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JP5562540B2 - 電動工具 - Google Patents

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JP5562540B2 JP2008212792A JP2008212792A JP5562540B2 JP 5562540 B2 JP5562540 B2 JP 5562540B2 JP 2008212792 A JP2008212792 A JP 2008212792A JP 2008212792 A JP2008212792 A JP 2008212792A JP 5562540 B2 JP5562540 B2 JP 5562540B2
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Description

この発明は、例えば電動ドライバやねじ締め機等の主として回転動力を出力する電動工具に関する。
一般にこの種の電動工具は、駆動源としての電動モータの回転動力を変速装置によって減速して必要な回転トルクを出力する構成を備えている。多くの場合変速装置には、遊星歯車機構が用いられている。
例えば、ねじ締め機では、締め付け当初は小さなトルクで足り、締め付けが進行するに従って徐々に大きな回転トルクが必要となる。このため、締め付け当初では変速装置の減速比を小さくして高速低トルクを出力し、締め付け途中で変速装置の減速比を大きくして低速高トルクを出力することが、迅速かつ確実なねじ締めを行う観点で要求される機能となる。しかも、締め付け途中の段階で、出力軸に付加される締め付け抵抗(外部トルク)が一定値に達した時点で自動的に減速比(出力トルク)が切り換わることが使い勝手の点で要求される。
下記の特許文献には、電動モータの出力軸とねじ締めビットを装着した出力軸との間に二段階の遊星歯車機構を有する変速装置を介装したねじ締め機が開示されている。この従来のねじ締め機の変速装置によれば、ねじ締め当初では二段目遊星歯車機構のインターナルギヤを介して一段目遊星のキャリアと二段目遊星のキャリアが直結される結果、高速低トルクが出力されて迅速なねじ締めがなされる。ねじ締めが進行して使用者がねじ締め機の押し付け力を強くすると、二段目遊星歯車機構のインターナルギヤが軸方向へ相対変位して一段目遊星歯車機構のキャリアから切り離される一方、その回転が固定されることにより第2段遊星での減速が加わる結果当該変速装置の減速比が大きくなって低速高トルクが出力されて確実なねじ締めがなされる。
特許第3289958号公報
しかしながら、上記従来の変速装置によれば、変速前の高速低トルク出力時における出力回転数と、変速後の低速高トルク出力時における出力回転数との回転数比は概ね3倍程度に設定されていた。これは、従来は作業内容によっては高速低トルク出力状態のままでも加工を完了できるようにすることを想定したため、高速時の回転数を高くすることに限界があり、結果として比較的低く抑制していたことによるものと考えられる。
そこで、本発明は、スピンドルに付加される外部トルクが一定以上に達した時点で自動的に変速される自動変速機能の利点を利用してなされたもので、高速時の回転数をさらに高速化することによって加工のスピードアップを図ることを目的とする。
上記の課題は、以下の各発明により解決される。
第1の発明は、駆動源として電動モータと電動モータの回転動力を減速してスピンドルに出力するための変速装置を内蔵した電動工具であって、変速装置は、スピンドルに付加される外部トルクに基づいて高速低トルクを出力する高速低トルクモードと、低速高トルクを出力する低速高トルクモードを自動的に切り換え可能であり、高速低トルクモードにおける出力回転数が低速高トルクモードにおける出力回転数の4.5〜6.0倍に設定された電動工具である。
第1の発明によれば、高速低トルクモードにおける出力回転数が、低速高トルクモードにおける出力回転数の4.5倍〜6倍に設定されている。このため、低速高トルクモードにおいて必要かつ十分なトルクが得られるように出力回転数を設定すれば、高速低トルクモードにおける出力回転数を従来にはない極めて高速に設定することが可能となる。この場合、高速低トルクモードにおける回転速度は、当該出力回転数に基づく低トルクではトルク不足により加工を最後まで遂行することができない程度に高速に設定しておくことができる。加工が進行してトルク不足になった時点で、変速装置の自動変速が行われて低速高トルクモードに移行することから、係る設定によっても加工は最後まで進行する。このように、変速の前後で従来にない大きな比率で出力回転数(減速比)を変化させることにより、加工開始の初期段階では極めて高速回転させることにより加工を迅速に進行させることができ、これは必要トルクが不足すると自動的に低速高トルクモードに変速する自動変速装置を備えることで初めて可能となる。
第2の発明は、第1の発明において、変速装置は、電動モータからスピンドルに至る動力伝達経路の上流側の第1段遊星歯車機構と、下流側の第2段遊星歯車機構と、第2段遊星歯車機構のインターナルギヤの軸回りの回転を規制するインターナル規制部材を備え、インターナルギヤの回転が許容されてスピンドルに高速低トルクが出力され、インターナルギヤの回転がインターナル規制部材により規制されてスピンドルに低速高トルクが出力される構成とした電動工具である。
第2の発明によれば、変速装置の第2段遊星歯車機構のインターナルギヤが回転する状態では高速低トルクモードとなり、インターナル規制部材により回転が規制された状態では低速高トルクモードとなる。前者の高速低トルクモードの出力回転数が後者の低速高トルクモードの出力回転数の4.5倍〜6.0倍に設定されていることにより、前者の高速低トルクモードにおいて従来にない高速で回転することにより加工の迅速化が図られる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、高速低トルクモードの出力回転数が2,000rpmに設定され、低速高トルクモードの出力回転数が400rpmに設定された電動工具である。
