JP5207927B2 - 高強度かつ高導電率を備えた銅合金 - Google Patents
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本発明はかかる問題に鑑み、従来材よりも高強度かつ高導電率を兼備した銅合金を提供することを目的とする。
Ni:0.01〜3.0%、
P :0.01〜0.3%、
Sn:0.01〜3.0%、
Co,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgのうち1種または2種以上:合計で0.01%〜1.5%
を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、りん化合物からなる析出物が分散した組織を有し、前記析出物はその長径をa、短径をbとするときアスペクト比a/bの平均が3.0以下で、かつ短径の平均が15nm以下であり、さらに短径が15nm以下の析出物の数密度が4000個/μm2以上とされる。さらにまた、平均結晶粒径が30μm 以下とされる。なお、本発明の成分系では、従来のCu−Ni−Sn−P系銅合金と同様、析出物はほとんど全部がりん化合物である。
Ni:0.010〜3.0%
Niは、Pと共にNi−P化合物を生成して、強度や耐応力緩和特性を向上させるのに必要な元素である。0.010%未満では、最適な条件の下で製造しても、析出するりん化合物量やNiの固溶量の絶対量が不足する。このため、Ni量の下限を0.010%、好ましくは0.03%、より好ましくは0.1%とする。一方、3.0%を超えて過剰に含有させると、粗大な酸化物、晶出物、析出物などが生成し、強度、耐応力緩和特性、曲げ加工性が低下する。このため、Ni量の上限を3.0%、好ましくは2.0%とする。
Pは、NiやCo,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgと共にりん化合物を析出させ、強度や耐応力緩和特性を向上させるのに必要な元素である。0.010%未満ではりん化合物の析出量が不足するため、P量の上限を0.010%、好ましくは0.05%とする。一方、0.3%を超えて過剰に含有させると、りん化合物析出粒子が粗大化し、強度や耐応力緩和特性だけでなく、熱間圧延時に割れが生じ易くなるなど、熱間加工性も低下する。このため、P量の上限を0.3%、好ましくは0.2%、より好ましくは0.15%とする。
Snは、銅合金中に固溶して強度を向上させる。Sn含有量が少ないと、焼鈍後の最終冷延の圧下率を増加するなどして、高強度化を行う必要がある。この場合には、導電率や耐応力緩和特性の若干の低下を伴う。Sn含有量が0.010%未満では、Snが少なすぎて、焼鈍後の最終冷延の圧下率を増加しても強度が低すぎ、これら特性バランスが所望のレベルに達しない。一方、過剰に添加すると導電率が低下し、また熱間加工性が低下する。このため、Snの含有量の下限を0.010%、好ましくは0.1%とし、上限を3.0%、好ましくは2.0%とする。
これらの元素は、Pとの間にM−P化合物(「M」はCo,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgの1種または2種以上をまとめて示す。)またはNiを含めたNi−M−P化合物を生成し、強度や耐応力緩和特性を向上させるのに必要な元素である。またM−P、Ni−M−P化合物はNi−P化合物と比較して固溶温度が高く、溶体化温度を高温にしても安定に存在することが可能である。このため、結晶粒径を粗大化させずに、溶体化焼鈍温度を高くすることができる。これまで、溶体化温度を高くすると結晶粒径が大きくなるという弊害があるため、溶体化温度を一定以上にすることはできなかった。溶体化処理温度が高いほど水冷後の凍結空孔濃度が高くなり、析出物の核生成サイトが増えるため、球状の析出物の数密度を増やすことができる。これらの元素は、添加量が少ないと析出するりん化合物量が少なくなり、また高温で溶体化したときに溶解するので、析出物の形状への寄与が小さくなる。このため、これらの元素は合計で0.010%以上、好ましくは0.05%以上含有させることが好ましい。他方、1.5%を超えて過剰に含有させると、粗大な酸化物、晶出物、析出物などが生成して、強度、耐応力緩和特性、曲げ加工性が低下し、かつ固溶により導電率が低下するようになる。このため、これらの元素は合計で1.5%以下、好ましくは0.8%以下に止めるのがよい。
(1) 基本成分+A群から1種または2種以上
(2) 基本成分又は上記(1) の成分+B群から1種または2種以上
Znは、錫めっきの剥離を防止する。しかし、過剰に添加すると導電率が低下し、また応力腐食割れの感受性の増大を招いてしまう。Siには脱酸剤としての効果がある。しかし、多量に加えると、導電率が低下してしまう。このため、Znの含有量は1%以下に止め、Siの含有量は0.1%以下に止める。
