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JP6402750B2 - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋳型内での凝固シェルの不均一冷却に起因する鋳片表面割れを抑制して溶鋼を連続鋳造する連続鋳造方法に関する。
鋼の連続鋳造では、鋳型内に注入された溶鋼は水冷式鋳型によって冷却され、鋳型との接触面で溶鋼が凝固して凝固層(「凝固シェル」という)が生成される。この凝固シェルを外殻とし、内部を未凝固層とする鋳片は、鋳型下流側に設置された水スプレーや気水スプレーによって冷却されながら鋳型下方に連続的に引き抜かれる。鋳片は、水スプレーや気水スプレーによる冷却によって中心部まで凝固し、その後、ガス切断機などによって切断されて、所定長さの鋳片が製造されている。
鋳型内における冷却が不均一になると、凝固シェルの厚みが鋳片の鋳造方向及び鋳型幅方向で不均一となる。凝固シェルには、凝固シェルの収縮や変形に起因する応力が作用し、凝固初期においては、この応力が凝固シェルの薄肉部に集中し、この応力によって凝固シェルの表面に割れが発生する。この割れは、その後の熱応力や連続鋳造機のロールによる曲げ応力及び矯正応力などの外力により拡大し、大きな表面割れとなる。凝固シェル厚みの不均一度が大きい場合には、鋳型内での縦割れとなり、この縦割れから溶鋼が流出するブレークアウトが発生する場合もある。鋳片に存在する割れは、次工程の圧延工程で表面欠陥となることから、鋳造後の鋳片の段階において、鋳片の表面を手入れして表面割れを除去することが必要となる。
鋳型内の不均一凝固は、特に、炭素含有量が0.08〜0.17質量%の鋼(中炭素鋼という)で発生しやすい。炭素含有量が0.08〜0.17質量%の鋼では、凝固時に包晶反応が起こり、鋳型内の不均一凝固は、この包晶反応によるδ鉄(フェライト)からγ鉄(オーステナイト)への変態時の体積収縮による変態応力に起因すると考えられている。つまり、この変態応力に起因する歪みによって凝固シェルが変形し、この変形によって凝固シェルが鋳型内壁面から離れる。鋳型内壁面から離れた部位は鋳型による冷却が低下し、この鋳型内壁面から離れた部位(この鋳型内壁面から離れた部位を「デプレッション」という)の凝固シェル厚みが薄くなり、凝固シェル厚みが薄くなることで、この部分に上記応力が集中し、表面割れが発生すると考えられている。
特に、鋳片引き抜き速度を増加した場合には、凝固シェルから鋳型冷却水への平均熱流束が増加する(凝固シェルが急速冷却される)のみならず、熱流束の分布が不規則で且つ不均一になることから、鋳片表面割れの発生が増加傾向となる。具体的には、鋳片厚みが200mm以上のスラブ連続鋳造機においては、鋳片引き抜き速度が1.5m/min以上になると表面割れが発生しやすくなる。
そこで、従来、上記の包晶反応を伴う、表面割れが発生しやすい鋼種の表面割れ(特に縦割れ)を抑制するために、種々の手段が提案されている。
例えば、特許文献1には、結晶化しやすい組成のモールドパウダーを使用し、モールドパウダー層の熱抵抗を増大させて凝固シェルを緩冷却することが提案されている。これは、緩冷却によって凝固シェルに作用する応力を低下させて表面割れを抑制するという技術である。しかしながら、モールドパウダーによる緩冷却効果のみでは、不均一凝固を十分に改善するまでには至っておらず、特に凝固に伴う僅かな温度低下で変態が生じる中炭素鋼では、表面割れの発生を防止することはできないのが実情である。
特許文献2には、鋳型内壁面に縦溝と横溝とを設け、これら縦溝及び横溝の内部にモールドパウダーを流入させ、これにより、鋳型の冷却を緩冷却化すると同時に鋳型幅方向で均一化し、鋳片の縦割れを防止する技術が提案されている。しかしながら、鋳片との接触によって鋳型内壁面は摩耗し、鋳型内壁面に設けた溝が浅くなると、モールドパウダーの流れ込み量が少なくなって緩冷却効果が低減するという問題、つまり、緩冷却効果が持続しないという問題がある。また、鋳造開始時の空の鋳型空間内への溶鋼注入時に、注入した溶鋼が鋳型内壁面に設けた溝の内部に侵入して凝固し、鋳型銅板と凝固シェルとが固着して、凝固シェルの引き抜きができなくなり、拘束性ブレークアウトが発生する虞があるという問題もある。
特許文献3には、鋳型内壁面に格子状の溝を設けた鋳型、及び、前記格子状の溝に異種金属(Ni,Cr)またはセラミックス(BN、AlN、ZrO)を充填した鋳型が提案されている。この技術は、溝部と溝部以外の部分とで抜熱量に差を生じさせ、凝固に伴う変態や熱収縮による応力を低抜熱の領域に分散させることで、鋳片の縦割れを抑制するという技術である。しかしながら、溝が格子状であり、格子溝形状では、鋳型内壁面の溝部と鋳型銅板(銅または銅合金)との境界が直線であり、熱膨張差に起因して境界面に割れが発生し且つ伝播しやすく、鋳型寿命が低下するという問題がある。
特許文献4には、鋳型内壁面に鋳造方向と平行な縦溝を設けた鋳型、及び、前記縦溝に異種金属(Ni,Cr)またはセラミックス(BN、AlN、ZrO)を充填した鋳型を用い、鋳片引き抜き速度と鋳型振動周期とを所定の範囲に規定する連続鋳造方法が提案されている。特許文献4によれば、鋳片引き抜き速度に応じて鋳型振動周期を適正化することで、鋳片に形成されるオシレーションマークが横溝を付与したように働き、縦溝のみでも、特許文献3と同様の表面割れ低減効果が認められるとしている。しかしながら、特許文献3と同様に、鋳型内壁面の溝部と鋳型銅板(銅または銅合金)との境界が直線であり、熱膨張差に起因して境界面に割れが発生し且つ伝播しやすく、鋳型寿命が低下するという問題がある。
