以下、本発明に係るワイパ制御システム及びワイパ制御装置の一実施の形態について、図1〜図6を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態のワイパシステムは、車両の停車時において車載エンジンが運転を停止し、車両の発進時においてその車載エンジンが運転を開始するいわゆるアイドリングストップシステムが適用された車両に搭載されている。
図1に示されるように、アイドリングストップシステムが適用された図示しない車両には、ウインドシールド10、ワイパブレード11a及び11b、ワイパモータ12、ワイパスイッチ20、車載バッテリ40、ワイパ制御装置50、並びに雨滴検出装置60等々が搭載されている。
ワイパブレード11a及び11bはそれぞれ車両の運転席側及び助手席側のワイパブレードであり、これらワイパブレード11a及び11bは図示しない公知のリンク機構等の伝達機構を介して公知のワイパモータ12に接続されている。このワイパモータ12は、図示しないモータ駆動回路を介してワイパ制御装置50に接続されている。そして、モータ駆動回路は、ワイパ制御装置50から出力された駆動信号を受信すると、その受信した駆動信号に基づいてワイパモータ12へ電力を供給し、電力が供給されたワイパモータ12は駆動力を発生し、その発生した駆動力がリンク機構を介してワイパブレード11a及び11bに伝達され、ワイパブレード11a及び11bは、図1に点線にて示す略扇状の範囲においてウインドシールド10の表面を払拭する。こうしたワイパブレード11a及び11bによる払拭動作は公知であるため、ここでのこれ以上詳しい説明を割愛する。なお、ワイパモータ12が特許請求の範囲に記載のワイパ駆動部に相当する。
ワイパスイッチ20は、車両の運転者が手動にて操作可能な公知のスイッチであり、車室内に配置され、雨滴検出装置60に接続されている。車両の運転者は、このワイパスイッチ20を手動操作(例えば回動操作等)することにより、自動(以下、AUTOモードと記載)、停止(以下、停止モードと記載)、間欠動作(以下、INTモードと記載)、低速動作(以下、連続LOモードと記載)、及び高速動作(以下、連続HIモードと記載)等の複数の払拭モードから1つの払拭モードを設定することが可能である。ワイパスイッチ20は、払拭モードが設定されると、その設定された払拭モードに対応するモード信号を雨滴検出装置60に出力する。
なお、INTモード、連続LOモード、及び連続HIモードは、ワイパブレード11a及び11bによる払拭動作が開始される時点からその次の払拭動作が開始される時点までの期間である払拭周期が互いに異なる払拭モードであり、それら払拭周期は「INTモード→連続LOモード→連続HIモード」の順に短くなる。
また、ワイパスイッチ20が手動操作されてAUTOモードが設定されると、雨滴検出装置60による払拭モードの自動選択が行なわれ、その自動選択された払拭モードでの払拭動作が行われるようにワイパ制御装置50によってワイパモータ12が自動制御される。ここで、雨滴検出装置60によって自動選択される払拭モードは、停止モード、INTモード、連続LOモード、及び連続HIモードのうちいずれか1つの払拭モードである。一方、ワイパスイッチ20が手動操作されてAUTOモード以外の払拭モードが設定されると、雨滴検出装置60による払拭モードの自動選択は行なわれず、その手動設定された払拭モードでの払拭動作が行われるようにワイパ制御装置50によってワイパモータ12が自動制御される。
車載バッテリ40は、公知の車載バッテリであり、ワイパ制御装置50及び雨滴検出装置60の双方に接続されて電源を供給する。車載バッテリ40の供給電圧は、例えば車両発進時等に急激に低下し、ワイパ制御装置50に供給される電圧がワイパリセット電圧Vth1を下回ると、ワイパ制御装置50はリセットされ、その揮発性内蔵メモリに記憶されていた情報は消去されてしまう。同様に、車載バッテリ40の供給電圧は、例えば車両発進時等に急激に低下し、雨滴検出装置60に供給される電圧がセンサリセット電圧Vth2を下回ると、雨滴検出装置60はリセットされ、その揮発性内蔵メモリに記憶されていた情報は消去されてしまう。ただし、ワイパリセット電圧Vth1はセンサリセット電圧Vth2よりも低くなるように構成されており、ワイパ制御装置50は雨滴検出装置60よりもリセットされ難く構成されている。
