[実施例1における移動体端末の概要]
まず、図1を用いて、実施例1における移動体端末の概要を説明する。図1は、実施例1における移動体端末の概要を説明するための図である。
図1に示すように、実施例1における移動体端末は、GPS受信部を装着している。GPS受信部は、図1に示すように、GPS衛星から送信された時刻情報や、HDOP(Horizontal Dilution of Precision)情報、あるいはSN(Signal to Noise ratio)情報などを受信する。また、GPS受信部は、時刻情報を受信すると、当該時刻情報(発信の時刻)とGPS受信部で測定した時刻情報(着信の時刻)との時刻差に、電波の伝播速度を積算することによって、GPS衛星からの距離を算出する。また、GPS受信部は、少なくとも3個のGPS衛星からの距離を算出することで、移動体端末の位置を示す測位情報(測位座標、絶対座標)を算出する。また、GPS受信部は、算出した測位情報(測位座標)や、HDOP情報、あるいはSN情報などを、融合演算処理部に送信する。なお、HDOP情報は、GPS衛星の水平方向の分布を示す情報である。また、SN情報は、GPS衛星から送信された電波の強度を示す情報である。
また、図1に示すように、実施例1における移動体端末は、センサ部と自律航法演算処理部とを含む自律航法測位部を装着している。自律航法演算処理部は、図1に示すように、センサ部から送信された加速度情報、磁気情報、およびジャイロ情報を受信する。また、自律航法演算処理部は、記憶部に蓄積した加速度情報、磁気情報、およびジャイロ情報から、移動体端末の所持者(以下、使用者と呼ぶ)の移動方向、移動距離および体の向きを算出する。また、自律航法演算処理部は、移動方向、移動距離および体の向きから、移動体端末の位置を示す測位情報(差分位置(前回導出された位置情報からの差分情報))を算出する。また、自律航法演算処理部は、算出した測位情報(差分位置)を、融合演算処理部に送信する。なお、加速度情報とは、加速度センサから取得した重力加速度情報である。また、磁気情報とは、磁気センサから取得した地磁気ベクトル情報である。また、ジャイロ情報とは、ジャイロセンサから取得した使用者の体の回転量である。
このように、GPS受信部と自律航法測位部とを装着する移動体端末は、図1に示すように、融合演算処理部(特許請求の範囲に記載の「位置情報処理装置」に対応する)において、位置情報の導出に用いる測位情報を選択する。具体的には、融合演算処理部は、測位情報として、GPS受信部によって測位された測位情報を選択するのか、あるいは、自律航法測位部によって測位された測位情報を選択するのかを、各々の信頼性指数を算出し、比較することで決定する。なお、信頼性指数とは、移動体端末の使用者の位置を示す位置情報を測位情報に基づいて導出する際の当該測位情報の信頼性の度合いを示す情報のことである。
この点について、以下、簡単に説明する。まず、融合演算処理部は、信頼性指数を、GPS受信部によって測位された測位情報(以下、GPS受信部の測位情報と呼ぶ)に関して算出する(図1の(1)を参照)。具体的には、融合演算処理部は、GPS受信部から送信されたHDOP情報やSN情報を用いて、GPS受信部の測位情報に関する信頼性指数を算出する。
また、融合演算処理部は、信頼性指数を、自律航法測位部によって測位された測位情報(以下、自律航法測位部の測位情報と呼ぶ)に関して算出する(図1の(2)を参照)。具体的には、実施例1における融合演算処理部は、まず、自律航法演算処理部から送信された差分位置を用いて、前回導出された位置情報からの移動距離を算出する。次に、融合演算処理部は、算出した移動距離を、融合演算処理部が所定の基点から累積して記憶している移動距離に加算することで、累積移動距離を算出する。ここで、融合演算処理部が累積して記憶している移動距離とは、自律航法測位部以外の測位情報が位置情報として選択された回からの移動距離の累積である。言い換えると、自律航法測位部の測位情報が位置情報として選択され続けている間は、移動距離が累積され続けることになる。そして、融合演算処理部は、累積移動距離を用いて、自律航法測位部の測位情報に関する信頼性指数を算出する。
次に、融合演算処理部は、GPS受信部の測位情報に関する信頼性指数と、自律航法測位部の測位情報に関する信頼性指数とを比較する(図1の(3)を参照)。具体的には、融合演算処理部は、GPS受信部の測位情報に関する信頼性指数が示す信頼性の度合いと、自律航法測位部の測位情報に関する信頼性指数が示す信頼性の度合いとのいずれが高いかを比較する。
続いて、融合演算処理部は、比較した結果、信頼性の度合いが高いとされた信頼性指数に対応する測位情報を、位置情報の導出に用いる測位情報として選択する(図1の(4)を参照)。図1に示すように、例えば、GPS受信部の測位情報に関する信頼性指数が『信頼性6』であり、自律航法測位部の測位情報に関する信頼性指数が『信頼性7』であるとする。この時、信頼性指数の数が大きいほど信頼性の度合いが高いとすれば、融合演算処理部は、自律航法測位部の測位情報を、位置情報の導出に用いる測位情報として選択する。
その後、融合演算処理部は、選択した測位情報を用いて位置情報を導出し、導出した位置情報を、通信部を介してセンタに送信するなどして、処理を終了する。
このように、実施例1における移動体端末は、自律航法測位部の測位情報の信頼性の度合いを示す信頼性指数を算出し、算出した当該信頼性指数とGPS受信部の測位情報の信頼性指数とを比較し、その比較結果に基づいて、位置情報の導出に用いる測位情報を選択する。したがって、実施例1における移動体端末は、自律航法測位部の測位情報の信頼性がGPS受信部の測位情報の信頼性よりも低い場合には、たとえ、GPS受信部の測位情報の信頼性が低い場合であっても、GPS受信部の測位情報を、位置情報の導出に用いる測位情報として選択するのである。この点で、実施例1における移動体端末は、GPS受信部の測位情報の信頼性が低い場合には無条件に自律航法測位部の測位情報を選択してしまう従来の手法とは異なるのであり、信頼性の高い測位情報を適切に選択することが可能になる。
[実施例1における移動体端末の構成]
次に、図2〜図8を用いて、実施例1における移動体端末の構成を説明する。図2は、実施例1における移動体端末の構成を示すブロック図である。図3は、実施例1における自律航法演算処理部を説明するための図である。図4は、実施例1におけるGPS受信部を説明するための図である。図5は、実施例1における補正データ受信部を説明するための図である。図6は、実施例1における融合演算処理部を説明するための図である。図7は、信頼性指数算出のためのしきい値(移動距離による算出)を説明するための図である。図8は、測位情報の決定と補正データ受信との関係を説明するための図である。
図2に示すように、実施例1における移動体端末100は、本発明に特に密接に関連するものとして、自律航法測位部105(センサ部110および自律航法演算処理部120を備える)と、GPS受信部130と、補正データ受信部140と、融合演算処理部150と、通信部160とを備える。なお、移動体端末100は、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)やPC(Personal Computer)などの端末、あるいは専用の端末などで実現される。
センサ部110は、自律航法測位部105の測位情報(差分位置)を算出するために必要な各種情報を取得する機能を有する。例えば、センサ部110は、図2に示すように、加速度センサ111と、磁気センサ112と、ジャイロセンサ113とを備える。加速度センサ111は、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)ごとの重力加速度情報を、単位時間あたりの時系列で取得し、取得した重力加速度情報を、自律航法演算処理部120に送信する。また、磁気センサ112は、地磁気ベクトルの大きさや、地磁気ベクトルの水平成分および垂直成分の大きさなど、3軸方向の情報を含む地磁気ベクトル情報を、単位時間あたりの時系列で取得し、取得した地磁気ベクトル情報を、自律航法演算処理部120に送信する。また、ジャイロセンサ113は、使用者の体の回転量(方位)を、単位時間あたりの時系列で取得し、取得した回転量を、自律航法演算処理部120に送信する。
自律航法演算処理部120は、センサ部110から送信された各種情報を受信し、自律航法測位部105の測位情報(差分位置)を演算する機能を有する。具体的には、自律航法演算処理部120は、図3に示すように、本発明に特に密接に関連するものとして、記憶部121に、加速度情報記憶部121aと、磁気情報記憶部121bと、ジャイロ情報記憶部121cとを備える。また、制御部122に、移動方向算出部122aと、移動距離算出部122bと、体の向き算出部122cと、差分位置算出部122dと、自律航法データ送信部122eとを備える。
加速度情報記憶部121aは、加速度センサ111から単位時間あたりの時系列で送信された重力加速度情報を、蓄積して記憶する。また、磁気情報記憶部121bは、磁気センサ112から単位時間あたりの時系列で送信された地磁気ベクトル情報を、蓄積して記憶する。また、ジャイロ情報記憶部121cは、ジャイロセンサ113から単位時間あたりの時系列で送信された回転量を、蓄積して記憶する。なお、加速度情報記憶部121a、磁気情報記憶部121b、およびジャイロ情報記憶部121cが蓄積して記憶するこれらの情報は、移動方向算出部122a、移動距離算出部122bおよび体の向き算出部122cによる処理に利用される都度(一定時間ごとに)、初期化される。