特開2005−297001号公報 特開平9−276994号公報 特開平1−289542号公報 特開平2−6037号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋳造開始時での拘束性ブレークアウトの発生及び鋳型銅板表面の割れによる鋳型寿命低下を起こすことなく、凝固初期の凝固シェルの不均一冷却による表面割れ、及び、包晶反応を伴う中炭素鋼でのδ鉄からγ鉄への変態に起因する凝固シェル厚みの不均一による表面割れを長期間に亘って抑制できる鋼の連続鋳造方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]少なくともメニスカスからメニスカスの下方300mmの位置までの領域の銅合金製鋳型銅板の内壁面の一部分または全体に、鋳型銅板の熱伝導率とは異なる熱伝導率の金属または非金属が充填された複数個の異種物質充填部を有する水冷式銅合金製鋳型を用い、タンディッシュ内の溶鋼を前記鋳型内に注入して連続鋳造する鋼の連続鋳造方法であって、前記異種物質充填部を配置した領域であって、前記メニスカスの下方50mm位置における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の平均値が、鋳片引き抜き速度に応じて定まる下記の(1)式を満足する範囲であり、且つ、前記メニスカスの下方50mm位置における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の標準偏差が、下記の(2)式を満足する範囲であることを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
0.50×V+0.55≦Q≦1.20×V+0.75・・・(1)
σ(Q)≦0.20・・・(2)
但し、(1)式において、Vは鋳片引き抜き速度(m/min)、Qは鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の平均値(MW/m)であり、また、(2)式において、σ(Q)は鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の標準偏差(MW/m)である。
[2]前記複数個の異種物質充填部は、前記内壁面に周期的に増減する熱抵抗分布または熱流束分布を形成することを特徴とする、[1]に記載の鋼の連続鋳造方法。
[3]前記複数個の異種物質充填部は、前記内壁面に設けられた円形凹溝または擬似円形凹溝の内部に前記金属または非金属が充填されて形成されることを特徴とする、[1]または[2]に記載の鋼の連続鋳造方法。
[4]前記複数個の異種物質充填部は、互いに独立して配置されることを特徴とする、[1]から[3]の何れか1つに記載の鋼の連続鋳造方法。
[5]前記異種物質充填部が配置された領域を通過するときの凝固シェルの凝固係数と、前記異種物質充填部が配置されていない領域を通過するときの凝固シェルの凝固係数とが、下記の(3)式または(4)式を満足することを特徴とする、[1]から[4]の何れか1つに記載の鋼の連続鋳造方法。
0.6≦K(C)/K(O)≦0.95(但し、K(C)<K(O)の場合)・・・(3)
0.6≦K(O)/K(C)≦0.95(但し、K(C)>K(O)の場合)・・・(4)
但し、(3)式及び(4)式において、K(C)は、異種物質充填部が配置された領域を通過するときの凝固シェルの凝固係数(mm/min0.5)、K(O)は、異種物質充填部が配置されていない領域を通過するときの凝固シェルの凝固係数(mm/min0.5)である。
[6]前記内壁面には、厚みが0.1mm以上3.0mm以下のニッケルまたはニッケルを含有する合金の鍍金層が形成されており、前記異種物質充填部は前記鍍金層で覆われていることを特徴とする、[1]から[5]の何れか1つに記載の鋼の連続鋳造方法。
本発明によれば、複数個の異種物質充填部を、少なくともメニスカスからメニスカスの下方300mmの位置までの範囲に有する連続鋳造用鋳型を用い、メニスカスの下方50mm位置における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の平均値、及び、メニスカスの下方50mm位置における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の標準偏差を所定の値に制御するので、メニスカス近傍の鋳型幅方向及び鋳造方向における連続鋳造用鋳型の熱抵抗が、その値を所定の範囲内として、周期的に増減し、これによって、メニスカス近傍、つまり、凝固初期での凝固シェルから連続鋳造用鋳型への熱流束が周期的に増減する。この熱流束の周期的な増減により、δ鉄からγ鉄への変態による応力や熱応力が低減し、これらの応力によって生じる凝固シェルの変形が小さくなり、凝固シェルの変形が小さくなることで、凝固シェルの変形に起因する不均一な熱流束分布が均一化され、且つ、発生する応力が分散されて個々の歪量が小さくなる。その結果、凝固シェル表面における割れの発生が抑制される。
本発明に係る連続鋳造方法で使用する連続鋳造用鋳型の一部を構成する鋳型長辺銅板を内壁面側から見た概略側面図である。 図1に示す鋳型長辺銅板のX−X’断面図である。 鋳型銅板よりも熱伝導率の低い物質が充填されて形成された異種物質充填部を有する鋳型長辺銅板の三箇所の位置における熱抵抗を、異種物質充填部の位置に対応して概念的に示す図である。 鋳片引き抜き速度Vと熱流束の鋳型幅方向の平均値Qとの関係の鋳片表面割れに及ぼす影響を調査した結果を示す図である。 熱流束の鋳型幅方向の標準偏差σの鋳片表面割れに及ぼす影響を調査した調査を示す図である。 凝固係数K(C)が凝固係数K(O)よりも小さいときに、凝固係数K(C)と凝固係数K(O)との比が、鋳片表面割れに及ぼす影響を調査した結果を示す図である。 凝固係数K(C)が凝固係数K(O)よりも大きいときに、凝固係数K(O)と凝固係数K(C)との比が、鋳片表面割れに及ぼす影響を調査した結果を示す図である。 鋳型長辺銅板の内壁面に鋳型表面の保護のための鍍金層を設けた例を示す概略図である。 鋳型銅板表面に発生する亀裂深さに及ぼす鍍金層厚みの影響の調査結果を示す図である。 本発明例、比較例及び従来例で、スラブ鋳片の表面割れ個数密度を比較して示す図である。
