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JP5327783B2 - 耐水性自立膜及びその製造方法 - Google Patents

耐水性自立膜及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐水性自立膜とその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、ゼオライトとセラミックの混合粉体を用いて作製した、数十ナノメートルから数十ミクロン径の細孔径分布を有する耐水性自立膜、その製造方法及び用途に関するものである。
ゼオライトは、規則的に配列したミクロ孔を有し、一般に、耐熱性が高く、化学的にも安定なものが数多く得られることから、様々な分野で利用されている。このゼオライトは、その骨格構造が、Siの一部がAlに置換したアルミノシリケートであり、分子オーダー(3〜10Å程度)の細孔を有し、立体選択的な吸着作用を持つことより、モレキュラーシーブ(分子ふるい)としての機能を有する。数十種類の天然に産出するゼオライトの他に、これまでに、150種類以上のゼオライトが合成されており、固体酸触媒、分離吸着剤、及びイオン交換剤等の分野で幅広く用いられている。
このゼオライトは、可塑性に乏しいため、膜状などに成形する場合、ほとんどの場合は水熱合成法により、基板上にゼオライト膜を合成している。すなわち、大量の水とアルミニウム源、シリカ源、アルカリ金属、アミン類などの有機結晶化調整剤を適宜目的の生成物のゼオライト組成になるように調合し、オートクレーブ等の圧力容器にそれらを封じ込めて、アルミナやムライトなどの多孔質基板やチューブを共存させて加熱することにより、それらの基板上にゼオライト膜を合成している。
これまでに、例えば、MFI、MEL、LTA、ANA、CHA、FAU、SOD、MOR、ERI、BEA、LTL、DDR(以上はhttp://www.iza-structure.org/databases/のframework Typesに記載されているゼオライトの3次元構造の種類を表すコードである。)といったゼオライト膜が合成されており、それぞれのゼオライトの性質(例えば、細孔径・親和性)から、分離対象を適宜選択している。また、先行文献には、ゼオライト種結晶を塗布した後、更に、水熱合成することにより欠陥のないゼオライト膜を合成する方法が開示されている(特許文献1)。また、これらの手法で合成されたゼオライト膜は、気体又は液体混合物からの分離・濃縮などに利用されることが開示されている(特許文献2)。
このように、ゼオライト膜の利用はナノサイズの細孔による成分分離膜が一般的である。近年問題とされるバラスト水のろ過処理においては、5,000tから数万トンの水処理が必要となり、ナノメートルサイズの細菌類除去の他に数ミクロンサイズの微生物除去が重要となる。現状の水処理装置では、大型微生物の処理には50μmサイズのSUSフィルターによるろ過や機械的殺滅が検討されている。ろ過による処理は主にアメリカやカナダで検討されている。処理量としては3,000t/hの処理が可能とされ、現状で400t/h以上の規模の実船試験も行なわれている。
日本では装置のコンパクト化やメンテナンスの容易さから、パイプ式機械的殺滅法に着目しており、その処理能力は、現状最大で300t/hr程度となっており、5,000t量の処理には半日以上50,000tクラスのバラスト水を搭載する大型船舶では1週間かかる。また、10μmサイズ以下の微生物に対しては殺傷効果が低く、年々厳しくなる排水基準や、処理量の増加に対して、船舶へのバラストポンプの増設や装置のパイプ性能の向上が必要になるなど、困難な点も抱えている。
いずれにせよ、10μm以下の微生物の除去にはUVやオゾン処理、化学処理による殺菌が考えられているが、海水中に殺菌剤が流出することは許されないので、殺菌剤を流出しない形で担持でき、且つ数ミクロンサイズの微生物の除去もできる精密ろ過膜の利用はこれから有用であると考えられる。
このような精密ろ過分野で、ゼオライトをろ過補助材として使用する例は複数報告や特許があるが、これらはゼオライトを微生物等の吸着剤として用い、吸着媒のゼオライトを吸着質と一緒にろ過して処理するといった利用法である。例としては、銀担持ゼオライトを無機抗菌剤として、家庭用浄水器の中空糸フィルターの前段に用いる技術(特許文献3)がある。また清涼飲料水や酒類のプレフィルターとしてゼオライト担持膜を利用する特許出願がある(特許文献4)。また、船舶のバラスト水処理用のろ過フィルターとして金属スリットを擁した円筒状中空フィルタエレメントが考案されており、珪藻土やゼオライトがそのろ過助剤とされている(特許文献5)。これらのフィルターは再利用のためのメンテナンスが必要で、バラスト水や食品製造用水の処理といった、微生物等を含んだ多量の水を短時間に処理しなければならない用途には、膜ごと使い捨て可能な自立膜がより便利であると考えられる。
