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JP5499560B2 - 成形性と耐ねじり疲労特性に優れた自動車足回り部材用高張力鋼材及びその製造方法 - Google Patents

成形性と耐ねじり疲労特性に優れた自動車足回り部材用高張力鋼材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高強度で、優れた加工性と優れた耐ねじり疲労特性とが要求されるトーションビーム、アクスルビーム、トレーリングアーム、サスペンションアームなどの自動車構造部材用として好適な、高張力鋼材に係り、とくに成形性、断面成形加工後の耐ねじり疲労特性の改善に関する。なお、ここでいう「高張力鋼材」とは、引張強さ:690MPa以上の鋼材をいうものとする。また、ここでいう「鋼材」は、鋼板および鋼管をいい、「鋼板」は鋼板および鋼帯を含むものとする。
近年の地球環境の保全という観点から、自動車の燃費向上が強く求められている。そのため、自動車等の車体の徹底した軽量化が指向されている。自動車等の構造部材についても例外ではなく、軽量化と安全性との両立を図るために、一部の構造部材では、高強度化された電縫鋼管が採用されつつある。従来では、素材(電縫鋼管)を所定の形状に成形した後、焼入れ処理等の調質処理を施して、部材の高強度化が図られていた。しかし、調質処理を採用すると工程が複雑になり、部材の製造期間が長期化するうえ、部材製造コストの高騰を招くという問題がある。
このような問題に対し、例えば特許文献1には、自動車等の構造部材用超高張力電縫鋼管の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術は、C、Si、Mn、P、S、Al、Nを適正量に調整したうえ、B:0.0003〜0.003%を含み、さらにMo、Ti、Nb、Vのうちの1種以上を含有する組成の鋼素材に、950℃以下Ar変態点以上で仕上圧延を終了し、250℃以下で巻取る熱間圧延を施し管用鋼帯とし、該管用鋼帯を造管して電縫鋼管としたのち、500〜650℃で時効処理を施す、電縫鋼管の製造方法である。この技術によれば、Bの変態組織強化とMo,Ti,Nb等の析出硬化により、調質処理を施すことなく、1000MPaを超える超高張力鋼管を得ることができるとしている。
また、特許文献2には、自動車のドアインパクトビーム用及びスタビライザー用として好適な、引張強さ:1470N/mm以上の高強度とかつ高延性を有する電縫鋼管の製造方法が記載されている。特許文献2に記載された技術は、C:0.18〜0.28%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.60〜1.80%を含み、P、Sを適正範囲に調整したうえ、Ti:0.020〜0.050%、B:0.0005〜0.0050%を含有し、さらにCr、MoおよびNbのうちの1種以上を含有する組成の素材鋼からなる鋼板を用いて製造した電縫鋼管に850〜950℃でノルマ処理を施し、さらに、焼入れ処理を施す、電縫鋼管の製造方法である。この技術によれば、1470N/mm以上の高強度と、10〜18%程度の延性を有する電縫鋼管が得られ、自動車のドアインパクトビーム用及びスタビライザー用として好適であるとしている。
特許第2588648号公報 特許第2814882号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術で製造された電縫鋼管は、伸びElが14%以下と低延性であるため成形性に劣り、プレス成形あるいはハイドロフォーム成形を伴うトーションビーム、アクスルビーム、トレーリングアーム、サスペンションアーム等の自動車構造部材用としては不適であるという問題があった。
一方、特許文献2に記載された技術で製造された電縫鋼管は、伸びElが高々18%であり、曲げ加工により成形されるスタビライザー用としては好適であるが、プレス成形あるいはハイドロフォーム成形を伴う部材用としては、延性が不足し、プレス成形あるいはハイドロフォーム成形を伴うトーションビーム、アクスルビーム等の自動車構造部材用としては不適であるという問題があった。また、特許文献2に記載された技術では、ノルマ処理および焼入れ処理を必要とし、工程が複雑であり、寸法精度、経済性という観点からも問題を残していた。
本発明は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、とくに、トーションビーム、アクスルビーム、トレーリングアーム、サスペンションアームなどの、自動車構造部材用として好適な、引張強さTS:690MPa以上を有し、成形性、および断面成形加工後の、耐疲労特性、とくに耐ねじり疲労特性に優れた高張力鋼材およびその製造方法を提供することを目的とする。
なお、本発明でいう、「優れた成形性」とはJIS12号試験片を用いた引張試験での伸びElが17%以上(JIS11号試験片では25%以上)であり、かつ、JIS Z 2248−1996規定の曲げ試験において、限界曲げ内側半径rと肉厚tの比、r/tが2.50以下である場合をいうものとする。
また、本発明でいう「断面成形加工後の優れた耐ねじり疲労特性」とは、図1(特開2001−321846号公報の図11)に示すように、鋼管の長手中央部分をV字形状に断面を成形加工したのち、両端部をチャッキングにより固定してねじり疲労試験を、1Hz、両振りの条件で行い5×10繰返し疲れ限度σを求め、得られた5×10繰返し疲れ限度σと鋼管引張強さTSとの比、(σ/TS)が0.70以上である場合をいうものとする。
本発明者らは、強度、成形性、断面成形後のねじり疲労特性という、相反する特性を高度なレベルで両立させた鋼材を安定して製造するために、これら特性に影響する各種要因、とくに鋼材の組成、製造条件について系統的な検討を鋭意実施した。その結果、まず、本発明者らは、耐ねじり疲労特性の向上のためには、鋼板表層に微細な析出物(粒径:1.0〜20nm程度)を析出させることが重要であることに想到した。
一般に、熱間圧延工程では、上下ロ−ルによる付加的剪断歪、あるいはロールや冷却水による抜熱等により、粗圧延工程、仕上圧延工程、或いはその間の工程で、特に熱延鋼板の表裏面近傍で歪誘起析出が起り易い。しかし、仕上圧延工程以前、例えば粗圧延工程で析出した析出物は、数十〜数百nmと粗大化している。このような粗大な析出物は疲労強度向上への寄与が小さい。仕上圧延工程より前で、熱延鋼板の表裏面近傍に、このような粗大な析出物が優先的に析出すると、仕上圧延工程より後の工程(例えば、ランナウト冷却中、或いはコイル巻取り後)では、微細な析出物の析出が少なくなる。このため、表層部の引張強さ、疲労強度が相対的に低下し、表裏面部を起点とする疲労亀裂が発生しやすくなり、疲労強度が低下すると考えた。
そこで、熱間圧延工程での加工歪による歪誘起析出を起こしにくい析出強化元素を選択すれば、上記したような疲労強度の低下が抑制できることに思い至った。そのような元素として、Vに着目し、Vを必須含有する特定範囲の組成を有する鋼素材を使用することに思い至った。そして、Vを必須含有する特定範囲の組成を有する鋼素材に、特定条件の熱間圧延を施して得られた鋼板を用いて、管形状に造管することにより、高強度で、優れた成形性と、断面成形加工後の優れた耐ねじり疲労特性とを同時に満足する高強度鋼管が製造できることを知見した。
本発明は、上記したような知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は、次の通りである。
