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JP5380516B2 - 窒化物半導体発光素子 - Google Patents

窒化物半導体発光素子 Download PDF

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本発明は、発光ダイオードやレーザダイオードなどの窒化物半導体発光素子に関する。
窒化ガリウム(GaN)などの窒化物系III−V族化合物半導体は広いバンドギャップを有する半導体である。そのため、その特徴を活かし、それらの半導体を用いた高輝度の紫外〜青色・緑色発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や青紫色〜青色レーザダイオード(LD:Laser Diode)などが開発されている。
青色LEDの高効率化を図るためには、GaN系半導体の結晶性を高めることが重要である。また、青色LEDの高光出力を実現するためには注入電流を増やせばよいが、量子効率の注入電流依存性を調べると、低電流領域では効率が高いものの、高電流領域では効率が低下してしまうことが知られている。このことから、高光出力かつ高効率なLEDを実現することが困難であった。
GaN系半導体の結晶性を高めるために、InGaN量子井戸層におけるIn組成を傾斜させる方法があるが(例えば、特許文献1参照)、この方法を用いても、高光出力かつ高効率なLEDを実現することが困難であった。
特開平11−26812号公報
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされ、量子効率の注入電流依存性による効率低下を防止し、高光出力かつ高効率の窒化物半導体発光素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、p型及びn型の一対のGaN層と、これらGaN層間に挟まれた単一量子井戸構造又は多重量子井戸構造の活性層を具備する窒化物系半導体発光ダイオードにおいて、前記活性層は、量子井戸層と、この量子井戸層を間に挟む、量子井戸層よりもバンドギャップが大きい一対のバリア層とを含み、前記一対のバリア層のそれぞれは、前記量子井戸層側から順に、Iny1Ga1-y1Nから構成される第1のサブバリア層、Iny2Ga1-y2Nから構成される第2のサブバリア層、及びIny3Ga1-y3Nから構成される第3のサブバリア層を含む多層構造を有し、0<y1,y3<y2<1、及びy1=y3の関係を満たし、n型不純物がドープされていないことを特徴とする窒化物系半導体発光ダイオードを提供する。
本発明によると、高光出力かつ高効率の窒化物半導体発光素子が提供される。
図1は、実施例1及び2に係る半導体発光素子の構成を示す断面図である。 図2は、実施例1及び2に係る半導体発光素子における活性層のバンドギャップを示す模式図である。 図3は、実施例1及び2に係る青色LEDと、本発明の範囲外のバリア層を備えた青色LEDについての、量子効率と注入電流の関係を示すグラフである。 図4は、実施例1及び2に係る青色LEDにおけるバリア層Aの伝導帯のエネルギー準位を示す模式図である。 図5は、2層構造のバリア層Bの伝導帯のエネルギー準位を示す模式図である。 図6は、本発明とはバンドギャップの広狭が逆の3層構造のバリア層Cの伝導帯のエネルギー準位を示す模式図である。 図7は、単層構造のバリア層Dの伝導帯のエネルギー準位を示す模式図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体発光素子は、量子井戸構造の活性層をp型クラッド層とn型クラッド層の一対のクラッド層により挟んだ、ダブルヘテロ構造を有する。この場合、量子井戸構造の活性層は、量子井戸層と、この量子井戸層を、量子井戸層よりもバンドギャップが大きい一対のバリア層により挟んだ構造を有し、一対のバリア層のそれぞれは、量子井戸層側から順に、第1のサブバリア層、第2のサブバリア層、及び第3のサブバリア層を含む多層構造を有する。