第3の発明によれば、自動変速前の2,000rpmでは加工を最後まで進行させるために必要な出力トルクが出力されないが、自動変速後には出力回転数が400rpmに減速されて十分な高トルクが出力されることにより加工が最後までなされる。
第4の発明は、第1又は第2の発明において、電動モータと変速装置を内蔵した工具本体部と、工具本体部から側方へ突き出す状態に設けられたハンドル部を備え、ハンドル部の先端に電源としてのバッテリパックを装着可能であり、変速装置において高速低トルクモードから低速高トルクモードに切り換わることにより発生する機軸J回りの反動よりも、機軸J回りの慣性モーメントIの方が大きくなるように機軸Jからバッテリパックの重心Gまでの距離Lと、バッテリパックの質量Mを設定した電動工具である。
第4の発明によれば、スピンドルに付加される外部トルクが一定値に達した時点で出力回転数が大きな高速低トルクモードから出力回転数が小さな低速高トルクモードに自動的に切り換わることにより、工具本体には当該工具本体を機軸回りに回転させる反動(振り回し力)が発生する。この振り回し力によって、ハンドル部を把持した使用者の手がハンドルごと機軸J回りに振られる。この振り回し力は、高速低トルクモードでの減速比と低速高トルクモードでの減速比の変化が大きいほど大きくなるため、使用者はハンドル部を把持した手を機軸回りに振り回され易くなる(機軸J回りに手を持って行かれ易くなる)。
しかしながら、第4の発明によれば、変速装置において高速低トルクモードから低速高トルクモードへ自動変速した際に発生する機軸J回りの振り回し力よりも、当該電動工具の機軸J回りの慣性モーメントIの方が大きくなるように機軸Jからバッテリ重心Gまでの距離Lとバッテリ質量Mが設定されている。このため、自動変速により発生する反動によっても当該電動工具が機軸回りに振り回されることがなく、従って使用者は変速時においてもハンドル部をそのまま小さな力で把持していれば足り、この点で当該電動工具の操作性を高めることができる。
次に、本発明の実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る電動工具1の全体を示している。本実施形態では、電動工具1の一例として充電式電動ドライバドリルを例示する。この電動工具1は、先端工具としてドライバビットを装着することにより電動ねじ締め機として用いることができ、ドリルビットを装着することにより孔明け加工用の電動ドライバとして用いることができる。
この電動工具1は、本体部2とハンドル部3を備えている。本体部2は概ね円柱体形状を有するもので、その長手方向(機軸方向)の中程から側方へ突き出す状態にハンドル部3が設けられている。本体部2とハンドル部3は、機軸方向(図1において左右方向)に対して左右に二分された2つ割りハウジングを相互に突き合わせて結合したハウジングを備えている。以下、本体部2のハウジングを本体ハウジング2aと言い、ハンドル部3のハウジングをハンドルハウジング3aと称して必要に応じて区別する。
ハンドル部3の基部前側には、トリガ形式のスイッチレバー4が配置されている。このスイッチレバー4を使用者が指先で引き操作すると電動モータ10が起動する。また、ハンドル部4の先端には、バッテリパック5を取り付けるためのバッテリ取り付け台座部6が設けられている。このバッテリパック5を電源として電動モータ10が作動する。
電動モータ10は、本体部2の後部に内蔵されている。この電動モータ10の回転動力は、三つの遊星歯車機構を有する変速装置Hにより減速されてスピンドル11に出力される。スピンドル11の先端には、先端工具を装着するためのチャック12が取り付けられている。
三つの遊星歯車機構は電動モータ10からスピンドル11に至る動力伝達経路に介在されている。以下、動力伝達経路の上流側から第1段遊星歯車機構20、第2段遊星歯車機構30、第3段遊星歯車機構40と言う。第1〜第3段遊星歯車機構20,30,40の詳細が図2に示されている。第1〜第3遊星歯車機構20,30,40は、電動モータ10の出力軸10aに同軸に配置され、またスピンドル11に同軸に配置されている。以下、スピンドル11の回転軸(電動モータ10の出力軸10aの回転軸)を機軸Jとも言う。この機軸J上に電動モータ10、第1〜第3段遊星歯車機構20,30,40及びスピンドル11が配置されている。この機軸Jに沿った方向が当該電動工具1の機軸方向であり、この機軸方向が本体部2の長手方向となる。
電動モータ10の出力軸10aに第1段遊星歯車機構20の第1段太陽ギヤ21が取り付けられている。この第1段太陽ギヤ21には三つの第1段遊星ギヤ22〜22が噛み合わされている。この三つの第1段遊星ギヤ22〜22は、第1段キャリア23に回転自在に支持されている。また、この三つの第1段遊星ギヤ22〜22は、第1段インターナルギヤ24に噛み合わされている。第1段インターナルギヤ24は、本体ハウジング2aの内面に沿って取り付けられている。この第1段インターナルギヤ24は、機軸J回りに回転不能かつ機軸J方向に移動不能に固定されている。
第1段キャリア23の前面中心には第2段太陽ギヤ31が一体に設けられている。この第2段太陽ギヤ31には三つの第2段遊星ギヤ32〜32が噛み合わされている。この三つの第2段遊星ギヤ32〜32は、第2段キャリア33に回転自在に支持されている。また、この三つの第2段遊星ギヤ32〜32は、第2段インターナルギヤ34に噛み合わされている。この第2段インターナルギヤ34は、機軸J回りに回転可能かつ機軸J方向に一定の範囲で変位可能な状態で本体ハウジング2aの内面に沿って支持されている。この第2段インターナルギヤ34の詳細については後述する。
