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JP5512871B1 - 青色発光シリケート蛍光体及びその製造方法 - Google Patents

青色発光シリケート蛍光体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】近紫外LEDの発光波長である400nm前後で励起されて強く発光し、励起波長の変化による発光強度の変化が少ない青色発光シリケート蛍光体を提供する。また、その青色発光シリケート蛍光体を簡便に得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】Ba1−xEuZrSi3+2y+δ(但し、0.001≦x≦0.5、2.5≦y≦6.0、−0.1≦δ≦0.2)の組成式で表され、その組成式中のEuはEu2+とEu3+を共に含有しており、全EuのうちのEu2+の比率(Eu2+/Eu2++Eu3+)が10%〜90%である青色発光シリケート蛍光体とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、近紫外から紫の光による励起で高輝度の青色発光を示す青色発光シリケート蛍光体及びその製造方法に関する。
白色LEDは、青色又は近紫外LED(LD)と、蛍光体を組み合わせて作製される。白色LEDは、発光効率が低かったために携帯電話等のバックライト用途を中心に開発されてきたが、近年、発光効率の増加と共に次世代照明として注目を集めている。
白色LEDを構成する方式としては、青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせる方式、近紫外LEDと青、緑、赤色蛍光体を組み合わせる方式等が提案されている。
具体的に、近紫外LED励起方式では、405nm(あるいはそれ以上)の発光中心波長を持つ紫LEDが励起源として用いられている。これは、(i)紫LEDがBlu−ray(登録商標)ディスクの光ピックアップ用として民生レベルで使用されており、比較的低コストである、(ii)蛍光体の発光とLEDの発光波長をより近づけることによって波長変換時のストークスロスが抑えられる、(iii)樹脂や周辺部材の光劣化を考えた場合により長波長(低エネルギー)のLEDを励起源とした方が有利である、等の観点からである。したがって、近紫外LED励起方式での白色LEDにおいては、LEDの発光中心波長である405nm前後で励起されて効率よく発光する青色系蛍光体が必要となり、従来の蛍光ランプで用いられてきた(Ca,Sr)(POCl:EuやBaMgAl1017:Eu(BAM)等が改良されて用いられている。
例えば、非特許文献1には、近紫外LED励起方式用に改良されたBAMの励起スペクトルと発光スペクトルが記載されている。
近紫外励起で青色発光する蛍光体の一つとしては、BaZrSi:Euが知られており、非特許文献2には、Ba0.99ZrSi:0.01Euが記載されている。
また、特許文献1には(Ba,Sr)0.99ZrSi:0.01Euが開示されており、特許文献2には(Ba(1−x−y)SrEu)(Sn1−zZr)Siなる組成としてBaサイトをSrで、ZrサイトをSnで置換することによって、近紫外励起において発光強度が増加することが開示されている。
特公昭48−38550号公報 特開2008−63550号公報
田口 常正著「白色LED照明技術のすべて」、工業調査会、p.110 G.Blasse、A.Bril、Journal of Solid State Chemistry、1970、vol.2、p105−108
しかしながら、非特許文献1に記載されているBAMの励起スペクトルを見ると、励起強度は380nm程度をピークとして400nm前後で急激に減少している。また、励起強度は、その波長での発光強度に対応するため、このことは励起波長の変化による発光強度の変化が大きいことを示している。このように蛍光体の励起波長に対する発光強度の急激な変化があると、励起源である紫外LEDの発光波長のばらつきによる青色発光強度のばらつきも大きくなり、白色LEDの色合いや発光強度のばらつきに繋がるため好ましくない。
また、非特許文献2、特許文献1、特許文献2に記載されているBa0.99ZrSi:0.01Euは、BaCO、ZrO、SiO、Euの混合物を、窒素−水素混合ガス中で熱処理する固相反応によって形成されている。窒素−水素ガス中で焼成するのは、発光中心であるEuをEu(Eu3+)からEu2+として結晶中にドープさせるためである。一般的に、Eu2+が賦活された蛍光体においては、Eu2+の還元ドープ比率(全Euに対するEu2+の比率)が高い方が高輝度な蛍光体が得られるとされている。しかしながら、BaZrSi:Euにおいては、ZrOが酸素欠陥を生じやすい。そのため、還元雰囲気で焼成されたこれらの蛍光体は、Eu2+の比率はほぼ100%に近いものの、酸素欠陥由来の自己吸収が大きく、励起光や発光の母結晶の自己吸収が起きるために実用に耐え得るような高い発光効率は得られなかった。
本発明は、このような種々の問題に鑑みてなされたもので、近紫外LEDの発光波長である400nm前後で励起されて強く発光し、励起波長の変化による発光強度の変化が少ない青色発光シリケート蛍光体を提供すること、及び、その青色発光シリケート蛍光体を簡便に得ることができる製造方法を提供することにある。
