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JP5207927B2 - 高強度かつ高導電率を備えた銅合金 - Google Patents

高強度かつ高導電率を備えた銅合金 Download PDF

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JP5207927B2 JP2008295350A JP2008295350A JP5207927B2 JP 5207927 B2 JP5207927 B2 JP 5207927B2 JP 2008295350 A JP2008295350 A JP 2008295350A JP 2008295350 A JP2008295350 A JP 2008295350A JP 5207927 B2 JP5207927 B2 JP 5207927B2
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Description

本発明は、コネクタ、リレー、スイッチ、ソケットなどの電気・電子部品用材料として使用される高強度および高導電率を備えた銅合金に関する。
近年のエレクトロニクスの発達により、種々の機械装置の電気配線は複雑化、高集積化が進み、コネクタ等の電気・電子部品は、小型化、軽量化、高信頼性化が進んでいる。このような中、コネクタ用銅合金材料は薄肉化され、また複雑な形状に加工されるため、強度、弾性、導電率、曲げ加工性、プレス成形性が良好であることが求められている。特に、小型化、薄肉化が進むことにより、同一の荷重を受ける材料の断面積が小さくなり、通電量に対する材料の断面積も小さくなるため、高強度および高導電率を兼ね備えることが求められる。また導電率に関しては、これらの薄肉化の進む電子部品の他、自動車用のバスバー等の大電流を通電する部品においても重要な特性になる。
導電性の銅合金のうち、Cu−Ni−Sn−P系合金は、適切な条件で時効処理を施すことにより、Ni−P系化合物(りん化合物)が析出し、強度、導電率を同時に向上させることが可能である。このため、この合金系は耐力、導電率、曲げ加工性のバランスに優れ、更に耐応力緩和特性に優れるという特徴を有しており、自動車用の小型端子やバスバーをはじめとする各種用途に用いられている。
このようなCu−Ni−Sn−P系合金として、例えば、下記特許文献1,2には、強度、導電率等の特性をできるだけ同時に高めるために、冷間圧延−熱処理の繰返し、場合によっては溶体化処理とそれに続く高い加工率での冷間圧延と熱処理によりりん化合物からなる析出物を均一かつ微細に析出させた銅合金が示されている。
また、下記特許文献3には、析出物サイズや析出物間距離、析出物の個数を厳密に制御することにより、高強度を達成したCu−Ni−Sn−P系銅合金が示されている。また、下記特許文献4には、析出物サイズに加えて、析出物の形状を制御することにより、特性を向上させたCu−Ni−Sn−P系銅合金が示されている。
さらに、下記特許文献5,6,7には、副成分として、りん化合物を生成しやすいFe,Cr,Co,Mn,Mgなどを添加することにより、強度その他の特性を向上させたCu−Ni−Sn−P系銅合金が示されている。
特開2001−262255号公報 特開2001−262297号公報 特開2006−291356号公報 特開2006−152413号公報 特開2000−119779号公報 特開2007−31795号公報 特開平4−311544号公報
しかしながら、昨今では通電部品の薄肉化、小型化の要求が一層厳しいものとなり、更なる高強度化が求められている。Ni−P系化合物の析出物を積極的に利用した上記従来の技術により、強度と導電率について改善が図られてきたが、析出物のサイズは数nm〜数十nm程度まで微細化され、析出物の数密度は500〜5000個/μm2程度にまで達しており、これ以上の改善を図ることが困難な状況にある。また、前記特許文献4に記載の銅合金では、りん化合物の析出物のサイズ、数密度のみならず、その形状を制御することが試みられているが、特性の改善が十分とは言えない。
本発明はかかる問題に鑑み、従来材よりも高強度かつ高導電率を兼備した銅合金を提供することを目的とする。
