以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
図1に火花点火式内燃機関の側面断面図を示す。
図1を参照すると、1はクランクケース、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は燃焼室5の頂面中央部に配置された点火プラグ、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートをそれぞれ示す。吸気ポート8は吸気枝管11を介してサージタンク12に連結され、各吸気枝管11にはそれぞれ対応する吸気ポート8内に向けて燃料を噴射するための燃料噴射弁13が配置される。なお、燃料噴射弁13は各吸気枝管11に取付ける代りに各燃焼室5内に配置してもよい。
サージタンク12は吸気ダクト14を介してエアクリーナ15に連結され、吸気ダクト14内にはアクチュエータ16によって駆動されるスロットル弁17と例えば熱線を用いたエアフロメータ18とが配置される。一方、排気ポート10は排気マニホルド19を介して排気浄化触媒20を内蔵した触媒コンバータ21に連結され、排気マニホルド19内には空燃比センサ22が配置される。排気浄化触媒20としては排気ガス中の未燃HC、COおよびNOxを浄化することができれば、三元触媒、NOX吸蔵還元触媒、NOX選択還元触媒等、いかなる触媒を用いても良い。
一方、図1に示した実施形態ではクランクケース1とシリンダブロック2との連結部にクランクケース1とシリンダブロック2のシリンダ軸線方向の相対位置を変化させることによりピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更可能な可変圧縮比機構Aが設けられており、さらに実際の圧縮作用の開始時期を変更可能な実圧縮作用開始時期変更機構Bが設けられている。なお、図1に示した実施形態ではこの実圧縮作用開始時期変更機構Bは吸気弁7の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構からなる。
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。エアフロメータ18及び空燃比センサ22の出力信号はそれぞれ対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。さらに入力ポート35にはクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して点火プラグ6、燃料噴射弁13、スロットル弁駆動用アクチュエータ16、可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bに接続される。
図2は図1に示す可変圧縮比機構Aの分解斜視図を示しており、図3は図解的に表した内燃機関の側面断面図を示している。図2を参照すると、シリンダブロック2の両側壁の下方には互いに間隔を隔てた複数個の突出部50が形成されており、各突出部50内にはそれぞれ断面円形のカム挿入孔51が形成されている。一方、クランクケース1の上壁面上には互いに間隔を隔ててそれぞれ対応する突出部50の間に嵌合せしめられる複数個の突出部52が形成されており、これら各突出部52内にもそれぞれ断面円形のカム挿入孔53が形成されている。
図2に示したように一対のカムシャフト54、55が設けられており、各カムシャフト54、55上には一つおきに各カム挿入孔53内に回転可能に挿入される円形カム58が固定されている。これらの円形カム58は各カムシャフト54、55の回転軸線と共軸をなす。一方、各円形カム58の両側には図3に示すように各カムシャフト54、55の回転軸線に対して偏心配置された偏心軸57が延びており、この偏心軸57上に別の円形カム56が偏心して回転可能に取付けられている。図2に示したようにこれら円形カム56は各円形カム58の両側に配置されており、これら円形カム56は対応する各カム挿入孔51内に回転可能に挿入されている。
図3(A)に示すような状態から各カムシャフト54、55上に固定された円形カム58を図3(A)において矢印で示したように互いに反対方向に回転させると偏心軸57が互いに離れる方向に移動するために円形カム56がカム挿入孔51内において円形カム58とは反対方向に回転し、図3(B)に示したように偏心軸57の位置が高い位置から中間高さ位置となる。次いで更に円形カム58を矢印で示した方向に回転させると図3(C)に示したように偏心軸57は最も低い位置となる。
なお、図3(A)、図3(B)、図3(C)にはそれぞれの状態における円形カム58の中心aと偏心軸57の中心bと円形カム56の中心cとの位置関係が示されている。
