以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。便宜上、実施形態と類似の参考形態について先に説明し、その後に実施形態について参考形態と異なる部分(主に学習制御)の説明を行う。図1に示す車両は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両であって、エンジン1、ロックアップクラッチ付トルクコンバータ2、自動変速機3、差動歯車装置5、ECU200などを搭載している。エンジン1の出力軸であるクランクシャフト(図示せず)はトルクコンバータ2に連結されており、エンジン1の出力が、トルクコンバータ2、自動変速機3、差動歯車装置5などを介して左右の駆動輪6,6へ伝達される。
本形態では、自動変速機として、クラッチおよびブレーキと遊星歯車装置とを用いて変速比(ギヤ段)を設定する遊星歯車式変速機を例に挙げているが、変速比を無段階に調整するベルト式無段変速機など、その他の自動変速機を適用することも可能である。
−エンジン−
エンジン1は、例えば多気筒ガソリンエンジンなどであり、このエンジン1には、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ211、エンジンの冷却水温を検出する水温センサ217等が設置されている。
エンジン1には、電子制御式のスロットルバルブ11により流量調整された空気が吸入される。スロットルバルブ11の開度は、エンジン回転数およびアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)などのエンジン1の運転状態に応じた最適な吸入空気量(目標吸気量)が得られるように、ECU200によりスロットルモータ12を介して駆動制御される。
−トルクコンバータ−
トルクコンバータ2は、図2に示すように、入力軸側のポンプインペラ21と、出力軸側のタービンランナ22と、トルク増幅機能を発現するステータ23と、ワンウェイクラッチ24とを備え、ポンプインペラ21とタービンランナ22との間で流体を介して動力伝達を行う。
トルクコンバータ2には、当該トルクコンバータ2の入力側と出力側とを直結するロックアップクラッチ25が設けられている。ロックアップクラッチ25は、図3に示すように、係合側油室26内の油圧と解放側油室27内の油圧との差圧ΔP(ΔP=係合側油室26内の油圧PON−解放側油室27内の油圧POFF)によってフロントカバー2aに摩擦係合される油圧式摩擦クラッチであって、前記差圧ΔPを制御することにより、完全係合状態、スリップ状態または解放状態とされる。なお、本明細書では、上記差圧ΔPをロックアップ差圧ΔP又はロックアップクラッチ25の差圧ΔPともいう。
ロックアップクラッチ25を完全係合状態とすることにより、ポンプインペラ21とタービンランナ22とが一体に回転する。また、ロックアップクラッチ25をスリップ状態とすることにより、タービンランナ22がポンプインペラ21に対して滑りながら追随して回転する。一方、ロックアップ差圧ΔPを負に設定することによりロックアップクラッチ25は解放状態となる。
−自動変速機−
図2に例示する自動変速機3は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置301を主体として構成される第1変速部300Aと、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置302およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置303を主体として構成される第2変速部300Bとを同軸線上に有し、入力軸311の回転を変速して出力軸312に伝達し、出力歯車313から出力する遊星歯車式多段変速機である。出力歯車313は差動歯車装置5のデフドリブンギヤ5a(図1参照)に噛み合っている。なお、自動変速機3およびトルクコンバータ2は中心線に対して略対称的に構成されているので、図2では中心線の下半分を省略している。
第1変速部300Aを構成している第1遊星歯車装置301は、サンギヤS1、キャリアCA1およびリングギヤR1の3つの回転要素を備えており、サンギヤS1が入力軸311に連結される。さらに、サンギヤS1は、リングギヤR1が第3ブレーキB3を介してハウジングケース310に固定されることにより、キャリヤCA1を中間出力部材として入力軸311に対して減速回転される。
第2変速部300Bを構成している第2遊星歯車装置302および第3遊星歯車装置303においては、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されている。
