以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
すなわち、同図(b)は模式的平面図であり、同図(a)は、同図(b)のA−A’線断面図である。
図1に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110は、積層構造体10sと、第1電極40と、第2電極50と、パッド層55と、を備える。
積層構造体10sは、第1導電型の第1半導体層10と、第2導電型の第2半導体層20と、第1半導体層10と第2半導体層20との間に設けられた発光層30と、を有す。積層構造体10sにおいては、積層構造体10sの第2半導体層20の側の主面10aの側において、第2半導体層20及び発光層30が選択的に除去されており、主面10aの側で第1半導体層10の一部10pが露出している。
なお、発光層30には、単一の量子井戸構造、または、多重量子井戸構造の活性層を用いることができる。また、第1半導体層10、第2半導体層20及び発光層30には、例えば窒化物系半導体を用いることができる。
ここで、第1導電型は例えばn型であり、第2導電型は例えばp型である。本発明はこれに限らず、第1導電型がp型であり、第2導電型がn型でも良い。以下では、第1導電型がn型であり、第2導電型がp型である場合として説明する。
第1電極40は、上記の主面10aの側で露出した第1半導体層10の一部10pに接して設けられる。すなわち、第1電極40は、第1半導体層10のうち主面10aの側で露出した一部10pの上に設けられている。
第2電極50は、積層構造体10sの主面10aの側の第2半導体層20に接して設けられ、発光層30から放射される光に対して透光性を有する。
なお、半導体発光素子110において、発光層30から放射された光は、積層構造体10sの主面10aの側から主に出射する。すなわち、光は、透光性を有する第2電極50を通過して半導体発光素子110の外部へ主に取り出される。
パッド層55は、第2半導体層20の主面10aの側(第2半導体層20の発光層30とは反対の側)に設けられ、第2電極50に電気的に接続されている。そして、パッド層55は、発光層30から放射される光に対する透過率が第2電極50よりも低い。すなわち、発光層30から放射される光に対する透過率は、パッド層55よりも第2電極50の方が高い。パッド層55には、各種の金属の単層または積層膜を用いることができる。例えば、パッド層55の導電率は、第2電極50よりも高く設定することできる。
そして、半導体発光素子110においては、第2電極50のシート抵抗は、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に増大する。
すなわち、第2電極50のシート抵抗は、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って漸増する。
例えば、第2電極50は、パッド層55の近傍の第1領域RG1と、第1電極40の近傍の第2領域RG2と、第1領域RG1と第2領域RG2との間の第3領域RG3と、を有しており、第1領域RG1における第1シート抵抗R1は、第2領域RG1におけるシート抵抗R2よりも低く、第3領域RG3の第3シート抵抗R3は、第1シート抵抗R1と第2シート抵抗R2との間の値である。このように、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、シート抵抗Rsの低い第1領域RG1と、シート抵抗Rsの高い第2領域RG2と、の間に両者の中間の特性の第3領域RG3が設けられている。
本具体例においては、第2電極50の厚さは、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に減少する。すなわち、第2電極50の厚さは、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って漸減する。パッド層55近傍の第1領域RG1と、第1電極40近傍の第2領域RG2と、の間の第3領域RG3においては、第2電極50の厚さが、第1領域RG1と第2領域RG2との中間の値である。
ただし、本発明はこれに限らず、第2電極50のシート抵抗が、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に増大すれば良く、後述するように、種々の変形が可能である。
このような構成を有することで、半導体発光素子110においては、注入電流密度の分布が均一になり、過大注入電流密度を抑制することができる。この特性については、後述する。
なお、半導体発光素子110においては、第2電極50は、パッド層55と第1電極40との間の領域51を有しており、この領域51において、第2電極50のシート抵抗が、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に増大する。
第2電極50には、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やZnOなどのいわゆる透明電極を用いることができる。すなわち、第2電極50は、インジウム、錫及び亜鉛の少なくともいずれかを含む酸化物を含むことができる。これにより、導電性と透光性とを有し、かつ、化学的な安定性と、加工の容易性となど、実用的に優れた特性を有することができる。
本具体例では、パッド層55は、第2電極50の上(第2電極50の第2半導体層20とは反対側)に設けられている。ただし、本発明はこれに限らず、パッド層55は、第2半導体層20の主面10aの側に設けられ、第2電極50に電気的に接続されていれば良く、例えば、パッド層55が第2半導体層20の上に絶縁層を介して設けられ、パッド層55が第2電極50と電気的に接続される構成でも良い。
また、本具体例では、第1電極40の上(第1電極40の第1半導体層10とは反対の側)に第1電極用パッド層45が設けられている。
ここで、積層構造体10sにおける第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20の積層方向をZ軸方向とする。そして、パッド層55と第1電極40とが対向する方向とをX軸方向とする。そして、Z軸方向とX軸方向とに対して垂直な方向をY軸方向とする。
図1(a)及び(b)に例示したように、パッド層55と第1電極40とが対向するX軸方向に沿った位置を位置xとする。そして、パッド層55の第1電極40の側の端部のX軸方向における位置を第1位置x1とし、第1電極40のパッド層55の側のX軸方向における位置を第2位置x2とする。
第1位置x1における第2電極50の第1厚さt1(パッド層55の側における第2電極50の厚さ)は、例えば250nm(ナノメートル)であり、第2位置x2における第2電極50の第2厚さt2(第1電極40の側における第2電極50の厚さ)は、例えば180nmとされる。このように、第1厚さt1は、第2厚さt2よりも厚く、厚さは連続的に変化する。
