に特に損傷も、表面粗さの著しい増大を招くこともなく試験を終えることができた。皮膜がピストンリングの側面だけでなく、外周面にも形成された場合は、ブローバイ量はさらに低減された。
実施例9(J9)
実施例1〜8(J1〜J8)と同じ寸法及び形状のもので、合口トリプルステップ形状、外周バレル形状ではあるが、内周側にコイルバネを収容できる溝が形成された形状とした以外は実施例1と同様にして、実施例3と同じSi3N4分散Ni-P皮膜を側面に形成したピストンリングを作製した。皮膜の厚さは15μmであった。約5Nの張力が生じるようなコイルバネをピストンリングの内周にセットして、エンジンに装着し、実施例2〜8と同様に、エンジン実験(1)及びエンジン実験(2)を行った結果、比較例1のブローバイ量を100とするとき、ブローバイ量は15となり、試験前と試験後の表面粗さ(Rz)は2.4μmと2.5μmであった。
実施例10(J10)
実施例1で用いた炭素繊維/PEEK複合材料のペレットから、実施例1で用いたピストンリングの幅寸法を4/5とし、合口トリプルステップ形状、外周バレル形状のピストンリングを射出成形した。このピストンリングの一方の側面に実施例3と同じようにSi3N4/Ni-P複合めっき皮膜を形成した。さらに、組合せオイルコントロールリングのサイドレールに類似の、下部のピストンリング幅寸法の1/4の幅寸法を有するマルテンサイト系ステンレス鋼製薄幅ピストンリングを用意し、実施例1〜9で用いた板バネと組み合わせて、実施例1〜9に用いたエンジンに装着した。実施例2〜9と同様に、エンジン実験(1)及びエンジン実験(2)を行った結果、比較例1を100とすると、ブローバイ量は約9、試験前と試験後の表面粗さ(Rz)は2.1μmと2.1μmであった。
1 ピストンリング本体
2 合口
3 側面皮膜
3′ 外周皮膜
4 板バネ
4′ コイルバネ
5 リング溝
6 ピストン
7 シリンダ
8 薄幅金属ピストンリング

Claims (8)

  1. 高強度耐熱樹脂からなり上下側面及び外周面からみてステップ形状となる合口部を有するピストンリング本体と、前記ピストンリング本体の内周部に装着されて前記ピストンリング本体を半径方向外方に押圧するバネとからなる組合せピストンリングにおいて、少なくとも前記ピストンリング本体の燃焼室側側面に皮膜を有することを特徴とする組合せピストンリング。
  2. 前記ピストンリング本体を構成する前記高強度耐熱樹脂がポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリベンゾイミダゾールからなるグループから選択された少なくとも一つを含む樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の組合せピストンリング。
  3. 前記ピストンリング本体を構成する前記高強度耐熱樹脂がカーボン繊維又はガラス繊維で強化されたことを特徴とする請求項2に記載の組合せピストンリング。
  4. 前記皮膜がCu若しくはNiの金属めっき皮膜又はCu若しくはNiにP、Co、Cr、Mo、Ti、SiC、Si3N4、Al2O3、B4C、ダイヤモンド、PTFE、BN、黒鉛からなるグループから選択された少なくとも一つを複合した複合めっき皮膜であることを特徴とする請求項1に記載の組合せピストンリング。
  5. 前記皮膜がダイヤモンドライクカーボンを含むことを特徴とする請求項1に記載の組合せピストンリング。
  6. 前記ピストンリング本体の外周面に前記皮膜と同材質の皮膜を被覆することを特徴とした請求項4又は5に記載の組合せピストンリング。
  7. 前記皮膜がポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、オルガノポリシロキサンからなるグループから選択された少なくとも一つを含む皮膜であることを特徴とする請求項1に記載の組合せピストンリング。
  8. 前記ピストンリング本体の燃焼室側側面に前記ピストンリング本体の幅よりも薄幅の金属製ピストンリングをさらに配置したことを特徴とする請求項1に記載の組合せピストンリング。
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