本発明者は、りん化合物からなる析出物(以下、「析出物」といえば「りん化合物の析出物」を意味する。)のサイズや数密度のみならず、その形状をより球形に近い形に制御することにより、析出物の粒子間距離が小さくなり、これによって転位の運動を妨げる効果が大きくなり、導電性を損なうことなく、材料強度を向上させることができるとの知見を得て、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明の銅合金は、化学組成が質量%(以下、単に「%」と記載する。)で、
Ni:0.01〜3.0%、
P :0.01〜0.3%、
Sn:0.01〜3.0%、
Co,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgのうち1種または2種以上:合計で0.01%〜1.5%
を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、りん化合物からなる析出物が分散した組織を有し、前記析出物はその長径をa、短径をbとするときアスペクト比a/bの平均が3.0以下で、かつ短径の平均が15nm以下であり、さらに短径が15nm以下の析出物の数密度が4000個/μm2以上とされる。さらにまた、平均結晶粒径が30μm 以下とされる。なお、本発明の成分系では、従来のCu−Ni−Sn−P系銅合金と同様、析出物はほとんど全部がりん化合物である。
また、上記基本成分に、A群(Zn:1.0%以下、Si:0.1%以下)から1種または2種以上の元素を添加し化学組成とすることができる。さらに、これらの化学組成に対して、不純物元素であるHf,Th,Li,Na,K,Sr,Pd,W,S,C,Nb,Al,V,Y,Mo,Pb,In,Ga,Ge,As,Sb,Bi,Te,B,ミッシュメタルは、各元素の合計量で0.1%以下に制限することが好ましい。
本発明によれば、耐力500Mpa超を達成した上で良好な導電率、すなわち耐力をP(MPa)で表したとき、(105−0.1P)%IACS以上の導電率を備えた銅合金材料、例えば、耐力が500Mpa超のクラスの銅合金で導電率が55%IACS以上、耐力が550MPa以上のクラスの銅合金で導電率が50%IACS以上、耐力が600MPa以上のクラスの銅合金で導電率が45%IACS以上という高強度および高導電率を同時に具備する銅合金材料を提供することができる。このため、本発明に係る銅合金は、小型化、薄肉化が進む電気・電子部品用材料や、強度と導電率が要求されるバスバー材料などの素材として好適に利用することができる。
本発明の実施形態に係る銅合金は、マトリックス中にりん化合物からなる析出物が微細に分散したものであり、特に析出物の形状およびサイズ、15nm以下の微細な析出物の数密度に特徴があるので、先ず、これらの点について詳細に説明する。
一般的に析出強化型の銅合金においては、析出物が転位の運動を妨げることにより材料を強化し、また析出物の粒子間距離が小さいほどその効果が大きいことが知られている。このため、従来、微細な析出物の数密度を増加させることにより析出物の粒子間距離を小さくすることが図られてきたが、既述のとおり、更なる析出物の微細化および数密度の増加は困難な状況にある。そこで、発明者らは、析出物のサイズおよび数密度が同程度の場合、析出物の形状が球状に近いほど析出物の粒子間距離が小さくなることに着目し、析出物の微細化と微細析出物の数密度の増加に加えて、微細析出物の形状を制御することが重要であるとの結論に達し、鋭意研究した結果、強度向上に有効な微細析出物の形状とサイズ、分布を見出した。
上記のとおり、析出物間距離は材料強度に及ぼす因子として重要であるが、析出物の形状が球状ではないとき、析出物間距離を評価することが困難となる。このため、本発明では、制御対象とするりん化合物の析出物の形状を、析出物の長径をa、短径をbとしたときにa/bで表されるアスペクト比の平均によって規定することとし、また析出物サイズを前記短径の平均により規定することとした。また、微細析出物の分布を短径が15nm以下の微細析出物の数密度により規定することとした。しかして、本発明は、析出物をアスペクト比a/bの平均を3.0以下とし、かつ短径の平均を15nm以下とし、さらに短径が15nm以下の微細析出物の数密度を4000個/μm2以上とするものであり、球状ないしこれに近い形態の微細析出物を析出物の主体とするものである。
