以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を変更しうることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
本発明に係るSOI基板の作製方法は、単結晶半導体基板と、ガラス基板と、を、バッファ層を間に介在させて貼り合わせた後、単結晶半導体基板を分割することでガラス基板上に単結晶半導体層を形成してSOI構造を得る。そして、ガラス基板上に積層されているバッファ層および単結晶半導体層でなる積層体の周辺領域を除去することで、前記積層体の外側にガラス基板を露出させ、前記積層体の外側に露出したガラス基板にマーキングすることで、他の基板と区別して識別できるSOI基板を作製することを要旨とする。SOI構造を得た後、バッファ層および単結晶半導体層の周辺領域を除去することで露出したガラス基板または周辺領域を除去した後の単結晶半導体層の外側に位置するガラス基板にマーキングすることで、マーキングおよびマーキングに付随して発生する膜剥がれなどの不良を防止することができる。
図1は、本発明に係るSOI基板の作製方法の一例を示すフロー図である。単結晶半導体基板を準備し(s101)、ガラス基板を準備する(s111)。
単結晶半導体基板については、該単結晶半導体基板の内部に脆化層を形成する。具体的には、単結晶半導体基板に加速されたイオンを照射することにより、単結晶半導体基板の表面から所定の深さの領域に結晶構造が損傷された脆化層を形成する。
ガラス基板は、支持基板として機能する。ガラス基板を用いることで、低コスト化、大面積化、および省資源化を図ることができる。
単結晶半導体基板と、ガラス基板と、を、バッファ層を間に介在させて貼り合わせる(s121)。
バッファ層としては、絶縁層を用いて、単層構造または2層以上の積層構造で形成する。また、バッファ層は、単結晶半導体基板およびガラス基板のいずれか一方の基板の表面上、または、両方の基板の表面上に設ける。単結晶半導体基板の表面上にバッファ層を形成する場合、脆化層を形成する前にバッファ層を形成する(s102)、または脆化層を形成した後にバッファ層を形成する(s104)ことができる。また、脆化層を形成する前にバッファ層を形成し、脆化層を形成した後にもバッファ層を形成してもよい。さらに、ガラス基板の表面上にバッファ層を形成する(s112)構成としてもよい。(s102)、(s104)、(s112)で形成されるそれぞれのバッファ層は、単層構造でも2層以上の積層構造でもよい。
単結晶半導体基板の表面のみにバッファ層を形成した場合は、バッファ層の表面とガラス基板の表面とを接合させて貼り合わせる。ガラス基板の表面のみにバッファ層を形成した場合は、単結晶半導体基板の表面とバッファ層の表面とを接合させて貼り合わせる。単結晶半導体基板の表面とガラス基板の表面とにバッファ層を形成した場合は、単結晶半導体基板側バッファ層の表面とガラス基板側バッファ層の表面とを接合させて貼り合わせる。
単結晶半導体基板に形成された脆化層を境として、単結晶半導体基板を分割する(s122)ことで、ガラス基板上にバッファ層を間に介在させて単結晶半導体層が形成されたSOI基板と、剥離基板と、を得る。
例えば、熱処理を行うことにより、温度上昇によって単結晶半導体基板に形成された脆化層に亀裂が生じるので、脆化層に沿って単結晶半導体基板を分割することができる。単結晶半導体基板とガラス基板は、バッファ層を間に介在して貼り合わされているため、ガラス基板上に単結晶半導体基板から分離された単結晶半導体層が形成される。
SOI基板において、ガラス基板上に形成されたバッファ層および単結晶半導体層の積層体の周辺領域を除去することで、ガラス基板を露出させる(s131)。そして、周辺領域を除去した単結晶半導体層およびバッファ層の積層体の外側に露出するガラス基板にマーキングしてマークを形成する(s132)。以上で、マークが形成されたSOI基板が作製される。
ガラス基板上に形成されたバッファ層および単結晶半導体層の積層体は、周辺領域を除去する。好ましくは、積層体を一回りする周辺領域を除去することで、単結晶半導体基板の分割後よりも積層体の平面形状を一回り小さくする。周辺領域を除去した後、積層体の外周端は、ガラス基板の外周端から内側に入った構成となる。SOI基板にマークを形成する前に除去する周辺領域として、接合強度が十分でない積層体端部の領域を除去することが好ましいが、除去量が増えるほど素子を形成できる有効面積が小さくなることも考慮する必要がある。具体的には、ガラス基板111の外周端と積層体130の外周端との距離が、mmオーダ程度、具体的には0mm以上10mm以下(但し0mmは除く)、好ましくは6mm以上10mm以下となるように周辺領域を除去することが好ましい。ガラス基板111の外周端と積層体130の外周端は、マーキングできる距離を有するようにする。単結晶半導体層およびバッファ層の積層体の外側に露出しているガラス基板にマーキングを行い、マークを形成する。
マークを形成する位置は限定されないが、基板端部などマークが読み取りやすい位置とすることが好ましい。マークの具体例は、文字、記号、バーコードなどが挙げられる。マークの大きさは、装置的に読み取り可能なサイズから人が視認するサイズまで含むものとし、例えば数100μmレベルから数mmレベルとする。また、マークは、ガラス基板に凹部或いは溝を掘ることで形成する、または、ガラス基板を変色或いは変質させて形成することができる。SOI基板に形成されたマークは、基板管理、ロット管理など製品管理に利用され、歩留まり向上や不良品発見に役立たせることができる。また、基板毎に識別できるマークを付与することで基板の枚葉管理を行うことができ、製品管理の精度を向上させることができる。
マーキングを行う前にバッファ層および単結晶半導体層でなる積層体の周辺領域を除去してガラス基板を露出させることで、マーキングによる膜剥がれを防止することができ、パーティクルの発生を低減させることができる。膜剥がれは、マーキング処理のときに生じるものの他に、後の工程で生じるものも含む。これは、マーキングにより接合部(例えばガラス基板とバッファ層との接合界面など)の接合強度が低下した状態で以降の工程が進むことで、ささいなきっかけなどでも膜剥がれが生じやすくなるからである。基板端部では接合強度が十分でなく、マーキングにより接合界面での膜剥がれも生じやすいため、本発明の構成を適用することが効果的である。
また、露出したガラス基板にマークを形成することで、マークが読み取りやすくなる。ここでは、マークをガラス基板に直接形成するため、薄膜にマークを形成する場合と比較して、途中でマークが消滅するなどの恐れが低くなる。したがって、自動読み取り装置などでマークを読み取る精度が向上する。人が目視により読み取りを行うマークとする場合も、視認性が良くなり容易になり、スムーズな製品管理を行うことができる。
なお、単結晶半導体基板から単結晶半導体層が分離された基板は、再生用基板として再生処理を行い、繰り返し利用することが好ましい。再生処理した再生用基板は、(s101)の単結晶半導体基板として利用することができる。もちろん、その他の用途に流用することもできる。
次に、図2、図3を参照して、本発明に係るSOI基板の作製方法を詳細に説明する。図2は本発明に係るSOI基板の作製方法の一例を示す断面図であり、図3は本発明に係るSOI基板の作製方法の一例を示す平面図である。図2は、図3の線分OP間の断面に相当する。
単結晶半導体基板101と、ガラス基板111とを準備する(図2(A)、(B)参照)。
単結晶半導体基板101としては、例えば単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板など、第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。また、ガリウムヒ素やインジウムリンなどの化合物半導体基板を用いることができる。また、単結晶半導体基板101は、単結晶半導体基板に代えて、多結晶半導体基板(代表的には多結晶シリコン基板)を用いることができる。この場合、以下に記載される単結晶は多結晶と置き換えられることとなる。つまり、後にガラス基板と貼り合わされ、分割されてガラス基板上に形成される半導体層は多結晶半導体層(代表的には多結晶シリコン層)となる。
市販のシリコン基板としては、直径5インチ(125mm)、直径6インチ(150mm)、直径8インチ(200mm)、直径12インチ(300mm)、直径16インチ(400mm)サイズの円形のものが代表的であるが、単結晶半導体基板101の形状は円形に限定されるものではない。本形態では、矩形状または多角形状である単結晶半導体基板101を用いることが好ましい。例えば、円形のシリコン基板を矩形状等に加工し、単結晶半導体基板101とすることが好ましい。これは、支持基板となるガラス基板は矩形のものが多いことや、素子を形成する際には矩形の方が素子を形成する有効面積を広く取りやすいためである。また、微細な素子の形成に必要となる露光装置(例えば、ステップ・アンド・スキャン方式を用いるステッパーや、ミラープロジェクション方式を用いるMPA(Mirror Projection Mask Aligner)など)により露光されるパターン形状を考慮しても、矩形状とすることが好ましい。本明細書における「矩形状」は、正方形および長方形を含む。また、「多角形状」とは、3角形以上の、4角形、5角形、6角形などの形状を含むものとする。また、単結晶半導体基板101は、CZ(Czochralski)法やFZ(Floating Zone)法を用いて作製することができる。
ガラス基板111は透光性を有する基板であり、具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、または石英ガラス基板などのガラス基板を用いる。好ましくは、ガラス基板111としてアルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、または、バリウムホウケイ酸ガラスを用いると、安価で大面積化が可能なため、低コスト化を図ることができる。また、ガラス基板111は、酸化セリウムなどで研磨され、表面として平坦性が良好な研磨面を有する研磨ガラス基板を用いることが好ましい。ガラス基板111の表面が良好な平坦性を有するほど接合強度を高めることができる。また、ガラス基板111の表面を接合面とする場合は、該ガラス基板111の接合面を研磨面とすることで、接合強度が高まり接合不良を低減することができる。
次に、単結晶半導体基板101の表面から所定の深さの領域に結晶構造が損傷された脆化層103を形成し、その後、バッファ層105を間に介在させて単結晶半導体基板101とガラス基板111とを貼り合わせる(図2(C)参照)。
単結晶半導体基板101の内部に形成する脆化層103は、運動エネルギーを有する水素等のイオンを単結晶半導体基板101に照射することにより形成することができる。
バッファ層105は、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化シリコン層、または窒化酸化シリコン層などの絶縁層を用いて、単層構造または2層以上の積層構造で形成する。バッファ層105を形成する絶縁層は、CVD法、スパッタリング法、原子層エピタキシ(ALE)法、または熱酸化法などにより形成することができる。
なお、本明細書における酸化窒化シリコン層とは、組成として窒素よりも酸素の含有量が多く、好ましくはラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)及び水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合に、組成範囲として酸素が50atoms%乃至70atoms%、窒素が0.5atoms%乃至15atoms%、シリコンが25atoms%乃至35atoms%、水素が0.1atoms%乃至10atoms%の組成範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコン層とは、組成として酸素よりも窒素の含有量が多く、RBS及びHFSを用いて測定した場合に、酸素が5atoms%乃至30atoms%、窒素が20atoms%乃至55atoms%、シリコンが25atoms%乃至35atoms%、水素が10atoms%乃至30atoms%の組成範囲で含まれるものをいう。
次に、単結晶半導体基板101に形成された脆化層103を境として単結晶半導体基板101を分割することにより、ガラス基板111上にバッファ層105を間に介在させて単結晶半導体層120を形成する(図2(D)、図3(A)参照)。
