以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の引戸の跳ね上げ抑制装置は、スライドアシスト装置に適用する場合について説明するが、引戸と戸枠の衝突を緩和させるために引戸のスライド終期に引戸に制動力を付与する引戸緩衝装置など、他の装置について適用することも可能である。また、本実施形態の跳ね上げ抑制装置が適用されるスライドアシスト装置は、上端部がガイドレールに案内される、戸車付き下支え形式の引戸について適用したものであるが、戸車なしの非吊下式引戸や、吊下式引戸等、その他の引戸にも適用することができる。更に、本実施形態のスライドアシスト装置は、引戸に対し閉止方向についてスライドアシスト力を付与するものとなされているが、開放方向についてアシスト力を付与するものであってもよい。もちろん、開閉各方向についてスライドアシスト力を付与するスライドアシスト装置を引戸にともに設けるものであってもよい。
図1は本実施形態の引戸の跳ね上げ抑制装置が適用されたスライドアシスト装置を一部分解した状態で示す斜視図であり、図2は同装置のアシスト装置本体と引戸固定体とを示す正面図である。なお、以下、便宜上、各図における+X方向を右方向、+Y方向を後方向、+Z方向を上方向として説明するが、これらの方向の表現については特に限定されるものではなく、単に本実施形態の装置内における相対的な位置関係を表したものである。
まず、本実施形態のスライドアシスト装置1が取り付けられる引戸Dの構造について簡単に説明する。引戸構造は、構造物の開口部を開閉する引戸Dと、この引戸Dが内側でスライド移動する戸枠(不図示)とを備える。引戸Dは、戸本体D1と、戸本体D1の下部に取り付けられた左右一対の戸車(不図示)とを備える。なお、この戸車には高さ調節機構(不図示)が設けられ、例えば経年によって戸枠(特に側部内面)との間に隙間が生じた場合でも戸本体D1を傾斜させて閉め残しを解消することができるものとなされている。
一方、戸枠(構造物に含まれる)は、鴨居下面に設けられ引戸Dのスライド方向をガイドするガイドレールLと、敷居に設けられ引戸Dの戸車が案内される案内溝(不図示)とを含み、このガイドレールLおよび案内溝に沿って引戸Dが開閉される。すなわち、引戸Dは、その頂部に配設された後述の第1および第2のガイドユニット10,11がガイドレールLに挿通されることにより上部が案内されるとともに、その下部の戸車が上記案内溝に挿通されることにより下部が案内される。
そして、本実施形態のスライドアシスト装置1は、この引戸Dの頂部に配設された第1ガイドユニット10と、ガイドレールLの天面に固定される受け部材5とを備えて構成されている。
第1ガイドユニット10は、引戸Dに固定された引戸固定体2と、この引戸固定体2に連結部23を介して取り付けられ引戸Dのスライドアシスト機能を有するアシスト装置本体3(ガイド本体に相当)と、アシスト装置本体3の後述する第1エッジブロック312と枠本体311との間に介在する押圧ユニット6とを備え、第2ガイドユニット11とともに引戸Dのスライド移動を案内するものとなされている。第2ガイドユニット11は、引戸Dに固定された第2引戸固定体12と、この第2引戸固定体12に取り付けられたガイドローラユニット13とを備え、高さ調節機構14によってガイドローラユニット13の引戸Dからの突出高さ位置を調整し得るものとなされている。なお、本実施形態のような下支え形式の引戸Dにおいては、この第2ガイドユニット11を適宜省略することもできる。
このスライドアシスト装置1は、アシスト装置本体3(以下、単に「装置本体」という)と受け部材5とが協働して付勢力を蓄積または解放可能に構成され、引戸Dの閉止速度が速い場合など付勢力が解放される際に装置本体3に受け部材5が係合して装置本体3に制動力が作用するようになされているとともに、上記解放された付勢力をスライドアシスト力として引戸Dに対して付与されるようになっている。また、このスライドアシスト装置1は、受け部材5が係合してアシスト装置本体3に制動力が作用した場合に、押圧ユニット6の後述する押圧ブロック62が引戸D側に進出して当該引戸Dの頂面を押圧して、引戸Dの跳ね上げを抑制するものとなされている。