第2段キャリア33の前面中心には第3段太陽ギヤ41が一体に設けられている。この第3段太陽ギヤ41には三つの第3段遊星ギヤ42〜42が噛み合わされている。この三つの第3段遊星ギヤ42〜42は、第3段キャリア43に回転自在に支持されている。また、この三つの第3段遊星ギヤ42〜42は、第3段インターナルギヤ44に噛み合わされている。この第3段インターナルギヤ44は本体ハウジング2aの内面に沿って取り付けられている。この第3段インターナルギヤ44は、機軸J回りに回転不能かつ機軸J方向に移動不能に固定されている。
第3段キャリア43の前面中心にスピンドル11が同軸に結合されている。スピンドル11は、軸受け13,14を介して本体ハウジング2aに対して機軸J回りに回転自在に支持されている。このスピンドルの先端にチャック12が取り付けられている。
前記したように第2段インターナルギヤ34は、機軸J回りに回転可能かつ機軸J方向に一定の範囲で移動可能に支持されている。この第2段インターナルギヤ34の後面には、周方向に沿って複数のクラッチ歯34a〜34aが設けられている。このクラッチ歯34a〜34aは、第1段キャリア23の前面に設けた同じく周方向に沿って設けたクラッチ歯23a〜23aに噛み合わされている。このクラッチ歯23a,34aの噛み合い状態を経て、第2インターナルギヤ34が第1段キャリア23と一体で回転する。このクラッチ歯23a,34aの噛み合い状態は、第1段キャリア23に対して相対回転させるための外部トルクが第2段インターナルギヤ34に付加されて当該第2段インターナルギヤ34が機軸J方向前側(第1段キャリア23から離れる方向)に変位することによって外れる。
図2は、第2段インターナルギヤ34のクラッチ歯34a〜34aが第1段キャリア23のクラッチ歯23a〜23aに噛み合った状態を示している。この噛み合い状態では、第2段インターナルギヤ34は機軸J方向について後側(図2において左側)の回転許容位置に位置しており、この回転許容位置では第2段インターナルギヤ34は第1段キャリア23と一体で回転し、従ってこの場合には第2段太陽ギヤ31と第2段インターナルギヤ34が一体で回転する。スピンドル11を経て第2段インターナルギヤ34に一定以上の外部トルクが付加されると、第1段キャリア23に対して相対回転してクラッチ歯34aとクラッチ歯23aの噛み合いが外れ、その結果第2段インターナルギヤ34が機軸J方向前側(図2において右側)へ変位する。
第2段インターナルギヤ34は、圧縮ばね35によって上記回転許容位置側へ付勢されている。このため、第2段インターナルギヤ34はこの圧縮ばね35の付勢力に抗して機軸J方向前側(クラッチ歯23a,34aが外れる方向)へ変位する。また、この圧縮ばね35の付勢力に基づいて、第2段インターナルギヤ34が前側へ変位して減速比が切り換わるための一定の外部トルクが設定されている。
圧縮ばね35は、第2段インターナルギヤ34の前面に対して押圧板36を介在させて作用している。すなわち、第2段インターナルギヤ34は、その前面に当接された円環形状の押圧板36を介して作用する圧縮ばね35の付勢力によってクラッチ歯34a,23aが噛み合う方向であって回転許容位置側に押し付けられている。
押圧板36の後側には転動板37が配置されている。転動板37も円環形状を有しており、第2段インターナルギヤ34の周囲に沿って機軸J回りに回転可能に支持されている。この転動板37と、第2段インターナルギヤ34の周面に設けたフランジ部34bの前面との間には、多数の鋼球38〜38が挟み込まれている。この鋼球38〜38と転動板37が、第2段インターナルギヤ34を回転自在に支持しつつ圧縮ばね35の付勢力を作用させるためのスラスト軸受けとして機能する。
前側の押圧板36と後側の転動板37との間には、上下2本のモード切り換え部材39,39が挟み込まれている。本実施形態では、この2本のモード切り換え部材39,39として2本の長尺な軸(ピン)が用いられている。この2本のモード切り換え部材39,39は、押圧板36と転動板37の間の上部と下部において、図2において紙面に直交する方向で相互に平行に挟み込まれている。この2本のモード切り換え部材39,39の両端部は、それぞれ本体ハウジング2aの外部に突き出されている。図3に示すように、両モード切り換え部材39,39の両端部は、それぞれ本体ハウジング2aの両側部に設けた挿通溝孔2b〜2bを経て外部に突き出されている。上下2本のモード切り換え部材39,39は、それぞれ本体ハウジング2aの両側部間に跨った状態で相互に平行に支持されている。合計4箇所の挿通溝孔2b〜2bは、モード切り換え部材39を挿通可能な溝幅で、機軸J方向に長く形成されている。このため、上下2本のモード切り換え部材39,39は、それぞれその両端部が挿通溝孔2b,2b内において変位可能な範囲で機軸J方向前後に平行移動可能となっている。上下2本のモード切り換え部材39,39は、後述するモード切り換えリング50によって同時に同じ方向へ平行移動する。図2に示す初期状態(スピンドルに外部トルクが付加されていない状態)では、第2段インターナルギヤ34が圧縮ばね35によって回転許容位置に位置しており、従ってこの状態では両モード切り換え部材39,39が後側に位置して押圧板36と転動板37との間にほぼ挟まれた状態となる。
これに対して、両モード切り換え部材39,39が前側へ平行移動すると、押圧板36が圧縮ばね35に抗して前側へ平行移動される。押圧板36が前側へ平行移動されると、圧縮ばね35が第2段インターナルギヤ34に作用しなくなる。圧縮ばね35の付勢力が第2段インターナルギヤ34に作用しない状態では、クラッチ歯34aとクラッチ歯23aとの噛み合い状態を保持する力がなくなるため、当該第2段インターナルギヤ34に回転方向の僅かな外力(例えば伝動モータ10の起動トルク)が付加されると、第1段キャリア23に対して相対回転し、その結果当該第2段インターナルギヤ34が機軸J方向前側へ変位する。
