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JP5653890B2 - 水分散型粘着剤組成物および粘着テープ - Google Patents

水分散型粘着剤組成物および粘着テープ Download PDF

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Description

本発明は、水分散型粘着剤組成物および粘着テープに関する。本発明の水分散型粘着剤組成物は再剥離用粘着剤等として好適であり、たとえば、表面保護フィルム、塗装用マスキングテープなどに広く用いられている。
従来より、金属製品やプラスチック製品の運搬、貯蔵、加工時の傷、汚染、腐食などを防止するために、一時的に表面を保護し、上記目的を達した後は容易にかつ一体的に剥離することができる表面保護フィルムが用いられている。従って、表面保護フィルムには、貼付け時には剥れることのない初期接着力が要求される一方で、剥離時には容易に剥すことのできる適度な剥離力(接着力)が要求される。通常の剥離作業での剥離速度は10〜50m/min程度であり、この速度領域で良好な剥離力であることが好ましい。
アクリル系粘着剤は、その優れた接着特性、耐候性などの点から従来のゴム系粘着剤に代わり広く普及している。また、環境対策、省資源、安全性などの観点から有機溶剤を使用しない水分散型アクリル系粘着剤の開発が進み、その使用量も増えている。表面保護フィルムにもこの水分散型アクリル系粘着剤を適用する例も見られる。しかし、従来、表面保護フィルム用の水分散型アクリル系粘着剤は、被着体への貼り付け後の経時変化によって接着力の上昇が起こりやすく、剥離作業に時間を要し、また糊残りを生じる場合がある。また、表面保護フィルム用に用いる水分散型アクリル系粘着剤は、平滑面、例えばRa=0.1 μm以下の被着体に対する高速剥離時の剥離力が高く、その改良が望まれていた。これらを改良する方法として、たとえば、剥離肋剤を粘着剤に添加する方法があるが、この剥離助剤は表面保護フィルムを剥離した後の被着体汚染の原因となることがあった。
本発明では、適度な初期接着性と被着体貼り合せ後の適度な剥離力を有する水分散型粘着剤組成物および当該水分散型粘着剤組成物を用いた粘着テープを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下に示す水分散型粘着剤組成物により、上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、乳化重合して得られたアクリル系ポリマー架橋物(A)および架橋剤(B)を含有してなる水分散型粘着剤組成物であって、アクリル系ポリマー架橋物(A)が、アルキル基の炭素数が4から12のアクリル酸アルキルエステル(a)50重量%以上、アルキル基の炭素数が1から4のメタクリル酸アルキルエステル(b)30〜45重量%、架橋剤(B)との架橋に関与しない官能性モノマー(c)0.5 〜2.5重量%および架橋剤(B)との架橋に関与する官能性モノマー(d)を含有するモノマー配合物を乳化重合して得られたものであることを特徴とする水分散型粘着剤組成物、に関する。
上記本発明の水分散型粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー架橋物を構成するモノマー配合物として、特定のモノマーを特定割合で配合したモノマー配合物を用いることにより適度な初期接着性と被着体貼り合せ後の適度な剥離力を実現したものである。
アルキル基の炭素数が4から12のアクリル酸アルキルエステル(a)は、モノマー配合物の主成分となるものであり、モノマー配合物中50重量%以上で用いられる。前記アクリル酸アルキルエステル(a)の割合が少ないと粘着テープとした場合に必要な良好な初期接着力や剥離力を得ることはできない。前記アクリル酸アルキルエステル(a)は、モノマー配合物中53〜65重量%であるのが好ましい。
アルキル基の炭素数が1から4のメタクリル酸アルキルエステル(b)は、被着体貼り合せ後の経日剥離力の上昇を制御するために用いられ、モノマー配合物中30〜45重量%で用いられる。前記メタクリル酸アルキルエステル(b)の割合が少ないと、被着体貼り合せ後の経日剥離力が上昇するため、前記メタクリル酸アルキルエステル(b)の割合は30重量%以上、さらには35重量%以上であるのが好ましい。一方、前記メタクリル酸アルキルエステル(b)の割合が多いと貼り合せ初期の粘着力が不足し、また貼り合せ経日で粘着テープが被着体から浮くため、前記メタクリル酸アルキルエステル(b)の割合は45重量%以下、さらには43重量%以下であるのが好ましい。