単結晶半導体基板101を分割する手段としては、熱処理が挙げられる。熱処理による温度上昇によって、脆化層103に形成されている微小な空洞の体積変化が起こり、脆化層103に亀裂が生じることで、脆化層103に沿って単結晶半導体基板101が分割される。例えば、運動エネルギーを有する水素のイオンを照射して脆化層103を形成した場合は、熱処理による温度上昇によって、脆化層103に形成されている微小な空洞に添加された水素が析出し、内部の圧力が上昇する。該圧力の上昇により脆化層103の微小な空洞の体積変化が起こり、脆化層103に亀裂が生じ、単結晶半導体基板101を分割することができる。単結晶半導体基板101とガラス基板111の間に介在するバッファ層105はガラス基板111に貼り合わされているため、ガラス基板111上に単結晶半導体基板101から分離された単結晶半導体層120が形成される。ここまでで、ガラス基板111上にバッファ層105および単結晶半導体層120の積層体130が形成され、ガラス基板111上にバッファ層105を間に介在させて単結晶半導体層120が貼り付けられたSOI構造が形成される。
次に、ガラス基板111上のバッファ層105および単結晶半導体層120の周辺領域を除去することで、単結晶半導体層120の外側にガラス基板111を露出させる(図2(E)、図3(C)参照)。そして、積層体130の外側に位置するガラス基板111にマーキングを行い、マーク161を形成する(図2(F)、図3(D)参照)。
ガラス基板111上に設けられたバッファ層105および単結晶半導体層120の積層体130の周辺領域を除去することで、積層体130の外側にガラス基板111を露出する。周辺領域を除去した積層体130は、先の脆化層103を境とした分割で形成された単結晶半導体層120よりも、ガラス基板111の外周端から内側に入った構成となる。好ましくは、図3(C)に示すように、積層体130の周辺領域一回りを除去する。この場合、周辺領域除去後の積層体130は平面形状で一回り小さくなる。
バッファ層105および単結晶半導体層120でなる積層体130周辺領域の除去は、例えば、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により行う。図3(B)に示すように、単結晶半導体層120上に所望の形状のレジストマスク151を形成する。本形態では、積層体130の周辺領域一回りを除去する例を示すため、分割により得られた単結晶半導体層120よりも一回り小さいレジストマスク151を形成する。ウェーハ周辺露光装置を用いることで、容易に周辺領域を除去するためのレジストマスク151を形成することができる。そして、レジストマスク151を用いて積層体130をエッチングすることで、ガラス基板111を露出させる。エッチングは、ドライエッチングまたはウェットエッチングにより行うことができるが、ガラス基板111はエッチングされないようにすることが好ましい。好ましくは、ドライエッチングで積層体130をエッチングすることで、積層体130の端面(エッジ部分)を線状にすることができる。
積層体130を除去する周辺領域は、接合強度が十分でない領域とすることが好ましい。また、ガラス基板111にマークを形成するため、積層体130の外側にマークが形成できる程度のガラス基板111が存在するよう、除去量(除去する周辺領域の面積)を調整することが好ましい。例えば、ガラス基板111の外周端と積層体130の外周端との距離が、mmオーダ程度、具体的には0mm以上10mm以下(但し0mmは除く)、好ましくは6mm以上10mm以下となるよう、積層体130の周辺領域を除去することが好ましい。
マーク161としては、文字、記号、バーコードなどを形成する。個々の基板に異なるマーク161を形成することで、他の基板と区別して識別することが可能となる。他の基板と区別して識別できると、基板の枚葉管理を行うことができるため、基板毎に工程条件、検査結果などを詳細管理することが可能となり、製品管理の質を向上させることができる。
マーク161を形成する手段としては、レーザビーム、イオンビーム、または電子ビームなど、ビームの照射を利用したマーキングが挙げられる。代表的には、レーザマーカを用いたマーキングが挙げられる。ビームの照射により、ガラス基板に凹部或いは溝を形成する、または、ガラス基板の表面或いは内部を変色または変質させることで、ガラス基板にマークを形成することができる。例えば、ドット印字タイプのレーザマーカを用いて、マーキングする。これは、円形(楕円形を含む)のドットを所定間隔で形成することで、文字、記号、又はバーコードなどのマークを形成する方法である。
本形態は、脆化層103を境として単結晶半導体基板101を分割した段階の単結晶半導体層120およびバッファ層105で構成される積層体130の周辺領域を除去することで、ガラス基板111を露出させる。そして、積層体130より外側に露出したガラス基板111に直接マーク161を形成する。露出したガラス基板111上にマークを形成する構成とすることで、マーキングの際に起こる、又は、マーキング以降に起こる膜剥がれおよびパーティクルの発生を低減することができる。
ここで、ガラス基板に直接マークを形成する場合よりも、ガラス基板上に形成された薄膜にマークを形成する場合の方が膜剥がれを生じやすい理由について説明する。例えば、本形態では、バッファ層105や単結晶半導体層120の薄膜が存在する領域にマークを形成すると、膜剥がれが生じやすくなる。要因として、接合界面の密着性、および、マーキングの際のビーム照射による輻射熱などが挙げられる。
ここでは、ガラス基板111とバッファ層105との間に接合界面が存在している。また、ガラス基板111とバッファ層105は、材料、物性、厚さ(機械的強度)などが異なる。上述の通り、異種基板同士の貼り合わせは、物性の差違などにより、特に基板端部の接合強度が弱くなりやすい。本形態では、端部においてガラス基板111とバッファ層105との接合界面の密着性が低下しやすい。そのため、接合界面が存在している領域にマーキングすると、ビーム照射(例えばレーザビームの照射)がきっかけとなり、接合界面の密着性が不十分な領域からひび割れ、膜剥がれなどが起きてしまう。さらに、端部の接合界面は他の領域と比較して接合強度が低く、面内で接合強度が異なるため、接合強度の差違により歪みが生じてひび割れ、膜剥がれなどが起きるおそれが高い。例えば、基板面内では、中央よりも端部の方が接合強度が低くなりやすい。
ビーム照射による輻射熱は、物性の差違などにより、主にバッファ層105などの薄膜で熱吸収される。バッファ層105や単結晶半導体層120などの薄膜は、ビーム照射により与えられるエネルギーを緩和するなかで、マーキングされた領域周辺の薄膜まで溶融破壊される恐れがある。溶融破壊された薄膜は、膜剥がれとなり、マークの形状不良およびパーティクルの発生につながる。さらに、輻射熱により薄膜が溶融し、該溶融した部位から薄膜が消失する際に、薄膜が消失する部位の周辺部にも歪みが生じて、接合界面でひび割れを起こしうる。接合界面の密着性が弱ければ、ひび割れが進行し、膜剥がれとなりうる。また、接合強度が異なっていれば、歪みの度合いが増して、ひび割れなどを悪化させうる。
ガラス基板111に対して直接マークを形成することで、上述のような要因によるひび割れおよび膜剥がれなどの不良を抑制することができる。また、単結晶半導体層120およびバッファ層105などの薄膜よりも、バルクであるガラス基板111の方が衝撃(例えばレーザマーカなどの熱衝撃)に耐性が高いため、膜剥がれなどの不良を抑制することができる。したがって、歩留まり良く、他の基板と区別して識別可能なSOI基板を作製することができる。さらに、ガラス基板111に直接マークを形成することで、薄膜に形成する場合よりもマークが消滅しにくくなり、読み取り精度が向上する。その結果、製品管理の精度も向上することができる。
また、ガラス基板111と単結晶半導体層120とは、吸収する波長が完全には一致しない。ガラス基板111は透光性を有しており、単結晶半導体層120は非透光性またはガラスよりも低い透光性を有する。ガラスと単結晶半導体とでは、マーキングに好適な波長が異なる。一般的に、ガラスは紫外領域または赤外領域の波長を吸収しやすく、単結晶シリコンは紫外領域乃至可視領域の波長を吸収しやすい。本形態のように、ガラス基板111にのみマークを形成することで、ガラス基板111に好適な波長を選択してマーキングを行うことができ、マークを良好に形成することができる。
レーザマーカとしては、ガラス基板111に吸収される波長域のレーザビームを射出できるレーザを備えたものを用いる。具体的には、紫外領域(1nm乃至400nm)のレーザビーム、または赤外領域(900nm乃至2500nm)のレーザビームを射出できるレーザを備えたレーザマーカを用いることが好ましい。また、パルス発振レーザを備えることで、ドット印字を容易に行うことができる。例えば、赤外領域の波長域を有するレーザビームを射出できるレーザとしては、CO2レーザ、ガラスレーザ、Ti:サファイアレーザ、色素レーザが挙げられる。また、固体レーザであるYAGレーザ、YLFレーザ、YVO4レーザなどの基本波を用いることができる。紫外領域の波長域を有するレーザビームを射出できるレーザとしては、F2レーザ、ArFレーザおよびXeClレーザなどのエキシマレーザが挙げられる。また、固体レーザであるYAGレーザ、YLFレーザ、YVO4レーザなどの第2高調波および第3高調波などを用いることができる。
なお、レーザマーカによるマーキングは、射出するレーザビームの波長、エネルギー密度(単位面積および単位時間あたりのエネルギー)、および焦点位置(Focus位置)によって、制御される。
なお、マーク161を形成する大きさは特に限定されないが、積層体130の外側に位置するガラス基板111にマーク161を形成する。このとき、マーク161は積層体130に重ならないようにする。例えば、レーザマーカでマーキングする場合、1文字あたり0.5mm乃至5mm程度、1ドットあたり0.2mm乃至0.3mm程度の大きさでマーク161を形成する。
ここで、一例として、実際に「BB406−21」とマーキングしたガラス基板の観察写真を図16に示す。ここでは、ドット印字タイプで、発振波長9.3μm乃至11.5μmを選択できるパルス発振CO2ガスレーザを備えたレーザマーカを用いて、「BB406−21」をマーキングした。1ドットあたりの大きさ(ドットサイズ)は横約0.21mm、縦約0.28mm、1文字あたりの大きさは横約2.5mm程度、縦約5.0mm程度である。
マーク161を形成する位置はガラス基板111上であれば限定されないが、読み取りやすさなどを考慮して基板端部にマーク161を形成することが好ましい。マーク161は積層体130に重ならなければよく、積層体130の周辺領域を除去して露出させたガラス基板111にマークを形成してもよいし、周辺領域を除去する前の段階で積層体130の外側に既に露出していたガラス基板111にマークを形成してもよい。
なお、図2(E)、図3(C)において、積層体130の周辺領域除去に用いたレジストマスク151は、残存させたままマーク161を形成し、該マーク161形成後に除去することが好ましい。レジストマスク151を残存させたままマーク161を形成することで、マーキングにより発生するパーティクルなどのゴミが単結晶半導体層120表面に付着することを防止することができる。マーク161を形成した後、不要となったレジストマスク151を除去すればよい。
以上により、他の基板と区別して識別可能なSOI基板を、歩留まり良く作製することができる。
なお、本形態に係るSOI基板の作製方法は、ガラス基板上のバッファ層および単結晶半導体層でなる積層体130の端面(エッジ部分)を直線的にし、端面からの膜剥がれを抑制する効果を得ることができる。単結晶半導体基板とガラス基板との貼り合わせは、ガラス基板のうねりや撓み、または、基板端部の形状(代表的にはシリコンウェーハのエッジロールオフ(ERO;Edge Roll Off))などの要因により、貼り合わせた段階で端面の接合強度が十分でない。そのため、単結晶半導体基板を分割する段階で、ガラス基板と単結晶半導体基板(または、単結晶半導体基板に設けられたバッファ層)との接合が耐えきれず、単結晶半導体基板(または、単結晶半導体基板に設けられたバッファ層)の端部が貼り付かないまま剥離されてしまうことがある。また、接合強度が一定でなく、端面において貼り付く領域と貼り付かない領域が不規則に表れうる。そのため、単結晶半導体基板を分割して、ガラス基板上に形成したバッファ層および単結晶半導体層の積層体の端面の形状は、そのままではぎざぎざとなってしまうことが多い。そこで、上記図3の平面図に示すように、周辺領域を除去することで、ぎざぎざ形状である積層体端面(エッジ部分)を除去することになり、ガラス基板111上のバッファ層105および単結晶半導体層120の積層体130端面(エッジ部分)を線状にすることができる。ガラス基板上の積層体端面は、ぎざぎざを無くす又は低減することで、端面からの剥がれを抑制することができる。