具体的には、第3遊星歯車装置303のサンギヤS3によって第1回転要素RM1が構成されており、第2遊星歯車装置302のリングギヤR2および第3遊星歯車装置303のリングギヤR3が互いに連結されて第2回転要素RM2が構成されている。さらに、第2遊星歯車装置302のキャリアCA2および第3遊星歯車装置303のキャリアCA3が互いに連結されて第3回転要素RM3が構成されている。また、第2遊星歯車装置302のサンギヤS2によって第4回転要素RM4が構成されている。
第2遊星歯車装置302および第3遊星歯車装置303は、キャリアCA2およびCA3が共通の部材にて構成されているとともに、リングギヤR2およびR3が共通の部材にて構成されている。さらに、第2遊星歯車装置302のピニオンギヤが第3遊星歯車装置303の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
第1回転要素RM1(サンギヤS3)は、中間出力部材である第1遊星歯車装置301のキャリアCA1に一体的に連結されており、第1ブレーキB1によってハウジングケース310に選択的に連結されて回転停止される。第2回転要素RM2(リングギヤR2およびR3)は、第2クラッチC2を介して入力軸311に選択的に連結される一方、ワンウェイクラッチF1および第2ブレーキB2を介してハウジングケース310に選択的に連結されて回転停止される。
第3回転要素RM3(キャリアCA2及びCA3)は出力軸312に一体的に連結されている。第4回転要素RM4(サンギヤS2)は、第1クラッチC1を介して入力軸311に選択的に連結される。
以上の自動変速機3では、摩擦係合要素である第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3およびワンウェイクラッチF1などが、所定の状態に係合または解放されることによってギヤ段が設定される。
図4は、自動変速機3の各ギヤ段を成立させるためのクラッチおよびブレーキの係合作動を説明する係合表であり、「○」は係合を、「×」は解放をそれぞれ表している。
図4に示すように、自動変速機3のクラッチC1を係合させると前進ギヤ段の1速(1st)が成立し、この1速ではワンウェイクラッチF1が係合する。さらに、1速のエンジンブレーキ(EGB)レンジでは第2ブレーキB2が係合させられる。第1クラッチC1およびブレーキB1を係合させると前進ギヤ段の2速(2nd)が成立する。第1クラッチC1および第3ブレーキB3を係合させると前進ギヤ段の3速(3rd)が成立する。
また、第1クラッチC1および第2クラッチC2を係合させると前進ギヤ段の4速(4th)が成立する。第2クラッチC2および第3ブレーキB3を係合させると前進ギヤ段の5速(5th)が成立する。第2クラッチC2および第1ブレーキB1を係合させると前進ギヤ段の6速(6th)が成立する。一方、第2ブレーキB2および第3ブレーキB3を係合させると後進ギヤ段(R)が成立する。
以上の自動変速機3の入力軸311の回転数(タービン回転数)は入力軸回転数センサ213によって検出される。また、自動変速機3の出力軸312の回転数は出力軸回転数センサ214によって検出される。これら入力軸回転数センサ213および出力軸回転数センサ214の出力信号から得られる回転数の比(出力回転数/入力回転数)に基づいて、自動変速機3の現在ギヤ段を判定することができる。
−油圧制御回路−
次に、本形態における油圧制御回路100について図3を参照して説明する。図3は、ロックアップクラッチ25付きトルクコンバータ2の油圧制御回路の要部のみを示している。なお、図3では、自動変速機3の変速を行うための油圧式摩擦係合装置(クラッチCおよびブレーキB)の作動を制御するための回路等、他の制御に用いられる回路は省略されている。
上記油圧制御回路100には、オイルパン42に環流した作動油を吸引して圧送するためのオイルポンプ110が設けられており、そのオイルポンプ110から圧送された作動油は、リリーフ式のプライマリレギュレータバルブ101により第1ライン圧PL1に調圧される。このプライマリレギュレータバルブ101は、図示しないスロットル弁開度検知弁から出力されたスロットル圧に対応して大きくなる第1ライン圧PL1を発生させて第1ライン油路48へ出力する。また、セカンダリレギュレータバルブ102も同様にリリーフ形式の調圧弁であって、上記プライマリレギュレータバルブ101から調圧のために排出(リリーフ)された作動油を上記スロットル圧に基づいて調圧することにより、エンジン1の出力トルクに応じた第2ライン圧PL2を発生させる。また、モジュレータバルブ103は、上記第1ライン圧PL1を元圧とする減圧弁であって、予め設定された大きさの一定のモジュレータ圧PMを発生させる。なお、上記第1ライン圧PL1は、自動変速機3のギヤ段を制御するための図示しない変速制御用油圧回路の元圧等として供給される。