ワイパ制御装置50は、車室内のルームミラー背面に設けられる。このワイパ制御装置50は、公知のCPU(図示略)、揮発性内蔵メモリ、及び不揮発性内蔵メモリ(図示略)を有して構成されるコンピュータであり、そのCPUが不揮発性内蔵メモリに記憶されている制御プログラムを実行することによって各種機能を実現している。以下の説明では、便宜上、ワイパ制御装置50は、起動判断部52及びワイパ側モード情報出力部53を有するものとして説明する。また、上記不揮発性内蔵メモリには上記制御プログラムや上記センサリセット電圧Vth2等が記憶されており、モード情報記憶部51は上記揮発性内蔵メモリである。
また、ワイパ制御装置50は、上記モータ駆動回路を介してワイパモータ12に接続されているとともに、雨滴検出装置60にも接続されており、雨滴検出装置60からワイパ払拭指示が入力されると、ワイパブレード11a及び11bによる払拭動作が行なわれるように上記モータ駆動回路を介してワイパモータ12を制御する。
また、ワイパ制御装置50は、雨滴検出装置60によって選択された払拭モード情報がこの雨滴検出装置60から入力されると、この入力された払拭モード情報をモード情報記憶部51に上書きにより記憶する。なお、ワイパ側モード情報出力部53は、入力された払拭モード情報を上書きにより記憶することから、モード情報記憶部51には、雨滴検出装置60から入力された払拭モード情報のうち最も新しい払拭モード情報が記憶されることになる。
ワイパ制御装置50の起動判断部52は、車載バッテリ40の当該ワイパ制御装置50への供給電圧に基づいて、雨滴検出装置60の起動を判断する。詳しくは、起動判断部52は、車載バッテリ40の供給電圧がセンサリセット電圧Vth2を一旦下回った後、このセンサリセット電圧Vth2を上回った場合に、雨滴検出装置60が起動したと判断する。車載バッテリ40は当該ワイパ制御装置50だけでなく雨滴検出装置60にも電源を供給していることから、当該ワイパ制御装置50への供給電圧を監視することにより、雨滴検出装置60の起動を判断することが可能である。
ワイパ制御装置50のワイパ側モード情報出力部53は、起動判断部52によって雨滴検出装置60が起動したと判断されると、モード情報記憶部51に記憶されている払拭モード情報を雨滴検出装置60にただちに出力する。なお、ただちに出力するとは、ワイパ側モード情報出力部53は、雨滴検出装置60の起動してからステップS201の判断処理(後述)を実行する前までに、払拭モード情報を出力することを意味する。
雨滴検出装置60は、エンジンルーム内のワイパモータ12付近に収容されている。この雨滴検出装置60は、いずれも図示しない公知のCPU、揮発性内蔵メモリ、及び不揮発性内蔵メモリを有するコンピュータと、センサ部65とを備えて構成されている。コンピュータのCPUが不揮発性内蔵メモリに記憶されている制御プログラムを実行することによって各種機能を実現している。以下の説明では、便宜上、雨滴検出装置60は、雨滴量検出部61と、払拭モード選択部62と、払拭指示出力部63と、センサ側モード情報出力部64とを有するものとして説明する。
なお、不揮発性内蔵メモリには、上記制御プログラム、払拭モードを選択するための各種閾値、払拭周期の情報である払拭周期情報、停止前モードにて払拭モードを選択するための各種閾値、及びデフォルトの払拭モード(本実施の形態では停止モード)等が記憶されており、揮発性内蔵メモリには、センサ部65の上記検出信号によって検出された雨滴量の検出結果等が記憶される。
センサ部65は、ウインドシールド10の幅方向略中央の上部に車室内に配置され、ワイパブレード11a及び11bの払拭範囲内に位置する所定の雨滴検出領域10rに付着した雨滴量を光学的に検出する公知のレインセンサである。
詳しくは、センサ部65は、ウインドシールド10の雨滴検出領域10rに向かって赤外光を発光する発光ダイオード等の発光素子65aと、この発光素子65aから発光されてウインドシールド10により反射された光の受光量に応じた出力値を出力する受光素子65bと、発光素子駆動回路65cと、検波増幅回路65dとを有する。このうち、発光素子65aは、発光素子駆動回路66cを介して後述の雨滴量検出部61に接続されており、雨滴量検出部61によってその点消灯が制御される。また、受光素子65bは、検波増幅回路65dを介して雨滴検出装置60に接続されており、検出した雨滴量に応じた検出信号を雨滴量検出部61に出力する。