ゼオライト粉体を利用して板状の成形体にする方法としては、ゼオライト粉体に加える水の量を20〜40質量%にコントロールして成形、焼成することによってバインダーなしに成形体が得られる方法が提案され、焼結温度が400℃までなら陽イオン交換容量の100質量%が、500〜700℃までならの70〜80質量%が保持されることが報告されている(特許文献6)。
しかしながら、この従来技術では、ゼオライトの強い親水性のため、500〜600℃焼結後もフィルター用途としては耐圧性、耐水性が乏しく、支持膜が無い状態では崩れ易い。また、細孔は小さくなり、減圧下でも非常に低い水透過性しか得られない。強度を上げるため、焼成温度を高くすると空隙率が下がり、イオン交換性も激減する。このようにゼオライトは、それだけで基材などを用いない自立膜として且つ高い空隙率とマクロポアを有する膜に作製するのは困難であった。
特開2003−159518号公報 特開2003−144871号公報 特開2005−313151号公報 特開平4−371220号公報 特開2006−102283号公報 特開2006−27983号公報
したがって、本発明は、ゼオライトの特性である吸着性やイオン交換性を有する新規な精密ろ過膜を作製できる新材料を提供することを目的とするものである。更に、本発明は、微生物を含有する海水ろ過と同時に、イオン交換や担持金属イオンによる殺菌を行える精密ろ過膜として使用できる自立膜(以下、ゼオライト−セラミック複合自立膜ということもある。)及びこれらに用いる新材料と複合自立膜の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、これまでに報告されていないゼオライトの精密ろ過用自立膜を作製できる新材料を開発すべく、鋭意検討を行った結果、低温固結性のセラミックバインダーの混合により耐水性でイオン交換性も高い自立膜を得ることができることを見い出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
本発明は、ゼオライトとセラミック系バインダーとの混合物の固結体からなる自立膜(本明細書において、ゼオライト−セラミック複合自立薄膜ということもある。)であって、耐熱性、耐水性及び調湿性の他に、イオン交換性、吸着性等ゼオライトの特性を有することを特徴とするゼオライト−セラミック複合自立薄膜であり、原料粉末中にセラミックバインダーを混入することによって行う上記ゼオライト−セラミック複合自立薄膜の製造方法である。また、本発明は、上記のゼオライト−セラミック複合膜から成ることを特徴とする精密ろ過膜である。また、本発明は、精密ろ過とイオン交換もしくは殺菌を同時に行うことができるゼオライト−セラミック複合膜およびその製造方法である。
すなわち本発明は、
(1)ゼオライトと、アルミナ、ジルコニア、マグネシア及びシリカからなる群より選択されるセラミック系バインダーとの混合物の固結体からなる耐水性自立膜であって、数十ナノメートルから数十ミクロン径の細孔径分布を有し、水溶液の精密ろ過性と、吸着性及びイオン交換性とを有する耐水性自立膜
(2)ゼオライトが天然産のモルデナイトであることを特徴とする(1)記載の耐水性自立膜
(3)形状が平板状もしくは任意形状である(1)又は(2)に記載の耐水性自立膜
(4)厚さが0.8〜3mmである(1)〜(3)のいずれか1項に記載の耐水性自立膜
(5)4〜5ミクロンサイズのビール酵母を分散液中から手動加圧ろ過できる(1)〜(4)のいずれか1項に記載の耐水性自立膜
(6)前記ゼオライトと前記セラミック系バインダーの混合比が、質量比で1:1から1:2である(1)〜(5)のいずれかに記載の耐水性自立膜、及び
(7)ゼオライト粉末と、アルミナ、ジルコニア、マグネシア及びシリカからなる群より選択されるセラミック系バインダーとを混合して成型した後、成型体を常温〜300℃で固結させることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の耐水性自立膜の製造方法
を提供するものである。
本発明により、
(1)精密ろ過膜でありながら、ゼオライトのイオン交換性や吸着性を併せ持つゼオライト−セラミック複合体からなる耐水性材料が得られる。
