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JP5351238B2 - 脱進機構用の歯飛び防止装置 - Google Patents

脱進機構用の歯飛び防止装置 Download PDF

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JP5351238B2
JP5351238B2 JP2011242018A JP2011242018A JP5351238B2 JP 5351238 B2 JP5351238 B2 JP 5351238B2 JP 2011242018 A JP2011242018 A JP 2011242018A JP 2011242018 A JP2011242018 A JP 2011242018A JP 5351238 B2 JP5351238 B2 JP 5351238B2
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Description

本発明は、脱進機構用の歯飛び防止装置であって、第1の枢動軸の周りで枢動するテンプと協働するように構成され、第1の枢動軸の位置がプレートに対して固定されている、歯飛び防止装置に関する。
また、本発明は、プレートに対して枢動可能であり、テンプ軸の周りで枢動する少なくとも1つのテンプを含む脱進機構に関する。
また、本発明は、少なくとも1つのそのような脱進機構を含む時計ムーブメントに関する。
また、本発明は、このタイプの少なくとも1つの時計ムーブメントおよび/または少なくとも1つの脱進機を含む時計に関する。
本発明は、時計学の分野、特に脱進機構の分野に関し、より詳細にはデテント脱進機の分野に関する。
デテント脱進機構は、最も精密であると言われており、海洋クロノメータ用に長い間使用されている。
デテント脱進機構の効率は、レバー脱進機よりも良い。なぜなら、ガンギ車が1回の律動につき1つだけテンプにインパルスを伝え、その間にガンギ車が1角度ステップだけ枢動するからである。したがって、ガンギ車の慣性によるエネルギーの損失は、レバー脱進機では1回の振動につき1度生じるのに対し、デテント脱進機構では1回の律動につき1度生じる。
腕時計でのデテント脱進機の使用は、そのような脱進機が衝撃に敏感であるため、より複雑である。
衝撃、特に側方衝撃時、テンプがその通常の振幅を超えて枢動される場合、ガンギ車の1つの歯が係止爪石から離れ、同じ振動中に離脱およびインパルスが2度生じる。「歯飛び」と呼ばれるこの現象の影響は、振子の等時性を乱すことである。
MONTRES BREGUET SA名義の特許文献1では、第2の作動フィンガと協働するための第1のフィンガと、公知のノッチ付きカムと協働する鼻部を有するフィーラーとの両方を担持するアームを含むレバーが開示されている。テンプおよびそのプレートが第1の方向で枢動するとき、第1のフィンガが第2のフィンガを押進して、ガンギ車から(1つまたは複数の)係止爪石を解放する。次いで、フィーラーアームの鼻部が、ノッチ付きカムの先縁部によって押進されて、ガンギ車に係止手段を再係合する。テンプが逆方向に枢動するとき、第1のフィンガが第2のフィンガを押進して、ガンギ車に係合された状態で係止手段を保つ。プレートが枢動している方向に関わらず、第1のフィンガと第2のフィンガの衝突によって、レバーアーバーに対する自然回転力を発生する。この衝突は、機構を破壊する危険をなんら生じない。弾性部材やストップピンは必要ない。特定の実施形態では、この機構は、隣接しているが位置合わせされていない係止面を含む2つの並置された係止爪石を含み、これは、ガンギ車歯の先端を係止面の接合部の係止線上に位置させることができるようにし、引込み効果を生成して、ストップピンの必要をなくす。ガンギ車に対して最も近い係止爪石の係止面は、歯の前に位置し、歯が進み続けるのを妨げる。ガンギ車歯のこの全体的な係止位置において、フィーラーアームの鼻部は、ローラの周縁から離れるように移動して、テンプを完全に解放し、第1の振動を完了させる。この設計は、脱進機を耐衝撃性にする。実際、衝撃は、鼻部を対応するローラの周縁に戻すが、引込み効果により係止線への歯の戻りがすぐに生じるので係止爪石を離脱させない。その後、第2の振動の終わりに向かって逆方向にテンプが戻る移動中に、第1のフィンガと第2のフィンガが協働するとき、それらは、デテントレバーにおいてその枢動軸の周りでトルクを生じ、ガンギ車歯をわずかに引き戻し、その後、フィンガが互いに離れるときに歯が反引込み効果で係止線に戻る。