析出物のアスペクト比の平均が3.0よりも大きいと、析出物は板状となり、単位析出量あたりの析出強化量が小さく、十分な強度向上効果が期待できない。このため、析出物の形状は、アスペクト比a/bの平均で3.0以下、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下とする。また析出物は微細な方が強度向上効果が大きいので、析出物の短径の平均で15nm以下とする。さらに、微細析出物の分布として、15nm以下の析出物の数密度を4000個/μm2以上、好ましくは6000個/μm2以上とする。これらの条件により、従来の銅合金に比して導電性を損なうことなく、材料強度を向上させることができる。
さらに、実施形態に係る銅合金においては、その結晶粒径は平均で30μm 以下とされる。平均結晶粒径が小さいほど、強度−成形性バランスが向上するので、平均結晶粒径を30μm以下とすることが好ましく、20μm 以下とすることがより好ましい。なお、後述するように、本発明に係る銅合金では、溶体化処理の後に再結晶を含む熱処理を行わないため、溶体化処理によって結晶粒径が決定される。
次に、実施形態に係る銅合金の化学組成について説明する。
Ni:0.010〜3.0%
Niは、Pと共にNi−P化合物を生成して、強度や耐応力緩和特性を向上させるのに必要な元素である。0.010%未満では、最適な条件の下で製造しても、析出するりん化合物量やNiの固溶量の絶対量が不足する。このため、Ni量の下限を0.010%、好ましくは0.03%、より好ましくは0.1%とする。一方、3.0%を超えて過剰に含有させると、粗大な酸化物、晶出物、析出物などが生成し、強度、耐応力緩和特性、曲げ加工性が低下する。このため、Ni量の上限を3.0%、好ましくは2.0%とする。
P:0.010〜0.3%
Pは、NiやCo,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgと共にりん化合物を析出させ、強度や耐応力緩和特性を向上させるのに必要な元素である。0.010%未満ではりん化合物の析出量が不足するため、P量の上限を0.010%、好ましくは0.05%とする。一方、0.3%を超えて過剰に含有させると、りん化合物析出粒子が粗大化し、強度や耐応力緩和特性だけでなく、熱間圧延時に割れが生じ易くなるなど、熱間加工性も低下する。このため、P量の上限を0.3%、好ましくは0.2%、より好ましくは0.15%とする。
Sn:0.010〜3.0%
Snは、銅合金中に固溶して強度を向上させる。Sn含有量が少ないと、焼鈍後の最終冷延の圧下率を増加するなどして、高強度化を行う必要がある。この場合には、導電率や耐応力緩和特性の若干の低下を伴う。Sn含有量が0.010%未満では、Snが少なすぎて、焼鈍後の最終冷延の圧下率を増加しても強度が低すぎ、これら特性バランスが所望のレベルに達しない。一方、過剰に添加すると導電率が低下し、また熱間加工性が低下する。このため、Snの含有量の下限を0.010%、好ましくは0.1%とし、上限を3.0%、好ましくは2.0%とする。
Co,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgのうち1種または2種以上:合計で0.010%〜1.5%
これらの元素は、Pとの間にM−P化合物(「M」はCo,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgの1種または2種以上をまとめて示す。)またはNiを含めたNi−M−P化合物を生成し、強度や耐応力緩和特性を向上させるのに必要な元素である。またM−P、Ni−M−P化合物はNi−P化合物と比較して固溶温度が高く、溶体化温度を高温にしても安定に存在することが可能である。このため、結晶粒径を粗大化させずに、溶体化焼鈍温度を高くすることができる。これまで、溶体化温度を高くすると結晶粒径が大きくなるという弊害があるため、溶体化温度を一定以上にすることはできなかった。