また、上記図3に示す平面図では、積層体130がガラス基板111よりも一回り小さくなるよう周辺領域を除去する例を示したが、少なくともマークを形成する領域の積層体130を除去することで、マーキングによる膜剥がれを低減する効果を得ることができる。
例えば、図17に示すように、マーク161を形成する領域およびその近傍の積層体130を除去する構成としてもよい。マーク161を形成する領域のみを正確に除去することは難しいため、多少のずれは許容するものとする。少なくともマーク161を形成する領域の積層体130を除去することで、マーキングが直接的な要因となって生じる膜剥がれは低減することができる。
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて行うことができる。
(実施の形態2)
本形態では、ガラス基板に貼り付ける単結晶半導体基板の形状について説明する。
市場に流通しているガラス基板は、平面形状が矩形のものが多い。貼り合わせる基板同士は類似の形状である方が扱いやすく、装置の構成や生産性なども考慮して、貼り合わせる単結晶半導体基板は平面形状を矩形状とすることが好ましい。矩形状の単結晶半導体基板をガラス基板に貼り合わせ、該単結晶半導体基板を分割すれば、ガラス基板上に矩形状の単結晶半導体層が貼り付けられる。
図4に、単結晶半導体基板の平面形状および加工例を示す。
例えば、市販されている単結晶シリコン基板は、図4(A)に示すように円形状の単結晶半導体基板101aが多い。円形状の単結晶半導体基板101aをこのままガラス基板111に貼り付けてもよいが、矩形状に切り出すことが好ましい。
図4(B)では、円形状の単結晶半導体基板101aに内接する大きさで最大となるように、矩形の単結晶半導体基板101bを切り出す例を示している。ここでは、単結晶半導体基板101bの角部(4隅)の頂点の角度はほぼ90°とする。
図4(C)では、円形状の単結晶半導体基板101aに内接する最大の矩形領域よりも対辺の間隔が長くなるように単結晶半導体基板101cを切り出す例を示している。ここでは、単結晶半導体基板101cの角部の頂点の角度は90°とならず、単結晶半導体基板101cは多角形状となる。
図4(D)では、円形状の単結晶半導体基板101aから6角形の単結晶半導体基板101dを切り出す例を示している。円形状の単結晶半導体基板101aから切り出す単結晶半導体基板101dの形状を6角形とすることで、切り代となり無駄になる半導体量を減らすことができる。
なお、図4(B)〜(D)では、円形状の単結晶半導体基板から所望の形状に基板を切り出す例について示したが、円形状以外の基板から所望の形状に切り出してもよいし、所望の断面形状(例えば矩形状)を有するインゴットをスライスすることで所望の基板を得てもよい。
市販されている多くの単結晶シリコン基板は円形状であるため、上述の特許文献3および特許文献4においては、円形状である単結晶半導体基板上に円形状の単結晶半導体層が貼り付けられた構成が示されている。ここで、円形状の単結晶半導体層と比較すると、矩形状または多角形状の単結晶半導体層は角部(例えば4隅の角)を有しており、角部で応力集中が起きやすい。そのため、矩形状または多角形状の単結晶半導体基板は、周辺領域、特に角部で接合強度が弱いまま貼り付けられやすく、膜剥がれが起きやすくなるという問題が生じる。
上記実施の形態1の図2、図3で示したように、単結晶半導体層を分割した段階の単結晶半導体層120およびバッファ層105で構成される積層体130の周辺領域を除去してガラス基板111を露出させる。そして、積層体130の外側に位置するガラス基板111にマーク161を形成する。他の領域と比較して接合強度が十分でない周辺領域を除去することで膜剥がれなど接合不良を防ぐことができ、さらにマークを形成する領域を確保できる。ガラス基板111にマーク161を形成するため、マーキングによる膜剥がれを防ぐことができる。
ガラス基板と単結晶半導体基板とを貼り合わせ、該単結晶半導体基板を分割してSOI構造を形成し、ガラス基板上に形成されたバッファ層および単結晶半導体層の周辺領域を除去した後にマークを形成して、他の基板と区別して識別可能なSOI基板を作製する。このようにすることで、矩形状または多角形状の基板を用いた場合の形状起因による接合不良、具体的には角部で応力集中が生じ接合不良が起きやすいなど形状に起因する不良を防ぐことができる。また、形状に起因する不良を防止して、歩留まり良くSOI基板を作製することができる。さらに、素子形成領域となる単結晶半導体層が矩形状または多角形状のSOI基板を歩留まり良く作製することができ、素子の有効面積が広いSOI基板を作製できるという点からも効果的である。
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて行うことができる。
(実施の形態3)
本形態では、単結晶半導体基板を分割するきっかけとなる脆化層の形成について説明する。
上記実施の形態1の図1〜図3に示したように、単結晶半導体基板101の表面から所定の深さの領域に結晶構造が損傷された脆化層103を形成する。
脆化層103は、運動エネルギーを有するイオンを単結晶半導体基板101に照射することで、該単結晶半導体基板101内部に形成することができる。具体的には、加速されたイオンを単結晶半導体基板101に照射することで、単結晶半導体基板101の表面から所定の深さの領域に照射されたイオンを構成する元素が添加され、脆化層103を形成することができる。運動エネルギーを有するイオンとは、ソースガスを励起してソースガスのプラズマを生成し、該プラズマに含まれるイオンを電界の作用によりプラズマから引き出して加速したイオンである。
脆化層103が形成される領域の深さは、イオンの運動エネルギー、質量と電荷、イオンの入射角(照射角)によって調節することができる。また、イオンの運動エネルギーは加速電圧、ドーズ量などにより調節できる。イオンを構成する元素の平均侵入深さとほぼ同じ深さの領域に脆化層103が形成される。そのため、イオンを照射し、該イオンを構成する元素を添加する深さで、単結晶半導体基板101から分離される単結晶半導体層120の厚さが決定される。例えば、トランジスタなどの半導体素子形成用基板として用いるには、単結晶半導体層120の厚さが10nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下になるように、脆化層103が形成される深さを調節する。
脆化層103の形成は、イオンドーピング処理で行うことができる。イオンドーピング処理は、イオンドーピング装置を用いて行うことができる。イオンドーピング装置の代表的な装置は、プロセスガスをプラズマ励起して生成された全ての種類のイオンをチャンバー内に配置された被処理体に照射する非質量分離型の装置である。非質量分離型の装置は、プラズマ中のイオンを質量分離しないで、全ての種類のイオンを被処理体に照射する。これに対して、イオン注入装置は質量分離型の装置である。イオン注入装置は、プラズマ中のイオンを質量分離し、ある特定の質量のイオンを被処理体に照射する装置である。
イオンドーピング装置の主要な構成は、被処理体を配置するチャンバー、所望のイオンを発生させるイオン源、およびイオンを加速し、照射するための加速機構である。イオン源は、所望のイオンを生成するためのソースガスを供給するガス供給装置、ソースガスを励起して、プラズマを生成させるための電極などで構成される。プラズマを形成するための電極として、フィラメント型の電極や容量結合高周波放電用の電極などが用いられる。加速機構は、引出電極、加速電極、減速電極、接地電極等の電極など、およびこれらの電極に電力を供給するための電源などで構成される。加速機構を構成する電極には複数の開口やスリットが設けられており、イオン源で生成されたイオンは電極に設けられた開口やスリットを通過して加速される。なお、イオンドーピング装置の構成は上述したものに限定されず、必要に応じた機構が設けられる。
本実施の形態では、イオンドーピング装置で、水素を単結晶半導体基板101に添加するものとし、プラズマソースガスとして水素を含むガス(例えば、H2)を供給する。水素ガスを励起してプラズマを生成し、質量分離せずに、プラズマ中に含まれるイオンを加速し、加速されたイオンを単結晶半導体基板101に照射する。
イオンドーピング装置において、水素ガスから生成されるイオン(H+、H2 +、H3 +)の総量に対してH3 +の割合が50%以上とする。好ましくは、そのH3 +の割合を80%以上とする。イオンドーピング装置は質量分離を行わないため、プラズマ中に生成される複数の種類のイオンのうち、1つ(H3 +)を50%以上とすることが好ましく、80%以上とすることが好ましい。照射するイオンにおいて、同じ質量のイオンの割合を多くすることで、単結晶半導体基板101の同じ深さに集中させてイオンを構成する元素を添加することができる。
脆化層103を浅い領域に形成するためには、イオンの加速電圧を低くする必要があるが、プラズマ中のH3 +イオンの割合を高くすることで、原子状水素(H)を効率よく、単結晶半導体基板101に添加できる。イオンの加速電圧を大きくできれば、イオンの照射工程のタクトタイムを短縮することが可能となり、生産性やスループットの向上を図ることができる。
イオンドーピング装置は廉価で、大面積処理に優れているため、このようなイオンドーピング装置を用いてH3 +を照射することで、半導体特性の向上、大面積化、低コスト化、生産性向上などの顕著な効果を得ることができる。
なお、加速されたイオンを単結晶半導体基板101に照射する工程は、イオン注入装置で行うこともできる。イオン注入装置は、チャンバー内に配置された被処理体に、ソースガスをプラズマ励起して生成された複数の種類のイオンを質量分離し、特定の種類のイオンを照射する質量分離型の装置である。したがって、イオン注入装置を用いる場合は、水素ガスやPH3を励起して生成されたH+イオンおよびH2 +イオンを質量分離して、H+イオンまたはH2 +イオンの一方のイオンを加速して、単結晶半導体基板101に照射する。
このように、イオンを照射して脆化層103を形成した後は、上記実施の形態1で示したように、熱処理などによって単結晶半導体基板101を分割すればよい。ガラス基板上に形成される単結晶半導体層が分離された単結晶半導体基板は、再生処理などを行い、繰り返し利用することができる。
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて行うことができる。
(実施の形態4)
本形態では、単結晶半導体基板とガラス基板との貼り合わせの具体例に関し、図面を参照して説明する。
単結晶半導体基板101を準備する(図5(A−1)参照)。単結晶半導体基板101の表面は、汚染除去の点から、あらかじめ硫酸過水(SPM)、アンモニア過水(APM)、塩酸過水(HPM)、希フッ酸(DHF)などを用いて適宜洗浄することが好ましい。また、希フッ酸とオゾン水を交互に吐出して洗浄してもよい。
次に、単結晶半導体基板101の表面に酸化層102を形成する(図5(A−2)参照)。
酸化層102は、例えば、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層等の単層、又はこれら薄膜の積層を用いることができる。酸化層102は、熱酸化法、CVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、CVD法を用いて酸化層102を形成する場合には、テトラエトキシシラン(略称;TEOS:化学式Si(OC2H5)4)等の有機シランを用いて作製される酸化シリコン層を酸化層102に用いることが生産性の点から好ましい。
本実施の形態では、単結晶半導体基板101に熱酸化処理を行うことにより酸化層102(ここでは、SiOx層)を形成する(図5(A−2)参照)。熱酸化処理は、酸化性雰囲気中にハロゲンを添加して行うことが好ましい。
例えば、塩素(Cl)が添加された酸化性雰囲気中で単結晶半導体基板101に熱酸化処理を行うことにより、塩素酸化された酸化層102を形成する。この場合、酸化層102は、塩素原子を含有した薄膜となる。
酸化層102中に含有された塩素原子は、歪みを形成する。その結果、酸化層102の水分に対する吸収割合が向上し、拡散速度が増大する。つまり、酸化層102表面に水分が存在する場合に、当該表面に存在する水分を酸化層102中に素早く吸収し、拡散させることができる。
熱酸化処理の一例としては、酸素に対し塩化水素(HCl)を0.5体積%〜10体積%(好ましくは2体積%)の割合で含む酸化性雰囲気中で、900℃〜1150℃の温度(代表的には1000℃)で行うことができる。処理時間は0.1時間〜6時間、好ましくは0.5時間〜1時間とすればよい。形成される酸化層の膜厚としては、10nm〜1000nm(好ましくは50nm〜300nm)、例えば100nmの厚さとする。