本件発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、Ba1−xEuZrSi3+2y+δ(但し、0.001≦x≦0.5、2.5≦y≦6.0、−0.1≦δ≦0.2)の組成式で表されるシリケート蛍光体において、組成式中のEuがEu2+とEu3+を共に含有し、その全EuのうちのEu2+の比率(Eu2+/Eu2++Eu3+)が10%以上且つ90%以下であるものは、発光強度が著しく高いことを見出した。また、そのような蛍光体は、還元焼成する熱処理に際して、EuをEu2+の形態で還元ドープし、その後、酸素を含む雰囲気でアニールすることで、一部のEu2+をEu3+とすることにより得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る青色発光シリケート蛍光体は、 Ba1−xEuZrSi3+2y+δ(但し、0.001≦x≦0.5、2.5≦y≦6.0、−0.1≦δ≦0.2)の組成式で表される青色発光シリケート蛍光体であって、還元性雰囲気下における熱処理によりEuをEu 2+ としてドープさせた後、アニールして得られ、前記組成中のEuはEu2+とEu3+を共に含有しており、全EuのうちのEu2+の比率(Eu2+/Eu2++Eu3+)が10%〜90%であることを特徴とする。
ここで、上記青色発光シリケート蛍光体は、Mg、Ca、Sr、Ti、Hf、Sn、Ge、La、Yから選択される少なくとも1種類以上の元素で元素置換されていてもよい。
また、本発明に係る青色発光シリケート蛍光体の製造方法は、Ba1−xEuZrSi3+2y+δ(但し、0.001≦x≦0.5、2.5≦y≦6.0、−0.1≦δ≦0.2)の組成式で表される青色発光シリケート蛍光体の製造方法であって、上記組成式で表される構成成分を含有する各出発原料を秤量し、該各出発原料を溶媒中で混合攪拌することにより、該構成成分が均一に分散した混合物を得る工程と、前記混合物を乾燥することにより、該混合物中に含まれる溶媒を除去した乾燥物である前駆体を形成する工程と、前記前駆体を、大気雰囲気中で700℃〜1400℃の温度で熱処理して仮焼粉を得る工程と、前記仮焼粉を、還元性雰囲気下で1100℃〜1500℃の温度で熱処理して、EuをEu2+としてドープさせる工程と、前記仮焼粉を熱処理して得られた熱処理物を、酸素を含む雰囲気中で500℃〜1500℃の温度でアニールする工程とを有することを特徴とする。
ここで、前記出発原料として使用するSiOとしては、水溶性ケイ素化合物であることが好ましい。
本発明によれば、近紫外LED、特に、励起源として主に用いられている400nm前後の紫LEDで効率よく励起され、発光強度の変化が少なく、発光強度の高い青色発光シリケート蛍光体を提供することができ、またそのようなシリケート蛍光体を簡便な方法で製造することができる。
実施例1、2、及び比較例1の蛍光体の励起発光スペクトルを示す図である。 実施例1、2、比較例1(Eu2+)、及びEu(Eu3+)のX線吸収微細構造(XAFS)測定に基づいて得られたXANESスペクトルを示す図である。 実施例1及び比較例1の蛍光体の励起発光スペクトルを示す図である。
以下、本発明に係る青色発光シリケート蛍光体及びその製造方法についての具体的な実施の形態(以下、「本実施の形態」という。)について、以下の順序で詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
1.青色発光シリケート蛍光体
2.青色発光シリケート蛍光体の製造方法
2−1.第1工程
2−2.第2工程
2−3.第3工程
2−4.第4工程
2−5.第5工程
3.実施例
≪1.青色発光シリケート蛍光体≫
本実施の形態に係る青色発光シリケート蛍光体は、出発原料としてBaCO、ZrO、Eu、SiOを使用して得られ、組成式がBa1−xEuZrSi3+2y+δで表される青色発光シリケート蛍光体である。そして、この青色発光シリケート蛍光体は、その組成式中のEuがEu2+とEu3+を共に含有しており、全EuのうちのEu2+の比率(Eu2+/Eu2++Eu3+)が10%〜90%であることを特徴とする。
ここで、この青色発光シリケート蛍光体において、上記組成式中の「x」、「y」、「δ」は、それぞれ、0.001≦x≦0.5、2.5≦y≦6.0、−0.1≦δ≦0.2を満たすものである。
具体的に、組成式中の「x」は、上述したように0.001≦x≦0.5の範囲を満たすものである。最適なEu濃度は「y」の値により異なるが、x<0.001では賦活剤であるEuの濃度が低すぎて発光強度が低下する。一方で、x>0.5では濃度消光によって発光強度が低下する。
また、この組成式中の「x」に関して、0.005≦x≦0.2の範囲を満たすものであることがより好ましい。このように、「x」を、0.005≦x≦0.2の範囲を満たすものとすることで、より一層に高い発光強度を示す蛍光体とすることができる。
組成式中の「y」は、上述したように2.5≦y≦6.0の範囲を満たすものである。y<2.5では、SiOプアーになり過ぎて、異相(BaZrSi12)が生成し、発光強度が低下する。一方で、y>6.0では、発光強度増加の効果はほとんどなくなる。ただし、SiOを蛍光体中により多く残留させることを目的とする場合は、y>6.0の組成とすることもできるが、発光強度の低下を回避することは困難となる。
また、この組成式中の「y」に関して、3.0<y≦6.0の範囲を満たすものであることがより好ましい。このように、y>3.0とすることによって、発光強度が増加する。このことは、SiOを理論量よりも過剰にすることで、異相であるBaZrSi12の生成を抑えることができるためであると考えられる。また、SiOを理論量よりも過剰にすることで、熱処理中に、より結晶成長し易くなっていると考えられる。