溶体化処理温度が高いほど水冷後の凍結空孔濃度が高くなり、析出物の核生成サイトが増えるため、球状の析出物の数密度を増やすことができる。これらの元素は、添加量が少ないと析出するりん化合物量が少なくなり、また高温で溶体化したときに溶解するので、析出物の形状への寄与が小さくなる。このため、これらの元素は合計で0.010%以上、好ましくは0.05%以上含有させることが好ましい。他方、1.5%を超えて過剰に含有させると、粗大な酸化物、晶出物、析出物などが生成して、強度、耐応力緩和特性、曲げ加工性が低下し、かつ固溶により導電率が低下するようになる。このため、これらの元素は合計で1.5%以下、好ましくは0.8%以下に止めるのがよい。
上記基本成分に対して銅合金の機械的性質をより向上させるために、上記基本成分に、A群(Zn:1.0%以下、Si:0.1%以下)から1種または2種以上の元素を添加して下記(1) の化学組成とすることができる。さらに、不純物元素であるHf,Th,Li,Na,K,Sr,Pd,W,S,C,Nb,Al,V,Y,Mo,Pb,In,Ga,Ge,As,Sb,Bi,Te,B,ミッシュメタルは、各元素の合計量を0.1%以下に制限することが好ましい。なお、本発明に係る銅合金に適用可能な他の化学組成として、上記基本成分あるいは下記(1) の成分に、B群(Ca,Ag,Cd,Be,Au,Ptのうち1種または2種以上:合計で1.0%以下)から1種または2種以上の元素を添加した下記(2) の組成を挙げることができる。
(1) 基本成分+A群から1種または2種以上
(2) 基本成分又は上記(1) の成分+B群から1種または2種以上
Zn:1.0%以下、Si:0.1%以下
Znは、錫めっきの剥離を防止する。しかし、過剰に添加すると導電率が低下し、また応力腐食割れの感受性の増大を招いてしまう。Siには脱酸剤としての効果がある。しかし、多量に加えると、導電率が低下してしまう。このため、Znの含有量は1%以下に止め、Siの含有量は0.1%以下に止める。
B群の1種または2種以上の元素:合計で1.0%以下
B群の各元素は、結晶粒の粗大化を防止する作用がある。しかし、これらの元素を多量に加えると、導電率が低下してしまう。このため、これらの元素は合計で1.0%以下とする。
Hf,Th,Li,Na,K,Sr,Pd,W,S,C,Nb,Al,V,Y,Mo,Pb,In,Ga,Ge,As,Sb,Bi,Te,B,ミッシュメタルの各元素:合計で0.1以下
これらの元素は不純物元素であり、少ない程好ましいが、実施形態の成分系では、これらの元素が合計で0.1%以下に止まる限り、機械的性質にさほど影響を与えない。このため、これらの元素は合計量で0.1%以下まで許容される。なお、原料に含まれるこれらの元素の量を管理することにより、常法の製造方法の下で、これらの不純物元素の合計量を0.1%以下に制御することができる。通常の銅合金の原料を使用する場合にはこれらの元素が含まれることは少ないが、原料の一部にこれらの元素を多く含むようなもの、例えばリサイクル品が用いられる場合には取り扱いに注意が必要であり、合計量が0.1%以下となるように成分調整することが肝要である。
次に、実施形態に係る銅合金板の製造方法について以下に説明する。
上記所定形状の微細析出物を分散析出するには、鋼成分と溶体化焼鈍温度および溶体化焼鈍後の冷却速度を制御することが特に重要である。発明者らの研究により、Co、Cr、Ti、Mn、Zr、Fe、Mgを添加し、高温で溶体化処理し、すばやく冷却を行った後に時効処理を施すことにより、上記りん化合物の微細析出組織が形成されることが明らかとなった。従来のCu−Ni−P−Sn合金の組成では、結晶粒径が粗大となり、強度や曲げ加工性が低下してしまうため、溶体化焼鈍温度を一定温度以上にすることが出来なかった。しかし、本発明ではCu−Ni−P−Sn合金にCo、Cr、Ti、Mn、Zr、Fe、Mgを必須成分として添加することで、結晶粒径を粗大化させずに、溶体化焼鈍温度を高くすることが可能となり、その結果、従来以上に高強度、高電導を実現することができた。
実施形態に係る銅合金板は、成分組成を調整した銅合金を溶解、鋳造し、その鋳塊を均質化処理(均熱処理)した後、熱間圧延および冷間圧延を行い、さらに溶体化焼鈍、時効処理、最終仕上げ冷間圧延が施され、必要により低温焼鈍が施されて製造される。特に、溶体化焼鈍条件を適切に制御することが重要である。