図3に示すように、ロックアップクラッチ25は、係合側油路26aを介して作動油が供給される係合側油室26内の油圧PONと解放側油路27aを介して作動油が供給される解放側油室27内の油圧POFFとの差圧ΔP(ロックアップ差圧ΔP)によりフロントカバー2aに摩擦係合させられる油圧式摩擦係合クラッチである。
油圧制御回路100は、切換用ソレノイド弁105、クラッチ切換弁108、スリップ制御用ソレノイド弁104、ロックアップコントロール弁109等を備えている。
切換用ソレノイド弁105は、ECU200(図3におてい図示せず)から供給される駆動電流に従ってオン・オフの切換用信号圧PSWを出力する。クラッチ切換弁108は、切換用ソレノイド弁105の切換用信号圧PSWに従って、ロックアップクラッチ25を解放状態とするオフ側位置(OFF)およびロックアップクラッチ25を係合状態とするオン側位置(ON)の何れか一方に切換えられる。
スリップ制御用ソレノイド弁104は、ECU200(図3におてい図示せず)から供給される駆動電流(ロックアップ差圧ΔPを制御するための指令値)に応じて連続的に変化する信号圧PSLUを出力する。ロックアップコントロール弁109は、クラッチ切換弁108がオン側位置(ON)にあるとき、上記信号圧PSLUに応じてトルクコンバータ2のスリップ量を制御する。
クラッチ切換弁108は、解放側油室27に連通する解放側ポート74と、係合側油室26に連通する係合側ポート76と、第2ライン圧PL2が供給される入力ポート78と、ロックアップクラッチ25の解放時に係合側油室26から係合側油路26aを経て係合側ポート76に供給された作動油を排出する排出ポート80と、ロックアップクラッチ25の係合時に解放側油室27に解放側油路27aを介して連通させられる解放側ポート74と連通させられる迂回ポート82と、セカンダリレギュレータバルブ102から調圧のために排出された作動油が供給されるリリーフポート84と、それら複数のポートの状態を切り換えるためのスプール弁子181と、そのスプール弁子181をオフ側位置(OFF)に向かって付勢する圧縮コイルばね182と、スプール弁子181の端部に切換用ソレノイド弁105からの切換用信号圧PSWを作用させてオン側位置(ON)へ向かう推力を発生させるためにその切換用信号圧PSWを受け入れる油室90と、を備えている。排出ポート80は、ロックアップクラッチ25の係合時にはリリーフポート84と連通させられ、セカンダリレギュレータバルブ102から調圧のためにリリーフポート84に供給された作動油を排出する。なお、図3に示すクラッチ切換弁108の中心線より左側半分は、オフ側位置(OFF)にスプール弁子181が位置する状態を示し、中心線より右側半分は、オン側位置(ON)にスプール弁子181が位置する状態を示す。
ロックアップコントロール弁109は、その弁の状態を切換えるスプール弁子191と、そのスプール弁子191をスリップ側位置(SLIP)へ向かって付勢する圧縮コイルばね192と、トルクコンバータ2の係合側油室26内の油圧PONを受け入れてスプール弁子191にスリップ側位置へ向かう方向の推力を作用させる油室96と、トルクコンバータ2の解放側油室27内の油圧POFFを受け入れてスプール弁子191に完全係合側位置(ON)へ向かう方向の推力を作用させる油室98と、スリップ制御用ソレノイド弁104から出力される信号圧PSLUを受け入れてスプール弁子191に完全係合側位置(ON)へ向かう方向の推力を作用させる油室92と、セカンダリレギュレータバルブ102によって調圧された第2ライン圧PL2が供給される入力ポート93と、スプール弁子191がスリップ側位置(SLIP)に位置する時に入力ポート93と連通する制御ポート94と、ドレンポート95とを、備えている。なお、図3に示すロックアップコントロール弁109の中心線より左側半分は、スプール弁子191がスリップ側位置(SLIP)にある状態を示し、中心線より右側半分は、スプール弁子191が完全係合側位置(ON)にある状態を示す。
スリップ制御用ソレノイド弁104は、ECU200から入力される駆動電流(指令値)に従って、モジュレータバルブ103が出力するモジュレータ圧PMを減圧して信号圧PSLUを発生させる。この信号圧PSLUによりロックアップコントロール弁109を介してロックアップクラッチ25が解放状態から完全係合状態の範囲で制御される。