以下、本実施形態に係る半導体発光素子110の具体例について説明する。
図1(a)に例示したように、半導体発光素子110は、積層構造体10sの主面10aとは反対の側の裏面10bに、サファイアからなる基板5を有している。基板5の上に、バッファ層6が設けられ、その上に積層構造体10sが設けられている。
また、積層構造体10sは、基板5の側から順に積層されたn型GaN層11、n型GaNガイド層12、発光層30、p型GaN第1ガイド層21、p型AlGaN層22(電子オーバーフロー防止層)、p型GaN第2ガイド層23及びp型GaNコンタクト層24を含む。n型GaN層11及びn型GaNガイド層12が第1半導体層10に含まれ、p型GaN第1ガイド層21、p型AlGaN層22、p型GaN第2ガイド層23及びp型GaNコンタクト層24が第2半導体層20に含まれる。
積層構造体10sは、例えば以下のようにして形成される。
サファイアからなる基板5の上に、バッファ層6を形成した後、n型不純物がドープされたn型GaN層11を結晶成長する。n型GaN層11の結晶成長には、例えば有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)が用いられる。この他、分子線エピタキシー法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)により結晶成長を行っても良い。
基板5に用いられる材料は任意であり、サファイアの他に、例えば、GaN、SiC、Si、及びGaAs等を用いることができる。
n型GaN層11におけるn型不純物には、SiやGe、Snなど種々の元素を用いることができるが、ここではSiを用いるものとする。n型GaN層11におけるSiのドーピング量は、例えば2×1018cm−3程度とされる。
その後、n型GaN層11の上にn型GaNガイド層12を結晶成長させる。n型GaNガイド層12には、例えば、n型不純物が1×1018cm−3程度でドープされ、膜厚が0.1μm(マイクロメートル)程度のGaN層を用いることができる。
なお、上記のn型GaN層11及びn型GaNガイド層12を成長させる際の成長温度は、1000℃〜1100℃とすることができる。
また、n型GaNガイド層12として、GaN層ではなく、膜厚0.1μm程度のIn0.01Ga0.99Nを用いても良い。n型GaNガイド層12としてIn0.01Ga0.99Nを用いる場合における成長温度は、例えば700℃〜800℃とすることができる。
次に、n型GaNガイド層12の上に、発光層30を形成する。発光層30の形成においては、量子井戸層と、この量子井戸層の両側(上下)に配置されるバリア層と、を交互に積層した多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造の活性層を形成する。1つの量子井戸層には、例えば膜厚が2.5nm程度のアンドープのIn0.2Ga0.8N層を用いることができ、1つのバリア層には、例えば膜厚が12.5nm程度のIn0.02Ga0.98N層を用いることができる。量子井戸層及びバリア層の成長温度は、例えば700℃〜800℃とすることができる。また、発光層30における室温におけるフォトルミネッセンスの波長が450nmになるように、量子井戸層及びバリア層が設計される。
次に、発光層30の上に、p型GaN第1ガイド層21を成長させる。p型GaN第1ガイド層21には、例えば膜厚が30nm程度のGaN層を用いることができる。p型GaN第1ガイド層21に用いられるGaNの成長温度は、例えば1000℃〜1100℃である。p型GaN第1ガイド層21に用いられるp型不純物としては、例えば、MgやZnなど種々の元素を用いることができるが、ここではMgを用いるものとする。p型GaN第1ガイド層21におけるMgのドーピング量は、例えば4×1018cm−3程度とすることができる。なお、p型GaN第1ガイド層21として、膜厚が30nm程度のIn0.01Ga0.99N層を用いても良い。p型GaN第1ガイド層21としてIn0.01Ga0.99N層を用いる場合における成長温度は、例えば700℃〜800℃とすることができる。
次に、p型GaN第1ガイド層21の上に、p型AlGaN層22を成長させる。p型AlGaN層22には、例えば、p型不純物がドープされた膜厚が10nm程度のAl0.2Ga0.8N層を用いることができる。p型AlGaN層22におけるMgのドーピング量は、例えば4×1018cm−3程度とされる。p型AlGaN層22に用いられるAl0.2Ga0.8N層の成長温度は、例えば1000℃〜1100℃とされる。
次に、p型AlGaN層22の上に、p型GaN第2ガイド層23を成長させる。p型GaN第2ガイド層23におけるMgのドーピング量は、例えば1×1019cm−3程度とされる。p型GaN第2ガイド層23の膜厚は、例えば50nm程度とされる。p型GaN第2ガイド層23に用いられるGaN層の成長温度は、例えば1000℃〜1100℃とされる。
最後に、p型GaN第2ガイド層23の上に、p型GaNコンタクト層24を成長させる。p型GaNコンタクト層24におけるMgのドーピング量は、例えば1×1020cm−3程度とされ、p型GaNコンタクト層24の膜厚は、例えば60nm程度とされる。
このようにして、基板5の上に積層構造体10sが形成できる。さらに、積層構造体10sに対して、以下のデバイスプロセスを行う。
p型GaNコンタクト層24の上に、第2電極50が形成される。第2電極50には、例えば、ITOが用いられる。この第2電極50の形成においては、p型GaNコンタクト層24の上に、例えば250nmのITO膜を形成し、その上に、ハーフトーンマスクを用いて、開口部の面積及び透過率の少なくともいずれかが変化するマスクを形成し、例えばドライエッチングを行うことで、第2電極50の厚さを、パッド層55となる領域から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に減少させることができる。
その後、第2電極50、第2半導体層20及び発光層30の一部の領域にドライエッチングを施し、n型GaN層11を露出させる。露出したn型GaN層11が、第1半導体層10の露出した一部10pとなる。このn型GaN層11の上に第1電極40を形成する。第1電極40としては、例えば、チタン−白金−金(Ti/Pt/Au)の複合膜を用いることができる。すなわち、第1電極40として、例えば、膜厚が0.05μm程度のTi膜、膜厚が0.05μm程度のPt膜、及び、膜厚が0.2μm程度のAu膜の積層膜を用いることができる。
この後、第2電極50及び第1電極40の上に、それぞれ、パッド層55及び第1電極用パッド層45を形成する。すなわち、第2電極50及び第1電極40の上に、例えば、膜厚が1.0μmのAu膜を形成し、これが、パッド層55及び第1電極用パッド層45となる。
これにより、図1(a)及び(b)に例示した半導体発光素子110が形成される。
