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JP5565170B2 - 永久磁石式回転機 - Google Patents

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Description

本発明は、永久磁石を内装した回転子に漏れ磁束低減用のフラックスバリアを形成した永久磁石式回転機に関する。
従来の永久磁石式回転機の一つとして埋込磁石式回転機が挙げられる。
この埋込磁石式回転機は、回転子内部に永久磁石を埋込み、永久磁石から発生する磁束が固定子に巻回した励磁コイルとの鎖交磁束量に応じて発生するマグネットトルクに加えて、回転子鉄心の磁気抵抗を利用したリラクタンストルクを利用した回転機であり、小型高出力高効率回転機として広く用いられている。
埋込磁石式回転機においてトルクを増大する方法の一つとして、永久磁石をV字形状に配置し、回転子鉄心の磁極中心方向に延びるd軸方向のインダクタンスと、d軸から電気角90度ずれて磁極間にあるq軸方向のインダクタンスの差を大きくし、リラクタンストルクを有効利用する方法が知られている。リラクタンストルクは、励磁コイルから発生する磁束を永久磁石の磁束を弱める方向、すなわちd軸方向へ発生させることで得られる。
ここで、上述したように磁石磁束と相反する方向へ励磁コイルから磁束を発生することで、図9に示す磁束線図のように、励磁コイルからの磁束は回転子鉄心内部の深部、すなわち軸に近いところまで通過せず、回転子鉄心の外周面に集中する。これにより、回転子鉄心の外周面に近い磁極間側の永久磁石の端部は永久磁石の磁化方向の磁束と逆向きの磁束の影響を大きく受け、他の部分に比べて減磁が起こり易くなる。
このような減磁の問題を解決する策として、磁極間側の永久磁石の端部に連続する状態でフラックスバリアを回転子鉄心の外周面に凸となるように設けることで、励磁コイルから磁石の磁化方向の磁束と逆向きの磁束の影響を受けた場合でも、永久磁石の磁束は、磁気抵抗の大きい回転子鉄心内側へとは向かわず、回転子鉄心の外周面へと向かうため、減磁の起こり難い永久磁石式回転機を得る施策が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、永久磁石をV字状に配置し、リラクタンストルクを増加し、トルクを有効に活用しつつ、永久磁石の磁化方向と直交する方向の両端部を中央部より磁化方向に厚くして永久磁石端部の減磁耐性を向上させ、減磁の起こり難い永久磁石式回転機を得る施策が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2008−148391号公報 特開2008−283823号公報
しかしながら、前述した特許文献1に記載された従来例にあっては、磁極間側の永久磁石の端面に連続するフラックスバリアを回転子鉄心の外周面に凸となるように設けるようにしているので、回転子鉄心の外周面に近接して永久磁石を配置する構造では、回転子鉄心の外周面との距離が短くなるため適用することが困難であるという未解決の課題がある。
また、前述した特許文献2に記載された従来例にあっては、永久磁石の磁化方向と直交する方向の両端部を中央部に対して厚く製作するようにしているので、永久磁石を切削加工によって凹状に形成するか若しくは予め凹状の型を製作し、型抜きを行う等の加工作業が必要となるとともに、凹状の形状を長方形磁石の組合せで構成することもできるが、部品点数及び磁石挿入工数が増えて作業時間が長くなり、加工費が嵩むという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、製作容易性を確保して製作費の増加を抑制しつつ、永久磁石の減磁耐性を向上することができる永久磁石式回転機を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明の一の形態に係る永久磁石式回転機は、コイルが巻回された複数のティースとヨークとを有する