上下2本のモード切り換え部材39,39は、前記したモード切り換えリング50の回転操作によって外部から簡単に移動操作することができる。このモード切り換えリング50は円環形状を有するもので、本体ハウジング2aの外周側に機軸J回りに回転可能に支持されている。このモード切り換えリング50の周囲1箇所には使用者が回転操作時に摘むツマミ部50aが一体に設けられている。
このモード切り換えリング50を機軸J回りに一定の角度範囲で回転操作することにより、当該電動工具1の回転出力が、スピンドル11に付加される外部トルクが前記圧縮ばね35の付勢に基づいて設定された一定値に達した時点で「高速低トルク」出力状態(高速低トルクモード)から「低速高トルク」出力状態(低速高トルクモード)に自動的に切り換わる自動変速モードと、「高速低トルク」出力状態に固定された高速固定モードと、「低速高トルク」出力状態に固定された高トルク固定モードの3つの動作モードを任意に切り換えることができる。
図3に示すようにこのモード切り換えリング50には、本体ハウジング2aの4箇所の挿通溝孔2b〜2bに対応して(整合する位置に)4つの切り換え溝部51〜51が設けられている。各切り換え溝部51に、上下2本のモード切り換え部材39,39の各端部であって本体ハウジング2aから突き出された部分が進入している。
各切り換え溝部51は、機軸J回り方向に長い高速固定モード用の後側溝部51bと、同じく機軸J回り方向に長い高トルク固定モード用の前側溝部51cと、両溝部51b,51cを連通する自動変速モード用の中間溝部51dを有する概ねクランク形(S字形)に形成されている。機軸J方向の位置について、後側溝部51bが後側(図3において左側)に、前側溝部51cがこれよりも前側(図3において右側)に、概ね溝幅分だけずれて配置されている。
後側溝部51bと前側溝部51cを連通する中間溝部51dは、機軸J方向の長さについて、本体ハウジング2の挿通溝孔2bとほぼ同じ長さで機軸J方向に長く形成されている。図3は、上下2本のモード切り換え部材39,39のそれぞれの両端部がこの中間溝部51d内に位置した状態を示している。この場合、モード切り換えリング50は、自動変速モードに切り換えられている。図3では、各モード切り換え部材39の端部が中間溝部51dの後側に位置している。この状態では、スピンドル11に一定値以上の外部トルクが作用していない状態であって、押圧板36を介して第2段インターナルギヤ34に圧縮ばね35の付勢力が作用し、その結果当該第2段インターナルギヤ34が回転許容位置に保持されて第1段キャリア23と一体で回転する状態となっている。この状態が本実施形態における電動工具1の変速装置Hの初期状態となっている。
この初期状態では、圧縮ばね35の付勢力の全部若しくは一部が、上下2本のモード切り換え部材39,39が切り換え溝部51〜51の後端部に押圧されることにより受けられるように当該切り換え溝部51〜51の位置(当該後端部の機軸J方向の位置)が設定されている。このため、電動モータ10の起動直後のアイドリング状態(無負荷時)では、第2段インターナルギヤ34に対して圧縮ばね35の付勢力がほとんど付加されず、若しくは一部のみが付加される状態となることから、当該第2段インターナルギヤ34を回転させるために必要なトルク(回転抵抗)が小さくなり、その結果当該電動工具1の消費電力(電流値)を下げることができるようになっている。
この自動変速モードでは、上下2本のモード切り換え部材39,39がそれぞれ中間溝部51d内を機軸J方向に変位可能な状態となるため、スピンドル11に一定値以上の外部トルクが付加されると、第2段インターナルギヤ34が圧縮ばね35に抗して機軸J方向前側の回転規制位置に変位する。この状態が図4及び図5に示されている。スピンドル11に付加される外部トルクが一定値以下に低下すると、後述するモードロック機構60の解除により第2段インターナルギヤ34が圧縮ばね35によって機軸J方向後側の回転許容位置に戻されて、第1段キャリア23と一体で回転可能な初期状態に戻される。この状態が図2及び図3に示されている。
第2段インターナルギヤ34が後側の回転許容位置に位置することによりそのクラッチ歯34a〜34aが第1段キャリア23のクラッチ歯23a〜23aに噛み合った状態では、第2段インターナルギヤ34が第1段キャリア23と一体で回転し、従って第2段遊星歯車機構30の減速比は小さくなる結果、スピンドル11は高速かつ低トルクで回転する。本実施形態の場合、この高速低トルクモードでのスピンドル11の出力回転数は、約2000rpmに設定されている。
これに対して、スピンドル11に付加される外部トルクが一定値以上に達して第2段インターナルギヤ34が前側の回転規制位置に変位することによりそのクラッチ歯34a〜34aと第1段キャリア23のクラッチ歯23a〜23aとの噛み合いが外れた状態では、第2段遊星歯車機構30の減速比は大きくなる結果、スピンドル11は低速かつ高トルクで回転する。本実施形態の場合、この低速高トルクモードでのスピンドル11の出力回転数は、約400rpmに設定されている。自動変速モードでは、前者の高速低トルク出力状態と後者の低速高トルク出力状態との切り換えがスピンドル11に付加される外部トルクに基づいて自動的になされる。前者の高速低トルク出力状態では、モード切り換え部材39,39は、図3に示すように中間溝部51dの後側に位置する。後者の低速高トルク出力状態では、モード切り換え部材39,39は、図5に示すように中間溝部51dの前側に位置する。すなわち、上下2本のモード切り換え部材39,39は、第2段インターナルギヤ34と一体となって機軸J方向に変位する。