以下、半導体発光素子110の特性について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、半導体発光素子における電流密度Jc(半導体層に注入される電流の電流密度)と、発光効率Erと、の関係の一例を示しており、横軸は、電流密度Jcであり、縦軸は発光効率Erである。ここで、発光効率Erは、電流密度Jcを変化させたときに得られる最も高い発光効率を1として規格化した値として例示されている。
図2に表したように、半導体発光素子において、電流密度Jcを零から上昇させると発光効率Erは上昇する。そして、電流密度Jcが、ある最高効率電流密度Jmの時に発光効率Erは最大(発光効率Er=1)となる。そして、電流密度Jcが最高効率電流密度Jmよりも大きくなると、発光効率Erは低下する。このように、電流密度Jcが過度に大きくなると、量子効率が低下し、発光効率Erが低下する。
高い発光効率Erを維持するためには、電流密度Jcは、所定の範囲の値に制御されることが望ましい。例えば、発光効率Erの最高値である1に対して5%低下することまでを許容するとする。すなわち、発光効率Erが0.95以上であるように、電流密度Jcを制御するとする。
発光効率Erが0.95となるのは、電流密度Jcが、最高効率電流密度Jmよりも小電流密度側の下側電流密度値J1と、大電流密度側の上側電流密度値J2と、である場合である。この下側電流密度値J1から上側電流密度値J2までの適正電流密度範囲Jr2においては、高い発光効率Er(発光効率Erが0.95以上)が得られる。下側電流密度値J1よりも小さい過小電流密度範囲Jr1においては、電流密度Jcが小さ過ぎて発光効率Erが0.95より低くなる。一方、上側電流密度値J2よりも大きい過大電流密度範囲Jr3においては、電流密度Jcが大き過ぎて発光効率Erが0.95よりも低くなる。このように、半導体発光素子に流れる電流密度Jcを適正電流密度範囲Jr2に制御することで、高い発光効率Erが得られる。
なお、上記においては、例として、発光効率Erが0.95以上であることを許容範囲としたが、得たい発光効率Erの仕様に合わせて、上記の下側電流密度値J1及び上側電流密度値J2を定め、これにより、適正電流密度範囲Jr2が適正に定められる。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図(a)、(b)、(c)及び(d)は、X軸方向に沿った、第2電極50の膜厚、第2電極50のシート抵抗、半導体層に注入される電流密度、及び、発光効率の変化をそれぞれ示し、これらの図の横軸は、X軸方向に沿った位置xである。そして、同図(a)、(b)、(c)及び(d)の縦軸は、第2電極50の厚さTt、第2電極50のシート抵抗Rs、半導体層に注入される電流密度Jc、及び、発光効率Erである。ここで、発光効率Erは、電流密度Jcを変化させたときに得られる最も高い発光効率を1として規格化した値として例示されている。
図3(a)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、パッド層55の側の第1位置x1における第2電極50の第1厚さt1は、第1電極50の側の第2位置x2における第2電極50の第2厚さt2よりも厚い。そして、第2電極50の厚さTtは、第1厚さt1から第2厚さt2に向けて連続的に減少している。すなわち、厚さTtが、第1厚さt1から第2厚さt2に向けて漸減している。
このため、図3(b)に表したように、第1位置x1における第2電極50のシート抵抗Rs(第1シート抵抗R1)は、第2位置x2における第2電極50のシート抵抗Rs(第2シート抵抗R2)よりも低くなる。そして、第2電極50のシート抵抗Rsは、第1シート抵抗R1から第2シート抵抗R2に向けて連続的に増大している。すなわち、シート抵抗Rsが、漸増している。第1シート抵抗R1は、例えば6Ω/□(ohm/square)程度であり、第2シート抵抗R2は、例えば10Ω/□である。
この時、図3(c)に表したように、第1位置x1から第2位置x2までの全ての範囲において、電流密度Jcは、下側電流密度値J1から上側電流密度値J2までの間の適正電流密度範囲Jr2の中に制御される。
もし、後述するように、第2電極50のシート抵抗Rsが第2電極50の全域に渡って十分に低い場合は、p型の第2半導体層20に接する第2電極50と、n型の第1半導体層10に接する第1電極40と、が互いに近接する領域において、主に半導体層に電流が注入され、この部分でのみ局所的に発光し、素子の全域で発光させることができず、効率が低下する。これに対し、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って、第2電極50のシート抵抗Rsを増大させることで、パッド層55に近い領域から第1電極40に近い領域の全域に渡って均一に、第2電極50から発光層30に向けて正孔を注入することができ、過大注入電流密度を抑制することができる。この時、第2電極50のシート抵抗Rsが、連続的に漸増するので、不連続に変化した時における局所的な過大注入電流密度を抑止できる。
これにより、図3(d)に表したように、第1位置x1から第2位置x2までの全ての範囲において、発光効率Erは高い値を維持できる。この例では、発光効率Erは、0.95以上となる。
このように、半導体発光素子110によれば、第2電極50から発光層30に向かって注入される正孔電流を素子内部で均一でき、過大注入電流密度を抑制でき、効率を向上できる。
図4は、第1比較例の半導体発光素子の特性を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、第1比較例の半導体発光素子119aの構成を例示する模式的断面図である。なお、同図(a)においては、半導体発光素子119aのうち、第1半導体層10の側の部分が省略されて描かれているが、この部分は本実施形態に係る半導体発光素子110と同様の構成である。同図(b)、(c)、(d)及び(e)は、半導体発光素子119aの特性を例示するグラフ図であり、それぞれ、図3(a)、(b)、(c)及び(d)に対応するグラフ図である。
図4(a)に表したように、第1比較例の半導体発光素子119aにおいては、第2電極50の厚さが一定である。そして、その厚さは、例えば半導体発光素子110における第2電極50の第1厚さt1と同じである。
すなわち、図4(b)に表したように、半導体発光素子119aにおいては、第2電極50の厚さTtは、第1位置x1から第2位置x2にかけて、第1厚さt1で一定であり、第1位置x1から第2位置x2の全域で、厚い。
このため、図4(c)に表したように、第2電極50のシート抵抗Rsは、第1位置x1から第2位置x2にかけて、第1シート抵抗R1で一定であり、第1位置x1から第2位置x2の全域で、低い。