図3(A)から図3(C)を比較するとわかるようにクランクケース1とシリンダブロック2の相対位置は円形カム58の中心aと円形カム56の中心cとの距離によって定まり、円形カム58の中心aと円形カム56の中心cとの距離が大きくなるほどシリンダブロック2はクランクケース1から離れる。すなわち、可変圧縮比機構Aは回転するカムを用いたクランク機構によりクランクケース1とシリンダブロック2間の相対位置を変化させていることになる。シリンダブロック2がクランクケース1から離れるとピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積は増大し、したがって各カムシャフト54、55を回転させることによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更することができる。
図2に示したように各カムシャフト54、55をそれぞれ反対方向に回転させるために駆動モータ59の回転軸にはそれぞれ螺旋方向が逆向きの一対のウォーム61、62が取付けられており、これらウォーム61、62と噛合するウォームホイール63、64がそれぞれ各カムシャフト54、55の端部に固定されている。この実施形態では駆動モータ59を駆動することによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を広い範囲に亘って変更することができる。なお、図1から図3に示される可変圧縮比機構Aは一例を示すものであっていかなる形式の可変圧縮比機構でも用いることができる。
一方、図4は図1において吸気弁7を駆動するためのカムシャフト70に対して設けられている可変バルブタイミング機構Bを示している。図4に示したように可変バルブタイミング機構Bはカムシャフト70の一端に取付けられてカムシャフト70のカムの位相を変更するためのカム位相変更部B1と、カムシャフト70と吸気弁7のバルブリフタ26との間に配置されてカムシャフト70のカムの作用角を異なる作用角に変更して吸気弁7に伝達するカム作用角変更部B2から構成されている。なお、カム作用角変更部B2については図4に側面断面図と平面図とが示されている。
まず初めに可変バルブタイミング機構Bのカム位相変更部B1について説明すると、このカム位相変更部B1は機関のクランク軸によりタイミングベルトを介して矢印方向に回転せしめられるタイミングプーリ71と、タイミングプーリ71と一緒に回転する円筒状ハウジング72と、カムシャフト70と一緒に回転し且つ円筒状ハウジング72に対して相対回転可能な回転軸73と、円筒状ハウジング72の内周面から回転軸73の外周面まで延びる複数の仕切壁74と、各仕切壁74の間で回転軸73の外周面から円筒状ハウジング72の内周面まで延びるベーン75とを具備しており、各ベーン75の両側にはそれぞれ進角用油圧室76と遅角用油圧室77とが形成されている。
各油圧室76、77への作動油の供給制御は作動油供給制御弁78によって行われる。この作動油供給制御弁78は各油圧室76、77にそれぞれ連結された油圧ポート79、80と、油圧ポンプ81から吐出された作動油の供給ポート82と、一対のドレインポート83、84と、各ポート79、80、82、83、84間の連通遮断制御を行うスプール弁85とを具備している。
カムシャフト70のカムの位相を進角すべきときは図4においてスプール弁85が下方に移動せしめられ、供給ポート82から供給された作動油が油圧ポート79を介して進角用油圧室76に供給されると共に遅角用油圧室77内の作動油がドレインポート84から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印X方向に相対回転せしめられる。
これに対し、カムシャフト70のカムの位相を遅角すべきときは図4においてスプール弁85が上方に移動せしめられ、供給ポート82から供給された作動油が油圧ポート80を介して遅角用油圧室77に供給されると共に進角用油圧室76内の作動油がドレインポート83から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印Xと反対方向に相対回転せしめられる。
回転軸73が円筒状ハウジング72に対して相対回転せしめられているときにスプール弁85が図4に示した中立位置に戻されると回転軸73の相対回転動作は停止せしめられ、回転軸73はそのときの相対回転位置に保持される。したがってカム位相変更部B1によって図5(A)に示したようにカムシャフト70のカムの位相を所望の量だけ進角又は遅角させることができる。すなわち、カム位相変更部B1によって吸気弁7の開弁時期を任意に進角又は遅角させることができることになる。