なお、SiOをさらに過剰にした場合、XRDパターンにおいては、後述するように、BaZrSiとSiOと思われるピークが検出される。最終的に得られるシリケート蛍光体中に存在するSiOは、発光に寄与しない。そのため、最適なSiO量は、SiOを過剰にすることによる熱処理の過程での発光強度の増加と、過剰SiOが残留することで発光に寄与する相の比率の低下による発光強度の低下とを鑑みて、発光強度への影響のバランスで決定される。
組成式中の「δ」は、化学量論からの酸素量のズレを表す。δ=0(化学量論組成)が理想であるが、発光強度に影響しない程度の微量酸素欠損を有することが可能であり、また、Eu3+や他の高価数の添加元素を結晶内に含むことで電荷補償によって化学量論より過剰な酸素量を有することもできる。
この組成式中の「δ」は、上述したように−0.1≦δ≦0.2の範囲を満たすものである。δ<−0.1では、酸素欠陥量過剰となり自己吸収が大きくなって輝度低下の原因となる。一方で、δ>0.2では、構造が不安定になって同様に輝度低下の原因となる。
本実施の形態に係る青色発光シリケート蛍光体においては、組成式中のEuがEu2+とEu3+を共に含有している。すなわち、賦活剤であるEuを、Eu2+とEu3+とが混在する形で含有している。そして、この青色発光シリケート蛍光体においては、その全EuのうちのEu2+の比率(Eu2+/Eu2++Eu3+)が10%〜90%であることが重要となる。
全EuのうちのEu2+の比率が10%未満では、Eu2+の濃度が低過ぎて十分な発光強度が得られない。一方で、全EuのうちのEu2+の比率が90%を超えて多くなると、すなわちEu3+が少なくなり、発光強度は低下してしまう。本実施の形態に係る青色発光シリケート蛍光体では、全EuのうちのEu2+の比率が10%〜90%であることによって、極めて高い発光強度を得ることができる。このことは、この蛍光体の製造工程に関わり、還元雰囲気中での熱処理により生成するEu2+が、その後の酸素を含む雰囲気中での熱処理によりEu3+となり、これにより発光強度が増加すると考えられる。この効果については、後でより詳しく説明する。
また、本実施の形態に係る青色発光シリケート蛍光体においては、Ba1−xEuZrSi3+2y+δで表される組成式中のBaの一部をMg、Ca、Sr等で、Zrの一部をTi、Hf、Sn等で、Siの一部をGe等で置換することができる。このように、Mg、Ca、Sr、Ti、Hf、Sn、Ge等から選択される少なくとも1種類以上の元素で元素置換されることで、発光ピーク波長をシフトさせたり、発光強度をより一層に高めることができる。この青色発光シリケート蛍光体は、上述したように、賦活剤であるEuについて、Eu2+とEu3+とを所定の割合で混在させることにより発光強度増加の効果を得るものである。したがって、BaやZr、Si、Euの元素の一部を置換してもその効果は変わらずに得ることができる。
なお、賦活剤であるEuについては、このEuの一部を共賦活剤としてのLa、Y等と置換することができる。Baサイトに価数の高いカチオンを導入することは酸素欠陥の抑制にもつながるため、La、Yを添加することが特に好ましい。これにより、発光強度をさらに高めることができる。なお、共賦活剤としては、La、Y以外の希土類元素と置換させることもできる。
以上のような組成を有する青色発光シリケート蛍光体によれば、近紫外LED、特に、励起源として主に用いられている400nm前後の紫LEDで効率よく励起され、励起波長の変化による発光強度の変化が少なく、安定的に極めて高い発光強度を示し、発光効率の高い青色発光シリケート蛍光体となる。
≪2.青色発光シリケート蛍光体の製造方法≫
次に、上述した特徴的な構成からなる青色発光シリケート蛍光体の製造方法について詳細に説明する。
本実施の形態に係る青色発光シリケート蛍光体の製造方法は、出発原料を所定量秤量し溶媒中で混合して混合物を得る第1工程と、混合物を乾燥して前駆体を得る第2工程と、前駆体を大気雰囲気で熱処理して仮焼粉を得る第3工程と、仮焼粉を還元雰囲気で熱処理する第4工程と、そして、仮焼粉を熱処理して得られた熱処理物を酸素を含む雰囲気下でアニールする第5工程とを有する。以下、工程毎に詳述する。
<2−1.第1工程(混合工程)>
第1工程は、構成成分を含有する出発原料を混合し、その構成成分が均一に分散した混合物を得る混合工程である。より具体的に、この第1工程では、出発原料となる各構成元素を含有する化合物を、その各元素が組成式Ba1−xEuZrSi3+2y+δ(但し、0.001≦x≦0.5、2.5≦y≦6.0、−0.1≦δ≦0.2)の組成式で表される比率となるように所定割合で秤量し、それら出発原料の全量を溶媒中で混合攪拌することにより、その構成成分が均一に分散した混合物を得る。
このようにして、出発原料を溶媒中で混合攪拌することで構成成分が均一に分散した混合物を生成させることによって、それら出発原料に含まれる構成成分が均一に分布した蛍光体を得ることができ、高い発光強度を有する蛍光体となる。
出発原料のうち、先ず、Ba源、Zr源となる原料金属化合物(原料金属塩)としては、それら金属元素の炭酸塩、酸化物、水酸化物塩、酢酸塩、硝酸塩、塩化物塩等を用いることができる。また、Zr源としては、ZrClOの水和物を使用することもできる。その中でも、Ba源としては炭酸塩であるBaCOを、Zr源としては酸化物であるZrOを用いることが、取り扱い易さやコスト面等の観点から特に好ましい。
また、上述したように、Ba1−xEuZrSi3+2y+δで表される組成式中のBaサイトの一部をSr、Ca、Mg等で、Zrサイトの一部をTi、Hf、Sn等で置換するに際しても、それら金属元素を含む化合物としては、炭酸塩、酸化物、水酸化物塩、酢酸塩、硝酸塩、塩化物塩等を用いることができる。
