JP5655486B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 - Google Patents
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Description
一方、有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光する化合物を含有する発光層を陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・リン光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、更に自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、従来実用に供されてきた主要な光源、例えば、発光ダイオードや冷陰極管と異なり、面光源であることも大きな特徴である。この特性を有効に活用できる用途として、照明用光源や様々なディスプレイのバックライトがある。特に近年、需要の増加が著しい液晶フルカラーディスプレイのバックライトとして用いることも好適である。
具体的には、発光層におけるホスト材料/発光ドーパントの組み合わせが挙げられる。発光層における発光ホストに対する発光ドーパントの比率が発光層内で連続的に変化することで寿命が向上することを示している(例えば、特許文献1、2参照)が、発光ドーパントの濃度を連続的に変化させる手段として明示しているのは真空蒸着法における蒸着レートの制御のみであり、生産性に適した手段の提案とは言えない。
ウエットプロセスで、発光ドーパントの濃度を連続的に変化させ濃度勾配を設ける方法として、発光ドーパント濃度の異なる2種以上の発光層溶液の塗布を、最も陽極側に塗布する溶液の発光ドーパント/発光ホスト比が最も陰極側に塗布する溶液の発光ドーパント/発光ホスト比より高くして行い、その後乾燥するといった方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
したがって、本発明の主な目的は、高発光効率でかつ長寿命という素子自体の特性を確保しながら、輝度ムラの少ない有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することにある。
陽極、陰極および発光層が基板上に形成され、前記発光層が前記陽極と前記陰極との間に介在し、かつ、発光ホストおよび発光ドーパントを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
発光ホスト、発光ドーパントおよび溶媒から構成される塗布液であって、互いに溶媒の種類が同一で発光ドーパント/発光ホストの重量比が異なる2種以上の塗布液を、ダイコート法で積層して前記発光層を形成する工程を有し、
前記発光層を形成する工程では、前記2種以上の塗布液を1層毎に別々に吐出し、2層目以降の塗布液の塗布スピードを、1層目の塗布液の塗布スピードよりも速くするか、または2層目以降の塗布液に対する塗布直後の送風もしくは加熱を、1層目の塗布液に対する塗布直後の送風よりも短時間で実行し、前記発光層の厚さ方向で発光ドーパントの濃度勾配を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法が提供される。
たとえば、2種の塗布液を使用する場合、前記発光層を形成する工程は、第1の塗布液を吐出して第1層を形成する工程と、前記第1の塗布液とはドーパント濃度が異なる第2の塗布液を吐出して前記第1層上に第2層を形成・積層する工程とを有しており、前記第1層から前記第2層に向かう前記発光層の厚さ方向でドーパントの濃度勾配を形成する。
ダイコート法とは、ダイヘッドのスリットから塗布液を吐出すると共に、ダイヘッドもしくは基板を塗布方向に動かして塗膜を形成する方法である。
本発明では、ドーパントの拡散をよりコントロール出来るという観点から、塗布液を1層毎に別々に吐出することが好ましい。2つ以上の吐出口から同時に重層積層塗布する場合には、発光層のドーパントを拡散させる為に、異なる2種以上の塗布液は同一溶媒であることが好ましい。
この場合、ドーパント濃度が互いに異なる2種以上の塗布液のうち、最も陽極側に塗布する塗布液のドーパント濃度を、最も陰極側に塗布する塗布液のドーパント濃度より高くすることにより形成させることができる。
本発明において、発光ドーパント濃度の異なる2種以上の発光層塗布液の内、最も陽極側に塗布する塗布液の発光ドーパント/発光ホスト比は100〜30%で、最も陰極側に塗布する塗布液の発光ドーパント/発光ホスト比は20〜0%であることが好ましい。
本発明において形成した発光層中のドーパント濃度分布は、ドーパントが重原子金属を含むリン光ドーパントである場合には、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)により、膜厚方向での金属原子分布を分析することで検出することができる。
次に、本発明の有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(iii)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(iv)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
本発明に係る発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
発光層の膜厚は特に制限はないが、形成する膜の均質性や発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、且つ駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2〜200nmの範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは5nm以上、100nm以下の範囲に調整される。