MONTRES BREGUET SA名義の特許文献2では、テンプローラに固定され、インパルス爪石がガンギ車の歯列から意図せず解放された場合にガンギ車歯と協働してガンギ車を係止するように構成された安全フィンガが開示されている。この構成は、衝撃時のガンギ車の脱落を防止し、精密にガンギ車のインパルスの時点でプレートの回転方向の逆転をもたらす。ガンギ車の1つの歯とこの安全フィンガとの衝突により、ガンギ車を係止して、プレートを適切な回転方向に戻す。
Detra SAおよびPatek Philippe SA名義の特許文献3では、係止部品と、歯列に隙間を有する歯付きホイールとを備える脱進機構が提案されている。第1のホイールセットは、例えば固定子に取り付けられた回転子によって得られる周期的なトルクを受ける。この第1のホイールセットは、一方では、基本平面内に、周縁にわたって歯列に隙間を有する第1のホイールを含み、他方では、第2の平面内に第1のブレーキレバーを含み、第1のブレーキレバーは複数の歯を含み、テンプが第1の方向で枢動するときにテンプローラに構成された解放レバーを係止することができる。この第1のホイールセットは、その位置に応じて、第1のブレーキレバーまたは第1のホイールを介して第2のホイールセットと協働する。この第2のホイールセットは、基本平面内に、歯列隙間を有する第2のホイールを含み、第2の平面内に成形部品を含み、成形部品は複数のフィンガを含み、第1の方向とは逆の第2の枢動方向でテンプローラ解放レバーを係止することができる。さらに、第2のホイールセットは、前述の平面に平行な第1の平面内に係止部品を含む。この第2のホイールセットは、その位置に応じて、係止部品または第2のホイールを介してガンギ車と協働し、ガンギ車は、基本平面内に、歯列隙間を有する歯付きホイールを含み、第1の平面内にインパルスホイールを含み、インパルスホイールは、従来のガンギ車と同様、香箱からのトルクなど、連続する機械的なトルクを受け取り、テンプローラに構成されたインパルスレバーと協働してテンプの律動運動を維持することができる。様々なホイールセットのそれぞれの角度位置に応じて、係止部品、または成形部品、または歯が互いに協働し、したがってこの装置は、第1のピンの1回転につき4つの安定な係止位置を有し、それらの位置の間に同数の離脱位置を有する。機械的なトルクのための2つの係止手段と2つの離脱手段の組合せ、および2つの係止動作間で離脱動作を課す特定のシーケンスが、機構に対する衝撃時の空転または歯飛びを防止する。この機構は、複雑であり、比較的高価であり、また複数の平面にわたって延在し、そのためかなりの厚さになる。
Baumberger Peter名義の特許文献4は、空間的要件を最小にするように考案されたVoigt名義の特許文献5の改良であり、ここでは、枢動して螺旋ばねによって戻されるデテントレバーを有する従来のデテント脱進機が開示されている。レバーの1つのアームがストリップばねの一端を担持し、ストリップばねの他端は、レバーの別のアームによって担持された停止部材に当接して保持され、小さなテンプローラと一体の離脱爪石と協働するように構成される。係止爪石を越えるレバーの別のアームはフィンガを含み、このフィンガは、この小さなローラの周縁と協働し、特にストリップばねの高さよりも下でカムを形成する切頭部分と協働する。従来、大きなテンプローラがインパルス爪石を担持し、第1の凹部がインパルス爪石の前にあり、第2の凹部が後にあり、離脱爪石がデテントレバーを枢動するときに係止爪石を離脱させることができるようにする。係止段階中のガンギ車の中心とテンプの中心を通る線に対してほぼ対称な係止爪石およびインパルス爪石の位置と、フィンガおよびストリップばねの自由端によって形成されるフォークとの両方に関して、特定の幾何形状を選択することで、テンプ律動に対するデテントの慣性に関連する外乱の影響を制限する。衝撃時のデテントの枢動の振幅は、係止爪石と大きなローラとの相互作用によって制限される。補完実施形態では、この機構は、小さなローラの近くに歯飛び防止レバーを含み、歯飛び防止レバーは、第1の端部が協働することができる停止部材にあるジャンパばねによって維持される2つの安定な端部位置間でムーブメントに枢動可能に取り付けられ、その第2のフォーク形状の端部は離脱爪石と相互作用する。離脱爪石は、フォーク内に進むたびに、一方の安定な位置から他方の安定な位置に歯飛び防止レバーを傾けるように圧力を及ぼす。したがって、フォークは、歯飛びの発生時に小さなローラのための2つの停止体を形成し、1回転を超えてテンプが枢動するのを防止する。