B群の各元素は、結晶粒の粗大化を防止する作用がある。しかし、これらの元素を多量に加えると、導電率が低下してしまう。このため、これらの元素は合計で1.0%以下とする。
これらの元素は不純物元素であり、少ない程好ましいが、実施形態の成分系では、これらの元素が合計で0.1%以下に止まる限り、機械的性質にさほど影響を与えない。このため、これらの元素は合計量で0.1%以下まで許容される。なお、原料に含まれるこれらの元素の量を管理することにより、常法の製造方法の下で、これらの不純物元素の合計量を0.1%以下に制御することができる。通常の銅合金の原料を使用する場合にはこれらの元素が含まれることは少ないが、原料の一部にこれらの元素を多く含むようなもの、例えばリサイクル品が用いられる場合には取り扱いに注意が必要であり、合計量が0.1%以下となるように成分調整することが肝要である。
上記所定形状の微細析出物を分散析出するには、鋼成分と溶体化焼鈍温度および溶体化焼鈍後の冷却速度を制御することが特に重要である。発明者らの研究により、Co、Cr、Ti、Mn、Zr、Fe、Mgを添加し、高温で溶体化処理し、すばやく冷却を行った後に時効処理を施すことにより、上記りん化合物の微細析出組織が形成されることが明らかとなった。従来のCu−Ni−P−Sn合金の組成では、結晶粒径が粗大となり、強度や曲げ加工性が低下してしまうため、溶体化焼鈍温度を一定温度以上にすることが出来なかった。しかし、本発明ではCu−Ni−P−Sn合金にCo、Cr、Ti、Mn、Zr、Fe、Mgを必須成分として添加することで、結晶粒径を粗大化させずに、溶体化焼鈍温度を高くすることが可能となり、その結果、従来以上に高強度、高電導を実現することができた。
ここで、溶体化焼鈍の温度を750℃以上の高温としたのは、冷却後の凍結空孔濃度を大きくし、析出物の核生成サイトを増加させ、球状の析出物を微細に生成させるためである。750℃よりも溶体化焼鈍温度が低いと、冷却後の凍結空孔濃度が少なくなり、析出物の核生成サイトが少なくなるため、所望の析出物の形状が得られないようになる。また溶体化温度が低いと時効前に固溶原子量を確保できないため、時効で析出する短径15nm以下の析出物の数密度が減少する。一方、900℃超の溶体化焼鈍温度では、結晶粒径の粗大化速度が速く、平均結晶粒径が30μm超となり、結晶粒が粗大化してしまう。このため、溶体化焼鈍温度の下限を750℃、好ましくは800℃とし、その上限を900℃、好ましくは850℃とするのがよい。また焼鈍後の冷却は、冷却速度が遅いと冷却中に空孔が消滅し、冷却後の凍結空孔濃度が減少する。このため、冷却速度は100℃/sec 以上とする。
また、特許文献4に記載された銅合金は、析出物のアスペクト比を制御しているが、熱間圧延温度が600℃〜850℃の時は溶体化焼鈍を行っていない。このためアスペクト比a/bが3.0以上の析出物が多数生成し、本発明における析出物の析出状態は実現されていない。
また、特許文献6に記載された銅合金は、Co、Fe、Mnなどを添加しているが、溶体化焼鈍温度が700℃と低温で行っているため、やはり本発明における析出物の析出形態は実現されていない。同様に、特許文献5の銅合金は、Co,Ti,Mg,Zr,Mnなどを添加しており、また特許文献7の銅合金でもFe,Cr,Mn,Mg,Coなどを添加しているが、いずれも溶体化焼鈍を行っていないため、本発明における析出物の析出形態は実現されていない。
Claims (4)
- 化学組成が質量%で、
Ni:0.010〜3.0%、
P :0.010〜0.3%、
Sn:0.010〜3.0%、
Co,Cr,Ti,Mn,Zr,Fe,Mgのうち1種または2種以上:合計で0.010%〜1.5%
を含有し、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、りん化合物からなる析出物が分散した組織を有し、前記析出物はその長径をa、短径をbとするときアスペクト比a/bの平均が3.0以下で、かつ短径の平均が15nm以下であり、さらに短径が15nm以下の析出物の数密度が4000個/μm2以上であり、平均結晶粒径が30μm 以下である、高強度かつ高導電率を備えた銅合金。 - 化学組成が、更に質量%で、Zn:1.0%以下、Si:0.1%以下を含む、請求項1に記載した銅合金。
- 化学組成中のHf,Th,Li,Na,K,Sr,Pd,W,S,C,Nb,Al,V,Y,Mo,Pb,In,Ga,Ge,As,Sb,Bi,Te,B,ミッシュメタルの各元素の合計量が質量%で0.1%以下に制限された、請求項1または2に記載した銅合金。
- 耐力が500MPa超、かつ耐力をP(MPa)で表したとき導電率が(105−0.1P)%IACS以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載した銅合金。
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