本実施の形態では、酸化層102に含まれる塩素原子の濃度を1×1017atoms/cm3〜1×1021atoms/cm3となるように制御する。酸化層102に塩素原子を含有させることによって、外因性不純物である重金属(例えば、Fe、Cr、Ni、Mo等)を捕集して単結晶半導体基板101が汚染されることを防止する効果を奏する。
脆化層103を形成する際にイオンドーピング装置を用いる場合は重金属も同時に導入されるおそれがある。しかし、塩素元素を含有する酸化層102にイオンを照射し、酸化層102を介してイオンを構成する元素を添加する構成とすることで、単結晶半導体基板101が重金属により汚染されることを防ぐことができる。
また、酸化層102として、HCl酸化などによって膜中に塩素等のハロゲンを含ませることにより、単結晶半導体基板101に悪影響を与える不純物(例えば、Na等の可動イオン)をゲッタリングすることができる。具体的には、酸化層102を形成した後に行われる熱処理により、単結晶半導体基板101に含まれる不純物が酸化層102に析出し、ハロゲン原子(例えば塩素原子)と反応して捕獲されることとなる。それにより酸化層102中に捕集した当該不純物を固定して単結晶半導体基板101の汚染を防ぐことができる。また、酸化層102はガラス基板と貼り合わせた場合に、ガラスに含まれるNa等の不純物を固定する膜として機能しうる。
酸化層102として、HCl酸化などによって膜中に塩素等のハロゲンを含ませることは、半導体基板の洗浄が不十分である場合や、再利用して繰り返し用いられる半導体基板の汚染除去に有効となる。
なお、酸化層102に含有させるハロゲン原子としては塩素原子に限られない。酸化層102にフッ素原子を含有させてもよい。単結晶半導体基板101表面をフッ素酸化するには、単結晶半導体基板101表面にHF溶液に浸漬した後に酸化性雰囲気中で熱酸化処理を行うことや、NF3を酸化性雰囲気に添加して熱酸化処理を行えばよい。
次に、運動エネルギーを有するイオンを単結晶半導体基板101に照射することで、単結晶半導体基板101の所定の深さに結晶構造が損傷された脆化層103を形成する(図5(A−3)参照)。図5(A−3)に示すように、加速されたイオンを単結晶半導体基板101表面に形成された酸化層102に照射することで、酸化層102を介して単結晶半導体基板101の表面から所定の深さの領域に照射されたイオンを構成する元素が添加され、脆化層103を形成することができる。
次に、ガラス基板111を準備する(図5(B−1)参照)。ガラス基板111の表面は、あらかじめ洗浄することが好ましい。具体的には、塩酸過水(HPM)、硫酸過水(SPM)、アンモニア過水(APM)、希フッ酸(DHF)等を用いて、ガラス基板111の超音波洗浄を行う。例えば、塩酸過水を用いて、ガラス基板111表面を超音波洗浄することが好ましい。このような洗浄処理を行うことによって、ガラス基板111表面の平坦化や残存する研磨粒子の除去を行うことができる。
次に、ガラス基板111の表面に窒素含有層113(例えば、窒化シリコン層(SiNx)又は窒化酸化シリコン層(SiNxOy)(x>y)等の窒素を含有する絶縁層)を形成する(図5(B−2)参照)。
本実施の形態において、窒素含有層113は、単結晶半導体基板101上に設けられた酸化層102と接合する層(接合層)となる。また、窒素含有層113は、後にガラス基板上に単結晶構造を有する単結晶半導体層を設けた際に、ガラス基板に含まれるNa等の不純物が単結晶半導体層に拡散することを防ぐためのバリア層として機能する。
また、窒素含有層113を接合層として用いるため、接合不良を抑制するには窒素含有層113の表面を平滑とすることが好ましい。具体的には、窒素含有層113の表面の平均面粗さ(Ra)を0.5nm以下、自乗平均粗さ(Rms)を0.60nm以下、より好ましくは、平均面粗さを0.35nm以下、自乗平均粗さを0.45nm以下となるように窒素含有層113を形成する。膜厚は、10nm以上200nm以下、好ましくは50nm以上100nm以下の範囲で設けることが好ましい。
次に、単結晶半導体基板101の酸化層102が形成された表面とガラス基板111の窒素含有層113が形成された表面とを対向させ、酸化層102の表面と窒素含有層113の表面とを接合させる(図5(C)参照)。酸化層102および窒素含有層113は、上記実施の形態1のバッファ層105を形成する。本形態では、酸化層102の形成は図1のバッファ層形成(s102)に相当し、窒素含有層113は図1のバッファ層形成(s112)に相当する。
ここでは、単結晶半導体基板101とガラス基板111とを対向させ、単結晶半導体基板101表面の酸化層102とガラス基板111の窒素含有層113とを密着させた後、単結晶半導体基板101の一箇所に1N/cm2〜500N/cm2、好ましくは1N/cm2〜20N/cm2、例えば17N/cm2程度の圧力を加える。圧力を加えた部分から酸化層102と窒素含有層113とが接合しはじめ、自発的に接合が形成され全面におよぶ。接合は、ファンデルワールス力や水素結合が作用しており、熱処理を伴わず、常温で行うことができるため、ガラス基板111のように耐熱温度が低い基板を用いることができる。
なお、単結晶半導体基板101とガラス基板111との貼り合わせを行う前に、単結晶半導体基板101上に形成された酸化層102と、ガラス基板111上に形成された窒素含有層113の表面処理を行うことが好ましい。
表面処理としては、プラズマ処理、オゾン処理、メガソニック洗浄、2流体洗浄(純水や水素添加水等の機能水を窒素等のキャリアガスとともに吹き付ける方法)又はこれらの方法を組み合わせて行うことができる。特に、酸化層102、窒素含有層113の少なくとも一方の表面にプラズマ処理を行った後に、オゾン処理、メガソニック洗浄、2流体洗浄等を行うことによって、酸化層102、窒素含有層113表面の有機物等のゴミを除去し、表面を親水化することができる。その結果、酸化層102と窒素含有層113の接合強度を向上させることができる。
また、酸化層102と窒素含有層113を接合させた後、接合強度を高めるための熱処理を行うことが好ましい。熱処理の温度は、脆化層103に亀裂を発生させない温度とし、例えば、室温以上410℃未満の温度範囲で処理する。また、室温以上410℃未満の温度範囲で加熱した雰囲気下で、酸化層102と窒素含有層113を密着させ接合させてもよい。熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Anneal)装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。接合強度を増加させるための熱処理は、貼り合わせを行った装置或いは場所で、そのまま連続して行うことが好ましい。また、接合強度を高めるための熱処理からそのまま連続して、脆化層103を境とした単結晶半導体基板101を分割する熱処理を行ってもよい。
一般的に、酸化層102と窒素含有層113との接合と同時に、又は、酸化層102と窒素含有層113とを接合させた後に熱処理を行うと、接合界面において脱水反応が進行し、接合界面同士が近づき、水素結合の強化や共有結合が形成されることにより接合が強化される。脱水反応を促進させるためには、脱水反応により接合界面に生じる水分を高温で熱処理を行うことにより除去する必要がある。つまり、接合後の熱処理温度が低い場合には、脱水反応で接合界面に生じた水分を効果的に除去できないため、脱水反応が進まず接合強度を十分に向上させることが難しい。
一方で、酸化層102として、塩素原子等を含有させた酸化層を用いた場合、当該酸化層102が水分を吸収し拡散させることができるため、接合後の熱処理を低温で行う場合であっても、脱水反応で接合界面に生じた水分を酸化層102へ吸収、拡散させ脱水反応を効率良く促進させることができる。この場合、ガラス基板111としてガラス等の耐熱性が低い基板を用いた場合であっても、酸化層102と窒素含有層113の接合強度を十分に向上させることが可能となる。また、バイアス電圧を印加してプラズマ処理を行うことにより、酸化層102の表面近傍にマイクロポアを形成し、水分を効果的に吸収し拡散させ、低温であっても酸化層102と窒素含有層113の接合強度を向上させることができる。
次に、熱処理を行うことにより、脆化層103を境として単結晶半導体基板101を分割して、ガラス基板111上に、酸化層102及び窒素含有層113を介して単結晶半導体層120を形成する(図5(D)参照)。
熱処理による温度上昇によって、脆化層103に形成されている微小な空洞の体積変化が起こり、脆化層103に亀裂が生じるため、該脆化層103に沿って分割することができる。酸化層102とガラス基板111に形成された窒素含有層113が接合しているので、ガラス基板111上には単結晶半導体基板101から分離された単結晶半導体層120が形成される。また、ここでの熱処理の温度は、ガラス基板111の歪み点を越えない温度とする。
熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Anneal)装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。例えば、RTA装置を用いる場合、加熱温度550℃以上730℃以下、処理時間0.5分以上60分以内で行うことができる。
なお、上述したガラス基板111に形成された窒素含有層113と単結晶半導体基板101に形成された酸化層102との接合強度を高めるための熱処理を行わず、図5(C)における熱処理を行うことにより、酸化層102と窒素含有層113との接合強度を増加するための熱処理工程と、脆化層103における単結晶半導体基板101の分割のための熱処理工程を同時に行ってもよい。
ここまでの工程で、ガラス基板111上に、窒素含有層113、酸化層102および単結晶半導体層120の積層体130が形成され、ガラス基板111上に窒素含有層113および酸化層102を間に介在させて単結晶半導体層120が貼り付けられたSOI構造が形成される。
次に、ガラス基板111上に形成された、窒素含有層113、酸化層102および単結晶半導体層120の周辺領域を除去することで、単結晶半導体層120の外側にガラス基板111を露出させる。単結晶半導体層120を含む積層体130の外側に位置するガラス基板111にマーキングして、マーク161を形成する(図5(E)参照)。
本形態では、フォトリソグラフィ法により、単結晶半導体層120上にレジストマスク151を形成し、該レジストマスク151を用いて下方の単結晶半導体層120、酸化層102および窒素含有層113(積層体130)の周辺領域をエッチングする。
レジストマスク151は、除去したい周辺領域以外を覆うように単結晶半導体層120上に形成すればよく、ウェーハ周辺露光装置を用いることで容易に形成することができる。ガラス基板111の外周端とレジストマスク151の外周端との距離は、マークを形成する領域を有するようにする。本形態では、ガラス基板111の外周端と単結晶半導体層120上に形成するレジストマスク151の外周端との距離が8mmとなるよう、レジストマスク151を形成する。
積層体130のエッチングは、ドライエッチングまたはウェットエッチングを用いることができる。好ましくは、ドライエッチングを用い、例えば、フッ素系ガス、塩素系ガスなどを用いたドライエッチングにより、単結晶半導体層120、酸化層102および窒素含有層113を除去する。
積層体130周辺領域のエッチング条件の一例としては、まず、平行平板型の電極に投入する電力150W、チャンバー内圧力800mTorr、エッチングガスにフッ素系ガスを用い、ガス流量比をSF6:He=28:12(sccm)として、単結晶半導体層120をエッチングする。次に、平行平板型の電極に投入する電力300W、エッチングガスにフッ素系ガスを用い、ガス流量比をSF6:He=20:20(sccm)として、酸化層102および窒素含有層113をエッチングする。
上記レジストマスク151を用いて積層体130をエッチングして、ガラス基板111を露出させる。例えば、単結晶半導体層120の外側に8mmほどガラス基板111が露出した構成とする。
ガラス基板111にマーク161を形成する。本形態では、単結晶半導体層120上にレジストマスク151を残存させたまま、レーザマーカによりガラス基板111にマーキングする。例えば、レーザマーカにより、文字、記号またはバーコードなどを刻印し、該刻印した文字などで縦数mm横数mm程度の大きさであるマーク161を形成する。マーク161は、単結晶半導体層120、酸化層102、および窒素含有層113に重ならないよう、ガラス基板111に形成する。単結晶半導体層120上はレジストマスク151で覆われているため、レーザマーカを用いたマーキングにより発生するパーティクルなどの付着は防ぐことができる。マーク161形成後、レジストマスク151を除去すればよい。
以上により、本発明に係るSOI基板を作製することができる。