移動方向算出部122aは、一定時間(例えば、1秒間など)ごとに、加速度情報記憶部121aに蓄積された3軸方向の重力加速度情報を取得し、当該重力加速度情報から、使用者の体の向きに対する移動方向(例えば、前進、後進などの8方向など)を算出する。また、移動方向算出部122aは、算出した移動方向を、差分位置算出部122dに送信する。
移動距離算出部122bは、一定時間(例えば、1秒間など)ごとに、加速度情報記憶部121aに蓄積された3軸方向の重力加速度情報を取得し、当該重力加速度情報から、使用者の移動距離を算出する。また、移動距離算出部122bは、算出した移動距離を、差分位置算出部122dに送信する。また、移動距離算出部122bは、加速情報記憶部121aに蓄積して記憶されている重力加速度情報を、初期化する。
体の向き算出部122cは、一定時間(例えば、1秒間など)ごとに、磁気情報記憶部121bに蓄積された3軸方向の地磁気ベクトル情報と、ジャイロ情報記憶部121cに蓄積された回転量とを取得し、当該地磁気ベクトル情報および回転量から、使用者の体の向きを算出する。また、体の向き算出部122cは、算出した体の向きを、差分位置算出部122dに送信する。また、体の向き算出部122cは、磁気情報記憶部121bに蓄積して記憶されている地磁気ベクトル情報、および、ジャイロ情報記憶部121cに蓄積して記憶されている回転量を、初期化する。
差分位置算出部122dは、移動方向算出部122aから送信された移動方向、移動距離算出部122bから送信された移動距離、および体の向き算出部122cから送信された回転量を用いて、一定時間(例えば、1秒間など)ごとに、使用者の差分位置を算出する。また、差分位置算出部122dは、算出した差分位置を、自律航法データ送信部122eに送信する。ここで、差分位置とは、自律航法測位部105の測位情報であり、前回導出された位置情報(以下、前回位置と呼ぶ)からの差分情報である。前回導出された位置情報は、融合演算処理部150によって記憶部に記憶されている。したがって、融合演算処理部150においては、自律航法測位部105から送信された差分位置と、記憶部に記憶している前回位置とを用いることで、位置情報を導出することができる。
自律航法データ送信部122eは、差分位置を含む自律航法データを、融合演算処理部150に送信する。具体的には、自律航法データ送信部122eは、差分位置算出部122dから送信された差分位置を含む自律航法データを、一定時間ごと(例えば、1秒間など)に、融合演算処理部150に送信する。
図2に戻り、GPS受信部130は、GPS衛星から送信されたGPSデータを受信し、GPS受信部130の測位情報(測位座標)を算出する機能を有する。具体的には、GPS受信部130は、図4に示すように、本発明に特に密接に関連するものとして、GPSデータ受信部131と、GPSデータ送信部132とを備える。
GPSデータ受信部131は、GPS衛星から送信されたGPSデータ(時刻情報、HDOP情報、あるいはSN情報など)を、一定時間(例えば、1秒など)ごとに、受信する。また、GPSデータ受信部131は、受信した時刻情報(発信の時刻)とGPSデータ受信部131で測定した時刻情報(着信の時刻)との時刻差に、電波の伝播速度を積算することによって、GPS衛星からの距離を算出する。また、GPSデータ受信部131は、少なくとも3個のGPS衛星からの距離を算出することで、測位座標(GPS受信部130の測位情報)を算出する。また、GPSデータ受信部131は、算出した測位座標を含むGPSデータを、一定時間(例えば、1秒など)ごとに、GPSデータ送信部132に送信する。
GPSデータ送信部132は、測位座標を含むGPSデータを、融合演算処理部150に送信する。具体的には、GPSデータ送信部132は、GPSデータ受信部131から送信された測位座標を含むGPSデータを、一定時間ごと(例えば、1秒間など)に、融合演算処理部150に送信する。
図2に戻り、補正データ受信部140は、補正データ(屋内位置データ)を受信する機能を有する。ここで、補正データとは、建物の入り口等、所定の地点の位置情報として予め設定された位置情報(絶対座標)であって、当該地点に設置された外部装置(位置情報送信部)から送信されるものである。移動体端末の使用者が当該地点を通過すると、補正データ受信部140は、位置情報送信部から送信された補正データを受信する。具体的には、補正データ受信部140は、図5に示すように、本発明に特に密接に関連するものとして、補正データ受信部141と、補正データ送信部142とを備える。
補正データ受信部141は、位置情報送信部から送信された補正データを、移動体端末の使用者が所定の地点を通過した際に、受信する。また、補正データ受信部141は、補正データを受信すると、その都度、補正データ送信部142に送信する。例えば、補正データ受信部141は、通信エリアを比較的狭く特定できるものとして、レーザ受信機、IrDA(Infrared Data Association)受信機、微弱無線受信機、RFID(Radio Frequency Identification)受信機などによって実現される。
補正データ送信部142は、補正データを、融合演算処理部150に送信する。具体的には、補正データ送信部142は、補正データ受信部141から補正データを受信すると、その都度、融合演算処理部150に送信する。
図2に戻り、融合演算処理部150は、位置情報の導出に用いる測位情報を選択し、位置情報を導出する機能を有する。具体的には、融合演算処理部150は、図6に示すように、本発明に特に密接に関連するものとして、記憶部151に、GPSデータ記憶部151aと、自律航法データ記憶部151bと、補正データ受信フラグ記憶部151cと、前回位置記憶部151dと、累積移動距離記憶部151eと、信頼性指数テーブル記憶部151fとを備える。また、制御部152に、GPSデータ受信部152aと、自律航法データ受信部152bと、補正データ受信部152cと、GPS信頼性指数算出部152dと、自律航法信頼性指数算出部152eと、信頼性指数比較部152fと、測位情報選択部152gと、位置情報導出部152hと、位置情報送信部152iとを備える。
GPSデータ記憶部151aは、GPS受信部130から送信された測位座標を含むGPSデータを記憶する。具体的には、GPSデータ記憶部151aは、GPSデータ受信部152aによって受信された測位座標を含むGPSデータを記憶する。なお、GPSデータ記憶部151aが記憶するGPSデータは、GPS信頼性指数算出部152dによる処理や、位置情報導出部152hによる処理に利用されるなどする。
自律航法データ記憶部151bは、自律航法測位部105から送信された差分位置を含む自律航法データを記憶する。具体的には、自律航法データ記憶部151bは、自律航法データ受信部152bによって受信された差分位置を含む自律航法データを記憶する。なお、自律航法データ記憶部151bが記憶する自律航法データは、自律航法信頼性指数算出部152eによる処理や、位置情報導出部152hによる処理に利用されるなどする。
補正データ受信フラグ記憶部151cは、補正データ受信部140によって補正データが受信されたか否かの状態を示す状態情報(受信フラグ)を記憶する。具体的には、補正データ受信フラグ記憶部151cは、補正データ受信部152cによって補正データが受信されると、補正データを受信したことを示す状態情報(例えば、『1』など)を記憶する。また、補正データ受信フラグ記憶部151cは、測位情報選択部152gによって位置情報の導出に用いる測位情報としてGPS受信部130の測位情報が選択されると、補正データを受信していないことを示す状態情報(例えば、『0』など)を記憶する。なお、補正データ受信フラグ記憶部151cが記憶する状態情報は、自律航法信頼性指数算出部152eによる処理に利用されるなどする。
前回位置記憶部151dは、前回導出された位置情報である前回位置を記憶する。具体的には、前回位置記憶部151dは、位置情報導出部152hによって位置情報が導出されると、導出された当該位置情報を記憶する。また、前回位置記憶部151dは、補正データ受信部152cによって補正データが受信されると、当該補正データが示す位置情報を、前回位置として記憶する。なお、前回位置記憶部151dが記憶する前回位置は、自律航法信頼性指数算出部152eによる処理や、位置情報導出部152hによる処理に利用されるなどする。
累積移動距離記憶部151eは、移動体端末の移動距離を所定の基点から累積した累積移動距離を記憶する。具体的には、累積移動距離記憶部151eは、自律航法信頼性指数算出部152eによって移動距離を加算されることで、移動距離を累積して記憶する。また、累積移動距離記憶部151eは、補正データ受信部152cによって補正データが受信されると、記憶していた累積移動距離を初期化する。また、累積移動距離記憶部151eは、測位情報選択部152gによって、位置情報の導出に用いる測位情報としてGPS受信部130の測位情報が選択されると、記憶していた累積移動距離を初期化する。すなわち、累積移動距離記憶部151eが記憶する累積移動距離とは、自律航法測位部105以外の測位情報が位置情報として選択された回からの移動距離の累積である。言い換えると、自律航法測位部105の測位情報が位置情報として決定され続けている間は、累積移動距離記憶部151eは、移動距離を累積して記憶し続ける。なお、累積移動距離記憶部151eが記憶する累積移動距離は、自律航法信頼性指数算出部152eによる処理に利用されるなどする。
