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JP5282449B2 - 成形性と耐疲労特性に優れた高張力鋼材およびその製造方法 - Google Patents

成形性と耐疲労特性に優れた高張力鋼材およびその製造方法 Download PDF

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JP5282449B2 JP2008146087A JP2008146087A JP5282449B2 JP 5282449 B2 JP5282449 B2 JP 5282449B2 JP 2008146087 A JP2008146087 A JP 2008146087A JP 2008146087 A JP2008146087 A JP 2008146087A JP 5282449 B2 JP5282449 B2 JP 5282449B2
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Description

本発明は、トーションビーム、アスクルビーム、トレーリングアーム、サスペンションアーム等の自動車構造部材用として好適な高張力鋼材に係り、とくに成形性と耐疲労特性の向上に関する。なお、ここでいう「高張力鋼材」とは、引張強さ:590MPa以上の鋼材をいうものとする。また、ここでいう「鋼材」には、鋼管、鋼板等を含むものとする。
近年の地球環境の保全という観点から、自動車の燃費向上が強く求められている。そのため、自動車等の車体の徹底した軽量化が指向されている。自動車等の構造部材についても例外ではなく、軽量化と安全性との両立を図るために、一部の構造部材では、高強度化された電縫鋼管が採用されつつある。従来では、素材(電縫鋼管)を所定の形状に成形した後、焼入れ処理等の調質処理を施して、部材の高強度化が図られていた。しかし、調質処理を採用することは工程が複雑になり、部材の製造期間が長期化するうえ、部材製造コストの高騰を招くという問題がある。
このような問題に対し、例えば特許文献1には、自動車等の構造部材用超高張力電縫鋼管の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術では、C、Si、Mn、P、S、Al、Nを適正量に調整したうえ、B:0.0003〜0.003%を含み、さらにMo、Ti、Nb、Vのうちの1種以上を含有する組成の鋼素材に、950℃以下Ar変態点以上で仕上圧延を終了し、250℃以下で巻取る熱間圧延を施し管用鋼帯とし、該管用鋼帯を造管して電縫鋼管としたのち、500〜650℃で時効処理を施す、電縫鋼管の製造方法である。この技術によれば、Bの変態組織強化とMo,Ti,Nb等の析出硬化により、調質処理を施すことなく、1000MPaを超える超高張力鋼管を得ることができるとしている。
また、特許文献2には、自動車のドアインパクトビーム用及びスタビライザー用として好適な、引張強さ:1470N/mm以上の高強度とかつ高延性を有する電縫鋼管の製造方法が記載されている。特許文献2に記載された技術では、C:0.18〜0.28%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.60〜1.80%を含み、P、Sを適正範囲に調整したうえ、Ti:0.020〜0.050%、B:0.0005〜0.0050%を含有し、さらにCr、MoおよびNbのうちの1種以上を含有する組成の素材鋼からなる鋼板を用いて製造した電縫鋼管に850〜950℃でノルマ処理を施し、さらに、焼入れ処理を施す、電縫鋼管の製造方法である。この技術によれば、1470N/mm以上の高強度と、10〜18%程度の延性を有する電縫鋼管が得られ、自動車のドアインパクトビーム用及びスタビライザー用として好適であるとしている。
特許第2588648号公報 特許第2814882号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術で製造された電縫鋼管は、伸びElが14%以下と低延性であるため成形性に劣り、プレス成形あるいはハイドロフォーム成形を伴うトーションビーム、アクスルビーム、トレーリングアーム、サスペンションアーム等の自動車構造部材用としては不適であるという問題があった。
一方、特許文献2に記載された技術で製造された電縫鋼管は、伸びElが高々18%であり、曲げ加工により成形されるスタビライザー用としては好適であるが、プレス成形あるいはハイドロフォーム成形を伴う部材用としては、延性が不足し、プレス成形あるいはハイドロフォーム成形を伴うトーションビーム、アクスルビーム等の自動車構造部材用としては不適であるという問題があった。また、特許文献2に記載された技術では、ノルマ処理および焼入れ処理を必要とし、工程が複雑であり、寸法精度、経済性という観点からも問題を残していた。
本発明は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、とくに、トーションビーム、アクスルビーム、トレーリングアーム、サスペンションアームなどの、自動車構造部材用として好適な、引張強さ:590MPa以上を有し、低温靭性、成形性、および断面成形加工後の耐疲労特性、とくに耐ねじり疲労特性に優れた高張力鋼材およびその製造方法を提供することを目的とする。
なお、本発明でいう、「優れた成形性」とは、JIS Z 2201の規定に準拠したJIS 12号試験片を用い、JIS Z 2241の規定に準拠して行った引張試験での伸びElが16%以上(JIS 11号試験片では23%以上)を示す場合をいうものとする。
また、本発明でいう「断面成形加工後の優れた耐ねじり疲労特性」とは、図1(特開2001−321846号公報の図11)に示すように、鋼管の長手中央部分をV字形状に断面を成形加工したのち、両端部をチャッキングにより固定してねじり疲労試験を、1Hz、両振りの条件で行い5×10繰返し疲れ限度σを求め、得られた5×10繰返し疲れ限度σと鋼管引張強さTSとの比、(σ/TS)が0.45以上である場合をいうものとする。