具体的には、引戸固定体2は、引戸Dの頂部に埋設されるベースブロック21と、このベースブロック21から上方に突設された連結部23とを備え、ベースブロックの正面に設けられた前後調節ネジ(不図示)を左右に回動させてこのネジの先端に設けられた調整用カム(不図示)を揺動させることによりベースブロック21に対する連結部23の前後位置を微調整し得るように構成されている。この引戸固定体2は、装置本体3を引戸Dに固定するためのものであり、連結部23を介して装置本体3の第1エッジブロック312に固定されている。引戸固定体2の引戸Dに対する固定構造については、既に公知であるのでここでは詳しい説明を省略する。
装置本体3は、図1および図2に示すように、引戸固定体2に取り付けられた枠体31と、この枠体31内に一端(本実施形態では右端)がフリー状態で収容される引きバネ32と、枠体31内に一端(本実施形態では右端)がフリー状態でかつ引きバネ32と並列に収容されたダンパー部材33と、この引きバネ32およびダンパー部材33のフリー端部に取り付けられたスライド部材34とを備え、上記付勢力としての引きバネ32の弾性力を蓄積または解放可能に構成された一般的なものである。従って、この装置本体3は、その具体的構成を特に限定するものではないが、以下に簡単に説明する。
図4および図5は、装置本体3を示す斜視図である。これらの図は、スライド部材34が引戸Dの閉止位置に対応する初期位置にあるか、引戸Dの開放操作に伴ってスライド部材34が所定の保持位置にあるかで異なる。
本実施形態の装置本体3は、枠体31の後述する枠本体311と、この枠本体311の長手方向一端部に嵌め込まれる第1エッジブロック312との間に、押圧ユニット6が介在している。すなわち、押圧ユニット6は、一端部がスライド部材34が収納される枠本体311に接続されるとともに、他端部が引戸固定体2に連結される第1エッジブロック312に接続されることにより、装置本体3に取り付けられている。
まず、装置本体3の構成について具体的に説明してから、押圧ユニット6の構成について具体的に説明する。
装置本体3は、角筒状の枠体31と、枠体31内であって第2エッジブロック313に一端が固定された引きバネ32と、枠体31内でこの引きバネ32と前後に並設されるとともに第2エッジブロック313に一端が固定されたダンパー部材33と、この引きバネ32およびダンパー部材33の他端であるフリー端部に取り付けられ、枠体31内をその長手方向に沿ってスライド可能なスライド部材34とを備える。
枠体31は、図4および図5において二点鎖線で示され、左右方向(引戸Dのスライド方向)に細長い角筒状の枠本体311と、この枠本体311の長手方向一端部(右端部)に押圧ユニット6を介して取り付けられる第1エッジブロック312と、枠本体311の長手方向他端部(左端部)に嵌め込まれる第2エッジブロック313とを備え、第1エッジブロック312において引戸固定体2の連結部23に連結されている。
この第1エッジブロック312には、ガイドレールL内を転動する左右一対のガイドローラ316が設けられており、第2エッジブロック312に設けられたガイドローラ317とともに装置本体3をガイドレールL内で円滑にスライドし得るように構成されている。
一方、枠本体311に戻って、この枠本体311には、その上面壁に左右方向に延びるガイドスリット311aと、このガイドスリット311aに連設され、ガイドスリット311aに対して拡幅された角形の回動孔311bとが設けられている。ガイドスリット311aは、枠本体311の上面壁の左右方向の中央部を始点にして右方へ延設されている。このガイドスリット311aの前後幅は、スライド部材34の後述する回動掛合片342における舌片342cの前後幅よりも狭く設定され、スライド部材34の回動掛合片342が回動できないように構成されている。