切換用ソレノイド弁105は、非励磁状態(オフ状態)では切換用信号圧PSWをドレン圧とするが、励磁状態(オン状態)では切換用信号圧PSWをモジュレータ圧PMとし、クラッチ切換弁108の油室90に作用させる。この油室90にモジュレータ圧PMが供給されるとクラッチ切換弁108のスプール弁子181は、圧縮コイルばね182の付勢力に抗してオン側位置(ON)に移動させられる。一方、クラッチ切換弁108の油室90にドレン圧が供給されると、スプール弁子181は圧縮コイルばね182の付勢力に従ってオフ側位置(OFF)に移動させられる。なお、以下の説明では、切換用信号圧PSWがモジュレータ圧PMの場合に切換用信号圧PSWが供給されると表現し、切換用信号圧PSWがドレン圧の場合は切換用信号圧PSWが供給されないと表現する。
クラッチ切換弁108において、切換用ソレノイド弁105が励磁され、切換用信号圧PSWが油室90に供給されてスプール弁子181がオン側位置(ON)に位置すると、入力ポート78に供給された第2ライン圧PL2が係合側ポート76から係合側油路26aを通って係合側油室26に供給される。この係合側油室26に供給される第2ライン圧PL2が油圧PONとなる。同時に、解放側油室27は、解放側油路27aから解放側ポート74、迂回ポート82を経てロックアップコントロール弁109の制御ポート94に連通する。そして、その解放側油室27内の油圧POFFがロックアップコントロール弁109によって調圧されることにより、トルクコンバータ2のスリップ量(スリップ回転数)が制御される。
具体的には、クラッチ切換弁108のスプール弁子181がオン側位置(ON)にあるときに、ロックアップコントロール弁109の油室92に供給される信号圧PSLUが、スプール弁子191を完全係合側位置(ON)へ移動させる油圧よりも低いことにより、その信号圧PSLUと圧縮コイルばね192の付勢力との釣り合いによってスプール弁子191が完全係合側位置(ON)とスリップ側位置(SLIP)との間の中間位置に保持される。その結果、制御ポート94と入力ポート93およびドレンポート95との連通状態が、その信号圧PSLUに応じて連続的に変化し、制御ポート94に連通している解放側油室27内の油圧POFFも連続的に変化する。これにより、ロックアップ差圧ΔPが、スリップ制御用ソレノイド弁104の信号圧PSLUに応じて連続的に制御され、ロックアップクラッチ25のスリップ量が連続的に制御される。
また、クラッチ切換弁108のスプール弁子181がオン側位置(ON)にあるときに、ロックアップコントロール弁109の油室92に供給される信号圧PSLUが最大圧とされ、スプール弁子191が完全係合側位置(ON)へ移動させられると、入力ポート93と制御ポート94との連通が遮断され、解放側油室27への第2ライン圧PL2の供給が停止されるとともに、制御ポート94とドレンポート95とが連通する。これにより、解放側油室27内の作動油が制御ポート94からドレンポート95を経て排出され、ロックアップ差圧ΔPが最大とされてロックアップクラッチ25が完全係合状態となる。
ロックアップクラッチ25が、スリップ状態もしくは完全係合状態にある場合、クラッチ切換弁108のスプール弁子181はオン側位置(ON)にあるため、リリーフポート84と排出ポート80とが連通する。これにより、セカンダリレギュレータバルブ102から排出された作動油は、クラッチ切換弁108を介して図示しない潤滑油供給油路へ排出される。
一方、クラッチ切換弁108において、切換用信号圧PSWが油室90に供給されず、スプール弁子181が圧縮コイルばね182の付勢力によってオフ側位置(OFF)に位置していると、入力ポート78に供給された第2ライン圧PL2が解放側ポート74から解放側油路27aを通って解放側油室27へ供給される。また、係合側油室26内の作動油は、係合側油路26aを通り係合側ポート76へ供給され、排出ポート80から図示しない潤滑油供給油路へ排出される。これにより、ロックアップクラッチ25が解放状態とされる。
−シフト操作装置−
車両の運転席の近傍には、変位可能に設けられたシフトレバーを備えるシフト操作装置が配置されている。シフト操作装置には、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジションおよびD(ドライブ)ポジションが設定されている。ドライバが所望のポジションへシフトレバーを変位させると、これらPポジション、Rポジション、Nポジション、Dポジションの各位置は、シフトポジションセンサ216(図5参照)によって検出される。シフトポジションセンサ216の出力信号はECU200に入力される。
PポジションおよびNポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジション(非走行レンジ)であり、RポジションおよびDポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジション(前進走行レンジ、後進走行レンジ)である。例えば、シフトレバーにてDポジションが選択されると、車両の運転状態などに応じて自動変速機3を自動的に変速する自動変速モードが設定され、自動変速機3の複数の前進ギヤ段(前進6速)が自動的に変速制御される。
−ECU−
ECU200は、図5に示すように、CPU201、ROM202、RAM203、バックアップRAM204などを備えている。
ROM202には、車両の基本的な運転に関する制御の他、車両の走行状態に応じて自動変速機3のギヤ段を設定する変速制御、ロックアップクラッチ25を係合状態、スリップ状態または完全係合状態に切換えるロックアップ制御、自動変速機3をニュートラル状態にするニュートラル制御などを実行するためのプログラムを含む各種プログラムなどが記憶されている。
CPU201は、ROM202に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。また、RAM203はCPU201での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM204はエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
これらCPU201、ROM202、RAM203およびバックアップRAM204はバス207を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース205および出力インターフェース206と接続されている。
入力インターフェース205には、エンジン回転数センサ211、スロットル開度センサ212、入力軸回転数センサ213、出力軸回転数センサ214、アクセル開度センサ215、シフトポジションセンサ216、水温センサ217、吸入空気量を検出するエアフロメータ218、吸気温センサ219、自動変速機3の作動油の温度を検出するATF油温センサ220、車速センサ221、ブレーキペダルの操作の有無を検出するブレーキスイッチ222、オドメータ等の走行距離積算器223などが接続されており、これらの各センサ類からの信号がECU200に入力される。
出力インターフェース206には、スロットルバルブ11のスロットルモータ12、エンジン1に燃料を噴射するインジェクタ13、点火プラグの点火時期を制御するイグナイタ14、油圧制御回路100などが接続されている。
ECU200は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、エンジン1のスロットルバルブ11の開度制御、点火時期制御、燃料噴射量制御などを含むエンジン1の各種制御を実行する。
また、ECU200は、自動変速機3のギヤ段を設定するソレノイド制御信号(油圧指令信号)を図示しない油圧制御回路に出力する。このソレノイド制御信号に基づいて、当該油圧制御回路のリニアソレノイド弁やON−OFFソレノイド弁の励磁・非励磁などが制御され、所定の変速ギヤ段(1速〜6速)を構成するように、自動変速3のクラッチC1〜C2、ブレーキB1〜B3、ワンウェイクラッチF1などが、所定の状態に係合または解放される。
さらに、ECU200は、油圧制御回路100にロックアップクラッチ制御信号を出力する。このロックアップクラッチ制御信号に基づいて、油圧制御回路100の切換用ソレノイド弁105の信号圧PSWおよびスリップ制御用ソレノイド弁の信号圧PSLUが制御され、クラッチ切換弁108およびロックアップコントロール弁109を介して、ロックアップクラッチ25が、解放状態、スリップ状態または完全係合状態に制御される。
−ニュートラル制御−
ECU200は、エンジン1のアイドル運転時において、所定のニュートラル制御開始条件が成立したときに、自動変速機3の油圧制御回路(図示せず)を制御してクラッチC1の係合力を低下ないし解除して、自動変速機3をニュートラル状態にするニュートラル制御を行う。