次に可変バルブタイミング機構Bのカム作用角変更部B2について説明すると、このカム作用角変更部B2はカムシャフト70と平行に並列配置され且つアクチュエータ91によって軸線方向に移動せしめられる制御ロッド90と、カムシャフト70のカム92と係合し且つ制御ロッド90上に形成された軸線方向に延びるスプライン93に摺動可能に嵌合せしめられている中間カム94と、吸気弁7を駆動するためにバルブリフタ26と係合し且つ制御ロッド90上に形成された螺旋状に延びるスプライン95に摺動可能に嵌合する揺動カム96とを具備しており、揺動カム96上にはカム97が形成されている。
カムシャフト70が回転するとカム92によって中間カム94が常に一定の角度だけ揺動せしめられ、このとき揺動カム96も一定の角度だけ揺動せしめられる。一方、中間カム94及び揺動カム96は制御ロッド90の軸線方向には移動不能に支持されており、したがって制御ロッド90がアクチュエータ91によって軸線方向に移動せしめられたときに揺動カム96は中間カム94に対して相対回転せしめられることになる。
中間カム94と揺動カム96との相対回転位置関係によりカムシャフト70のカム92が中間カム94と係合し始めたときに揺動カム96のカム97がバルブリフタ26と係合し始める場合には図5(B)においてaで示したように吸気弁7の開弁期間及びリフトは最も大きくなる。これに対し、アクチュエータ91によって揺動カム96が中間カム94に対して図4の矢印Y方向に相対回転せしめられると、カムシャフト70のカム92が中間カム94に係合した後、暫らくしてから揺動カム96のカム97がバルブリフタ26と係合する。この場合には図5(B)においてbで示したように吸気弁7の開弁期間及びリフト量はaに比べて小さくなる。
揺動カム96が中間カム94に対して図4の矢印Y方向にさらに相対回転せしめられると図5(B)においてcで示したように吸気弁7の開弁期間及びリフト量はさらに小さくなる。すなわち、アクチュエータ91により中間カム94と揺動カム96の相対回転位置を変更することによって吸気弁7の開弁期間(作用角)を任意に変えることができる。ただし、この場合、吸気弁7のリフト量は吸気弁7の開弁期間が短くなるほど小さくなる。
このようにカム位相変更部B1によって吸気弁7の開弁時期を任意に変更することができ、カム作用角変更部B2によって吸気弁7の開弁期間を任意に変更することができるのでカム位相変更部B1とカム作用角変更部B2との双方によって、すなわち可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁7の開弁時期と開弁期間とを、すなわち吸気弁7の開弁時期と閉弁時期とを任意に変更することができることになる。
なお、図1および図4に示した可変バルブタイミング機構Bは一例を示すものであって、図1および図4に示した例以外の種々の形式の可変バルブタイミング機構を用いることができる。特に、本発明による実施形態では、吸気弁7の閉弁時期を変更可能な可変閉弁時期機構であれば、如何なる形式の機構を用いてもよい。また、排気弁9に対しても吸気弁7の可変バルブタイミング機構Bと同様な可変バルブタイミング機構を設けてもよい。
次に図6を参照しつつ本願において使用されている用語の意味について説明する。なお、図6の(A)、(B)、(C)には説明のために燃焼室容積が50mlでピストンの行程容積が500mlであるエンジンが示されており、これら図6の(A)、(B)、(C)において燃焼室容積とはピストンが圧縮上死点に位置するときの燃焼室の容積を表している。
図6(A)は機械圧縮比について説明している。機械圧縮比は圧縮行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積のみから機械的に定まる値であってこの機械圧縮比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(A)に示した例ではこの機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
図6(B)は実圧縮比について説明している。この実圧縮比は実際に圧縮作用が開始されたときからピストンが上死点に達するまでの実際のピストン行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの実圧縮比は(燃焼室容積+実際の行程容積)/燃焼室容積で表される。すなわち、図6(B)に示したように圧縮行程においてピストンが上昇を開始しても吸気弁が開弁している間は圧縮作用は行われず、吸気弁の閉弁に伴って実際の圧縮作用が開始される。したがって実圧縮比は実際の行程容積を用いて上記の如く表される。図6(B)に示した例では実圧縮比は(50ml+450ml)/50ml=10となる。
図6(C)は膨張比について説明している。膨張比は膨張行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの膨張比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(C)に示した例ではこの膨張比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