モード切り換えリング50を図2〜図5に示す自動変速モード位置から、図7に示す高速固定モード位置に回転操作すると、変速装置Hの動作が高速固定モードに切り換わる。この場合、モード切り換えリング50を使用者から見て時計回り方向(図3及び図5においてツマミ部50aを紙面手前に倒す方向)に一定角度回転操作すると自動変速モードから高速固定モードに切り換わる。モード切り換えリング50を高速固定モードに切り換えると、上下2本のモード切り換え部材39,39の両端部がそれぞれ後側溝部51b内に相対的に進入した状態となる。この状態では、両モード切り換え部材39,39は機軸J方向後側の位置に固定され、前側へ変位不能な状態となる。このため、スピンドル11に一定値以上の外部トルクが付加された場合であっても、図6に示すように第2段インターナルギヤ34は回転許容位置に保持されて第2段遊星歯車機構30は減速比の小さな状態に保持され、その結果スピンドル11には高速低トルク状態が出力される。このようにモード切り換えリング50を図7に示す高速固定モードに切り換えると、変速装置Hの出力状態は高速低トルク出力状態に固定される。
また、この高速固定モードでは、上下2本のモード切り換え部材39,39が、自動変速モードにおける初期状態と同様モード切り換え溝部51の後端部に当接し、これにより圧縮ばね35の付勢力の全部若しくは一部がこのモード切り換え部材39,39で受けられることから、第2段インターナルギヤ34の回転抵抗を小さくすることができ、ひいては当該電動工具1の消費電力(電流値)を下げることができる。
モード切り換えリング50を図3及び図5に示す自動変速モード位置あるいは図7に示す高速固定モード位置から、図9に示す高トルク固定モード位置に回転操作すると、変速装置Hの動作が高トルク固定モードに切り換わる。この場合、モード切り換えリング50を使用者から見て反時計回り方向(図3、図5及び図7においてツマミ部50aを紙面奥側へ倒す方向)に一定角度回転操作すると自動変速モード若しくは高速固定モードから高トルク固定モードに切り換わる。モード切り換えリング50を高トルク固定モードに切り換えると、上下2本のモード切り換え部材39,39の両端部がそれぞれ前側溝部51c内に相対的に進入した状態となる。この状態では、両モード切り換え部材39,39は機軸J方向前側へ圧縮ばね35に抗して変位し、この前側の位置に保持されて後側へ変位不能な状態となる。このため、第2段インターナルギヤ34に対して圧縮ばね35の付勢力が作用しない状態となる。この状態では、スピンドル11に対して僅かな外部トルクが付加された時点(電動モータ10が起動した時点)で、第2段インターナルギヤ34が機軸J方向前側の回転規制位置に変位して後述するモードロック機構60によって回転不能な状態に固定される結果、スピンドル11に低速高トルクが出力される状態に固定される。この状態が図8に示されている。この高トルク状態では、実質的に第2段インターナルギヤ34が機軸J方向前側の回転規制位置に固定された状態となり、従って低速高トルクの出力状態に固定された状態となる。
このように、外部から回転操作可能なモード切り換えリング50の操作により、変速装置Hの動作モードを、自動変速モード又は高速固定モード又は高トルク固定モードに任意に切り換えることができる。各モードと、切り換え溝51内におけるモード切り換え部材39の位置との関係が図10にまとめて示されている。自動変速モードでは、スピンドル11に付加される外部トルクが一定値に達すると、減速比が小さな高速低トルクモードから減速比が大きな低速高トルクモードに自動的に切り換わる。この低速高トルクモードは以下説明するモードロック機構60によってロックされる。
これに対してモード切り換えリング50を高速低トルクモード位置に回転操作すると、上下2本のモード切り換え部材39,39の機軸J方向の位置が後側に固定される結果、第2段インターナルギヤ34は回転許容位置にロックされ、従ってスピンドル11には外部トルクの変化に関係なく常時高速低トルクが出力される。
逆に、モード切り換えリング50を低速高トルクモード位置に回転操作すると、上下2本のモード切り換え部材39,39の機軸J方向の位置が前側に固定される結果、第2段インターナルギヤ34に対して圧縮ばね35の付勢力が作用しない状態となる。このため、電動モータ10を起動すると、第2段インターナルギヤ34がその起動トルク等の僅かな外部トルクによって瞬時に回転規制位置に変位し、この回転規制位置で以下説明するモードロック機構60によってロックされる。このため、この低速高トルクモードでは、第2段インターナルギヤ34が実質的に常時回転規制位置にロックされた状態となり、従ってスピンドル11に付加される外部トルクの変化に関係なく常時低速高トルクが出力される。
本実施形態において、高速低トルクモードにおける当該変速装置Hの減速比は、その出力トルクではねじ締めを最後まで行うことができない程度に小さな減速比に設定されている。これに対して、低速高トルクモードにおける減速比は、その出力トルクにより締め残しを発生することなくねじ締めを最後まで完全に行い得る程度に十分に大きな減速比に設定されている。このことから、本実施形態では、高速低トルクモードの減速比と低速高トルクモードの減速比の変化率が通常よりも大きくなっている。すなわち、前記したように高速低トルクモードでのスピンドル11の出力回転数は約2000rpmに設定され、低速高トルクモードでのスピンドル11の出力回転数は約400rpmに設定されている。このため、本実施形態での、高速低トルクモードでの出力回転数は低速高トルクモードでの出力回転数の約5倍に設定されている。この出力回転数の比率は、4.5倍〜6.0倍の範囲で設定することによって、高速低トルクモードでの出力回転数を従来にないほど高速回転させることができ、これにより加工の初期段階での高速化を図ることができる。