(2)この耐水性材料から作製した複合膜はMgイオンなどの陽イオンを含有する水溶液の吸着、イオン交換作用を有し、かつ耐水性で自立複合膜とできる。
(3)本発明のゼオライト−セラミック複合膜は、例えば、食品工業用排水の処理剤として好適に使用することができる。
(4)耐水性、耐熱性、湿度調整機能を持ち合わせることから、高温高湿度環境における壁材としても使用することが可能である。また、ゼオライトが3次元細孔構造を有することから、VOC等の有害ガスの吸着分離に使用することが可能である。また、銀その他の金属イオン等を担持することにより、抗菌性や触媒作用等の機能を付与することが可能である。
次に、本発明の好適な実施の形態を説明する。なお、本発明において、数値範囲の記載は、両端値のみならず、その中に含まれる全ての任意の中間値を含むものである。
本発明において用いるゼオライトの種類について特に限定はしない。また、天然産ゼオライトであることや、結晶粒子が数ミクロンサイズと大きいのは一向に差し支えないが、ベントナイトのように水膨潤性の粘土成分を10質量%以上含むものは800℃以下の焼成では、焼成後も水膨潤性が残り、耐水性が得られないので好ましくない。本発明においてゼオライト結晶の結晶粒子径は好ましくは0.05〜100μm、より好ましくは0.05〜20μm程度であり、粉末として粒径は好ましくは≦0.7mm、より好ましくは≦0.2mmである。
本発明においてセラミックとバインダーと予め混合したセラミックバインダーを用いるのが好ましい。このセラミック系バインダーとはゼオライト粉末を固めるためのつなぎであり、セラミックをベース成分とした低温固結性の接着剤(結合剤)のことである。このセラミックバインダーは水溶性の粉末もしくはそれのスラリーで400℃以下で固結し、固結後は耐水性が高いものが好ましい。具体的にはセラミックバインダーのベース成分の種類としてはアルミナ、ジルコニア、マグネシア、シリカなどが挙げられこれらの粒径は特に制限するものではないが、好ましくは0.02〜100μm、より好ましくは0.02〜20μmとして用いられる。セラミックバインダー中の前記ベース成分の含有量は特に限定しないが、好ましくは95〜100質量%とする。ゼオライト粉末と混合してスラリーとする場合はこれらに水を添加してスラリー状に調製する。
本発明においてゼオライト粉末に低温固結性のセラミックバインダー、水を加えて練り合わせたスラリーを成型し、さらにこれを低温、例えば常温〜300℃で固結させることにより比較的簡単にゼオライト−セラミック複合膜を得る。
本発明における、ゼオライト−セラミック複合膜の製造方法についてさらに詳細に説明すると、上記ゼオライト粉末とセラミック系バインダー粉末を混合した後に、これにゼオライトと等量の水を混入してスラリーとする。このとき、セラミック系バインダーとゼオライト粉末の混合比は混合するバインダーの種類に影響されるが、質量比で2:1から1:1が好ましい。少なすぎると、耐水性が低下するため、より高温での焼成が必要となり、結果としてゼオライトのイオン交換性、空隙率、透水性の低下が起きる。多すぎてもゼオライトの性質が反映されにくくなり、イオン交換性や空隙率が低下する。また、成型時の水添加量については、全重量の25〜35wt%が好ましい。少なすぎると成型時に崩れ易く、また、細孔容積や、細孔径が小さくなる。多すぎると成型が困難であり、乾燥、焼成、通水時にも亀裂や崩れが生じ易い。成型の手法には特に制限はなく好きな形に成型してよい。一軸性成型機による加圧成型の際には、特に強く加圧する必要はなく、成型機での加圧は100MPa以下が好ましい。加圧の圧力が高すぎると、細孔が潰れ、空隙率の低下を引き起こすので好ましくない。本発明のゼオライト−セラミック複合体の乾燥・固結後の空隙率は水銀ポロシメーター(島津製作所社製、オートポアIII9400型)で測定した値で、好ましくは30%〜70%であり、より好ましくは30%〜65%である。
本発明において、複合膜成形後の乾燥・固結処理を行うが、この際、乾燥方法としては室温乾燥、凍結乾燥他のいずれの乾燥方法を用いても差し支えないが、急激な加熱脱水処理は膜が割れ易いので、好ましくない。固結処理を行う場合も同様に急激な加熱・冷却を避けることが望ましい。
本発明のゼオライト−セラミック複合体からなる前記の微細な細孔径を有する、水溶液の精密ろ過が可能な材料は、基材を用いずにそれ自体で適当な膜状に成形し使用可能である。
とりわけ本発明の複合膜は、それ自体、厚くなくても、また基材がなくても、自立して薄い膜状を保ち、適当な強度を有する。
この自立膜とできる場合の膜厚は特に制限するものではないが好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1〜3mmである。