また、本発明でいう「優れた低温靭性」とは、図1(特開2001‐321846号公報の図11)に示すように、試験材(鋼管)の長手中央部分をV字形状に断面を成形加工したままで、試験材の平坦部分より、管円周方向(C方向)が試験片長さとなるように展開し、JIS Z 2242の規定に準拠してVノッチ試験片(1/4サイズ)を切出し、シャルピー衝撃試験を実施した場合の破面遷移温度vTrsが、−50℃以下である場合をいうものとする。
本発明者らは、強度、低温靭性、成形性、断面成形加工後の耐ねじり疲労特性という相反する特性を高度なレベルで両立させた鋼材を安定して製造するために、これら特性に影響する各種要因、とくに鋼材の組成、製造条件について系統的な検討を鋭意実施した。その結果、Cと少なくとも1種の炭化物形成元素を含有する組成の鋼素材に、特定条件の熱履歴を施し、分散する析出物の寸法を適正範囲に制御することにより、所定の高強度で、高い成形性、優れた低温靭性を有し、さらに断面成形後の耐ねじり疲労特性に優れた高強度鋼材が製造できることを知見した。
本発明は、上記したような知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は、次の通りである
)質量%で、C:0.03〜0.24%、Si:0.002〜0.95%、Mn:1.01〜1.99%、Al:0.01〜0.08%、Nb:0.001〜0.15%を含有し、さらにP、S、N、Oを、P:0.019%以下、S:0.010%以下、N:0.008%以下、O:0.003%以下に調整して含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、粒径100nmを超える析出物中のNb量Nblpと、粒径20nm未満の析出物中のNb量Nbspとの比、Nblp/Nbspが0.10〜2.0である組織を有することを特徴とする成形性と耐疲労特性に優れた高張力鋼材
)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.001〜0.15%、Ti:0.001〜0.15%、Mo:0.001〜0.45%、W:0.001〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とし、前記組織がさらに、Tiを含有する場合は、粒径100nmを超える析出物中のTi量Tilpと、粒径20nm未満の析出物中のTi量Tispの比、Tilp/Tispが0.2〜4であり、Vを含有する場合は、粒径100nmを超える析出物中のV量Vlpと、粒径20nm未満の析出物中のV量Vspの比、Vlp/Vspが0.1〜2であり、
Moを含有する場合は、粒径100nmを超える析出物中のMo量Molpと、粒径20nm未満の析出物中のMo量Mospの比、Molp/Mospが0.05〜1であり、Wを含有する場合は、粒径100nmを超える析出物中のW量Wlpと、粒径20nm未満の析出物中のW量Wspの比、Wlp/Wspが0.05〜1である組織とすることを特徴とする高張力鋼材。
)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.001〜0.45%、Cu:0.001〜0.45%、Ni:0.001〜0.45%、B:0.0001〜0.0009%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする高張力鋼材。
)()ないし()のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.005%を含有することを特徴とする高張力鋼材。
)()ないし()のいずれかにおいて、前記高張力鋼材が、管内外表面の算術平均粗さRaが2μm以下、最大高さ粗さRzが30μm以下、十点平均粗さRz JISが20μm以下である中空管状体であることを特徴とする高張力鋼材。
)質量%で、C:0.03〜0.24%、Si:0.002〜0.95%、Mn:1.01〜1.99%、Al:0.01〜0.08%、Nb:0.001〜0.15%を含有し、さらにP、S、N、Oを、 P:0.019%以下、S:0.010%以下、N:0.008%以下、O:0.003%以下に調整して含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、所定の熱履歴を施し、鋼材とするにあたり、前記所定の熱履歴を、次(2)式
ΣAi=Σ{Ti・(20+log ti)} ‥‥(2)
(ここで、ti:i番目の工程での熱処理時間(h)、Ti:i番目の工程での熱処理温度(K))
で定義される累積熱処理パラメータΣAi、が850〜1150℃の温度域で30000〜20000、かつ500〜700℃の温度域で20000〜13000を満足する熱履歴とすることを特徴とする成形性と耐疲労特性に優れた高張力鋼材の製造方法。
)(6)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.001〜0.15%、Ti:0.001〜0.15%、Mo:0.001〜0.45%、W:0.001〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする高張力鋼材の製造方法。
)(6)または(7)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.001〜0.45%、Cu:0.001〜0.45%、Ni:0.001〜0.45%、B:0.0001〜0.0009%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする高張力鋼材の製造方法。