なお、これらの出発原料は、上述したようにコスト等の面を考慮して例示したものであり、加熱処理により酸化物となるように出発原料を選択すればよく、他の原料の使用を妨げるものではない。
また、賦活剤として添加するEu源となるユーロピウム化合物(Eu化合物)としては、その酸化物、酢酸塩、硝酸塩等を用いることができ、またEu単独で用いることもできる。その中でも、取り扱い易さやコスト面等の観点から、酸化物であるEuを用いることが特に好ましい。また、共賦活剤として添加するLa、Yなどもその酸化物、酢酸塩、硝酸塩などを用いることができる。取扱い易さやコスト面等の観点から、酸化物を用いることが特に好ましい。
また、Si源となるケイ素化合物(Si化合物)としては、その酸化物であるSiOを用いることができる。SiOとしては、微細なものであるほど、均一混合状態が得られるため好ましい。SiOとしては、種々の粒径のものが市販されており、平均粒径が数nm程度のフュームドシリカや数十nm程度の球状シリカを用いることが好ましい。なお、一般に、粒径が細かくなるほど取り扱いが困難になる他、乾燥後に凝集が生じ易くなり、引き続き行われる還元焼成での均一な反応を阻害する場合がある。
また、SiOとしては、特に、水溶性ケイ素化合物を用いることが好ましい。具体的に、この水溶性ケイ素化合物は、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)のエトキシ基をグリコール等の2価アルコールで置換した水溶性ケイ素化合物を用いることができる。このような水溶性ケイ素化合物は、混合の過程で加水分解・縮合によりシロキサン結合を形成してゲル化し、その構造体の中に他の原料が保持されるため、原料の分離が起こり難くなる。したがって、そのゲル体により、原料がより均一に混合された状態が容易に得られ、その状態を安定的に維持することができる。また、熱処理の過程でアモルファス状のシリカを経て他の原料と均一に反応して蛍光体相を形成していくため、より低温の状態から効率的に良質な結晶状態を得ることができる。
この水溶性ケイ素化合物としては、例えば、原料としてTEOSと2価アルコールとを、モル比で1:3以上となるようにそれぞれ加えて50℃〜80℃の温度条件で混合し、この混合液に触媒としての酸を少量(混合液の0.2%程度)加えて約1時間程度攪拌することによって作製することができる。
なお、2価アルコールとしては、例えばプロピレングリコール等を用いることができ、また触媒として用いる酸としては、例えば塩酸や乳酸等を用いることができる。
また、水溶性ケイ素化合物においては、例えばTEOSとプロピレングリコールとがモル比1:3以上となるように添加することで水溶性になるが、モル比1:4未満ではゲル化し易くなるので、長期保存を行う場合には、TEOSとプロピレングリコールとをモル比1:4以上となるように混合させることが好ましい。
本実施の形態に係る青色発光シリケート蛍光体は、上述したように、組成式がBa1−xEuZrSi3+2y+δ(但し、0.001≦x≦0.5、2.5≦y≦6.0、−0.1≦δ≦0.2)で表されるものである。供給する原料中の原子比(仕込み組成比)と得られる蛍光体の原子組成比とは略一致することから、所望とする原料配合比率となるように秤量した原料金属塩及びEu化合物からなる水分散液と、ケイ素化合物とをそれぞれ秤量して混合することが好ましい。
具体的に、この第1工程では、上述した原料金属塩であるBa塩及びZr塩と、賦活剤であるEu化合物とを、例えば純水等の溶媒に加えて攪拌し、これら原料を分散させた水溶液(水分散液、スラリー)を作製する。一方で、Si源となるケイ素化合物として、例えばSiOの水溶性ケイ素化合物を準備する。そして、原料金属を分散させた水分散液に水溶性ケイ素化合物を所望とする組成比となるように添加して混合する。これにより、簡便に原料金属塩を溶解させた水分散液と混合させることができ、構成成分が均一に分散したゲル体状の混合物を形成させることができる。
原料金属塩とEu化合物とを溶解させる溶媒としては、上述した純水の他、イソプロピルアルコール(IPA)やエタノール等を用いることができる。
また、混合攪拌の方法としては、特に限定されるものではなく、例えば原料と溶媒とを入れた容器本体を回転させて混合させる方法(例えばボールミル)や、容器を固定して機械的攪拌力で混合させる方法(各種ミキサー)等、混合物の粘度や溶媒種、混合量等を考慮して選択することができる。
また、混合攪拌に際しても温度条件として、特に限定されるものではないが、その液温を20℃〜100℃とすることが好ましく、20℃〜80℃とすることがより好ましい。温度が20℃未満では攪拌効率が悪くなり、100℃を超えると水が沸騰して均一な混合物を得ることが難しくなる。
<2−2.第2工程(乾燥工程)>
第2工程は、上述した第1工程にて得られた、構成成分が均一に分散した混合物を乾燥させる乾燥工程である。この第2工程では、第1工程にて得られた混合物を、例えば熱風乾燥機等に投入して乾燥させることにより、混合物中に含まれる溶媒を除去した乾燥物である前駆体を形成する。
第1工程にて得られた混合物には、溶媒成分として、水分の他、例えば水溶性ケイ素化合物に由来するエタノールやプロピレングリコール等の2価アルコールの一部が含まれている。そのため、この第2工程では、得られたゲル体を乾燥させることによって、その混合物中に含まれる溶媒成分を除去し、混合物の乾燥物である蛍光体前駆体を形成する。
第2工程における乾燥温度としては、特に限定されず、混合物に含まれる溶媒の種類によって適宜選択される。例えば、溶媒として純水を用いた場合には、100℃前後の温度で乾燥させることが好ましい。