次に図7および図8を参照しつつ本発明において用いられている超膨張比サイクルについて説明する。なお、図7は理論熱効率と膨張比との関係を示しており、図8は本発明において負荷に応じ使い分けられている通常のサイクルと超高膨張比サイクルとの比較を示している。
図8(A)は吸気弁が下死点近傍で閉弁し、ほぼ吸気下死点付近からピストンによる圧縮作用が開始される場合の通常のサイクルを示している。この図8(A)に示す例でも図6の(A)、(B)、(C)に示す例と同様に燃焼室容積が50mlとされ、ピストンの行程容積が500mlとされている。図8(A)からわかるように通常のサイクルでは機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11であり、実圧縮比もほぼ11であり、膨張比も(50ml+500ml)/50ml=11となる。すなわち、通常の内燃機関では機械圧縮比と実圧縮比と膨張比とがほぼ等しくなる。
図7における実線は実圧縮比と膨張比とがほぼ等しい場合の、すなわち通常のサイクルにおける理論熱効率の変化を示している。この場合には膨張比が高くなるほど、すなわち実圧縮比が高くなるほど理論熱効率が高くなることがわかる。したがって通常のサイクルにおいて理論熱効率を高めるには実圧縮比を高くすればよいことになる。しかしながら機関高負荷運転時におけるノッキングの発生の制約により実圧縮比は最大でも12程度までしか高くすることができず、斯くして通常のサイクルにおいては理論熱効率を十分に高くすることはできない。
一方、このような状況下で機械圧縮比と実圧縮比とを厳密に区分しつつ理論熱効率を高めることが検討され、その結果理論熱効率は膨張比が支配し、理論熱効率に対して実圧縮比はほとんど影響を与えないことが見出されたのである。すなわち、実圧縮比を高くすると爆発力は高まるが圧縮するために大きなエネルギが必要となり、斯くして実圧縮比を高めても理論熱効率はほとんど高くならない。
これに対し、膨張比を高くすると膨張行程時にピストンに対し押下げ力が作用する期間が長くなり、斯くしてピストンがクランクシャフトに回転力を与えている期間が長くなる。したがって膨張比は高くすれば高くするほど理論熱効率が高くなる。図7の破線ε=10は実圧縮比を10に固定した状態で膨張比を高くしていった場合の理論熱効率を示している。このように実圧縮比εを低い値に維持した状態で膨張比を高くしたときの理論熱効率の上昇量と、図7の実線で示す如く実圧縮比も膨張比と共に増大せしめられる場合の理論熱効率の上昇量とは大きな差がないことがわかる。
このように実圧縮比が低い値に維持されているとノッキングが発生することがなく、したがって実圧縮比を低い値に維持した状態で膨張比を高くするとノッキングの発生を阻止しつつ理論熱効率を大幅に高めることができる。図8(B)は可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bを用いて、実圧縮比を低い値に維持しつつ膨張比を高めるようにした場合の一例を示している。
図8(B)を参照すると、この例では可変圧縮比機構Aにより燃焼室容積が50mlから20mlまで減少せしめられる。一方、可変バルブタイミング機構Bによって実際のピストン行程容積が500mlから200mlになるまで吸気弁の閉弁時期が遅らされる。その結果、この例では実圧縮比は(20ml+200ml)/20ml=11となり、膨張比は(20ml+500ml)/20ml=26となる。図8(A)に示した通常のサイクルでは前述したように実圧縮比がほぼ11で膨張比が11であり、この場合に比べると図8(B)に示した場合には膨張比のみが26まで高められていることがわかる。そこで、斯かるサイクルを超高膨張比サイクルと称する。
一般的に言って内燃機関では機関負荷が低いほど熱効率が悪くなり、したがって機関運転時における熱効率を向上させるためには、すなわち燃費を向上させるには機関負荷が低いときの熱効率を向上させることが必要となる。一方、図8(B)に示した超高膨張比サイクルでは圧縮行程時の実際のピストン行程容積が小さくされるために燃焼室5内に吸入しうる吸入空気量は少なくなり、したがってこの超高膨張比サイクルは機関負荷が比較的低いときにしか採用できないことになる。したがって本発明では機関負荷が比較的低いときには図8(B)に示す超高膨張比サイクルとし、機関高負荷運転時には図8(A)に示す通常のサイクルとするようにしている。
なお、前述したように図8(B)に示す超高膨張比サイクルでは膨張比が26とされる。この膨張比は高いほど好ましいが図7からわかるように実用上使用可能な下限実圧縮比ε=5に対しても20以上であればかなり高い理論熱効率を得ることができる。したがって本発明では膨張比が20以上となるように可変圧縮比機構Aが形成されている。