Christophe Claret SA名義の特許文献6では、側方衝撃に対するデテント脱進機用の保護を提供する可動ブリッジを備えるムーブメントが開示されている。この可動ブリッジは、ばねテンプ枢動軸、ガンギ車枢動軸、デテント枢動軸、および歯車列の一部を担持する。これは、歯車列ホイールのうちの1つ、例えば秒ホイールのアーバー上で弾性的に枢動される。このとき、係止爪石を離脱させる可能性がある側方衝撃などの力が可動ブリッジ全体を押進し、デテントとガンギ車の相対位置が維持される。これは、脱進機の一定の動作を保証する。また、可動ブリッジは、衝撃によるエネルギーの一部を散逸する減衰システムによって減衰させることができる。
Christophe Claret SA名義の特許文献7では、螺旋ばねに枢動可能に取り付けられたデテントレバーであって、枢支点の近くに埋め込まれた第1のストリップばねと他端で協働するデテントレバーを備えるデテント脱進機が開示されている。テンプローラは、2つの異なる離脱爪石を含む。デテントレバーに対してガンギ車の逆側に配置されたホイールセットが枢動カムを担持し、枢動カムは、カムストリップばねを保持し、停止位置で螺旋ばねによってデテントに向けて戻される。このカムは、カムストリップばねが、第1の状態で、ストリップばねを担持するレバーの端部と協働し、第2の状態で、テンプの離脱爪石と協働するように構成される。第1の離脱爪石は、第1の爪石が第1の方向で第1のストリップに衝突するときに、第1のストリップばねと協働してデテントを作動させ、逆方向で第1のストリップに衝突するときにはデテントを作動させずに第1のストリップと協働するだけであるように構成される。カムは、第1の状態にあるとき、デテントと協働してデテントの移動を制限する。第2の離脱爪石は、カムを第2の状態に変えるように構成され、第2の状態では、デテントはその離脱動作を行い、係止爪石からガンギ車歯を解放することができる。2つの離脱爪石は近くにあり、デテントが離脱動作を行う直前にカムがその第2の状態になるように配置される。カムストリップばねよりも強い螺旋カム復帰ばねは、カムをその第1の状態に戻す傾向がある。したがって、カムは、その第1の状態で、係止爪石の意図せぬ離脱をもたらすことがあるデテントの意図せぬあらゆる移動を妨げるように位置決めされ、脱進機は衝撃の影響をあまり受けない。この機構の調節は複雑である。なぜなら、調節は、機構に設けられるばね独自の特徴に依存し、ばねは少なくとも3つあるからである。
Rolex SA名義の特許文献8では、直接衝撃脱進機、特にデテント脱進機が開示されている。デテントレバーは特定の様式で構成され、2つの停止部材の間で枢動する。デテントレバーは、ガンギ車に面してフィンガを含み、フィンガは順に、係止爪石として使用される停止表面、レバーの枢動位置に応じてガンギ車軌道と干渉するまたは干渉しない安全表面、およびガンギ車が枢動しているときにレバーに力を加えて傾ける摺動表面を含み、前記ホイールの枢動を停止するためには摺動表面、したがって停止表面をガンギ車と干渉する領域に戻す。従来、テンプローラは、インパルス爪石と離脱フィンガを含む。テンプの第1の枢動方向への振動中、レバーは、離脱フィンガが進むことができるようにする第1の停止枢動位置にあり、一方、他方の枢動方向への他方の振動では、レバーは、別の停止位置に枢動され、前記レバーに構成された弾性離脱要素で離脱フィンガに衝突する。この弾性離脱要素の弾性進行により、テンプは、その進行を継続することができ、インパルス爪石は、ガンギ車の2つの隣接する歯の間に進む。その直後に、テンプは、そのテンプばねによって停止され、逆方向に枢動する。この弾性進行中、レバーは、停止部材に対して突き当たったままであり、レバーの停止表面はガンギ車歯にわたって摺動し、ガンギ車歯は停止されたままである。この機構の安全性は、ガンギ車歯列の軌道に交互に入る1つの停止表面と1つの摺動表面を有するレバーフィンガの構成によって保証される。停止表面と摺動表面の間の安全表面の長さは、駆動エネルギーをテンプに伝えるためにホイールが進む角度に対応し、ホイールの軌道への停止要素の早すぎる戻りを防止し、これはさらに安全性を高める。しかし、香箱からのエネルギーの一部は、摺動段階中の摩擦で消費される。