(1)質量%で、C:0.08〜0.24%、V:0.044%超え0.109%以下を含み、さらにNb:0.001〜0.15%、Ti:0.001〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種を含有し、さらに、Si:0.002〜0.95%、Mn:1.09〜1.99%、Al:0.01〜0.08%を含有し、不純物元素であるP、S、N、Oを、P:0.019%以下、 S:0.010%以下、N:0.008%以下、 O:0.003%以下に調整し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、さらに、表面から肉厚方向に50μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μmまでの領域が、フェライト相を主相とし、該主相であるフェライト相以外の第二相が体積%で15%以下で、前記フェライト相が、圧延方向に直交する方向の断面で平均結晶粒径:1.0〜8.0μmのフェライト相であり、該フェライト相中には平均粒径で1.0〜20 nmのV炭化物が析出してなる組織を有し、表面から肉厚方向に50μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μmまでの領域の平均硬さHV0〜50と、表面から肉厚方向に50μm超え200μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μm超え200μmまでの領域の平均硬さHV50〜200との差ΔHVが25ポイント以下、表面から肉厚方向に50μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μmまでの領域の硬さの標準偏差ΔHVσが15ポイント以下であることを特徴とする成形性と耐ねじり疲労特性に優れた自動車足回り部材用高張力鋼材。
)()において、前記組成に加えてさらに、質量%で、W:0.001〜0.15%、Cr:0.001〜0.45%、Cu:0.001〜0.45%、Ni:0.001〜0.45%、B:0.0001〜0.0009%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする自動車足回り部材用高張力鋼材。
)()または()において、前記組成に加えてさらに、Ca:0.0001〜0.005%を含有する組成とすることを特徴とする自動車足回り部材用高張力鋼材。
)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記鋼材が、鋼板または鋼管である自動車足回り部材用高張力鋼材。
)質量%で、C:0.08〜0.24%、V:0.044%超え0.109%以下を含み、さらにNb:0.001〜0.15%、Ti:0.001〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種を含有し、さらに、Si:0.002〜0.95%、Mn:1.09〜1.99%、Al:0.01〜0.08%を含有し、不純物元素であるP、S、N、Oを、P:0.019%以下、 S:0.010%以下、N:0.008%以下、 O:0.003%以下に調整し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、少なくとも熱間圧延工程を施し高張力熱延鋼板とするにあたり、前記熱間圧延工程における仕上圧延終了温度FDTを、次(1)式
log[V][C]=−9500/T+6.72 ‥‥(1)
ここで、V、C:各元素の含有量(質量%)
から計算される平衡固溶温度T (K)より高い温度とし、前記高張力熱延鋼板を、表面から肉厚方向に50μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μmまでの領域が、フェライト相を主相とし、該主相であるフェライト相以外の第二相が体積%で15%以下で、前記フェライト相が、圧延方向に直交する方向の断面で平均結晶粒径:1.0〜8.0μmのフェライト相であり、該フェライト相中には平均粒径で1.0〜20 nmのV炭化物が析出してなる組織を有し、表面から肉厚方向に50μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μmまでの領域の平均硬さHV 0〜50 と、表面から肉厚方向に50μm超え200μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μm超え200μmまでの領域の平均硬さHV 50〜200 との差ΔHVが25ポイント以下、表面から肉厚方向に50μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μmまでの領域の硬さの標準偏差ΔHV σ が15ポイント以下である鋼板とすることを特徴とする成形性と耐ねじり疲労特性に優れた自動車足回り部材用高張力熱延鋼板の製造方法。
)()において、前記鋼素材を加熱し、次(1)式
log[V][C]=−9500/T+6.72 ‥‥(1)
(ここで、V、C:各元素の含有量(質量%))
から計算されるVの平衡固溶温度T(K)、次(2)式
log[Nb][C+12/14N]=−6770/TNb+2.26 ‥‥(2)
(ここで、Nb、C、N:各元素の含有量(質量%))
から計算されるNbの平衡固溶温度TNb(K)、次(3)式
log[Ti][C]=−7000/TTi+2.75 ‥‥(3)
(ここで、Ti、C:各元素の含有量(質量%))
から計算されるTiの平衡固溶温度TTi(K)、のいずれの温度より50 K以上高い温度で、抽出して、前記熱間圧延工程を施すことを特徴とする自動車足回り部材用高張力熱延鋼板の製造方法。
)(5)または(6)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、W:0.001〜0.15%、Cr:0.001〜0.45%、Cu:0.001〜0.45%、Ni:0.001〜0.45%、B:0.0001〜0.0009%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする自動車足回り部材用高張力熱延鋼板の製造方法。
)(5)ないし(7)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、Ca:0.0001〜0.005%を含有する組成とすることを特徴とする自動車足回り部材用高張力熱延鋼板の製造方法。
)鋼管用素材として、(5)ないし(8)のいずれかに記載の製造方法で製造された高張力熱延鋼板を用い、該鋼管用素材に造管工程、溶接工程を施して溶接鋼管とすることを特徴とする自動車足回り部材用高張力鋼管の製造方法。
10))において、前記鋼管用素材が、(5)ないし(8)のいずれかに記載の製造方法で製造された高張力熱延鋼板に冷間圧延、焼鈍を施してなる高張力冷延焼鈍鋼板、または、該高張力熱延鋼板または該高張力冷延焼鈍鋼板に表面処理を施してなる表面処理鋼板であることを特徴とする自動車足回り部材用高張力鋼管の製造方法。
本発明によれば、690MPa以上の引張強さを有し、優れた成形性と、断面成形加工後の優れた耐ねじり疲労特性とを有する高張力鋼管を安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、自動車構造部材の特性向上に顕著に寄与するという効果もある。
実施例におけるねじり疲労試験に用いる試験材の断面成形加工状態を示す説明図である。 断面成形加工後の5×104繰返し疲れ限度σと鋼管強度TSとの比(σ/TS)に及ぼす、管最表裏層におけるフェライト相の円周方向断面での平均結晶粒径と、管最表裏層におけるフェライト相中のV炭化物平均粒径との関係の影響を示すグラフである。 限界r/t比に及ぼす、管最表裏層におけるフェライト相の円周方向断面における平均結晶粒径と管最表裏層におけるフェライト相中のV炭化物平均粒径との関係の影響を示すグラフである。 断面成形加工後の5×104繰返し疲れ限度σと鋼管強度TSとの比(σ/TS)と、管最表裏層における平均硬さHV0〜50と、管表裏面から肉厚方向に50μm超え200μmまでの領域の平均硬さHV50〜200との差ΔHVと、の関係を示すグラフである。 断面成形加工後の5×104繰返し疲れ限度σと鋼管強度TSとの比(σ/TS)に及ぼす、管最表裏層における硬さの標準偏差ΔHVσとの関係を示すグラフである。