本発明の有機EL素子の発光層に含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)における燐光発光の燐光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらに好ましくは燐光量子収率が0.01未満である。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、または複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
本発明に用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
本発明に用いられるホスト化合物は、カルバゾール誘導体であることが好ましく、カルバゾール誘導体であってジベンゾフラン化合物であることがより好ましい。
本発明に係る発光ドーパントとしては、蛍光ドーパント、リン光ドーパントを用いることができるが、より発光効率の高い有機EL素子を得る観点からは、本発明の有機EL素子の発光層や発光ユニットに使用される発光ドーパントとしては、上記の発光ホストを含有すると同時にリン光ドーパントを含有することが好ましい。
本発明に係るリン光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光ドーパントの発光は原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送される発光ホスト上でキャリアの再結合が起こって発光ホストの励起状態が生成し、このエネルギーをリン光ドーパントに移動させることでリン光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはリン光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光ドーパント上でキャリアの再結合が起こり、リン光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、リン光ドーパントの励起状態のエネルギーは発光ホストの励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
リン光ドーパントは、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
以下に、リン光ドーパントとして用いられる化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.,40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
本発明の有機EL素子においては、注入層は必要に応じて設けることができる。注入層としては電子注入層と正孔注入層があり、上記の如く陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
本発明でいう注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層で、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層と電子注入層とがある。
正孔注入層は、例えば、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に適用可能な正孔注入材料としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体等を含むポリマーやアニリン系共重合体、ポリアリールアルカン誘導体、または導電性ポリマーが挙げられ、好ましくはポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体であり、さらに好ましくはポリチオフェン誘導体である。
電子注入層は、例えば、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的には、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。本発明においては、上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムが好ましい。その膜厚は0.1nm〜5μm程度、好ましくは0.1〜100nm、さらに好ましくは0.5〜10nm、最も好ましくは0.5〜4nmである。
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、上記正孔注入層で適用するのと同様の化合物を使用することができるが、さらには、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
また、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)、特表2003−519432号公報に記載されているような、いわゆるp型半導体的性質を有するとされる正孔輸送材料を用いることもできる。
正孔輸送層の膜厚については、特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、フルオレン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリゾール誘導体、シロール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、8−キノリノール誘導体等の金属錯体等が挙げられる。
その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。
これらの中でもカルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ピリジン誘導体等が本発明では好ましく、カルバゾール誘導体であって本発明に係るジベンゾフラン化合物であることがより好ましい。
電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、不純物をゲスト材料としてドープしたn性の高い電子輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
