JP5657510B2 - 無灰炭の製造方法 - Google Patents
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Description
以下、溶剤についてさらに詳しく説明する。溶剤は、例えば芳香族溶剤である。芳香族溶剤には非水素供与性溶剤と水素供与性溶剤とがある。
非水素供与性溶剤は、石炭誘導体であり、主に石炭の乾留生成物から精製した溶剤である。非水素供与性溶剤の主な成分は2環芳香族であり、この2環芳香族は例えば、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン等である。非水素供与性溶剤のその他の成分は、それぞれ脂肪族側鎖を有するナフタレン類、アントラセン類、フルオレン類、または、これらにビフェニルや長鎖脂肪族側鎖を付加したアルキルベンゼン等である。非水素供与性溶剤は、加熱状態でも安定であり、石炭に対して大きな溶解力を持つ(石炭との親和性に優れている)、石炭の成分の抽出率が高い。非水素供与性溶剤は、蒸留等の方法で容易に回収可能な溶剤である。
水素供与性化合物(石炭液化油を含む)は、例えば1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン等である。スラリー調製工程で用いられる溶剤として水素供与性溶剤を用いた場合、非水素供与性溶剤を用いた場合に比べ、無灰炭の収率が向上する。
抽出工程でのスラリーの加熱時間(抽出時間)は、溶剤可溶成分の溶剤への十分な溶解が可能な時間とすることが好ましく、また、溶剤可溶成分の抽出率が十分高くなるような時間が好ましい。具体的には、加熱時間は、5〜60分間の範囲が好ましく、20〜40分間の範囲がより好ましい。なお、予熱器3でスラリーを加熱した場合の加熱時間は、予熱器3および抽出槽4での加熱時間を合計したものとする。
抽出工程は、不活性ガス(例えば安価な窒素が好ましい)の存在下で行うことが好ましい。抽出工程でスラリーにかける圧力は、抽出の際の温度や用いる溶剤の蒸気圧にもよるが、1.0〜2.0MPaの範囲が好ましい。
また、無灰炭取得工程は、次に述べる混合工程で混合された複数種の石炭の成分を含む溶液部から溶剤を分離して無灰炭を得る工程である。なお、以下では各工程が行われる装置を括弧を付して示す場合がある。
混合工程は、無灰炭にしたときの流動性(後述)が異なる複数種の石炭を混合する工程、または、無灰炭にしたときの流動性が異なる複数種の石炭の成分を混合する工程である。混合工程は、無灰炭取得工程よりも前の段階で、複数種の石炭または石炭の成分を混合する工程である。「無灰炭取得工程よりも前の段階」は、無灰炭を取得するための工程のうち無灰炭取得工程よりも前の段階を意味し、副生炭のみを取得するための工程に進んだ段階を含まない。複数種の石炭の成分を混合するタイミングには、例えば以下のパターンがある。
具体的には例えば、石炭Aを含むスラリーと、石炭B2とを混合する(石炭Aを含むスラリーの上から石炭B2を添加する)。
また例えば、石炭Aを含むスラリーと、石炭B2を含むスラリーとを混合しても良い。さらに詳しくは、第1のスラリー調製工程により石炭Aを含むスラリーを調製し、これと並行して、第2のスラリー調製工程により石炭B2を含むスラリーを調製し、これらのスラリー同士を混合しても良い。
また例えば、予熱工程(予熱器3)を経た石炭Aを含むスラリーと、石炭B3(又は石炭B3を含むスラリー)とを混合しても良い。
混合割合決定段階は、混合工程で混合される複数種の石炭または石炭の成分の混合割合(以下、単に「混合割合」とも言う)を決定する段階である。混合割合決定段階は、上述した各工程(連続的に行われる一連の製造工程)に先立って事前に行われる(混合割合を予め準備しておく)。混合割合決定段階は、複数種の石炭または石炭の成分それぞれを無灰炭にしたときの流動性に関するデータD(以下、単に「データD」とも言う)に基づいて混合割合を決定する段階である。データDは、複数種の石炭それぞれから実際に得られた無灰炭の流動性の指標であり、例えば後述する最高流動度MFなどである。また、データDは、複数種の石炭それぞれを無灰炭にしたときの流動性と関係がある指標であって、複数種の石炭それぞれを実際に無灰炭にしなくても得られる指標でも良い。データDは、例えば下記変形例で説明する石炭の平均分子量でも良い。
次に、複数種の石炭それぞれから実際に無灰炭を得て流動性に関するデータDを得る場合について説明する。混合割合決定段階は、複数種の石炭それぞれから無灰炭を得る個別無灰炭取得段階と、個別無灰炭取得段階で得られた無灰炭それぞれの流動性を測定する流動性測定段階とを備える。
次に、混合工程で混合される複数種の石炭の条件を説明する。複数種の石炭は、無灰炭α又はβと、無灰炭γと、で流動性の相違が十分生じるように選択される。以下、無灰炭α及びβは、それぞれ単体の石炭A及びBから得ることが可能な無灰炭であれば良く、実際に得る必要はない(後述する(効果2)を除く)。