次に、第2段インターナルギヤ34の回転規制位置(機軸J方向前側の位置)は、モードロック機構60によって保持されるようになっている。このモードロック機構60の詳細が図11及び図12に示されている。図11は、このモードロック機構60が外れて第2段インターナルギヤ34が回転許容位置に保持された状態(クラッチ歯23a,34aが噛み合った状態)を示しており、図12がこのモードロック機構60によって第2インターナルギヤ34が回転規制位置に保持された状態(クラッチ歯23a,34aの噛み合いが外れた状態)を示している。
このモードロック機構60は、第2段インターナルギヤ34を機軸J方向前側の回転規制位置に保持する機能と、この回転規制位置に位置する第2段インターナルギヤ34を回転不能にロックする機能を有している。
第2段インターナルギヤ34の外周面であってフランジ部34bの後側には、係合溝部34cが全周にわたって設けられている。この係合溝部34c内の、周方向3等分位置には係合壁部34d〜34dが設けられている。一方、本体ハウジング2aには、その周方向の三等分位置に1つずつ係合球61が保持されている。この三つの係合球61〜61が特許請求の範囲に記載したインターナル規制部材の一実施形態に相当するもので、それぞれ本体ハウジング2aに設けた保持孔2c内に保持されている。この保持孔2c内において各係合球61は、本体ハウジング2aの内周側に出没可能に保持されている。三つの係合球61〜61の周囲には、ロックリング62が配置されている。このロックリング62は、機軸J回りに回転可能な状態で本体ハウジング2aの外周側に支持されている。
このロックリング62の内周面には、周方向に深さが変化するカム面62a〜62aが三つの係合球61〜61に対応して周方向三等分位置に設けられている。各カム面62aに1つの係合球61が摺接されている。各カム面62aに対する係合球61の摺接作用によりロックリング62が機軸J回りに一定の範囲で回転すると、各係合球61が保持孔2c内において本体ハウジング2aの内周側に突き出さない退避位置(図11に示す位置)と、突き出す係合位置(図12に示す位置)との間を移動する。
ロックリング62は、本体ハウジング2aとの間に介装された捩りコイルばね63によって、機軸J回り方向の一方(ロック側)に付勢されている。このロックリング62の、捩りコイルばね63による付勢方向は、各係合球61を係合位置側に変位させる方向にカム面62aが回転する方向(ロック側)に付勢されている。図11に示すように第2段インターナルギヤ34が圧縮ばね35の付勢力によって回転許容位置に位置する状態では、そのフランジ部34bが保持孔2cを塞ぐ位置に位置しているため、各係合球61〜61が退避位置に押され、その結果ロックリング62が捩りコイルばね63に抗してアンロック側に戻された状態となっている。
これに対して、図12に示すように第2インターナルギヤ34が圧縮ばね35に抗して、若しくは圧縮ばね35の付勢力が作用しない結果、回転規制位置に移動すると、各保持孔2cに対してフランジ部34bが外れて係合溝部34cが位置する状態となる。このため、各係合球61が本体ハウジング2aの内周側へ変位して係合溝部34c内に嵌り込み、この嵌り込み状態が捩りコイルばね63の付勢力によって保持される。各係合球61が係合溝部34c内に嵌り込んだ状態に保持されることにより、第2段インターナルギヤ34が回転規制位置に保持されるとともに、各係合球61が係合壁部34dに係合されることによりその機軸J回りの回転がロックされた状態となる。なお、第2段インターナルギヤ34が回転規制位置にロックされると、そのクラッチ歯34a〜34aと第1段キャリア23のクラッチ歯23a〜23aとの噛み合いが外れた状態に保持される。
また、各係合球61〜61は、それぞれカム面62aを介して捩りコイルばね63の付勢力が作用することによって間接的に係合位置側に付勢されている。この各係合球61の係合位置側への付勢力によって各係合球61がそれぞれ係合溝部34c内に嵌り込むと、当該付勢力が当該係合球61の球体形状及び係合溝部34cの傾斜面との相互作用を経て作用する結果、第2段インターナルギヤ34に対して回転規制位置側への付勢力としてさらに間接的に作用する。この捩りコイルばね63の間接的付勢力が、第2段インターナルギヤ34に対して回転規制位置側への付勢力として作用することにより、当該第2段インターナルギヤ34がスピンドル11を経て戻される外部トルクによって回転許容位置から回転規制位置側へ変位し始めると、瞬時に各係合球61が係合溝部34c内に嵌り込み、従って当該第2段インターナルギヤ34が瞬時に回転規制位置側に大きく移動する。このため、図12に示すように第2段インターナルギヤ34が回転規制位置に移動した状態では、そのクラッチ歯34a〜34aと、第1段キャリア23のクラッチ歯23a〜23aとの間には適切なクリアランスが発生した状態となる。このため、機軸J回り方向に回転する第1段キャリア23のクラッチ歯23a〜23aが、回転固定された第2段インターナルギヤ34のクラッチ歯34aに対して接触することがなく、高トルク側へ変速後においても静かに動作(静音化)させることができる。
ロックリング62のロック位置は、捩りコイルばね63に保持されることから、当該変速装置10は低速高トルク側に保持される。ロックリング62のロック位置は、使用者の手動操作により解除することができる。使用者は、ロック位置に保持されたロックリング62を手動操作により捩りコイルばね63に抗してアンロック位置に回転操作すると、各係合球61が退避位置に退避可能となるため、第2段インターナルギヤ34が圧縮ばね35によって回転許容位置に戻される。第2段インターナルギヤ34が回転許容位置に戻されると、そのクラッチ歯34a〜34aが第1段キャリア23のクラッチ歯23a〜23aに噛み合わされた状態になる。また、第2段インターナルギヤ34が回転許容位置に戻されると、そのフランジ部34bによって保持孔2cが塞がれるため各係合球61が退避位置に保持される。このため、使用者はその後ロックリング61から指先を離しても当該ロックリング62が捩りコイルばね63に抗してアンロック位置に保持される。このようにロックリング62をアンロック位置(初期位置)に戻すための構成として手動操作により行う構成とする場合の他、例えば前記したトリガ形式のスイッチレバー4の操作によって自動的にアンロック位置に戻す構成とすることができる。