一方、歯飛び防止機構に特化した特許文献はほとんどない。
MONTRES BREGUET SA名義の特許文献9では、テンプのアームに固定されたフィンガを含むこのタイプの機構が開示されている。テンプ受けが2つのコラムを含み、それらの間にこのフィンガが進むことができる。係止アームが、特にクランプによってテンプばねの外側コイルに固定され、衝撃の作用の下でテンプが空転してその通常の振幅を超える傾向があるときに、アームは、フィンガが通らないようにコラムに当接することができる。
MONTRES BREGUET SA名義の特許文献10では、ピニオンに取り付けられたテンプ軸の構成であって、歯付き区域と協働し、歯付き区域が2つの停止位置の間で移動することができ、テンプがその通常の振幅を超えて枢動するのを防止する構成が開示されている。
要するに、既知の実施形態は、複雑であり、脱進機構に応じて適合させるのは困難であることが多い。テンプを停止する方法は、一般に非常に急激なものであり、手を加えずにムーブメントが再始動することを常に保証するわけではない。
欧州特許第1708047号 欧州特許第1708046号 欧州特許第1522001号 欧州特許第1770452号 米国特許第180290号 欧州特許第1860511号 スイス特許出願第700091号 欧州特許第2224292号 欧州特許第1645918号 欧州特許第1801668号
本発明は、単純で、信頼性が高く、安価であり、既存の脱進機構に容易に適合できる機構を提案することによって従来技術の欠点を克服することを提案する。
すなわち、本発明は、プレートに対して位置を固定された第1の枢動軸の周りで枢動するテンプと協働するように構成された脱進機構用の歯飛び防止装置に関し、この歯飛び防止装置は、第2の枢動軸の周りで枢動可能である枢動ホイールセットを含み、第2の枢動軸が、前記第1の枢動軸に平行であり、前記プレートに対して固定位置にあり、前記枢動ホイールセットが案内手段を含み、案内手段が、前記テンプに固定されて前記テンプと一体に枢動するように構成されたローラに構成された相補案内手段と協働するように構成されることを特徴とし、さらに、前記案内手段または各前記相補案内手段が、前記テンプが第1の枢動方向で枢動しているときに前記枢動ホイールセットを前記第1の枢動軸に近付くように移動させるように、かつ前記テンプが前記第1の枢動方向とは逆の第2の枢動方向で枢動しているときに前記枢動ホイールセットを前記第1の枢動軸から離れるように移動させるように構成されたカムを含み、一方、前記相補案内手段または各前記案内手段が、前記カムと協働するように構成された固定フィンガを含むことを特徴とする。
本発明の特徴によれば、前記カムが、前記カムを担持する構成要素の枢動軸の近くにある第1のリミットストップ部材と、前記カムを担持する構成要素の枢動軸から前記第1のリミットストップ部材よりも遠くに離れた第2のリミットストップ部材とによって制限されて、前記第1のリミットストップ部材または前記第2のリミットストップ部材に到達したときに前記テンプを制止する。
本発明の別の特徴によれば、前記相補案内手段が、前記第1の枢動軸の周りで、半径方向で増加する半径、すなわち半径方向で増分するステップと共に増加する半径で構成されたカムトラックを含み、前記案内手段が、フィンガを形成して前記カムトラックと協働するように構成されたピンを含む。
さらに、本発明は、プレートに対して枢動可能であり、テンプ軸の周りで枢動する少なくとも1つのテンプを含む脱進機構を含み、この脱進機構はデテント脱進機構であり、このタイプの歯飛び防止装置を含み、前記枢動ホイールセットが、第2の枢動軸の周りで枢動するように取り付けられ、第2の枢動軸が、前記第1の枢動軸に平行であり、前記プレートに対して固定位置にあることを特徴とする。
また、本発明は、少なくとも1つのそのような脱進機構を含む時計ムーブメントに関する。