量子井戸層は、例えばInGaNにより形成され、一対のバリア層は、量子井戸層とは組成の異なるInGaNの三元系窒化物、又はInGaAlNの四元系窒化物により形成される。なお、n型クラッド層は、n型GaNにより形成し、p型クラッド層は、p型GaNにより形成することが出来る。
バリア層が三元系窒化物から形成される場合、一対のバリア層のそれぞれは、量子井戸層側から順に、Iny1Ga1−y1Nから構成される第1のサブバリア層と、Iny2Ga1−y2Nから構成される第2のサブバリア層と、Iny3Ga1−y3Nから構成される第3のサブバリア層とを含み、0<y1,y3<y2<1、及びy1=y3の関係を満たす。
バリア層が四元系窒化物により形成される場合、一対のバリア層のそれぞれは、量子井戸層側から順に、Iny1Ga1−y1−x1Alx1Nから構成される第1のサブバリア層と、Iny2Ga1−y2−x2Alx2Nから構成される第2のサブバリア層と、Iny3Ga1−y3−x3Alx3Nから構成される第3のサブバリア層とを含み、0<y1,y3<y2<1、y1=y3、0<x1,x2,x3<1の関係を満たす。
以上のような組成の層構成を有するバリア層を用いることにより、活性層に加わる内部電界を低減することが出来、その結果、高光出力かつ高効率の窒化物半導体発光素子を得ることが出来る。
本発明の一実施形態に係る窒化物半導体発光素子では、バリア層の膜厚をbnmとした場合、第1及び第3のサブバリア層の膜厚を0.25nm以上、(b/2)nm未満とすることが出来る。バリア層をこのような膜厚の層構成とすることにより、高注入電流密度でも量子効率が優れるという効果が得られる。第1及び第3のサブバリア層の膜厚が0.25nm未満ではサブバリア層と量子井戸の界面で欠陥が発生し、量子効率が低下してしまい、(b/2)nmを超えると活性層全体に歪がかかりすぎて逆に量子効率低下の事態となり得る。
また、第1及び第3のサブバリア層の膜厚は、第2のサブバリア層の膜厚よりも小さくすることが出来る。このようにすることにより、高注入電流密度でも量子効率がさらに優れるという効果が得られる。第1及び第3のサブバリア層の膜厚を第2のサブバリア層の膜厚と同一か又はそれ以上とした場合には、量子効率低下となり得る。
また、バリア層には、n型不純物をドープすることが出来る。それによって、量子効率が全体的に向上するという効果が得られる。ドープ量は、1×1017〜1×1019cm−3程度がよい。
なお、量子井戸層は、発光効率向上のため、アンドープであるのが望ましい。
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
図1は、本発明の第1の実施例に係る窒化物半導体発光ダイオードの断面構造を示す。図1に示す発光ダイオードは、サファイア基板1上に、n型GaN層2、n型GaNガイド層3、活性層4、p型GaN第1ガイド層5、p型GaAlN層(電子オーバーフロー防止層6)、p型GaN第2ガイド層7、及びp型GaNコンタクト層8を順次積層した構造を有する。また、n型GaN層2上にn電極12が、p型GaNコンタクト層8上にp電極11がそれぞれ形成されている。即ち、活性層4が、n型クラッド層として機能するn型GaNガイド層3と、p型クラッド層として機能するp型GaN第1ガイド層5により挟まれたダブルヘテロ構造を有する。
図1に示す発光ダイオードは、以下のようにして製造される。
まず、サファイア基板1上に、約20nmの膜厚のGa1−aAlN(0≦a≦1)からなるバッファ層1aを形成した後、n型不純物がドープされたn型GaN層2を約5000nmの厚さに結晶成長する。結晶成長には、例えば有機金属気相成長法(MOCVD)が用いられる。MOCVD以外に、分子線エピタキシー法(MBE)により結晶成長を行っても良い。以下の各層の成膜も同様である。
n型不純物としては、Si、Ge、Snなどの種々の元素を用いることが可能であるが、ここではSiを用いるものとする。Siのドーピング量は、2×1018cm−3程度にすれば良い。
基板1としてサファイアを用いたが、これに限定されることなく、GaN、SiC、Si、GaAs、など様々なものを用いることができる。