まず、本発明高張力鋼材の組成限定理由について説明する。以下、とくに断らない限り、質量%は単に%で記す。
本発明高張力鋼材は、C:0.08〜0.24%、V:0.044%超え0.109%以下を含み、さらにNbおよび/またはTiを含有する組成を有する鋼材である。なお、詳しくは、C:0.08〜0.24%、V:0.044%超え0.109%以下を含み、さらに、Nb:0.001〜0.15%、Ti:0.001〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種を含有し、さらに、Si:0.002〜0.95%、Mn:1.09〜1.99%、Al:0.01〜0.08%を含有し、不純物元素であるP、S、N、Oを、P:0.019%以下、S:0.010%以下、N:0.008%以下、O:0.003%以下に調整し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とする。
C:0.08〜0.24%
Cは、鋼中に固溶し固溶強化により、あるいは炭化物形成元素であるVと結合し析出強化により,鋼の強度を増加させる元素であり、鋼材強度、さらには、表層部に微細析出物を析出させ、疲労強度を向上させる。このような効果は、0.08%以上の含有で認められる。0.08%未満の含有では所望の析出物量が得られず、所望の耐ねじり疲労特性を確保することができない。一方、0.24%を超える含有は、鋼材の延性が低下し所望の曲げ限界r/tが確保できず、所望の成形性を確保できなくなる。このためCは0.08〜0.24%の範囲に限定した
V:0.044%超え0.109%以下
Vは、鋼(マトリックス)中に固溶し固溶強化により、さらに、Cと結合し炭化物を形成し析出強化により、また、焼入れ性を向上させて変態強化により、鋼の強度を増加させるとともに、疲労強度を著しく向上させる元素である。Vは、とくに、他の析出強化型元素に比べて平衡固溶温度が低く、熱間圧延工程での加工歪により、歪誘起析出が起きにくいという固有の特徴を有し、とくに所望の硬さ分布を確保し、所望の疲労強度を有する鋼板(鋼材)とするために必須の元素である。本発明では所望の高強度、さらには所望の疲労強度を確保するために、0.044%超えの含有を必要とする。一方、0.109%を超える含有は、強度が増加しすぎ、それに伴うElの低下が大きく、所望の延性を確保できなくなり、曲げ成形性の低下が顕著となる。このようなことから、Vは0.044%超え0.109%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは0.057%〜0.075%である。
Nb:0.001〜0.15%、Ti:0.001〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種
Nb、Tiはいずれも、熱間圧延工程における回復・再結晶による粒成長を抑制する作用を有する元素であり、選択して1種または2種を含有する。
Nbは、Cと結合し炭化物として析出し、熱間圧延工程での回復・再結晶の粒成長を抑制する作用を有し、所望の微細なフェライト相(平均粒径:1.0〜8.0μm)を確保するために寄与する。また、Nbは、Vとの複合析出物(複合炭化物)として析出し析出強化により、Vによる疲労強度向上効果を助長する底上げ効果を有し、所望の鋼板表層近傍硬さの確保に寄与する。このような効果は、0.001%以上の含有で顕著となる。一方、0.15%を超える含有は、析出物(炭化物)による強度上昇、および延性低下が顕著となる。このため、含有する場合には、Nbは0.001〜0.15%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.010〜0.045%である。
Tiは、Nbと同様に、炭窒化物として析出し、熱間圧延工程での回復・再結晶の粒成長を抑制する作用を有し、所望の微細なフェライト相(平均粒径:1.0〜8.0μm)を確保するために寄与する。また、Tiは、Vとの複合析出物(複合炭化物)として析出し析出強化により、Vによる疲労強度向上効果を助長する底上げ効果を有し、所望の鋼板表層近傍硬さの確保に寄与する。このような効果は、0.001%以上の含有で顕著となる。一方、0.15%を超える含有は、析出物による強度上昇、および延性低下が顕著となる。このため、含有する場合には、Tiは0.001〜0.15%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.005〜0.034%である。
Si:0.002〜0.95%
Siは、フェライト形成元素であり、熱間圧延工程でのフェライト変態を促進する元素であり、必要な成形性の確保のために有用な元素である。このような効果は、0.002%以上の含有で認められるが、0.95%を超える含有は、表面性状、電縫溶接性が劣化する。このため、Siは0.002〜0.95%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは0.10〜0.30%である。
Mn:1.09〜1.99%
Mnは、鋼材の強度増加に寄与するとともに、疲労強度を向上させる作用を有する元素である。このような効果は、1.09%以上の含有で発現する。一方、1.99%を超える含有は、フェライト変態が抑制され延性の低下が著しくなり、所望の成形性を確保できなくなる。このため、Mnは1.09〜1.99%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは1.20〜1.80%である。
Al:0.01〜0.08%
Alは、製鋼時の脱酸剤として作用するとともに、Nと結合し熱延工程でのオーステナイト粒の成長を抑制し、結晶粒を微細化し、所望の微細なフェライト相(平均粒径:1.0〜8.0μm)の確保に寄与する。このような効果は、0.01%以上の含有で認められるようになる。一方、0.08%を超える含有は、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となるうえ、かえって酸化物系介在物の増大に繋がり、耐疲労特性の低下が著しくなる。このため、Alは0.01〜0.08%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは、0.02〜0.06%である。
なお、本発明では、不純物元素である、P、S、N、Oを、P:0.019%以下、S:0.010%以下、N:0.008%以下、O:0.003%以下に調整して含むことが好ましい。
P:0.019%以下
Pは、Mnとの凝固共偏析を介し、低温靭性を低下させるとともに、電縫溶接性を低下させる悪影響を有する元素であり、できるだけ低減することが好ましい。0.019%を超えて含有すると、上記した悪影響が顕著となるため、Pは0.019%以下に限定した。
S:0.010%以下
Sは、鋼中ではMnS等の介在物として存在し、成形時の微細割れや疲労亀裂の起点として、成形性、耐疲労特性を低下させる。また、Sは、鋼材の電縫溶接性、低温靭性等を低下させる悪影響を有する元素であり、できるだけ低減することが好ましい。0.010%を超えて含有すると、上記した悪影響が顕著となるため、Sは0.010%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.005%以下である。
N:0.008%以下
Nは、鋼中に固溶Nとして残存すると、鋼管の成形性、低温靭性を低下させる悪影響を有する元素であり、本発明ではできるだけ低減することが好ましい。0.008%を超えて含有すると、上記した悪影響が顕著となるため、Nは0.008%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0049%以下である。
O:0.003%以下