本形態では、バッファ層として酸化層と窒素含有層を形成する。具体的には、ガラス基板側に窒素含有層を設け、単結晶半導体基板側に塩素原子等のハロゲン原子を有する酸化層を形成することにより、作製工程を簡略化するとともに、ガラス基板との貼り合わせ前に単結晶半導体基板へ可動イオンなどの不純物が侵入することを抑制することができる。また、単結晶半導体基板側に設けるバッファ層として塩素原子等のハロゲン原子を有する酸化層を形成することで、接合後の熱処理を低温で行う場合であっても、脱水反応を効率よく促進させることができ、接合強度を増加させることができる。
また、ガラス基板上に設けられたバッファ層と単結晶半導体層でなる積層体の周辺領域は除去するため、接合強度が十分強い領域を残してSOI基板を作製することができる。ガラス基板を露出させ、該ガラス基板に直接マーキングを行うため、膜剥がれを抑制でき歩留まりを向上させる。ガラス基板端部に形成されたマークにより、基板の枚葉管理が可能となり、製品管理の精度を向上させることができる。
なお、本実施の形態では、単結晶半導体基板101上に酸化層102を形成し、ガラス基板111上に窒素含有層113を形成する場合を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、単結晶半導体基板101上に酸化層102と窒素含有層を順に積層させて形成し、酸化層102上に形成された窒素含有層の表面とガラス基板111との表面とを接合させてもよい。この場合、窒素含有層は脆化層103の形成前に設けてもよいし、形成後に設けてもよい。なお、窒素含有層上に酸化層(例えば、酸化シリコン)を形成し、当該酸化層の表面とガラス基板111の表面とを接合させても良い。
また、ガラス基板111から単結晶半導体層120への不純物の混入が問題とならない場合には、ガラス基板111上に窒素含有層113を設けずに、単結晶半導体基板101上に設けられた酸化層102の表面とガラス基板111の表面とを接合させてもよい。
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて行うことができる。
(実施の形態5)
本形態では、脆化層を境として単結晶半導体基板を分割することでガラス基板上に単結晶半導体層を形成した後、所望の処理を行い、結晶性の改善や平坦化を図る例について説明する。
脆化層を境として単結晶半導体基板を分割することにより、ガラス基板上に単結晶半導体層を形成する方法は、脆化層の形成や分割工程により、得られる単結晶半導体層の結晶性や平坦性が低下しやすい。
例えば、図6に示すように、単結晶半導体層120にレーザビーム180を照射する。単結晶半導体層120の分離面側から、または、ガラス基板111側からレーザビーム180を照射することで、単結晶半導体層120を溶融させ、結晶性の改善および平坦性の向上を図る。
好ましくは、レーザビーム180の照射により、単結晶半導体層を部分溶融させる。単結晶半導体層を部分溶融させることで、溶融されていない固相部分から結晶成長が進行するため、結晶性を低下させることなく、結晶欠陥を修復することができる。なお、本明細書において、部分溶融とは、単結晶半導体層の一部(例えば上層部分)は溶融されて液相状態となるが、その他(例えば(下層部分)は溶融せずに固相状態のままであることをいう。また、完全溶融とは、単結晶半導体層が下部界面付近まで溶融されて、液相状態になることをいう。
レーザビームの照射による結晶性の改善は、ガラス基板としてガラス基板のような耐熱性の低い基板を用いる場合に好適である。これは、単結晶半導体層にレーザビームを照射しても、ガラス基板は直接加熱されず、ガラス基板に与えられる熱を抑えることができるからである。
なお、レーザビーム照射の代わりにRTAやフラッシュランプ照射を行ってもよい。
また、単結晶半導体層120の分離面側にエッチング処理を行うことによって結晶欠陥の除去、平坦化を図ることができる。エッチング処理としてはドライエッチング、ウェットエッチング、または両者を組み合わせて行う。また、エッチング処理の代わりにCMP等の研磨処理を行うことで、結晶欠陥の除去、平坦化を図ってもよい。
また、脆化層を境として分割することによりガラス基板上に形成された単結晶半導体層に対し、レーザビームの照射と、エッチング処理と、を組み合わせて行うこともできる。一例としては、脆化層を境として分割することによりガラス基板上に形成された単結晶半導体層に対し、まず、ドライエッチングにより分離面となった単結晶半導体層表面を除去する。次に、単結晶半導体層の分離面側からレーザビームを照射する。次に、単結晶半導体層の分離面となった側の表面を、ドライエッチングする。単結晶半導体層の分離面をエッチングしてからレーザビームを照射することで、単結晶半導体層中に結晶欠陥を取り込んでしまうことを防ぐことができる。また、エッチング処理を行うことで単結晶半導体層の薄膜化を図ることができる。所望の素子により、単結晶半導体層の最適な厚さは異なるが、例えば半導体素子を作製する場合は、単結晶半導体層の膜厚を5nm以上100nm以下とすることが好ましい。なお、エッチング処理による単結晶半導体層の薄膜化はレーザビーム照射前に行ってしまってもよいが、単結晶半導体層が薄い状態でレーザビームを照射すると部分溶融とさせにくく膜飛びするおそれもあるため、エッチング処理を2段階に分け、レーザビームの照射前と照射後とすることが好ましい。
本形態で示すレーザビームの照射やエッチング処理による結晶性改善は、ガラス基板上のバッファ層および単結晶半導体層の周辺領域除去前または周辺領域除去後に行うことができる。
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて行うことができる。
(実施の形態6)
本形態では、本発明に係るSOI基板を用いて半導体素子を作製する例について説明する。ここでは、半導体素子として、nチャネル型電界効果トランジスタとpチャネル型電界効果トランジスタを作製する例について、図7〜図9の断面図を用いて説明する。
まず、本発明を用いて作製されたSOI基板を準備する。該SOI基板は、ガラス基板111上に、バッファ層105を間に介在させて単結晶半導体層120が形成されており、単結晶半導体層120より外側に露出したガラス基板111にマーク161が形成されているものである。
単結晶半導体層120には、nチャネル型電界効果トランジスタ及びpチャネル型電界効果トランジスタの形成領域に合わせて、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物元素、若しくはリン、砒素などのn型不純物元素を添加することが好ましい。例えば、nチャネル型電界効果トランジスタの形成領域に対応してp型不純物元素を添加し、pチャネル型電界効果トランジスタの形成領域に対応してn型不純物元素を添加して、所謂ウェル領域を形成する。不純物イオンのドーズ量は1×1012ions/cm2乃至1×1014ions/cm2程度で行えばよい。さらに、電界効果トランジスタのしきい値電圧を制御する場合には、これらのウェル領域にn型不純物元素若しくはp型不純物元素を添加すればよい。
次に、図7(B)に示すように、単結晶半導体層120をエッチングして、素子の配置に合わせて島状に分離した単結晶半導体層120c、単結晶半導体層120dを形成する。本実施形態では、単結晶半導体層120cからnチャネル型電界効果トランジスタを作製し、単結晶半導体層120dからpチャネル型電界効果トランジスタを作製する。
次に、図7(C)に示すように、単結晶半導体層120c、単結晶半導体層120d上に、ゲート絶縁層310、ゲート電極を形成する導電層312、及び導電層314を順に形成する。
ゲート絶縁層310は、CVD法、スパッタリング法、又はALE法等により、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化シリコン層、又は窒化酸化シリコン層等の絶縁層を用いて、単層構造又は積層構造で形成する。
また、ゲート絶縁層310は、単結晶半導体層120c、単結晶半導体層120dに対してプラズマ処理を行うことにより、表面を酸化又は窒化することで形成してもよい。この場合のプラズマ処理はマイクロ波(代表的な周波数は2.45GHz)を用いて励起したプラズマによるプラズマ処理も含むものとする。例えばマイクロ波で励起され、電子密度が1×1011/cm3以上1×1013/cm3以下、且つ電子温度が0.5eV以上1.5eV以下のプラズマを用いた処理も含むものとする。このようなプラズマ処理を適用して半導体層表面の酸化処理又は窒化処理を行うことにより、薄くて緻密な膜を形成することが可能である。また、半導体層表面を直接酸化するため、界面特性の良好な膜を得ることができる。また、ゲート絶縁層310は、CVD法、スパッタリング法、又はALE法により形成した膜に対してマイクロ波を用いたプラズマ処理を行うことで形成してもよい。
なお、ゲート絶縁層310は半導体層との界面を形成するため、酸化シリコン層若しくは酸化窒化シリコン層が界面となるように形成することが好ましい。これは、窒化シリコン層又は窒化酸化シリコン層のように酸素よりも窒素の含有量が多い膜を形成すると、トラップ準位が形成され界面特性が問題となる恐れがあるからである。
ゲート電極を形成する導電層は、タングステン、タンタル、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、クロム、或いはニオブ等から選択された元素、前述の元素を含む合金材料、又は前述の元素を含む化合物材料などの導電材料を用いて、スパッタリング法やCVD法により、単層構造又は積層構造で形成する。その他、ゲート電極を形成する導電層としては、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコンに代表される半導体材料を用いることもできる。ゲート電極を積層構造とする場合は、異なる導電材料を用いて形成することもできるし、同一の導電材料を用いて形成することもできる。本形態では、ゲート電極を形成する導電層を、導電層312及び導電層314の2層構造で形成する例を示す。
本形態のように、導電層312及び導電層314の2層の積層構造でゲート電極を形成する場合は、例えば、窒化タンタル層とタングステン層、窒化チタン層とタングステン層、窒化モリブデン層とモリブデン層などの積層構造を形成することができる。窒化タンタル層とタングステン層との積層構造を形成すると、両者のエッチングレートに差がつけやすく、エッチングの選択比を高くできるため好ましい。なお、例示した2層の積層構造において、先に記載した層(例えば窒化タンタル層)をゲート絶縁層310上に接して形成することが好ましい。例えば、導電層312を20nm乃至100nmの厚さで形成し、導電層314を100nm乃至400nmの厚さで形成する。もちろん、ゲート電極は、導電層を3層以上積層した構造とすることもできる。
ここで、ゲート電極を形成する導電層(本形態では導電層312および導電層314)の成膜において、導電層より下層に存在する材料層や基板(ここではバッファ層105およびガラス基板111)に対し応力が加わる。このとき、材料層や基板に加わる応力は、他の領域と比較して端部が強くなる。また、本発明に係るSOI基板は、単結晶半導体基板とガラス基板とを貼り合わせて作製しており、接合面が存在する。例えば、上記実施の形態4では、単結晶半導体基板101に形成した酸化層102と、ガラス基板111に形成した窒素含有層113と、を接合面として貼り合わせている。接合面は、成膜した層と基板との界面などと比較すると、密着性が弱くなりやすい。そのため、ガラス基板上のバッファ層および単結晶半導体層でなる積層体の周辺領域を除去していない場合、ゲート電極を形成する導電層の成膜時に加わる応力に端部の接合面が耐えることができず、接合面が剥がれてしまうなどの不良が発生しやすくなってしまう。また、ゲート成膜時に加わる応力により端部の接合面で密着性が低下することで、ゲート成膜後の工程で剥がれなどの不良が発生するおそれもある。
しかし、本発明に係るSOI基板は、上記実施の形態で説明したように、単結晶半導体基板を分割することによりガラス基板上に単結晶半導体層を形成した後、マークを形成するため、ガラス基板上のバッファ層および単結晶半導体層でなる積層体の周辺領域を除去して、単結晶半導体層の外側にガラス基板を露出させた構成である。したがって、端部のガラス基板上にはバッファ層や単結晶半導体層が存在しておらず、ガラス基板と他の材料層(バッファ層)との接合も形成されていない。そのため、上述のようにゲート電極を形成する導電層の成膜にともなう剥がれなどを抑制することができる。
また、ゲート電極を形成する導電層は、低応力条件で成膜することが好ましい。ここで低応力とは、形成される導電層の応力がゼロに近くなる条件を示す。例えば、応力なしをゼロとし、該ゼロを境としてプラス(GPa)の符号をもつものは引っ張り応力、マイナス(GPa)の符号をもつものは圧縮応力とされる。低応力条件でゲート電極を形成する導電層を成膜することで、基板などに加わる応力を低くできるため、端部での剥がれなどの不良を防ぐ効果を高めることができるからである。