次に、n型GaN層2の上に、n型不純物、例えばSiが1×1018cm−3程度ドープされた、膜厚約0.1μmのGaNからなるn型ガイド層3を結晶成長する。n型GaN層2及びn型ガイド層3を成長させる際の成長温度は、いずれも1000〜1100℃である。また、n型ガイド層としては、GaN層ではなく、膜厚0.1μm程度のIn0.01Ga0.99N層を用いても良い。In0.01Ga0.99N層を形成する場合の成長温度は、700〜800℃とすることが出来る。
次に、n型ガイド層3の上に、膜厚2.5nm程度のアンドープのIn0.2Ga0.8Nからなる量子井戸層4aと、膜厚12.5nm程度のInGa1−yNからなるバリア層4bを交互に積層し、量子井戸層をはさんでその両側にバリア層4b(4b,4b,4b)を配置した、多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造の活性層4を形成する。この場合の成長温度は700〜800℃である。なお、室温におけるフォトルミネッセンスの波長をここでは450nmに設計した。
バリア層4bは、たとえば、図2に示すように、膜厚2nmからなる、左側の量子井戸層4aに接しており、In組成が0.02である第1のサブバリア層4b(In0.02Ga0.98N層)と、膜厚8.5nmからなる、量子井戸層4aに接しておらず、In組成が0.05である第2のサブバリア層4b(In0.05Ga0.95N層)と、膜厚2nmからなる、右側の量子井戸層4aに接しており、In組成が0.02である第3のサブバリア層4b(In0.02Ga0.98N層)のような積層構造とすればよい。第1〜第3のサブバリア層4b、4b、4bには、n型不純物であるSiを1×1018cm−3程度ドープしても良いし、アンドープでも良い。一方、量子井戸層4aは、発光効率向上のため、アンドープであるのが望ましい。
次に、活性層4の上に、GaNからなるp型第1ガイド層5を成長させる。p型第1ガイド層5の膜厚は30nm程度であれば良い。GaNを成長する温度は、1000〜1100℃である。p型不純物としては、MgやZnなど種々の元素を用いることが可能であるが、ここではMgを用いるものとする。Mgのドーピング量としては、4×1018cm−3程度であれば良い。また、p型第1ガイド層として、膜厚30nm程度のIn0.01Ga0.99N層を用いても良い。In0.01Ga0.99Nを形成する場合の成長温度は700〜800℃である。
次に、p型第1ガイド層5の上に、p型不純物としてMgがドープされた膜厚10nm程度のGa0.8Al0.2Nを電子オーバーフロー防止層6として成長させる。Mgのドーピング量としては4×1018cm−3程度であれば良い。Ga0.8Al0.2Nの成長温度は1000〜1100℃である。
次に、電子オーバーフロー防止層6の上に、Mgが1×1019cm−3程度ドープされたp型GaN第2ガイド層7を成長する。第2ガイド層7の膜厚は、50nm程度あれば良い。GaNを成長する温度は1000〜1100℃である。
最後に、Mgが1×1020cm−3程度ドープされた、膜厚60nm程度のp型GaNコンタクト層8を成長する。
以上のように結晶成長を行い、多層膜を成膜した構造に対して、以下のデバイスプロセスを行うことにより、最終的に発光ダイオードが作製される。
即ち、p型GaNコンタクト層8の上に、例えばパラジウム−白金−金(Pd/Pt/Au)の複合膜からなるp型電極11を形成する。例えば、Pdは膜厚0.05μm、Ptは膜厚0.05μm、Auは膜厚0.05μmである。また、p型電極11には、酸化インジウム錫(ITO)からなる透明電極や、銀(Ag)からなる反射電極を用いてもよい。
p型電極11の形成後、得られた構造に選択的にドライエッチングを施し、n型GaN層2の一部を露出させ、その上にn型電極12を形成する。n型電極12は、例えば、チタン−白金−金(Ti/Pt/Au)の複合膜からなる。この複合膜は、例えば、膜厚0.05μm程度のTi膜、膜厚0.05μm程度のPt膜、および膜厚1.0μm程度のAu膜とすることが出来る。
以上のように作製した、本実施例に係る青色LEDと、他の3種のLED(バリア層の層構成又はIn組成が本発明の要件を満たさないもの)について、電流と量子効率との関係を求める試験を行った。その結果を図3に示す。