架橋剤(B)との架橋に関与しない官能性モノマー(c)は、貼り合せ初期の接着性を確保するものであり、モノマー配合物中0.5〜2.5重量%で用いられる。前記官能性モノマー(c)の割合が少ないと、貼り合せ初期の接着性が不足するため、前記官能性モノマー(c)の割合は0.5重量%以上、さらには1重量%以上であるのが好ましい。一方、前記官能性モノマー(c)の割合が多いと被着体貼り合せ後の経日剥離力が上昇するため、前記官能性モノマー(c)の割合は2.5重量%以下、さらには2重量%以下であるのが好ましい。
架橋剤(B)との架橋に関与する官能性モノマー(d)は、アクリル系ポリマー架橋物(A)を架橋剤(B)により架橋して、被着体貼り合せ後の経日剥離力の上昇を制御するものである。前記官能性モノマー(d)の割合は、水分散型粘着剤組成物が経日剥離力の上昇がなく十分な架橋物となるような範囲であれば特に制限されないが、通常、前記官能性モノマー(d)の割合は0.5重量%以上、さらには1重量%以上であるのが好ましい。一方、前記官能性モノマー(d)の割合が多いと、架橋剤(B)との反応が不十分な場合には残存官能基が多くなり経日剥離力が上昇し、また十分架橋されても架橋分率に占める架橋剤(B)と官能基との架橋の割合が重合段階での架橋と比べて増えると、その理由は定かではないが両者の架橋形態の違いにより初期接着性不足や貼り合せ経日でのテープの浮きが発生する場合があるため、前記官能性モノマー(d)の割合は2.5重量%以下、さらには2重量%以下であるのが好ましい。
前記水分散型粘着剤組成物において、得られるアクリル系ポリマー架橋物(A)のガラス転移温度が−20〜−35℃となるようにモノマー配合物が調整されていることが好ましい。
アクリル系ポリマー架橋物(A)のガラス転移温度(Tg)が前記範囲になるようにモノマー配合物を調整したものは良好な粘着性を有し好ましい。前記ガラス転移温度は−23〜−32℃であるのがより好ましい。なお、前記ガラス転移温度(Tg)は、一般的に用いられている次式:1/Tg=(W1 /Tg1 )+(W2 /Tg2 )+----(Wn /Tgn
{Tg:共重合体のTg(°K),Wn :W1 、W2 ----Wn の重量分率,Tgn :各モノマーより重合した重合体のTg(°K)}によりモノマー配合物から計算した値であり、モノマー配合物が前記モノマー(a)乃至(d)以外に任意モノマーを含む場合には、その任意モノマーを含むモノマー配合物からガラス転移温度が計算される。任意モノマーは、必要に応じて共重合可能な他のモノマーを、全モノマーの10重量%未満の範囲で各モノマーの種類に応じて適宜その使用量を選択できる。
前記水分散型粘着剤組成物において、アクリル系ポリマー架橋物(A)の架橋分率が85重量%以上であり、当該アクリル系ポリマー架橋物(A)を架橋剤(B)により架橋した後には架橋分率が95重量%以上になるものであることが好ましい。
アクリル系ポリマー架橋物(A)の架橋分率が少なくなると未架橋部分が多く、架橋剤(B)添加後も十分架橋分率が上がらず、被着体に貼り合せた後、経日で剥離力が上昇してしまい好ましくない。アクリル系ポリマー架橋物(A)の架橋分率は85重量%以上、さらには87重量%であるのが好ましい。なお、アクリル系ポリマー架橋物(A)の架橋分率が高くなりすぎると、架橋剤(B)添加後の最終的な架橋分率が高くなりすぎ、初期接着性不足や貼り合せ経日でのテープの浮きが発生する場合があり、これらを防ぐためアクリル系ポリマー架橋物(A)の架橋分率は95重量%以下であるのが好ましい。また、当該アクリル系ポリマー架橋物(A)を架橋剤(B)により架橋した後には架橋分率が95重量%以上、さらには97重量%以上になるものであることが好ましい。前記架橋分率が95重量%以上であれば被着体に貼り合せた後、経日で剥離力の上昇を抑えられる。
前記架橋分率とは、粘着剤固形分における架橋粘着剤の割合を意味する。たとえば、乾燥した粘着剤固形分を口径0.2μmのテフロン(登録商標)膜で包み、酢酸エチル中で室温1週間溶解分を抽出し、テフロン膜中に残った架橋粘着剤を取り出し、以下の式にて算出することができる。