次に図9を参照しつつ運転制御全般について概略的に説明する。
図9には或る機関回転数における機関負荷に応じた吸入空気量、吸気弁閉弁時期、機械圧縮比、膨張比、実圧縮比およびスロットル弁17の開度の各変化が示されている。なお、図9は、触媒コンバータ21内の排気浄化触媒によって排気ガス中の未燃HC、COおよびNOxを同時に低減しうるように燃焼室5内における平均空燃比が空燃比センサ22の出力信号に基づいて理論空燃比にフィードバック制御されている場合を示している。
さて、前述したように機関高負荷運転時には図8(A)に示される通常のサイクルが実行される。したがって図9に示されるようにこのときには機械圧縮比は低くされるために膨張比は低く、図9において実線で示されるように吸気弁7の閉弁時期は図7において実線で示される如く早められている。また、このときには吸入空気量は多く、このときスロットル弁17の開度は全開に保持されているのでポンピング損失は零となっている。
一方、図9において実線で示されるように機関負荷が低くなるとそれに伴って吸入空気量を減少すべく吸気弁7の閉弁時期が遅くされる。またこのときには実圧縮比がほぼ一定に保持されるように図9に示される如く機関負荷が低くなるにつれて機械圧縮比が増大され、したがって機関負荷が低くなるにつれて膨張比も増大される。なお、このときにもスロットル弁17は全開状態又はほぼ全開状態に保持されており、したがって燃焼室5内に供給される吸入空気量はスロットル弁17によらずに主に吸気弁7の閉弁時期を変えることによって制御されている。
このように機関高負荷運転状態から機関負荷が低くなるときには実圧縮比がほぼ一定のもとで吸入空気量が減少するにつれて機械圧縮比が増大せしめられる。すなわち、吸入空気量の減少に比例してピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積が減少せしめられる。したがってピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は吸入空気量に比例して変化していることになる。なお、このとき図9に示される例では燃焼室5内の空燃比は理論空燃比となっているのでピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は燃料量に比例して変化していることになる。
機関負荷が更に低くなると機械圧縮比は更に増大せしめられ、機関負荷がやや低負荷寄りの中負荷L1まで低下すると機械圧縮比は燃焼室5の構造上限界となる限界機械圧縮比に達する。機械圧縮比が限界機械圧縮比に達すると、機械圧縮比が限界機械圧縮比に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では機械圧縮比が限界機械圧縮比に保持される。したがって低負荷側の機関中負荷運転時および機関低負荷運転時にはすなわち、機関低負荷運転側では機械圧縮比は最大となり、膨張比も最大となる。別の言い方をすると機関低負荷運転側では最大の膨張比が得られるように機械圧縮比が最大にされる。
一方、図9に示される実施形態では機関負荷がL1まで低下すると吸気弁7の閉弁時期が燃焼室5内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期となる。吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達すると吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持される。
吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持されるともはや吸気弁7の閉弁時期の変化によっては吸入空気量を制御することができない。図9に示される実施形態ではこのとき、すなわち吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域ではスロットル弁17によって燃焼室5内に供給される吸入空気量が制御され、機関負荷が低くなるほどスロットル弁17の開度は小さくされる。
一方、図9において破線で示すように機関負荷が低くなるにつれて吸気弁7の閉弁時期を早めることによってもスロットル弁17によらずに吸入空気量を制御することができる。したがって、図9において実線で示される場合と破線で示される場合とをいずれも包含しうるように表現すると、本発明による実施形態では吸気弁7の閉弁時期は、機関負荷が低くなるにつれて、燃焼室内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期L1まで吸気下死点から離れる方向に移動せしめられることになる。このように吸入空気量は吸気弁7の閉弁時期を図9において実線で示すように変化させても制御することができるし、破線に示すように変化させても制御することができるが、以下本発明について吸気弁7の閉弁時期を図9において実線で示すように変化させた場合を例にとって説明する。