この時、図4(d)に表したように、第1位置x1から第2位置x2に向かうに従って、電流密度Jcは上昇する。特に、第1電極50の近傍の第2位置x2の近傍において、電流密度Jcは急激に上昇する。これは、第2電極50のシート抵抗Rsが全域に渡って低いので、全域に渡って正孔が注入されやすいが、第1電極40から注入される電子が発光素子全域に広がらず、p型の第2半導体層20に接する第2電極50と、n型の第1半導体層10に接する第1電極40と、が互いに近接する領域において、主に半導体層に電流が注入され、互いに近接する領域から離れた領域では、注入される電流が小さい。これにより、特に、第2位置x2の近傍において、電流密度Jcが過大電流密度範囲Jr3の値となる。
その結果、図4(e)に表したように、第2位置x2の近傍領域において、発光効率Erが急激に低下する。この例では、パッド層55の近傍においては、比較的高い発光効率Erが得られるが、第1電極40の側においては、発光効率Erが著しく低下し、第1位置x1から第2位置x2の全域に渡っては高い発光効率が得られない。このため、半導体発光素子119aの発光効率は低い。
図5は、第2比較例の半導体発光素子の特性を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、第2比較例の半導体発光素子119bの構成を例示する模式的断面図である。なお、同図(a)においては、省略されているが、半導体発光素子119cの第1半導体層10の側の部分は半導体発光素子110と同様である。同図(b)、(c)、(d)及び(e)は、半導体発光素子119bの特性を例示するグラフ図であり、それぞれ、図3(a)、(b)、(c)及び(d)に対応するグラフ図である。
図5(a)に表したように、第2比較例の半導体発光素子119bにおいては、第2電極50の厚さが一定である。そして、その厚さは、例えば、半導体発光素子110における第2電極50の第2厚さt2と同じである。
すなわち、図5(b)に表したように、半導体発光素子119bにおいては、第2電極50の厚さTtは、第1位置x1から第2位置x2にかけて、第2厚さt2で一定であり、第1位置x1から第2位置x2の全域で、薄い。
このため、図5(c)に表したように、第2電極50のシート抵抗Rsは、第1位置x1から第2位置x2にかけて、第2シート抵抗R2で一定で、第1位置x1から第2位置x2の全域で、高い。
この時、図5(d)に表したように、第1位置x1から第2位置x2に向かうに従って、電流密度Jcは減少する。これは、第2電極50のシート抵抗Rsが全域に渡って高いので、パッド層55の近傍において第2電極50から発光層30に正孔が注入される量が多くなり、第1電極40の近傍において注入される量が少なくなるためである。これにより、第1位置x1の近傍において、電流密度Jcは、過大電流密度範囲Jr3の値となる。
その結果、図5(e)に表したように、第1位置x1の近傍領域において、発光効率Erが急激に低下する。すなわち、第1電極40の近傍においては、比較的高い発光効率Erが得られるが、パッド層55の側においては、発光効率Erが著しく低下し、第1位置x1から第2位置x2の全域に渡っては高い発光効率が得られない。このため、半導体発光素子119bの発光効率は低い。
図6は、第3比較例の半導体発光素子の特性を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、第3比較例の半導体発光素子119cの構成を例示する模式的断面図である。なお、同図(a)においては、省略されているが、半導体発光素子119cの第1半導体層10の側の部分は半導体発光素子110と同様である。同図(b)、(c)、(d)及び(e)は、半導体発光素子119cの特性を例示するグラフ図であり、それぞれ、図3(a)、(b)、(c)及び(d)に対応するグラフ図である。
図6(a)に表したように、第3比較例の半導体発光素子119cにおいては、第2電極50の厚さが1段階のステップ状で変化している。すなわち、第2電極50において、シート抵抗Rsが低い領域と高い領域の2つの領域が設けられている。そして、シート抵抗Rsが低い領域がパッド層55の側に配置され、シート抵抗Rsが高い領域が第1電極40の側に配置されている。なお、この構成は、特許文献1に記載されている構成に類似している。
すなわち、図6(b)に表したように、半導体発光素子119cにおいては、第2電極50の厚さTtは、第1位置x1では第1厚さt1であり、第2位置x2では第2厚さt2であり、第1位置x1と第2位置x2との間の中間に位置において、1つの段差によって急激に変化している。すなわち、半導体発光素子119cにおいては、第2電極50の厚さTtが不連続に変化している。
このため、図6(c)に表したように、第2電極50のシート抵抗Rsは第1位置x1では第1シート抵抗R1であり、第2位置x2では第2シート抵抗R2であり、第1位置x1と第2位置x2との間の中間に位置において、1つの段差によって急激に変化している。すなわち、半導体発光素子119cにおいては、第2電極50のシート抵抗Rsは不連続に変化している。
この時、図6(d)に表したように、第1位置x1と第2位置x2との間の中間の、シート抵抗Rsが不連続に変化する位置において、電流密度Jcが局所的に大きくなる。これは、パッド層55から第1電極40に向けて、第2電極50のシート抵抗が不連続に増大するので、その位置において、第2電極50から発光層30に向けて正孔が局所的に集中して注入されるためである。これにより、第1位置x1と第2位置x2との間の中間の位置において、電流密度Jcが局所的に大きくなり、電流密度Jcが過大電流密度範囲Jr3の値となる。
その結果、図6(e)に表したように、第1位置x1と第2位置x2との間の中間の位置で、発光効率Erが局所的に急激に低下する。すなわち、この例では、第1電極40の近傍及びパッド層55の近傍の領域においては、比較的高い発光効率Erが得られるが、第2電極50のシート抵抗Rsが不連続に変化した、第1位置x1と第2位置x2との間の中間の位置で、発光効率Erが著しく低下し、第1位置x1から第2位置x2の全域に渡っては高い発光効率が得られない。このため、半導体発光素子119cの発光効率は低い。
これに対し、図3(a)〜(d)に関して説明したように、本実施形態に係る半導体発光素子110においては、第2電極50のシート抵抗Rsが、第1位置x1から第2位置x2に向かう方向に沿って連続的に増大し、漸増するので、第1位置x1と第2位置x2との間の全ての領域において、過大注入電流密度を抑制でき、その結果、高い発光効率Erが得られる。このため、半導体発光素子110の発光効率は、第1〜第3比較例の半導体発光素子119a〜119cのいずれよりも高い。
図7は、本発明の第1の実施形態に係る半導体発光素子及び比較例の半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、本実施形態に係る半導体発光素子110並びに第1及び第3比較例の半導体発光素子119a及び119cの特性を例示しており、横軸は電流Ifであり、縦軸は光出力Poである。
図7に表したように、第1比較例の半導体発光素子119aの光出力Poは低い。第3比較例の半導体発光素子119cの光出力Poは、半導体発光素子119aよりも向上しているが、不十分である。
