JP5226548B2 - 鋳造速度と湯面レベルの変更を伴った中炭素鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
・鋳型幅W[mm]は、800〜2100とする。
・鋳型厚みD[mm]は、230〜280とする。
・鋳型高さH[mm]は、800〜1000とする。
・鋳造速度Vc[m/min]は、0.8〜3.0とする。
・溶鋼過熱度ΔT[℃]は、0〜40とする。
・比水量Wt[L/kgSteel]は、0.15〜3とする。
・鋳型内電磁攪拌強度M−EMS[gauss]は、0〜1000とする。
・溶鋼成分は、当事者間の協定に基づく。代表的な成分は、CやSi、Mnである。これに、CrやCuなどが適宜に添加される。その他の不可避の不純物を含む。
・鋳型幅W[mm]及び鋳型厚みD[mm]は、図2に示されるように、鋳型1の上端で特定される。
・鋳造速度Vc[m/min]は、鋳片の引抜速度であって、前記複数のロール対3のうち最上流に配されるロール対3のピンチロール3bの周速度で特定される。
・溶鋼過熱度ΔT[℃]は、鋳型1内へ注湯される溶鋼の温度の指標である。
・比水量Wt[L/kgSteel]は、鋼1kgに対して用いられる冷却水の容積を意味する。
・鋳型内電磁攪拌強度M−EMS[gauss]は、鋳型1内の溶鋼を攪拌するために作用される磁場の強度の指標である。この鋳型内電磁攪拌強度の測定方法は、本明細書の末尾に記載する。
次に、図2を参照しつつ鋳型1の構造を説明する。図2(a)に示されるように本実施形態に係る鋳型1は、鋳造される鋳片が断面矩形であってアスペクト比が2以上となる所謂スラブ向けに構成される。この鋳型1は、一対で対向し、鋳型広面1aを構成する広面鋳型5と、広面鋳型5の間に配され、一対で対向し、鋳型狭面1bを構成する狭面鋳型6と、これら広面鋳型5及び狭面鋳型6を支持する図示しない鋳型フレームと、を主たる構成として備える。各広面鋳型5は、溶鋼側の広面鋳型銅板5aと、この広面鋳型銅板5aの背面に密着して、広面鋳型銅板5aとの間で図示しない冷却水流路(スリット)を形成する広面鋳型バックプレート5b(SUSジャケット)と、から構成される。同様に、各狭面鋳型6は、溶鋼側の狭面鋳型銅板6aと、この狭面鋳型銅板6aの背面に密着して、狭面鋳型銅板6aとの間で図示しない冷却水流路(スリット)を形成する狭面鋳型バックプレート6b(SUSジャケット)と、から構成される。狭面鋳型バックプレート6bの上端と下端には鋳型フレームに支持される図示しない油圧シリンダのロッドが夫々接続され、この構成で、上記ロッドを鋳型幅方向に適宜に進退させることで、両狭面鋳型銅板6aの上端を用いて図3(a)に示すように特定できる鋳型幅W[mm]と、両狭面鋳型銅板6aの間の距離を下方へ向かって狭くすることで達成される所謂狭面テーパのテーパ角と、を自在に増減できるようになっている。
次に、図3を参照しつつ浸漬ノズル2の構造を説明する。図3(a)に示されるように、本実施形態において用いられる浸漬ノズル2は、有底円筒形状であって、一対の対向する溶鋼吐出孔7が内底8よりも若干上方に形成される2孔式とされる。図3(b)に示されるように、この一対の溶鋼吐出孔7は、溶鋼吐出孔7からの溶鋼吐出流の下向き角度θ[deg.]が水平を基準として15〜45に設定されるように、内周から外周へ向かって斜め下向きに形成される。この下向き角度θ[deg.]は、詳しくは、本実施形態において、浸漬ノズル2の垂直断面で特定される溶鋼吐出孔7の下端線7a(下端の輪郭)と水平との間の角度と一致する。そして、この下端線7aと、浸漬ノズル2の軸心2aと、の交点を仮想交点Pとして定義する。
以下、本実施形態に係る中炭素鋼の連続鋳造方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。
本試験において「湯漏れ」とは、(1)鋳造され、ガス切断機で切断された鋼片の両広面を、ホットスカーフ前に冷間目視で観察して確認できる軽度のブレークアウトであって、溶鋼が凝固シェルから若干滲み出したような形跡、又は(2)操業の継続に支障が出る程の重度のブレークアウトが発生した事実、の(1)及び(2)の何れか一方を意味する。
(2.1.縦割れ検知方法)