信頼性指数テーブル記憶部151fは、信頼性指数の算出に用いるテーブルを記憶する。具体的には、信頼性指数テーブル記憶部151fは、移動体端末の使用者によって予め入力されるなどして信頼性指数テーブルを記憶する。なお、信頼性指数テーブル記憶部151fが記憶する信頼性指数テーブルは、GPS信頼性指数算出部152dによる処理や、自律航法信頼性指数算出部152eによる処理に利用されるなどする。
例えば、信頼性指数テーブル記憶部151fは、図7に示すような信頼性指数テーブルを記憶する。すなわち、信頼性指数テーブル記憶部151fは、信頼性指数に対応づけて、精度目安、GPS受信部130の測位情報に関する信頼性指数を算出する際のしきい値、自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性指数を算出する際のしきい値とを記憶している。図7の例示において、信頼性指数は、『信頼性10』〜『信頼性1』の10段階で設定されている。また、『信頼性10』の信頼性の度合いが最も高く、『信頼性1』の信頼性の度合いが最も低いというように設定されている。
ここで、実施例1において、GPS受信部130の測位情報に関する信頼性指数は、GPSデータに含まれるHDOP情報およびSN情報の平均に基づいて算出される。すなわち、GPS受信部130の測位情報に関する信頼性指数は、HDOP情報およびSN情報の平均の両方が、信頼性指数テーブルに設定されているしきい値を満たすことを条件として、算出される。また、自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性指数は、自律航法データに含まれる差分位置から算出された累積移動距離に基づいて算出される。
さらに、自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性指数は、図7に示すように、補正データを受信しない場合と、補正データを受信した場合とで、異なる指標を記憶している。補正データを受信した場合の方が、信頼性の度合いが高く位置づけられていることがわかる。この点については後に詳述するが、ここでは、累積移動距離のしきい値を設定した考え方を説明しておく。
補正データを受信しない場合とは、言い換えると、前回の位置情報がGPS受信部130の測位情報に基づく場合、もしくは、GPS受信部130の測位情報が選択されて以降、補正データが一度も選択されていない場合のことである。すなわち、今回は、このような位置情報(補正データに比較すると信頼性が低い位置情報)を前回位置とした上で、自律航法測位部105の差分位置に基づいて位置情報が導出されることを意味している。このような場合の累積移動距離のしきい値には、既にGPS受信部130の測位情報による誤差が10m存在し、以降、累積移動距離の5%が誤差になると仮定して、信頼性指数ごとの精度目安を満足する移動距離が設定される。
一方、補正データを受信した場合とは、言い換えると、前回の位置情報が補正データの位置情報である場合、もしくは、補正データが位置情報として選択されて以降、GPS受信部130の測位情報が一度も選択されていない場合のことである。すなわち、今回は、このような位置情報(GPS受信部130の測位情報に基づく位置情報に比較すると信頼性が高い位置情報)を前回位置とした上で、自律航法測位部105の差分位置に基づいて位置情報が導出されることを意味している。このような場合の累積移動距離のしきい値には、初期の誤差は0mとし、以降、累積移動距離の5%が誤差になると仮定して、信頼性指数ごとの精度目安を満足する移動距離が設定される。
GPSデータ受信部152aは、GPS受信部130から送信された測位座標を含むGPSデータを受信する。具体的には、GPSデータ受信部152aは、GPS受信部130から送信された測位座標を含むGPSデータを、一定時間(例えば、1秒間など)ごとに受信し、GPSデータ記憶部151aに格納する。
自律航法データ受信部152bは、自律航法測位部105から送信された差分位置を含む自律航法データを受信する。具体的には、自律航法データ受信部152bは、自律航法測位部105から送信された差分位置を含む自律航法データを、一定時間(例えば、1秒間など)ごとに受信し、自律航法データ記憶部151bに格納する。
補正データ受信部152cは、補正データ受信部140から送信された補正データを受信する。具体的には、補正データ受信部152cは、補正データ受信部140から送信された補正データを受信すると、補正データ受信フラグ記憶部151cに記憶されている状態情報(受信フラグ)を、補正データを受信したことを示す状態情報(例えば、『1』など)に更新する。また、補正データ受信部152cは、補正データ受信部140から送信された補正データを受信すると、前回位置記憶部151dに記憶されている前回位置を、当該補正データが示す位置情報に更新する。また、補正データ受信部152cは、補正データ受信部140から送信された補正データを受信すると、累積移動距離記憶部151eに記憶されている累積移動距離を、初期化する。
GPS信頼性指数算出部152dは、GPS受信部130の測位情報に関する信頼性指数を算出する。具体的には、GPS信頼性指数算出部152dは、GPSデータ記憶部151aに記憶されているGPSデータの内、HDOP情報およびSN情報の平均を用いて信頼性指数テーブル記憶部151fを検索し、当該HDOP情報およびSN情報の平均を満足するしきい値に対応づけて記憶されている信頼性指数を、GPS受信部130の測位情報に関する信頼性指数として算出する。
例えば、GPS信頼性指数算出部152dは、HDOP情報『2.9』およびSN情報の平均『31』を用いて信頼性指数テーブル記憶部151fを検索し、信頼性指数『信頼性6』を算出する。なお、GPS信頼性指数算出部152dは、算出した信頼性指数を、信頼性指数比較部152fや測位情報選択部152gに送信する。
自律航法信頼性指数算出部152eは、自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性指数を算出する。具体的には、自律航法信頼性指数算出部152eは、自律航法データ記憶部151bに記憶されている自律航法データの内、差分位置を取得し、当該差分位置と、前回位置記憶部151dに記憶されている前回位置とを用いて、移動距離を算出する。次に、自律航法信頼性指数算出部152eは、算出した移動距離を、累積移動距離記憶部151eに記憶されている累積移動距離に加算することで、累積移動距離を算出する。続いて、自律航法信頼性指数算出部152eは、補正データ受信フラグ記憶部151cを参照し、当該補正データ受信フラグ記憶部151cが現に記憶している状態情報(受信フラグ)を取得する。そして、自律航法信頼性指数算出部152eは、算出した累積移動距離と状態情報とを用いて信頼性指数テーブル記憶部151fを検索し、当該累積移動距離と状態情報とを満足するしきい値に対応づけて記憶されている信頼性指数を、自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性指数として算出する。
例えば、自律航法信頼性指数算出部152eは、累積移動距離『199m』と状態情報『補正データを受信している状態』とを用いて信頼性指数テーブル記憶部151fを検索し、信頼性指数『信頼性7』を算出する。なお、自律航法信頼性指数算出部152eは、算出した信頼性指数を、信頼性指数比較部152fに送信する。
信頼性指数比較部152fは、信頼性指数を比較する。具体的には、信頼性指数比較部152fは、GPS信頼性指数算出部152dによって算出された信頼性指数が示す信頼性の度合いと、自律航法信頼性指数算出部152eによって算出された信頼性指数が示す信頼性の度合いとのいずれが高いかを比較する。
例えば、信頼性指数比較部152fは、GPS信頼性指数算出部152dによって算出された信頼性指数が『信頼性6』であり、自律航法信頼性指数算出部152eによって算出された信頼性指数が『信頼性7』である場合、『信頼性6』と『信頼性7』のいずれが信頼性の度合いが高いかを比較し、自律航法信頼性指数算出部152eによって算出された信頼性指数の信頼性の度合いが高いと判定する。なお、信頼性指数比較部152fは、比較の結果を、測位情報選択部152gに送信する。
測位情報選択部152gは、位置情報の導出に用いる測位情報を選択する。具体的には、実施例1における測位情報選択部152gは、まず、GPS信頼性指数算出部152dから送信された信頼性指数が、所定のしきい値を満たすものであるか否かを判定し、満たす場合には、位置情報の導出に用いる測位情報として、GPS受信部130の測位情報を選択する。一方、満たさない場合には、測位情報選択部152gは、信頼性指数比較部152fから送信された比較の結果に基づいて、信頼性の度合いが高いとされた信頼性指数に対応する測位情報を、位置情報の導出に用いる測位情報として選択する。