Oは、鋼中では酸化物系介在物として存在し、鋼材の耐疲労特性、低温靭性を低下させる悪影響を有する元素であり、本発明ではできるだけ低減することが好ましい。0.003%を超えて含有すると、上記した悪影響が顕著となるため、Oは0.003%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.002%以下である。
上記した成分に加えてさらに、選択元素として、W:0.001〜0.15%、Cr:0.001〜0.45%、Cu:0.001〜0.45%、Ni:0.001〜0.45%、B:0.0001〜0.0009%
のうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、Ca:0.0001〜0.005%を含有することができる。
W、Cr、Cu、Ni、Bはいずれも、疲労強度を向上させる効果を補完する作用を有する元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上を含有できる。
W:0.001〜0.15%
Wは、炭化物として析出し、所望の表層近傍の硬さを確保し、Vの疲労強度を向上させる効果を補完する作用を有する元素である。このような効果は0.001%以上の含有で発現するが、0.15%を超える含有は、成形性、低温靭性を低下させる。このため、含有する場合には、Wは0.001〜0.15%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.06%以下である。
Cr:0.001〜0.45%
Crは、Mnの疲労強度を向上させる効果を補完する作用を有する元素であり、かつ表層近傍の析出物の粗大化、フェライト粒の粗大化の抑制に有効に作用し、疲労強度の向上に寄与する。このような効果は0.001%以上の含有で発現するが、0.45%を超える含有は、成形性を低下させる。このため、含有する場合には、Crは0.001〜0.45%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.08〜0.29%である。
Cu:0.001〜0.45%
Cuは、Mnの疲労強度を向上させる効果を補完する作用を有する元素であると同時に、鋼材の耐食性を向上させる作用を有する。このような効果は0.001%以上の含有で認められるが、0.45%を超える含有は、成形性を低下させる。このため、含有する場合には、Cuは0.001〜0.45%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは0.2%以下である。
Ni:0.001〜0.45%
Niは、Mnの疲労強度を向上させる効果を補完する作用を有すると同時に、鋼材の耐食性を向上させる作用を有する元素である。このような効果は0.001%以上の含有で認められるが、0.45%を超える含有は、成形性を低下させる。このため、含有する場合には、Niは、0.001〜0.45%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは0.2%以下である。
B:0.0001〜0.0009%
Bは、Mnの疲労強度を向上させる効果を補完する作用を有する元素である。このような効果は、0.0001%以上の含有で発現するが、0.0009%を超える含有は、成形性を低下させる。このため、含有する場合には、Bは0.0001〜0.0009%の範囲に限定することが好ましい。
Ca:0.0001〜0.005%
Caは、展伸した介在物(MnS)を粒状の介在物(Ca(Al)S(O))とする、いわゆる介在物の形態を制御する作用を有する。このような介在物の形態制御を介して、成形時の微細割れおよび疲労亀裂発生を抑制し、成形性、耐疲労特性を向上させる作用を有する元素である。このような効果は、0.0001%以上の含有で顕著となるが、0.005%を超える含有は、非金属介在物が増加しかえって耐疲労特性が低下する。このため、含有する場合には、Caは0.0001〜0.005%の範囲に限定することが好ましい。
なお、上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
つぎに、本発明高張力鋼材の組織限定理由について説明する。
本発明高張力鋼材は、表面および裏面から、すなわち鋼管の場合には管外面および管内面、鋼板の場合には板表面および板裏面から、それぞれ肉厚方向に50μmまでの領域(最表裏層)のフェライト相が、鋼管では円周方向断面で、鋼板の場合には圧延方向に直交する方向の断面(C方向断面)で、平均結晶粒径:1.0〜8.0μmのフェライト相であり、該フェライト相中には平均粒径で1.0〜20 nmのV炭化物が析出してなる組織を有する。すなわち、本発明高張力鋼材では、最表裏層の組織を、微細なV炭化物が析出した微細なフェライト相を主相とする組織とする。なお、ここでいう「フェライト相」は、ポリゴナルフェライト、アシキュラーフェライト、ウィッドマンステッテンフェライト、ベイニティックフェライト、ベイナイトを含むものとする。主相であるフェライト相以外の第二相としては、カーバイド、パーライト、マルテンサイトおよびそれらの混合物が挙げられる。なお、第二相の組織分率(体積%)は、合計で15%以下とする
最表裏層では、主相であるフェライト相は、鋼板では圧延方向と直交する方向の断面(C方向断面)、鋼管では円周方向断面での平均結晶粒径が1.0〜8.0μmの微細なフェライト相とする。
フェライト相の平均結晶粒径が1.0μm未満では、降伏強さが高くなるため、所望の成形性が確保できないうえ、局所的な減肉、表面肌荒れ、微細割れ等が発生しやすくなり、それらが応力集中部となり耐疲労特性が大きく低下する。一方、フェライト相の平均粒径が8.0μmを超えると、成形性が低下するとともに、表面硬さが低下し耐疲労特性が低下する。このため、最表裏層におけるフェライト相の平均結晶粒径を、圧延方向と直交する方向(円周方向)の断面で1.0〜8.0μmの範囲に限定した。なお、好ましくは1.5〜4.0μmである。
そして、上記した微細なフェライト相は、該相中に平均粒径で1.0〜20 nmのV炭化物が析出したフェライトとする。最表裏層のフェライト相に析出したV炭化物の大きさは、所望の表面硬さ、所望の高い疲労強度を確保するとともに、所望の成形性を確保するために重要な素材パラメータである。
V炭化物の大きさが平均粒径で1.0nm未満では、降伏強さが高くなるため、所望の成形性が確保できないうえ、局所的な減肉、表面肌荒れ、微細割れが生じ、応力集中部となり、所望の耐疲労特性を確保できなくなる。一方、V炭化物の大きさが平均粒径で20 nmを超えると、最表裏層の平均硬さとその内側の肉厚方向に50μm超え200μmまでの領域の平均硬さとの硬さ差が大きくなり、また最表裏層の硬さの標準偏差が大きくなり、所望の疲労強度を確保できなくなる。さらに硬さ偏差の増大に伴い、曲げ成形時に局部に歪が集中することにより、曲げ成形性が劣化し、所望の限界r/t比を確保できなくなる。このようなことから、最表裏層のフェライト相中に析出するV炭化物の平均粒径は1.0〜20 nmの範囲に限定した。なお、好ましくは2.0〜15 nmである。
なお、最表裏層のフェライト相中に析出したV炭化物の平均粒径の測定方法は、つぎのとおりとした。
鋼管の管外面(鋼板の表面)または管内面(鋼板の裏面)から肉厚方向に50μmまでの領域(最表裏層)から板面方向(板面に平行な方向)を法線方向とする薄膜サンプルを作製し、透過型電子顕微鏡(倍率:100000倍)で5視野以上観察し、EDS分析により、Vを含まないセメンタイト、TiNなどを同定し除外し、Vを含有する炭化物について、それぞれの面積を求め、円相当径を算出し、それらの平均をその鋼材におけるV炭化物の平均粒径とした。なお、Vの単独炭化物に加え、Vを50質量%以上含む複合炭化物もV炭化物としてカウントした。