これに対し、図7に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110の光出力Poは、第3比較例の半導体発光素子119cの光出力Poよりもさらに高い。
なお、第2比較例の半導体発光素子119bの光出力Poは、第1比較例の半導体発光素子119aと同様であり、第3比較例の半導体発光素子119cの光出力Poよりも低い。
このように、本実施形態に係る半導体発光素子110によれば、注入電流密度の分布を均一化し、過大注入電流密度が抑制された高効率の半導体発光素子が提供できる。
なお、電子よりも正孔の方が移動度が低いため、第2電極50のシート抵抗を連続的に制御することによって電荷の注入を均一にする効果は、正孔に対して実施した時の方が、電子に対して実施したときよりも大きい。従って、本実施形態に係る半導体発光素子において、第1導電型がn型であり、第2導電型がp型であることが望ましい。これにより、より高い効果が得られる。ただし、第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様の傾向の効果が得られる。
図3(b)に例示した特性においては、第2電極50のシート抵抗Rsが、第1位置x1と第2位置x2との間で直線的に変化しているが、本発明はこれに限らず、シート抵抗Rsの変化は種々の変形が可能である。
図8は、本発明の第1の実施形態に係る別の半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、これらの図は、本実施形態に係る半導体発光素子110a〜110jの第2電極50のシート抵抗Rsの種々の特性の例を示しており、横軸はX軸方向の位置xであり、縦軸は第2電極50のシート抵抗Rsである。
図8(a)に表したように、半導体発光素子110aにおいては、第2電極50のシート抵抗Rsの位置xに対する増加率は、第1位置x1の近傍において大きく、第2位置x2の近傍において小さい。
図8(b)に表したように、半導体発光素子110bにおいては、位置xに対するシート抵抗Rsの増加率は、第1位置x1の近傍において小さく、第2位置x2の近傍において大きい。
図8(c)に表したように、半導体発光素子110cにおいては、位置xに対するシート抵抗Rsの増加率は、第1位置x1の近傍において非常に大きく、第1位置x1と第2位置x2との間の中間領域から第2位置x2にかけては、増加率は非常に小さく、シート抵抗Rsはほぼ一定である。
図8(d)に表したように、半導体発光素子110dにおいては、位置xに対するシート抵抗Rsの増加率は、第1位置x1から、第1位置x1と第2位置x2との間の中間領域にかけては、小さく、シート抵抗Rsはほぼ一定である。そして、第2位置x2の近傍において増加率は急激に大きくなっている。
図8(e)に表したように、半導体発光素子110eにおいては、位置xに対するシート抵抗Rsの増加率は、第1位置x1及び第2位置x2の近傍で小さく、第1位置x1と第2位置x2との間の中間領域で大きい。
図8(f)に表したように、半導体発光素子110fにおいては、位置xに対するシート抵抗Rsの増加率は、第1位置x1及び第2位置x2の近傍で大きく、中間領域で小さい。
図8(g)に表したように、半導体発光素子110gにおいては、シート抵抗Rsは、第1位置x1から第2位置x2への方向に沿って、2つの段階で増大している。すなわち、パッド層55に近い第1領域RG1における第2電極50の第1シート抵抗R1は、第1領域RG1よりも第1電極40に近い第2領域RG2における第2電極50の第2シート抵抗R2よりも低く、第1領域RG1と第2領域RG2との間の第3領域RG3における第2電極50の第3シート抵抗R3は、第1シート抵抗R1よりも高く、第2シート抵抗R2よりも低い。このように、シート抵抗Rsが複数の段階で変化する場合も、シート抵抗Rsは漸増しており、「連続的に変化する」とする。逆に、図6(c)に例示したように、シート抵抗Rsが1つの段階で変化する場合は、「不連続に変化する」とする。従って、図8(g)に例示した特性は、「連続的に変化する」特性であるとされる。
図8(h)に表したように、半導体発光素子110hにおいては、シート抵抗Rsは、第1位置x1から第2位置x2への方向に沿って、3つの段階で増大している。すなわち、中間領域(例えば第3領域RG3)が2つ存在していることに相当する。このように、シート抵抗Rsは、3つ以上の複数の段階で変化しても良い。
図8(i)に表したように、半導体発光素子110iにおいては、シート抵抗Rsは、第1位置x1から第2位置x2への方向に沿って、ほぼ一定の変化率で増大しているが、2つの段で段階的に変化している。このように、シート抵抗Rsの変化率がほぼ一定であり、第1位置x1と第2位置x2との間で、変化率が異なる部分が局所的に存在しても良い。
図8(j)に表したように、半導体発光素子110jにおいては、シート抵抗Rsは、第1位置x1から第2位置x2への方向に沿って、ほぼ一定の変化率で増大しているが、3つの段で段階的に変化している。このように、シート抵抗Rsの変化率がほぼ一定であっても、第1位置x1と第2位置x2との間で、変化率が異なる部分が3箇所以上局所的に存在しても良い。
このように、本実施形態に係る半導体発光素子110及び110a〜110jにおける第2電極50のシート抵抗Rsは、パッド層55(例えば第1位置x1)から第1電極40(例えば第2位置x2)に向かう方向に沿って、種々の様態で連続的に増大することができる。
すなわち、第2電極50において、シート抵抗Rsの低い第1領域RG1と、シート抵抗Rsの高い第2領域RG2と、の2つだけではなく、第1領域RG1と第2領域RG2との間に、両者の中間の特性の第3領域RG3が設けられれば良い。
図8(a)〜(j)に例示したシート抵抗Rsの変化の特性は、第2電極50、パッド層55、第1電極40及び第1電極用パッド層45の、Z軸方向から見たときのパターン形状、シート抵抗の値、第1半導体層10及び第2半導体層20に対するコンタクト抵抗及びオーミック特性、積層構造体10sのZ軸方向からみたときのパターン形状及び電気的特性、並びに、目的とする発光効率や動作条件などに基づいて、過大な電流密度が抑制されるように適切に設定される。
以下、図8(a)〜(j)に例示したシート抵抗Rsの変化の特性を実現するために、第2電極50の厚さを変える場合の例について説明する。
図9は、本発明の第1の実施形態に係る別の半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、これらの図は、半導体発光素子の第2電極50の厚さTtの種々の特性の例を示しており、横軸はX軸方向の位置xであり、縦軸は第2電極50の厚さTtである。図9(a)〜(j)に例示する厚さTtに関する特性は、それぞれ図8(a)〜(j)に例示したシート抵抗Rsの特性に対応している。
図9(a)に表したように、半導体発光素子110aにおいては、位置xに対する厚さTtの減少率は、第1位置x1の近傍において大きく、第2位置x2の近傍において小さい。なお、変化率が正である場合を増加率とし、変化率が負である場合の変化率の絶対値を減少率としている。