また、本発明は、このタイプの少なくとも1つの時計ムーブメントおよび/または少なくとも1つの脱進機を含む時計に関する。
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読めばより明確になろう。
テンプおよびプレート(図示せず)に関連付けられた休止位置での本発明による歯飛び防止装置の概略斜視図である。 同じ位置での図1の歯飛び防止装置の概略正面図である。 第1のリミットストップ位置での図1の歯飛び防止装置の概略正面図である。 前述の位置とは逆の第2のリミットストップ位置での図1の歯飛び防止装置の概略正面図である。 別の変形形態での本発明による歯飛び防止装置に構成されたローラの概略正面図である。 本発明による歯飛び防止装置に構成されるテンプローラの停止表面の周りの領域での、特定の実施形態での構成の概略部分平面図である。 本発明による歯飛び防止装置に構成される枢動ホイールの停止表面の周りの領域での、特定の実施形態での構成の概略部分平面図である。
本発明は、時計学の分野に関する。
本発明は、脱進機構10用の歯飛び防止装置1であって、第1の枢動軸D1の周りで枢動するテンプ2と協働するように構成され、第1の枢動軸D1の位置がプレートに対して固定されている歯飛び防止装置1に関する。
本発明によれば、装置1は、枢動ホイールセット5を含み、枢動ホイールセット5は、第2の枢動軸D2の周りで枢動可能であり、第2の枢動軸D2は、前記第1の枢動軸D1に平行であり、その位置はプレートに対して固定されている。
ホイールセット5は案内手段7を含み、案内手段7は、ローラ3に設けられた相補案内手段9と協働するように構成され、相補案内手段9は、テンプ2に固定されてテンプ2と一体に枢動するように構成される。
別の実施形態での案内手段7または各相補案内手段9はカム90を含み、カム90は、テンプが第1の枢動方向B1で枢動しているときに枢動ホイールセット5を第1の枢動軸D1に近付くように移動させるように、かつテンプが第1の枢動方向B1とは逆の第2の枢動方向B2で枢動しているときに枢動ホイールセット5を第1の枢動軸D1から離れるように移動させるように構成される。
相補案内手段9または各案内手段7は、カム90と協働するように構成された固定フィンガを含む。
図面に示し、本明細書で以後詳細に説明する好ましい実施形態では、カム90は、テンプ2に固定されたローラ3によって担持される。しかし、逆の構成も可能である。
カム90は、一方では、カム90を担持する構成要素の枢動軸の近くにある第1のリミットストップ部材11によって、他方では、カム90を担持する構成要素の枢動軸から第1のリミットストップ部材よりも遠く離れた第2のリミットストップ部材12によって、各側で制限され、それにより、第1のリミットストップ部材11または第2のリミットストップ部材12に到達したときにテンプ2を制止する。
第1のリミットストップ部材11または第2のリミットストップ部材12に到達したときにテンプ2が停止される位置では、第1のリミットストップ部材11および第2のリミットストップ部材12でのカム90の中線プロファイルへの接線Tが第2の枢動軸D2を通過し、テンプ2がその枢動軸D1の周りで枢動するのを阻止する。図面の実施形態では、案内手段7はホイールセットピン71であり、これは、ローラ3に構成された溝によって形成されるカム9のカムトラック91に沿って進む。
したがって、図3および図4に示されるように、接線Tは、枢動軸D2に沿った枢動ホイールセット5の枢支点を形成するアーバー4を通過する。
この特定の構成は、テンプが2つのリミットストップ部材11または12の一方によってホイールセットピン71に対して停止したときにテンプによって及ぼされる力ベクトルの方向がこのアーバーを通過することができ、したがって枢動ホイールセット5でゼロトルクを発生し、その一方でテンプ2の枢動を阻止し、それにより、衝撃時にテンプがさらに回転するのを防止することを意味する。
好ましくは、相補案内手段9は、第1の枢動軸D1の周りで、半径方向で増加する半径、すなわち半径方向で増分ステップと共に増加する半径を有して構成されたカムトラック91を含み、案内手段7は、フィンガを形成してカムトラック91と協働するように構成されたピン71を含む。