前記溶解、鋳造、その後の均熱処理、熱間圧延は通常の方法によって行うことができる。熱間圧延については、その入り温度は600℃〜1000℃程度、終了温度は600℃〜850℃程度とされる。熱間圧延後は水冷、または放冷すればよい。熱間圧延に続いて、80%以上の圧下率にて冷間圧延を施す。圧下率を80%以上とするのは、再結晶の駆動率を大きくし、溶体化焼鈍後の平均結晶粒径を小さくするためである。
前記冷間圧延に続いて行う溶体化焼鈍は、750℃〜900℃にて20〜40秒間保持し、その後、室温まで100℃/sec 以上の冷却速度にて冷却する。
ここで、溶体化焼鈍の温度を750℃以上の高温としたのは、冷却後の凍結空孔濃度を大きくし、析出物の核生成サイトを増加させ、球状の析出物を微細に生成させるためである。750℃よりも溶体化焼鈍温度が低いと、冷却後の凍結空孔濃度が少なくなり、析出物の核生成サイトが少なくなるため、所望の析出物の形状が得られないようになる。また溶体化温度が低いと時効前に固溶原子量を確保できないため、時効で析出する短径15nm以下の析出物の数密度が減少する。一方、900℃超の溶体化焼鈍温度では、結晶粒径の粗大化速度が速く、平均結晶粒径が30μm超となり、結晶粒が粗大化してしまう。このため、溶体化焼鈍温度の下限を750℃、好ましくは800℃とし、その上限を900℃、好ましくは850℃とするのがよい。また焼鈍後の冷却は、冷却速度が遅いと冷却中に空孔が消滅し、冷却後の凍結空孔濃度が減少する。このため、冷却速度は100℃/sec 以上とする。
上記のようにして高温で溶体化焼鈍された材料は、凍結空孔濃度が高く、析出物の核生成サイトが多い。本発明の銅合金は、このような状態で時効処理を施すことによって得られる。すなわち、溶体化処理後に圧延を施さずに時効処理に供する。このとき、前述のように球状に近い析出物が微細に高密度に分散し、強度−導電率の向上に極めて有利な金属組織が得られる。
前記時効処理は、300℃〜650℃の温度にて2〜10hr程度保持する時効を行い、時効後は水冷または放冷により冷却する。650℃超の温度で時効を行うと、析出物サイズが大きくなり、析出物の短径が15nm超となり易い。また300℃未満の温度では、そもそも時効が進まず、4000個/μm2以上の析出物の数密度を確保することが困難になる。また時効処理に要する時間は、通常、2〜10hr程度でよい。時効時間が長すぎると析出物の短径が15nm超になり易い。一方時効時間が短すぎると、時効が進まず、4000個/μm2以上の析出物の数密度を確保できないようになる。この様な時効処理を行うことで、耐力が500Mpa超のクラスで導電率が55%IACS以上、また耐力が550MPa以上のクラスで導電率が50%IACS以上、また耐力が600MPa以上のクラスで導電率が45%IACS以上という、極めて優れた高強度、高導電率を兼備する銅合金が得られる。
時効処理後に行う最終仕上げ圧延により、強度と曲げ加工性などが調整されるが、圧下率は50%程度以下でよい。また最終仕上げ圧延後、応力緩和特性、曲げ性とのバランスを向上させるために、必要に応じて低温焼鈍を行うことができる。低温焼鈍は、通常、350℃以下の温度で20sec 〜2hr程度保持することにより実施される。
ところで、特許文献3に記載された銅合金は、析出物の数密度を10個/2500nm2 以上とし、また好ましくは析出物サイズを長径20nm以下とするように制御しているが、溶体化焼鈍を本発明よりも低い750℃で行っており、また連続焼鈍炉を用いているため、加熱保持後の冷却速度がせいぜい数十℃/sec 程度であり、本発明における溶体化焼鈍後の冷却速度と比較して冷却速度も遅い。これらの理由から本発明における析出物の析出状態は実現されていない。従来、溶体化焼鈍は固溶量を確保することが目的であり、連続焼鈍炉レベルの冷却速度で十分であったが、本発明のように凍結空孔濃度を高くし、所望の析出状態とするためには水冷レベルの冷却速度が必要となる。
また、特許文献4に記載された銅合金は、析出物のアスペクト比を制御しているが、熱間圧延温度が600℃〜850℃の時は溶体化焼鈍を行っていない。このためアスペクト比a/bが3.0以上の析出物が多数生成し、本発明における析出物の析出状態は実現されていない。