なお、上記実施形態では、機関負荷に関わらず実圧縮比がほぼ一定となるように吸気弁7の閉弁時期及び機械圧縮比が制御されているが、他のパラメータに基づいて吸気弁7の閉弁時期及び機械圧縮比を制御してもよい。例えば、ノッキングの発生を抑制するという観点からは、少なくとも機関負荷が或る一定の機関負荷以上の領域において、ピストン4が圧縮上死点にあるときの燃焼室5内の混合気の温度(圧縮端温度)又は圧力(圧縮端圧力)がほぼ一定になるように吸気弁7の閉弁時期及び機械圧縮比を制御してもよい。
ところで、図6(B)を参照して説明したように、実圧縮比は、実際に圧縮作用が開始された時の燃焼室容積からピストンが圧縮上死点に位置する時の燃焼室容積を減算した容積である(なお、以下では、「燃焼室容積」はピストンの運動によって変化する燃焼室5内の容積を意味する)。したがって、実圧縮比を正確に算出するためには、実際に圧縮作用が開始された時の燃焼室容積を正確に求めることが必要となる。
ここで、圧縮行程の途中で吸気弁7が閉弁する場合、圧縮行程中において、吸気弁7が閉弁するまではピストン4の上昇に伴って一旦燃焼室5内に充填された吸気ガスが吸気ポート8内に戻されるため、吸気弁7が閉弁するまではピストン4による燃焼室5内の吸気ガスの圧縮は行われないとも考えられる。しかしながら、実際には、図5からわかるように、吸気弁7のリフトは吸気弁7が開弁している間一定とはなっておらず、吸気弁7の閉弁時期に近づくにつれて徐々に小さくなる。このため、吸気弁7の閉弁直前においては燃焼室5内から吸気ポート8内に戻される吸気ガスに対して吸気弁7が絞りとなり、その結果、燃焼室5内の吸気ガスの圧縮は事実上、吸気弁7の閉弁前から開始されることになる。
また、一般に、内燃機関の吸気系は、所定の機関運転状態において吸気弁7の開弁に伴って吸気ポート8内に生じる吸気脈動により慣性過給が行われるように設計される。このように慣性過給が行われる場合、圧縮行程中において吸気弁7が開弁している間、吸気ポート8内の吸気ガスの圧力が高くなっている。このためピストン4が上昇しても燃焼室5内の吸気ガスは十分に吸気ポート8内へは戻らず、その結果、燃焼室5内の吸気ガスの圧縮は吸気弁7の閉弁前から開始されることになる。
図10は、圧縮行程中における燃焼室容積V及び燃焼室圧力Pの推移を表す両対数PV線図である。図10の点aは圧縮行程の開始時、点bは圧縮行程の終了時をそれぞれ示しており、また点cは吸気弁7の閉弁時(すなわち、吸気弁7のリフト量がゼロになった時)を示している。図10からわかるように、燃焼室圧力Pは吸気弁7が閉弁する前の点dから上昇を開始している。したがって、吸気弁7の閉弁時(点c)の燃焼室容積を圧縮作用が開始された時の燃焼室容積(以下、「圧縮開始容積」という)として実圧縮比を算出すると、算出された実圧縮比は実際の実圧縮比よりも低いものとなってしまう。
一方、燃焼室圧力Pは点dから上昇を開始しているが、点dから点cに至るまでの間は燃焼室5内の吸気ガスは断熱圧縮されているわけではなく、よって燃焼室圧力Pが上昇する程度は小さい。このため、燃焼室圧力Pが上昇を開始した時(点d)の燃焼室容積を圧縮開始容積として実圧縮比を算出すると、算出された実圧縮比は実際の実圧縮比よりも高いものとなってしまう。
また、上述したように圧縮端温度又は圧縮端圧力がほぼ一定となるように吸気弁7の閉弁時期及び機械圧縮比を制御する場合、圧縮端温度や圧縮端圧力を実圧縮比に基づいて算出することが考えられる。しかしながら、上述したように吸気弁7の閉弁時(点c)の燃焼室容積や燃焼室5内の圧力Pが上昇を開始した時(点d)の燃焼室容積を圧縮開始容積として実圧縮比を算出すると、算出された実圧縮比が正確な値でないため、圧縮端温度や圧縮端圧力を正確に算出することができない。
ところで、吸気弁7の閉弁後の燃焼室5内の吸気ガスの変化は断熱圧縮と近似することができる。断熱圧縮が行われている際には、燃焼室容積Vと燃焼室圧力Pとは両対数PV線図において直線的に変化する。このことは、図10の点aと点bの間がほぼ直線状であることからも明らかである。
この点ab間の断熱圧縮線を延長させた直線(図中の破線M)は、吸気弁7の閉弁前にも燃焼室5内の吸気ガスが断熱圧縮されていると仮定した場合の燃焼室容積Vと燃焼室圧力Pとの関係を表している。また、この直線Mと吸気管内圧力(スロットル弁17の下流であって吸気弁7よりも上流側の吸気管内の平均圧力。或いは、サージタンク12内の平均圧力。図中の破線N)との交点(点e)は、吸気弁7の閉弁前にも燃焼室5内の吸気ガスが断熱圧縮されていると仮定したときに燃焼室5内の吸気ガスの圧縮が開始される時を表している。