また、回動孔311bは、ガイドスリット311aの右端部に連設されている。この回動孔311bは、ガイドスリット311aよりも拡幅して構成され、回動掛合片342の舌片342cよりも幅広に構成されている。従って、この回動孔311bは、スライド部材34がこの回動孔311bに至った場合にスライド部材34の回動掛合片342がこの回動孔311bを通して回動可能に構成されている。
引きバネ32は、第2エッジブロック313とスライド部材34との間に介設され、スライド部材34に付勢力を付与するためのものである。具体的には、引きバネ32の一端部は第2エッジブロック313の左端部に係止されることにより枠体31に固定され、フリー端部である他端部がスライド部材34の右端部に係止され、これにより引きバネ32が各部材313,34間に張設されている。なお、この引きバネ32に代えて、ゴム等からなる弾性部材(例えばゴムバンド)を用いても良い。
ダンパー部材33は、直動式ダンパーであり、引きバネ32の付勢力または引戸Dのスライド力に対して緩衝効果を付与するものである。このダンパー部材33は、第2エッジブロック313とスライド部材34の間に架設され、引きバネ32の後方において該引きバネ32と並列に配置されている。また、ダンパー部材33は、エアダンパー、油圧ダンパー等のいずれのダンパーであってもよいが、本実施形態ではエアダンパーが採用されている。更に、ダンパー部材33は、不図示の一方弁が内蔵された一方向性のダンパーであり、縮む場合、すなわち引戸Dが閉止方向に移動する場合に緩衝効果を付与するように構成されている。なお、ダンパー部材について、ロータリーダンパーを採用するものであってもよい。この場合の具体的構造についてはラック機構を用いるなど既に公知であるので、具体的説明は省略する。
スライド部材34は、引きバネ32およびダンパー部材33のフリー端部が係止されるスライドブロック341と、スライドブロック341に軸支され回転軸342a周りに回動する回動掛合片342とを備え、引戸Dの閉止位置に対応する初期位置(図4参照)と枠体31の回動孔311bに対応する所定の保持位置(図5参照)との間を引戸Dの開閉操作に伴って枠体31に対して相対的にスライド移動するようになされている。
スライドブロック341は、右上方角部が切り欠かれた直方体状のブロック基体341aと、このブロック基体341aから上方に向かって突設された突出係合部341bとを備える。
ブロック基体341aは、前後幅がガイドスリット311aよりも大きく構成され、枠本体311内を摺動可能に構成されている。このブロック基体341aの上記切欠き部に回動掛合片342が配置される。
また、突出係合部341bは、開放状態にある引戸Dの閉止操作時の移動速度が速い場合に受け部材5と係合し、ダンパー部材33の緩衝効果によってその移動速度を減殺するものである。すなわち、この突出係合部341bと受け部材5とが係合する際に、装置本体3に対して制動力が作用する。この突出係合部341bは、その前後幅がガイドスリット311aよりも小さく構成され、スライドブロック341が枠本体311に内装された状態でガイドスリット311aを通じて枠本体311から上方に突出するようになされている。
回動掛合片342は、引戸Dの開放動作に伴いスライド部材34の初期位置から保持位置に至るまでの間、受け部材5に係合し、スライド部材34が保持位置に至ることにより回動孔311bを通じて枠体31内に没入回動することにより受け部材5との係合状態が解除されるとともにスライド部材34をその保持位置に停止保持するためのものである。また、回動掛合片342は、引戸Dの閉止動作に伴い受け部材5と再係合し、スライド部材34の停止保持状態を解除するとともに受け部材5と協働して上記解除に伴い引きバネ32の弾性力を引戸Dにスライドアシスト力として付与するように機能する。
この回動掛合片342は、正面視で右方に向かって先細りに形成された三角形状を呈する三角ブロック342b(図6,7参照)と、この三角ブロック342bの上面右半分の部分に固定された正面視で右方へ向かって先細りの舌片342cとを備えている。三角ブロック342bは、ブロック基体341aの上記切欠き部に配置され、回転軸342aによってブロック基体341aに軸支されている。