また、特許文献6に記載された銅合金は、Co、Fe、Mnなどを添加しているが、溶体化焼鈍温度が700℃と低温で行っているため、やはり本発明における析出物の析出形態は実現されていない。同様に、特許文献5の銅合金は、Co,Ti,Mg,Zr,Mnなどを添加しており、また特許文献7の銅合金でもFe,Cr,Mn,Mg,Coなどを添加しているが、いずれも溶体化焼鈍を行っていないため、本発明における析出物の析出形態は実現されていない。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により限定的に解釈されるものではない。
化学組成、組織中の析出物の形状、サイズ、所定サイズの数密度が異なるように種々のCu−Ni−Sn−P系合金からなる銅合金薄板を製造し、強度、導電率の特性を評価した。具体的な製造工程、評価方法は以下のとおりである。
銅合金をクリプトル炉において大気中にて木炭被覆下で溶解し、鋳造して表1に示す化学組成を有する150mm厚の鋳塊を得た。続いて、965℃で3時間の均熱化処理を行った後、熱間圧延して15mm厚とし、750℃以上の温度で熱間圧延を終了し、水冷して焼入れた。その後両面を1mmずつ面削して13mm厚とした後、50%以上の圧下率にて冷間圧延を行い、板厚を0.8mmとした。なお、表1において、「−」は未添加を意味する。
この銅合金板を硝石炉で表2に示す温度にて30秒間保持する溶体化焼鈍を行った後、水冷あるいは空冷により同表に示す種々の冷却速度にて室温まで冷却し、同表に示す条件で時効処理を行った。時効処理後、水冷した後、圧下率50%で最終仕上げ圧延を行い、銅合金薄板を製造した。
得られた各試料の銅合金薄板から組織観察片を採取し、以下の要領で析出物のアスペクト比の平均、短径の平均、および短径が15nm以下の析出物の数密度、並びに平均結晶粒径を求めた。平均結晶粒径は、JIS H0501に規定する求積法により測定した。
析出物のサイズ、アスペクト比は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて100000倍の倍率で観察を行い、300nm×300nmの範囲で観察される短径が1nm〜15nmのサイズの析出物について、画像解析ソフト(商品名Image Pro Plus)により測定した。ここで析出物の長径a、および短径bは画像解析ソフトの最大直径および最小直径を用い、析出物のアスペクト比はa/bで定義した。析出物のアスペクト比、短径の平均は、それぞれ個々の析出物のアスペクト比、短径の算術平均を取った。
析出物の数密度は、TEMを用いて100000倍の倍率で観察を行い、300nm×300nmの範囲で観察される析出物の個数を測定し、計算により1μm2あたりの析出物の個数を計算した。ここで析出物の短径が1nm〜15nmのサイズのものだけを測定した。このとき100個未満は四捨五入した。また数密度には膜厚の影響が大きいため、TEM観察時の膜厚は100nmで一定とし、膜厚誤差は±20nmを許容範囲とした。これらの測定結果を表2に併せて示す。なお、表2中の析出物の欄において「短径」、「アスペクト比」はそれぞれ短径、アスペクト比の平均値を意味する。
また、前記各銅合金薄板の機械的特性を以下の要領で測定した。各試料の銅合金薄板から試験片長手方向が板材の圧延方向に対し直角方向となるように、機械加工にてJIS5号引張試験片を作製した。そして、5882型インストロン社製万能試験機により、室温、試験速度10.0mm/min、GL=50mmの条件で、機械的な特性を測定した。測定結果を表2に併せて示す。なお、表2中には各試料の耐力、引張強度のほか、硬さも参考として示した。
また、前記各銅合金薄板の導電率を以下の要領で測定した。各試料の銅合金薄板からミーリングにより、幅10mm×長さ300mm の短冊状の試験片を加工し、JIS−H0505に規定されている非鉄金属材料導電率測定法に準拠し、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により電気抵抗を測定して、平均断面積法により導電率を算出した。この測定結果も表2に併せて示す。