そこで、本実施形態では、これら直線Mと直線Nとの交点(点e)を圧縮作用が開始された時と近似すると共に、この点eにおける燃焼室容積を圧縮作用が開始された時の燃焼室容積(圧縮開始容積)と近似することとしている。このように近似することで、圧縮開始容積を比較的正確に求めることができるようになると共に、これに伴って実圧縮比、圧縮端温度や圧縮端圧力を比較的正確に求めることができるようになる。
具体的には、機関運転状態毎に吸気弁7の閉弁時における燃焼室容積V1と点eにおける燃焼室容積V2との乖離量ΔVを実験により又は計算により予め算出して、マップとしてECU30のROM32に保存しておく。そして、機関運転中においては、現在の吸気弁7の閉弁時期に基づいて吸気弁閉弁時の燃焼室容積を算出すると共に、機関運転状態に基づいて乖離量ΔVを算出し、算出された吸気弁閉弁時の燃焼室容積から乖離量ΔVを減算することで圧縮開始容積を算出することとしている。
換言すると、本実施形態では、吸気弁7の閉弁後における燃焼室5内の吸気ガスの圧縮が断熱圧縮であると仮定すると共に該断熱圧縮が吸気弁の閉弁前にも行われていると仮定した場合に、燃焼室5内の圧力が吸気管内圧力となる時期における燃焼室容積V2と、吸気弁7の閉弁時期における燃焼室容積V1との差を乖離量ΔVとして算出すると共に、現在の吸気弁7の閉弁時期における燃焼室容積を算出し、算出された吸気弁7の閉弁時期における燃焼室容積から乖離量ΔVを減算することによって圧縮作用開始時期における燃焼室容積を算出することとしている。
なお、上記実施形態では、燃焼室5内の圧力が吸気管内圧力となる時期における燃焼室容積V2と、吸気弁7の閉弁時期における燃焼室容積V1との差を乖離量ΔVとして算出している。しかしながら、V2は必ずしも燃焼室5内の圧力が吸気管内圧力となる時期における燃焼室容積でなくてもよく、吸気管内圧力よりも僅かに異なる圧力であったり、大気圧であったりしてもよい。
次に、機関運転状態と乖離量ΔVとの関係について説明する。図11は、乖離量ΔVと、吸気弁7の閉弁時期及び機関回転数との関係を示す図である。図11からわかるように、機関回転数が高くなるほど乖離量ΔVは大きくなる。これは機関回転数が高くなるほど吸気ポート8に戻る際の吸気ガスの流速が大きくなり、吸気弁7による絞りの影響が大きくなることによるものである。
また、図11からわかるように、吸気弁7の閉弁時期が中程度の時期(90°ABDC付近)である場合にも乖離量ΔVが大きくなる。すなわち、吸気弁7の閉弁時期が中程度の時期である場合、単位クランク角当たり(従って、単位時間当たり)の燃焼室容積の減少速度が速くなる。このため、吸気弁7の閉弁時期付近では一旦燃焼室5内に吸入された吸気ガスが多量に吸気ポート8に戻ろうとする。しかしながら、吸気弁7の閉弁時期付近では吸気弁7のリフトが小さく、よって燃焼室5内の吸気ガスは吸気ポート8に十分に戻れなくなる。このため、吸気弁7の閉弁時期が中程度の時期である場合にも乖離量ΔVが大きくなる。
さらに、図11からわかるように、吸気弁7の閉弁時期が遅角側の時期である場合にも乖離量ΔVは比較的大きい。すなわち、吸気弁7の閉弁時期が遅角側の時期である場合、圧縮行程が開始されてから吸気弁7が閉弁するまでの時間が長いものとなる。この間、一旦燃焼室5内に吸入された吸気ガスは長期間に亘って吸気ポート8に戻されることになるが、この期間中吸気ポート8に戻される吸気ガスに対して吸気弁7が絞りになることから、この期間が長いと乖離量ΔVが大きくなる。従って、吸気弁7の閉弁時期が遅角側の時期である場合にも乖離量ΔVは比較的大きくなる。
また、図12からわかるように、吸気弁7の開弁期間中における吸気弁7のリフト量が小さいほど乖離量ΔVは大きくなる。すなわち、図5(B)にcで示したようにリフト量が小さい場合、一旦燃焼室5内に吸入された吸気ガスが再び吸気ポート8に戻る際の絞りが大きくなり、逆に図5(B)にaで示したようにリフト量が大きい場合、一旦燃焼室5内に吸入された吸気ガスが再び吸気ポート8に戻る際の絞りが小さくなることによるものである。
このように乖離量ΔVは、機関回転数、吸気弁7の閉弁時期及び吸気弁7の開弁期間中における吸気弁7のリフト量に応じて変化することから、本実施形態では、これら運転パラメータと乖離量ΔVとの上述したような関係を実験により又は計算により予め求め、マップとしてECU30のROM32に保存すると共に、機関運転中においてはこれら運転パラメータの値に基づいてマップを用いて乖離量ΔVを算出するようにしている。
或いは、以下のようにして機関運転中に乖離量ΔVを算出してもよい。
まず、或る特定の機関運転状態において、すなわち機関回転数が或る機関回転数であり吸気弁7の閉弁時期が或る閉弁時期であり且つ吸気弁開弁期間中における吸気弁7のリフト量が或るリフト量である状態において、吸気弁7の閉弁時における燃焼室容積V1と上記点eにおける燃焼室5容積V2との乖離量ΔVを予め実験により又は計算により算出し、この乖離量ΔVを基準乖離量ΔVbaseとしてECU30のROM32に保存する。