また、測位情報選択部152gは、位置情報の導出に用いる測位情報として、GPS受信部130の測位情報を選択した場合には、補正データ受信フラグ記憶部151cに記憶されている状態情報(受信フラグ)を、補正データを受信していないことを示す状態情報(例えば、『0』など)に更新する。また、測位情報選択部152gは、位置情報の導出に用いる測位情報として、GPS受信部130の測位情報を選択した場合には、累積移動距離記憶部151eに記憶されている累積移動距離を、初期化する。なお、測位情報選択部152gは、選択した測位情報を、位置情報導出部152hに伝達する。
位置情報導出部152hは、測位情報に基づいて位置情報を導出する。具体的には、位置情報導出部152hは、測位情報選択部152gから送信された測位情報が、GPS受信部130の測位情報の場合には、GPSデータ記憶部151aに記憶されている測位座標を取得して、当該測位座標を位置情報として導出する。一方、測位情報選択部152gから送信された測位情報が、自律航法測位部105の測位情報の場合には、自律航法データ記憶部151bに記憶されている差分位置を取得するとともに、前回位置記憶部151dに記憶されている前回位置を取得し、当該差分位置と前回位置とから位置情報を導出する。また、位置情報導出部152hは、導出した位置情報を、前回位置記憶部151dに格納する。
位置情報送信部152iは、位置情報や、当該位置情報の信頼性指数などの情報を送信する。具体的には、位置情報送信部152iは、前回位置記憶部151dに格納されている位置情報を、通信部160に送信する。また、位置情報送信部152iは、必要に応じて、位置情報の信頼性指数など、その他の情報を、通信部160に送信する。
図2に戻り、通信部160は、融合演算処理部150において導出された位置情報を、センタなどに送信する機能を有する。具体的には、通信部160は、融合演算処理部150から送信された位置情報と当該位置情報を導出した際の信頼性指数とを、センタなどの外部装置に、一定時間(例えば、1秒間など)ごとに送信する。
[測位情報の決定と補正データ受信との関係]
ここで、図8を用いて、測位情報の決定と補正データ受信との関係を説明する。図8は、移動体端末を所持する使用者が徒歩で移動した軌跡を一部例示したものである。また、図8に示される『t0』、『t1』などは、時刻を示すものであり、例えば、1秒ごとの時刻を意味する。また、図8に示される矢印の下の『2.0m』、『3.5m』などは、移動距離を示すものである。例えば、『t0』〜『t1』の1秒間に、使用者は、『2.0m』移動したことを示す。
また、図8の例示においては、『t0』、『t5』および『t11』の時刻に、補正データを受信したと想定している。また、図8の下部に示す表にあるように、『t1』、『t2』、『t3』、『t9』および『t10』の時刻に、GPS受信部130の測位情報が、位置情報の導出に用いる測位情報として選択され、『t4』、『t6』、『t7』および『t8』の時刻に、自律航法測位部105の測位情報が、位置情報の導出に用いる測位情報として選択されることを想定している。
このような想定において、累積移動距離記憶部151eと、補正データ受信フラグ記憶部151cとに格納される情報を説明したものが、図8の下部に示す表である。まず、累積移動距離についてみると、累積移動距離は、上記してきたように、自律航法測位部105以外の測位情報が位置情報として選択された回からの移動距離の累積である。言い換えると、自律航法測位部105の測位情報が位置情報として選択され続けている間は、移動距離が累積され続ける。したがって、『t0』〜『t3』の時刻のように、自律航法測位部105の測位情報が選択されない間は、その都度、累積移動距離は初期化されることから、累積移動距離記憶部151eは、累積移動距離として『0m』を記憶することになる。
これに対し、『t4』の時刻をみるとわかるように、自律航法測位部105の測位情報が選択されると、累積移動距離記憶部151eは、累積移動距離を記憶する。図8の例示においては、『t3』と『t4』との間の移動距離が累積されることになるので、『2.0m』が記憶される。また、『t5』の時刻に補正データが受信されたことに伴い、『t5』の時刻において、累積移動距離記憶部151eが記憶する累積移動距離は、再び初期化され、再び『0m』を記憶することになる。
もっとも、『t6』、『t7』、および『t8』の時刻においては、自律航法測位部105の測位情報が選択され続けている。このため、累積移動距離記憶部151eが記憶する累積移動距離は、この間の移動距離を累積して記憶し続ける。すなわち、図8に例示するように、累積移動距離記憶部151eは、『3.5m』、『5.5m』、『8.5m』といったように、移動距離を加算することで、累積移動距離を記憶する。
すなわち、実施例1における移動体端末は、累積移動距離を算出し、当該累積移動距離を用いて自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性指数を算出するが、この意味は、自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性の度合いは、移動距離が長くなればなるほど低下するとの考え方が根底にあるということである。すなわち、自律航法測位部105の測位情報に基づく位置情報は、上記してきたように、前回位置と差分位置とから算出されるものである。そうであるとすると、算出される位置情報は、前回位置の影響(誤差)を積み重ねたものとなる。さらに、自律航法測位部105の測位情報が選択され続けるということは、その影響(誤差)が積み重ねられていくことであると考えられる。これに対し、前回位置が、補正データによって補正された位置情報であったり、GPS受信部130の測位情報から導出された位置情報である場合には、これらの位置情報は絶対座標から導出されるものであることから、一旦その影響は無くなると考えられる。
このようなことから、実施例1における移動体端末は、自律航法選択部105の測位情報が選択され続けている間は、累積移動距離記憶部151eに移動距離を加算し続け、補正データを受信した場合や、GPS受信部130の測位情報が選択された場合には、累積移動距離記憶部151eに記憶されている累積移動距離を初期化している。
次に、補正データ受信フラグについてみると、図8の下部に示す表にあるように、補正データ受信フラグ記憶部151cは、補正データを受信した時刻『t0』、『t5』および『t11』に、受信フラグ『1』を格納している。また、GPS受信部130の測位情報が選択されると、補正データ受信フラグ記憶部151cは、例えば、時刻『t1』に示すように、受信フラグ『1』を受信フラグ『0』に更新している。その後、時刻『t5』において補正データが受信されるまで、補正データ受信フラグ記憶部151cは、受信フラグ『0』を記憶し続ける。一方、時刻『t5』において、補正データ受信フラグ記憶部151cは、受信フラグ『0』を受信フラグ『1』に更新することになるが、その後、自律航法測位部105の測位情報が選択され続けている間は、受信フラグは『1』のまま記憶される。
すなわち、実施例1における移動体端末は、自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性指数の算出において、この補正データ受信フラグを参照するが、この意味は、自律航法測位部105の測位情報は、補正データによって補正された位置情報を基点とした場合の方が、GPS受信部130の測位情報に基づいて導出された位置情報を基点とした場合よりも、信頼性の度合いが高いという考え方が根底にあるということである。すなわち、自律航法測位部105の測位情報に基づく位置情報は、上記してきたように、前回位置と差分位置とから算出されるものである。そうであるとすると、算出される位置情報は、自律航法測位部105の測位情報が選択され始める回の一つ前の回(基点)の位置情報の影響(誤差)を引き受けると考えられる。また、自律航法測位部105の測位情報が選択され続けるということは、その影響(誤差)が引き続き引き受けられていくということであると考えられる。
このようなことから、実施例1における移動体端末は、補正データを基点として自律航法測位部105の測位情報が選択され続けている間は、信頼性の度合いの高い位置情報を基点としている状態が継続しているものとして、信頼性指数の算出の際に、この点を加味するのである。また、GPS受信部130の測位情報を基点として自律航法測位部105の測位情報が選択され続けている間は、信頼性の度合いの低い位置情報を基点としている状態が継続しているものとして、信頼性指数の算出の際に、この点を加味するのである。
[実施例1における移動体端末による処理の手順]
次に、図9〜図11を用いて、実施例1における移動体端末による処理の手順を説明する。図9は、実施例1における自律航法演算処理部による処理の手順を示すフローチャートである。図10および図11は、実施例1における融合演算処理部による処理の手順を示すフローチャートである。
[自律航法演算処理部による処理の手順]
図9に示すように、自律航法演算処理部120は、一定時間(例えば、1秒など)を経過したか否かを判定する(ステップS101)。経過していない場合には(ステップS101否定)、自律航法演算処理部120は、一定時間を経過したか否かを判定する処理に戻る。
一方、経過した場合には(ステップS101肯定)、自律航法演算処理部120において、移動方向算出部122aが、加速度情報記憶部121aに蓄積された3軸方向の重力加速度情報を取得し、当該重力加速度情報から、使用者の体の向きに対する移動方向を算出する(ステップS102)。