導電層の応力は、スパッタリング法による導電層成膜時の電力や圧力などによって調整することが可能である。例えば、導電層としてタングステン層を形成する場合、タングステン層成膜時の圧力を高くする、タングステン層成膜時の電力を低くする、または、タングステン層成膜時の基板温度(電極温度)を高くすることで、引っ張り応力の方向へ応力を調整することができる。したがって、通常の成膜条件では圧縮応力を有するタングステン層が形成される場合、成膜時の圧力を高くする、電力を高くする、または基板温度(電極温度)を高くすることで応力ゼロへ近づけ低応力とすることができる。
また、ゲート電極を形成する導電層を積層構造とする場合は、圧縮応力を有する導電層と引っ張り応力を有する導電層とを組み合わせることで、ゲート電極全体の応力をゼロに近づけ低応力とすることができる。例えば、窒化タンタル層とタングステン層の積層構造でゲート電極を形成する。窒化タンタル層は圧縮応力を有しやすいため、タングステン層は引っ張り応力を有することが好ましい。また、導電層を積層構造とする場合、それぞれの導電層の膜厚でもゲート電極全体の応力を調整することができる。
ゲート電極を形成する導電層312および導電層314の積層構造を低応力条件で成膜する一例としては、まず、窒化タンタルターゲットを用い、成膜電力1.0kW、成膜圧力0.6Pa、ガス流量比をAr(アルゴン):N2(窒素)=50:10(sccm)として、厚さ30nmの窒化タンタル層を形成する。次に、タングステンターゲットを用い、成膜電力4kW、成膜圧力2.0Pa、Arガス流量100sccm、被処理体裏面からの加熱Arガス流量10sccm、被処理体温度(基板温度)230℃として、厚さ370nmのタングステン層を形成する。このような条件で、導電層の積層構造を形成することで、ゲート電極を形成する導電層成膜にともなって下層のガラス基板やバッファ層に加わる応力を抑えることができる。
次に、導電層314上にレジストマスク320c、レジストマスク320dを選択的に形成する。そして、レジストマスク320c、レジストマスク320dを用いて第1のエッチング処理及び第2のエッチング処理を行う。
まず、レジストマスク320cを用いた第1のエッチング処理により導電層312及び導電層314を選択的にエッチングして、単結晶半導体層120c上に導電層316cおよび導電層318cを形成する。同時に、レジストマスク320dを用いた第1のエッチング処理により導電層312および導電層314を選択的にエッチングして、単結晶半導体層120d上に導電層316d及び導電層318dを形成する(図7(D)参照)。
次に、レジストマスク320cを用いた第2のエッチング処理により導電層318cの端部をエッチングして、導電層322cを形成する。同時に、レジストマスク320dを用いた第2のエッチング処理により導電層318dの端部をエッチングして、導電層322dを形成する(図7(E)参照)。なお、導電層322cは導電層316cよりも幅(キャリアがチャネル形成領域を流れる方向(ソース領域とドレイン領域を結ぶ方向)に平行な方向の長さ)が小さくなるように形成する。同様に、導電層322dは、導電層316dよりも幅が小さくなるように形成する。このようにして、導電層316c及び導電層322cからなる2層構造のゲート電極324c、並びに導電層316d及び導電層322dからなる2層構造のゲート電極324dを形成する。
第1のエッチング処理及び第2のエッチング処理に適用するエッチング法は適宜選択すればよいが、ECR(Electron Cyclotron Resonance)方式やICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)方式などの高密度プラズマ源を用いたドライエッチング装置を用いるとエッチング速度を向上できるため好ましい。第1のエッチング処理および第2のエッチング処理のエッチング条件(コイル型の電極や平行平板型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することで、導電層316c、316d、及び導電層322c、322dの側面を所望のテーパー形状とすることができる。所望のゲート電極324c、324dを形成した後、レジストマスク320c、320dは除去すればよい。
次に、単結晶半導体層120cを覆うようにレジストマスク381を選択的に形成する。そして、レジストマスク381をマスクとして、単結晶半導体層120dに不純物元素380を添加する。単結晶半導体層120dは、上方に形成された導電層316dおよび導電層322dがマスクとなって、自己整合的に一対の第1不純物領域328dと、一対の第2不純物領域330dと、チャネル形成領域326dが形成される(図8(A)参照)。
不純物元素380としては、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物元素、若しくはリン、砒素などのn型不純物元素を添加する。ここでは、pチャネル型電界効果トランジスタを形成するため、不純物元素380としてp型不純物元素であるボロンを添加する。また、第1不純物領域328dに、1×1020atoms/cm3乃至5×1021atoms/cm3程度の濃度で硼素が含まれるようにする。第1不純物領域328dは、ソース領域又はドレイン領域として機能する。
単結晶半導体層120dにおいて、導電層316dと重ならない領域に第1不純物領域328dが形成され、導電層316dと重なり導電層322dと重ならない領域に第2不純物領域330dが形成され、導電層322dと重なる領域にチャネル形成領域326dが形成される。第2不純物領域330dは、第1不純物領域328dよりも低不純物濃度となる。
レジストマスク381を除去した後、単結晶半導体層120dを覆うようにレジストマスク382を選択的に形成する。そして、レジストマスク382をマスクとして、単結晶半導体層120cに不純物元素384を添加する。単結晶半導体層120cは、上方に形成された導電層316cおよび導電層322cがマスクとなって、自己整合的に一対の第3不純物領域328cと、一対の第4不純物領域330cと、チャネル形成領域326cが形成される(図8(B)参照)。
ここでは、nチャネル型電界効果トランジスタを形成するため、不純物元素384としてn型不純物元素を添加する。例えば不純物元素384としてリンを添加し、第3不純物領域328cに5×1019atoms/cm3乃至5×1020atoms/cm3程度の濃度でリンが含まれるようにする。第3不純物領域328cは、ソース領域又はドレイン領域として機能する。
単結晶半導体層120cにおいて、導電層316cと重ならない領域に第3不純物領域328cが形成され、導電層316cと重なり導電層322cと重ならない領域に第4不純物領域330cが形成され、導電層322cと重なる領域にチャネル形成領域326cが形成される。第4不純物領域330cは、第3不純物領域328cよりも低不純物濃度となる。
なお、単結晶半導体層120dに第1不純物領域328d、第2不純物領域330d、チャネル形成領域326dを形成し、単結晶半導体層120cに第3不純物領域328c、第4不純物領域330c、チャネル形成領域326cを形成する順序などは本形態に限られるものでなく、適宜変更することができる。また、単結晶半導体層120c、120dに不純物領域(第1不純物領域328d〜第4不純物領域330c)形成後は、熱処理やレーザビームの照射などを適宜行うことにより、活性化(低抵抗化)する。
次に、ゲート電極324c、ゲート電極324d、およびゲート絶縁層310上を覆う絶縁層を単層構造または積層構造で形成する。ゲート絶縁層310およびその上層の絶縁層に、単結晶半導体層120cに形成された一対の第3不純物領域328c、および単結晶半導体層120dに形成された一対の第1不純物領域328d、それぞれに達するコンタクトホールを形成する。該コンタクトホールに、ソース電極又はドレイン電極として機能する導電層336c、導電層336dを形成する。
まず、ゲート電極324c、ゲート電極324d、およびゲート絶縁層310上を覆う絶縁層331を形成する(図9(A)参照)。絶縁層331は、CVD法やスパッタリング法により、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、又は窒化酸化シリコン層などを形成する。例えば、絶縁層331として、プラズマCVD法により酸化窒化シリコン層(膜厚50nm)を形成する。次に、400℃以上ガラス基板111の歪み点温度以下で熱処理を行うことで、不純物領域(第1不純物領域328d〜第4不純物領域330c)の活性化を行うことができる。例えば、窒素雰囲気下で480℃、1時間の熱処理を行う。絶縁層331を形成した後に熱処理を行うことで、該熱処理によるゲート電極の酸化を防ぐことができる。なお、熱処理の際に雰囲気を制御することで、絶縁層331を形成しなくともゲート電極の酸化を防ぐこともできる。
次に、絶縁層331上に、絶縁層332および絶縁層334を形成する(図9(B)参照)。
絶縁層332、絶縁層334としては、CVD法やスパッタリング法により、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化シリコン層、又は窒化酸化シリコン層等を形成することができる。また、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルフェノール、ベンゾシクロブテン、アクリル若しくはエポキシ等の有機材料、シロキサン樹脂等のシロキサン材料、又はオキサゾール樹脂などを用いて、スピンコート法などの塗布法により形成することができる。なお、シロキサン材料とは、Si−O−Si結合を含む材料に相当する。
なお、ゲート電極324c、324d上層に形成される絶縁層としては、水素を含有する絶縁層を少なくとも1層形成し、熱処理を行うことにより、単結晶半導体層に存在するダングリングボンドの水素終端化を図ることが好ましい。水素を含有する絶縁層を形成した後、例えば350℃以上450℃以下、好ましくは400℃以上430℃以下の処理温度で熱処理を行うことで、絶縁層に含有された水素が熱処理により熱的に励起して拡散され、絶縁層を通過して単結晶半導体層に到達する。そして、到達した水素により単結晶半導体層に存在するダングリングボンドが水素終端される。半導体層、特にチャネル形成領域にダングリングボンドが存在すると、完成するトランジスタの電気的特性に悪影響を与えかねないため、本形態のように水素終端を行うことは効果的である。水素終端を行うことで、ゲート絶縁層と単結晶半導体層との界面特性の改善を図ることができる。
水素を含有する絶縁層は、プラズマCVD法により、Hを含む成膜用のプロセスガスを用いることで形成することができる。また、水素を含有する絶縁層を形成しなくとも、水素を含む雰囲気中で熱処理を行うことにより、単結晶半導体層の水素終端化を行うこともできる。例えば、絶縁層332として水素を含有する絶縁層を形成し、その上層に絶縁層334を形成した後、水素終端する熱処理を行う。この場合、絶縁層334は、絶縁層332に含まれる水素が脱水素化しない温度で成膜する。
例えば、プラズマCVD法により、絶縁層332である窒化酸化シリコン層(膜厚300nm)と絶縁層334である酸化窒化シリコン層(膜厚450nm)とを連続成膜する。窒化酸化シリコン層は成膜用のプロセスガスとしてモノシラン、アンモニア、水素および酸化窒素を用いる。酸化窒化シリコン層は成膜用のプロセスガスとしてモノシランと酸化窒素を用いる。また、処理温度は200℃〜300℃程度とすることで、窒化酸化シリコン層に含有される水素を脱水素化することなく、絶縁層を形成できる。そして、絶縁層334を形成した後、窒素雰囲気下で410℃1時間の熱処理を行うことにより、単結晶半導体層の水素終端化を行う。
次に、絶縁層334、絶縁層332、絶縁層331およびゲート絶縁層310にコンタクトホールを形成し、該コンタクトホールを埋めるように導電層336c、導電層336dを形成する(図9(C)参照)。ここでは、一対の第1不純物領域328dそれぞれに達する一対のコンタクトホールを形成し、該コンタクトホールを通じて第1不純物領域328dに達する一対の導電層336cを形成する。同時に、一対の第3不純物領域328cそれぞれに達する一対のコンタクトホールを形成し、該コンタクトホールを通じて第3不純物領域328cに達する一対の導電層336dを形成する。導電層336c、導電層336dは、ソース電極又はドレイン電極として機能する。導電層336cは第3不純物領域328cと電気的に接続する。導電層336dは、第1不純物領域328dと電気的に接続する。