舌片342cは、受け部材5に対して係脱する部材である。この舌片342cは、その前後幅がガイドスリット311aの前後幅よりも大きく、かつ、回動孔311bの前後幅よりも小さく寸法設定されているとともに、左右寸法が回動孔311bの左右寸法よりも短く設定されている。この舌片342cの先端部(右端部)は回動掛合片342の後述する係合姿勢でガイドスリット311a内に突出する突出部分342dを有し、この突出部分342dが回動孔311bの端縁に係合することにより回動掛合片342に回動力を付与するようになされている。そして、舌片342cは、ガイドスリット311aの範囲内にあるとき、図4に示すように、ガイドスリット311aから上方に突出した状態にあり、この状態で受け部材5に係合している。また、舌片342cは、回動掛合片342が回動孔311bに至ることにより、図5に示すように、回動孔311bを通じて回転軸342aを中心に時計方向に回動可能に構成され、この回動に伴い受け部材5との係合状態が解除される。
受け部材5は、装置本体3、詳しくは装置本体3の突出係合部341b又は舌片342cと係合して、装置本体3に制動力やスライドアシスト力を付与するものである。この受け部材5は、図1に示すように左右方向に細長い板状体を曲折された形状を呈し、下方に突出する受け突部51が構成されている。この受け突部51の左右幅は、スライド部材34の突出係合部341bと舌片342cとの間隔よりも小さく形成されている。
次に、押圧ユニット6について説明する。図3は押圧ユニット6を分解して示す斜視図である。この図3および図2を主に用いてこの押圧ユニット6の具体的構成について説明する。
押圧ユニット6は、装置本体3の枠本体311と第1エッジブロック312との間に介在するブロック進出機構61と、このブロック進出機構61に上下動可能に保持されることにより装置本体3に間接的に設けられた押圧ブロック62とを備え、受け部材5とスライド部材34とが係合することにより装置本体3に制動力が作用した場合に、ブロック進出機構61によって押圧ブロック62が引戸D側に押し出されて該引戸Dの頂面を押圧するものとなされている。
具体的には、押圧ブロック62は、直方体状のブロック本体621と、このブロック本体621の下端に一体的に取り付けられた押圧部622とを備える。なお、このブロック本体621と押圧部622とは分割構成して、これらを接合手段で接合するものであってもよい。
ブロック本体621は、その中央部に幅方向(前後方向)に貫通する傾斜ガイド孔62aを備える。傾斜ガイド孔62aは、後述するガイドボス部65が挿通可能な幅に設定された長孔であり、引戸Dの閉止方向に向かって上方に傾斜している。言い換えれば、この傾斜ガイド孔62aの傾斜方向について、受け部材5によって装置本体3に制動力が作用した場合に、押圧ブロック62とブロック進出機構61とが相対的に上下離反する方向に向かうように設定されている。
この傾斜ガイド孔62aのスライド方向に対する傾斜角度は特に限定するものではないが、本実施形態では45°に設定されている。なお、この傾斜ガイド孔62aのスライド方向に対する傾斜角度は、30°〜60°の範囲に設定されるのが好ましく、更に好ましくは40°〜50°の範囲内に設定されるのが良い。また、この傾斜ガイド孔62aの上下高さ(上下方向の寸法)は、少なくとも連結部23の長さに応じて設定され、具体的には装置本体3と引戸Dの頂面との距離よりも大きく設定されている。
押圧部622は、押圧ブロック62の進出時に引戸Dの頂面に当接して、該頂面を押圧するものである。この押圧部622の幅(前後方向寸法)は、ブロック本体621よりも大きく、また引戸Dの頂面幅よりも狭く設定されている。なお、押圧部622の具体的形状は特に限定するものではなく、ブロック本体621と同幅の形状を呈するものであってもよい。