)()ないし()のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.005%を含有することを特徴とする高張力鋼材の製造方法。
本発明によれば、590MPa以上の引張強さを有し、優れた低温靭性、優れた成形性と断面成形加工後の優れた耐ねじり疲労特性とを有する高張力鋼材を安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、自動車構造部材の特性向上に顕著に寄与するという効果もある。
まず、本発明高張力鋼材の組成限定理由について説明する。以下、とくに断らない限り、質量%は単に%で記す。
本発明高張力鋼材は、C:0.03〜0.24%を含み、さらに少なくとも1種の炭化物形成元素Xを含有する組成を有する。炭化物形成元素Xとしては、Nb、V、Ti、Mo、Wが例示でき、含有量は、Nb:0.001〜0.15%、V:0.001〜0.15%、Ti:0.001〜0.15%、Mo:0.001〜0.45%、W:0.001〜0.15%とすることが好ましい。
C:0.03〜0.24%
Cは、固溶強化あるいは炭化物形成元素と結合し析出物(炭化物)として析出物強化を介して、鋼の強度を増加させる元素であり、鋼材強度、疲労強度を確保するうえで必須の元素である。このような効果は、0.03%以上の含有で認められる。0.03%未満の含有では所望の析出物量が得られず、所望の耐ねじり疲労特性を確保することができない。一方、0.24%を超える含有は、鋼材の延性が低下し所望の成形性が確保できなくなるとともに、低温靭性が低下する。このため、Cは0.03〜0.24%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.08〜0.20%である。
本発明では、炭化物形成元素Xとして、Nbを必須含有する。
Nb:0.001〜0.15%
Nbは、Cと結合し炭化物として析出し、所望の高強度の確保および疲労強度の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.001%以上の含有を必要とする。一方、0.15%を超える含有は、析出物の過剰な析出により延性低下が顕著となる。このため、Nbは0.15%以下に限定する。なお、好ましくは0.010〜0.049%である。
本発明では、炭化物形成元素Xとして、上記したNbの含有に加えて、さらにV:0.001〜0.15%、Ti:0.001〜0.15%、Mo:0.001〜0.45%、W:0.001〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することが好ましい。
V、Ti、Mo、Wはいずれも、Nbと同様に炭化物形成元素であり、炭化物として析出し、疲労強度を向上させる作用を有する元素であり、必要に応じて1種または2種以上を選択して含有できる。
Vは、Cと結合し炭化物として析出して、疲労強度を向上させる作用を有する。このような効果は、0.001%以上の含有で発現する。一方、0.15%を超える含有は、成形性、低温靭性を低下させる。このため、含有する場合、Vは0.001〜0.15%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは、0.06%以下である。
また、Tiは、まずNと結合して固溶Nを低減させる作用を有し、鋼材の成形性確保に有効に寄与するとともに、窒化物となった以外のTi、すなわち余剰Tiは、Cと結合し炭化物として析出して、疲労強度を向上させる作用を有する。このような効果は、0.001%以上の含有で顕著となるが、0.15%を超える含有は、析出物(炭化物)による強度上昇が著しくなり、それに伴い延性が顕著に低下し、成形性が低下する。このため、含有する場合、Tiは0.001〜0.15%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは、0.0010〜0.080%である。
また、Moは、Nb、V等と同様に、Cと結合し炭化物として析出して、疲労強度を向上させる作用を有する。このような効果は0.001%以上の含有で発現するが、0.45%を超える含有は、成形性を低下させる。このために、含有する場合、Moは0.001〜0.45%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは0.12〜0.20%である。
また、Wは、Nb、V等と同様に、Cと結合し炭化物として析出して、疲労強度を向上させる作用を有する。このような効果は0.001%以上の含有で発現する。一方、0.15%を超える含有は、成形性、低温靭性を低下させる。このため、含有する場合、Wは0.001〜0.15%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは、0.06%以下である。
上記したC、およびNbさらには炭化物形成元素X以外は、つぎのような成分とすることが好ましい。
Si:0.002〜0.95%
Siは、フェライト形成元素であり、熱履歴中に、オーステナイト(γ)→フェライト(α)変態を促進し、成形性の向上に寄与する。このような効果は、0.002%以上の含有で顕著となる。一方、0.95%を超える含有は、表面性状が低下する。このため、Siは0.002〜0.95%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは0.10〜0.30%である。
Mn:1.01〜1.99%
Mnは、鋼材の強度増加に寄与するとともに、疲労強度を向上させる作用を有する元素である。このような効果は、1.01%以上の含有で発現する。1.99%を超える含有は、延性の低下が著しく、所望の成形性を確保できなくなる。このため、Mnは1.01〜1.99%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは1.20〜1.80%である。