導電層336c、導電層336dは、アルミニウム、タングステン、チタン、タンタル、モリブデン、ニッケル、ネオジム、或いは銅等から選択された元素、前述の元素を含有する合金材料、又は前述の元素を含有する化合物材料を用いて形成する。前述の元素を含有する合金材料としては、例えば、チタンを含有したアルミニウム合金、ネオジムを含有したアルミニウム合金、シリコンを含有するアルミニウム合金(アルミニウムシリコンとも言われる)などが挙げられる。また、上記元素を含有する化合物としては、窒化タングステン、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒化物が挙げられる。導電層336c、導電層336dは、上述の材料を用いてスパッタリング法やCVD法により全面に形成した後、選択的にエッチングして所望の形状に加工すればよい。また、導電層336c、導電層336dは、単層構造又は2層以上の積層構造で形成することができる。例えば、チタン層、窒化チタン層、アルミニウム層およびチタン層を順に積層した構造とすることができる。アルミニウム層をチタン層で挟む構成とすることで、耐熱性を向上させることができる。また、チタン層とアルミニウム層との間に形成する窒化チタン層はバリア層として機能できる。
以上で、単結晶半導体層を有するSOI基板を用いて、nチャネル型電界効果トランジスタおよびpチャネル型電界効果トランジスタを作製することができる。
本形態の半導体素子の作製に用いるSOI基板には、それぞれマークが形成されている。そのため、基板の枚葉管理を行うことができ、半導体装置製造における歩留まり向上や不良品発見に役立たせることができる。また、SOI基板のマークを形成した部分は、ガラス基板上にバッファ層および単結晶半導体層が存在せず、端部での膜剥がれを防ぐ構成となっているため、本発明に係るSOI基板を用いた半導体素子の製造においてマークを形成したことによる膜剥がれなどの不良を防止することができる。
なお、導電層336cおよび導電層336dを電気的に接続させることでnチャネル型電界効果トランジスタとpチャネル型電界効果トランジスタを電気的に接続させ、CMOSトランジスタとすることもできる。
また、本形態では、ゲート電極を2層の導電層の積層構造とし、各層で幅を異ならせる例を示したが、本発明は特に限定されない。例えば、ゲート電極は、導電層の単層構造で形成してもよいし、導電層を3層以上の積層構造としてもよい。また、導電層の積層構造で、各層の幅は略一致するように形成してもよいし、各層のテーパー形状を異ならせてもよい。さらに、ゲート電極の側面に接してサイドウォールと言われる絶縁層を形成してもよい。
本形態で説明したトランジスタを複数組み合わせて、各種機能を有する半導体装置を提供することができる。また、本形態で示したトランジスタの構造は一例であり、図示した構造に限定されるものではない。
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて行うことができる。
(実施の形態7)
本発明に係るSOI基板を用いて、上記実施の形態6で示したようなトランジスタに加えて、容量、抵抗などの各種半導体素子を形成することで、高付加価値の半導体装置を作製することができる。本形態では、図面を参照しながら半導体装置の具体的な態様を説明する。
なお、本明細書における半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置(EL表示装置、液晶表示装置を含む)、半導体回路、及び電子機器は全て範疇に含むものとする。
まず、半導体装置の一例として、マイクロプロセッサについて説明する。図10はマイクロプロセッサ200の構成例を示すブロック図である。マイクロプロセッサ200は、演算回路201(Arithmetic logic unit;ALUともいう。)、演算回路用制御部202(ALU Controller)、命令解析部203(Instruction Decoder)、割り込み制御部204(Interrupt Controller)、タイミング制御部205(Timing Controller)、レジスタ206(Register)、レジスタ制御部207(Register Controller)、バスインターフェース208(Bus I/F)、読み出し専用メモリ209、及びメモリインターフェース210を有している。
バスインターフェース208を介してマイクロプロセッサ200に入力された命令は命令解析部203に入力され、デコードされた後に演算回路用制御部202、割り込み制御部204、レジスタ制御部207、タイミング制御部205に入力される。演算回路用制御部202、割り込み制御部204、レジスタ制御部207、タイミング制御部205は、デコードされた命令に基づき各種制御を行う。具体的に演算回路用制御部202は、演算回路201の動作を制御するための信号を生成する。また、割り込み制御部204は、マイクロプロセッサ200のプログラム実行中に、外部の入出力装置や周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断して処理する。レジスタ制御部207は、レジスタ206のアドレスを生成し、マイクロプロセッサ200の状態に応じてレジスタ206の読み出しや書き込みを行う。タイミング制御部205は、演算回路201、演算回路用制御部202、命令解析部203、割り込み制御部204、レジスタ制御部207の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミング制御部205は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。なお、図10に示すマイクロプロセッサ200は、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際にはその用途によって多種多様な構成を備えることができる。
次に、非接触でデータの送受信を行うことのできる演算機能を備えた半導体装置の一例について図11を参照して説明する。図11は、半導体装置として無線通信により外部装置と信号の送受信を行って動作するコンピュータ(以下、「RFCPU」という)の一例を示す。RFCPU211は、アナログ回路部212とデジタル回路部213を有している。アナログ回路部212として、共振容量を有する共振回路214、整流回路215、定電圧回路216、リセット回路217、発振回路218、復調回路219と、変調回路220を有している。デジタル回路部213は、RFインターフェース221、制御レジスタ222、クロックコントローラ223、CPUインターフェース224、中央処理ユニット(CPU)225、ランダムアクセスメモリ(RAM)226、読み出し専用メモリ(ROM)227を有している。
RFCPU211の動作は以下の通りである。アンテナ228が受信した信号は共振回路214により誘導起電力を生じる。誘導起電力は整流回路215を経て容量部229に充電される。容量部229はセラミックコンデンサーや電気二重層コンデンサーなどのキャパシタで形成されていることが好ましい。容量部229はRFCPU211と一体形成されている必要はなく、別部品としてRFCPU211を構成する絶縁表面を有する基板に取り付けられていれば良い。
リセット回路217は、デジタル回路部213をリセットし初期化する信号を生成する。例えば、電源電圧の上昇に遅延して立ち上がる信号をリセット信号として生成する。発振回路218は定電圧回路216により生成される制御信号に応じて、クロック信号の周波数とデューティー比を変更する。ローパスフィルタで形成される復調回路219は、例えば振幅変調(ASK)方式の受信信号の振幅の変動を二値化する。変調回路220は、送信データを振幅変調(ASK)方式の送信信号の振幅を変動させて送信する。変調回路220は、共振回路214の共振点を変化させることで通信信号の振幅を変化させている。クロックコントローラ223は、電源電圧又は中央処理ユニット225における消費電流に応じてクロック信号の周波数とデューティー比を変更するための制御信号を生成している。電源電圧の監視は電源管理回路230が行っている。
アンテナ228からRFCPU211に入力された信号は復調回路219で復調された後、RFインターフェース221で制御コマンドやデータなどに分解される。制御コマンドは制御レジスタ222に格納される。制御コマンドには、読み出し専用メモリ227に記憶されているデータの読み出し、ランダムアクセスメモリ226へのデータの書き込み、中央処理ユニット225への演算命令などが含まれている。中央処理ユニット225は、CPUインターフェース224を介して読み出し専用メモリ227、ランダムアクセスメモリ226、制御レジスタ222にアクセスする。CPUインターフェース224は、中央処理ユニット225が要求するアドレスより、読み出し専用メモリ227、ランダムアクセスメモリ226、制御レジスタ222のいずれかに対するアクセス信号を生成する機能を有している。
中央処理ユニット225の演算方式は、読み出し専用メモリ227にOS(オペレーティングシステム)を記憶させておき、起動とともにプログラムを読み出し実行する方式を採用することができる。また、専用回路で演算回路を構成して、演算処理をハードウェア的に処理する方式を採用することもできる。ハードウェアとソフトウェアを併用する方式では、専用の演算回路で一部の処理を行い、残りの演算はプログラムを使って中央処理ユニット225が実行する方式を適用することができる。
マイクロプロセッサ200やRFCPU211などの半導体装置は、複数のトランジスタを組み合わせた各種機能を有する回路を適用して作製することができる。トランジスタは、本発明に係るSOI基板の単結晶半導体層を利用して作製することができる。また、ガラス基板としてガラス基板などの安価な基板上に単結晶半導体層を有するSOI基板とするため、低コスト化を図ることもできる。このようなトランジスタを組み合わせて集積回路を作製することにより、マイクロプロセッサやRFCPUなどの半導体装置の高性能化、処理速度の高速化、さらには低コスト化などを実現できる。なお、図11ではRFCPUの形態について示しているが、通信機能、演算処理機能、メモリ機能を備えたものであれば、ICタグのようなものであっても良い。
次に、図12および図13を用いて、本発明に係るSOI基板を利用した表示装置について説明する。
図12は、液晶表示装置の構成例を示す図面である。図12(A)は液晶表示装置の画素の平面図であり、図12(B)はJ−K切断線による図12(A)の断面図である。図12(A)において、単結晶半導体層511は、画素のトランジスタ525を構成する。画素は、単結晶半導体層511、当該単結晶半導体層511と交差している走査線522、当該走査線522と交差している信号線523、画素電極524、当該画素電極524と単結晶半導体層511を電気的に接続する電極528を有する。単結晶半導体層511は、本発明に係るSOI基板の有する単結晶半導体層から形成された層である。なお、基板510はガラス基板であり、図12では図示しないが、バッファ層および単結晶半導体層511が存在しない基板端部の領域にマークが形成されているものとする。
図12(B)に示すように、基板510上に、バッファ層105、単結晶半導体層511が積層されている。単結晶半導体層511は、単結晶半導体層120をエッチングによる素子分離により形成された層である。単結晶半導体層511には、チャネル形成領域512、n型の不純物領域514が形成されている。トランジスタ525のゲート電極は走査線522に含まれ、ソース電極またはドレイン電極の一方は信号線523に含まれている。
層間絶縁層527上には、信号線523、画素電極524および電極528が設けられている。層間絶縁層527上には、柱状スペーサ529が形成され、信号線523、画素電極524、電極528および柱状スペーサ529を覆って配向膜530が形成されている。対向基板532には、対向電極533、対向電極533を覆う配向膜534が形成されている。柱状スペーサ529は、基板510と対向基板532の隙間を維持するために形成される。柱状スペーサ529によって維持される対向基板532側の配向膜534と基板510側の配向膜530との隙間に液晶層535が形成されている。信号線523と不純物領域514、および電極528と不純物領域514の接続部は、層間絶縁層527や信号線523、電極528により段差が生じるので、接続部で液晶層535の液晶の配向が乱れやすい。そのため、段差部に柱状スペーサ529を形成して、液晶の配向の乱れを防ぐ。
本形態において、基板510はガラス基板であり、代表的にはガラス基板を適用する。つまり、基板510は透光性を有する基板とすることができ、本発明を適用する液晶表示装置は、反射型液晶表示装置に限定されず、透過型液晶表示装置または半透過型液晶表示装置とすることができる。