図9(b)に表したように、半導体発光素子110bにおいては、位置xに対する厚さTtの減少率は、第1位置x1の近傍において小さく、第2位置x2の近傍において大きい。
図9(c)に表したように、半導体発光素子110cにおいては、位置xに対する厚さTtの減少率は、第1位置x1の近傍において非常に大きく、第1位置x1と第2位置x2との間の中間領域から第2位置x2にかけては、減少率は非常に小さく、厚さTtはほぼ一定である。
図9(d)に表したように、半導体発光素子110dにおいては、位置xに対する厚さTtの減少率は、第1位置x1から、第1位置x1と第2位置x2との間の中間領域にかけては、小さく、厚さTtはほぼ一定である。そして、第2位置x2の近傍において減少率は急激に大きくなっている。
図9(e)に表したように、半導体発光素子110eにおいては、位置xに対する厚さTtの減少率は、第1位置x1及び第2位置x2の近傍で小さく、中間領域で大きい。
図9(f)に表したように、半導体発光素子110fにおいては、位置xに対する厚さTtの減少率は、第1位置x1及び第2位置x2の近傍で大きく、中間領域で小さい。
図9(g)に表したように、半導体発光素子110gにおいては、厚さTtは、第1位置x1から第2位置x2への方向に沿って、2つの段階で減少している。すなわち、パッド層55に近い第1領域RG1における第2電極50の第1厚さt1は、第1領域RG1よりも第1電極40に近い第2領域RG2における第2電極50の第2厚さt2よりも厚く、第1領域RG1と第2領域RG2との間の第3領域RG3における第2電極50の第3厚さt3は、第1厚さt1よりも薄く、第2厚さt2よりも厚い。このように、厚さTtが複数の段階で変化する場合も、厚さTtは漸増しており、「連続的に変化する」とされる。逆に、図6(b)に例示したように、厚さTtが1つの段階で変化する場合は、「不連続に変化する」とする。従って、図9(g)に例示した特性は、「連続的に変化する」特性であるとされる。
図9(h)に表したように、半導体発光素子110hにおいては、厚さTtは、第1位置x1から第2位置x2への方向に沿って、3つの段階で減少している。すなわち、中間領域(例えば第3領域RG3)が2つ存在していることに相当する。このように、厚さTtは、3つ以上の複数の段階で変化しても良い。
図9(i)に表したように、半導体発光素子110iにおいては、厚さTtは、第1位置x1から第2位置x2への方向に沿って、ほぼ一定の変化率で減少しているが、2つの段で段階的に変化している。このように、厚さTtの変化率がほぼ一定であっても、第1位置x1と第2位置x2との間で、変化率が異なる部分が局所的に存在しても良い。
図9(j)に表したように、半導体発光素子110jにおいては、厚さTtは、第1位置x1から第2位置x2への方向に沿って、ほぼ一定の変化率で減少しているが、3つの段で段階的に変化している。このように、厚さTtの変化率がほぼ一定であっても、第1位置x1と第2位置x2との間で、変化率が異なる部分が3箇所以上局所的に存在しても良い。
このように、本実施形態に係る半導体発光素子110における第2電極50の厚さTtは、パッド層55(例えば第1位置x1)から第1電極40(例えば第2位置x2)に向かう方向に沿って、種々の様態で連続的に減少することができる。
すなわち、第2電極50において、厚さTtが薄い第1領域RG1と、厚さTtが厚い第2領域RG2と、の2つだけではなく、第1領域RG1と第2領域RG2との間に、両者の中間の特性の第3領域RG3が設けられれば良い。
図9(a)〜(j)に例示した厚さTtの変化の特性は、シート抵抗Rsの変化の特性と同様に、半導体発光素子の各種の特性に基づいて適切に設定される。
図10は、本発明の第1の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式的平面図である。
図10(a)に表したように、本実施形態に係る別の半導体発光素子111においては、積層構造体10sの主面10aの側で露出している第1半導体層10の一部10pが、第2半導体層20に取り囲まれている。そして、Z軸方向(積層構造体10sの積層方向)からみたときにおいて、第1電極40は第2電極50に取り囲まれている。すなわち、第2電極50のパターン形状が開口部を有しており、その開口部の内部において、第1半導体層10の露出した一部10pが配置され、その開口部の内部に、第1電極40が配置されている。これ以外は、半導体発光素子110と同様なので説明を省略する。
この場合も、第2電極50は、パッド層55と第1電極40との間の領域51を有しており、この領域51において、第2電極50のシート抵抗Rsが、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に増大する。すなわち、シート抵抗Rsは、漸増する。
図10(b)に表したように、本実施形態に係る別の半導体発光素子112においては、積層構造体10sのZ軸方向からみたときの形状が矩形(長方形)であり、その矩形の1つの角部に第1電極40が配置され、第1電極40が配置された角部の対角の角部にパッド層55が配置されている。この場合も、主面10aの側で露出している第1半導体層10の一部10pが、第2半導体層20に取り囲まれ、Z軸方向からみたときにおいて、第1電極40は第2電極50に取り囲まれている。これ以外は、半導体発光素子110と同様なので説明を省略する。
この場合も、第2電極50は、パッド層55と第1電極40との間の領域51を有しており、この領域51において、第2電極50のシート抵抗Rsが、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に増大する。すなわち、すなわち、シート抵抗Rsは、漸増する。
半導体発光素子111及び112の場合においても、第2電極50のシート抵抗Rsの変化は、例えば、第2電極50の厚さTtを変化させることで実現される。
このように、本実施形態に係る半導体発光素子における、第1電極40、第2電極50及びパッド層55の配置とパターン形状(Z軸方向からみたときのパターン形状)は種々の変形が可能である。
図11は、本発明の第1の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
すなわち、同図は、図1(b)のA−A’線断面に相当する断面図である。なお、同図においては、本実施形態に係る半導体発光素子113のうち、第1半導体層10の側の部分が省略されて描かれているが、この部分は本実施形態に係る半導体発光素子110と同様の構成である。
図11に表したように、半導体発光素子113においては、第2半導体層20の主面10aの側において、第2半導体層20の上に絶縁層54(例えばSiO2層)が設けられ、絶縁層54の上にパッド層55が設けられている。そして、この場合もパッド層55は、第2電極50と電気的に接続されている。それ以外は、半導体発光素子110と同様なので説明を省略する。