固定子と、該固定子の内側に空隙を隔てて回転自在に配設された回転子鉄心を有する回転子とを備え、前記回転子鉄心は、円周方向に等間隔で、外周側に開いたV字形状の磁石挿入孔が軸方向に形成され、該磁石挿入孔にV字形状の内側同士が同極性となって磁極を形成し、且つ円周方向に隣接する磁極が異極性となるように永久磁石が挿入された構成を有する永久磁石式回転機であって、前記永久磁石は軸直角方向の断面形状が長方形に形成され、前記磁石挿入孔に挿通した前記永久磁石の外周端側に第1のフラックスバリアを形成するとともに、当該永久磁石の外周端側における前記磁極側に減磁耐性を向上させる第2のフラックスバリアを形成し、前記第1のフラックスバリアは、前記磁石挿入孔の円周方向端面に、所定距離離れて対向形成され、前記第1のフラックスバリアと前記磁石挿入孔との間を前記回転軸側及び前記磁極側の少なくとも何れか一方で連通する補助フラックスバリアを形成したことを特徴としている。
この構成によると、第2のフラックスバリアで励磁コイルから発生する磁束は、磁極間側の回転子鉄心の外周面に集中するものの、磁気抵抗の大きい上記第2のフラックスバリアを通る磁束量は小さくなる。したがって、磁極間側の永久磁石の磁化方向の磁束と逆向きの磁束の影響を小さくすることができ、磁極間側の永久磁石端部の減磁を抑制できる。さらに、永久磁石の断面形状は長方形状とするため、永久磁石の切削加工が少なくて済み、製作時間の短縮と製作費の抑制との双方を行うことができる。また、永久磁石両端部を厚くする形状に比べて、少材料で構成することができ、材料費を削減することができる。
また、第1のフラックスバリアによって、磁極間側への漏れ磁束を低減することができるとともに、磁石挿入孔及び第1のフラックスバリア間に回転子鉄心部が介在しているので、回転子鉄心の遠心力強度を確保することができる。
また、第1のフラックスバリアと磁石挿入孔との間に補助フラックスバリアが形成され、この補助フラックスバリアでも漏れ磁束を低減できるので、永久磁石の磁極間側及び磁極側の何れか一方の漏れ磁束をより低減することができ、磁極間側及び磁極側の少なくとも何れか一方の永久磁石端部の減磁を抑制することができる。
また、本発明の他の形態に係る永久磁石式回転機は、前記第2のフラックスバリアは、前記永久磁石の外周方向端面から所定距離内方側に当該永久磁石の側面に沿って扁平な断面長方形状に形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、第2のフラックスバリアによって、無負荷誘起電圧の低下を抑制して減磁耐性を向上させることができる。
また、本発明の他の形態に係る永久磁石式回転機は、前記第2のフラックスバリアは、前記永久磁石の中央部側端部から外周方向端面に向かうに従い永久磁石の側面からの距離が長くなる三角孔形状及び台形孔形状の何れか一方の形状に形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、第2のフラックスバリアが回転子鉄心の外周面側に凸となる形状とされているので、永久磁石で発生する磁束は、磁気抵抗の大きい回転子鉄心内側へとは向かわず、回転子鉄心の外周面へと向かうようになり、磁極間側の永久磁石端部の減磁をより抑制できる。
本発明によれば、第2のフラックスバリアを形成することによって、固定子のコイルから発生する磁束は磁極間側の回転子鉄心の外周面に集中するものの、磁気抵抗の大きい第2のフラックスバリアを通る磁束量を小さくすることができる。このため、磁極間側の永久磁石の磁化方向の磁束と逆向きの磁束の影響を小さくすることができる。したがって、永久磁石を断面長方形に形成しても、無負荷誘起電圧の低下を抑制することができ、減磁耐性を向上させることができる。したがって、減磁耐性の高い高性能の永久磁石を使用する必要がないとともに、永久磁石の加工が容易となり、材料費を削減することができるとともに、製作時間の短縮及び製作費の削減を図ることができるという効果が得られる。