架橋分率(重量%)=(架橋粘着剤(g)/全粘着剤(g))×100。
さらには本発明は、基材上に、前記水分散型粘着剤組成物の架橋物により粘着剤層が形成されている粘着テープ、に関する。
本発明の水分散型粘着剤組成物によれば、適度な初期接着性および経時安定性にも優れた粘着テープを提供することができるので、貼付け時に剥れることがなく、長期間保存後の剥離時にも容易に剥がすことができる。また、本発明の水分散型粘着剤組成物には剥離助剤が特に必要ではなく、再剥離時の被着体への非汚染性にも優れている。
以下に、本発明のアクリル系ポリマー架橋物(A)および架橋剤(B)を含有してなる水分散型粘着剤組成物および粘着テープを詳細に説明する。
アクリル系ポリマー架橋物(A)の調製に用いる主モノマーであるアルキル基の炭素数が4から12のアクリル酸アルキルエステル(a)の具体例としては、たとえば、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリルなどがあげられる。これらアクリル酸アルキルエステル(a)は、その1種または2種以上を適宜に選択して用いられる。
また、アルキル基の炭素数が1から4のメタクリル酸アルキルエステル(b)の具体例としては、たとえば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル等があげられる。これらメタクリル酸アルキルエステル(b)は、その1種または2種以上を適宜に選択して用いられる。
架橋剤(B)との架橋に関与しない官能性モノマー(c)および架橋剤(B)との架橋に関与する官能性モノマー(d)は、架橋剤(B)の有する官能基に応じて適宜に選択する。前記官能性モノマーの有する官能基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、アジリジン基などがあげられる。官能性モノマー(c)または(d)の具体例としては、たとえば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸等の酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー、2メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等イソシアネート基含有モノマーなどがあげられる。なお、上記(メタ)アクリル酸とはアクリル酸およびまたはメタクリル酸であり、本発明において(メタ)は同様の意味である。
これらの中から架橋剤(B)の官能基との反応性を考慮して適宜選択して使用できる。たとえば、反応性を有する官能基の組み合わせには、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、ヒドロキシル基とイソシアネート基、カルボキシル基とオキサゾリン基などがあげられる。
本発明のアクリル系ポリマー架橋物(A)の調製に用いるモノマー配合物中には、上記モノマーの他に必要に応じて共重合可能な他のモノマーを併用してもよい。共重合可能な他のモノマーは、全モノマーの10重量%未満の範囲で用いられる。共重合可能な他のモノマーとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピルなどのアルキル基の炭素数が1〜3のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸トリデシル、アクリル酸ステアリルなどのアルキル基の炭素数が13〜18のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリルなどのアルキル基の炭素数が5〜18のメタクリル酸アルキルエステル;酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、n−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、シクロヘキシルマレイミド、インプロピルマレイミド、(メタ)アクリルアミドなどがあげられる。その他に、トリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマー等があげられる。