なお、乾燥前には、第1工程にて得られた混合物に対してろ過処理を施して、表面に付着した溶媒や混合物に含まれる所定量の溶媒を予め除去しておくことが好ましい。また、乾燥後に得られたケーキは、緩く凝集しているため、例えば乾式ボールミル等の公知の粉砕方法で解砕することで、前駆体を得ることができる。
<2−3.第3工程(仮焼成工程)>
第3工程は、上述した第2工程にて得られた蛍光体前駆体を、所定の熱処理条件で仮焼成する仮焼成工程である。この第3工程では、第2工程を経て残留している溶媒成分を除去するとともに、前駆体中の炭酸塩等の原料金属塩を分解して母体結晶を成長させる。これにより、原料成分由来の酸化物が均一に分布した仮焼粉を得ることができる。
熱処理(仮焼成)条件としては、大気雰囲気中で700℃〜1400℃の温度条件とする。熱処理温度が700℃未満では、炭酸塩等の原料金属塩の分解が不十分となり、母体結晶の成長が不十分となる。一方で、1400℃を超える温度で熱処理を行うと、結晶成長が進み過ぎて焼結塊となってしまい、後での解砕が困難となる。
また、この仮焼成の温度条件としては、700℃〜1200℃の範囲で行うことがより好ましい。また、必要に応じて焼成温度を変えて、段階的に熱処理を行ったり、複数回に分けて熱処理を行ってもよい。
<2−4.第4工程(焼成工程)>
第4工程は、上述した第3工程にて得られた仮焼粉を、還元雰囲気中で所定の熱処理条件で還元焼成する焼成工程である。この第4工程では、母体結晶をさらに成長させ、BaZrSi結晶相を得ると同時に、賦活剤であるEuを3価(Eu3+)(例えばEu)から2価(Eu2+)に還元してBaサイトにドープする。
熱処理(焼成)条件としては、還元雰囲気中で1100℃〜1500℃の温度条件とする。熱処理温度が1100℃未満では、目的とする結晶相(BaZrSi)を得ることができないことがあり、また結晶成長が不十分となって高い発光強度が得られないことがある。一方で、1500℃を超える温度で熱処理を行うと、得られた結晶が溶融してしまい、熱処理後に強い粉砕が必要となるために、粉砕による結晶のダメージにより発光強度の低下を引き起こすという問題が生じる。
ここで、この第4工程においては、仮焼粉に対して、塩化物、フッ化物等をフラックスとして添加して混合し、このフラックスの存在下で還元焼成することが好ましい。これにより、結晶成長や粒成長を促進させることができる。
具体的に、フラックスとしては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、NaCl、KCl、LiCO、NaCO、KCO、NaHCO、NHCl、NH、MgF、CaF、SrF、BaF、MgCl、CaCl、SrCl、BaCl、MgI、CaI、SrI、BaI等を挙げることができ、これらの化合物を1種単独で又は2種以上を併せて用いることができる。なお、これらフラックスとしては、その酸素(O)の一部がF、Cl、I等で置換された化合物であってもよい。フラックス成分のアニオンが結晶内部に取り込まれ酸素置換した組成でも良い。また、フラックスは、後述するアニール工程時に使用することもできる。
この第4工程において、還元焼成するに際しては、例えば焼成炉内に、水素ガスとアルゴンガスとの混合ガス(Ar−H混合ガス)や水素ガスと窒素ガスとの混合ガス(N−H混合ガス)等を流通させることで、炉内を還元雰囲気下として行うことができる。
また、この第4工程においては、大気雰囲気中での仮焼成処理と、還元雰囲気中での本焼成処理とに分けて、複数回の熱処理を行うようにしてもよい。すなわち、第3工程にて得られた仮焼粉に対して、大気雰囲気中での仮焼成処理をさらに行うことによって、完全にBaZrSi結晶相とした上で、還元雰囲気中での本焼成処理を行うことで発光に寄与するEuをBaサイトに還元ドープさせるようにする。これにより、所望とするBaZrSi結晶相を確実に得ることができるとともに、効果的に賦活剤のEu2+をBaサイトにドープすることができる。なお、複数回に分けて熱処理を行う場合には、それぞれのステップの度に解砕を行うようすることができる。
還元焼成の処理時間としては、特に限定されないが、例えば1時間〜24時間とすることができ、2時間〜4時間とすることが好ましい。熱処理時間が短過ぎると、結晶成長が不十分となって高い発光強度が得られない可能性がある。一方で、熱処理時間が長過ぎると、溶融してしまう虞があり、溶融・焼結してしまうと強い粉砕が必要となり、その粉砕によって結晶がダメージを受けることがあり、やはり高い発光強度が得られない可能性がある。
<2−5.第5工程(アニール工程)>
ここで、上述のようにして仮焼粉を還元焼成することによって得られた熱処理物を解砕することで蛍光体粒子を得ることができ、このようにして得られた蛍光体は、Eu2+が100%に近い割合で還元ドープされ、得られるXRDパターンもBaZrSiのものであって青色発光を示す。しかしながら、この状態での発光強度は著しく低い。このことは、酸素欠陥により、青色発光領域に自己吸収を生じさせており、励起光や自己の青色発光を吸収してしまうためであると考えられる。一般に、ZrOは、非常に酸素欠陥が生じ易く、したがって、還元雰囲気下では酸素欠陥を抑制することが困難となる。
そこで、本実施の形態においては、第5工程として、上述した第4工程にて還元焼成して得られた熱処理物を、酸素を含む雰囲気中で所定の条件で熱処理(酸素アニール)する。すなわち、第5工程は、得られた熱処理物に対して酸素アニールするアニール工程である。