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を具体的に説明する。図1は、本実施形態に係る連続鋳造方法で使用する連続鋳造用鋳型の一部を構成する鋳型長辺銅板であって、内壁面側に異種物質充填部が形成された鋳型長辺銅板を内壁面側から見た概略側面図である。また、図2は、図1に示す鋳型長辺銅板のX−X’断面図である。
図1に示す連続鋳造用鋳型は、スラブ鋳片を鋳造するための連続鋳造用鋳型の一例である。スラブ鋳片用の連続鋳造用鋳型は、一対の銅合金製の鋳型長辺銅板と一対の銅合金製の鋳型短辺銅板とを組み合わせて構成され、図1は、そのうちの鋳型長辺銅板1を示している。鋳型短辺銅板も鋳型長辺銅板1と同様に、その内壁面側に異種物質充填部3が形成されるとして、ここでは、鋳型短辺銅板についての説明は省略する。但し、スラブ鋳片においては、スラブ厚みに対してスラブ幅が極めて大きいという形状に起因して、鋳片長辺面側の凝固シェルで応力集中が起こりやすく、鋳片長辺面側で表面割れが発生しやすい。したがって、スラブ鋳片用の連続鋳造用鋳型の鋳型短辺銅板には、異種物質充填部を設置しなくてもよい。
図1に示すように、鋳型長辺銅板1における定常鋳造時のメニスカスの位置よりも長さQ(長さQは、ゼロ以上の任意の値)離れた上方の位置から、メニスカスよりも長さLだけ下方の位置までの鋳型長辺銅板1の内壁面には、直径をdとし、鋳型長辺銅板1の熱伝導率とは異なる熱伝導率の金属または非金属が充填された、複数個の異種物質充填部3が、異種物質充填部同士の間隔をPとして設置されている。ここで、「メニスカス」とは「鋳型内溶鋼湯面」であり、非鋳造中にはその位置は明確でないが、通常の鋼の連続鋳造操業では、メニスカス位置を鋳型銅板の上端から50mmないし200mm程度下方の位置としている。したがって、メニスカス位置が鋳型長辺銅板1の上端から50mm下方の位置であっても、また、上端から200mm下方の位置であっても、長さQ及び長さLが、以下に説明する条件を満足するように、異種物質充填部3を配置すればよい。
即ち、凝固シェルの初期凝固への影響を勘案すれば、異種物質充填部3の設置領域は、少なくとも、メニスカスからメニスカスの下方300mmの位置までの領域とする必要があり、したがって、長さLは、300mm以上とする必要がある。長さLを少なくとも300mm確保することで、鋳片引き抜き速度を、現在のスラブ連続鋳造機の最高速度以上である4.0m/minと仮定しても、凝固シェルは、凝固開始後4.5秒の期間は異種物質充填部3の設置領域に滞在し、異種物質充填部3による熱流束の繰り返し変動、より好ましくは周期的な変動の効果が十分に得られ、表面割れの発生しやすい高速鋳造時や中炭素鋼の鋳造時でも、鋳片表面割れの抑制効果が得られる。尚、長さLに上限はなく、鋳型下端まで異種物質充填部3を設置してもよい。
一方、異種物質充填部3の上端部の位置は、メニスカスと同一位置またはメニスカス位置よりも上方である限りどこの位置でもよく、従って、図1に示す長さQは、ゼロ以上の任意の値としてよい。但し、メニスカスは、鋳造中に異種物質充填部3の設置領域に存在する必要があり、しかも、メニスカスは鋳造中に上下方向に変動するので、異種物質充填部3の上端部が常にメニスカスよりも上方位置となるように、異種物質充填部3の上端部をメニスカスよりも10mm程度上方位置とすることが好ましく、異種物質充填部3の上端部をメニスカスよりも20mm〜50mm程度上方位置とすることがより好ましい。
この異種物質充填部3は、図2に示すように、鋳型長辺銅板1の内壁面側に加工された円形凹溝2の内部に、鋳型長辺銅板1を構成する銅合金の熱伝導率とは異なる熱伝導率の金属または非金属が充填されて形成されたものである。尚、この異種物質充填部は互いに独立するように凹溝を加工することがより好ましい。
円形凹溝2の内部に充填される金属または非金属の熱伝導率は、一般的には、鋳型長辺銅板1を構成する銅合金の熱伝導率よりも低いが、例えば、鋳型長辺銅板1を構成する銅合金として熱伝導率の低い銅合金を使用した場合には、充填される金属または非金属の熱伝導率の方が高くなることもある。充填する物質が金属の場合には、鍍金処理または溶射処理によって充填し、充填する物質が非金属の場合には、円形凹溝2の形状に合わせて加工した非金属を円形凹溝2に嵌め込むなどして充填する。ここで、図2における符号4は、鋳型冷却水の流路を構成する、鋳型長辺銅板1の背面側に設置されたスリットであり、符号5は、鋳型長辺銅板1の背面と密着するバックプレートであり、スリット4を通る鋳型冷却水によって、鋳型長辺銅板1は冷却される。
本実施形態に係る連続鋳造方法で使用する連続鋳造用鋳型において、鋳型銅板として使用する銅合金としては、一般的に連続鋳造用鋳型銅板として使用される、クロム(Cr)やジルコニウム(Zr)などを微量添加した銅合金を用いればよい。近年では、鋳型内の凝固の均一化または溶鋼中介在物の凝固シェルへの捕捉を防止するために、鋳型内の溶鋼を攪拌する電磁攪拌装置が設置されていることが一般的であり、電磁コイルから溶鋼への磁場強度の減衰を抑制するために、導電率を低減した銅合金が用いられている。この場合、導電率の低下に応じて熱伝導率も低減し、純銅(熱伝導率;398W/(m×K))の1/2前後の熱伝導率の銅合金製鋳型銅板も使用されることがある。尚、鋳型銅板として使用される銅合金は、一般的に、純銅よりも熱伝導率が低い。