コークスの原料炭であるO炭と、一般炭(発電用、ボイラー用など)であるM炭とを混合して無灰炭を製造した。O炭及びM炭は、いずれも「れき青炭」であり、JIS M1002の規定ではBまたはCの区分に分類される。O炭自体は優れた流動性を示す強粘炭である。単体のO炭を原料として得られた無灰炭も優れた流動性を示す。O炭の水分量は2.0wt%、灰分量は9.4wt%である。M炭自体は、ほとんど流動性を示さない非粘結炭であり、コークスの原料としては使用できない。単体のM炭を原料として得られた無灰炭は流動性を示すが、O炭のみを原料として得られた無灰炭よりは流動性は小さい。M炭の水分量は1.9wt%、灰分量は12.9wt%である。
・「O炭無灰炭」:単体のO炭を原料として製造した無灰炭
・「M炭無灰炭」:単体のM炭を原料として製造した無灰炭
・「O炭添加M炭無灰炭」:M炭を90質量%、O炭を10質量%の混合割合で混合して製造した無灰炭
次に、図1を参照して無灰炭の製造方法の効果を説明する。
無灰炭の製造方法は、石炭と溶剤とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程(スラリー調製槽2)と、スラリー調製工程で調製されたスラリーを加熱して溶剤に可溶な石炭の成分を抽出する抽出工程(抽出槽4)と、抽出工程で抽出された抽出物から溶液部を分離する分離工程(溶液分離装置5)と、分離工程で分離された溶液部から溶剤を分離して無灰炭を得る無灰炭取得工程(溶剤回収装置8)と、を備える。
この無灰炭取得工程(溶剤回収装置8)の段階では、無灰炭にしたときの流動性が異なる複数種の石炭の成分が溶液部(液体)に均一に混合されている。したがって、無灰炭の流動性を制御できるとともに、無灰炭の流動性を均一にできる。
(流動性の制御)混合工程では、無灰炭にしたときの流動性が異なる複数種の石炭または石炭の成分が混合される。このとき混合される複数種の石炭または石炭の成分の混合割合に応じて、無灰炭中に含まれる各種有機成分の割合が決まる。この有機成分の割合に応じて、無灰炭の流動性が決まる。したがって、複数種の石炭または石炭の成分の混合割合に応じて、無灰炭の流動性を制御できる。その結果、用途に応じた流動性を持つ無灰炭を得ることができる。また、無灰炭の流動性を制御できる結果、原料の石炭が変わった場合に生じる無灰炭の流動性の変化を抑制できる。
(流動性の均一性)仮に、複数種の石炭それぞれから別個に無灰炭(固体)を製造し、製造された複数種の無灰炭を混ぜるとする。このように混ぜた無灰炭には、流動性が高い部分と低い部分との偏り(流動性の偏在)が生じやすい。流動性の偏在がある無灰炭をコークスの原料として用いると、コークスの強度の高い部分と低い部分との偏りが生じてしまう。一方、無灰炭取得工程よりも前の段階で複数種の石炭の成分を混合する場合、無灰炭取得工程の段階では複数種の石炭の成分が溶液部(液体)で均一に混合されている。よって、無灰炭の流動性を均一にできる。したがって、上記の流動性の偏在の問題を抑制できる。
無灰炭の製造方法は、混合工程で混合される複数種の石炭または石炭の成分の混合割合を事前に決定する混合割合決定段階をさらに備える。混合割合決定段階は、複数種の石炭または石炭の成分それぞれを無灰炭にしたときの互いに異なる流動性に関するデータに基づいて混合割合を決定する段階である。
混合割合決定段階で混合割合が事前(上記各工程よりも前)に決定されるので、無灰炭の流動性をより確実に制御できる。
混合割合決定段階は、複数種の石炭それぞれから無灰炭を得る個別無灰炭取得段階と、個別無灰炭取得段階で得られた無灰炭それぞれの流動性を測定する流動性測定段階と、を備える。混合割合決定段階は、流動性測定段階で測定された流動性に基づいて混合割合を決定する工程である。
この構成により、無灰炭の流動性をより確実に制御できる。
複数種の石炭それぞれから得られる無灰炭の最高流動度LogMFの差は、1.0(Log(ddpm))以上である。
最高流動度LogMFの差が小さすぎると、複数種の石炭を混合しない場合と混合する場合とで無灰炭の流動性が変わらず(又はほぼ変わらず)、複数種の石炭を混合させる意味がなくなってしまう。一方、最高流動度LogMFの差が上記の条件を満たす場合は、複数種の石炭を混合しない場合と混合する場合とで無灰炭の流動性を確実に変えることができる。
上述したように、混合割合決定段階は、複数種の石炭それぞれを無灰炭にしたときの流動性に関するデータDに基づいて混合割合を決定する段階である。また、上述したように、データDは、複数種の石炭それぞれを実際に無灰炭にしなくても得られるものでも良い。具体的には、データDは、複数種の石炭A及びBそれぞれの平均分子量Mでも良い。以下、この点をさらに説明する。