有機物のアルカリ金属塩のアルカリ金属の種類としては特に制限はないが、Na、K、Csが挙げられ、好ましくはK、Cs、さらに好ましくはCsである。有機物のアルカリ金属塩としては、前記有機物とアルカリ金属の組み合わせが挙げられ、好ましくは、ギ酸Li、ギ酸K、ギ酸Na、ギ酸Cs、酢酸Li、酢酸K、酢酸Na、酢酸Cs、プロピオン酸Li、プロピオン酸Na、プロピオン酸K、プロピオン酸Cs、シュウ酸Li、シュウ酸Na、シュウ酸K、シュウ酸Cs、マロン酸Li、マロン酸Na、マロン酸K、マロン酸Cs、コハク酸Li、コハク酸Na、コハク酸K、コハク酸Cs、安息香酸Li、安息香酸Na、安息香酸K、安息香酸Cs、より好ましくは酢酸Li、酢酸K、酢酸Na、酢酸Cs、最も好ましくは酢酸Csである。
これらドープ材の含有量は、添加する電子輸送層に対し、好ましくは1.5〜35質量%であり、より好ましくは3〜25質量%であり、最も好ましくは5〜15質量%である。
有機EL素子を構成する陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In2O3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状パターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合(100μm以上程度)は、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常は、10〜1000nmの範囲であり、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に形成することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する有機EL素子を作製することができる。
本発明の有機EL素子に用いることのできる支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等ともいう)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。リジットな基板よりもフレキシブルな基板において、高温保存安定性や色度変動を抑制する効果が大きく現れるため、特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な可撓性を備えた樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等の有機EL素子の劣化を招く因子の浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。さらに該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
不透明な支持基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
本発明の有機EL素子において、発光の室温における外部取り出し効率は、1%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
本発明の有機EL素子に適用可能な封止手段としては、例えば、封止部材と電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。
封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されておればよく、凹板状でも平板状でもよい。また透明性、電気絶縁性は特に問わない。
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコーン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属または合金からなるものが挙げられる。
本発明においては、素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。さらには、ポリマーフィルムは、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3cm3/(m2・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が1×10−3g/(m2・24h)以下のものであることが好ましい。
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また、有機層を挟み支持基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機層を被覆し、支持基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。さらに該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
封止にはケーシングタイプの封止(缶封止)と密着タイプの封止(固体封止)があるが、薄型化の観点からは固体封止が好ましい。また、可撓性の有機EL素子を作製する場合は、封止部材にも可撓性が求められるため、固体封止が好ましい。
有機層を挟み支持基板と対向する側の封止膜、あるいは封止用フィルムの外側に、有機EL素子の機械的強度を高めるため、保護膜あるいは保護板を設けてもよい。特に、封止が封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。これに使用することができる材料としては、前記封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
本発明において、可撓性支持基板から陽極との間、あるいは可撓性支持基板から光出射側の何れかの場所に光取出し部材を有することが好ましい。
光取出し部材としては、プリズムシートやレンズシートおよび拡散シートが挙げられる。また、全反射を起こす界面もしくはいずれかの媒質中に導入される回折格子や拡散構造等が挙げられる。
通常、基板から光を放射するような有機エレクトロルミネッセンス素子においては、発光層から放射された光の一部が基板と空気との界面において全反射を起こし、光を損失するという問題が発生する。この問題を解決するために、基板の表面にプリズムやレンズ状の加工を施す、もしくは基板の表面にプリズムシートやレンズシートおよび拡散シートを貼り付けることにより、全反射を抑制して光の取り出し効率を向上させる。
また、光取り出し効率を高めるためには、全反射を起こす界面もしくはいずれかの媒質中に回折格子を導入する方法や拡散構造を導入する方法が知られている。