図2に、断面成形後のねじり疲労試験における5×104繰返し疲れ限度と鋼管強度TSとの比(σ/TS)に及ぼす、管最表裏層のフェライト相の円周方向断面における平均結晶粒径と、管最表裏層のフェライト相中のV炭化物の平均粒径との関係の影響を示す。図2から、管最表裏層のフェライト相の円周方向断面における平均結晶粒径が1.0〜8.0μmの範囲で、かつ管最表裏層のフェライト相中に析出したV炭化物の平均粒径が1.0〜20 nmの範囲を満足する場合に、(σ/TS)が0.70以上となることがわかる。
また、図3に、曲げ試験における限界r/t比に及ぼす、管最表裏層のフェライト相の円周方向断面における平均結晶粒径と、管最表裏層のフェライト相中のV炭化物の平均粒径との関係の影響を示す。
図3から、管最表裏層のフェライト相の円周方向断面における平均結晶粒径が1.0〜8.0μmの範囲で、かつ管最表裏層のフェライト相中に析出したV炭化物の平均粒径が1.0〜20 nmの範囲を満足する場合に、限界r/t比が2.50以下となることがわかる。
また、上記したような組成を含み、上記した組織を有する鋼材とすることにより、鋼板の表面および裏面(鋼管では外面および内面)から肉厚方向に50μmまでの領域(最表裏層)の平均硬さHV0〜50と、表面および裏面から肉厚方向に50μm超え200μmまでの領域の平均硬さHV50〜200との差ΔHVが25ポイント以下、最表裏層の硬さの標準偏差ΔHVσが15ポイント以下である鋼材となる。
なお、各領域の平均硬さは、各領域を肉厚方向に3ブロック(計6ブロック)に分け、各ブロックで10点(管円周方向に中心位置で)、ビッカース硬さ計(荷重:0.025kgf、試験力:0.245N)で硬さHV0.025を測定し、得られた計60点の測定結果を算術平均し、各領域の平均硬さとした。ここでいう各領域とは、最表層(表面/外面から肉厚方向に50μmまでの領域)、最裏層(裏面/内面から肉厚方向に50μmまでの領域)、表面/外面から肉厚方向に50μm超え200μmまでの領域、裏面/内面から肉厚方向に50μm超え200μmまでの領域、の各領域である。
鋼管表面近傍、とくに最表裏層、すなわち管外面および管内面から肉厚方向に50μmまでの領域は、内層部とは熱間圧延時の歪・熱履歴が異なり、これが最表裏層と内層との硬度差の要因となる。本発明鋼材では、最表裏層の平均硬さHV0〜50と、そのすぐ内側の内層(表裏面から肉厚方向に50μm超え200μmまでの領域)の平均硬さHV50〜200と、の差ΔHV(=HV50〜200−HV0〜50)を25ポイント以下に調整する。ΔHVが25ポイントを超えると、相対的に軟質な表裏面近傍に成形時の歪が集中し引張残留応力が高くなり、表裏面部分の疲労強度も下がることが重畳し、5×104繰返し疲れ限度と鋼管強度TSとの比(σ/TS)が0.70を下回り、断面成形加工後の疲労強度が低下する。このため、ΔHV(=HV50〜200−HV0〜50)を25ポイント以下に限定した。なお、好ましくは20ポイント以下である。
σ/TSとHV50〜200−HV0〜50との関係を図4に示す。図4から、HV50〜200−HV0〜50が25ポイント以下とすることにより、σ/TSが0.70以上となることがわかる。
さらに、鋼管表面近傍、とくに最表裏層、すなわち管外面および管内面から肉厚方向に50μmまでの領域は、その平均硬さに加えて、その硬さのばらつき(標準偏差)が疲労強度に大きな影響を及ぼす。そのため、本発明鋼材では、最表裏層の硬さの標準偏差ΔHVσを15ポイント以下に限定する。これは、疲労亀裂が疲労強度の最弱部位で先ず発生するためと考えられるからである。最表裏層の硬さの標準偏差ΔHVσが15ポイントを超えると、硬さが相対的に低い部分から疲労亀裂が発生しやすくなり、その結果、疲労寿命が低下して、5×104繰返し疲れ限度σと鋼管強度TSとの比(σ/TS)が0.70を下回り、疲労強度が低下する。このため、最表裏層の硬さの標準偏差を15ポイント以下に限定した。なお、好ましくは12ポイント以下である。図5に、σ/TSと最表裏層の硬さの標準偏差ΔHVσとの関係を示す。ΔHVσを15ポイント以下とすることにより、σ/TSが0.70以上となることがわかる。
上記したような硬さ分布を有する鋼材とすることにより、断面成形加工後のねじり疲労試験で得られた5×10繰返し疲れ限度σと鋼管引張強さTSとの比、(σ/TS)が0.70以上という断面成形加工後の優れた耐ねじり疲労特性と、伸びElが22%以上で、かつ曲げ試験における限界曲げ内側半径rと肉厚tの比、(r/t)が2.50以下という優れた成形性とを、ともに確保できる。
つぎに、本発明鋼材の好ましい製造方法について説明する。
上記した組成の溶鋼をまず、転炉等の公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の公知の鋳造方法で鋼素材とすることが好ましい。ついで、これら鋼素材に、熱間圧延工程を施し、熱延鋼帯等の鋼板とすることが好ましい。
熱間圧延工程では、上記した組成を有する鋼素材に、加熱し所定温度で抽出したのち、熱間圧延を施す。
鋼素材の加熱は、所定の抽出温度が確保できればよく、とくに限定されないが、1350℃以下の範囲の温度とすることが好ましい。
本発明では、加熱後の、鋼素材の抽出温度は、次(1)式
log[V][C]=−9500/T+6.72 ‥‥(1)
(ここで、V、C:各元素の含有量(質量%))
から計算されるVの平衡固溶温度T(K)、次(2)式
log[Nb][C+12/14N]=−6770/TNb+2.26 ‥‥(2)
(ここで、Nb、C、N:各元素の含有量(質量%))
から計算されるNbの平衡固溶温度TNb(K)、次(3)式
log[Ti][C]=−7000/TTi+2.75 ‥‥(3)
(ここで、Ti、C:各元素の含有量(質量%))
から計算されるTiの平衡固溶温度TTi(K)、のいずれの温度より50 K以上高い温度とすることが好ましい。なお、TNbの計算においては、NがTiあるいはAlにより、全量固定されているものとしている。また、ここでは、鋼素材の抽出温度は表面温度で調整するものとする。
加熱後の鋼素材の抽出温度は、鋼中のV、Nb、Tiの再固溶、析出状況を通じて、特に鋼板表面近傍(表層)の析出物サイズ、硬さ分布に影響を及ぼし、優れた耐疲労特性を確保するために重要な要因である。加熱後の鋼素材の抽出温度を、平衡固溶温度T、TNb、TTiのいずれの温度より50 K以上高い温度とすることにより、粗大なV、Nb、Tiの炭化物、炭窒化物が固溶し、未固溶の炭窒化物として残存することがなくなるため、その後に、最表裏層のフェライト相中に20 nm以下の微細なV炭化物を析出させることができ、所望の断面成形加工後のねじり疲労強度が確保できるようになる。
このようなことから、加熱後の鋼素材の抽出温度は、平衡固溶温度T、TNb、TTiのいずれの温度より50 K以上高い温度に限定することが好ましい。なお、加熱後の鋼素材の抽出温度は、表面のみならず、中心部においても、平衡固溶温度T、TNb、TTiのいずれの温度より50 K以上高い温度とすることがより好ましい。
なお、結晶粒径の粗大化防止の観点から、鋼素材の加熱温度は1620K(1350℃)以下であることが好ましい。また、V、Nb、Tiの固溶状態の均一性と十分な固溶時間の確保という観点から、鋼素材の加熱・均熱時間は、10 min以上とすることが好ましい。
さらに、上記した条件で加熱、抽出された鋼素材に、粗圧延、仕上圧延からなる熱間圧延を施したのち、巻取り、熱延鋼板(熱延鋼帯)とする。
本発明では、熱間圧延における粗圧延は、所定寸法のシートバーを製造できればよく、粗圧延条件についてはとくに限定する必要はない。本発明では、仕上圧延の圧延終了温度を前記(1)式で計算されるVの平衡固溶温度T以上に限定することが好ましい。なお、圧延終了温度は、表面温度で調整するものとする。
仕上圧延においては、上下ロールによる付加的剪断歪や、ロールや冷却水による抜熱により、とくに最表裏層で、結晶粒の微細化や、V炭化物等の歪誘起析出、が生じやすく、最表裏層でのフェライト相の微細化、V炭化物の微細析出等には、仕上圧延終了温度が大きく影響する。そのため、仕上圧延終了温度は、最表裏層での硬さのばらつきや、最表裏層の平均硬さとそれよりも内層の平均硬さの差を所定の範囲内に調整し、所望の疲労強度、所望の曲げ成形性を確保するうえで重要な要因である。仕上圧延終了温度が、Vの平衡固溶温度Tを下回ると、V炭化物が歪誘起析出して粗大化し、V炭化物の平均粒径が20nmを超え、所望のねじり疲労強度を確保できない。