一方、ブロック進出機構61は、装置本体3の表面(例えば下面)に取り付けられるものであってもよいが、本実施形態では、装置本体3の内部に組み込まれ、具体的には枠本体311と第1エッジブロック312との間に介在している。このブロック進出機構61は、受け部材5による装置本体3の制動に伴い、引戸Dのスライド移動力の一部を押圧ブロック62の進出力として変換するように構成されている。具体的には、ブロック進出機構61は、装置本体3の枠本体311に連結されたベース体63と、一端(図面では左端)がこのベース体63に対して引戸Dのスライド方向に移動可能に連結されるとともに他端(図面では右端)が第1エッジブロック312および引戸固定体2を介して引戸Dに連結された補助ガイド体64とを備える。
ベース体63は、押圧ブロック62を上下動可能に保持するものである。このベース体63は、押圧ブロック62を保持するベース本体部631と、このベース本体部631の一端部(左端部)に枠本体311と連結するためのベース連結部633とを備え、これらが合成樹脂成形品として一体に設けられている。なお、ベース本体部631とベース連結部633とが別体として設けて、これらを接合するものであってもよい。
ベース本体部631は、頭部(上端部)が前後方向に突出するT字状のブロック体である。このベース本体部631は、押圧ブロック62を遊嵌可能な保持孔632が上下に貫通して設けられるとともに、この保持孔632を挟んだ前後対向壁に、それぞれ後述するガイドボス部65を引戸Dのスライド方向に移動可能に挿通するボス挿通孔63aが、前後方向に貫通して設けられている。
保持孔632は、ブロック本体621の垂直軸に直交する断面と略同じ大きさないしは若干大きく設定され、押圧ブロック62のガタツキを極力抑えるものとなされている。ボス挿通孔63aは、引戸Dのスライド方向に細長い長孔として構成されている。また、このボス挿通孔63aは、押圧ブロック62の初期位置から引戸Dの頂面の押圧位置に至るまでの進退行程で、少なくとも該押圧ブロック62の傾斜ガイド孔62aの一部と重複するように構成されている。さらに、このボス挿通孔63aは、押圧ブロック62の傾斜ガイド孔62aの水平成分の長さと同等ないしはそれよりも長く構成されている。
ベース連結部633は、枠本体311と連結されるものである。具体的には、ベース連結部633は、枠本体311に内嵌可能に構成された板状体であり、上下に貫通するねじ孔634を有する。従って、ベース体63は、ベース連結部633が枠本体311の一端部(図2では右端部)に内嵌され、このベース連結部633がねじ孔634に挿通されるネジ(不図示)によって枠本体311に取り付けられることで装置本体3の内部に組み込まれる。
補助ガイド体64は、ベース体63のベース本体部631の胴部がスライド可能に差し込まれる対向壁部641と、対向壁部641の一端部(右端部)に設けられ第1エッジブロック312に取り付けられるガイド取付部642と、対向壁部641に設けられたボス取付孔64aに取り付けられるガイドボス部65とを備え、対向壁部641とガイド取付部642とが合成樹脂成形品として一体に設けられている。なお、対向壁部641とガイド取付部642とを別体として設けて、これらを接合するものであってもよい。
対向壁部641は、互いの間隔がベース本体部631の胴部の厚み(幅)に応じて設定され、この胴部が差し込み可能に構成されている。この対向壁部641の上面には、ベース本体部631の頭部である突出部がスライド可能に載置される。また、この対向壁部641には、上記のようにガイドボス部65が圧入されるボス取付孔64aが幅方向(前後方向)に貫設されている。このボス取付孔64aの位置は、ベース体63と補助ガイド体64とが引戸Dのスライド方向に相対的にスライド移動する場合に、この取付孔64aに取り付けられたガイドボス部65がベース体63のボス挿通孔63aの一端部から他端部に移動可能となるように設定されている。