ニュートラル制御開始条件は、例えば、車速がゼロであり、シフトポジションが「Dポジション」であり、ブレーキペダルの踏み込み操作が行われており、かつ、アクセルペダルの操作量がゼロ(アクセルがオフ状態)であることとされる。なお、車速は、車速センサ221の出力信号に基づき検出され、シフトポジションはシフトポジションセンサ216の出力信号に基づき検出され、ブレーキペダルの踏み込み操作はブレーキスイッチ222の出力信号に基づき検出され、アクセルペダルの操作量はアクセル開度センサ215の出力信号に基づき検出される。
ニュートラル制御は、所定の制御終了条件が成立することにより終了する。この制御終了条件は、例えば、ブレーキスイッチ222からの操作検出信号に基づいてブレーキペダルの踏み込み操作が解除されたことが検出された場合とされる。ニュートラル制御の制御終了条件が成立すると、ECU200は、係合力を低下ないし解除したクラッチC1の係合力を回復させる。
−フレックススタート制御−
以下、ECU200が実行するフレックススタート制御について説明する。このフレックススタート制御は、ロックアップクラッチ25をスリップ状態で車両を発進させるための制御である。
ECU200は、所定のフレックススタート制御開始条件が成立するとフレックススタート制御を開始する。フレックススタート制御開始条件は、例えば、車速がゼロであり且つブレーキの操作状態が非操作状態である場合において、アクセル開度又はスロットル開度のゼロからの増加が検出されることとされる。但し、本形態においては、フレックススタート制御は、後述の学習値の取得が完了している場合に限り実行される。なお、上記車速は、車速センサ221の出力信号に基づき検出され、ブレーキの操作状態は、ブレーキスイッチ222の出力信号に基づき検出され、アクセル開度は、アクセル開度センサ215の出力信号に基づき検出され、スロットル開度は、スロットル開度センサ212の出力に基づき検出される。
図6のタイムチャートに示すように、ECU200は、フレックススタート制御の開始当初(時間t1)、切換用ソレノイド弁105が出力する切換用信号圧PSWを作用させてクラッチ切換弁108をオン側位置(ON)に切換えるとともに、スリップ制御用ソレノイド弁104が出力する信号圧PSLUのファーストフィルを実行する。ECU200は、このファーストフィルの実行後、信号圧PSLUを所定時間(時間t2〜t3)だけ一定の圧力P1(定圧待機圧)に維持する。この圧力P1は、ロックアップクラッチ25を係合する直前の状態(つまり、解放状態からスリップ状態に移る直前の状態)にするロックアップ差圧ΔPを形成する値である。信号圧PSLUを上記圧力P1とするためにECU200がスリップ制御用ソレノイド弁104に対して供給する駆動電流(指令値)は、後述する学習制御によって取得される。
スリップ制御用ソレノイド弁104の出力する信号圧PSLUが上記定圧待機圧(圧力P1)に上記所定時間維持された後、その信号圧PSLUはスイープ制御により更に上昇されてロックアップクラッチ25の係合力が増幅され、トルクコンバータ2の実スリップ量Nsを目標スリップ量Nsmに追従させるフィードバック制御が開始される。なお、本形態では、スイープ制御の開始時の信号圧PSLUは上記圧力P1と等しくなっている。
上記フレックススタート制御は、例えば、車速が所定レベルに達するなどの所定の制御終了条件が成立することにより終了する。
−学習制御−
ECU200は、スリップ制御用ソレノイド弁104が出力する信号圧PSLUを上記圧力P1とするために、当該スリップ制御用ソレノイド弁104に対して供給すべき駆動電流(指令値)を学習する学習制御を実行する。以下、この学習制御について説明する。
ECU200は、所定の学習制御開始条件が成立すると、図7のタイムチャートに示すように、時間t11において学習実行フラグを「0」から「1」とし、スリップ制御用ソレノイド弁104に対して信号圧PSLUを初期値P0にさせる駆動電流(指令値)を供給するとともに、切換用ソレノイド弁105の切換用信号圧PSWをON状態にする。なお、この時間t11では、学習完了フラグは初期値「0」の状態を継続している。
前記所定の学習開始条件は、(1)変速レンジがNレンジであること又はニュートラル制御により自動変速機3がニュートラル状態にあることを前提とし、その他の学習開始条件として例えば、(2)車速がゼロであること、(3)自動変速機3の作動油の温度が所定温度以上(例えば60℃以上)であること、(4)エンジン1の回転数が所定範囲内(例えば、アイドリング回転数に対して±150rpmの範囲内)であることとされる。上記車速は車速センサ221の出力信号より、上記変速レンジはシフトポジションセンサ216の出力信号より、上記自動変速機3の作動油の温度は、ATF油温センサ220の出力信号より、上記エンジン回転数はエンジン回転数センサ211の出力信号より求められる。