Al:0.01〜0.08%
Alは、製鋼時の脱酸剤として作用するとともに、Nと結合し熱延工程でのオーステナイト粒の成長を抑制し、結晶粒を微細化し、疲労強度を向上させる作用を有する元素である。このような効果は、0.01%以上の含有で認められるようになる。一方、0.08%を超える含有は、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となるうえ、かえって酸化物系介在物の増大に繋がり、耐疲労特性の低下が著しくなる。このため、Alは0.01〜0.08%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは、0.02〜0.06%である。
なお、本発明では、不純物元素である、P、S、N、Oを、P:0.019%以下、S:0.010%以下、N:0.008%以下、O:0.003%以下に調整して含むことが好ましい。
P:0.019%以下
Pは、Mnとの凝固共偏析を介し、低温靭性を低下させるとともに、電縫溶接性を低下させる悪影響を有する元素であり、できるだけ低減することが好ましい。0.019%を超えて含有すると、上記した悪影響が顕著となるため、Pは0.019%以下に限定した。
S:0.010%以下
Sは、鋼中ではMnS等の介在物として存在し、成形時の微細割れや疲労亀裂の起点として、成形性、耐疲労特性を低下させる。また、鋼材の電縫溶接性、低温靭性等を低下させる悪影響を有する元素であり、できるだけ低減することが好ましい。0.010%を超えて含有すると、上記した悪影響が顕著となるため、Sは0.010%を上限とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.005%以下である。
N:0.008%以下
Nは、鋼中に固溶Nとして残存すると、鋼管の成形性、低温靭性を低下させる悪影響を有する元素であり、本発明ではできるだけ低減することが好ましい。0.008%を超えて含有すると、上記した悪影響が顕著となるため、Nは0.008%を上限とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.0049%以下である。
O:0.003%以下
Oは、鋼中では酸化物系介在物として存在し、鋼材の耐疲労特性、低温靭性を低下させる悪影響を有する元素であり、本発明ではできるだけ低減することが好ましい。0.003%を超えて含有すると、上記した悪影響が顕著となるため、Oは0.003%を上限とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.002%以下である。
上記した成分に加えてさらに、Cr:0.001〜0.45%、Cu:0.001〜0.45%、Ni:0.001〜0.45%、B:0.0001〜0.0009%のうちから選ばれた1種または2種以上、および/またはCa:0.001〜0.005%を含有することができる。
Cr、Cu、Ni、Bはいずれも、疲労強度を向上させるか、疲労強度を向上させる作用を補完する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。
Crは、疲労強度を向上させる作用を有する元素であり、このような効果は、0.001%以上の含有で発現する。一方、0.45%を超える含有は、成形性を低下させる。このため、含有する場合には、Crは0.001〜0.45%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは0.08〜0.29%である。
Cu、Niは、いずれも疲労強度を向上させる作用を補完する元素であるが、さらに鋼材の耐食性を向上させる作用をも元素である。これらの効果は0.001%以上の含有で発現する。一方、0.45%を超える含有は、成形性を低下させる。このため、含有する場合には、Cuは0.001〜0.45%、Niは0.001〜0.45%の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは、Cu、Niともに0.2%以下である。
Bは、同様に、疲労強度を向上させる作用を補完する元素である。このような効果は、0.0001%以上の含有で発現する。一方、0.0009%を超える含有は、成形性を低下させる。このため、含有する場合には、Bは0.0001〜0.0009%の範囲に限定することが好ましい。
Ca:0.0001〜0.005%
Caは、展伸した介在物(MnS)を粒状の介在物(Ca(Al)S(O))とする、いわゆる介在物の形態を制御する作用を有する。このような介在物の形態制御を介して、成形時の微細割れおよび疲労亀裂発生を抑制し、成形性、耐疲労特性、低温靭性を向上させる作用を有する元素である。このような効果は、0.0001%以上の含有で顕著となるが、0.005%を超える含有は、非金属介在物が増加しかえって耐疲労特性が低下する。このため、含有する場合には、Caは0.0001〜0.005%の範囲に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
さらに、本発明の高張力鋼材は、上記した組成と、粒径100nmを超える析出物中の炭化物形成元素Xの量Xlpと粒径20nm未満の析出物中の炭化物形成元素Xの量Xspとの比、Xlp/Xspが、次(1)式
12/(s+d)3 ≦ Xlp/Xsp ≦ 240/(s+d)3 ‥‥(1)
(ここで、Xlp:粒径100nmを超える析出物中の炭化物形成元素Xの量(質量%)、 Xsp:粒径20nm未満の析出物中の炭化物形成元素Xの量(質量%)、s+d:炭化物形成元素Xの最外のs殻とd殻の電子数の和)