ガイド取付部642は、第1エッジブロック312の取付のための役割と、ベース体63のスライド移動を規制するストッパーとしての役割とを果たすものである。このガイド取付部642は、下部に下方に開口して第1エッジブロック312の一端部が差し込まれる差込溝部644と、この差込溝部644に差し込まれた第1エッジブロック312の一端部を固定するためのねじ(不図示)がねじ込まれるねじ孔643とを有する。本実施形態の差込溝部644は、左右方向について右端部のみが開放され、この右端部から差し込まれた第1エッジブロック312の一端部が他端部側に突き当てられるように構成されている。なお、ねじ孔643は、ガイド取付部642の天壁部を上下方向に貫通した状態で設けられている。
次に、この押圧ユニット6の組付について説明する。
まず、ベース体63の保持孔632に押圧ブロック62のブロック本体621を挿入する。続いて、このベース体63の胴部を補助ガイド体64の対向壁部641間に差し込む。このとき、補助ガイド体64のボス取付孔64aと、ベース体63のボス挿通孔63aと、押圧ブロック62の傾斜ガイド孔62aのとが前後方向に連通した状態に位置合わせし、この状態で連通した各孔64a、63a、62aにガイドボス部65を差し込む。ガイドボス部65は、補助ガイド体64のボス取付孔64aに圧入されるので、補助ガイド体64に固定される。これにより、押圧ユニット6の組付が完了する。
そして、この押圧ユニット6のベース連結部633を枠本体311に取り付けるとともにガイド取付部642を第1エッジブロック312に取り付けることにより押圧ユニット6を装置本体3に取り付ける。
この押圧ユニット6において、ベース体63と補助ガイド体64とは、引戸Dのスライド方向に移動可能に構成され、この移動に伴い、ガイドボス部65がボス挿通孔63aの一端部から他端部に移動する。そして、このガイドボス部65の移動に伴って、このガイドボス部65が押圧ブロック62の傾斜ガイド孔62a内を移動することにより、押圧ブロック62がベース体63に対して進退する。
以上のように構成されたスライドアシスト装置1の作用について、図6〜図9を用いて説明する。図6は引戸Dを閉止状態から開放する場合のスライドアシスト装置1の作用を説明するための正面視の一部断面図であり、図7は引戸Dを開放した状態から閉止する場合の同装置1の作用を説明するための正面視の一部断面図である。図8は押圧ユニット6の初期状態を示すための概念図であり、図9は、装置本体3に制動力が作用した場合における押圧ユニット6の引戸押圧状態を示すための概念図である。
引戸Dのスライドアシスト力の作用について説明しつつ、引戸Dの跳ね上げ抑制の作用についても合わせて説明する。
まず、閉止状態にある引戸Dを開放する場合の機能について説明する。
スライド部材34は、引戸Dの閉止状態において、図4に示すように、初期位置にあり、ガイドスリット311aの右端部に位置している。この引戸の閉止状態において、図6(A)に示すように、スライド部材34の回動掛合片342は、その舌片342cがガイドスリット311aを通じて枠体31から上方に突出した係合姿勢に設定されている。この係合姿勢では、舌片342cの左端面が受け部材5の受け突部51の右側面に係合した状態になっている。
そして、この閉止状態から引戸Dを左方へ移動させて開放していくと、この開放に伴い装置本体3も左方へ移動するが、舌片342cが受け突部51に係合しているため、スライド部材34の移動が妨げられる。このため、スライド部材34は、ガイドスリット311aに沿って枠体31に対して相対的に右方に移動する。このスライド部材34の移動に伴い引きバネ32が伸長し、これによりスライド部材34に引きバネ32の付勢力が蓄積される。
引戸Dを継続して開放していくと、引戸Dが所定の開閉途中位置に達し、このときスライド部材34の舌片342cが回動孔311bに達する。この状態からさらに引戸Dが開放されると、舌片342cが受け突部51によって右方へ向かって押圧され、舌片342cの先端突出部分342dが回動孔311bの右縁部に係合し、回動掛合片342が回転軸342aを中心に時計方向に回動する。これによって、図6(B)に示すように、回動掛合片342は、回動孔311bを通じて回動し、受け突部51との係合状態が解除された解除姿勢へ姿勢変更する。