次に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
天然モルデナイトCP(<0.15mmφ、(株)新東北化学工業)1gに2gのアルミナ系セラミックバインダー(粒径<5μm、東亜合成 アロンセラミックD(バインダー成分、東亜合成社製) アルミナ含有量94質量%)を混合し、これに1gの蒸留水を添加して練り合わせた。このモルデナイトスラリーをSUS製のディスク成型機に入れて100MPaで加圧成型した後、室温にて一晩乾燥を行った。その後、さらに固結させるため、オートクレーブ内部で150℃、24時間加熱処理を行った。こうして得られた天然モルデナイトセラミック複合膜を削って2mm厚とし、これをプラスティックのリング状ホルダーに装着し、100MPaの減圧下で水透過速度を測定したところ、10mLの通水では1.0cm/min一定であった。続けて水の代わりに5mmol/LのMgCl溶液を10mL減圧下で透過させたところ、透過速度は0.60cm/min一定であった。また、MgCl供給液中のMg濃度は120ppmであったが、透過液中では13ppmに低下した。同じ手法で作製した膜を水銀ポロシメーターで測定すると空隙率が32%前後であり、細孔径分布曲線には0.06,0.1,0.2,0.4および1μmにピークが得られた(図1参照)。
[実施例2]
実施例1と同様の成型機で成型したディスクを、液体窒素で凍結し、一晩真空乾燥を行なった。そののちオートクレーブ内部で150℃、24時間加熱処理を行った。こうして得られた天然モルデナイトセラミック複合膜を削って2mm厚とし、これをプラスティックのリング状ホルダーに装着し、100MPaの減圧下で水透過速度を測定したところ、0.8cm/minであった。続けてMgCl溶液の減圧ろ過試験を行なった。減圧ろ過時のろ過速度は水透過速度と殆ど変わらず、およそ1cm/minであった。供給液及びろ液中のMg濃度をICPにて測定したところ、供給液中60ppmのMg濃度が、減圧ろ過のろ液では検出されなかった。また、1%濃度のビール酵母(4−5μm径サイズ)サスペンジョンの手動加圧ろ過を行なったところ、ろ液中に確認される酵母はおよそ1%以下となった(図2参照)。図中()はろ過前の分散液を、()はろ過液をそれぞれカーボンテープ上に等量滴下乾燥した状態の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。()において白い点がないのでビール酵母が濾過されていることが分かる。同じ手法で作製した膜について、水銀ポロシメーターで細孔径分布を測定したところ、空隙率が40%前後であり、細孔径分布曲線には0.06,0.1,0.2,0.4,1および2μmにピークが得られた(図1参照)。
[実施例3]
実施例2においてゼオライトとアルミナ系セラミック系バインダーの混合比を質量比で1:1とした以外は、実施例2と同様にして作製した天然モルデナイトセラミック複合膜を0.9mm厚まで削り、プラスティックのリング状ホルダーに装着してMgCl溶液の減圧、手動加圧、自然ろ過試験を行なった。ICPにて供給液は17ppm、減圧ろ過ではろ液中のMg濃度が3.8ppm,手動ろ過では1.5ppm,自然ろ過で0.4ppmであった。同様にして作製した膜について水銀ポロシメーターで細孔径分布を測定したところ、空隙率が50%前後、細孔径分布曲線には0.05,0.1,0.2,0.5,1,2,15,37および68μmであった。
[実施例4]
天然モルデナイト60P(<0.2mmφ、(株)新東北化学工業)1gに2gの粉末状シリカ系セラミック接着剤(粒径1〜50μm(水分散によって、より細かくなる)、太陽金網 Thermeez 7030)を混合し、これに1.5gの蒸留水を添加して練り合わせた。このモルデナイトスラリーを実施例1と同様のSUS製の成型機に入れて100MPaで加圧成型した後、室温にて一晩乾燥を行った。その後、さらに固結させるため、オートクレーブ内部で65℃で一晩、150℃2時間追加加熱処理を行った。こうして得られた天然モルデナイトセラミック複合膜を削って2mm厚とし、これをプラスティックのリング状ホルダーに装着し、100MPaの減圧下で水透過速度を測定したところ、0.2cm/minであった。また、手動加圧にてMgCl溶液を透過させたところ、供給液中120ppmであったMg濃度が、透過液では90ppmに減少した。同様にして手動加圧ろ過にてビール酵母分散液のろ過を行なったところ、ろ過液中の4−5μmサイズの酵母数は1%以下に減少した。別途この方法で作製した膜について水銀ポロシメーターで細孔径分布を測定したところ、空隙率が32%前後、細孔径は0.1,0.2,0.5,1,10,37および68μmであった。