このようなことから、本発明では、熱延工程における仕上圧延終了温度FDTをVの平衡固溶温度T以上に限定することが好ましい。なお、仕上圧延終了温度は通常、板幅中央で測定するが、より好ましくは、仕上圧延終了時の板温度を、全幅に亘り、上記したVの平衡固溶温度T以上の温度に調整することが好ましい。また、仕上圧延終了温度の上限はとくに限定されないが、仕上圧延終了温度は、鋼板の表面性状の観点から1270K(1000℃)以下とすることが好ましい。
また、仕上圧延の圧下率(累積圧下率)については、本発明ではとくに限定する必要はしないが、圧延途中での歪誘起析出の抑制、圧延終了後の均質微細析出の促進という観点からは92〜95%とすることが好ましい。
また、仕上圧延終了後の巻取り条件についても、とくに限定しないが、所望のV炭化物の析出状態を確保するためには、巻取温度は上記したVの平衡固溶温度T以下770K(500℃)以上とすることが好ましい。
また、優れた表面性状の確保という観点から、仕上圧延前に、水圧:150kg/cm以上(14.7MPa以上)の水圧でデスケーリングを行うことが好ましい。
上記した熱間圧延工程を経て得られた熱延鋼板(熱延鋼帯)は、鋼板表面近傍(最表裏層)の析出物状態、硬度分布が適正化されており、優れた成形性、優れた断面成形加工後の耐ねじり疲労特性が要求される自動車部材用鋼管の素材として、好適な鋼板(鋼帯)となる。
なお、優れた断面成形後の耐ねじり疲労特性は、熱延鋼帯の良好な表面性状も寄与していると考えられる。
つぎに、上記した製造方法で得られた熱延鋼帯(熱延鋼板)を鋼管素材として、造管工程、溶接工程を施し溶接鋼管とする鋼管の好ましい製造方法について説明する。
本発明では、鋼管素材は、上記した製造方法で得られた熱延鋼帯(熱延鋼板)を用いる。鋼管素材は、熱延ままでもよいが、酸洗処理、ショットブラスト等を施し表面の黒皮を除去することが好ましい。また、耐食性、塗膜密着性の観点から、熱延鋼帯に亜鉛メッキ、アルミメッキ、ニッケルメッキ、有機皮膜処理などの表面処理を施すこともできる。なお、本発明では、鋼管素材は、上記した熱延鋼帯(熱延鋼板)に限定されることはなく、上記した熱延鋼帯(熱延鋼板)を素材として、冷間圧延、焼鈍等を施された冷延焼鈍鋼帯(冷延焼鈍板)、あるいはさらに各種表面処理を施された表面処理鋼帯(表面処理鋼板)を鋼管素材として用いてもなんら間題はない。
本発明では、上記した鋼管素材に、鋼素材を連続的にロール成形し、所定形状のオープン管に電縫造管する造管工程と、該オープン管の端部同士を電縫溶接する溶接工程とを施し溶接鋼管(電縫鋼管)とすることが好ましい。鋼管素材を連続的にロール成形し電縫溶接する場合には、造管工程における幅絞り率は、所望の成形性を確保するための重要な因子であり、10%以下(0%を含む)以下とすることが好ましい。幅絞り率が10%を超えると造管に伴う成形性の低下が顕著となり、所望の鋼管成形性が確保できなくなる。幅絞り率(%)は、次式
幅絞り率(%)=[(鋼管素材の幅)−π{(製品鋼管外径)−(製品鋼管肉厚)}]/π{(製品鋼管外径)−(製品鋼管肉厚)}×(100%)………(1)
で定義される値とする。
また、上記した電縫造管に代えて、ロールフォーミング、切板のプレス閉断面化、造管後の冷間・温間・熱間での縮径および熱処理(焼鈍)等を組合せた造管工程としてもよい。さらに電縫溶接に代えて、レーザー溶接、アーク溶接、プラズマ溶接などを用いても何ら問題はない。本発明の鋼管を用いて成形された部材は、成形ままで優れた特性を発揮するが、付加的に部材成形後に、残留応力除去焼鈍等の熱処理、あるいはショットピーニング等による表面の高硬度化や圧縮残留応力付与を施すこともなんら問題ない。
つぎに、実施例に基づきさらに本発明について説明する。
(実施例1)
表1に示す組成の鋼スラブ(鋼素材)を加熱炉で加熱し、表2に示す条件で抽出し、表2に示す条件で熱間圧延工程を施し、表2に示す板厚の熱間圧延鋼板(鋼帯)とした。熱間圧延工程では、表2に示す条件の仕上圧延終了温度FDTからなる仕上圧延を含む熱間圧延を行って、熱延鋼板(熱延鋼帯)とし、表2に示す巻取温度でコイル状に巻き取った。なお、参考までに、抽出時の鋼素材の中心温度、および仕上圧延終了時のコイル幅方向での最低温度を併記した。
ついで、これら熱延鋼板(熱延鋼帯)に、酸洗を施したのち、所定の幅寸法にスリット加工して鋼管素材とした。そして、これら鋼管素材に、ロールにより連続成形してオープン管とする電縫造管を施したのち、該オープン管の端部同士を高周波抵抗溶接により電縫溶接して、幅絞り率4%で、電縫鋼管(溶接鋼管)(外径φ89.1mm)とした。
得られた溶接鋼管から試験片を採取し、組織観察試験、析出物観察試験、引張試験、曲げ試験、硬さ試験、さらにねじり疲労試験を行った。試験方法はつぎのとおりとした。
(1)組織観察試験
得られた溶接鋼管から、円周方向断面が観察面となるように組織観察試験片を採取し、研磨し、ナイタール腐食して、走査型電子顕微鏡(倍率:3000倍)を用いて、組織観察を行い、撮像して、組織写真を得た。得られた組織写真について画像解析装置を用い、フェライト相の組織分率、および各フェライト粒の面積を測定し、該面積から円相当径を算出して、各鋼板の各位置におけるフェライト相の平均結晶粒径とした。
なお、組織の観察位置は、管外面から肉厚方向(深さ方向)に50μmまでの領域(最表層)および管内面から肉厚方向(深さ方向)に50μmまでの領域(最裏層)とした。各領域を、深さ方向に3ブロックに分け、各ブロックにおいてそれぞれ、フェライト相の組織分率(体積%)、フェライト相の平均結晶粒径を測定し、各ブロック(計6ブロック)の測定値を算術平均し、各鋼管の管最表裏層におけるフェライト組織分率、フェライト相の平均結晶粒径とした。
(2)析出物観察試験
得られた溶接鋼管の、管最表層及び管最裏層から板面方向(板面に平行な方向)を法線方向とする薄膜サンプルを作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)(倍率:100000倍)で各6視野観察した。観察された析出物について、EDS分析により、Vを含まないセメンタイト、TiNなどを同定し除外し、Vを含有する炭化物を同定した。そして、同定されたVを含有する炭化物粒について、それぞれの面積を求め、円相当径を算出し、それらの平均をその鋼管におけるV炭化物の平均粒径とした。なお、Vの単独炭化物に加え、Vを50質量%以上含む複合炭化物もV炭化物としてカウントした。また、測定は、管外面、管内面から肉厚方向に50μmまでの領域を肉厚方向に3ブロックに分けて行い、各ブロック2視野ずつ行い、各ブロックの平均値を求めた。
(3)引張試験
得られた溶接鋼管から、L方向が引張方向となるように、JIS Z 2201の規定に準拠してJIS 12号試験片を切出し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(引張強さTS、降伏強さYS、伸びEl)を求め、強度と成形性を評価した。
(4)曲げ試験
得られた溶接鋼管から、管長手方向に30mm幅となるようにリング状試験片を採取し、該リング状試験片について母材部が曲げ対象位置となるように、該リング試験片を半切して、円弧状の試験片を得た。得られた円弧状の試験片を曲げ試験片とし、JIS Z 2248の規定に準拠して押曲げ法により曲げ試験を行った。曲げ試験は、管内面側がポンチ側(表曲げ)、あるいは管外面側がポンチ側(裏曲げ)となるように、2通りで行った。そして、亀裂の発生しない最小のポンチ半径r(mm)を0.25mmピッチで求め、亀裂の発生しない最小のポンチ半径r(mm)と肉厚t(mm)との比、限界r/tを求めた。なお、表曲げと裏曲げで得られたポンチ半径rが異なる場合には、値の大きいほうを用いた。