このとき、解除姿勢に姿勢変更された舌片342cは、引きバネ32の付勢力で左方へ引っ張られ、舌片342cの左端面が回動孔311bの左端縁に係止する(図7(A)参照)。これによって、スライド部材34は、回動孔311bに対応する保持位置に停止保持されるとともに、回動掛合片342の三角ブロック342bの前方左端部がガイドスリット311aを通じて枠体31の前方に突出した状態に配置される。
次に、開放状態にある引戸Dを閉止する場合の機能について説明する。
全開状態の引戸Dを右方へ移動させて閉めていくと、引戸Dは上記開閉途中位置に達する。このとき、図7(A)に示すように、三角ブロック342bの前方左縁部が受け突部51に干渉し、これによって回動掛合片342は、回転軸342aを中心に反時計方向に回動して、その舌片342cが、回動孔311bから抜け出し、当該舌片342cの左角部が回動孔311bの左縁部へ係止されていた状態が解消される。すなわち、回動掛合片342は、受け突部51に対する解除姿勢から係合姿勢へと姿勢変更する(図7(B)参照)。
そして、この姿勢変更に伴い引きバネ32の付勢力が開放されてスライド部材34に作用し、スライド部材34は、ダンパー部材33によって一定の抵抗が付与されつつ、ガイドスリット311aに沿って枠体31に対して相対的に上記保持位置から初期位置に向かって移動する。このとき、スライド部材34は受け部材5の受け突部51に係合しているため、引きバネ32の付勢力はスライドアシスト力として引戸Dの閉止方向に作用する。
ところで、この引戸Dの閉止操作にあたって、引戸Dの閉止速度が速い場合には、受け部材5の受け突部51は三角ブロック342bに干渉した後、スライドブロック341の突出係合部341bに衝突し、ダンパー部材33による制動力が装置本体3に付与されて引戸Dが減速される。従来のスライドアシスト装置1では、この制動力が作用した場合に、引戸Dが片当たり状態となって、すなわち引戸Dの上部の一端部にのみ制動力が作用して下部に制動力が作用しないので、引戸Dが跳ね上がる場合があるが、本実施形態のスライドアシスト装置1では、引戸の跳ね上げ抑制装置が装備されているので、この引戸Dの跳ね上げを効果的に抑制することができる。
すなわち、引戸Dが閉止操作されると、引戸固定体2を含む引戸Dにはスライド力(具体的にはスライド操作力又は慣性力)が作用している。このとき、受け部材5の受け突部51とスライド部材34の突出係合部341bが干渉すると、ダンパー部材33による制動力がスライド部材34を通じて装置本体3に制動力として作用する。この制動力に伴って装置本体3の枠本体311側が制動される一方、第1エッジブロック312や引戸固定体2および引戸Dが慣性力または閉止操作力によって先走ることにより、ベース体63が相対的に左方に引っ張られる。これにより、ベース体63が補助ガイド体64に対して相対的にスライド移動し、これに伴いガイドボス部65がボス挿通孔63aおよび傾斜ガイド孔62aに沿って移動し、この移動に伴い押圧ブロック62が下方に押し下げられる(図9参照)。言い換えると、上記制動力に伴って補助ガイド体64がベース体63に対して離反方向に移動してガイドボス部65が傾斜ガイド孔62aに沿って相対的に移動することにより押圧ブロック62を引戸D側に進出させる。この進出に伴い、押圧ブロック62の押圧部622が引戸Dの頂面を押圧することにより、引戸D引戸Dの跳ね上げを簡単かつ確実に抑制することができる。すなわち、押圧ユニット6は、初期状態(図8参照)から押圧状態(図9参照)に移行する。