[比較例1]
特許文献6(又は実施例1の図1)に記載の方法に従い、天然モルデナイトCP((株)新東北化学工業)3gに蒸留水を添加して練り合わせ、このモルデナイトスラリーの含水率が27質量%になるまで室温放置した後、スラリーを実施例1と同様のSUS製の成型機に入れて200MPaで加圧成型し、室温乾燥を行い、さらにオートクレーブ内部で500℃、1時間固結させるための加熱処理を行いディスク状のモルデナイト膜を得た。加熱処理後、水銀ポロシメーターで細孔径分布を測定したところ、空隙率が37%前後、細孔径は0.06,0.1,0.2および0.4μmであった。このディスクをリング状ホルダーに装着して水透過率を測定したところ、空隙率が実施例1や4と比較して高いにもかかわらず、減圧方式で0.03cm/min程度の水透過量しか得られず、精密ろ過試験ができなかった。
[比較例2]
モルデナイトスラリーの成型時の含水率を35質量%にする他は、比較例1と同様の処理を行いディスク状のモルデナイト膜を得た。加熱処理後、水銀ポロシメーターで細孔径分布を測定したところ、細孔径は比較例1と同様であったが、空隙率が49%前後に増加した(図1参照)。このディスクを実施例1と同様に2mm厚に削り、リング状プラスティックホルダーに装着し、100MPaの減圧下で水透過速度を測定した。その結果、通水10mLで膜が崩れ、測定が不可能になった。
[比較例3]
モルデナイトスラリーの成型時の含水率を34%とし、成型時の加圧圧力を100MPa、焼成温度を700℃とする以外は比較例1と同様の処理を行いディスク状のモルデナイト膜を得た。このディスクを実施例1と同様に2mm厚に削り、リング状プラスティックホルダーに装着し、水透過速度を測定したが、減圧方式で0.03cm/min程度の水透過量しか得られず、精密ろ過試験ができなかった。
以上詳述したように、本発明は、ゼオライト−セラミック複合膜及びその製造方法に係るものであり、本発明により、現在までに報告されていない精密ろ過膜でありながら、ゼオライトのイオン交換性や吸着性を併せ持つゼオライト−セラミック複合膜を提供できる。本発明によれば、例えばバラスト水や食品工業用排水の処理膜として好適に使用することができる。耐水性、耐熱性、湿度調整機能を持ち合わせることから、高温高湿度環境における壁材としても使用することが可能である。また、ゼオライトが3次元細孔構造を有することから、VOC等の有害ガスの吸着分離に使用することが可能である。また、銀その他の金属イオン等を担持することにより、抗菌性や触媒作用等の機能を付与することが可能である。
成型焼成後のゼオライト−セラミック複合膜の細孔径分布曲線である。 成型焼成後のゼオライト−セラミック複合膜によるビール酵母ろ過の透過液を示す、()がろ過前の液、()が透過液である。

Claims (7)

  1. ゼオライトと、アルミナ、ジルコニア、マグネシア及びシリカからなる群より選択されるセラミック系バインダーとの混合物の固結体からなる耐水性自立膜であって、
    数十ナノメートルから数十ミクロン径の細孔径分布を有し、水溶液の精密ろ過性と、吸着性及びイオン交換性とを有する耐水性自立膜
  2. ゼオライトが天然産のモルデナイトであることを特徴とする請求項1記載の耐水性自立膜
  3. 形状が平板状もしくは任意形状である請求項1又は2に記載の耐水性自立膜。
  4. 厚さが0.8〜3mmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐水性自立膜。
  5. 4〜5ミクロンサイズのビール酵母を分散液中から手動加圧ろ過できる請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐水性自立膜。
  6. 前記ゼオライトと前記セラミック系バインダーの混合比が、質量比で1:1から1:2である請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐水性自立膜
  7. ゼオライト粉末と、アルミナ、ジルコニア、マグネシア及びシリカからなる群より選択されるセラミック系バインダーとを混合して成型した後、成型体を常温〜300℃で固結させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐水性自立膜の製造方法。
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