を満足する組織を有する。なお、炭化物形成元素Xは、Mo、V、W、Ti、Nbのいずれか、あるいはそれらの複合とすることが好ましい。Mo、V、W、Ti、Nbの(s+d)は、それぞれ6、5、6、4、5である。炭化物形成元素Xが複数の場合には、それぞれの元素について上記した(1)式を満足するように、析出物分布を調整することを必要とする。これにより、所望の高強度を有し、さらに成形性と耐疲労特性、さらには、低温靭性がともに優れた鋼材となる。なお、さらに好ましくは、Xlp/Xsp は、24/(s+d)3〜180/(s+d)3の範囲である。
粒径100nmを超える析出物は、鋼材の成形性の低下を抑えつつ、鋼材の疲労強度を高める効果を有する。しかし、粒径100nmを超える析出物を過剰に析出させても効果が飽和する。一方、粒径20nm未満の微細析出物は、鋼材の降伏強度を高め、疲労強度を上昇させる。しかし、粒径20nm未満の微細析出物を過剰に析出させると、鋼材の成形性を低下させるとともに、初期疲労亀裂の発生段階において、応力集中部での応力緩和特性が低下する。本発明では、粒径100nmを超える析出物、粒径20nm未満の微細析出物の量は、析出物中の炭化物形成元素X量、Xlp、Xspを指標とする。そして、粒径100nmを超える析出物の量と粒径20nm未満の微細析出物の量との比、Xlp/Xspが、所定の範囲(1)式を満足するような析出物量分布を有する組織とする。
Xlp/Xspの範囲について、具体的に炭化物形成元素XがNbの場合で具体的に説明する。
粒径100nmを超える析出物中のNb量Nblpと、粒径20nm未満の析出物中のNb量Nbspとの比、Nblp/Nbspは0.10〜2.0に限定する。好ましくは、0.2〜1.5の範囲である。なお、これは(1)式中の、12/(s+d)3 =12/5〜240/(s+d)3=240/5、すなわち、0.096〜1.92に該当する。なお、析出物のサイズ別定量方法は、後述する。
Nblp/Nbspが0.10〜2.0の範囲で、所望の優れた成形性と優れた断面成形後の耐ねじり疲労特性を兼備した鋼材とすることができる。Nblp/Nbspが0.10未満、あるいは2.0超えでは、伸び(延性)で代表される成形性あるいは(σ/TS)で示される耐ねじり疲労特性のいずれか、あるいは両方とも低下する。この状況を図2に示す。
図2では、Nblp/Nbspと引張試験での伸びElとの関係、および、Nblp/Nbspと断面成形後の耐ねじり疲労特性との関係を示す。耐ねじり疲労特性は、断面成形後の5×10繰返し疲れ限度σと鋼管引張強さTSとの比、(σ/TS)で代表する。図2から、Nblp/Nbspが0.10〜2.0の範囲で、伸びElが16%以上、(σ/TS)が0.45以上を同時に満足し、優れた成形性と優れた断面成形後の耐ねじり疲労特性をともに確保されていることがわかる。
また、炭化物形成元素XをV、Ti、Mo、Wのうちから選ばれた1種または2種以上とする場合には、粒径100nmを超える析出物中のV量Vlpと、粒径20nm未満の析出物中のV量Vspの比、Vlp/Vspは0.1〜2、粒径100nmを超える析出物中のTi量Tilpと、粒径20nm未満の析出物中のTi量Tispの比、Tilp/Tispは0.2〜4、粒径100nmを超える析出物中のMo量Molpと、粒径20nm未満の析出物中のMo量Mospの比、Molp/Mospは、0.05〜1、粒径100nmを超える析出物中のW量Wlpと、粒径20nm未満の析出物中のW量Wspの比、Wlp/Wspは0.05〜1と、それぞれ析出物分布を調整することが好ましい。なお、好ましくは、それぞれ、Vlp/Vsp:0.10〜2.0、Tilp/Tisp :0.20〜4.0、Molp/Mosp:0.05〜1.0、Wlp/Wsp:0.05〜1.0であり、さらに好ましくはそれぞれ、Vlp/Vsp :0.2〜1.5、Tilp/Tisp :0.4〜3、Molp/Mosp:0.1〜0.75、Wlp/Wsp:0.1〜0.75である。
つぎに、本発明鋼材の好ましい製造方法について説明する。
本発明では、上記した組成を有する鋼素材(スラブ、鋼板、鋼管等)に、熱間圧延等の熱加工履歴、あるいは熱処理等の熱履歴を適正条件で施して、上記したような適正な析出物量分布を有する高張力鋼材とすることが好ましい。
上記したような析出物量分布を付与するための熱履歴は、累積熱処理パラメータΣAi
ΣAi=Σ{Ti・(20+logt)}
(ここで、t:i番目の工程での熱処理時間(hr)、Ti:i番目の工程での熱処理温度(K))
を、850〜1150℃の温度域でΣAi=30000〜20000、かつ500〜700℃の温度域でΣAi=20000〜13000の範囲となるような、熱履歴とする。これにより、上記したような適正な析出物量分布が得られる。 ここで、累積熱処理パラメータΣAiは、公知のパラメータで、例えば、日本鉄鋼協会編「改訂5版 鋼の熱処理 p.164」に、Lanson−Millerパラメータとして記載されている。
850℃〜1150℃のオーステナイト域では、主として粒径100nmを超える析出物が析出する。その析出量は、温度、時間を内包する累積熱処理パラメータΣAiと関連する。850℃〜1150℃のオーステナイト域でのΣAiが30000を超えて大きくなると、粒径100nmを超える析出物量が多くなりすぎて、低温で析出する粒径20nm未満の微細析出物量が少なくなり、適正な粒径20nm未満の微細析出物量を確保できなくなり、耐疲労特性が低下する。一方、ΣAiが20000未満では、粒径100nmを超える析出物量が少なくなり、その後の低温で析出する粒径20nm未満の微細析出物量が過剰となり成形性が低下する。このため、850〜1150℃の温度域でのΣAiは30000〜20000の範囲に限定することが好ましい。なお、さらに好ましくは28000〜22000である。
なお、上記したオーステナイト域での熱履歴中に、加工歪を付与してもよい。加工歪を付与することにより、歪誘起析出が促進され、析出物が効率的に析出する。なお、圧下率の下限は特に限定する必要はないが、圧下率:99.5%を超える加工は内外表面の粗さを通してかえって疲労強度を低下させる。このため、圧下率は99.5%以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは97.1〜99.0%である。