(5)硬さ試験
得られた溶接鋼管から、硬さ測定試験片を採取し、ビッカース硬さ計(荷重:0.025kgf(試験力:0.245N)で各領域における平均硬さを測定した。測定した領域は、最表層(管外面から肉厚方向に50μmまでの領域)および最裏層(管内面から肉厚方向に50μmまでの領域)、管外面から肉厚方向に50μm超えから200μmまでの領域および管内面から肉厚方向に50μm超えから200μmまでの領域、とした。各領域の平均硬さは、各領域を肉厚方向に3ブロック(計6ブロック)に分け、各ブロックで10点(管円周方向に中心位置で)、硬さHV0.025を測定し、得られた計60点の測定結果を算術平均し、各領域の平均硬さHV0〜50およびHV50〜200とし、その差ΔHV(=HV50〜200−HV0〜50)を算出した。また、最表層(管外面から肉厚方向に50μmまでの領域)および最裏層(管内面から肉厚方向に50μmまでの領域)では、得られた測定結果から、硬さの標準偏差ΔHVσを求めた。
(6)断面成形加工後のねじり疲労試験
得られた溶接鋼管から、試験材(長さ:1500mm)を採取し、該試験材の中央部約1000mmLに、図1(特開2001−321846号公報の図11)に示すように、鋼管の長手中央部分をV字形状に断面を成形加工したのち、両端部をチャッキングにより固定して、ねじり疲労試験を実施した。ねじり疲労試験は、1Hz、両振りの条件で行い、応力水準を種々変化させ、負荷応力Sにおける破断までの繰返し回数Nを求めた。得られたS‐N線図より5×10繰返し限度σ(MPa)を求め、σ/TS、(ここでTSは鋼管の引張強さ(MPa))で耐ねじり疲労特性を評価した。なお、負荷応力Sは最初にダミー片でねじり試験を行い、疲労亀裂位置を確認し、その位置に3軸歪ゲージを貼付けて実測した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0005499560
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本発明例はいずれも、管外面および管内面から肉厚方向に50μmまでの領域(管最表裏層)のフェライト相の円周方向断面の平均結晶粒径が1.O〜8.0μmで、かつ該フェライト相中に1.0〜20nmの微細なV炭化物が析出した組織を有し、管最表裏層の平均硬さと、管外面および管内面から肉厚方向に50μm超えから200μmまでの領域の平均硬さとの差、ΔHV(=HV50〜200−HV0〜50)が25ポイント以下で、管最表裏層の硬さの標準偏差ΔHVσが15ポイント以下となる硬さ分布を有する鋼管となっている。そして、これら溶接鋼管は、引張強さTS:690MPa以上の高強度を有し、伸びEl:17%以上で、限界曲げ内側半径rと肉厚tの比、r/tが2.50以下と成形性に優れ、かつ断面加工後のねじり試験での5×104繰返し疲れ限度σと鋼管強度TSとの比、(σ/TS)が0.70以上と優れた耐ねじり疲労特性を有する溶接鋼管となっている。
一方、本発明範囲を外れる比較例は、強度が不足しているか、成形性が不足しているか、あるいはねじり疲労強度が低下している。
Ti,Nbを含有せずV単独含有の比較例(鋼管No.6)は、最表裏層のフェライト相の平均結晶粒径が8.Oμmを超えて粗大化し、さらにフェライト相中のV炭化物も平均粒径が20 nmを超え粗大化しており、最表裏層と内層との平均硬さの差、ΔHV(=HV50〜200−HV0〜50)が25ポイントを超え、さらに引張強さも690MPa未満で、さらに(σ/TS)がO.66と耐ねじり疲労特性が低下している。
また、V含有量が本発明範囲を低く外れる比較例(鋼管No.7)は、引張強さも690MPa未満であり、また、疲労強度が500MPa未満で、疲労強度が不足している。また、V含有量が本発明範囲を高く外れる比較例(鋼管No.8)は、最表裏層のフェライト相の平均結晶粒径が1.0μm未満であるが、フェライト相中のV炭化物の平均粒径が20 nmを超えて粗大化しており、最表裏層と内層との平均硬さの差、ΔHV(=HV50〜200−HV0〜50)が25ポイントを超え、さらに管最表裏層の硬さの標準偏差ΔHVσが15ポイントを超え、伸びElが17%未満と延性が低下し、限界曲げ内側半径rと肉厚tの比、r/tが2.50超えと成形性が低下し、さらに、断面成形加工後のねじり試験での5×104繰返し疲れ限度σと鋼管強度TSとの比、(σ/TS)が0.65と、0.70未満であり、耐ねじり疲労特性が低下している。
(実施例2)
表1に示す鋼No.B,Cの組成を有する鋼スラブ(鋼素材)を加熱炉で加熱し、表4に示す条件で抽出し、表4に示す条件で熱間圧延工程を施し、表4に示す板厚の熱間圧延鋼板(鋼帯)とした。熱間圧延工程では、表4に示す条件の仕上圧延終了温度FDTからなる仕上圧延を含む熱間圧延を行って、熱延鋼板(熱延鋼帯)とし、表4に示す巻取温度でコイル状に巻き取った。なお、参考までに、抽出時の鋼素材の中心温度、および仕上圧延終了時のコイル幅方向での最低温度(最低値)を併記した。
ついで、これら熱延鋼板(熱延鋼帯)に、酸洗を施したのち、所定の幅寸法にスリット加工して鋼管素材とした。そして、これら鋼管素材に、ロールにより連続成形してオープン管とする電縫造管を施したのち、該オープン管の端部同士を高周波抵抗溶接により電縫溶接して、幅絞り率4%で、表4に示す寸法の電縫鋼管(溶接鋼管)とした。
得られた溶接鋼管から試験片を採取し、組織観察試験、析出物観察試験、引張試験、曲げ試験、硬さ試験、さらにねじり疲労試験を行った。試験方法は実施例1と同様とした。なお、ねじり疲労試験は、鋼管を断面成形加工した後、さらに530℃×均熱10minのSR焼鈍処理を施して、実施例1と同様のねじり疲労試験を実施し、断面成形加工−SR焼鈍処理後のねじり疲労強度を求めた。
得られた結果を表5に示す。
Figure 0005499560
Figure 0005499560
本発明例はいずれも、管外面および管内面から肉厚方向に50μmまでの領域(管最表裏層)のフェライト相の円周方向断面の平均結晶粒径が1.O〜8.0μmで、かつ該フェライト相中に1.0〜20nmの微細なV炭化物が析出した組織を有し、管最表裏層の平均硬さと、管外面および管内面から肉厚方向に50μm超えから200μmまでの領域の平均硬さとの差、ΔHV(=HV50〜200−HV0〜50)が25ポイント以下で、管最表裏層の硬さの標準偏差ΔHVσが15ポイント以下となる硬さ分布を有する鋼管となっている。そして、これら溶接鋼管は、引張強さTS:590MPa以上の高強度を有し、伸びEl:22%以上で、限界曲げ内側半径rと肉厚tの比、r/tが2.50以下と成形性に優れ、かつ断面加工後のねじり疲労試験での5×104繰返し疲れ限度σと鋼管強度TSとの比、(σ/TS)が0.70以上と優れた耐ねじり疲労特性を有する溶接鋼管となっている。また、断面加工−SR後のねじり疲労試験での(σ/TS)も0.70以上と優れたねじり疲労強度を有している。
一方、本発明範囲を外れる比較例は、強度が不足しているか、成形性が不足しているか、あるいはねじり疲労強度が低下している。
鋼素材の抽出温度が本発明の好適範囲を低く外れる比較例(鋼管No.21)では、最表裏層のフェライト相の平均粒径が9.6μmと粗大化しているとともに、フェライト相中に析出したV炭化物の平均粒径も24 nmと粗大化している。そのため、最表裏層と内層との平均硬さの差、ΔHV(=HV50〜200−HV0〜50)が25ポイントを超え、さらに最表裏層の硬さの標準偏差ΔHVσが15ポイントを超えており、伸びElが16%と低く、また限界曲げ内側半径rと肉厚tの比、r/tが2.50を超えて成形性が低下し、さらに(σ/TS)が0.58〜0.59と、断面加工後および断面加工−SR後の、ねじり疲労強度がいずれも低下している。