次に、自律航法演算処理部120において、移動距離算出部122bが、加速度情報記憶部121aに蓄積された3軸方向の重力加速度情報を取得し、当該重力加速度情報から、使用者の移動距離を算出する(ステップS103)。
続いて、自律航法演算処理部120において、体の向き算出部122cが、磁気情報記憶部121bに蓄積された3軸方向の地磁気ベクトル情報と、ジャイロ情報記憶部121cに蓄積された回転量とを取得し、当該地磁気ベクトル情報および回転量から、使用者の体の向きを算出する(ステップS104)。
そして、自律航法演算処理部120において、差分位置算出部122dが、移動方向算出部122aから送信された移動方向、移動距離算出部122bから送信された移動距離、および体の向き算出部122cから送信された回転量を用いて、使用者の差分位置を算出する(ステップS105)。
こうして、自律航法演算処理部120において、自律航法データ送信部122eが、差分位置を含む自律航法データを、一定時間(例えば、1秒など)ごとに、融合演算処理部150に送信する(ステップS106)。
[融合演算処理部による処理の手順]
図10に示すように、融合演算処理部150において、GPSデータ受信部152aは、測位座標を含むGPSデータを受信したか否かを判定し、自律航法データ受信部152bは、差分位置を含む自律航法データを受信したか否かを判定する(ステップS201)。受信していない場合には(ステップS201否定)、受信したか否かを判定する処理に戻る。
一方、いずれも受信した場合には(ステップS201肯定)、融合演算処理部150において、GPS信頼性指数算出部152dが、GPSデータ記憶部151aに記憶されているGPSデータの内、HDOP情報およびSN情報の平均を用いて信頼性指数テーブル記憶部151fを検索し、当該HDOP情報およびSN情報の平均を満たすしきい値に対応づけて記憶されている信頼性指数を、GPS受信部130の測位情報に関する信頼性指数として算出する(ステップS202)。
続いて、融合演算処理部150において、測位情報選択部152gが、GPS信頼性指数算出部152dによって算出された信頼性指数が、所定のしきい値を満たすものであるか否かを判定する(ステップS203)。
この時、実施例1においては、図7に示すように、補正データ受信フラグ記憶部151cに記憶されている受信フラグが『0』の場合、自律航法測位部105の測位情報の信頼性が『信頼性7』以上になることはない。このため、測位情報選択部152gは、補正データ受信フラグ記憶部151cに記憶されている受信フラグを判定し、受信フラグが『0』の場合には、GPS受信部130の測位情報の信頼性指数が『信頼性7』以上であるか否かを判定する。『信頼性7』以上であれば、もはや自律航法測位部105の測位情報の信頼性との比較は必要なくなるからである。一方、補正データ受信フラグ記憶部151cに記憶されている受信フラグが『1』の場合には、GPS受信部130の測位情報の信頼性と自律航法測位部105の測位情報の信頼性との比較が必要である。
補正データ受信フラグ記憶部151cに記憶されている受信フラグが『0』の場合で、かつ、所定のしきい値を満たすものである場合には(ステップS203肯定)、測位情報選択部152gは、位置情報の導出に用いる測位情報として、GPS受信部130の測位情報を選択する。そして、位置情報導出部152hが、GPSデータ記憶部151aに記憶されている測位座標を取得して、当該測位座標を位置情報として導出し、前回位置記憶部151dに格納する(ステップS204)。
その後、測位情報選択部152gは、累積移動距離記憶部151eに記憶されている累積移動距離を、初期化する(ステップS205)。
そして、融合演算処理部150において、位置情報送信部152iは、前回位置記憶部151dに格納されている位置情報や、当該位置情報の信頼性指数などの情報を、通信部160に送信する(ステップS206)。
一方、ステップS203において、補正データ受信フラグ記憶部151cに記憶されている受信フラグが『0』の場合で、かつ、所定のしきい値を満たすものでない場合、もしくは、補正データ受信フラグ記憶部151cに記憶されている受信フラグが『1』の場合には(ステップS203否定)、自律航法信頼性指数算出部152eが、自律航法データ記憶部151bに記憶されている自律航法データの内、差分位置を取得し、当該差分位置と、前回位置記憶部151dに記憶されている前回位置とを用いて、移動距離を算出する。また、自律航法信頼性指数算出部152eは、算出した移動距離を、累積移動距離記憶部151eに記憶されている累積移動距離に加算することで、累積移動距離を算出する(ステップS207)。
続いて、自律航法信頼性指数算出部152eは、補正データ受信フラグ記憶部151cを参照し、当該補正データ受信フラグ記憶部151cが現に記憶している状態情報(受信フラグ)を取得する。そして、自律航法信頼性指数算出部152eは、算出した累積移動距離と状態情報とを用いて信頼性指数テーブル記憶部151fを検索し、当該累積移動距離と状態情報とを満たすしきい値に対応づけて記憶されている信頼性指数を、自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性指数として算出する(ステップS208)。
そして、融合演算処理部150において、信頼性指数比較部152fが、GPS信頼性指数算出部152dによって算出された信頼性指数が示す信頼性の度合いと、自律航法信頼性指数算出部152eによって算出された信頼性指数が示す信頼性の度合いとのいずれが高いかを比較する(ステップS209)。
GPS信頼性指数算出部152dによって算出された信頼性指数が示す信頼性の度合いが高い場合(ステップS209肯定)、融合演算処理部150において、測位情報選択部152gが、位置情報の導出に用いる測位情報として、GPS受信部130の測位情報を選択する。そして、位置情報導出部152hが、GPSデータ記憶部151aに記憶されている測位座標を取得して、当該測位座標を位置情報として導出し、前回位置記憶部151dに格納する(ステップS210)。
その後、測位情報選択部152gは、累積移動距離記憶部151eに記憶されている累積移動距離を、初期化する(ステップS211)。また、測位情報選択部152gは、補正データ受信フラグ記憶部記憶部151cに記憶されている状態情報(受信フラグ)を、補正データを受信していないことを示す状態情報(例えば、『0』など)に更新する(ステップS212)。
そして、融合演算処理部150において、位置情報送信部152iは、前回位置記憶部151dに格納されている位置情報や、当該位置情報の信頼性指数などの情報を、通信部160に送信する(ステップS206)。
一方、ステップS210において、自律航法信頼性指数算出部152eによって算出された信頼性指数が示す信頼性の度合いが高い場合(ステップS209否定)、融合演算処理部150において、測位情報選択部152gが、位置情報の導出に用いる測位情報として、自律航法測位部105の測位情報を選択する。そして、位置情報導出部152hが、自律航法データ記憶部151bに記憶されている差分位置を取得するとともに、前回位置記憶部151dに記憶されている前回位置を取得し、当該差分位置と前回位置とから位置情報を導出する(ステップS213)。
そして、融合演算処理部150において、位置情報送信部152iは、前回位置記憶部151dに格納されている位置情報や、当該位置情報の信頼性指数などの情報を、通信部160に送信する(ステップS206)。
ところで、図11に示すように、融合演算処理部150において、補正データ受信部152cが、補正データを受信したか否かを判定している(ステップS301)。受信していない場合には(ステップS301否定)、補正データ受信部152cは、補正データを受信したか否かを判定する処理に戻る。
一方、受信した場合には(ステップS301肯定)、補正データ受信部152cは、累積移動距離記憶部151eに記憶されている累積移動距離を、初期化する(ステップS302)。
続いて、補正データ受信部152cは、前回位置記憶部151dに記憶されている前回位置を、当該補正データが示す位置情報に更新する(ステップS303)。
そして、補正データ受信部152cは、補正データ受信フラグ記憶部151cに記憶されている状態情報(受信フラグ)を、補正データを受信したことを示す状態情報(例えば、『1』など)に更新する(ステップS304)。
このように、補正データ受信部152cは、前回位置記憶部151dに記憶されている前回位置を、補正データを受信する都度更新し、補正データ受信フラグ記憶部151cに記憶されている状態情報(受信フラグ)を『1』に更新する。この点を図10の処理の手順において検討してみると、まず、補正データ受信部152cが補正データを受信すると、受信フラグは『1』となり、ステップS203の判定は、否定となる。その後、ステップS208、S209の処理が行われ、ステップS210の比較処理が行われる。ここで、図7に示すように、累積移動距離が60m未満の場合には、自律航法測位部105の測位情報の信頼性指数は『信頼性10』である。すなわち、補正データ受信直後は、『信頼性10』となる可能性が非常に高く、ステップS210の判定は、否定となる可能性が高い。そうであるとすると、ステップS214の処理によって、自律航法測位部105の測位情報が算出されることになるが、この時の前回位置は、補正データ受信部152cによって更新された前回位置である。したがって、例えば、移動体端末が補正データを受信した地点からほとんど移動していないような場合には、差分位置は『0』に近い値となり、実質は、補正データ(もしくは補正データに近い値)が使用者の位置情報として導出されることになる。