次に、本実施形態の電動工具1では、変速装置Hが自動変速モードに切り換えられた状態で、高速低トルクモードから低速高トルクモードに切り換わる際に発生する反動(機軸J回りの振り回し力)によって使用者がハンドル部3を把持した当該電動工具1が機軸J回りに振られないようにするための工夫がなされている。図1に示すように本実施形態では、18V電源タイプのバッテリパック5(質量M=0.6kg)が用いられており、このバッテリパック5の重心Gの機軸Jからの距離Lが195mmに設定されている。このため、当該電動工具1を機軸J回りに回転させるために必要な慣性モーメントI(kg・mm2)は、
2×M=(195mm)2×0.6kg=約23,000(kg・mm2
この点、自動変速装置を備えた従来の電動工具では、バッテリパックの重心の機軸からの距離が比較的短かったため、変速時に発生する機軸J回りの反動に比して慣性モーメントIが小さく設定されていた。このため、自動変速により動作モードが高速低トルクモードから低速高トルクモードに切り換わると、これにより発生する振り回し力により電動工具が機軸J回りに振られやすく、その結果ハンドル部を把持しが使用者が当該電動工具1を振られないように大きな力で保持しておかなければならず、この点で使い勝手が悪い問題があった。
本実施形態に係る電動工具1によれば、機軸J(スピンドル11の回転中心)から従来よりも離れた位置にバッテリパック5の重心Gが位置するように設定されて、機軸J回りの慣性モーメントIが従来よりも大きく設定されているので、自動変速により発生する機軸J回りの反動によっては振り回されにくくなり、従って使用者は従来よりも小さな力でハンドル部3を把持しておけば当該電動工具1の位置を楽に保持しておく(機軸J回りに振られることなく静止させておく)ことができ、この点で使い勝手が従来よりも向上している。
このトルク変動に対する振り回し防止の効果は、機軸Jからバッテリパック5の重心Gまでの距離Lが大きいほど高くなり、またバッテリパック5の質量Mが大きくなるほど高くなる。
なお、18Vバッテリでは慣性モーメントIが約20,000(kg・mm2)程度であるが、例えば24Vバッテリであれば慣性モーメントIを約40,000(kg・mm2)程度に設定することができる。
以上のように構成した本実施形態の電動工具1によれば、変速装置Hを構成する第1〜第3段遊星歯車機構20,30,40のうち、第2段遊星歯車機構20における第2段インターナルギヤ34が機軸J方向の回転許容位置と回転規制位置との間を移動することによって減速比を二段階で切り換え、これにより高速低トルク出力状態(高速低トルクモード)と低速高トルク出力状態(低速高トルクモード)とに切り換えることができる。本実施形態では、高速低トルクモードでの出力回転数が約2,000rpmとされ、低速高トルクモードでの出力回転数が約400rpmとされて、その比率が5対1(約5倍)に設定されている。高速低トルクモードでの出力回転数(2,000rpm)による出力トルクでは、ねじ締め抵抗が徐々に大きくなるため最後までねじ締めを進行させることができないトルクとなっている。しかし、自動変速モードにしておくことにより、ねじ締めの進行に伴って出力モードが高速低トルクモードから低速高トルクモードに自動的に切り換わる。この低速高トルクモードでの出力回転数(400rpm)により、十分に大きな出力トルクが出力されるためねじ締めは最後まで進行して、ねじは強固に締め付けられる。
このように、自動変速前の出力回転数を自動変速後の出力回転数の約5倍程度に設定することにより、ねじ締め等の加工の初期段階では、ねじ締めを最後まで進行させるためには不足する出力トルクで、従来にない極めて高速回転により加工を迅速に進行させ、ねじ締めの途中の段階で自動変速させて大きなトルクを出力するモードに切り換えることにより、ねじ締めを確実に行うことができる。このことから、ねじ締め等の加工を従来よりも高速化することができる。
この構成の電動工具1は、例えば先端部に下穴用のドリル刃を備えた特殊用途のねじ(いわゆる商品名テクスねじ)の締め付け作業に好適に用いることができる。このねじの締め付け作業の場合、小さな出力トルクで足りる下穴明けを高速低トルクモードで迅速に行い、その後自動変速して低速高トルクモードで引き続いてねじの締め付けを行うことができ、用途に応じて2段階の出力トルクを高速かつ連続して出力することができる。
しかも、本実施形態の電動工具1によれば、機軸Jからバッテリパック5の重心Gまでの距離Lの二乗とバッテリパック5の質量Mとの積で表される慣性モーメントIが、高速低トルクモードから低速高トルクモードに自動変速した場合に発生する機軸J回りの反動よりも大きくなるように、距離Lと質量Mが設定されている。このため、自動変速時に発生する反動によっては当該電動工具1が機軸J回りに回転しない(振り回されない)ようになっている。これにより、使用者はハンドル部3をそのままの力で把持した状態で自動変速させて当該電動工具1を用いることができ、この点で当該電動工具1の操作性(使い勝手)を高めることができる。この自動変速時における当該電動工具1の安定性の向上は、従来にない大きな倍率(4.5倍〜6.0倍)で出力回転数が自動変速され、その結果自動変速時に従来よりも大きな反動が発生することが想定される場合に、使用者にとって不意に大きな反動が手に加わることを防止若しくは抑制できる点で特に有意義な作用効果となる。