熱電対9は、鋳型1内であって、メニスカスから下方へ40mmとなる高さ位置であって、鋳型幅方向に20mmピッチで、鋳型幅中央を中心として800mm幅の広い範囲に埋設した(合計41箇所)。縦割れ検知部102は、この41箇所の熱電対9と冷却水温度計10の出力値を1秒間隔で取得するものとし、上記の熱電対9と対面する位置において鋳型1の鋳型広面1aを垂直に通過する熱流束q1[MW/m2]を夫々、算出した上で鋳型幅方向に隣り合う6つの熱流束q1[MW/m2]データの標準偏差σ[MW/m2]を求めるものとする。この結果、縦割れ検知部102は、標準偏差σ[MW/m2]を1秒ごとに36個(41−5=36)、算出することとなる。そして、縦割れ検知部102は、算出した36個の標準偏差σ[MW/m2]のうち最も大きな標準偏差σ[MW/m2]を最大標準偏差σmax[MW/m2]として特定し、この最大標準偏差σmax[MW/m2]を0.4と比較することとした。なお、縦割れが発生すると最大標準偏差σmax[MW/m2]が0.4を上回るとされる(特開2008−073748号公報参照。)。
(2.2.縦割れ治癒の確認と、縦割れ再発について)
原則として図5に示される制御フローを実行し、縦割れ検知部102による縦割れ検知時に鋳型1内に存在していた凝固シェルに対応する鋳片に上記の湯漏れがないか確認した。このとき、縦割れ検知部102によって特定された縦割れ発生箇所に着目した。そして、この縦割れ発生箇所で湯漏れが視認できたか否かを記録用紙に記録した。また、鋳造速度増速部105による鋳造速度Vc[m/min]の増速は、鋳造速度Vc[m/min]を鋳造速度減速部103による鋳造速度Vc[m/min]の減速前の状態へと復帰させるものとした。即ち、上記式(1)の変数Vc1とVc2を用いて言えば、鋳造速度増
速部105は、鋳造速度Vc[m/min]をVc2からVc1へと至るように増速するものとした。そして、この増速後、少なくとも2チャージ分、連続鋳造を実施し、上記の縦割れ検知部102が上記の縦割れと同じ鋳型幅方向位置で縦割れを再び検知したか否かを記録用紙に記録した。
各試験で共通する試験条件は以下の通りである。
・鋳型高さH[mm]:900
・湯面レベル変更部104による湯面レベル変更前における湯面レベル:鋳型1の上端から下方へ100〜150mm
・使用するモールドパウダーの組成、特性:下記表1の通り。なお、下記表1において「C/S」とあるのはモールドパウダーの塩基度「T−CaO/SiO2」を示し、このうち「CaO」は、CaO又はCaF2のかたちで添加されたCaのすべてをCaOとして換算したものである。また、「η」はモールドパウダーの粘度であり、「Ts」は同じく凝固温度である。上記の粘度及び凝固温度は振動片粘度計測装置を用いて以下のように測定した。即ち、モールドパウダを凝固温度以上に加熱し、冷却速度を3〜5℃/minとして連続的に徐冷する。そして、温度依存する粘度が急激に上がる温度を凝固温度とする。即ち、logη−1/Ts曲線の変曲点におけるTs値を凝固温度とする。また、溶融モールドパウダーの温度が1300℃となったときの粘度を代表として採用した。
・鋼種:下記表2の通りである。
・減速加速度Ac[m/min2]:減速開始時点から減速終了時点に至るまで一定とした。
・取鍋容量:250ton
下記表3に、個別の試験条件と、その結果を示す。試験No.1〜31が実施例であり、試験No.32〜50が比較例である。列タイトル「モールドパウダー」は、上記表1を参照されたい。列タイトル「鋳型振動 振幅」とあるのは、公知の鋳型振動装置による鋳型の鉛直方向の振動の振幅である。同様に、列タイトル「鋳型振動 振動数」とあるのは、公知の鋳型振動装置による鋳型の鉛直方向の振動の振動数である。列タイトル「θ」は、図3(b)を参照されたい。列タイトル「鋼種」は、上記表2を参照されたい。列タイトル「異常時σmax」とあるのは、縦割れ検知部102が鋳型内における凝固シェルの縦割れ発生を検知したときにおける前述の最大標準偏差σmax[MW/m2]を意味する。列タイトル「Δt<10/(Vc1+Vc2)?」の列には、この不等式が成立した場合は「○」を記入し、不成立の場合は「×」を記入した。また、上記表3における各試験においては、減速加速度Ac[m/min2]は減速開始時点から減速終了時点に至るまで一定としたので、列タイトル「Ac」には、(60×(Vc2−Vc1)÷Δt)で求まる値を記入した。