[実施例1の効果]
上記してきたように、実施例1によれば、測位情報の信頼性の度合いを示す信頼性指数を、移動体端末に装着されたGPS受信部によって測位された測位情報に関して算出し、また、移動体端末に装着された自律航法測位部によって測位された測位情報を用いて累積移動距離を算出し、当該累積移動距離を用いることで、信頼性指数を、当該自律航法測位部によって測位された測位情報に関して算出し、そして、信頼性指数が示す信頼性の度合いについて、いずれが高いかを比較し、比較した結果、信頼性の度合いが高いとされた信頼性指数に対応する測位情報を、位置情報の導出に用いる測位情報として選択するので、信頼性の高い測位情報を適切に選択することが可能になる。
また、GPS受信部の測位情報の信頼性と比較可能な指数として、自律航法測位部の測位情報の信頼性指数を算出することが可能になる。
また、実施例1によれば、移動体端末は、当該移動体端末を所持する所持者が所定の地点を通過すると、当該地点の位置情報として予め設定された位置情報を、当該地点に設置された位置情報送信部から受信する位置情報受信部を装着するものである。また、移動体端末に装着された位置情報受信部によって位置情報が受信されたか否かの状態を示す状態情報を記憶する補正データ受信フラグ記憶部を備えている。また、自律航法信頼性指数算出部は、記憶されている状態情報が、位置情報を受信したことを示す状態情報であるか、あるいは、位置情報を受信していないことを示す状態情報であるかを判定し、当該判定結果に基づいて、前記信頼性指数を算出する。したがって、補正データ受信の影響を考慮した上で、より正確な信頼性指数を算出することも可能になる。
これまで、実施例1における移動体端末は、自律航法測位部の測位情報に関する信頼性指数を算出するにあたり、累積移動距離を用いていた。実施例2における移動体端末は、累積移動距離に加え、累積方向転換量をも用いて、信頼性指数を算出しようとするものである。以下、実施例2における移動体端末について、実施例1における移動体端末と異なる点を中心に説明する。
[実施例2における移動体端末の構成]
まず、図12〜図15を用いて、実施例2における移動体端末の構成を説明する。図12は、実施例2における融合演算処理部を説明するための図である。図13は、信頼性指数算出のためのしきい値(移動距離、方向転換量による算出)を説明するための図である。図14は、推測誤差を説明するための図である。図15は、測位情報の決定と補正データ受信との関係を説明するための図である。
図15に示すように、実施例2における融合演算処理部250は、実施例1と異なり、記憶部251に、累積方向転換量記憶部251gをさらに備える。その他の251a〜251fは、実施例1における融合演算処理部150の151a〜151fとほぼ同様の機能を有する。また、252a〜252iも、実施例1における融合演算処理部150の152a〜152iとほぼ同様の機能を有するが、以下では、累積方向転換量記憶部251g、信頼性指数テーブル記憶部251f、補正データ受信部252c、および自律航法信頼性指数算出部252eについて説明する(図12の太枠)。
累積方向転換量記憶部251gは、移動体端末の方向転換量を所定の基点から累積した累積方向転換量を記憶する。具体的には、累積方向転換量記憶部251gは、自律航法信頼性指数算出部252eによって方向転換量を加算されることで、方向転換量を累積して記憶する。また、累積方向転換量記憶部251gは、補正データ受信部252cによって補正データが受信されると、記憶していた累積方向転換量を初期化する。また、累積方向転換量記憶部251gは、測位情報選択部252gによって、位置情報の導出に用いる測位情報としてGPS受信部130の測位情報が選択されると、記憶していた累積方向転換量を初期化する。すなわち、累積方向転換量記憶部251gが記憶する累積方向転換量とは、自律航法測位部105以外の測位情報が位置情報として選択された回からの方向転換量の累積である。言い換えると、自律航法測位部105の測位情報が位置情報として選択され続けている間は、累積方向転換量記憶部251gは、方向転換量は累積して記憶し続ける。なお、累積方向転換量記憶部251gが記憶する累積方向転換量は、自律航法信頼性指数算出部252eによる処理に利用されるなどする。
信頼性指数テーブル記憶部251fは、実施例1と同様、信頼性指数の算出に用いるテーブルを記憶する。例えば、実施例2における信頼性指数テーブル記憶部251fは、図13に示すような信頼性指数テーブルを記憶する。もっとも、実施例1における信頼性指数テーブル(図7を参照)と比較するとわかるように、実施例2における信頼性指数テーブルは、自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性指数を算出する際のしきい値として、推測誤差を対応づけている。なお、推測誤差については、後に詳述する。
補正データ受信部252cは、実施例1と同様、補正データ受信部140から送信された補正データを受信する。具体的には、補正データ受信部252cは、補正データ受信部140から送信された補正データを受信すると、補正データ受信フラグ記憶部251cに記憶されている状態情報(受信フラグ)を、補正データを受信したことを示す状態情報(例えば、『1』など)に更新する。また、補正データ受信部252cは、補正データ受信部140から送信された補正データを受信すると、前回位置記憶部251dに記憶されている前回位置を、当該補正データが示す位置情報に更新する。また、補正データ受信部252cは、補正データ受信部140から送信された補正データを受信すると、累積移動距離記憶部251eに記憶されている累積移動距離を、初期化する。さらに、実施例2における補正データ受信部252cは、補正データ受信部140から送信された補正データを受信すると、累積方向転換量記憶部251gに記憶されている累積方向転換量を、初期化する。
自律航法信頼性指数算出部252eは、実施例1と同様、自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性指数を算出するが、算出手法が、実施例1とは異なる。具体的には、自律航法信頼性指数算出部252eは、自律航法データ記憶部251bに記憶されている自律航法データの内、差分位置を取得し、当該差分位置と、前回位置記憶部251dに記憶されている前回位置とを用いて、移動距離を算出するとともに、方向転換量を算出する。次に、自律航法信頼性指数算出部252eは、算出した移動距離を、累積移動距離記憶部251eに記憶されている累積移動距離に加算することで、累積移動距離を算出する。また、自律航法信頼性指数算出部252eは、算出した方向転換量を、累積方向転換量記憶部251gに記憶されている累積方向転換量に加算することで、累積方向転換量を算出する。
続いて、自律航法信頼性指数算出部252eは、以下に示す式を用いて、推測誤差を算出する。
ここで、方向誤差は、累積方向転換量の5%であると想定している。また、距離誤差も、累積移動距離の5%であると想定している。推測誤差は、上記式および図14に示すように、かかる方向誤差および距離誤差によって定義されるものである。すなわち、方向転換量を用いる場合の推測誤差は、図14に示すように、方向誤差を加味したものとなっている。なお、図14は、推測誤差の理解のために簡略化して示すものである。
そして、自律航法信頼性指数算出部252eは、補正データ受信フラグ記憶部251cを参照し、当該補正データ受信フラグ記憶部251cが現に記憶している状態情報(受信フラグ)を取得する。そして、自律航法信頼性指数算出部252eは、算出した推測誤差と状態情報とを用いて信頼性指数テーブル記憶部251fを検索し、当該推測誤差と状態情報とを満たすしきい値に対応づけて記憶されている信頼性指数を、自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性指数として算出する。
[測位情報の決定と補正データ受信との関係]
ここで、図15を用いて、測位情報の決定と補正データ受信との関係を説明する。図15は、移動体端末を所持する使用者が徒歩で移動した軌跡を一部例示したものである。図8と異なる点のみ説明すると、図15の例示においては、『t2』、『t3』、『t4』、『t5』、『t6』、『t8』、『t9』および『t10』の時刻に、図15に示す角度で、方向を転換していると想定している。
このような想定において、累積移動距離記憶部251eと、補正データ受信フラグ記憶部251cと、累積方向転換量記憶部251gとに格納される情報を説明したものが、図15の下部に示す表である。図8と異なる点として、累積方向転換量についてみると、累積方向転換量は、上記してきたように、自律航法測位部105以外の測位情報が位置情報として選択された回からの方向転換量の累積である。言い換えると、自律航法測位部105の測位情報が位置情報として選択され続けている間は、方向転換量が累積され続ける。したがって、『t0』〜『t3』の時刻のように、自律航法測位部105の測位情報が選択されない間は、その都度、累積方向転換量は初期化されることから、累積方向転換量記憶部251gは、累積方向転換量として『0°』を記憶することになる。