アクリル系ポリマー架橋物(A)の調製は、前記モノマー配合物を、乳化剤の存在下に乳化重合することにより行う。重合方法は一般に一括仕込み法、モノマー滴下法、モノマーエマルション滴下法等があげられるが、これらの方法のなかでも再剥離に好適な高分子量のアクリル系ポリマー架橋物(A)を調製できる、例えば一括仕込み法などを用いるのが好ましい。
一般にアクリル系粘着剤の調製法としては、溶剤系で重合して低架橋分率のアクリル系ポリマーを得た後、架橋剤によって架橋分率を上げる方法等があるが、この場合にはアクリル系ポリマー中の官能性モノマー量と架橋分率のバランスが難しく、初期接着性と貼り合せ保存後の適度な剥離力の両立が困難であり、また低分子量の生成により剥離後の被着体を汚染しやすく好ましくない。また、UV重合法等により高分子量のアクリル系ポリマーを調製して粘着剤を得る方法もあるが、この方法では生産コストが高くなり好ましくない。乳化重合は比較的低コストで容易に高分子量の粘着剤が得られるため、再剥離用粘着剤のアクリル系ポリマー架橋物の合成方法として適している。
乳化剤としては、乳化重合において用いられるアニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤を特に制限なく使用できる。たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフエニルエーテルなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。また、アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤のいずれの場合にも、被着体汚染を低減するため、乳化剤中にプロペニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などの反応性官能基を導入したラジカル重合性反応性乳化剤を用いるのが好ましい。ラジカル重合性反応性乳化剤は、たとえば、特開平4−53802号公報に記載されている。
また重合開始剤としては、たとえば、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩などが用いられる。
本発明の水分散型粘着剤組成物は、前記アクリル系ポリマー架橋物(A)および架橋剤(B)を配合することにより得られる。
架橋剤(B)としては、たとえば、水溶性架橋剤として、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ系架橋剤、水分散型イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、親水化処理カルボジイミド系架橋剤、活性メチロール架橋剤、活性アルコキシメチル架橋剤、金属キレートなどがあげられる。また、油溶性架橋剤としては、N,N,N,N−テトラグリシジルm−キシレンジアミンなどのエポキシ系架橋剤、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのイソシアネート系架橋剤、油溶性カルボジイミド系架橋剤などがあげられる。
架橋剤(B)の選択は、架橋剤(B)の官能基が、アクリル系ポリマーが架橋物(A)の調製に用いた官能性モノマー(d)の官能基と反応性を有し、官能性モノマー(c)の官能基と反応性を有しないものを選択して用いる。たとえば、初期接着性確保のための官能性モノマー(c)として、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の水酸基含有モノマーを用い、官能性モノマー(d)としてアクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーを用いた場合には、架橋剤(B)としてエポキシ系架橋剤が好適に用いられる。
架橋剤(B)の配合量は特に制限されないが、アクリル系ポリマー架橋物(A)を架橋剤(B)により架橋した後には架橋分率が95重量%以上になるように配合するのが好ましい。通常は、架橋剤(B)の官能基数(当量)が、架橋成分としてアクリル系ポリマー架橋物(A)に配合した官能性モノマー(d)の有する官能基数(当量)に対し、1〜1.5倍程度となるように配合するのが好ましい。架橋剤(B)の官能基数(当量)が1倍より小さいと架橋反応不足となり、剥離力が上昇する傾向があり、また1 .5 倍より多いと残存未反応架橋剤による汚染の原因となり、いずれも好ましくない。