摩擦を最小にするために、ピン71は、カムトラック91内で半径方向遊びJをもって移動することができる。カムトラック91および/またはピン71での摩擦学的な表面処理も、有利には摩擦を減少させることができる。実際、歯飛び防止装置1は、衝撃がありテンプ2が空転する場合にのみ使用される。通常モードでは、すなわち図1または図2に示されるようにピン71が停止部材11と停止部材12の間の中間位置にある休止位置では、歯飛び防止装置1は、最小のエネルギー量しか消費しないはずである。
図1〜図4で見られる特定の実施形態では、カム90は、第1の枢動軸D1の周りに螺旋状のカムトラック91を含む。
有利には、この螺旋は、第2の枢動軸D2と案内手段7に構成されたアーバー72とをつなぐ直線が案内手段7の任意の位置で螺旋の中線プロファイルに対して接線方向にあるように、枢動軸D2に対してサイズ設定されて位置決めされる。
図5で見られる別の特定の実施形態では、カム90は、半径が半径方向で増加する移行区域13によって対として接続された、第1の枢動軸D1の周りの複数の円形回転区間を含むカムトラック91を含む。したがって、図5は、それぞれ半径R1およびR2を有する2つの区域を示す。ピン71が、枢動軸D1の周りでの3つの回転区間を通って進むときに半径方向応力を全く受けず、摩擦損失は最小であるか、さらにはゼロであることは明らかである。
有利には、枢動ホイールセット5は釣合せ区域8を含み、釣合せ区域8は、最大枢動角速度まで、第2の枢動軸D2の周りで枢動ホイールセット5を好ましくは動的に釣り合わせるように構成される。枢動ホイールセットが第2の枢動軸D2の周りで動的に釣り合わされるこの最大枢動角速度は、一方では第1の枢動軸D1の周りでのテンプ2の枢動角速度によって決定され、他方では、第2の枢動軸D2と案内手段7に構成されたアーバー72との間の距離によって形成される第1の一定長のレバーアームと、第1の枢動軸D1とアーバー72との間の距離によって形成される第2の可変長のレバーアームとの組合せによって決定される。代替実施形態では、釣合せ区域8は、第2の枢動軸D2の周りでの枢動ホイールセット5の単純な静釣合せによって定義される。
好ましくは、軽量性、優れた弾性、および製造の容易性のために、枢動ホイールセット5および/またはローラ3は、微細加工可能な材料、すなわちシリコン、または水晶、またはそれらの化合物、またはMEMS技術から作り出される合金、またはDRIEもしくはLIGA法によって得られるものなどの合金、または少なくとも部分的に非晶質の材料で形成される。耐衝撃性を改良するために、テンプが空転するときに衝撃を受ける枢動ホイールセット5およびローラ3の領域は、図6および図7に示されるように構成することができる。
すなわち、図6のローラ3は、第1のリミットストップ部材11と第2のリミットストップ部材12の両方の近くで、衝撃時に接線方向応力を吸収するように構成された少なくとも1つの弾性区画15を画定する少なくとも1つの空洞14を有し、それにより接続された構造のいかなる劣化も防止し、または図示されるように、衝撃時に接線方向応力を吸収するように構成された弾性区画15を画定するそのような空洞14を複数有し、これらの空洞は開口を有していても有していなくてもよい。
図7は、枢動ホイールセット5に構成されたアーム6の端部を示す。このアーム6も同様に、衝撃時に接線方向応力を吸収するように構成された少なくとも1つの弾性区画15を画定する少なくとも1つの空洞14を設けられるか、または弾性区画15を画定するそのような空洞14を複数設けられる。この図では、ホイールセットピン71が溝73に固定されて示されており、溝73は、枢動ホイールセット5が取り付けられる脱進機に応じて、かつ使用されるローラ3に応じてピン71の位置決めを適合させるための事前加工された凹部を含むことがある。
図示しない変形形態では、これらの弾性区画は、テンプばねの中心の近くに、または実際のフィンガに構成することもできる。
図示しない一変形形態では、枢動ホイールセット5が、双安定レバーを有するアームを含み、2つの安定な位置はそれぞれ、ノッチとばねなど弾性復帰手段との協働によって、または磁石と別の磁石もしくは軟鉄など磁性材料からなる爪石との協働によって維持される。
別の実施形態では、この双安定レバーは、前記2つの安定な位置それぞれに、エレクトレットなど静電復帰手段を含む。
したがって、枢動ホイールセットは、弾性枢支点上にあることがあり、例えば2つの安定な位置を画定するための2つの凹半径を備える双安定の弾性ストリップを含む。