本発明に係る永久磁石式回転機の第1の実施形態を示す断面図である。 図1の回転子鉄心の要部を拡大して示す正面図である。 第1の実施形態と従来例との無負荷誘起電圧低下率を示すグラフである。 第1の実施形態と従来例とのコギングトルクを示すグラフである。 第1の実施形態の変形例を示す回転子鉄心の拡大正面図である。 本発明の第2の実施形態における回転子鉄心の拡大正面図である。 本発明の第2の実施形態の変形例を示す拡大正面図である。 本発明の第3の実施形態における回転子鉄心の拡大正面図である。 回転子の磁束線図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る永久磁石式回転機の第1の実施形態を示す断面図である。この図1において、永久磁石式回転機1はインナーロータ形の埋込磁石式同期回転機で構成されている。
この永久磁石式回転機1は、円筒状の固定子2と、この固定子2の内周側に所定の空隙を介して対向して回転自在に配置された回転子3とを備えている。ここで、回転子3はその中心部に嵌挿された回転軸3aに支持されて回転自在に配置されている。
固定子2は、外周面側にヨーク4が形成され、内周面側に円周方向に等間隔で例えば36個のスロット5が形成されて36個のティース6が形成されている。各ティース6にはスロット5内に巻装された励磁コイル7が巻回されている。ここで、励磁コイル7の巻き方については大別すると集中巻と分布巻とに分けられる。本発明は集中巻及び分布巻の両者において効果を発揮するものであり、図1によって巻き方を限定するものではない。
一方、回転子3は、図2に拡大して示すように、6個の磁極11a〜11fが形成された積層鉄心で形成される回転子鉄心12を備えている。この回転子鉄心12は、軸方向に貫通して形成された複数例えば6組の磁石挿入孔13a,13bと、これら磁石挿入孔13a,13b内に周方向に隣り合う磁極例えば11a及び11bが異極性となるように挿入した永久磁石14とを備えている。ここで、永久磁石14は例えば希土類磁石である残留磁束密度1.3T程度の磁石で構成されている。
各磁極11a〜11fは、一対の磁石挿入孔13a,13bを回転軸3aの回転中心軸に向かって凸となり、回転子鉄心12の外周面に向かって拡がるV字形状に配置することにより、扇状に形成されている。
そして、一対の磁石挿入孔13a,13bのそれぞれは、軸直角方向の断面形状が長方形状に形成されている。これに応じて、磁石挿入孔13a,13bに挿入される永久磁石14も軸直角方向の断面形状が長方形状に形成されている。ここで、永久磁石14間の外周側開角θが図2に示すように例えば160°程度に設定されている。
また、回転子3の磁石挿入孔13a,13bの形成は、回転子を構成する積層鉄板を積層する前にプレス機によって打ち抜いて磁石挿入孔13a,13bを形成するか、または鋼板を積層して回転子鉄心を形成した後にプレス機で打ち抜いて磁石挿入孔13a,13bを形成する。
そして、磁石挿入孔13a,13bの回転子鉄心12の外周面側端面すなわち磁極間側端面に連通して、第1のフラックスバリア15a,15bが形成されているとともに、磁石挿入孔13a,13bの外周面側における磁極11a〜11f側の減磁が起こり易い部分に第2のフラックスバリア16a,16bが形成され、さらに磁石挿入孔13a,13bの回転軸3a側の端面に第3のフラックスバリア17a,17bが形成されている。
ここで、第1のフラックスバリア15a,15bは、図2で拡大図示するように、磁石挿入孔13a,13bの回転子鉄心12の外周面側端面に連通して形成されている。第1のフラックスバリア15a,15bは、磁石挿入孔13a,13bの外周面側端面の外周面側から回転子鉄心12の外周面に沿って磁極間に延長する内周面21と、この内周面21の磁極間側端部から回転軸3aの中心に向かって延長する内周面22と、この内周面22の内周側端部から磁石挿入孔13a,13bの長辺と平行に延長する内周面23とで断面台形孔状に形成されている。ここで、内周面23と磁石挿入孔13a,13bの回転軸3a側の長辺との間に内周面23が外周面側となる磁石位置決め用段部24が形成されている。