本実施形態に係る連続鋳造方法で使用する連続鋳造用鋳型において、円形凹溝に充填する金属(以下、「充填金属」とも記載する)としては、銅合金よりも熱伝導率が低く、且つ、鍍金処理や溶射処理によって容易に充填することができるニッケル(Ni、熱伝導率;90.5W/(m×K))、ニッケル系合金、クロム(Cr、熱伝導率;67W/(m×K))、コバルト(Co、熱伝導率;70W/(m×K))などが好適である。また、銅合金よりも熱伝導率が高い純銅を、円形凹溝に充填使用する金属として使用することもできる。純銅を充填した場合には、異種物質充填部3を設置した部位の方が鋳型銅板の部位よりも熱抵抗が小さくなる。
また、円形凹溝に充填使用する非金属(以下、「充填非金属」とも記す)としては、BN、AlN、ZrOなどの熱伝導率が小さいセラミックスが好適である。
図3は、鋳型銅板よりも熱伝導率の低い物質が充填されて形成された異種物質充填部3を有する鋳型長辺銅板1の三箇所の位置における熱抵抗を、異種物質充填部3の位置に対応して概念的に示す図である。図3に示すように、異種物質充填部3の設置位置では熱抵抗が相対的に高くなる。
複数の異種物質充填部3を、メニスカス位置を含んでメニスカス近傍の連続鋳造用鋳型の幅方向及び鋳造方向に設置することにより、図3に示すように、メニスカス近傍の鋳型幅方向及び鋳造方向における連続鋳造用鋳型の熱抵抗が周期的に増減する分布が形成される。これによって、メニスカス近傍、つまり、凝固初期での凝固シェルから連続鋳造用鋳型への熱流束が周期的に増減する分布が形成される。
尚、鋳型銅板よりも熱伝導率の高い物質を充填して異種物質充填部3を形成した場合には、図3とは異なり、異種物質充填部3の設置位置で熱抵抗が相対的に低くなるが、この場合も同様に、メニスカス近傍の鋳型幅方向及び鋳造方向における連続鋳造用鋳型の熱抵抗が周期的に増減する分布が形成される。
この熱流束の周期的な増減により、δ鉄からγ鉄への変態(以下「δ/γ変態」と記す)によって発生する応力や熱応力が低減し、これらの応力によって生じる凝固シェルの変形が小さくなる。凝固シェルの変形が小さくなることで、凝固シェルの変形に起因する不均一な熱流束分布が均一化され、且つ、発生する応力が分散されて個々の歪量が小さくなる。その結果、凝固シェル表面における表面割れの発生が抑制される。
本実施形態においては、更に、凝固初期の抜熱量を適正化して凝固シェルに作用する応力の絶対値を制御するために、異種物質充填部3を配置した領域であって、メニスカスの下方50mm位置における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の平均値が、鋳片引き抜き速度に応じて定まる下記の(1)式を満足する範囲であり、且つ、メニスカスの下方50mm位置における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の標準偏差が、下記の(2)式を満足する範囲とする。
0.50×Vc+0.55≦Q≦1.20×Vc+0.75・・・(1)
σ≦0.20・・・(2)
但し、(1)式において、Vcは鋳片引き抜き速度(m/min)、Qは鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の平均値(MW/m)であり、また、(2)式において、σは鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の標準偏差(MW/m)である。
本実施形態において、メニスカスの下方50mm位置における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束を対象とする理由は、連続鋳造用鋳型における熱流束はメニスカスの下方50mm位置近傍で最大となり、凝固シェルに作用する応力は、この部位の熱流束の影響を受けることに基づく。
鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束を測定する方法として、鋳型銅板に熱電対を設置し、熱電対による鋳型銅板の温度測定値と鋳型冷却水の温度測定値との温度差から求める方法がある。但し、求められた熱流束は鋳型の幅方向位置で変化することが知られている。したがって、熱流束の鋳型幅方向の平均値Qを求めるためには、鋳型を鋳型幅方向で複数に分割し、分割したそれぞれの部位の鋳型銅板に熱電対を設置し、それぞれの熱電対による鋳型銅板温度の測定値に基づいて、分割したそれぞれの部位の熱流束を求める必要がある。得られた複数の熱流束データの平均値を採ることで、熱流束の鋳型幅方向の平均値Qが求められる。また、得られた複数の熱流束データから標準偏差σが求められる。
この場合、鋳型幅方向の分割数が多いほど、熱流束の幅方向平均値Qの精度が高くなるので、本実施形態において、熱流束の鋳型幅方向の平均値Qを求めるにあたり、100mm以下の間隔で鋳型を幅方向に分割することが好ましい。したがって、幅が2000mm程度の鋳型長辺銅板では、鋳型幅方向で20個以上に分割することが好ましい。尚、分割したそれぞれの部位における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束は、「局所熱流束」とも呼ばれている。局所熱流束は、下記の(5)式によって求めることができる。

但し、(5)式において、qは局所熱流束(W/m)、hは鋳型銅板と鋳型冷却水と間の熱伝達係数(W/(m×K))、Zは熱電対先端とスリットとの間の距離(m)、λは鋳型銅板の熱伝導率(W/(m×K))、Tは鋳型銅板に埋め込んだ熱電対で測定した鋳型銅板温度(K)、Tは鋳型冷却水の温度(K)である。
ここで、(5)式の熱伝達係数hは、円管内の強制対流伝熱の場合には下記の(6)式で表される。