しかも、引戸Dの跳ね上げは引戸Dの閉止速度とも密接に関係しており、閉止速度が速ければ速いほど引戸Dの跳ね上げが懸念されるが、本実施形態のスライドアシスト装置1では制動力がダンパー部材33によるものであることから、引戸Dの閉止速度が速い程、制動力も大きくなり、この制動力が大きければ、ベース体63と補助ガイド体64との離反方向への移動力も大きくなり、これに伴い押圧ブロック62による引戸Dに対する押圧力も大きくなる。従って、本実施形態の跳ね上げ抑制装置が装備されたスライドアシスト装置1は、引戸Dの閉止速度に応じて、その跳ね上げ抑制力を調整することができ、より簡単、確実に引戸Dの跳ね上げを抑制することができる。
さらに、押圧ブロック62は引戸Dの開閉時にスライド移動する装置本体3に組み込まれ、この押圧ブロック62によって同じくスライド移動する引戸Dの頂面を押圧するので、押圧ブロック62が静止している部材に摺接するようなことがなく、静止している部材を押圧する場合に比べて安定して押圧することができ、円滑に引戸Dの跳ね上げを抑制することができる。
スライドブロック341が十分に減速された後は、ダンパー部材33による制動力よりも引きバネ32による付勢力が上回る。従って、スライド部材34は、ダンパー部材33によって一定の抵抗が付与されつつ、ガイドスリット311aに沿って枠体31に対して相対的に上記保持位置側から初期位置に向かって移動する。
このとき、押圧ユニット6において、引きバネ32による付勢力によってベース体63が補助ガイド体64側に押し込まれてベース体63が補助ガイド体64に対して相対的に近接方向にスライド移動し、これに伴いガイドボス部65がボス挿通孔63aおよび傾斜ガイド孔62aに沿って移動する。この移動に伴い押圧ブロック62が上方に押し上げられ、押圧ユニット6は押圧状態から初期状態に移行する(図8参照)。
なお、以上に説明したスライドアシスト装置1は、本本実施形態に係る引戸の跳ね上げ抑制装置が装備されたアシスト装置の一実施形態であり、その具体的構成等については適宜変更可能である。以下、本実施形態の変形例を説明する。
(1)上記実施形態では、スライド部材34について、ブロック基体341aと突出係合部341bが異なる部材によって構成された分割構成を採用しているが、このブロック基体341aと突出係合部341bとを、図10に示すように、一体構成してもよい。すなわち、図10に示すスライド部材134は、スライドブロック135と、このスライドブロック135に回動軸137によって軸支された回動掛合片136とを備え、回動掛合片136の一端突出部136aが上記実施形態における舌片342cの役割を果たし、他端突出部136bが上記実施形態における突出係合部341bおよび三角ブロック342bの一端部(図6,7における左端部)の役割を果たしている。このようにスライドブロックを一体構成することにより部品構成を少なくして一層簡単に構成することができる。
(2)上記実施形態では、押圧ユニット6を装置本体3側に設けたが、引戸D側に設けることもできる。この場合、押圧ユニット6の一端部(例えばベース体のベース連結部)が引戸Dに固定され、他端部(例えば補助ガイド体のガイド取付部)が連結部等の中間部材を介して装置本体に取り付けられ、補助ガイド体がベース体に対して相対的に移動可能に設置すれば、本実施形態と同様の作用を発揮し得る。この場合、押圧ブロックは装置本体3の下面を押圧することになる。
(3)上記実施形態では、引戸固定体2のベースブロック21が引戸Dの頂部に埋設されたものとなされているが、このベースブロック21の引戸Dに対する固定位置は本実施形態におけるものに限定されるものではなく、例えば引戸Dの正面(又は背面)等であってもよい。
(4)上記実施形態では、第1および第2のガイドユニット10,11について、ガイドローラが設けられたものについて説明しているが、このガイドローラに代えて、ガイドレールL内をスライドする滑り部材を設けてもよい。
(5)上記実施形態では、ベース体63のボス挿通孔63aに補助ガイド体64のガイドボス部65が挿通されることにより、ベース体63と補助ガイド体64とがスライド可能に連結されているが、この構成に加えて別途いずれか一方にスライド方向に延びるキー突出部を設け、他方にこのキー突出部が嵌入される案内溝を設け、両者のスライド移動を案内するように構成してもよい。