また、本発明は、プレートに対して枢動可能であり、テンプ軸D1の周りで枢動する少なくとも1つのテンプ2を含む脱進機構10に関する。好ましくは、この機構10は、デテント脱進機構であり、本発明による歯飛び防止装置1を含み、枢動ホイールセット5が第2の枢動軸D2の周りで枢動可能に取り付けられ、第2の枢動軸D2は、第1の枢動軸D1に平行であり、その位置はプレートに対して固定されている。
特定の実施形態では、ローラ3は、テンプ2と一部片で形成される。
この脱進機構10の有利な実施形態では、テンプ2とローラ3から形成されるユニットが好ましくは一部片であり、微細加工可能な材料、すなわちシリコン、または水晶、またはそれらの化合物、またはMEMS技術から作り出される合金、またはDRIEもしくはLIGA法によって得られる合金、または少なくとも部分的に非晶質の材料からなる。また、本出願人名義の欧州特許第2104008号に開示されるように、このユニットは、テンプばねと一部片で形成することもできる。
また、本発明は、少なくとも1つのそのような脱進機構10を含む時計ムーブメントに関する。
また、本発明は、このタイプの少なくとも1つの時計ムーブメント、および/またはこのタイプの少なくとも1つの脱進機構10を含む時計に関する。
したがって、本発明は、容易に実施でき、わずかな変形を行いさえすれば任意の既存のデテント脱進機モデルに適用可能であるという利点を有し、テンプ軸にローラを固定し、プレートに枢動ホイールセットを固定することからなる、確実な解決策を提供する。

Claims (17)

  1. プレートに対して位置を固定された第1の枢動軸(D1)の周りで枢動するテンプ(2)と協働するように構成された脱進機構(10)用の歯飛び防止デバイス(1)であって、
    前記デバイス(1)は、第2の枢動軸(D2)の周りで枢動可能である枢動ホイールセット(5)を含み、前記第2の枢動軸(D2)が、前記第1の枢動軸(D1)に平行であり、前記プレートに対して固定位置にあり、前記枢動ホイールセット(5)が案内手段(7)を有し、
    前記デバイス(1)はさらに、前記テンプ(2)に固定されて前記テンプ(2)と一体に枢動するように構成されたローラ(3)を含み、前記ローラ(3)が、前記案内手段(7)と協働するように構成された相補案内手段(9)を有することを特徴とし、且つ、
    前記案内手段(7)またはそれぞれ前記相補案内手段(9)は、前記テンプが第1の枢動方向(B1)で枢動しているときに前記枢動ホイールセット(5)を前記第1の枢動軸(D1)に近付くように移動させるように、かつ前記テンプが前記第1の枢動方向(B1)とは逆の第2の枢動方向(B2)で枢動しているときに前記枢動ホイールセット(5)を前記第1の枢動軸(D1)から離れるように移動させるように構成されたカム(90)を有し、
    更に、前記相補案内手段(9)またはそれぞれ前記案内手段(7)は、前記カム(90)と協働するように構成された固定フィンガを具備することを特徴とする、歯飛び防止デバイス(1)。
  2. 前記カム(90)が、前記カム(90)を担持する構成要素の枢動軸の近くにある第1のリミットストップ部材(11)と、前記カム(90)を担持する前記構成要素の前記枢動軸から前記第1のリミットストップ部材よりも遠くに離れた第2のリミットストップ部材(12)とによって制限されて、前記第1のリミットストップ部材(11)または前記第2のリミットストップ部材(12)に到達したときに前記テンプ(2)を制止することを特徴とする、請求項1に記載の歯飛び防止デバイス(1)。
  3. 前記第1のリミットストップ部材(11)または前記第2のリミットストップ部材(12)に到達したときに前記テンプ(2)が停止される位置で、前記第1のリミットストップ部材(11)および前記第2のリミットストップ部材(12)での前記カム(90)の中線プロファイルに対する接線(T)が、前記カム(90)を担持する前記構成要素の枢動軸を通過して、前記テンプ(2)がその枢動軸(D1)の周りで枢動するのを阻止することを特徴とする、請求項2に記載の歯飛び防止デバイス(1)。