=0.023×(λ/d)×(ρ×u×d/η0.8×(c×η/λ0.33・・・(6)
但し、(6)式において、λは鋳型冷却水の熱伝導率(W/(m×K))、dはスリット断面積の相当直径(m)、ρは鋳型冷却水の密度(kg/m)、uはスリットを通る鋳型冷却水の線流速(m/s)、ηは鋳型冷却水の粘度(Pa・s)、cは鋳型冷却水の比熱(J/(kg×K))である。
測定した局所熱流束qから熱流束の鋳型幅方向の平均値Qを求めるには、少なくとも、5秒間隔で60セットの局所熱流束データを測定する必要がある。
本発明者らは、このようにして求められる平均値Q及び標準偏差σの鋳片表面割れに及ぼす影響を調査した。具体的には、異種物質充填部3を形成する金属または非金属、及び、異種物質充填部3の直径d、間隔Pまたは充填厚みHを種々変更して、図1に示す連続鋳造用鋳型を製作し、この連続鋳造用鋳型を用いて中炭素鋼の連続鋳造を行い、鋳造後のスラブ鋳片の表面割れ発生状況を調査した。鋳片の表面割れの調査は、面積21m以上の鋳片表面を染色浸透探傷検査によって検査し、検出された長さ1.0mm以上の縦割れの個数を測定し、この個数を鋳片の測定面積で除算したものを鋳片表面割れ個数密度と定義し、この鋳片表面割れ個数密度で評価した。
図4は、鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の標準偏差σを0.20以下とする条件で、鋳片引き抜き速度別に、メニスカスの下方50mm位置における熱流束の鋳型幅方向の平均値Qの鋳片表面割れに及ぼす影響を調査した結果を示す図である。図4では、鋳片表面割れ個数密度が0.3個/m以下のデータと、0.3個/m超えのデータとを区別して表示している。尚、標準偏差σが0.20以下のデータのみを選定した理由は、標準偏差σが0.20を超えると、後述するように、鋳片表面割れ個数密度が0.3個/mよりも高くなり、鋳片の表面割れに及ぼす平均値Qの影響が不明確になることによる。
鋳片の表面割れ個数密度が0.3個/m以下のデータと0.3個/m超えのデータとの境界を回帰式によって求めると、図4に示すように、下限値として「Q=0.50V+0.55」が求められ、一方、上限値として「Q=1.20V+0.75」が求められた。即ち、メニスカスの下方50mm位置における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の平均値Qが、鋳片引き抜き速度に応じて定まる上記の(1)式を満足する範囲の場合に、鋳片の表面割れがより一層抑制されることが確認できた。
これは、平均値Qが「0.50V+0.55」未満の場合は、凝固シェルが薄すぎて、小さな応力でも割れが生成すると考えられる。一方、平均値Qが「1.20V+0.75」を超える場合は、冷却速度が速すぎて、発生する応力が大きくなるためと考えられる。
また、鋳片引き抜き速度と、メニスカスの下方50mm位置における熱流束の鋳型幅方向の平均値Qとの関係が(1)式を満足する条件で、鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の標準偏差σの鋳片表面割れに及ぼす影響を調査した。調査結果を図5に示す。尚、鋳片引き抜き速度と平均値Qとの関係が(1)式を満足する条件のみを選定した理由は、前述したように、鋳片引き抜き速度と平均値Qとの関係が(1)式を満足しない場合は、鋳片表面割れ個数密度が0.3個/mよりも高くなり、鋳片の表面割れに及ぼす標準偏差σの影響が不明確になることによる。
図5に示すように、メニスカスの下方50mm位置における熱流束の鋳型幅方向の標準偏差σが0.20以下の場合に、鋳片の表面割れ個数密度が0.3個/m以下になることが確認できた。これは、標準偏差σが0.20より大きい場合には、鋳型幅方向において局所熱流束qが大きくなる部位が発生し、その部位で鋳片に表面割れが発生すると考えられる。
以上説明したように、本実施形態においては、メニスカスの下方50mm位置における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の平均値Qが、鋳片引き抜き速度Vに応じて定まる上記の(1)式を満足する範囲であり、且つ、メニスカスの下方50mm位置における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の標準偏差σが、上記の(2)式を満足する範囲であることが必要である。
図1及び図2では、異種物質充填部3の鋳型長辺銅板1の内壁面における形状が円形である例を示したが、当該形状は円形に限られない。例えば楕円形のような、所謂「角」を有していない円形に近い形状であれば、どのような形状であってもよい。以下、円形に近いものを「擬似円形」と称する。異種物質充填部3の形状が擬似円形の場合には、異種物質充填部3を形成させるための鋳型長辺銅板1の内壁面に加工される凹溝を「擬似円形凹溝」と称する。擬似円形とは、例えば楕円形や、角部を円や楕円とする長方形などの角部を有していない形状であり、更には、花びら模様のような形状であってもよい。擬似円形の大きさは、擬似円形の面積から求められる円相当径で評価する。この擬似円形の円相当径dは下記の(7)式で算出される。
円相当径d=(4×S/π)1/2・・・(7)
但し、(7)式において、Sは異種物質充填部3の面積(mm)である。