上述したように、第4工程にて得られる還元焼成後の蛍光体は、酸素欠陥由来の自己吸収が大きく、輝度が著しく低い。このことから、その得られた熱処理物に対して、酸素を含む雰囲気でアニールすることによって、酸素欠陥を埋めることができ、その酸素欠陥に基づく自己吸収を抑制することができる。
通常のEu2+賦活蛍光体においては、還元焼成後に酸素を含む雰囲気で高温アニールするとEu2+がEu3+に変化して(酸化して)発光をほとんど示さなくなるため、通常のEu2+賦活蛍光体の製造工程では、このような酸素雰囲気での高温アニール処理は行なわれない。しかしながら、通常のEu2+賦活蛍光体とは異なり、上述の第4工程における還元焼成により得られた熱処理物を構成するBaZrSi:Euでは、Eu2+がドープされるBaサイトがSiOとZrOに囲まれた結晶構造を有しており、外部雰囲気の影響を受け難い。そのため、酸素を含む雰囲気でアニールして酸素欠陥を埋めた後も、Eu2+は完全には酸化されず、Eu2+とEu3+が特定の比率で共に存在する状態が得られ、このときに、最大の発光強度が得られるものと考えられる。
このように、本実施の形態においては、還元焼成後の熱処理物に対して酸素を含む雰囲気で高温アニールすることによって、還元による酸素欠陥が埋められ自己吸収が軽減され、Eu2+とEu3+が特定の比率で共に存在する状態に制御される。これにより、発光強度が著しく高いBaZrSi:Euを得ることができるという極めて異例な発光挙動となることを見出した。
第5工程において、熱処理雰囲気としては、酸素存在下であればよく、任意の濃度の酸素ガスを流通させて酸素を含む雰囲気とすることができる。その最適な酸素濃度としては、前駆体の仮焼条件や還元焼成条件によって、すなわち酸素欠陥の度合いによって変化するため一義的には決まらない。ただし、大気中で熱処理することによって、著しい蛍光輝度の向上効果が得られ、装置等についても簡便で済むため、大気中にて熱処理を行うことが工業的に有利なアニール処理方法となる。なお、これは、任意濃度の酸素ガスを用いた酸素欠陥の回復ためのアニール処理を制限するものではない。
また、アニール処理温度についても、蛍光体(熱処理物)中の酸素欠陥の度合いや酸素濃度によって変化するため一義的には決まらないが、例えば大気中での処理等においては、500℃〜1500℃の温度範囲とすることが必要となり、800℃〜1300℃の温度範囲とすることがより好ましい。アニール温度が500℃未満であると、Eu2+の酸化が抑制されるが十分な酸素欠陥の回復効果が得られない。一方で、1500℃を超える温度でアニールすると、酸素欠陥回復効果は十分に得られるものの、Eu2+の酸化が進み過ぎる他、試料が溶融してしまうために、高い発光強度が得られない。
本実施の形態においては、このように、第4工程にて得られた熱処理物に対して、酸素を含む雰囲気にて800℃〜1300℃の温度範囲でアニール処理を施すことで。組成式中のEuがEu2+とEu3+とを共に有するものとなり、その全EuのうちのEu2+の比率(Eu2+/Eu2++Eu3+)が10%〜90%となる蛍光体を得ることができる。また、このようにして得られた蛍光体は発光スペクトル中の610〜630nmの赤色領域に、Eu3+のf−f遷移由来の発光ピークを有する。
そして、このようにして製造された青色発光シリケート蛍光体では、近紫外LED、特に励起源として主に用いられる400nm前後の紫LEDで効率よく励起され、励起波長の変化による発光強度の変化が少なく、安定的にきわめて高い発光強度を示し、発光効率の高い蛍光体となる。
また、上述したような製造方法によれば、複雑な製造工程を経ることなく、また特殊な製造設備を用いることなく、安価に且つ簡便に、発光効率の高い青色発光シリケート蛍光体を製造することができる。
≪3.実施例≫
以下に、本発明を適用した実施例により詳しく説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、各実施例及び比較例にて作製した蛍光体の蛍光測定を、日立製作所株式会社製「F−4500形分光蛍光光度計」用いて行い、波長405nmにおける発光強度と、発光ピーク波長での励起スペクトルを測定した。
また、全EuのうちのEu2+とEu3+の比率(Eu2+/Eu2++Eu3+)は、X線吸収微細構造(XAFS)により評価した。具体的には、Eu2+の標準試料として、比較例1の1400℃還元焼成後の試料を用い、Eu3+の標準試料としては、Eu(信越化学工業株式会社製、純度99.99%)を用いた。なお、測定結果は、解析ソフト(Athena)を用いて、標準試料のデータから各試料のXANESスペクトルのパターンフィッティングを行い、試料中のEu2+の比率を求めた。
[実施例1]
(蛍光体の作製)
仕込み組成をBaZrSi:0.09Eu+0.3SiOとして、出発原料であるBaCO(日本化学工業株式会社製、LSR)、ZrO(第一希元素化学工業、UEP)、Eu(株式会社高純度化学研究所製)を純水中に分散してスラリーを得た。また、出発原料のうちのSiOとしては、水溶性ケイ素化合物を使用した。その水溶性ケイ素化合物は、テトラエトキシシラン(関東化学株式会社製):22.4ml(0.1モル)に対して、1,2−プロパンジオール(株式会社高純度化学研究所製):29.3ml(0.4モル)を添加し、液温が54℃になるようにホットスターラーを用いて攪拌しながら24時間混合し、その後、塩酸を0.1ml添加して、液温54℃でさらに1時間混合して作製した。仕込み組成に基づき、スラリーに所定量の水溶性ケイ素化合物を添加して室温中で混合し、原料が均一に分散したゲル体(混合物)を得た。
次に、得られたゲル体を100℃で12時間乾燥して、解砕して前駆体を得た。
次に、得られた前駆体をアルミナルツボに入れて、800℃の温度条件で12時間、大気雰囲気中で仮焼成して仮焼粉を得た。