また、第2のフラックスバリア16a,16bは、図2で拡大図示するように、磁石挿入孔13a,13bの回転子鉄心12の外周面側端面における磁極11a〜11f側に磁石挿入孔13a,13bの長辺に沿って延長する扁平な長方形状に形成されている。
さらに、第3のフラックスバリア17a,17bは、図2で拡大図示するように、磁石挿入孔13a,13bの回転子鉄心12の回転軸3a側端面に連通して磁石挿入孔13a,13bの磁極側長辺に連接する内周面25と、その内側端部から回転軸3aの中心に向かって延長する内周面26と、その回転軸3a側端部から磁石挿入孔13a,13bの回転軸3a側の長辺に沿って磁石挿入孔13a,13bの内側端面に達する内周面27とで台形孔形状に形成されている。ここで、内周面27と磁石挿入孔13a,13bの回転軸3a側の長辺との間に内周面27が外周面側となる磁石位置決め用段部28が形成されている。また、隣接する第3のフラックスバリア17a及び17b間には回転子鉄心12が介在されている。
さらに、永久磁石14は、直方体の永久磁石の磁極面を研磨加工するか型抜き加工することにより磁石挿入孔13a,13bの断面形状と略等しく形成されている。そして、断面長方形に形成した永久磁石14を各磁石挿入孔13a,13b内に、第1のフラックスバリア15a,15bに形成した永久磁石位置決め用段部24と、第3のフラックスバリア17a,17bに形成した磁石位置決め用段部28とに短辺となる側面を当接させて挿入し、接着剤又は充填材によって磁石挿入孔13a,13b内に固定する。
これによって、永久磁石14の回転子鉄心12の外周面側端面が第1のフラックスバリア15a,15bに対向するとともに、永久磁石14の回転子鉄心12の外周面側端部における磁極11a〜11f側が第2のフラックスバリア16a,16bに対向する。さらに、永久磁石14の回転子鉄心12の回転軸3a側の端面が第3のフラックスバリア17a,17bに対向する。
このように、上記第1の実施形態によると、永久磁石式回転機1が埋込永久磁石式回転機の構成を有するので、回転子3の磁極11a〜11fにおける永久磁石14間の円周方向の中央部と回転軸3aの軸心とを結ぶ線がd軸となる。
また、回転子3の隣接する磁極11a及び11b、11b及び11c、11c及び11d、11d及び11e、11及び11f、11f及び11a間における異なる極性の永久磁石14間と回転軸3aの軸心とを結ぶ線がq軸となる。
したがって、d軸方向の磁束の磁路には空隙Gと同じ磁気抵抗の大きな永久磁石14が存在し、磁束は通りにくいが、q軸方向の磁束は回転子鉄心12を通ることができるため、この方向の磁気抵抗は小さくなり、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとがLd<Lqの突極性を有する。
ここで、トルクの一般式は下記式で表すことができる。
T=Pn(Φiq+(Ld−Lq)idiq)
ただし、Pn:極対数,Φ:電機子鎖交磁束,iq:q軸電流,id:d軸電流,Lq:q軸インダクタンス,Ld:d軸インダクタンスである。
このトルクの一般式より、q軸電流iqに比例するマグネットトルクの項とq軸電流iqとd軸電流idの積に比例するリラクタンストルクの項が存在する。したがって,負のd軸電流を通電することにより、マグネットトルクにリラクタンストルクを加算した高トルク化を図ることができる。
このように、永久磁石式回転機1として永久磁石14をV字形状に配置した埋込永久磁石式回転機の構成を採用することにより、高トルク化を図ることができるものである。しかしながら、永久磁石14の磁化方向と直交する両端部で減磁耐性を得るには、前述した従来例のように永久磁石の磁化方向と直交する両端部における磁化方向の厚みを中央部より厚くする必要がある。
ところが、V字形状に配置された永久磁石14のV字の頂点付近は回転子3の深部にあるため、減磁の要因となる固定子2の励磁コイル6で生じる永久磁石14の磁束と反磁界方向の磁束は通過しにくいとともに、この部分に第3のフラックスバリア17a,17bが形成されているので、漏れ磁束を抑制することができ、永久磁石の厚みを厚くする必要はない。