特許文献3及び特許文献4のように、縦溝或いは格子溝を施し、この溝に充填金属または充填非金属を配置した場合には、充填金属または充填非金属と鋳型銅板との境界面及び格子部の直交部において、充填金属または充填非金属と銅との熱歪差による応力が集中し、鋳型銅板表面に割れが発生するという問題が起こる。これに対して、本実施形態に係る連続鋳造用鋳型は、異種物質充填部3の形状を円形または擬似円形にしている。これにより、充填金属または充填非金属と銅との境界面は曲面状となるので、境界面で応力が集中しにくく、鋳型銅板表面に割れが発生しにくいという利点が発現する。尚、鋳型銅板の材質や鋳型銅板内部の水冷構造などにより、鋳型銅板表面の割れ発生を抑止可能な場合は、異種物質充填部の形状は円形または擬円形に限られることはない。
異種物質充填部3の直径d及び円相当径dは、2〜20mmであることが好ましい。異種物質充填部3の直径d及び円相当径dを2mm以上とすることで、異種物質充填部3における熱流束の低下が十分となり、鋳片の表面割れ抑制効果を得ることができる。また、2mm以上とすることで、充填金属を鍍金処理や溶射処理によって円形凹溝2や擬似円形凹溝(図示せず)の内部に充填することが容易となる。一方、異種物質充填部3の直径及び円相当径を20mm以下とすることで、異種物質充填部3における熱流束の低下が抑制され、つまり、異種物質充填部3での凝固遅れが抑制されて、その位置での凝固シェルへの応力集中が防止され、凝固シェルでの表面割れ発生を抑制できる。即ち、直径及び円相当径が20mmを超えると表面割れが増加する傾向があることから、異種物質充填部3の直径及び円相当径は20mm以下にすることが好ましい。
異種物質充填部3の充填厚みHは0.5mm以上とすることが好ましい。充填厚みHを0.5mm以上とすることで、異種物質充填部3における熱流束の低下が十分となり、鋳片の表面割れ抑制効果を得ることができる。
また、異種物質充填部3の充填厚みHは、異種物質充填部3の直径d以下及び円相当径d以下にすることが好ましい。充填厚みHを異種物質充填部3の直径d及び円相当径dと同等、またはそれらよりも小さくするので、鍍金処理や溶射処理による円形凹溝及び擬似円形凹溝への充填金属の充填が容易となり、且つ、充填金属と鋳型銅板との間に隙間や割れが生じることもない。充填金属と鋳型銅板との間に隙間や割れが生じた場合には、充填金属の亀裂や剥離が生じ、鋳型寿命の低下、鋳片の割れ、更には拘束性ブレークアウトの原因となる。
異種物質充填部同士の間隔Pは、異種物質充填部3の直径d及び円相当径dの0.25倍以上であることが好ましい。ここで、異種物質充填部同士の間隔Pとは、図1に示すように、隣り合う異種物質充填部3の端部間の最短距離である。異種物質充填部同士の間隔Pを「0.25×d」以上とすることで、間隔が十分に大きく、異種物質充填部3における熱流束と銅合金部(異種物質充填部3が形成されていない部位)の熱流束との差が大きくなり、鋳片の表面割れ抑制効果を得ることができる。異種物質充填部同士の間隔Pの上限値は特に定めなくてよいが、間隔Pが大きくなると、異種物質充填部3の面積率が低下するので「2.0×d」以下にすることが好ましい。
異種物質充填部3の配列は、図1に示すような千鳥配列が好ましいが、千鳥配列に限らず、異種物質充填部同士の上記間隔Pを満たす配列であれば、どのような配列でもよい。
異種物質充填部3が配置された領域内の鋳型銅板内壁面の面積A(mm)に対する、全ての異種物質充填部3の面積の総和B(mm)の比である面積率S(S=(B/A)×100)は、10%以上であることが好ましい。面積率Sを10%以上確保することで、熱流束の小さい異種物質充填部3の占める面積が確保され、異種物質充填部3と銅合金部とで熱流束差が得られ、鋳片の表面割れ抑制効果を安定して得ることができる。ところで、鋼の連続鋳造における凝固シェルの凝固厚みは、下記の(8)式によって算出される。
=K×t0.5・・・(8)
但し、(8)式において、Dは凝固シェルの凝固厚み(mm)、Kは凝固定数(mm/min0.5)、tは凝固時間(min)である。
通常、凝固係数Kは、鋳型内と二次冷却帯とで異なり、鋳型内では鋳型条件に応じて20〜25mm/min0.5程度の或る一定値、二次冷却帯では冷却水量に応じて25〜30mm/min0.5程度の或る一定値である。
しかしながら、本実施形態では、鋳型銅板内壁面に異種物質充填部3を配置しており、異種物質充填部3が配置された領域と、異種物質充填部3が配置されていない領域とで、それぞれの熱流速が異なるので、両者における凝固シェルの抜熱量が異なる。このため、異種物質充填部3が配置された領域を通過するときの凝固シェルの凝固係数Kと、異種物質充填部が配置されていない領域を通過するときの凝固シェルの凝固係数Kとは自ずと異なる。
本発明者らは、異種物質充填部3が配置された領域を通過するときの凝固シェルの凝固係数をK(C)とし、異種物質充填部3が配置されていない領域を通過するときの凝固シェルの凝固係数をK(O)とし、2つの領域における凝固係数Kの違いが、鋳片表面割れに及ぼす影響を調査した。この場合、異種物質充填部3の充填金属または充填非金属の熱伝導率を鋳型銅板の熱伝導率よりも小さくすると、凝固係数K(C)は凝固係数K(O)よりも小さくなり、異種物質充填部3の充填金属または充填非金属の熱伝導率を鋳型銅板の熱伝導率よりも大きくすると、凝固係数K(C)は凝固係数K(O)よりも大きくなる。
ここで、凝固係数K(C)及び凝固係数K(O)は、連続鋳造時に鋳型内に鉄−硫黄合金を添加し、鋳造後の鋳片内の硫黄濃度分布に基づいて、異種物質充填部3が配置された領域での凝固シェル厚みD、及び、異種物質充填部3が配置されていない領域での凝固シェル厚みDを求め、求めた凝固シェル厚みDから下記の(9)式を用いて算出した。
Y=V×(D/K)・・・(9)
但し、(9)式において、Yは凝固シェル厚みを測定した位置のメニスカスからの距離(m)、Vは鋳片引き抜き速度(m/min)、Dは凝固シェル厚み(mm)、Kは凝固係数(mm/min0.5)である。