次に、エレクトロルミネセンス表示装置(以下、EL表示装置という。)について、説明する。図13(A)はEL表示装置の画素の平面図であり、図13(B)は画素の断面図である。図13(A)に示すように、画素は、トランジスタでなる選択用トランジスタ401、表示制御用トランジスタ402、走査線405、信号線406、および電流供給線407、画素電極408を含む。エレクトロルミネセンス材料を含んで形成される層(EL層)が一対の電極間に挟まれた構造の発光素子が各画素に設けられている。発光素子の一方の電極が画素電極408である。
選択用トランジスタ401が有する単結晶半導体層403、表示制御用トランジスタ402が有する半導体層404は、本発明に係るSOI基板の有する単結晶半導体層から形成された層である。なお、基板400はガラス基板であり、図13では図示しないが、バッファ層および単結晶半導体層403、404が存在しない基板端部の領域にマークが形成されているものとする。
選択用トランジスタ401において、ゲート電極は走査線405に含まれ、ソース電極またはドレイン電極の一方は信号線406に含まれ、他方は電極411として形成されている。表示制御用トランジスタ402は、ゲート電極412が電極411と電気的に接続され、ソース電極またはドレイン電極の一方は、画素電極408に電気的に接続される電極413として形成され、他方は、電流供給線407に含まれている。
表示制御用トランジスタ402はpチャネル型電界効果トランジスタである。図13(B)に示すように、半導体層404には、チャネル形成領域451、p型の不純物領域452が形成されている。表示制御用トランジスタ402のゲート電極412を覆って、層間絶縁層427が形成されている。層間絶縁層427上に、信号線406、電流供給線407、電極411、電極413などが形成されている。また、層間絶縁層427上には、電極413に電気的に接続されている画素電極408が形成されている。画素電極408は周辺部が絶縁性の隔壁層428で囲まれている。画素電極408上にはEL層429が形成され、EL層429上には対向電極430が形成されている。補強板として対向基板431が設けられており、対向基板431は樹脂層432により基板400に固定されている。
本形態において、基板400はガラス基板である。つまり、基板400は透光性を有する基板とすることができ、本発明を適用するEL表示装置は、対向基板側から光を取り出すトップエミッション構造に限定されず、ベース基板側から光を取り出すボトムエミッション構造とすることができる。
図12に示す液晶表示装置や図13に示すEL表示装置に、本発明に係るSOI基板の単結晶半導体層を用いたトランジスタを適用することができる。単結晶半導体層でトランジスタのチャネルを形成できるため、高性能化を実現する。また、上述のように、ベース基板はガラス基板であり、ベース基板として半導体基板を適用する場合と異なり、光を透過することが可能となる。したがって、ベース基板側から光を取り出す構成(ベース基板側に光を透過させる構成)、対向基板側から光を取り出す構成(対向基板側に光を透過させる構成)、両方の基板から光を取り出す構成(両方の基板側から光を透過させる構成)など、適宜実施者が選択することができる。
また、本発明に係るSOI基板を用いて半導体装置を作製し、様々な電気機器に適用することができる。電気機器としては、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍など)、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポなど)、コンピュータ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ナビゲーションシステム、ゲーム機器、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)などの画像データを表示する表示装置を備えた装置などが含まれる。
図14を用いて、電気機器の具体的な態様を説明する。図14(A)は、携帯電話機900の一例を示す外観図である。携帯電話機900は、筐体901および筐体902の2つの筐体で構成されており、連結部903により折りたたみ可能に連結されている。筐体901には表示部904が組み込まれている。筐体902には操作キー906が設けられている。なお、携帯電話機900の構成は特に限定されず、少なくとも本発明に係るSOI基板を用いて作製した素子を備えた構成であればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。例えば、表示部904に、図12または図13で説明した表示装置を適用することで、高画質化を実現することができる。また、SOI基板を用いた半導体素子作製工程での不良を防止することができるため、携帯電話機に組み込む表示装置の歩留まり向上につなげることができる。
図14(B)は、PDA(Personal Digital Assistance)920の一例を示す外観図である。PDA920は、筐体921に組み込まれた表示部922の他、操作ボタン923、外部接続ポート924、スピーカー925、マイク926などを備えている。また、PDA920は、携帯電話機の機能を有していてもよい。PDA920の構成は特に限定されず、少なくとも本発明に係るSOI基板を用いて作製した素子を備えた構成であればよく、その他の付属設備が適宜設けられた構成としてもよい。例えば、表示部922に、図12または図13で説明した表示装置を適用することで、高画質化を実現することができる。
図14(B)に示すPDA920は、表示部922を指などで触れることで、情報を入力ことができる。また、電話を掛ける、或いはメールを打つ操作は、表示部922を指などで触れることにより行うことができる。
表示部922の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
例えば、情報を入力する、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部922を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部922の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
また、PDA920内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、PDA920の向き(縦か横か)を判断して、表示部922の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
また、画面モードの切り替えは、表示部922を触れること、又は筐体921の操作ボタン923の操作により行われる。また、表示部922に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
また、入力モードにおいて、表示部922の光センサで検出される信号を検知し、表示部922のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
表示部922は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部922に掌や指を触れることで、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に赤外光を発光するバックライトまたは赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
図14(C)は、電子書籍970の一例を示している。例えば、電子書籍970は、筐体971および筐体973の2つの筐体で構成されている。筐体971および筐体973は、軸部978により一体とされており、該軸部978を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
筐体971には表示部975が組み込まれ、筐体973には表示部977が組み込まれている。表示部975および表示部977は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(表示部975)に文章を表示し、左側の表示部(表示部977)に画像を表示することができる。
電子書籍970の構成は特に限定されず、少なくとも本発明に係るSOI基板を用いて作製した素子を備えた構成であればよく、その他の付属設備が適宜設けられた構成としてもよい。
また、図9(C)では、筐体971に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体971において、電源974、操作キー972、スピーカー976などを備えている。操作キー972により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子、またはACアダプタおよびUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍970は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
また、電子書籍970は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
また、図15には、図14(A)と異なる構成の携帯電話機の構成の一例を示している。例えば表示部に、本発明に係るSOI基板を用いて作製された素子及びそれを有する表示装置が適用される。図15(A)が正面図、図15(B)が背面図、図15(C)が展開図である。図15に示す携帯電話機は、筐体9194及び筐体9185の二つの筐体で構成されている。図15に示す携帯電話機は、携帯電話機と携帯情報端末の双方の機能を備えており、コンピュータを内蔵し、音声通話以外にも様々なデータ処理が可能であり、スマートフォンとも呼ばれる。
携帯電話機は、筐体9194及び筐体9185の二つの筐体で構成されている。筐体9194においては、表示部9186、スピーカー9187、マイクロフォン9188、操作キー9189、ポインティングデバイス9190、表面カメラ用レンズ9191、外部接続端子ジャック9192、イヤホン端子9131等を備える。筐体9185においては、キーボード9195、外部メモリスロット9196、裏面カメラ9197、ライト9198等により構成されている。また、アンテナは筐体9194に内蔵されている。
また、上記の構成に加えて、非接触ICチップ又は小型記録装置等を内蔵していてもよい。
図15(A)では筐体9194と筐体9185が重なり合っており、図15(A)の状態から筐体9194と筐体9185がスライドし、図15(C)のように展開する。表示部9186には、例えば図12または図13に示すような本発明に係るSOI基板を用いて作製した素子を備えた表示装置を組み込むことが可能である。そのため、携帯電話機の高画質化を実現することができる。なお、表示部9186では、使用形態に応じて表示の方向を適宜変化させることができる。表示部9186と同一面上に及び表面カメラ用レンズ9191を同一の面に備えているため、テレビ電話が可能である。また、表示部9186をファインダーとして裏面カメラ9197及びライト9198で静止画及び動画の撮影が可能である。
スピーカー9187及びマイクロフォン9188は音声通話に限らず、テレビ電話、録音及び再生等の用途に使用できる。操作キー9189では、電話の発着信、電子メール等の簡単な情報入力、画面のスクロール及びカーソル移動等が可能である。
また、書類の作成、携帯情報端末としての使用等、取り扱う情報が多い場合は、キーボード9195を用いると便利である。重なり合った筐体9194と筐体9185(図15(A))はスライドでき、図15(C)のように展開して携帯情報端末として使用できる。また、キーボード9195及びポインティングデバイス9190を用いることで、円滑な操作でマウスの操作が可能である。外部接続端子ジャック9192はACアダプタ及びUSBケーブル等の各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータ等とのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット9196に記録媒体を挿入して使用することで、大量のデータの保存及び移動が可能である。
筐体9185の裏面(図15(B))には、裏面カメラ9197及びライト9198を備えており、表示部9186をファインダーとし静止画及び動画の撮影が可能である。
また、上記機能構成に加えて、赤外線通信機能、USBポート、テレビワンセグ受信機能、非接触ICチップ、イヤホンジャック等を備えていてもよい。
上述のように、本発明に係るSOI基板を用いて作製した素子を備えた表示装置を表示部などに組み込むことで、画質を向上させることができる。
なお、本実施の形態で示した構成は、本明細書の他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて行うことができる。