500〜700℃のフェライト域では、主として粒径20nm未満の微細析出物が析出する。その析出量は温度、時間を内包する累積熱処理パラメータΣAiと関連する。500〜700℃のフェライト域でのΣAiが、20000を超えて大きくなると、粒径20nm未満の微細析出物量が過剰となり成形性が低下する。一方、ΣAiが、13000未満では、粒径20nm未満の微細析出物量が少なく、疲労強度が低下する。このため、500〜700℃のフェライト域でのΣAiを20000〜13000の範囲に限定することが好ましい。ΣAiをこの範囲内に調整することにより、適正量の粒径20nm未満の微細析出物を確保できる。なお、より好ましくは19000〜15000である。
Cと、Nbを含有する組成の鋼材についてNblp/Nbsp 値に及ぼす、850〜1150℃の温度域での累積熱処理パラメータΣAiと500〜700℃の温度域での累積熱処理パラメータΣAiとの関係の影響を図3に示す。図3から、上記した熱履歴、すなわち850〜1150℃の温度域でのΣAiの範囲が30000〜20000で、かつ500〜700℃の温度域でのΣAiの範囲が20000〜13000の範囲では、Nblp/Nbsp値が、適正な範囲(0.1〜2)の値となっていることがわかる。
本発明の高張力鋼材は、上記した条件の熱履歴で熱処理された、溶接鋼管、冷延鋼板や、上記した条件の熱履歴で熱加工処理された熱延鋼帯、厚鋼板、継目無鋼管など、が該当する。
以下に、鋼材を中空管状体(溶接鋼管)とした場合について、熱間圧延された熱延鋼帯を用いて電縫溶接により閉断面素材(中空管状体:鋼管)とする場合を例に説明する。
上記した条件の熱履歴で製造された熱延鋼帯は、熱延ままでもよいが、酸洗、ショットブラスト等を施して表面の黒皮を除去して用いることが好ましい。さらに、耐食性、塗膜密着性の観点からこの鋼帯に亜鉛メッキ、アルミメッキ、ニッケルメッキ、有機皮膜処理などの表面処理を施すこともできる。酸洗まま、あるいは表面処理を施された鋼帯は、幅絞り率10%以下の電縫造管を施して鋼管とされることが好ましい。
なお、溶接鋼管の素材は、熱延鋼帯に限定されることはない。上記した熱延鋼帯の製造方法で製造された熱延鋼帯を素材として、冷間圧延、焼鈍等を施された冷延焼鈍鋼帯、あるいはさらに各種表面処理を施された表面処理鋼帯を用いてもなんら問題はない。また、電縫造管に代えて、ロールフォーミング、切板のプレス閉断面化、造管後の冷間・温間・熱間での縮径および焼鈍などの熱処理等を組合せた造管工程としてもよい。さらに電縫溶接に代えて、レーザー溶接、アーク溶接、プラズマ溶接、スポット溶接などを用いてもなんら問題はない。本発明の中空閉断面素材は部材成形ままで優れた特性を発揮するが、付加的に部材成形後に残留応力除去焼鈍等の熱処理、あるいはショットピーニング等による表面の高硬度化や圧縮残留応力付与を施すこともなんら問題ない。
このようにして製造された中空管状体は、好ましくは管内外表面の算術平均粗さRaが2μm以下、最大高さ粗さRzが30μm以下、十点平均粗さRz JISが20μm以下である表面性状の中空管状体であり、とくに、疲労の起点となる管内外表面の凹凸に起因する応力集中が緩和されることにより耐ねじり疲労特性が顕著に向上する。
(実施例1)
表1に示す組成の鋼スラブに、熱間圧延とその後に熱処理とを施し、板厚:約3mmの熱延鋼帯とした。なお、熱間圧延における熱加工履歴は、累積熱処理パラメータΣAiが850〜1150℃の温度域でΣAi=18000〜33000の範囲で、圧下率:98.8%の圧延歪を加える熱加工履歴とした。引続き熱処理として、500〜700℃の温度域でΣAi=11500〜22500の範囲となる熱履歴を加えた。各熱延鋼帯の熱履歴を表2に示す。
ついで、これら熱間圧延鋼帯に酸洗を施したのち、所定の幅寸法にスリット加工を施し管素材とした。これら管素材に、連続成形してオープン管とし、該オープン管を高周波抵抗溶接により電縫溶接する電縫造管を施して溶接鋼管(製品管)(外径89.1mmφ×肉厚約3mm)とした。なお、電縫造管では、幅絞り率は4%とした。
得られた溶接鋼管から、試験材を採取し、引張試験、析出物サイズ別定量試験、ねじり疲労試験、低温靭性試験、表面粗さ試験を実施した。試験方法はつぎの通りとした。
(1)引張試験
これら溶接鋼管から、管軸方向が引張方向となるように、JIS Z 2201の規定に準拠してJIS12号試験片を切出し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(引張強さTS、降伏強さYS、El)を求めた。
(2)析出物サイズ別定量試験
これら溶接鋼管から、20×30mm×肉厚約3mmの大きさの試片を切出し、10%AA系電解液(10vol%アセチルアセトン−1mass%塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール)中で、約0.2gを電流密度20mA/cm2で定電流電解した。電解後の、表面に析出物が付着している試片を電解液から取り出して、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液(500mg/l)(以下、SHMP水溶液と称す)中に浸漬し、超音波振動を付与して、析出物を試片から剥離し、SHMP水溶液中に抽出した。次いで、析出物を含むSHMP水溶液を、穴径100nmフィルタ、および、穴径20nmフィルタを順に用いて濾過した。濾過後のフィルタ上の残渣と、濾液とに対してICP発光分光分析装置を用いて分析し、フィルタ上の残渣および濾液中の炭化物形成元素X(Mo、V、W、Ti、Nb)の絶対量を測定し、粒径100nmを超える析出物中、粒径100〜20nmの析出物中、粒径20nm未満の析出物中にそれぞれ含まれるX(Mo、V、W、Ti、Nb)の絶対量Xlp、Xmp、Xspを算出した。なお、電解重量は、析出物剥離後の試片に対して重量を測定し、電解前の試片重量から差し引くことにより算出した。