  4. 前記相補案内手段(9)が、前記第1の枢動軸(D1)の周りで、半径方向で増加する半径、すなわち半径方向で増分するステップを有して増加する半径で構成されたカムトラック(91)を含み、前記案内手段(7)が、フィンガを形成して前記カムトラック(91)と協働するように構成されたピン(71)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の歯飛び防止デバイス(1)。
  5. 前記ピン(71)が、前記カムトラック(91)内で半径方向遊び(J)をもって移動することができることを特徴とする、請求項4に記載の歯飛び防止デバイス(1)。
  6. 前記カム(90)が、前記第1の枢動軸(D1)の周りに螺旋状のカムトラック(91)を含むことを特徴とする、請求項4に記載の歯飛び防止デバイス(1)。
  7. 前記第2の枢動軸(D2)と前記案内手段(7)に構成されたアーバー(72)とをつなぐ直線が、前記案内手段(7)の任意の位置で前記螺旋の中線プロファイルに対して接線方向であることを特徴とする、請求項6に記載の歯飛び防止デバイス(1)。
  8. 前記カム(90)がカムトラック(91)を含み、カムトラック(91)が、半径が半径方向で増加する移行区域(13)によって対として接続された、前記第1の枢動軸(D1)の周りの複数の円形回転区域を含むことを特徴とする、請求項4に記載の歯飛び防止デバイス(1)。
  9. 前記枢動ホイールセット(5)が、最大枢動角速度まで、前記第2の枢動軸(D2)の周りで前記枢動ホイールセット(5)を動的に釣り合わせるように構成された釣合せ区域(8)を含み、前記最大枢動角速度が、一方では、前記第1の枢動軸(D1)の周りでの前記テンプ(2)の枢動角速度によって決定され、他方では、前記第2の枢動軸(D2)と前記案内手段(7)に構成されたアーバー(72)との間の距離によって形成される第1の一定長のレバーアームと、前記第1の枢動軸(D1)と前記アーバー(72)の間の距離によって形成される第2の可変長のレバーアームとの組合せによって決定されることを特徴とする、請求項1に記載の歯飛び防止デバイス(1)。
  10. 前記ローラ(3)が、前記第1のリミットストップ部材(11)および第2のリミットストップ部材(12)それぞれの近くに、衝撃時に接線方向応力を吸収するように構成された少なくとも1つの弾性区画(15)を画定する少なくとも1つの空洞(14)を含むことを特徴とする、請求項2に記載の歯飛び防止デバイス(1)。
  11. 前記枢動ホイールセット(5)が、前記案内手段(7)の近くに、衝撃時に接線方向応力を吸収するように構成された少なくとも1つの弾性区画(15)を画定する少なくとも1つの空洞(14)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の歯飛び防止デバイス(1)。
  12. 前記枢動ホイールセット(5)および/または前記ローラ(3)が、シリコン、または水晶、またはそれらの化合物、または少なくとも部分的に非晶質の材料からなることを特徴とする、請求項1に記載の歯飛び防止デバイス(1)。
  13. プレートに対して枢動可能であり、テンプ軸(D1)の周りで枢動する少なくとも1つのテンプ(2)を含む脱進機構(10)であって、
    前記機構がデテント脱進機構であること、および
    前記機構が請求項1に記載の歯飛び防止デバイス(1)を含み、前記枢動ホイールセット(5)が、第2の枢動軸(D2)の周りで枢動するように取り付けられ、前記第2の枢動軸(D2)が、前記第1の枢動軸(D1)に平行であり、前記プレートに対して固定位置にあること
    を特徴とする、脱進機構(10)。
  14. 前記ローラ(3)が、前記テンプ(2)と一部片で形成されることを特徴とする、請求項13に記載の脱進機構(10)。
  15. 前記テンプ(2)と前記ローラ(3)から形成される前記ユニットが、シリコン、または水晶、またはそれらの化合物、または少なくとも部分的に非晶質の材料からなることを特徴とする、請求項14に記載の脱進機構(10)。
  16. 請求項13に記載の少なくとも1つの脱進機構を含む、時計ムーブメント。
  17. 請求項16に記載の少なくとも1つの時計ムーブメント、および/または請求項13から15のいずれか一項に記載の少なくとも1つの脱進機構を含む、時計。
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