本発明の有機EL素子の製造方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の製造方法を説明する。
これら各層の形成方法としては、発光層については、前述の如くダイコート法によるウエットプロセスが好ましいが、それ以外の有機層についてもウェットプロセス(例えば、スピンコート法、キャスト法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア・ブロジェット(Langmuir Blodgett法)等を挙げることができる。)が好ましく、生産性の観点から発光層と同様にダイコート法による形成がより好ましい。
本発明に係る有機EL材料を溶解または分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒を用いることができる。また分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
該加熱処理後に密着封止あるいは封止部材と電極、支持基板とを接着剤で接着することで有機EL素子を作製する。
本発明の有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。発光光源として、例えば、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源、さらには表示装置を必要とする一般の家庭用電気器具等広い範囲の用途が挙げられるが、特にカラーフィルターと組み合わせた液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ成膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよく、素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
なお、実施例1〜4において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
(1)サンプル101の作製
陽極として150mm×150mm×1.1mmのガラス基板上に、ITO(インジウムチンオキシド)を150nm製膜した基板(NHテクノグラス製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を3000rpm、30秒でスピンコート法により製膜した後、200℃にて1時間乾燥し、膜厚30nmの第1正孔輸送層を設けた。
この基板を、窒素ガス(グレードG1)を用いた窒素雰囲気下に移し、前記正孔輸送材料であるHT−1化合物(Mw=80,000)をクロロベンゼンに0.5%溶解した溶液を、1500rpm、30秒でスピンコート法により製膜した後、160℃で30分間保持し、膜厚30nmの第2正孔輸送層とした。
(発光層組成物1)
ホスト(H−A) 0.69質量部
青色ドーパント(D−66) 0.30質量部
緑色ドーパント(D−67) 0.005質量部
赤色ドーパント(D−80) 0.005質量部
酢酸イソプロピル 100質量部
(発光層組成物2)
ホスト(H−A) 0.89質量部
青色ドーパント(D−66) 0.10質量部
緑色ドーパント(D−67) 0.005質量部
赤色ドーパント(D−80) 0.005質量部
酢酸イソプロピル 100質量部
続いて、基板を大気に曝露することなく真空蒸着装置へ取り付けた。また、モリブデン製抵抗加熱ボートにフッ化ナトリウムおよびフッ化カリウムを入れたものを真空蒸着装置に取り付け、真空槽を4×10−5Paまで減圧した後、前記ボートに通電して加熱してフッ化ナトリウムを0.02nm/秒で前記電子輸送層上に膜厚1nmの薄膜を形成し、続けて同様にフッ化カリウムを0.02nm/秒でフッ化ナトリウム上に膜厚1.5nmの電子注入層を形成した。
引き続き、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、「サンプル101(有機EL素子)」を作製した。
サンプル101の作製において、発光層の第1層,第2層を下記の方法で作製した。それ以外はサンプル101と同様にして「サンプル102(有機EL素子)」を作製した。
(2.1)発光層の第1層
上記発光層組成物1を、ダイコーター(中外炉工業社製)を用いて、塗布スピード1m/分で塗布液膜厚が5.3μmになるように吐出し、塗布後5秒後に0.5m/秒の窒素送風で乾燥させたのち120℃で30分間保持し、膜厚40nmの発光層第1層を形成した。
(2.2)発光層の第2層
上記発光層組成物2を、ダイコーターを用いて、塗布スピード1m/分で塗布液膜厚が5.3μmになるように吐出し、塗布後5秒後に0.5m/秒の窒素送風で乾燥させたのち120℃で30分間保持し、膜厚40nmの発光層第2層を形成した。
サンプル102の作製において、発光層組成物1および発光層組成物2のホスト材料(H−A)とドーパント(D−66)との濃度比を、表1のように変化させた。
それ以外はサンプル102と同様にして、「サンプル103,104(有機EL素子)」を作製した。
以上のようにして得られたサンプル101〜104の発光層中に含まれる発光ドーパントの濃度分布を、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)により分析し、膜厚方向でのIr分布を測定した。
得られた結果は表1に示す通りで、サンプル101〜103では、陽極側が最もドーパント濃度が高く、陰極側に向かって連続的にドーパント濃度が減少しているのに対し、サンプル104では、ドーパント濃度分布は陽極側から陰極側までほぼ均一であった。
作製したサンプルについて、下記のようにして外部取り出し量子効率、発光寿命及び発光面内輝度ムラを評価した。
(1)外部取り出し量子効率
作製したサンプルに対し、2.5mA/cm2定電流を印加したときの外部取り出し量子効率(%)を測定した。測定には分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング製)を用いた。
なお、量子効率は、サンプル101の測定値を100としてこれに対する相対値で表した。
作製したサンプルに対し、正面輝度1000cd/m2となるような電流を与え、連続駆動した。正面輝度が初期の半減値(500cd/m2)になるまでに掛かる時間(発光寿命)を求めた。測定には分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング社製)を用いた。