列タイトル「Vc3」とあるのは、鋳造速度増速部105による鋳造速度Vc[m/min]の増速後における鋳造速度Vc[m/min]を意味する。列タイトル「湯漏れ」の列には、上の(2.2)で記録した湯漏れの有無を記載した。列タイトル「割れ再発」の列には、同様に、上の(2.2)で記録した縦割れの再発の有無を記載した。ただし、列タイトル「湯漏れ」の列において、「−」とあるのは、他の重大な問題により正常な連続鋳造を続けられなかった場合を意味し、この重大な問題は、備考欄にその種別を記載した。列タイトル「総合評価」の列には、縦割れ治癒を治癒することができ(湯漏れ評価が「無し」)、かつ、縦割れの再発を防止できた(割れ再発評価が「無し」)場合に「○」と記載し、それ以外のすべての場合に「×」と記載した。列タイトル「湯漏れ」の列が「有り」又は「−」の場合は、「割れ再発」については評価しなかった。備考欄において「皮張り」とあるのはメニスカスで溶鋼が凝固した現象を意味し、「焼き付き発生」とあるのは鋳型1の内壁面に対する凝固シェルの焼き付きを意味する。なお、この場合における焼き付きの原因は、皮張りによってモールドパウダーの適切な流動が阻害され、この結果、凝固シェルが鋳型1の内壁面に対して直接的に接触したことである。また、「縦割れ多数発生」とあるのは上記の連続鋳造方法を適用しようとしたら逆に縦割れが多数、発生してしまったことを意味する。ここで言う「縦割れ」とは、鋼片の反基準面(連続鋳造設備の鋳造経路の水平領域において上側となる面を意味する。)を冷間目視で観察して識別する、鋳造方向に5[mm]以上の長さを有する割れを意味する。また、「ノロカミ多数発生」とあるのは上記の連続鋳造方法を適用しようとしたらノロカミが多数、発生してしまったことを意味する。ここで言う「ノロカミ」とは、鋼片の外周面(ただし、切断面を除く。)を冷間目視で観察することで、鋼片の外周面にモールドパウダーが噛み込まれたかたちとして視認し得る外接円直径1mm程度以上の疵を意味する。
(5.1.全体的な考察)
以上説明したように上記実施形態において、中炭素鋼の連続鋳造は、以下のような方法で行われる。即ち、炭素含有量C[wt%]が0.07〜0.18である中炭素鋼を、鋳造速度Vc[m/min]を0.8〜2.4として連続鋳造するに際し、鋳型内における凝固シェルの縦割れ発生の有無を監視する。鋳型内で凝固シェルに縦割れが発生したことを検知したら、検知した時点から下記式(1)を満たす減速時間Δt[sec]が経過するまでに、下記式(2)を満たす減速加速度Ac[m/min2]で、鋳造速度Vc[m/min]を下記式(3)を満たすように減速する。この減速後、湯面レベルを、下記式(4)を満たす湯面レベル変更速度Vm[m/min]で、下記式(5)を満たす湯面レベル変更量Δm[mm]だけ、下向きに変更する。この変更後、鋳造速度Vc[m/min]を増速する。ただし、下記式(1)において、鋳造速度Vc1[m/min]は上記減速前の鋳造速度Vc[m/min]を意味し、鋳造速度Vc2[m/min]は上記減速後の鋳造速度Vc[m/min]を意味する。各式において下向きを正とする。
(5.2.1.鋳造速度Vc[m/min]の減速)
縦割れを検知したら、鋳造速度Vc[m/min]を減速させることで、縦割れが発生した箇所の、鋳型内における滞在時間が延長され、この縦割れ発生箇所の後方(溶鋼側)へのシェル発達が促される。縦割れ発生箇所の後方に健全なシェル(即ち、十分な厚みのシェル)が発達することで、この縦割れ発生箇所が鋳型下端を抜け出ても、湯漏れを起こさせない。ただし、試験No.33、35、37のように、この減速後の鋳造速度Vc[m/min]が0.7よりも大きいとシェル発達をさせるのに十分な時間を確保できない。一方、試験No.32、34、36のように、減速後の鋳造速度Vc[m/min]が0.3よりも小さいと浸漬ノズル2から鋳型1内への溶鋼の吐出流量が過小となり、メニスカスへの熱の供給が不足し、この結果、所謂皮張りや、メニスカス上に投入されたモールドパウダーの適切な滓化及び鋳型−凝固シェル間への流入が阻害されて、鋳型1の内壁面に対する凝固シェルの焼き付きが発生してしまう。