加えて、機関回転数と乖離量ΔVとの関係に基づいて、機関回転数に応じた補正係数(回転数補正係数)kreを予め実験により又は計算により算出する。回転数補正係数kreは、図13(A)に示したように機関回転数が低いときには小さく、機関回転数が増大するのに伴って大きくなるような値とされる。
また、吸気弁7の閉弁時期と乖離量ΔVとの関係に基づいて、吸気弁7の閉弁時期に応じた補正係数(閉弁時期補正係数)kivcを予め実験により又は計算により算出する。閉弁時期補正係数kivcは、図13(B)に示したように、吸気弁7の閉弁時期が進角側の時期であるときには小さい値とされ、吸気弁7の閉弁時期が中程度の時期或いは遅角側の時期であるときには大きい値とされる。
さらに、吸気弁7の開弁期間中における吸気弁7のリフト量と乖離量ΔVとの関係に基づいて、吸気弁7の開弁期間中における吸気弁7のリフト量に応じた補正係数(リフト量補正係数)klaを予め実験により又は計算により算出する。リフト量補正係数klaは、図13(C)に示したように、吸気弁7のリフト量が小さいときには大きく、吸気弁7のリフト量が大きくなるのに伴って小さくなるような値とされる。
機関運転中においては、機関回転数、吸気弁7の閉弁時期及び吸気弁7の開弁期間中における吸気弁7のリフト量等の運転パラメータの値に基づいて補正係数kre、kivc、klaを算出し、上述した基準乖離量ΔVにこれら補正係数kre、kivc、klaを乗算することによって乖離量ΔVが算出される(ΔV=ΔVbase・kre・kivc・kla)。
図14は、本実施形態における吸気弁7の目標閉弁時期及び目標機械圧縮比の設定手順を示すフローチャートである。
図14に示したように、まず、ステップS11では、負荷センサ41により要求負荷が検出される。次いで、ステップS12では、ステップS11で検出された要求負荷に基づいて吸気弁7の目標閉弁時期が算出される。具体的には、図9に示したように、機関負荷が限界閉弁時期に対応する機関負荷L1以上であるときには機関負荷が高くなるほど吸気弁7の目標閉弁時期は進角され、L1以下であるときには吸気弁7の目標閉弁時期は限界閉弁時期とされる。
次いで、ステップS13において、クランク角センサ42の出力に基づいて機関回転数が検出されると共に、検出された機関回転数に基づいて図13(A)に示したようなマップを用いて回転数補正係数kreが算出される。ステップS14では、ECU30から可変バルブタイミング機構Bへの指令値に基づいて吸気弁7の閉弁時期が算出されると共に、算出された吸気弁7の閉弁時期に基づいて図13(B)に示したようなマップを用いて閉弁時期補正係数kivcが算出される。その後、ステップS15では、ECU30から可変バルブタイミング機構Bへの指令値に基づいて吸気弁7の開弁期間中のリフト量が算出されると共に、算出されたリフト量に基づいて図13(C)に示したようなマップを用いてリフト量補正係数klaが算出される。
次いで、ステップS16では、基準乖離量ΔVbaseに、ステップS13で算出された回転数補正係数kreと、ステップS14で算出された閉弁時期補正係数kivcと、ステップS15で算出されたリフト量補正係数klaとを乗算することで、乖離量ΔVが算出される(ΔV=ΔVbase・kre・kivc・kla)。
ステップS17では、ステップS14で算出された吸気弁7の閉弁時期に基づいてこの時期の燃焼室容積が算出されると共に、算出された吸気弁7閉弁時期における燃焼室容積からステップS16で算出された乖離量ΔVを減算することで、圧縮開始容積が算出される。
ステップS18では、ステップS17で算出された圧縮開始容積と目標実圧縮比とに基づいて機械圧縮比が算出される。すなわち、ピストンが圧縮上死点にあるときの燃焼室容積が圧縮開始容積を目標実圧縮比で除算した値となるように目標機械圧縮比が設定される。
なお、上記実施形態では、算出された圧縮開始容積に基づいて目標機械圧縮比を設定している。しかしながら、算出された圧縮開始容積に基づいて他の制御パラメータを設定するようにしてもよい。
例えば、吸気弁閉弁時の燃焼室5内の吸気ガスの温度及び圧力を検出又は算出することができれば、これら吸気弁閉弁時の燃焼室5内の吸気ガスの温度及び圧力と圧縮開始容積及びピストンが圧縮上死点にあるときの燃焼室容積とに基づいて圧縮端温度及び圧縮端圧力を算出することができる。
したがって、このようにして算出された圧縮端温度及び圧縮端圧力に基づいて、点火プラグ6による点火時期や、燃料噴射弁13が燃焼室5内に配置されている場合には燃料噴射弁13からの燃料噴射時期を設定するようにしてもよい。この場合、例えば、圧縮端温度が高くなるほど点火プラグ6による点火時期が遅角される。