なお、発光寿命は、サンプル101の測定値を100としてこれに対する相対値で表した。
作製したサンプルに対し、2.5mA/cm2定電流を印加したときの発光面内輝度分布をPrometric(サイバネットシステム社製)で測定した。
なお、輝度分布は、発光面を均等に40分割したときの各輝度の標準偏差で表わした。数値が低いほど、輝度ムラが少ないことを表す。
表1に記載の結果より明らかなように、発光層をダイコート法で塗布し発光層の厚さ方向でドーパントの濃度勾配を形成したサンプル102,103では、量子効率、発光寿命特性に優れ、発光面積内の輝度ムラが少なく発光デバイスとして優れていることがわかる。
実施例1のサンプル102の発光層第2層の形成において、塗布スピードを表2記載の値にしてダイコートで塗布した以外は同様にして、「サンプル201〜203(有機EL素子)」を作製した。また、サンプル201〜203の発光層中に含まれる発光ドーパントの濃度分布を、実施例1同様にTOF−SIMSにより測定した。
(1)評価内容
以上にように作製したサンプル201〜203について、実施例1同様に、外部取り出し量子効率、発光寿命及び発光面内輝度ムラを評価した。
なお、外部取り出し量子効率、発光寿命は実施例1のサンプル102の測定値を100としてこれに対する相対値で表した。結果を表2に示す。
表2に記載の結果より明らかなように、発光層第2層の塗布スピードを1m/分以上で塗布してドーパントの濃度勾配を形成したサンプル202,203(サンプル102を含む。)は、外部取り出し量子効率、発光寿命も良好で、発光面積内の輝度ムラがより優れていることがわかる。
(1)サンプル301の作製
実施例1のサンプル102の発光層第2層の形成において、実施例1の発光層組成物2を、ダイコーターを用いて、塗布スピード1m/分で塗布液膜厚が5.3μmになるように吐出し、塗布後1秒後に0.5m/秒の窒素送風で乾燥させたのち120℃で30分間保持した以外は同様にして「サンプル301(有機EL素子)」を作製した。
実施例1のサンプル102の発光層第2層の形成において、実施例1の発光層組成物2を、ダイコーターを用いて、塗布スピード1m/分で塗布液膜厚が5.3μmになるように吐出し、塗布後中波長赤外線ヒーターで乾燥させたのち120℃で30分間保持した以外は同様にして「サンプル302,303(有機EL素子)」を作製した。
なお、中波長赤外線ヒーターの乾燥は、基材表面温度が100℃になるような出力条件で行い、塗布後から中波長赤外線ヒーター乾燥までの時間は表3記載の時間となるようにした。
実施例1のサンプル102の発光層第2層の形成において、実施例1の発光層組成物2を、ダイコーターを用いて、塗布スピード1m/分で塗布液膜厚が5.3μmになるように吐出し、その後、自然乾燥した以外は同様にして「サンプル304(有機EL素子)」を作製した。
(1)評価内容
作製したサンプル301〜304について、実施例1同様に、外部取り出し量子効率、発光寿命及び発光面内輝度ムラを評価した。
なお、外部取り出し量子効率、発光寿命は実施例1のサンプル102の測定値を100としてこれに対する相対値で表した。結果を表3に示す。
表3に記載の結果より明らかなように、発光層第2層のダイコートでの塗布直後5秒以内に塗布液に送風するか又は塗布液を加熱してドーパントの濃度勾配を形成したサンプル301〜303(サンプル102を含む。)は、外部取り出し量子効率、発光寿命がより優れていることがわかる。
実施例1のサンプル102の発光層第2層の形成において、実施例1の発光層組成物2の塗布液膜厚を表4にように変更する以外は同様にして「サンプル401〜405(有機EL素子)」を作製した。
また、サンプル401〜405の発光層中に含まれる発光ドーパントの濃度分布を、実施例1同様にTOF−SIMSにより測定した。
(1)評価内容
作製したサンプル401〜405について、実施例1同様に、外部取り出し量子効率、発光寿命及び発光面内輝度ムラを評価した。
なお、外部取り出し量子効率、発光寿命は実施例1のサンプル102の測定値を100としてこれに対する相対値で表した。結果を表4に示す。
表4に記載の結果より明らかなように、発光層第2層のダイコート塗布による塗布液膜厚が10μmより小さいサンプル403〜405(サンプル102を含む。)は、外部取り出し量子効率、発光寿命も良好で、発光面積内の輝度ムラがより優れていることがわかる。
Claims (3)
- 陽極、陰極および発光層が基板上に形成され、前記発光層が前記陽極と前記陰極との間に介在し、かつ、発光ホストおよび発光ドーパントを含有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
発光ホスト、発光ドーパントおよび溶媒から構成される塗布液であって、互いに溶媒の種類が同一で発光ドーパント/発光ホストの重量比が異なる2種以上の塗布液を、ダイコート法で積層して前記発光層を形成する工程を有し、
前記発光層を形成する工程では、前記2種以上の塗布液を1層毎に別々に吐出し、2層目以降の塗布液の塗布スピードを、1層目の塗布液の塗布スピードよりも速くするか、または2層目以降の塗布液に対する塗布直後の送風もしくは加熱を、1層目の塗布液に対する塗布直後の送風よりも短時間で実行し、前記発光層の厚さ方向で発光ドーパントの濃度勾配を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。 - 請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記発光層を形成する工程では、前記2種以上の塗布液のうち、最も前記陽極側に塗布する塗布液の発光ドーパント/発光ホストの重量比を、最も前記陰極側に塗布する塗布液の発光ドーパント/発光ホストの重量比より高くすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。 - 請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記発光層を形成する工程では、2層目以降の塗布液の膜厚を1〜10μmとすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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