次に、得られた仮焼粉を雰囲気炉に入れ、その炉内にAr−4%Hを流通させた還元雰囲気下で、1400℃の温度条件で2時間に亘り還元焼成した。そして、得られた還元焼成物(熱処理物)を解砕した。
次に、得られた熱処理物をアルミナルツボに入れて、1200℃の温度条件で1時間、大気アニール処理を行った。すなわち、蛍光体に対して酸素を含む雰囲気下でアニール処理し、蛍光体を得た。
(蛍光測定、Eu2+の比率評価)
得られた蛍光体をXRD測定した。その結果、XRD回折では、ICDD(29−0214)に記載されているBaZrSiの回折パターンを示し、さらに2θ=22度付近に、微弱なSiO(クリストバライト)相が確認された。
また、図1に、励起発光スペクトルを示す。なお、発光強度は、YAG:Ce(フォスファーテック社製)を455nmで励起したときの発光ピーク強度を1として規定した。さらに、XAFS測定を行い、XANESスペクトルによりEuの価数状態を評価した。図2に、XANESスペクトルを示す。
図1に示される励起発光スペクトルから分かるように、発光スペクトルに示される発光ピーク強度はYAG:Ce比で約3.5と非常に高輝度であった。また、励起スペクトルは300nm〜400nm前後の波長で非常に安定的で、ばらつきのない高い励起強度を示していることが分かる。このことから、励起波長の変化による発光強度の変化がほとんどなく、ばらつきのない青色発光を示すものであることが分かる。
また、図2に示されるXANESスペクトルから分かるように、蛍光体中のEuはEu2+とEu3+とが混在した状態となっており、そのパターンフィッティングから求めた全EuのうちのEu2+の比率(Eu2+/Eu2++Eu3+)は、44%であった。図3には発光スペクトルの拡大図を示す。610〜630nmの赤色領域にEu3+由来の発光スペクトルを有していた。
[実施例2]
(蛍光体の作製)
大気アニール処理の条件を、1000℃の温度条件で1時間としたこと以外は、実施例1と同様にして操作し、蛍光体を作製した。
(蛍光測定、Eu2+の比率評価)
図1に、励起発光スペクトルを示し、図2に、XANESスペクトルを示す。
図1に示される励起発光スペクトルから分かるように、発光スペクトルに示される発光ピーク強度はYAG:Ce比で約3.3と非常に高輝度であった。また、励起スペクトルは300nm〜400nm前後の波長で非常に安定的で、ばらつきのない高い励起強度を示していることが分かる。このことから、励起波長の変化による発光強度の変化がほとんどなく、ばらつきのない青色発光を示すものであることが分かる。
また、図2に示されるXANESスペクトルから分かるように、蛍光体中のEuはEu2+とEu3+とが混在した状態となっており、そのパターンフィッティングから求めた全EuのうちのEu2+の比率は、49%であった。得られた蛍光体は、実施例1と同様に、610〜630nmの赤色領域にEu3+由来の発光スペクトルを有していた。
[実施例3]
(蛍光体の作製)
大気アニール処理の条件を、800℃の温度条件で1時間としたこと以外は、実施例1と同様にして蛍光体を作製した。
(蛍光測定、Eu2+の比率評価)
得られた蛍光体について実施例1と同様に励起発光スペクトル測定を行った。発光ピーク強度はYAG:Ce比で約3.2と非常に高輝度であり、また、励起スペクトルは300nm〜400nm前後の波長で非常に安定的で、ばらつきのない高い励起強度を示した。実施例1と同様にXANESスペクトル測定を行い、パターンフィッティングから求めた全EuのうちのEu2+の比率(Eu2+/Eu2++Eu3+)は72%であった。得られた蛍光体は、実施例1と同様に、610〜630nmの赤色領域にEu3+由来の発光スペクトルを有していた。
[実施例4]
(蛍光体の作製)
仕込み組成をBaZrSi:0.09Eu+0.3SiOとして、出発原料であるBaCO(日本化学工業株式会社製、LSR)、ZrO(第一希元素化学工業、UEP)、Eu(株式会社高純度化学研究所製)、SiO(株式会社アドマテックス社製、高純度球状シリカSO-E1)を純水中に分散してスラリーを得た。スラリーを乾燥後、ケーキを乾燥して前駆体とした。その後は実施例1と同様の操作を行って蛍光体粉末を得た。
(蛍光測定、Eu2+の比率評価)
得られた蛍光体について実施例1と同様に励起発光スペクトル測定を行った。発光ピーク強度はYAG:Ce比で約3.4と非常に高輝度であり、また、励起スペクトルは300nm〜400nm前後の波長で非常に安定的で、ばらつきのない高い励起強度を示した。実施例1と同様にXANESスペクトル測定を行い、パターンフィッティングから求めた全EuのうちのEu2+の比率(Eu2+/Eu2++Eu3+)は、56%であった。得られた蛍光体は、実施例1と同様に、610〜630nmの赤色領域にEu3+由来の発光スペクトルを有していた。
[実施例5]
(蛍光体の作製)
仕込み組成をBaZrSi:0.09Eu、0.05La+0.3SiOとして、出発原料であるBaCO(日本化学工業株式会社製、LSR)、ZrO(第一希元素化学工業、UEP)、Eu(株式会社高純度化学研究所製)、La(株式会社高純度化学研究所製)、SiO(株式会社アドマテックス社製、高純度球状シリカSO-E1)を純水中に分散してスラリーを得た。スラリーを乾燥後、ケーキを乾燥して前駆体とした。その後、実施例1と同様の操作を行って蛍光体粉末を得た。
(蛍光測定、Eu2+の比率評価)