また、本発明の水分散型粘着剤組成物には、必要に応じて各種添加剤、たとえば、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料、老化防止剤などを配合することができる。
本発明の粘着テープは、基材の片面に、前記水分散型粘着剤組成物の架橋物により粘着剤層を形成したものである。基材は、特に限定されず、例えばポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチックフィルム、紙、不織布、発泡体、金属箔などの単体またはこれらの複合基材を使用でき、また基材は表面処理の施されたものを使用できる。基材は、通常、9〜120μm程度である。
上記粘着剤層の形成は、上記水分散型粘着剤組成物を、基材上に直接塗布し乾燥することにより形成することもでき、セパレータ上に上記同様に形成した層を基材上に転写してもよい。本発明の粘着テープは、基材の片面または両面に粘着剤層をそれぞれ単層または複数層設けてシート状やテープ状の形態として得られる。粘着剤層は、通常、1〜50μm程度である。
以下に、本発明について実施例をあげて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各例において、部とあるのは重量部を意味するものとする。
実施例1
(アクリル系ポリマー架橋物の調製)
温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた反応器に、アクリル酸2エチルヘキシル60部、メタクリル酸メチル38部、アクリル酸1部、アクリル酸2ヒドロキシエチル1部およびアニオン系反応性乳化剤(アクアロンBC−2020,第一工業製薬(株)製)2.5部を水144部で乳化したものを入れ、2時間窒素置換した。次いで、55℃に昇温した後、2 ,2 ′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ヒドロクロライド0.03部を入れ8時間重合した。その後、室温まで冷却し10%のアンモニア水で中和してアクリル系ポリマー架橋物を作製した。このアクリル系ポリマー架橋物のTgは−25℃、架橋分率は89%であった。
(水分散型粘着剤組成物の調製と粘着テープの作製)
上記アクリル系ポリマー架橋物(固形分)100部に、水溶性エポキシ系架橋剤(デナコールEX−614B,ナガセ化成工業(株)製)をエポキシ基の当量が、アクリル系ポリマー架橋物中のアクリル酸のカルボキシル基と等量となるよう2.4部添加して水分散型粘着剤組成物を調製した。この水分散型粘着剤組成物を、12μmのポリエチレンテレフタレート基材に乾燥後の厚さが5μmとなるように塗布乾燥し、粘着テープを作製した。架橋剤添加後の架橋分率は96%であった。
実施例2
実施例1において、アクリル酸2エチルヘキシルの使用量を55部、メタクリル酸メチル38部をメタクリル酸イソブチル43部としたこと以外は実施例1と同様にしてアクリル系ポリマー架橋物を調製した。アクリル系ポリマー架橋物のTgは−30℃、架橋分率は86%であった。次いで、実施例1と同様にして、水分散型粘着剤組成物の調製と粘着テープの作製を行った。架橋剤添加後の架橋分率は97%であった。
比較例1
実施例1において、アクリル酸2エチルヘキシルの使用量を40部、メタクリル酸メチル38部をアクリル酸メチル58部としたこと以外は実施例1と同様にしてアクリル系ポリマー架橋物を調製した。アクリル系ポリマー架橋物のTgは−29℃、架橋分率は93%であった。次いで、実施例1と同様にして、水分散型粘着剤組成物の調製と粘着テープの作製を行った。架橋剤添加後の架橋分率は96%であった。
比較例2
実施例1において、アクリル酸2エチルヘキシルの使用量を70部、メタクリル酸メチルの使用量を28部としたこと以外は実施例1と同様にしてアクリル系ポリマー架橋物を調製した。アクリル系ポリマー架橋物のTgは−38℃、架橋分率は87%であった。次いで、実施例1と同様にして、水分散型粘着剤組成物の調製と粘着テープの作製を行った。架橋剤添加後の架橋分率は95%であった。
比較例3