パッド層55における、発光層30から放射される光に対する透過率は、第2電極50よりも低い。パッド層55の直下に位置する発光層30(発光層30のうち、パッド層55に対向する部分)から照射された光は、パッド層55に入射し易いため、この光は素子の外部に取り出され難い。光の取り出し効率を向上し、実質的な効率を向上させるためには、透過率の低いパッド層55の直下の発光層30には電流を注入せず、発光させないことが望ましい。
半導体発光素子113においては、パッド層55と第2半導体層20との間に絶縁層54を設けることで、パッド層55の直下の発光層30への電流の注入を抑制することができ、効率が向上できる。
このように、パッド層55は、第2半導体層20の主面10aの側に設けられ、第2電極50に電気的に接続されていれば良い。
半導体発光素子113の場合も、第2電極50のシート抵抗Rsを、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に増大することで、注入電流密度の分布を均一化し、過大注入電流密度を抑制し、高効率の半導体発光素子が得られる。
(第2の実施の形態)
図12は、本発明の第2の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
すなわち、同図(b)は模式的平面図であり、同図(a)は、同図(b)のA−A’線断面図である。
図12(a)及び(b)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子120においては、第2電極50に複数の凹部50h(穴も含む)が設けられている。そして、凹部50hのX軸方向に沿った凹部幅Wbと、凹部50hが設けられていない部分のX軸方向に沿った凹部間幅Waと、の比率が、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に変化している。この場合、第2電極50の厚さ(凹部50hが設けられていない部分の厚さ)は一定としても良い。
本具体例は、凹部幅Wbが一定であり、凹部間幅Waが変化する例である。そして本具体例は、第2電極50の厚さ(凹部50hが設けられていない部分の厚さ)は、厚さtaで一定であり、例えば、図1に例示した第1厚さt1と同じとすることができる。そして、凹部50hの深さは、深さtbであり、一定である。なお、凹部50hの部分における第2電極50の厚さは、厚さtaと深さtbとの差である。
具体的には、凹部50hの密度が、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に増大している。このように、第2電極50に凹部50hが設けられる場合、凹部50hの領域の面積の全体に占める割合が増大すると、シート抵抗Rsが上昇する。すなわち、凹部50hの深さtbが一定である場合において、凹部比率WRを、(凹部幅Wb/凹部間幅Wa)としたとき、凹部比率WRが大きいほどシート抵抗Rsが上昇する。
図13、本発明の第2の実施形態に係る半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図(a)、(b)及び(c)は、X軸方向に沿った、第2電極50の凹部間幅Wa、凹部比率WR、及び、シート抵抗Rsの変化をそれぞれ示している。これらの図の横軸はX軸方向に沿った位置xであり、同図(a)、(b)及び(c)の縦軸は、それぞれ凹部間幅Wa、凹部比率WR、及び、シート抵抗Rsである。
図13(a)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子120においては、第1位置x1から第2位置x2に向けて位置xが変化するに従って、凹部間幅Waは連続的に減少する。すなわち、パッド層55側の第1位置x1(第1領域RG1)における凹部間幅Waは、第1凹部間幅Wa1であり、第1電極40の側の第2位置x2(第2領域RG2)における凹部間幅Waは、第1凹部間幅Wa1よりも小さい第2凹部間幅Wa2であり、中間領域(第3領域RG3)における凹部間幅Waは、両者の中間の第3凹部間幅Wa3である。
これにより、図13(b)に表したように、第1位置x1から第2位置x2に向けて位置xが変化するに従って、凹部比率WRは連続的に増加する。すなわち、第1位置x1(第1領域RG1)における凹部比率WRは、第1凹部比率WR1であり、第2位置x2(第2領域RG2)における凹部比率WRは、第1凹部比率WR1よりも大きい第2凹部比率WR2であり、中間領域(第3領域RG3)における凹部比率WRは、両者の中間の第3凹部比率WR3である。
これにより、図13(c)に表したように、第1位置x1から第2位置x2に向けて、位置xが変化するに従って、実効的なシート抵抗Rsは連続的に増大する。
これにより、半導体発光素子120によれば、注入電流密度の分布を均一化し、過大注入電流密度を抑制し、高効率の半導体発光素子が得られる。
なお、上記の凹部50hは、例えば、所定のパターン形状の開口部を有するマスクを用いて、第2電極50となる導電層をエッチングすることで形成できる。
上記においては、凹部50hの凹部幅Wbが一定であり、凹部間幅WaをX軸方向に沿って変化させる例であるが、凹部間幅Waを一定とし、凹部50hの凹部幅WbをX軸方向に沿って変化させても良く、また、凹部幅Wb及び凹部間幅Waの両方をX軸方向に沿って変化させても良い。すなわち、凹部比率WRがX軸方向に沿って変化されれば良い。
さらに、凹部50hの深さtbが、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に変化しても良い。
また、図13(b)に例示したように、本具体例では、凹部50hのパターン形状(Z軸方向からみたときの形状)は、円形であるが、凹部50hのパターン形状は任意である。例えば、凹部50hは、Y軸方向に延在する溝でも良い。また、凹部50hのパターン形状は円形や、直線状の溝などだけでなく、各種の曲線を含む形状でも良い。
すなわち、第2電極50が複数の凹部50hを有し、複数の凹部50hの凹部幅Wb(X軸方向に沿った長さ)、凹部50hどうしの間の凹部間幅Wa(X軸方向に沿った間隔)、及び、凹部50hの深さtbの少なくともいずれかが、X軸方向(パッド層55から第1電極40に向かう方向)に沿って連続的に変化すれば良い。
ここで、この場合においても、「連続的に変化する」とは、凹部幅Wb、凹部間幅Wa、及び、凹部50hの深さtbの少なくともいずれかに関する特性に関して、第1領域RG1と、第2領域RG2と、の間に、両者の中間の特性を有する中間の領域(第3領域RG3)が設けられれば良い。
図14は、本発明の第2の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
すなわち、同図(b)は模式的平面図であり、同図(a)は、同図(b)のA−A’線断面図である。
図14に表したように、本実施形態に係る別の半導体発光素子121においては、第2電極50に設けられる凹部50hが、第2電極50をZ軸方向に貫通している。これ以外は、半導体発光素子120と同様とすることができるので説明を省略する。