得られた蛍光体について実施例1と同様に励起発光スペクトル測定を行った。発光ピーク強度はYAG:Ce比で約3.6と非常に高輝度であり、また、励起スペクトルは300nm〜400nm前後の波長で非常に安定的で、ばらつきのない高い励起強度を示した。実施例1と同様にXANESスペクトル測定を行い、パターンフィッティングから求めた全EuのうちのEu2+の比率(Eu2+/Eu2++Eu3+)は、50%であった。得られた蛍光体は、実施例1と同様に、610〜630nmの赤色領域にEu3+由来の発光スペクトルを有していた。
[比較例1]
(蛍光体の作製)
比較例1では、大気アニール処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして操作し、蛍光体を得た。すなわち、実施例1と同様にして、仮焼粉を還元焼成して得られた還元焼成物(熱処理物)を解砕して蛍光体とした。
(蛍光測定、Eu2+の比率評価)
得られた蛍光体をXRD測定したところ、XRD回折では、実施例1と同様に、ICDD(29−0214)に記載されているBaZrSiの回折パターンを示し、さらに2θ=22度付近に、微弱なSiO(クリストバライト)相が確認された。
一方で、蛍光測定を行ったところ、図1の励起発光スペクトルを示されるように、その発光ピーク強度はYAG:Ceと変わらず極めて低いものであった。また、その励起スペクトルでは、300nm〜400nm前後に亘って励起強度のばらつき(変化)が大きく、しかもその励起強度は低いものであった。
また、XAFS測定を行ったところ、図2に示すXANESスペクトルのパターンフィッティングからEu2+の比率はほぼ100%と認められた。なお、上述したように、この試料をEu2+の標準試料として、実施例のサンプルのEu2+比率を算出した。図3には発光スペクトルの拡大図を示すが、測定バックグラウンドと明確に区別可能なEu3+由来の発光スペクトルは認められなかった。
[比較例2]
(蛍光体の作製)
比較例2では、還元焼成して得られた熱処理物をアルミナルツボに入れて、400℃の温度条件で1時間、大気アニール処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして操作し、蛍光体を作製した。
(蛍光測定、Eu2+の比率評価)
得られた蛍光体を実施例1と同様にして評価したが、励起発光スペクトルとXANESスペクトルは、比較例1のものと変化はなかった。このことは、大気アニールが低温であったため、Eu2+が酸化されなかったためであると考えられる。比較例1と同様に、測定バックグラウンドと明確に区別可能なEu3+由来の発光スペクトルは認められなかった。
[比較例3]
(蛍光体の作製)
比較例3では、還元焼成して得られた熱処理物をアルミナルツボに入れて、1550℃の温度条件で1時間、大気アニール処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして操作し、蛍光体を作製した。
(蛍光測定、Eu2+の比率評価)
得られた蛍光体を実施例1と同様にして評価したが、得られた蛍光体は溶融しており、Eu2+由来の青色発光は示さなかった。

Claims (7)

  1. Ba1−xEuZrSi3+2y+δ(但し、0.001≦x≦0.5、2.5≦y≦6.0、−0.1≦δ≦0.2)の組成式で表される青色発光シリケート蛍光体であって、
    還元性雰囲気下における熱処理によりEuをEu 2+ としてドープさせた後、アニールして得られ、前記組成中のEuはEu2+とEu3+を共に含有しており、全EuのうちのEu2+の比率(Eu2+/Eu2++Eu3+)が10%〜90%であることを特徴とする青色発光シリケート蛍光体。
  2. Mg、Ca、Sr、Ti、Hf、Sn、Ge、La、Yから選択される少なくとも1種類以上の元素で元素置換されていることを特徴とする請求項1に記載の青色発光シリケート蛍光体。
  3. 発光スペクトル中にEu3+由来の発光ピークを有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の青色発光シリケート蛍光体。
  4. 前記Eu 2+ の比率が44%〜72%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の青色発光シリケート蛍光体。
  5. Ba1−xEuZrSi3+2y+δ(但し、0.001≦x≦0.5、2.5≦y≦6.0、−0.1≦δ≦0.2)の組成式で表される青色発光シリケート蛍光体の製造方法であって、
    上記組成式で表される構成成分を含有する各出発原料を秤量し、該出発原料を溶媒中で混合撹拌することにより、該構成成分が均一に分散した混合物を得る工程と、
    前記混合物を乾燥することにより、該混合物中に含まれる溶媒を除去した乾燥物である前駆体を形成する工程と、
    前記前駆体を、大気雰囲気中で700℃〜1400℃の温度で熱処理して仮焼粉を得る工程と、
    前記仮焼粉を、還元性雰囲気下で1100℃〜1500℃の温度で熱処理して、EuをEu2+としてドープさせる工程と、
    前記仮焼粉を熱処理して得られた熱処理物を、酸素を含む雰囲気中で500℃〜1500℃の温度でアニールする工程と
    を有することを特徴とする青色発光シリケート蛍光体の製造方法。
  6. 前記出発原料として使用するSiOは、水溶性ケイ素化合物であることを特徴とする請求項に記載の青色発光シリケート蛍光体の製造方法。
  7. 前記出発原料の一部は、Mg、Ca、Sr、Ti、Hf、Sn、Ge、La、Yから選択される少なくとも1種類以上の元素で元素置換されていることを特徴とする請求項又は請求項に記載の青色発光シリケート蛍光体の製造方法。
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