これに対し、『t4』の時刻をみるとわかるように、自律航法測位部105の測位情報が選択されると、累積方向転換量記憶部251gは、累積方向転換量を記憶する。図15の例示においては、『t3』と『t4』との間の方向転換量が累積されることになるので、『45°』が記憶される。また、『t5』の時刻に補正データが受信されたことに伴い、『t5』の時刻において、累積方向転換量記憶部251gが記憶する累積方向転換量は、再び初期化され、再び『0°』を記憶することになる。
もっとも、『t6』、『t7』、および『t8』の時刻においては、自律航法測位部105の測位情報が選択され続けている。このため、累積方向転換量記憶部251gが記憶する累積方向転換量は、この間の方向転換量を累積し続けて記憶する。すなわち、図15に例示するように、累積方向転換量記憶部251gは、『10°』、『85°』、『85°』といったように、方向転換量を加算することで、累積方向転換量を記憶する。
すなわち、実施例2における移動体端末は、累積移動距離および累積方向転換量を算出し、当該累積移動距離および累積方向転換量から算出された推測誤差を用いて自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性指数を算出するが、この意味は、自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性の度合いは、移動距離が長くなればなるほど、また、方向転換量が多くなればなるほど低下するとの考え方が根底にあるということである。すなわち、自律航法測位部105の測位情報に基づく位置情報は、上記してきたように、前回位置と差分位置とから算出されるものである。そうであるとすると、算出される位置情報は、前回位置の影響(誤差)を積み重ねたものとなる。さらに、自律航法測位部105の測位情報が選択され続けるということは、その影響(誤差)が積み重ねられていくことであると考えられる。これに対し、前回位置が、補正データによって補正された位置情報であったり、GPS受信部130の測位情報から導出された位置情報である場合には、これらの位置情報は絶対座標から導出されるものであることから、一旦その影響は無くなると考えられる。
このようなことから、実施例2における移動体端末は、自律航法選択部105の測位情報が選択され続けている間は、累積移動距離記憶部251eに移動距離を加算し続けるとともに、累積方向転換量記憶部251gに方向転換量を加算し続ける。また、補正データを受信した場合や、GPS受信部130の測位情報が選択された場合には、累積移動距離記憶部251eに記憶されている累積移動距離を初期化するとともに、累積方向転換量記憶部251gに記憶されている累積方向転換量を初期化する。
[実施例2における移動体端末による処理の手順]
次に、図16および図17を用いて、実施例2における移動体端末による処理の手順を説明する。図16および図17は、実施例2における融合演算処理部による処理の手順を示すフローチャートである。
[融合演算処理部による処理の手順]
図16に示す処理の手順と、図10に示す処理の手順とを比較するとわかるように、実施例2における融合演算処理部による処理の手順は、ステップS408〜S410のみが、実施例1と異なる。そこで、以下では、これらのステップについてのみ説明する。
ステップS408に続き、自律航法信頼性指数算出部252eが、差分位置と、前回位置記憶部151dに記憶されている前回位置とを用いて、方向転換量を算出する。また、自律航法信頼性指数算出部252eは、算出した方向転換量を、累積方向転換量記憶部251gに記憶されている累積方向転換量に加算することで、累積方向転換量を算出する(ステップS408)。
次に、自律航法信頼性指数算出部252eは、累積移動距離および累積方向転換量を用いて、推測誤差を算出する(ステップS409)。
続いて、自律航法信頼性指数算出部252eは、補正データ受信フラグ記憶部251cを参照し、当該補正データ受信フラグ記憶部251cが現に記憶している状態情報(受信フラグ)を取得する。そして、自律航法信頼性指数算出部252eは、算出した推測誤差と状態情報とを用いて信頼性指数テーブル記憶部151fを検索し、当該推測誤差と状態情報とを満足するしきい値に対応づけて記憶されている信頼性指数を、自律航法測位部105の測位情報に関する信頼性指数として算出する(ステップS410)。その後は、実施例1と同様である。
ところで図17に示す処理の手順と、図11に示す処理の手順とを比較するとわかるように、実施例2における融合演算処理部による処理の手順は、ステップS503のみが、実施例1と異なる。そこで、以下では、このステップについてのみ説明する。
ステップS502に続き、補正データ受信部252cは、累積方向転換量記憶部251gに記憶されている累積方向転換量を、初期化する(ステップS503)。その後は、実施例1と同様である。
[実施例2の効果]
上記してきたように、実施例2によれば、自律航法信頼性指数算出部は、自律航法測位部によって測位された測位情報を用いて当該移動体端末が方向を転換した量を所定の基点から累積した累積方向転換量をも算出し、累積移動距離に加えて当該累積方向転換量をも用いることで、信頼性指数を算出するので、より正確な信頼性指数を算出することも可能になる。
[他の実施例]
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上記した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
[累積移動距離、累積方向転換量]
上記してきた実施例1および実施例2においては、自律航法測位部から融合演算処理部に送信される測位情報は「差分位置」であり、融合演算処理部が、当該「差分位置」と自ら記憶している「前回位置」とを用いることで、移動距離や方向転換量を算出し、累積して記憶するものであった。ところで、仮に、移動体端末の使用者が、右に10m移動してから左に8m移動し、その後自律航法測位部において算出された「差分位置」が融合演算処理部に送信されたとする。この時、融合演算処理部において算出される移動距離は、『2m』となる。このように、本来使用者が移動した距離は『18m』であったにも関わらず、融合演算処理部において算出される移動距離は『2m』となるという事態が生じ得る。
この点、実施例1および実施例2においては、自律航法測位部から融合演算処理部に測位情報が送信されるタイミングが、例えば、1秒間といった短時間であることを想定していた。また、移動体端末の使用者が人間であり、徒歩等によって移動することを想定していた。したがって、1秒間に人間が移動可能な距離や方向転換量には限界があることから、上記したような事態は、特に問題となることがない。
もっとも、自律航法測位部から融合演算処理部に測位情報が送信されるタイミングが、例えば、1分間といった時間に設定されることを想定すると、上記したような事態が問題となってくるとも考えられる。そこで、このような場合には、自律航法測位部から融合演算処理部に送信される測位情報として、「差分位置」の他に、自律航法測位部の移動距離算出部において算出された「移動距離」そのものの累積値も送信することとし、融合演算処理部は、当該「移動距離」そのものを累積して記憶することとする。つまり、このような手法によれば、仮に、移動体端末の使用者が、右に10m移動してから左に8m移動し、その後自律航法測位部において算出された「移動距離」が融合演算処理部に送信されたとする。この時、自律航法測位部において算出される移動距離は、『18m』となり、融合演算処理部において累積して記憶される移動距離も、『18m』となる。
なお、方向転換量も同様である。すなわち、自律航法測位部から融合演算処理部に送信される測位情報として、「差分位置」の他に、自律航法測位部において算出された「移動方向」や「体の向き」そのものの累積値も送信することとし、融合演算処理部は、当該「移動方向」や「体の向き」そのものから算出される「方向転換量」を累積して記憶することとする。
また、上記の実施例1および実施例2においては、測位情報選択部が、信頼性指数比較部の比較結果に基づいて、測位情報を選択することを前提とするものであったが、本発明はこれに限られるものではない。具体的には、融合演算処理部は、信頼性指数比較部の比較結果を得ることだけを目的として(測位情報の選択を前提とせずに)利用することも可能である。すなわち、自律航法、GPS、通過点における補正を含めたシームレスな位置把握において、その位置情報の信頼性を把握することで、複数の使用者の位置情報を同一システム上で管理する際に、各使用者の位置情報の信頼性の順位付けが可能になる。また、当該順位付けにより、信頼性の高い使用者を優先的に画面に表示することや、信頼性の低い使用者の位置情報を一緒に移動する信頼性の高い使用者の位置情報とすることなどが可能になる。このような利用を想定する場合には、融合演算処理部の測位情報選択部は不要であり、信頼性指数比較部による比較結果のみを利用することになる。
[移動体端末]