原料の石炭の平均分子量Mと、この単体の石炭から得られた無灰炭の流動性と、には相関関係がある。さらに詳しくは、平均分子量が小さい(低分子量の割合が多い)ほど流動範囲(軟化開始温度と固化温度との差)が広くなり、最高流動度MFが大きくなる。平均分子量が大きい(高分子量の割合が多い)ほど流動範囲が狭くなり、最高流動度MFが小さくなる。
混合工程で混合される複数種の石炭の条件は次の通りである。石炭Aと石炭Bとで平均分子量Mは互いに異なる。好ましくは、石炭Aと石炭Bとの平均分子量の差(差の絶対値)は、30以上である。
なお、上述した最高流動度LogMFの差の条件を満たすように、平均分子量Mの差を設定しても良い。また、この平均分子量Mの差の条件を満たした結果、上述した最高流動度LogMFの差の条件が満たされることになっても良い。また、最高流動度LogMFの差の条件と平均分子量の差との一方のみ満たしても良い。
次に、この変形例の無灰炭の製造方法の効果を説明する。混合割合決定段階は、複数種の石炭それぞれの平均分子量を測定する分子量測定段階を備える。混合割合決定段階は、分子量測定段階で測定された平均分子量に基づいて混合割合を決定する工程である。
よって、複数種の石炭それぞれから無灰炭を製造しなくても(上述した個別無灰炭取得段階を経なくても)、複数種の石炭それぞれを無灰炭にしたときの流動性に関するデータDが得られる。
複数種の石炭それぞれの平均分子量Mの差は、30以上である。
平均分子量の差が小さすぎる場合は、複数種の石炭の成分を混合しない場合と混合する場合とで無灰炭の流動性が変わらず(又はほぼ変わらず)、複数種の石炭の成分を混ぜる意味がなくなってしまう。一方、平均分子量Mの差が上記の条件を満たす場合は、複数種の石炭を混合しない場合と混合する場合とで無灰炭の流動性を確実に変えることができる。
上述したように、混合割合決定段階では、複数種の石炭それぞれを無灰炭にしたときの流動性に関するデータDに基づいて混合割合を決定した。このデータDとして、最高流動度MFおよび平均分子量Mの場合を説明した。しかし、データDは、複数種の石炭それぞれを無灰炭にしたときの流動性と関係があれば他のものでも良い。具体的には例えば、データDは、ある温度での流動度、固化温度、軟化開始温度、または流動範囲などでも良い。また例えば、データDは、最高流動度MF、平均分子量M、ある温度での流動度、固化温度、軟化開始温度、及び流動範囲のうち2以上を組み合わせて算出した値などでも良い。
2 スラリー調製槽
4 抽出槽
5 溶液分離装置
7 溶剤回収装置
Claims (5)
- 石炭と溶剤とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、
前記スラリー調製工程で調製された前記スラリーを加熱して前記溶剤に可溶な前記石炭の成分を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された抽出物から前記溶剤に可溶な前記石炭の成分を含む溶液部を分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された前記溶液部から前記溶剤を分離して無灰炭を得る無灰炭取得工程と、
を備える、無灰炭の製造方法において、
無灰炭にしたときの流動性が異なる複数種の石炭、または無灰炭にしたときの流動性が異なる複数種の石炭の成分を、前記無灰炭取得工程よりも前の段階で混合する混合工程と、
前記混合工程で混合される前記複数種の石炭または石炭の成分の混合割合を事前に決定する混合割合決定段階と、
を備え、
前記無灰炭取得工程は、前記混合された複数種の石炭の成分を含む溶液部から前記溶剤を分離して無灰炭を得る工程であり、
前記混合割合決定段階は、前記複数種の石炭または石炭の成分それぞれを無灰炭にしたときの互いに異なる流動性に関するデータに基づいて前記混合割合を決定する段階であることを特徴とする無灰炭の製造方法。 - 前記混合割合決定段階は、
前記複数種の石炭それぞれから無灰炭を得る個別無灰炭取得段階と、
前記個別無灰炭取得段階で得られた前記無灰炭それぞれの流動性を測定する流動性測定段階と、を備えるとともに、
前記流動性測定段階で測定された前記流動性に基づいて前記混合割合を決定する段階である、請求項1に記載の無灰炭の製造方法。 - 前記混合割合決定段階は、
前記複数種の石炭それぞれの平均分子量を測定する分子量測定段階を備えるとともに、
前記分子量測定段階で測定された前記平均分子量に基づいて前記混合割合を決定する段階である、請求項1に記載の無灰炭の製造方法。 - 前記複数種の石炭それぞれの平均分子量の差は、30以上である、請求項3に記載の無灰炭の製造方法。
- 前記複数種の石炭それぞれから得られる無灰炭の最高流動度の差は、1.0(Log(ddpm))以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の無灰炭の製造方法。
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