一方、V字形状に配置された永久磁石14のV字の開放端付近すなわち、回転子鉄心12の外周面側の磁極間側では、前述したように、固定子2の励磁コイル7で発生される磁束は、回転子鉄心12の外周面に集中する。これにより、回転子鉄心12の外周面に近い磁極間側の永久磁石14の端部は永久磁石14の磁化方向の磁束と逆向きの磁束の影響を大きく受け、他の部分に比べて減磁が起こり易くなる。
しかしながら、上記第1の実施形態では、この減磁が起こりやすくなる部分に、端部側の第1のフラックスバリア15a,15bに加えて端部側における磁極11a〜11f側に第2のフラックスバリア16a,16bを形成して、減磁耐性を向上させている。
ここで、磁界解析によって、第2のフラックスバリア16a,16bを追加する前後における定格電流に対して5倍の電流を通電後の無負荷誘起電圧を算出し、通電前の無負荷誘起電圧に対する低下率すなわち無負荷誘起電圧低下率を求めると、図3に示すようになる。この図3から明らかなように、第2のフラックスバリア16a,16bの追加していない比較例1では無負荷誘起電圧低下率は3.5%となる。一方、第2のフラックスバリア16a,16bを追加した本実施形態の実施例では、無負荷誘起電圧低下率を0.7ポイント改善した。
このように、第2のフラックスバリア16a,16bを設けることにより、永久磁石14の磁極間側端部での漏れ磁束を低減し、永久磁石14の動作点(パーミアンス係数)を高くすることができる。また、これにより励磁コイル7に鎖交する磁束が増加するため第2のフラックスバリア16a,16bを設けない比較例1に比べて同トルク出力時の電流を小さくできる。したがって、5倍の電流通電時の励磁コイル7による磁束も小さくでき、減磁耐量を向上することができる。
なお、参考までに、第2のフラックスバリア16a,16bを設けることなく、永久磁石14を構成する残留磁束密度が1.3T程度の希土類磁石から保持力の大きい残留磁束密度か1.25T程度の希土類磁石に変更した比較例2によっても、図3に示すように、無負荷誘起電圧低下率を3%に低下させることができる。これに対して、本実施形態では、保持力が低い残留磁束密度が1.3T程度の希土類磁石を使用しながら、保持力が高い残留磁束密度が1.25T程度の希土類磁石を使用する場合以上の減磁耐性を得ることができる。
そして、上記の減磁耐性が得られる本実施形態の実施例と保持力の大きい残留磁束密度が1.25T程度の希土類磁石を使用した比較例2のそれぞれについてスキューを施した場合のスキュー角[°]とコギングトルクとの関係を解析した結果を図4に示す。
この図4から明らかなように、実施例及び比較例2はともにスキュー角を設けない場合ではコギングトルクが実施例では15.1%、比較例2では17.0%になり、この状態からスキュー角を大きくするに従ってコギングトルクが低下する。そして、スキュー角9°で両者のコギングトルクがともに1.7%となり、スキュー角10°でコギングトルク1%を下回るコギングトルクとなる実施例では0.2%、比較例2では0.1%となっており、実施例でも比較例と同等のコギングトルク抑制効果を発揮することができる。また、さらにスキュー角を11°にすると、コギングトルクが実施例及び比較例2でともに1.3%となり、1%を超えることになる。このことから、コギングトルクを例えば1%以下にするためには、スキュー角を10°付近に設定することが望ましい。
また、第1のフラックスバリア15a,15bに回転子鉄心12の外周面との距離を一定とする内周面21を有する台形孔形状とすることにより、第1のフラックスバリア15a,15bを回転子鉄心12の外周面に近づけて配置することが可能となる。このため、磁極間側の永久磁石14の漏れ磁束をさらに低減でき、磁極間側の永久磁石14の端部の減磁を抑制することができる。なお、第1のフラックスバリア15a,15bの孔形状は、台形孔形状とする場合に限らず、内周面21を有する三角孔形状としても上記と同様の作用効果を得ることができる。