粒径100nmを超える析出物中の炭化物形成元素量Xlpと粒径20nm未満の析出物中の炭化物形成元素量Xsp との比、Xlp/Xspで、析出物量分布(組織)の良否を評価した。
(3)ねじり疲労試験
得られた溶接鋼管から、試験用管材(長さ:1500mm)を採取した。そして、採取した試験用管材の中央部約1000mmLを図1(特開2001−321846号公報の図11)に示すように円周方向断面がV字形状となるように断面成形加工し、ねじり疲労試験用試験材とした。
ねじり疲労試験は、1Hz、両振りの条件で応力水準を種々変化させて行い、負荷応力Sにおける破断までの繰返し回数Nを求めた。得られたS−N線図より5×105繰返し限度σB(MPa)を求め、σBに対する管引張強さTSの比(σB/TS)で、耐ねじり疲労特性を評価した。なお、負荷応力Sは最初にダミー片でねじり試験を行い、疲労亀裂位置を確認し、その位置に3軸歪ゲージを貼付けて実測した。
(4)低温靭性試験
得られた溶接鋼管から、試験用管材(長さ:1500mm)を採取し、採取した試験用管材の中央部約1000mmLを図1(特開2001−321846号公報の図11)に示すように円周方向断面がV字形状となるように断面成形加工し、試験材平坦部分より、管円周方向(C方向)が試験片長さとなるように展開し、JIS Z 2242の規定に準拠してVノッチ試験片(1/4サイズ)を切出し、シャルピー衝撃試験を実施し、破面遷移温度vTrsを求め、低温靭性を評価した。
(5)表面粗さ試験
得られた溶接鋼管の内外表面の表面粗さを、触針式粗度計を用いて、JIS B 0601−2001の規定に準拠して、粗さ曲線を測定し、粗さパラメータとして、算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、十点平均粗さRzJISを求めた。なお、粗さ曲線の測定方向は、管の円周方向(C方向)とし、低域カットオフ値0.8mm、評価長さ4mmとした。代表値としては、内表面又は外表面のうち、値の大きい方を採用した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0005282449
Figure 0005282449
Figure 0005282449
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本発明はいずれも、伸びElが16%以上で成形性に優れ、(σB/TS)が0.45以上で断面成形加工後の耐ねじり疲労特性に優れ、断面成形加工後の破面遷移温度vTrsが−50℃以下と低温靭性に優れた溶接鋼管(鋼材)である。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、伸びElが小さく成形性が低下しているか、(σB/TS)が0.45未満で断面成形加工後の耐ねじり疲労特性が低下しているか、あるいはvTrsが−50℃超えと低温靭性が低下した製品管となっている。
850〜1150℃の温度域のΣAiが本発明の好適範囲より大きいか、500〜700℃の温度域のΣAiが本発明の好適範囲よりも小さい比較例(管No.1、No.4、No.7、No.10、No.13、No.16、No.19、No.22、No.25、No.28)はいずれも粒径100nmを超える析出物中のNb、Ti、V、Mo、W量と粒径20nm未満の析出物のNb、Ti、V、Mo、W量の比Nblp/Nbsp、Tilp/Tisp、Vlp/Vsp、Molp/Mosp、Wlp/Wspのうち少なくとも一つが本発明範囲より大きく、断面成形加工後の(σB/TS)が0.45未満と耐ねじり疲労特性が低下している。また、850〜1150℃の温度域のΣAiが本発明の好適範囲より小さいか、500〜700℃の温度域のΣAiが本発明の好適範囲よりも大きい比較例(管No.3、No.6、No.9、No.12、No.15、No.18、No.21、No.24、No.27)はいずれも粒径100nmを超える析出物中のNb、Ti、V、Mo、W量と粒径20nm未満の析出物のNb、Ti、V、Mo、W量の比Nblp/Nbsp、Tilp/Tisp、Vlp/Vsp、Molp/Mosp、Wlp/Wspのうち少なくとも一つが本発明範囲よりも小さく、Elが16%未満と低く、かつ断面成形後の(σB/TS)が0.45未満と耐ねじり疲労特性が低下している。
また、850〜1150℃の温度域のΣAiおよび500〜700℃の温度域のΣAiがいずれも本発明の好適範囲内であるが、組成が本発明の好適範囲を外れる比較例(管No.31〜No.40)はいずれも、断面成形加工後の(σB/TS)が0.45未満で、耐ねじり疲労特性が低下している。なお、これら比較例は、管No.31を除いて、Elが16%未満と低く成形性が低下し、かつvTrsが−50℃超えと低温靭性も低下している。
C量が本発明の好適範囲を外れる比較例(管No. 31、No.32)、Si量が本発明の好適範囲を下回る比較例(管No.33)、Nb、V、W、Ti、Mo量が本発明の好適範囲を下回る比較例(管No.36〜No.40)は、いずれもNblp/Nbsp、Tilp/Tisp、Vlp/Vsp、Molp/Mosp、Wlp/Wspが本発明の好適範囲を大きく外れ、断面成形加工後の(σB/TS)が0.45未満で、耐ねじり疲労特性が低下している。また、Si量が本発明の好適範囲を上回る比較例(管No.34)は、Nblp/Nbspが本発明の好適範囲よりも小さく、断面成形加工後の(σB/TS)が0.45未満で、耐ねじり疲労特性が低下し、またさらに管内外の表面粗さが本発明の好適範囲より大きくなっている。なお、炭化物形成元素を含有しない比較例(管No.35)は、断面成形加工後の(σB/TS)が0.45未満で、耐ねじり疲労特性が低下している。