また、上記の実施例1および実施例2においては、移動体端末が、GPS受信部および自律航法測位部を備えるとともに融合演算処理部を備え、全てが一体化しているシステム構成を想定していたが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、融合演算処理部に相当する位置情報処理装置が、GPS受信および自律航法測位部とは物理的に異なる別の装置に備えられていてもよい。
[補正データ受信]
また、上記の実施例1および実施例2においては、補正データを受信することで、位置情報を補正することを想定していたが、補正データを受信することができず、位置情報を補正することができない状況であっても、本発明を同様に適用することができる。この場合には、補正データ受信フラグという概念はなくなり、自律航法測位部の測位情報に関する信頼性指数を算出する際には、補正データを受信していない場合のテーブルを用いて算出することになる。
[システム構成等]
また、本実施例において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順(図9〜11、16〜17など)、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示(図2〜図6など)の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
[コンピュータ]
また、上記の実施例で説明した各種の処理は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、図18を用いて、上記の実施例と同様の機能を有する位置情報処理プログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。図18は、位置情報処理プログラムを実行するコンピュータを示す図である。
図18に示すように、位置情報処理プログラム(コンピュータ)10は、キャッシュ11、RAM(Random Access Memory)12、HDD(Hard Disk Drive)13、ROM(Read Only Memory)14およびCPU(Central Processing Unit)15をバス16で接続して構成される。ここで、ROM14には、上記の実施例と同様の機能を発揮する位置情報処理プログラム、つまり、図18に示すように、GPSデータ受信プログラム14a、自律航法データ受信プログラム14b、補正データ受信プログラム14c、GPS信頼性指数算出プログラム14d、自律航法信頼性指数算出プログラム14e、信頼性指数比較プログラム14f、測位情報選択プログラム14g、位置情報導出プログラム14h、位置情報送信プログラム14iが備えられる。
そして、CPU15は、これらのプログラム14a〜14iを読み出して実行することで、図18に示すように、各プログラムム14a〜14iは、GPSデータ受信プロセス15a、自律航法データプロセス15b、補正データ受信プロセス15c、GPS信頼性指数算出プロセス15d、自律航法信頼性指数算出プロセス15e、信頼性指数比較プロセス15f、測位情報選択プロセス15g、位置情報導出プロセス15h、位置情報送信プロセス15iとなる。なお、各プロセス15a〜15iは、図12に示した、GPSデータ受信部252a、自律航法データ受信部252b、補正データ受信部252c、GPS信頼性指数算出部252d、自律航法信頼性指数算出部252e、信頼性指数比較部252f、測位情報選択部252g、位置情報導出部252h、位置情報送信部252iに各々対応する。
また、HDD13は、図18に示すように、補正データ受信フラグテーブル13a、前回位置テーブル13b、累積移動距離テーブル13c、累積方向転換量テーブル13d、信頼性指数テーブル13eを備える。なお、各テーブル13a〜13eは、図12に示した補正データ受信フラグ記憶部251c、前回位置記憶部251d、累積移動距離記憶部251e、累積方向転換量記憶部251g、信頼性指数テーブル記憶部251fに各々対応する。また、RAM12は、GPSデータ12aおよび自律航法データ12bを保持する。
ところで、上記した各プログラム14a〜14iについては、必ずしもROM14に記憶させておく必要はなく、例えば、コンピュータ10に挿入されるフレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MOディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」、または、コンピュータ10の内外に備えられるハードディスクドライブ(HDD)などの「固定用の物理媒体」、さらには、公衆回線、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などを介してコンピュータ10に接続される「他のコンピュータ(またはサーバ)」に記憶させておき、コンピュータ10がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)移動体端末を所持する所持者の位置を示す位置情報を測位情報に基づいて導出する際の当該測位情報の信頼性の度合いを示す信頼性指数を、当該移動体端末に装着されたGPS受信部によって測位された測位情報に関して算出する第一の算出手段と、
前記移動体端末に装着された自律航法測位部によって測位された測位情報を用いて当該移動体端末が移動した距離を所定の基点から累積した累積移動距離を算出し、当該累積移動距離を用いることで、前記信頼性指数を、当該自律航法測位部によって測位された測位情報に関して算出する第二の算出手段と、
前記第一の算出手段によって算出された信頼性指数が示す信頼性の度合いと、前記第二の算出手段によって算出された信頼性指数が示す信頼性の度合いとのいずれが高いかを比較する比較手段と、
前記比較手段によって比較された結果、信頼性の度合いが高いとされた信頼性指数に対応する測位情報を、前記位置情報の導出に用いる測位情報として選択する選択手段と、
を備えたことを特徴とする位置情報処理装置。
(付記2)前記第二の算出手段は、前記自律航法測位部によって測位された測位情報を用いて当該移動体端末が方向を転換した量を所定の基点から累積した累積方向転換量をも算出し、前記累積移動距離に加えて当該累積方向転換量をも用いることで、前記信頼性指数を算出することを特徴とする付記1に記載の位置情報処理装置。
(付記3)前記移動体端末は、当該移動体端末を所持する所持者が所定の地点を通過すると、当該地点の位置情報として予め設定された位置情報を、当該地点に設置された位置情報送信部から受信する位置情報受信部を装着するものであって、
移動体端末に装着された前記位置情報受信部によって前記位置情報が受信されたか否かの状態を示す状態情報を記憶する受信状態記憶手段をさらに備え、
前記第二の算出手段は、前記受信状態記憶手段によって記憶されている前記状態情報が、位置情報を受信したことを示す状態情報であるか、あるいは、位置情報を受信していないことを示す状態情報であるかを判定し、当該判定結果に基づいて、前記信頼性指数を算出することを特徴とする付記1または2に記載の位置情報処理装置。
(付記4)移動体端末を所持する所持者の位置を示す位置情報を測位情報に基づいて導出する際の当該測位情報の信頼性の度合いを示す信頼性指数を、当該移動体端末に装着されたGPS受信部によって測位された測位情報に関して算出する第一の算出手順と、
前記移動体端末に装着された自律航法測位部によって測位された測位情報を用いて当該移動体端末が移動した距離を所定の基点から累積した累積移動距離を算出し、当該累積移動距離を用いることで、前記信頼性指数を、当該自律航法測位部によって測位された測位情報に関して算出する第二の算出手順と、
前記第一の算出手順によって算出された信頼性指数が示す信頼性の度合いと、前記第二の算出手順によって算出された信頼性指数が示す信頼性の度合いとのいずれが高いかを比較する比較手順と、
前記比較手順によって比較された結果、信頼性の度合いが高いとされた信頼性指数に対応する測位情報を、前記位置情報の導出に用いる測位情報として選択する選択手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする位置情報処理プログラム。
(付記5)GPS衛星から送信されるGPS信号を受信して測位情報を測位するGPS受信手段と、
移動体端末に装着されたセンサから送信される情報を受信して測位情報を測位する自律航法測位手段と、
移動体端末を所持する所持者の位置を示す位置情報を測位情報に基づいて導出する際の当該測位情報の信頼性の度合いを示す信頼性指数を、前記GPS受信手段によって測位された測位情報に関して算出する第一の算出手段と、
前記自律航法測位手段によって測位された測位情報を用いて移動体端末が移動した距離を所定の基点から累積した累積移動距離を算出し、当該累積移動距離を用いることで、前記信頼性指数を、当該自律航法測位部によって測位された測位情報に関して算出する第二の算出手段と、
前記第一の算出手段によって算出された信頼性指数が示す信頼性の度合いと、前記第二の算出手段によって算出された信頼性指数が示す信頼性の度合いとのいずれが高いかを比較する比較手段と、
前記比較手段によって比較された結果、信頼性の度合いが高いとされた信頼性指数に対応する測位情報を、前記位置情報の導出に用いる測位情報として選択する選択手段と、
を備えたことを特徴とする移動体端末。