さらに、上記第1の実施形態のように、永久磁石14を、軸直角方向断面を長方形断面とする直方体に形成すればよいので、永久磁石14の製作を容易に行うことができ、製作時間を短縮することができるとともに、永久磁石14の磁石挿入孔13a,13bへの挿入工数も最小限の工数で済み。
さらに、上記第1の実施形態のように、第1のフラックスバリア15a,15b及び第3のフラックスバリア17a,17bに磁石位置決め用段部24及び28を形成することにより、これら磁石位置決め用段部24及び28によって永久磁石14の位置決めを正確に行うことができるとともに、回転子3を高速回転させたときの遠心力強度を確保することができる。
なお、上記第1の実施形態においては、第1のフラックスバリア15a,15b及び第3のフラックスバリア17a,17bに磁石位置決め用段部24及び28を設けた場合について説明したが、これら磁石位置決め用段部24及び28を省略し、これらに代えて図5に示すように、第1のフラックスバリア15a,15bの内周面23に磁極11a〜11f側に突出する凸部29を形成し、この凸部29の永久磁石14側を位置決め段部として使用するようにしてもよい。この場合、凸部の形状は正方形である必要はなく、永久磁石14を位置決め可能な形状であれば任意の形状とすることができる。
また、上記第1の実施形態においては、磁石位置決め用段部24及び28を形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、永久磁石14に掛かる遠心力が小さい場合には、磁石位置決め用段部24及び28を省略することができる。
次に、本発明の第2の実施形態を図6について説明する。
この第2の実施形態では、前述した第1の実施形態における第1のフラックスバリアの配置及び形状を変更するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、図6に示すように、第1のフラックスバリア31a,31bが磁石挿入孔13a,13bの回転子鉄心12の外周面側端面に対して所定距離だけ外周面側に離れた位置つまり磁石挿入孔13a,13bに対して回転子鉄心12を介在させた位置に細長い長方形孔形状に形成されている。
この第2の実施形態によると、磁石挿入孔13a,13bと第1のフラックスバリア31a,31bとが切り離されて両者間に回転子鉄心12が介在しているので、磁石挿入孔13a,13bに挿入される永久磁石14は、その回転子鉄心12の外周面側端面が磁石挿入孔13a,13bを形成する回転子鉄心12の壁面によって位置決めされる。
そして、磁石挿入孔13a,13bと第1のフラックスバリア31a,31bとが分離されて間に回転子鉄心12が介在するので、回転子3を高速回転させた場合の回転子鉄心12の遠心力強度を向上させることができる。
なお、上記第2の実施形態においては、第1のフラックスバリア31a,31bが磁石挿入孔13a,13bに対して分離して配置されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図7に示すように、磁石挿入孔13a,13bと第1のフラックスバリア31a,31bとを両者の回転軸3a側で連通する補助フラックスバリア32a,32bを形成するようにしてもよい。この場合には、補助フラックスバリア32a,32bでも磁極間側の永久磁石14の漏れ磁束を低減させることができる。このため、永久磁石14の漏れ磁束をより低減することができ、磁極間側の永久磁石14の端部の減磁をより抑制することができる。補助フラックスバリア32a,32bは磁石挿入孔13a,13bと第1のフラックスバリア31a,31bとを両者の回転軸3a側で連通する場合に限らず、回転子鉄心12の外周面側すなわち磁極11a〜11f側で磁石挿入孔13a,13bと第1のフラックスバリア31a,31bとを連通するように形成してもよく、さらには回転軸3a側及び磁極11a〜11f側の双方に形成するようにしてもよい。