実施例1において、アクリル酸2エチルヘキシルの使用量を53部、メタクリル酸メチルの使用量を43部、アクリル酸2ヒドロキシエチルの使用量を3部としたこと以外は実施例1と同様にしてアクリル系ポリマー架橋物を調製した。アクリル系ポリマー架橋物のTgは−16℃、架橋分率は93%であった。次いで、実施例1と同様にして、水分散型粘着剤組成物の調製と粘着テープの作製を行った。架橋剤添加後の架橋分率は96%であった。
比較例4
実施例1において、アクリル酸2エチルヘキシルの使用量を60部、メタクリル酸メチルの使用量を36部、アクリル酸2ヒドロキシエチルの使用量を3部としたこと以外は実施例1と同様にしてアクリル系ポリマー架橋物を調製した。アクリル系ポリマー架橋物のTgは−26℃、架橋分率は92%であった。次いで、実施例1と同様にして、水分散型粘着剤組成物の調製と粘着テープの作製を行った。架橋剤添加後の架橋分率は95%であった。
実施例および比較例で得られた粘着テープについて、下記評価を行った。結果を表1に示す。
(初期接着力)
20mm×100mmの粘着テープを被着体に2kgのローラーで一往復させる方法で圧着し、その剥離に要する力を測定し初期接着性評価とした(180度剥離,引張り速度30m/min,23℃,65%RH)。被着体:ステンレス鋼板(SUS430BA)。放置条件:23℃×20分間。
(経時剥離力)
同上の方法で被着体に圧着したサンプルを60℃×7日間加温した後、室温まで放冷し、同上の方法で剥離力を測定し、剥離力上昇性評価とした。
Figure 0005653890
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1 、2の各粘着テープは比較例1〜4の各粘着テープに比して、初期接着性および経時での適度な剥離力を有していることがわかる。なお、表1中、2EHA:アクリル酸2エチルヘキシル、MMA:メタクリル酸メチル、iBMA:メタクリル酸イソブチル、MA:アクリル酸メチル、AA:アクリル酸1部、HEA:アクリル酸2ヒドロキシエチルである。

Claims (4)

  1. 架橋分率が85重量%以上である乳化重合して得られたアクリル系ポリマー架橋物(A)および架橋剤(B)を含有してなる水分散型粘着剤組成物であって、
    前記架橋剤(B)が、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、及び、アジリジン系架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記架橋分率が、下記一般式により、計算されるものであり、
    前記粘着剤組成物が、乳化剤を含有し、
    アクリル系ポリマー架橋物(A)が、アルキル基の炭素数が4から12のアクリル酸アルキルエステル(a)50重量%以上、アルキル基の炭素数が1から4のメタクリル酸アルキルエステル(b)30〜45重量%、水酸基含有モノマー(c)0.5〜2.5重量%およびカルボキシル基含有モノマー(d)を含有するモノマー配合物を、前記乳化剤により乳化重合して得られたものであることを特徴とする水分散型粘着剤組成物。
    前記架橋分率とは、アクリル系ポリマー架橋物(A)における架橋部分の割合を意味し、乾燥したアクリル系ポリマー架橋物(A)を口径0.2μmのテフロン(登録商標)膜で包み、酢酸エチル中で室温1週間溶解分を抽出し、テフロン膜中に残ったアクリル系ポリマー架橋物(A)を取り出し、以下の式にて算出する。
    架橋分率(重量%)=(テフロン膜中に残ったアクリル系ポリマー架橋物(A)(g)/乾燥したアクリル系ポリマー架橋物(A)(g))×100。
  2. 得られるアクリル系ポリマー架橋物(A)のガラス転移温度が−20〜−35℃となるようにモノマー配合物が調整されていることを特徴とする請求項1記載の水分散型粘着剤組成物。
  3. 当該アクリル系ポリマー架橋物(A)を架橋剤(B)により架橋した後には架橋分率が95重量%以上になるものであることを特徴とする請求項1または2記載の水分散型粘着剤組成物。
  4. 基材上に、請求項1〜3のいずれか一項に水分散型粘着剤組成物の架橋物により粘着剤層が形成されている粘着テープ。
JP2011245421A 2011-11-09 2011-11-09 水分散型粘着剤組成物および粘着テープ Expired - Fee Related JP5653890B2 (ja)

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