試験No.48〜50に示されるように、湯面レベル変更速度Vm[m/min]が過大であると、湯漏れは治癒できたが、ノロカミが発生した。また、別の部位に縦割れが発生する場合も認められた。これは、以下の理由によるものと考えられる。即ち、湯面レベル変更速度Vm[m/min]が過大であると、鋳型1内の溶鋼流動に大きな変化をもたらし、この結果、メニスカスの波立ちを招く虞がある。メニスカスが波立つと、メニスカス上のモールドパウダーが溶鋼内に巻き込まれたり、滓化し切れていない非溶融状態のモールドパウダーが凝固シェルと鋳型との間に噛み込まれたり、溶融モールドパウダーの適切な流入が阻害されたりして、新たな縦割れやノロカミを引き起こす不具合を誘発するからである。なお、メニスカスの波立ち防止の観点から、湯面レベル変更速度Vm[m/min]は一定であることが好ましい。
以上の説明においては、凝固シェルの縦割れに着目したものであるが、この縦割れと非常に似た欠陥として所謂ディプレッション(凹み)というものがある。これは、凝固シェルの外面に何らかの原因で形成された凹みを意味する。このディプレッションは、縦割れと区別して検知することができないし、縦割れと同様に湯漏れの原因となる。本明細書では縦割れについてのみ言及したが、本明細書における「縦割れ」とは原則として「縦割れ又はディプレッション」を意味するものとする。ただし、例外として、上記表3の備考欄における「縦割れ」は、「縦割れ又はディプレッション」ではなく、「縦割れ」のみを意味する。
・図6中、h1は鋳型冷却水孔部熱伝達係数を、q1は鋳片〜鋳型間熱流束を示す。銅熱伝導度λは0.849[cal/cm/sec/deg]と、鋳型背面〜冷却水間熱伝達係数h1は0.369[cal/cm/sec/deg]とする(日立造船技報、第34巻、第2号(1973))。鋳型冷却水温Twは鋳型出側水温測定値とする。
・計算式
境界条件(スリット側の鋳型銅板界面)は、下記式(6)のように熱伝達係数で規定する。境界条件(鋳片側の鋳型銅板界面)は、下記式(7)のように熱流束で規定する。銅板内部は、下記式(8)の通りとする。そして、式(6)〜(8)の各式を各要素について立て、温度T(I,J)の収支計算を実施する。なお、各式中、Δxは図6の奥行き(紙面厚み方向)のことを指す(例えば、1mm)。
(1)『測定時刻』は、任意である。
(2)『測定地点』は、以下の通りとする。即ち、「水平位置」は、(i)鋳型幅方向においては中央とし、(ii)鋳型厚み方向においては鋳型内壁面から中心へ向かって15[mm]とし、(iii)鋳型高さ方向においては鋳型に埋設される電磁コイルのコイル中心と揃えるものとする。
(3)『測定器具』は、適宜のガウスメータを用いる。
(4)上記の『測定時刻』及び『測定地点』、『測定器具』に準じて複数回測定する。そして上述した鋳型内電磁攪拌強度M−EMS[gauss]は、上記複数の測定値を平均化して求めることとする。
(5)なお、種々の観点から、上記鋳型内電磁攪拌強度M−EMS[gauss]は0〜1000が好ましいとされ、鋳型内の溶鋼に作用される磁場の周波数[Hz]は1〜5が好ましいとされ、一般に、この磁場の周波数[Hz]として2が採用される。
2 浸漬ノズル
100 連続鋳造設備
101 制御装置
Claims (1)
- 炭素含有量C[wt%]が0.07〜0.18である中炭素鋼を、鋳造速度Vc[m/min]を0.8〜2.4として連続鋳造するに際し、
鋳型内における凝固シェルの縦割れ発生の有無を監視し、
鋳型内で凝固シェルに縦割れが発生したことを検知したら、検知した時点から下記式(1)を満たす減速時間Δt[sec]が経過するまでに、下記式(2)を満たす減速加速度Ac[m/min2]で、鋳造速度Vc[m/min]を下記式(3)を満たすように減速し、
この減速後、湯面レベルを、下記式(4)を満たす湯面レベル変更速度Vm[m/min]で、下記式(5)を満たす湯面レベル変更量Δm[mm]だけ、下向きに変更し、
この変更後、鋳造速度Vc[m/min]を増速する、
ことを特徴とする、鋳造速度と湯面レベルの変更を伴った中炭素鋼の連続鋳造方法。
ただし、下記式(1)において、鋳造速度Vc1[m/min]は上記減速前の鋳造速度Vc[m/min]を意味し、鋳造速度Vc2[m/min]は上記減速後の鋳造速度Vc[m/min]を意味する。下記式(2)〜(4)において下向きを正とする。
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