上記初期値P0は、ロックアップクラッチ25および油圧制御回路100の個体差を考慮して、ロックアップクラッチ25が係合(スリップ状態を含む)し得ない値に設定される。
時間t11以降、ECU200は、所定時間が経過する毎に(時間t12、t13、t14において)、スリップ制御用ソレノイド弁104に対する駆動電流(指令値)を一定値(例えば駆動電流の最高値の1%)ずつ上昇させる(ロックアップクラッチ25が解放状態になる側から係合状態になる側へ向かって変化させる)ことにより、スリップ制御用ソレノイド弁104の出力する信号圧PSLUを段階的に上昇させる。上記所定時間は、ロックアップ差圧ΔPが安定するのに要する時間、例えば1秒〜2秒程度とされることが望ましい。
そして、時間t14〜t15において、トルクコンバータ2のスリップ量(スリップ回転数;エンジン回転数−タービン回転数)の絶対値が最初に所定の閾値(Xrpm)以下になると、ECU200は、このときのスリップ制御用ソレノイド弁104に対する駆動電流(指令値)を検出し、当該検出した駆動電流(指令値)に基づいてスリップ制御用ソレノイド弁104に上記圧力P1を発生させるための駆動電流の学習値を取得する。
すなわち、ECU200は、トルクコンバータ2のスリップ量の絶対値が最初に所定の閾値(Xrpm)以下になったときのスリップ制御用ソレノイド弁104に対する駆動電流(指令値)を検出し、当該検出した駆動電流(指令値)より前記一定値(例えば駆動電流の最高値の1%)だけ低い駆動電流(時間t13〜t14における指令値)をスリップ制御用ソレノイド弁104に上記圧力P1を発生させるための駆動電流の学習値として取得する。
上記所定の閾値(Xrpm)は、ロックアップクラッチ25が解放状態からスリップ状態に移り始めたときのスリップ回転数である。そのようなスリップ回転数は実験等により求められ、通常、5〜10rpmの範囲内の値となる。
時間t15では、ECU200は、学習制御実行フラグを「1」から「0」に戻し、スリップ制御用ソレノイド弁104の信号圧PSLUを元の値に戻し、切換用ソレノイド弁105の切換用信号圧PSWをOFFに戻して、学習完了フラグを「0」から「1」に設定する。
つぎに、ECU200が実行する上記学習制御の実行手順について、図8のフローチャートに基づいて説明する。
ステップST1において、既述の学習開始条件が成立しているか否かを判定する。ここで、肯定判定をした場合は、ステップST2に移り、否定判定をした場合は、このルーチンを抜ける。
ステップST2において、学習完了フラグが「1」であるか否か、つまり、スリップ制御用ソレノイド弁104に上記圧力P1を発生させるための駆動電流の学習値の取得が完了しているか否かを判定する。ここで肯定判定をした場合はステップST3に移り、否定判定をした場合は、ステップST4に移る。
ステップST3において、走行距離積算器223の出力信号に基づき検出される現在の車両走行距離と、ECU200の記憶部に記憶している前回の学習が完了した時の車両走行距離との差が所定の走行距離以上であるか否かを判定する。ここで肯定判定をした場合はステップST4に移り、否定判定をした場合は、このルーチンを抜ける。なお、前回の学習が完了した時の車両走行距離については後述する。
ステップST4において、スリップ制御用ソレノイド弁104に所定の駆動電流を供給して信号圧PSLUをP0にさせるとともに、切換用ソレノイド弁105に所定の駆動電流を供給してクラッチ切換弁108に切換用信号圧PSWを供給させる(クラッチ切換弁108をオン側位置(ON)に切換える。)。
ステップST5において、スリップ制御用ソレノイド弁104が信号圧PSLU(=P0)を出力した後、所定時間(例えば1秒)経過したか否かが判定される。ここで肯定判定をした場合はステップST6に移り、否定判定をした場合は、このステップST5を繰返し判定する。
ステップST6において、トルクコンバータ2のスリップ量の絶対値が所定の閾値以下(この閾値について既述している。)であるか否かを判定する。ここで肯定判定をした場合は、ステップST7に移り、否定判定をした場合はステップST10に移る。
ステップST7において、現在のスリップ制御用ソレノイド弁104に対する駆動電流(指令値)から既述した一定値を差し引いた駆動電流の値を学習値として記憶部(例えばバックアップRAM204)に記憶する。
ステップST8において、走行距離積算器223の出力信号により検出される現在の車両走行距離を記憶部(例えばバックアップRAM204)に記憶する。
ステップST9において、学習完了フラグを「0」から「1」に変更し、本ルーチンを抜ける。