このように、凹部50hは、第2電極50を厚さ方向で貫通しても良い。そして、凹部比率WR(凹部幅Wb/凹部間幅Wa)が、X軸方向(パッド層55から第1電極40に向かう方向)に沿って連続的に変化する。これにより、第1位置x1から第2位置x2に向けて位置xが変化するに従って、実効的なシート抵抗Rsを連続的に増大させ、漸増させることができ、注入電流密度の分布を均一化し、過大注入電流密度を抑制し、高効率を向上できる。
なお、凹部50hが、第2電極50を貫通する場合、凹部50hの部分では、電流が注入されないので、例えば、凹部50hの凹部幅Wbを半導体発光素子120の場合よりも小さくし、凹部50hの数(密度)を半導体発光素子120の場合よりも高く設定することで、凹部50hの部分で電流が注入されないことの影響を抑制し、所望の特性を得ることができる。
(第3の実施の形態)
図15は、本発明の第3の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図15に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子130においては、第2電極50の導電率(電気伝導率)が、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に変化している。この場合、第2電極50の厚さ(凹部50hが設けられていない部分の厚さ)は一定として良い。
例えば、第2電極50に用いられる透明導電層のアニール温度が高いと、導電率が高くなる。この性質を利用して、透明導電層のアニール温度を、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に減少させることで、シート抵抗Rsを変化させることができる。
例えば、第1領域RG1における透明導電層アニール温度は、高温の第1アニール温度Tm1であり、第2領域RG2におけるアニール温度は、第1アニール温度Tm1よりも低い第2アニール温度Tm2であり、第1領域RG1と第2領域RG2との間の第3領域RG3におけるアニール温度は、第1アニール温度Tm1よりも低く、第2アニール温度Tm2よりも高い第3アニール温度Tm3である。
例えば、第2電極50となる透明導電層に局所的にレーザ光を照射し、レーザ光の出力や走査速度を制御し、第1領域RG1においてはレーザ光の照射エネルギーが高く、第2領域RG2においては照射エネルギーが低く、第3領域RG3では照射エネルギーが中間になるようにする。
これにより、第2電極50に含まれる粒子の粒径を、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に減少させ、第2電極50の導電率を、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に減少させることができる。なお、第2電極50に含まれる粒子の粒径は、例えば、透過電子顕微鏡などによる第2電極50の観察により求めることができる。また、このときの粒径は、複数の粒子における粒径の平均の値、または、最大値とすることができる。
図16は、本発明の第3の実施形態に係る半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図(a)、(b)及び(c)は、X軸方向に沿った、第2電極50のアニール温度Tm、第2電極50に含まれる粒子の粒径GS、及び、シート抵抗Rsの変化をそれぞれ示している。これらの図の横軸はX軸方向に沿った位置xであり、同図(a)、(b)及び(c)の縦軸は、それぞれアニール温度Tm、粒径GS、及び、シート抵抗Rsである。
図16(a)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子130においては、第1位置x1から第2位置x2に向けて位置xが変化するに従って、アニール温度Tmは連続的に低下する。すなわち、アニール温度Tmは、第1位置x1(第1領域RG1)においては高温の第1アニール温度Tm1であり、第2位置x2(第2領域RG2)においては低温の第2アニール温度Tm2であり、中間領域(第3領域RG3)においては、中温の第3アニール温度Tm3である。
これにより、図16(b)に表したように、第1位置x1から第2位置x2に向けて位置xが変化するに従って、第2電極50に含まれる粒子の粒径GSは、連続的に減少する。すなわち、粒径GSが漸減する。すなわち、粒径GSは、第1位置x1(第1領域RG1)においては大きい第1粒径GS1であり、第2位置x2(第2領域RG2)においては第1粒径よりも小さい第2粒径GS2であり、中間領域(第3領域RG3)においては、両者の中間の大きさの第3粒径GS3である。
これにより、図16(c)に表したように、第1位置x1から第2位置x2に向けて位置xが変化するに従って、シート抵抗Rsは連続的に増大する。すなわち、シート抵抗Rsが漸増する。
これにより、半導体発光素子130によれば、注入電流密度の分布を均一化し、過大注入電流密度を抑制し、高効率の半導体発光素子が得られる。
本発明の実施形態に係る半導体発光素子においては、第2電極50のシート抵抗が、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に増大し、すなわち漸増すれば良く、そのために、第2電極50の厚さ、第2電極50に設けられる凹部50hに関する凹部比率WR及び深さtb、並びに、第2電極50の導電率の少なくともいずれかが、パッド層55から第1電極40に向かう方向に沿って連続的に変化すれば良く、上記の内の2つ以上を同時に実施しても良い。
なお、本明細書において「窒化物系半導体」とは、BxInyAlzGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x,y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むものや、導電型などを制御するために添加される各種のドーパントのいずれかをさらに含むものも、「窒化物系半導体」に含まれるものとする。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体発光素子を構成する第1半導体層、第2半導体層、発光層、量子井戸層、バリア層、第1電極、第2電極、パッド層、第1電極用パッド層、絶縁層等、各要素の具体的な構成の、形状、サイズ、材質、配置関係などに関して、また結晶成長プロセスに関して当業者が各種の変更を加えたものであっても、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体発光素子を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体発光素子も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。