調査結果を図6及び図7に示す。図6は、凝固係数K(C)が凝固係数K(O)よりも小さい場合であり、図7は、凝固係数K(C)が凝固係数K(O)よりも大きい場合である。図6及び図7に示すように、凝固係数K(C)と凝固係数K(O)とが、下記の(3)式または(4)式を満足するときに、鋳片の表面割れが抑制されることがわかった。
0.6≦K(C)/K(O)≦0.95(但し、K(C)<K(O)の場合)・・・(3)
0.6≦K(O)/K(C)≦0.95(但し、K(C)>K(O)の場合)・・・(4)
両者の比が0.6未満になる場合は、極端に緩冷却または極端に強冷却になる領域が発生し、極端な緩冷却が生ずる部位では、凝固シェル厚みが薄いことに起因するブレークアウトの懸念があり、極端な強冷却が生じる部位では、発生する応力が大きく、鋳片に表面割れが発生する懸念がある。一方、両者の比が0.95よりも大きい場合は、異種物質充填部3を配置した効果が十分に得られず、鋳片の表面割れを抑制できない。
凝固係数K(C)と凝固係数K(O)との比の調整は、異種物質充填部3に充填する金属または非金属の種類、異種物質充填部3の直径d、間隔P、充填厚みHなどを適宜選定し、異種物質充填部3が配置された領域の熱流束と、異種物質充填部3が配置されていない領域の熱流束とを調整することによって、行うことができる。
また、図8に示すように、異種物質充填部3を形成させた鋳型銅板の内壁面に、凝固シェルによる磨耗や熱履歴による鋳型表面の割れを抑制することを目的として、鍍金層6を設けることが好ましい。この鍍金層6は、一般的に用いられるニッケルまたはニッケルを含有する合金、例えば、ニッケル−コバルト合金(Ni−Co合金)やニッケル−クロム合金(Ni−Cr合金)などを鍍金処理することで得られる。
図9に、鋳型銅板内壁面の全面にニッケルを含有する合金の鍍金層6を形成する際に、鍍金層6の厚みhを変更し、鋳型銅板表面に発生する亀裂の深さを調査した結果を示す。図9に示すように、鍍金層6の厚みhが0.1mm以上3.0mm以下の場合に、亀裂の平均深さが小さくなることがわかった。
鍍金層6の厚みhが0.1mm未満の場合は、厚みhが小さすぎるために、鍍金層6が磨耗し、これにより鋳型銅板に亀裂が発生しやすくなると考えられる。一方、鍍金層6の厚みhが3.0mmより大きい場合は、鋳造中に鍍金層6の表面温度が高くなり、これにより鋳型銅板に亀裂が発生しやすくなると考えられる。鍍金層6の厚みhが0.1mm以上3.0mm以下である限り、鍍金層6は鋳型上端から下端まで同一の厚みであっても、上端から下端にかけて厚みが異なっていてもよい。
本実施形態に係る連続鋳造方法は、特に、表面割れ感受性が高い、炭素含有量が0.08〜0.17質量%の中炭素鋼のスラブ鋳片(厚み;200mm以上)を連続鋳造する際に適用することが好ましい。従来、中炭素鋼のスラブ鋳片を連続鋳造する場合は、鋳片の表面割れを防止するために、鋳片引き抜き速度を低速化することが一般的であるが、本発明を適用することで鋳片表面割れが防止できるので、1.5m/min以上の鋳片引き抜き速度であっても、表面割れのない、または表面割れの著しく少ない鋳片を連続鋳造することが実現される。
以上説明したように、本実施形態に係る連続鋳造方法は、複数個の異種物質充填部3を、少なくともメニスカスからメニスカスの下方300mmの位置までの範囲に有する連続鋳造用鋳型を用い、メニスカスの下方50mm位置における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の平均値、及び、メニスカスの下方50mm位置における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の標準偏差を所定の値に制御するので、メニスカス近傍の鋳型幅方向及び鋳造方向における連続鋳造用鋳型の熱抵抗が、その値を所定の範囲内として周期的に増減し、これによって、メニスカス近傍、つまり、凝固初期での凝固シェルから連続鋳造用鋳型への熱流束が周期的に増減する。この熱流束の周期的な増減により、δ/γ変態による応力や熱応力が低減し、これらの応力によって生じる凝固シェルの変形が小さくなり、凝固シェルの変形が小さくなることで、凝固シェルの変形に起因する不均一な熱流束分布が均一化され、且つ、発生する応力が分散されて個々の歪量が小さくなる。その結果、凝固シェル表面における割れの発生が抑制される。
尚、図1では、同一形状の異種物質充填部3を鋳造方向または鋳型幅方向に設置した例を示したが、異種物質充填部3の形状は、同一でなくてもよい。但し、いずれの異種物質充填部3の直径dまたは円相当径dは2〜20mmであることが好ましい。また、異種物質充填部3の充填厚みHも鋳造方向または鋳型幅方向に同一としなくてよく、個々の異種物質充填部3で充填厚みHが異なっていてもよい。但し、いずれの異種物質充填部3の充填厚みHも0.5mm以上であることが好ましい。また更に、図1では、鋳造方向または鋳型幅方向に同一間隔で異種物質充填部3を設置した例を示したが、同一間隔で異種物質充填部3を設置しなくてもよい。但し、この場合も、異種物質充填部同士の間隔Pは異種物質充填部3の直径d及び円相当径dの0.25倍以上であることが好ましい。
また、上記説明はスラブ鋳片の連続鋳造に関して行ったが、本実施形態に係る連続鋳造方法はスラブ鋳片の連続鋳造に限定されるものではなく、ブルーム鋳片やビレット鋳片の連続鋳造においても上記に沿って適用することができる。
中炭素鋼(化学成分、C:0.08〜0.17質量%、Si:0.10〜0.30質量%、Mn:0.50〜1.20質量%、P:0.010〜0.030質量%、S:0.005〜0.015質量%、Al:0.020〜0.040質量%)を、内壁面に種々の条件で異種物質充填部が設置された水冷式銅合金製鋳型を用いて連続鋳造し、鋳造後のスラブ鋳片の表面割れを調査する試験を行った。用いた水冷式銅合金製鋳型は、長辺長さが1.8m、短辺長さが0.22mの内面空間サイズを有する鋳型である。