ステップST10においては、スリップ制御用ソレノイド弁104が出力する信号圧PSLUをβだけ増加し、ステップST5に戻る。その後は、ステップST10を経る毎に、スリップ制御用ソレノイド弁104の信号圧PSLUをβだけ増加し、最終的に、ステップST6において肯定判定がなされて、ステップST7で学習値が取得される。
以上に説明した参考形態に係るロックアップクラッチの制御装置によれば、トルクコンバータ2のスリップ量がロックアップクラッチ25の係合動作以外の影響を受け難い状態、つまり、変速レンジがNレンジ又はニュートラル制御により自動変速機3がニュートラル状態にある状態で、上記学習制御を実行するため、好適な学習値を得ることができる。
−実施形態−
以下、本発明の実施形態について説明する。この実施形態に係るロックアップクラッチの制御装置は、変速レンジがDレンジであってニュートラル制御が実行されていない場合に学習制御が実行される点で、参考形態と相違している。
すなわち、ECU200は、変速レンジがDレンジであってニュートラル制御が実行されていないことおよび車速がゼロであることを学習開始条件の1つとし、その他の学習開始条件として、例えば、(1)自動変速機3の作動油の温度が所定温度以上(例えば60℃以上)であること、(2)エンジン1の回転数が所定範囲内(例えば、アイドリング回転数に対して±150rpmの範囲内)であることとされている。
ECU200は、上記学習開始条件が成立すると、図9のタイムチャートに示すように、時間t11において学習実行フラグを「0」から「1」とし、スリップ制御用ソレノイド弁104に対して信号圧PSLUが初期値P0(参考形態で説明した初期値P0と同じ)となる駆動電流(指令値)を供給するとともに、切換用ソレノイド弁105に対して切換用信号圧PSWを供給させる。なお、学習完了フラグは初期値「0」の状態を継続している。
時間t11以降、ECU200は、所定時間が経過する毎に(時間t12、t13、t14において)、スリップ制御用ソレノイド弁104に対する駆動電流(指令値)を一定値(例えば駆動電流の最高値の1%)ずつ上昇させることにより、スリップ制御用ソレノイド弁104の出力する信号圧PSLUを段階的に上昇させる。なお、上記所定時間は、参考形態と同様である。
そして、時間t14〜t15において、エンジン回転数の変化率ΔNeが所定の閾値(−Yrpm/sec)以下になるとロックアップクラッチ25が係合を開始したと推定できるので、ECU200は、このときのスリップ制御用ソレノイド弁104に対する駆動電流(指令値)を検出し、当該検出した駆動電流(指令値)に基づいてスリップ制御用ソレノイド弁104に上記圧力P1を発生させるための駆動電流の学習値を取得する。
すなわち、ECU200は、エンジン回転数の変化率ΔNeが所定の閾値(−Yrpm/sec)以下になったときのスリップ制御用ソレノイド弁104に対する駆動電流(指令値)を検出し、当該検出した駆動電流(時間t13〜t14における指令値)より前記一定値(例えば駆動電流の最高値の1%)だけ低い駆動電流(時間t13〜t14における指令値)をスリップ制御用ソレノイド弁104に上記圧力P1を発生させるための駆動電流の学習値として取得する。
なお、上記所定の閾値(−Yrpm/sec)は、ロックアップクラッチ25が解放状態からスリップ状態に移り始めたときのエンジン回転数の変化率である。そのようなエンジン回転数の変化率は実験等により求められる。
時間t15では、学習制御実行フラグを「1」から「0」に戻し、スリップ制御用ソレノイド弁104の信号圧PSLUを元の値に戻し、切換用ソレノイド弁105の切換用信号圧PSWをOFFに戻して、学習完了フラグを「0」から「1」に設定する。
本実施形態におけるECU200が実行する上記学習制御の実行手順は、図10のフローチャートに示すようになる。すなわち、ECU200は、ステップST1〜ST5、ステップST7〜ST10において、参考形態と同様の処理を実行し、ST6の判断ステップにおいて、スリップ回転数が所定の閾値以下になったか否かを判定する代わりに、エンジン回転数Neの変化率ΔNeが所定の閾値(−Yrpm/sec)以下になったか否かの判定を行う。ここで、肯定判定をした場合はステップST7に移り、否定判定をした場合はST10に移る。
以上に説明した実施形態に係るロックアップクラッチの制御装置によれば、エンジン回転数がロックアップクラッチ25係合動作以外の影響を受け難い状態、つまり、変速レンジがDレンジであってニュートラル制御が実行されておらず、車速がゼロである状態で、上記学習制御を実行するため、好適な学習値を得ることができる。