次に、本発明の第3の実施形態を図8について説明する。
この第3の実施形態は、第2のフラックスバリア16a,16bの形状を変更したものである。
すなわち、第3の実施形態では、図8に示すように、前述した第2の実施形態における第2のフラックスバリア16a,16bが、磁石挿入孔13a,13bの中央より端部から回転子鉄心12の外周面側すなわち磁極間側の端面に行くに従い磁石挿入孔13a,13bの側面からの距離が徐々に長くなり、回転子鉄心12の外周面との距離が徐々に短くなる三角孔形状に形成されている。
この第3の実施形態によると、第2のフラックスバリア16a,16bが回転子鉄心12の外周面側に凸となるように形成されているので、永久磁石14の磁束は、磁気抵抗の大きい回転子鉄心12の内側へとは向かわず、回転子鉄心12の外周面側へと向かうようになる。したがって、磁極間側の永久磁石14の減磁を抑制することができる。
なお、上記第3の実施形態においては、第2のフラックスバリア16a,16bを三角孔形状に形成した場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、第2のフラックスバリア16a,16bの磁石挿入孔13a,13bの中央部側端部を磁石挿入孔13a,13bから所定距離だけ回転子鉄心12の外周面側に離すように平行移動させて台形孔形状に形成するようにしてもよい。
また、上記第3の実施形態においては、第2のフラックスバリア16a,16bの磁極側内周面が平面状である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、二次曲面に形成するようにしてもよい。
1…永久磁石式回転機、2…固定子、3…回転子、3a…回転軸、4…ヨーク、5…スロット、6…ティース、7…励磁コイル、11a〜11f…磁極、12…回転子鉄心、13a,13b…磁石挿入孔、14…永久磁石、15a,15b…第1のフラックスバリア、16a,16b…第2のフラックスバリア、17a,17b…第3のフラックスバリア、21〜23…内周面、24…磁石位置決め用段部、25〜27…内周面、28…磁石位置決め用段部、31a,31b…第2のフラックスバリア、32a,32b…補助フラックスバリア

Claims (3)

  1. コイルが巻回された複数のティースとヨークとを有する固定子と、該固定子の内側に空隙を隔てて回転自在に配設された回転子鉄心を有する回転子とを備え、
    前記回転子鉄心は、円周方向に等間隔で、外周側に開いたV字形状の磁石挿入孔が軸方向に形成され、該磁石挿入孔にV字形状の内側同士が同極性となって磁極を形成し、且つ円周方向に隣接する磁極が異極性となるように永久磁石が挿入された構成を有する永久磁石式回転機であって、
    前記永久磁石は軸直角方向の断面形状が長方形に形成され、
    前記磁石挿入孔に挿通した前記永久磁石の外周端側に第1のフラックスバリアを形成するとともに、当該永久磁石の外周端側における前記磁極側に減磁耐性を向上させる第2のフラックスバリアを形成し
    前記第1のフラックスバリアは、前記磁石挿入孔の円周方向端面に、所定距離離れて対向形成され、
    前記第1のフラックスバリアと前記磁石挿入孔との間を前記回転軸側及び前記磁極側の少なくとも何れか一方で連通する補助フラックスバリアを形成した
    ことを特徴とする請求項2に記載の永久磁石式回転機。
  2. 前記第のフラックスバリアは、前記永久磁石の外周方向端面から所定距離内方側に当該永久磁石の側面に沿って扁平な断面長方形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石式回転機。
  3. 前記第のフラックスバリアは、前記永久磁石の中央部側端部から外周方向端面に向かうに従い永久磁石の側面からの距離が長くなる三角孔形状及び台形孔形状の何れか一方の形状に形成されていることを特徴とする請求項に記載の永久磁石式回転機。
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