図3において、曲線Aは、上述した図2に示すような第1〜第3のサブバリア層からなるバリア層Aを備えた本実施例に係る青色LEDにおける電流と量子効率との関係を示す。曲線Bは、膜厚2nmのIn0.02Ga0.98N層と膜厚10.5nmのIn0.05Ga0.95N層の2層構造のバリア層Bを備えていることを除いて、本実施例に係る青色LEDと同様の構造のLEDにおける電流と量子効率との関係を示す。曲線Cは、膜厚2nmのIn0.05Ga0.95N層、膜厚8.5nmのIn0.02Ga0.98N層、及び膜厚2nmのIn0.05Ga0.95N層の3層構造であるバリア層Cを備えていることを除いて、本実施例に係る青色LEDと同様の構造のLEDにおける電流と量子効率との関係を示す。曲線Dは、膜厚12.5nmのIn0.02Ga0.98N層の単一層であるバリア層Dを備えていることを除いて、本実施例に係る青色LEDと同様の構造のLEDにおける電流と量子効率との関係を示す。
バリア層A、B、C及びDの伝導帯のエネルギー準位を、それぞれ図4、5、6、及び7に示す。
図3から、次のことが明らかである。即ち、曲線Aに示すように、実施例1に係るLEDでは、50mA以上の高電流領域においても、量子効率はそれほど低下していない。これは、バリア層4bとして、In量の少ないサブバリア層(第1のサブバリア層4b)、In量の多いサブバリア層(第2のサブバリア層4b)、及びIn量の少ないサブバリア層(第3のサブバリア層4b)の3層構造を用い、量子井戸層4aと第2のサブバリア層4b)との間にIn量の少ないサブバリア層(第1のサブバリア層4b)を介在させたことにより、ピエゾ分極が小さくなり、活性層にかかる内部電界を低減できたためと考えられる。
これに対し、In量の少ないサブバリア層とIn量の多いサブバリア層の2層構造であるバリア層を用いたLEDは、曲線Bに示すように、曲線Aと同様、50mA以上の高電流領域においても量子効率はそれほど低下していないが、量子効率は本実施例に係るLEDよりは低い。
また、本発明とは逆に、In量の多いサブバリア層、In量の少ないサブバリア層、及びIn量の多いサブバリア層の順に積層した3層構造のバリア層を用いたLEDは、曲線Cに示すように、50mA以上の高電流領域では、量子効率は大きく低下していることがわかる。また、単層構造のバリア層を用いたLEDは、曲線Dに示すように、曲線Cと同様の傾向であるが、量子効率はそれよりも低い。
なお、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態及び実施例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。また、上記実施形態及び実施例の中で説明した組成や膜厚なども一例であり、種々の選択が可能である。
本発明の窒化物系半導体発光素子は、発光ダイオードやレーザダイオードなどの発光素子に、好適に用いることが出来る。

Claims (3)

  1. p型及びn型のGaN層と、これらGaN層間に挟まれた単一量子井戸構造又は多重量子井戸構造の活性層を具備する窒化物系半導体発光ダイオードにおいて、
    前記活性層は、量子井戸層と、この量子井戸層を間に挟む、量子井戸層よりもバンドギャップが大きい一対のバリア層とを含み、
    前記一対のバリア層のそれぞれは、前記量子井戸層側から順に、Iny1Ga1-y1Nから構成される第1のサブバリア層、Iny2Ga1-y2Nから構成される第2のサブバリア層、及びIny3Ga1-y3Nから構成される第3のサブバリア層を含む多層構造を有し、0<y1,y3<y2<1、及びy1=y3の関係を満たし、n型不純物がドープされていないことを特徴とする窒化物系半導体発光ダイオード。
  2. 前記バリア層の膜厚をbnmとした場合、前記第1及び第3のサブバリア層の膜厚はそれぞれ0.25nm以上、(b/2)nm未満であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物系半導体発光ダイオード。
  3. 前記第1及び第3のサブバリア層の膜厚は、それぞれ第2のサブバリア層の膜厚よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体発光ダイオード。
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