なお、製品管(管No.1〜No.30、No.31〜No.33、No.35〜No.40)の管内外表面は、算術平均粗さRaが2μm以下、最大高さ粗さRzが30μm以下、十点平均粗さRzJISが20μm以下と良好であった。
実施例におけるねじり疲労試験、低温靭性試験に用いる試験材の断面成形加工状態を示す説明図である。 粒径100nmを超える析出物中のNb量Nblpと、粒径20nm未満の析出物中のNb量Nbspとの比、Nblp/Nbspと,引張試験での伸びEl、断面成形加工後の(σB/TS)との関係を示すグラフである。 Nblp/Nbsp値に及ぼす、 850〜1150℃の温度域での累積熱処理パラメータΣAiと、500〜700℃の温度域での累積熱処理パラメータΣAiとの関係の影響を示すグラフである。

Claims (9)

  1. 質量%で、
    C:0.03〜0.24%、 Si:0.002〜0.95%、
    Mn:1.01〜1.99%、 Al:0.01〜0.08%、
    Nb:0.001〜0.15%
    を含有し、さらにP、S、N、Oを、
    P:0.019%以下、S:0.010%以下、N:0.008%以下、O:0.003%以下に調整して含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、粒径100nmを超える析出物中のNb量Nblpと、粒径20nm未満の析出物中のNb量Nbspとの比、Nblp/Nbspが0.10〜2.0である組織を有することを特徴とする成形性と耐疲労特性に優れた高張力鋼材。
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.001〜0.15%、Ti:0.001〜0.15%、Mo:0.001〜0.45%、W:0.001〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とし、前記組織がさらに、
    Tiを含有する場合は、粒径100nmを超える析出物中のTi量Tilpと、粒径20nm未満の析出物中のTi量Tispの比、Tilp/Tispが0.2〜4であり、
    Vを含有する場合は、粒径100nmを超える析出物中のV量Vlpと、粒径20nm未満の析出物中のV量Vspの比、Vlp/Vspが0.1〜2であり、
    Moを含有する場合は、粒径100nmを超える析出物中のMo量Molpと、粒径20nm未満の析出物中のMo量Mospの比、Molp/Mospが0.05〜1であり、
    Wを含有する場合は、粒径100nmを超える析出物中のW量Wlpと、粒径20nm未満の析出物中のW量Wspの比、Wlp/Wspが0.05〜1である組織とすることを特徴とする請求項に記載の高張力鋼材。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.001〜0.45%、Cu:0.001〜0.45%、Ni:0.001〜0.45%、B:0.0001〜0.0009%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高張力鋼材。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.005%を含有することを特徴とする請求項ないしのいずれかに記載の高張力鋼材。
  5. 前記高張力鋼材が、管内外表面の算術平均粗さRaが2μm以下、最大高さ粗さRzが30μm以下、十点平均粗さRz JISが20μm以下である中空管状体であることを特徴とする請求項ないしのいずれかに記載の高張力鋼材。
  6. 質量%で、
    C:0.03〜0.24%、 Si:0.002〜0.95%、
    Mn:1.01〜1.99%、 Al:0.01〜0.08%、
    Nb:0.001〜0.15%
    を含有し、さらにP、S、N、Oを、 P:0.019%以下、S:0.010%以下、N:0.008%以下、O:0.003%以下に調整して含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材に、所定の熱履歴を施し、鋼材とするにあたり、
    前記所定の熱履歴を、下記(2)式で定義される累積熱処理パラメータΣAiが、850〜1150℃の温度域で30000〜20000、かつ500〜700℃の温度域で20000〜13000を満足する熱履歴とすることを特徴とする成形性と耐疲労特性に優れた高張力鋼材の製造方法。

    ΣAi=Σ{Ti・(20+log ti)} ‥‥(2)
    ここで、ti:i番目の工程での熱処理時間(h)
    Ti:i番目の工程での熱処理温度(K)
  7. 前記組成に加えてさらに、質量%で、V:0.001〜0.15%、Ti:0.001〜0.15%、Mo:0.001〜0.45%、W:0.001〜0.15%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項に記載の高張力鋼材の製造方法。
  8. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:0.001〜0.45%、Cu:0.001〜0.45%、Ni:0.001〜0.45%、B:0.0001〜0.0009%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項6または7に記載の高張力鋼材の製造方法。
  9. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca:0.0001〜0.005%を含有することを特徴とする請求項ないしのいずれかに記載の高張力鋼材の製造方法。
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