使用した水冷式銅合金製鋳型の上端から下端までの長さは950mmであり、定常鋳造時のメニスカス(鋳型内溶鋼湯面)の位置を、鋳型上端から100mm下方位置に設定した。鋳型銅板としては、熱伝導率が298.5W/(m×K)である銅合金を用い、鋳型上端から60mm下方の位置から、鋳型上端から500mm下方の位置までの領域に異種物質充填部を配置した。異種物質充填部の充填金属として、純ニッケル(熱伝導率;90.5W/(m×K))及び純銅(熱伝導率;398W/(m×K))を使用した。異種物質充填部の設置後、鋳型銅板内壁面の全面にNi−Co合金を鍍金し、鍍金層を施工した。
連続鋳造終了後、鋳片表面の21m以上の面積を染色浸透探傷検査によって検査し、1.0mm以上の長さの表面割れの個数を測定し、その総和を鋳片測定面積で除算して得られる鋳片表面割れ個数密度を用いて表面割れの発生状況を評価した。
表1に、本発明例1〜7、比較例1〜8及び従来例における、鋳片引き抜き速度、及び、メニスカスの下方50mm位置での鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の平均値Qの実測値、熱流束の鋳型幅方向の標準偏差σの実測値、鍍金層の厚み、凝固係数K(C)、凝固係数K(O)などの鋳型冷却条件を示す。尚、比較例は、異種物質充填部を有する水冷式銅合金製鋳型を使用するものの本発明の範囲を満足しない鋳型冷却条件で鋳造した試験、従来例は、異種物質充填部を有していない水冷式銅合金製鋳型を使用した試験である。
図10に、本発明例1〜7、比較例1〜8及び従来例におけるスラブ鋳片の鋳片表面割れ個数密度を比較して示す。図10からも明らかなように、本発明例1〜7では、鋳片表面割れ個数密度はいずれも0.3個/m以下であり、鋳片の表面割れが抑制されることが確認できた。これに対して、比較例1〜8は、従来例に比べると鋳片の表面割れは減少したが、本発明例1〜7に比較すると鋳片表面割れが多発した。
1 鋳型長辺銅板
2 円形凹溝
3 異種物質充填部
4 スリット
5 バックプレート
6 鍍金層

Claims (6)

  1. 少なくともメニスカスからメニスカスの下方300mmの位置までの領域の銅合金製鋳型銅板の内壁面の全体に、鋳型銅板の熱伝導率とは異なる熱伝導率の金属または非金属が充填された複数個の異種物質充填部を有する水冷式銅合金製鋳型を用い、タンディッシュ内の溶鋼を前記鋳型内に注入して連続鋳造する鋼の連続鋳造方法であって、
    前記異種物質充填部を配置した領域であって、前記メニスカスの下方50mm位置における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の平均値が、鋳片引き抜き速度に応じて定まる下記の(1)式を満足する範囲であり、且つ、前記メニスカスの下方50mm位置における鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の標準偏差が、下記の(2)式を満足する範囲であることを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
    0.50×Vc+0.55≦Q≦1.20×Vc+0.75・・・(1)
    σ≦0.20・・・(2)
    但し、(1)式において、Vcは鋳片引き抜き速度(m/min)、Qは鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の平均値(MW/m)であり、また、(2)式において、σは鋳型銅板と鋳型冷却水との間の熱流束の鋳型幅方向の標準偏差(MW/m)である。
  2. 前記複数個の異種物質充填部は、前記内壁面に周期的に増減する熱抵抗分布または熱流束分布を形成することを特徴とする、請求項1に記載の鋼の連続鋳造方法。
  3. 前記複数個の異種物質充填部は、前記内壁面に設けられた円形凹溝または擬似円形凹溝の内部に前記金属または非金属が充填されて形成されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の鋼の連続鋳造方法。
  4. 前記複数個の異種物質充填部は、互いに独立して配置されることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の鋼の連続鋳造方法。
  5. 前記異種物質充填部が配置された領域を通過するときの凝固シェルの凝固係数と、前記異種物質充填部が配置されていない領域を通過するときの凝固シェルの凝固係数とが、下記の(3)式または(4)式を満足することを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の鋼の連続鋳造方法。
    0.6≦K(C)/K(O)≦0.95(但し、K(C)<K(O)の場合)・・・(3)
    0.6≦K(O)/K(C)≦0.95(但し、K(C)>K(O)の場合)・・・(4)
    但し、(3)式及び(4)式において、K(C)は、異種物質充填部が配置された領域を通過するときの凝固シェルの凝固係数(mm/min0.5)、K(O)は、異種物質充填部が配置されていない領域を通過するときの凝固シェルの凝固係数(mm/min0.5)である。
  6. 前記内壁面には、厚みが0.1mm以上3.0mm以下のニッケルまたはニッケルを含有する合金の鍍金層が形成されており、前記異種物質充填部は前記鍍金層で覆われていることを特徴とする、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の鋼の連続鋳造方法。
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