また、熱間圧延の仕上圧延終了温度が本発明の範囲を低く外れている比較例(鋼管No.25)は、最表裏層のフェライト相の平均粒径が0.4μmと1.0μm未満であり、フェライト相中に析出したV炭化物の平均粒径も31 nmと粗大化している。そのため、最表裏層と内層との平均硬さの差、ΔHV(=HV50〜200−HV0〜50)が25ポイントを超え、さらに最表裏層の硬さの標準偏差ΔHVσが15ポイントを超えて、伸びElが13%と低く、限界曲げ内側半径rと肉厚tの比、r/tが2.50を超えて曲げ成形性が低下し、さらに(σ/TS)が0.55〜0.56と、断面加工後および断面加工−SR後の、ねじり疲労強度がいずれも低下している。

Claims (10)

  1. 質量%で、
    C:0.08〜0.24%、 V:0.044%超え0.109%以下
    を含み、さらにNb:0.001〜0.15%、Ti:0.001〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種を含有し、さらに、
    Si:0.002〜0.95%、 Mn:1.09〜1.99%、
    Al:0.01〜0.08%
    を含有し、不純物元素であるP、S、N、Oを、
    P:0.019%以下、 S:0.010%以下、
    N:0.008%以下、 O:0.003%以下
    に調整し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、
    さらに、表面から肉厚方向に50μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μmまでの領域が、フェライト相を主相とし、該主相であるフェライト相以外の第二相が体積%で15%以下で、前記フェライト相が、圧延方向に直交する方向の断面で平均結晶粒径:1.0〜8.0μmのフェライト相であり、該フェライト相中には平均粒径で1.0〜20 nmのV炭化物が析出してなる組織を有し、表面から肉厚方向に50μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μmまでの領域の平均硬さHV0〜50と、表面から肉厚方向に50μm超え200μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μm超え200μmまでの領域の平均硬さHV50〜200との差ΔHVが25ポイント以下、表面から肉厚方向に50μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μmまでの領域の硬さの標準偏差ΔHVσが15ポイント以下であることを特徴とする成形性と耐ねじり疲労特性に優れた自動車足回り部材用高張力鋼材。
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、W:0.001〜0.15%、Cr:0.001〜0.45%、Cu:0.001〜0.45%、Ni:0.001〜0.45%、B:0.0001〜0.0009%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項に記載の自動車足回り部材用高張力鋼材。
  3. 前記組成に加えてさらに、Ca:0.0001〜0.005%を含有する組成とすることを特徴とする請求項またはに記載の自動車足回り部材用高張力鋼材。
  4. 前記鋼材が、鋼板または鋼管である請求項1ないしのいずれかに記載の自動車足回り部材用高張力鋼材。
  5. 質量%で、
    C:0.08〜0.24%、 V:0.044%超え0.109%以下
    を含み、さらにNb:0.001〜0.15%、Ti:0.001〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種を含有し、さらに、
    Si:0.002〜0.95%、 Mn:1.09〜1.99%、
    Al:0.01〜0.08%
    を含有し、不純物元素であるP、S、N、Oを、
    P:0.019%以下、 S:0.010%以下、
    N:0.008%以下、 O:0.003%以下
    に調整し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、少なくとも熱間圧延工程を施し高張力熱延鋼板とするにあたり、
    前記熱間圧延工程における仕上圧延終了温度FDTを、下記(1)式から計算される平衡固溶温度T (K)より高い温度とし、
    前記高張力熱延鋼板を、表面から肉厚方向に50μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μmまでの領域が、フェライト相を主相とし、該主相であるフェライト相以外の第二相が体積%で15%以下で、前記フェライト相が、圧延方向に直交する方向の断面で平均結晶粒径:1.0〜8.0μmのフェライト相であり、該フェライト相中には平均粒径で1.0〜20 nmのV炭化物が析出してなる組織を有し、表面から肉厚方向に50μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μmまでの領域の平均硬さHV 0〜50 と、表面から肉厚方向に50μm超え200μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μm超え200μmまでの領域の平均硬さHV 50〜200 との差ΔHVが25ポイント以下、表面から肉厚方向に50μmまでの領域および裏面から肉厚方向に50μmまでの領域の硬さの標準偏差ΔHV σ が15ポイント以下である鋼板とする
    ことを特徴とする成形性と耐ねじり疲労特性に優れた自動車足回り部材用高張力熱延鋼板の製造方法。

    log[V][C]=−9500/T+6.72 ‥‥(1)
    ここで、V、C:各元素の含有量(質量%)
  6. 前記鋼素材を加熱し、下記(1)式から計算されるVの平衡固溶温度T(K)、下記(2)式から計算されるNbの平衡固溶温度TNb(K)、下記(3)式から計算されるTiの平衡固溶温度TTi(K)、のいずれの温度より50 K以上高い温度で、抽出して、前記熱間圧延工程を施すことを特徴とする請求項に記載の自動車足回り部材用高張力熱延鋼板の製造方法。

    log[V][C]=−9500/T+6.72 ‥‥(1)
    log[Nb][C+12/14N]=−6770/TNb+2.26 ‥‥(2)
    log[Ti][C]=−7000/TTi+2.75 ‥‥(3)
    ここで、V、Nb、Ti、C、N:各元素の含有量(質量%)
  7. 前記組成に加えてさらに、質量%で、W:0.001〜0.15%、Cr:0.001〜0.45%、Cu:0.001〜0.45%、Ni:0.001〜0.45%、B:0.0001〜0.0009%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項5または6に記載の自動車足回り部材用高張力熱延鋼板の製造方法。
  8. 前記組成に加えてさらに、Ca:0.0001〜0.005%を含有する組成とすることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の自動車足回り部材用高張力熱延鋼板の製造方法。
  9. 鋼管用素材として、請求項ないし請求項のいずれかに記載の製造方法で製造された高張力熱延鋼板を用い、該鋼管用素材に造管工程、溶接工程を施して溶接鋼管とすることを特徴とする自動車足回り部材用高張力鋼管の製造方法。
  10. 前記鋼管用素材が、請求項ないし請求項のいずれかに記載の製造方法で製造された高張力熱延鋼板に冷間圧延、焼鈍を施してなる高張力冷延焼鈍鋼板、または、該高張力熱延鋼板または該高張力冷延焼鈍鋼板に表面処理を施してなる表面処理鋼板であることを特徴とする請求項に記載の自動車足回り部材用高張力鋼管の製造方法。
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