以上説明した実施形態には、種々変更を加えることができる。例えば、高速低トルクモードでの出力回転数を約2,000rpmとし、低速高トルクモードでの出力回転数を約400rpmとして、その倍率を5倍程度にした構成を例示したが、係る出力回転数の比率は、4.5倍〜6.0倍程度の範囲で任意に設定することができ、係る範囲内の倍率であれば同様の作用効果を得ることができる。
また、機軸Jからバッテリパック5の重心Gまでの距離Lを195mm、バッテリパック5の質量Mを0.6kgとする構成を例示したが、これら寸法についてはその他様々な態様で実施することができる。
さらに、電動工具1としてドライバドリルを例示したが、穴明け専用の電動ドライバあるいは電動ねじ締め機との単能機に適用することもできる。さらに、電動工具は例示した充電式バッテリを電源とするものの他、交流電源を電源とするものであってもよい。
本実施形態の電動工具の全体の縦断面図である。本図は、変速装置の初期状態を示している。 本実施形態に係る変速装置の拡大図である。本図は、変速装置の初期状態であって自動変速モードにおける高速低トルク出力状態を示している。 自動変速モード位置に切り換えた状態のモード切り換えリングの側面図である。本図は、高速低トルク出力状態を示している。 本実施形態に係る変速装置の拡大図である。本図は、自動変速モードにおける低速高トルク出力状態を示している。 自動変速モード位置に切り換えた状態のモード切り換えリングの側面図である。本図は、低速高トルク出力状態を示している。 本実施形態に係る変速装置の拡大図である。本図は、高速固定モードに切り換えた状態を示している。 高速固定モード位置に切り換えた状態のモード切り換えリングの側面図である。 本実施形態に係る変速装置の拡大図である。本図は、低速固定モードに切り換えた状態を示している。 低速固定モード位置に切り換えた状態のモード切り換えリングの側面図である。 本実施形態に係る変速装置の各動作モードを一覧表で表した図である。 モードロック機構の拡大図である。本図は、モードロック機構のアンロック状態を示している。 モードロック機構の拡大図である。本図は、モードロック機構のロック状態を示している。本図では、第2段インターナルギヤが回転規制位置にロックされた状態が示されている。
符号の説明
1…電動工具
2…本体部、2a…本体ハウジング、2b…挿通溝孔、2c…保持孔
J…機軸(スピンドルの回転軸)
3…ハンドル部、3a…ハンドルハウジング
4…スイッチレバー
5…バッテリパック、G…重心、M…質量
10…電動モータ、10a…出力軸
11…スピンドル
12…チャック
13,14…軸受け
H…変速装置
20…第1段遊星歯車機構
21…第1段太陽ギヤ
22…第1段遊星ギヤ
23…第1段キャリア、23a…クラッチ歯
24…第1段インターナルギヤ
30…第2段遊星歯車機構
31…第2段太陽ギヤ
32…第2段遊星ギヤ
33…第2段キャリア
34…第2段インターナルギヤ
34a…クラッチ歯、34b…フランジ部、34c…係合溝部、34d…係合壁部
35…圧縮ばね
36…押圧板
37…転動板
38…鋼球
39…モード切り換え部材
40…第3段遊星歯車機構
41…第3段太陽ギヤ
42…第3段遊星ギヤ
43…第3段キャリア
44…第3段インターナルギヤ
50…モード切り換えリング、50a…ツマミ部
51…切り換え溝部
51b…後側溝部(高速固定モード用)
51c…前側溝部(高トルク固定モード用)
51d…中間溝部(自動変速モード用)
60…モードロック機構
61…係合球
62…ロックリング、62a…カム面
63…捩りコイルばね
L…機軸Jからバッテリパックの重心までの距離

Claims (4)

  1. 駆動源として電動モータと該電動モータの回転動力を減速してスピンドルに出力するための変速装置を内蔵した電動工具であって、
    前記変速装置は、前記スピンドルに付加される外部トルクの増大に伴って、高速低トルクを出力する高速低トルクモードから低速高トルクを出力する低速高トルクモードに自動的に切り換わる自動変速モードを備えており、前記高速低トルクモードにおける出力回転数が前記低速高トルクモードにおける出力回転数の4.5〜6.0倍に設定されており、かつ前記自動変速モードにより前記高速低トルクモードから自動的に切り換わった前記低速高トルクモードがモードロック機構により保持される構成とした電動工具。
  2. 請求項1記載の電動工具であって、前記変速装置は、前記電動モータから前記スピンドルに至る動力伝達経路の上流側の第1段遊星歯車機構と、下流側の第2段遊星歯車機構と、該第2段遊星歯車機構のインターナルギヤの軸回りの回転を規制するインターナル規制部材を備え、前記インターナルギヤの回転が許容されて前記スピンドルに高速低トルクが出力され、前記インターナルギヤの回転が前記インターナル規制部材により規制されて前記スピンドルに低速高トルクが出力される構成とした電動工具。
  3. 請求項1又は2記載の電動工具であって、前記高速低トルクモードの出力回転数が2,000rpmに設定され、前記低速高トルクモードの出力回転数が400rpmに設定された電動工具。
  4. 請求項1又は2記載の電動工具であって、前記電動モータと前記変速装置を内蔵した工具本体部と、該工具本体部から側方へ突き出す状態に設けられたハンドル部を備え、該ハンドル部の先端に電源としてのバッテリパックを装着可能であり、前記変速装置において前記高速低トルクモードから前記低速高トルクモードに切り換わることにより発生する機軸J回りの反動よりも、該機軸J回りの慣性モーメントIの方が大きくなるように前記機軸Jから前記バッテリパックの重心Gまでの距離Lと、該バッテリパックの質量Mを設定した電動工具。
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