表2の試料No. 1〜15(実施例)の銅合金板は、表1の本発明組成を満足し、溶体化温度が750℃〜900℃の範囲で、また溶体化後の冷却速度が100℃/sec 以上の好ましい条件で製造されている。このため、これらの発明例に係る銅合金板は、析出物の形態としては、短径の平均が15nm以下かつアスペクト比が3.0以下となっており、また短径15nm以下の析出物の数密度が4000個/μm2以上となっている。そして、機械的性質としては、耐力500MPa超の高強度を達成しつつ、優れた導電率を兼備しており、従来のCu−Ni−Sn−P系合金と比較して優れた強度−導電率バランスを達成している。
もっとも、発明例の中では、試料No. 2,3,6,8,9,11,12,13,14,15は、析出するりん化合物のアスペクト比a/bの平均が比較的大きく、アスペクト比a/bの平均が1.5以下の試料No. 1,4,5,7,10に比べて、耐力または導電率がやや低くなっている。また、発明例の内、析出物の数密度が比較的小さい試料No. 4,5,8,11,12,13は、析出物の数密度が6000個/μm2以上のより好ましい発明例(例えば、No. 1〜3)に比べて、耐力または導電率がやや低くなっている。また、発明例の試料No. 5,6,7は、PまたはSnの添加量がより好ましい範囲から外れているため、Pが0.05〜0.2%、Snが0.1〜2.0の好ましい範囲にある発明例(例えば、No. 1〜4)に比べて耐力または導電率がやや低くなっている。
これに対して、表2の試料No. 21〜25、34(比較例)は本発明の合金組成を満足するものの、No. 21、22、34では溶体化焼鈍温度が、No. 23では溶体化焼鈍後の冷却速度が、No. 24,25では時効温度が適切でないため、No. 22を除き、析出物の数密度が全て4000個/μm2未満となり、また平均短径が15nm超あるいは平均アスペクト比が3.0超となり、発明例と比較して耐力または導電率が低下している。またNo. 22では溶体化焼鈍温度が950℃であるため、結晶粒径が110μm と粗大化し、耐力が低下している。また、比較例の試料No. 26〜33は組成が発明成分を満足していない例であるが、No. 31を除き、製造条件が適正条件であるにもかかわらず、析出物の平均短径、平均アスペクト比、所定析出物の数密度のいずれかが発明組織条件から外れているため、耐力または導電率が低下している。また、No. 31ではSnが過多であるため、導電率が低下している。
Figure 0005207927
Figure 0005207927

Claims (4)

  1. 化学組成が質量%で、
    Ni:0.010〜3.0%、
    P :0.010〜0.3%、
    Sn:0.010〜3.0%、
    Co,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgのうち1種または2種以上:合計で0.010%〜1.5%
    を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、りん化合物からなる析出物が分散した組織を有し、前記析出物はその長径をa、短径をbとするときアスペクト比a/bの平均が3.0以下で、かつ短径の平均が15nm以下であり、さらに短径が15nm以下の析出物の数密度が4000個/μm2以上であり、平均結晶粒径が30μm 以下である、高強度かつ高導電率を備えた銅合金。
  2. 化学組成が、更に質量%で、Zn:1.0%以下、Si:0.1%以下を含む、請求項1に記載した銅合金。
  3. 化学組成中のHf,Th,Li,Na,K,Sr,Pd,W,S,C,Nb,Al,V,Y,Mo,Pb,In,Ga,Ge,As,Sb,Bi,Te,B,ミッシュメタルの各元素の合計量が質量%で0.1%以下に制限された、請求項1または2に記載した銅合金。
  4. 耐力が500MPa超、かつ耐力をP(MPa)で表したとき導電率が(105−0.1P)%IACS以上である、請求項1からのいずれか1項に記載した銅合金。
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