雨滴量の検出原理は次の通りである。雨滴検出領域10rに雨滴が付着していないときには、発光素子65aから発光された赤外光は、そのほとんどがウインドシールド10によって反射されるため、受光素子65bで受光されるのに対し、雨滴検出領域10rに雨滴が付着しているときには、発光素子65aから発光された赤外光の一部は、雨滴検出領域10rに付着した雨滴を介してウインドシールド10を透過するため、受光素子65bにより受光される光の量が減少する。したがって、雨滴量検出部61は、センサ部65から入力された検出信号に基づいて、雨滴量を検出することができる。雨滴量を光学的に検出するレインセンサについては公知であるので、ここではこれ以上詳しい説明を割愛する。また、本実施の形態では、雨滴量を光学的に検出する光学式の素子部を採用したが、光学式に限らず、容量式の素子部等を採用してもよい。
雨滴量検出部61は、発光素子65aの点消灯を制御するとともに、センサ部65から入力される上記検出信号に基づいて雨滴検出領域10rに付着した雨滴量を払拭周期毎に検出する。
詳しくは、雨滴量検出部61は、ワイパスイッチ20から入力される上記モード信号に基づいて、ワイパスイッチ20がAUTOモードに設定されているか否かを判断する。ここで、ワイパスイッチ20がAUTOモードに設定されていると判断しなかった場合は、雨滴量を検出する必要がない場合であるものの、ワイパスイッチ20がAUTOモードに設定されていると判断した場合は、雨滴量を検出する必要がある場合である。そのため、雨滴量検出部61は、ワイパスイッチ20がAUTOモードに設定されていると判断した場合、払拭モード選択部62によって払拭モードを選択するべく、払拭指示出力部63がワイパ制御装置50に対してワイパ払拭指示を出力する度に(すなわち払拭周期毎に)、センサ部65から上記検出信号を取り込み、この検出信号に基づいて雨滴検出領域10rに付着した雨滴量を検出する。
また、雨滴量検出部61は、雨滴量を検出すると、その検出した複数払拭周期(例えば「5周期」)の雨滴量の検出結果を払拭周期の順に上記揮発性内蔵メモリに記憶する。なお、本実施の形態では、上記揮発性内蔵メモリに記憶する複数払拭周期の雨滴量の検出結果を「5周期」としたが「5周期」に限らず適宜変更可能である。
払拭モード選択部62は、当該雨滴検出装置60の起動時においては、ワイパ制御装置50から払拭モード情報が入力されたか否かを判断する。ここで、ワイパ制御装置50から払拭モード情報が入力されたと判断した場合には、払拭モード選択部62は、その入力された払拭モードを選択する一方、ワイパ制御装置50から払拭モード情報が入力されたと判断しなかった場合には、払拭モード選択部62は、上記不揮発性内蔵メモリに記憶されている払拭モードを選択する。
また、払拭モード選択部62は、当該雨滴検出装置60の起動後においては、複数払拭周期の平均雨滴量に基づいて、払拭周期の異なる複数の払拭モードから1つの払拭モードを選択する。詳しくは、払拭モード選択部62は、まず、上記揮発性内蔵メモリに記憶されている5払拭周期の雨滴量の検出結果を読み出し、それら検出結果の平均値(すなわち平均雨滴量)を算出する。この平均雨滴量を算出すると、払拭モード選択部62は、次に、その算出した平均雨滴量と上記不揮発性内蔵メモリに記憶されている閾値とを比較することにより、停止モード、INTモード、連続LOモード、及び連続HIモードから1つの払拭モードを選択する。
なお、本実施の形態では、デフォルトの払拭モードとして停止モードが記憶されている。また、雨滴検出装置60の起動後とは、当該雨滴検出装置60が起動してから当該雨滴検出装置60がワイパ制御装置50から入力される払拭モード情報を少なくとも一度判別した時点以後をいう。
また、払拭モード選択部62は、当該雨滴検出装置60の起動時において上記デフォルトの払拭モード(停止モード)を選択し、且つ、雨滴検出領域10rに雨滴が検出された場合、あるいは、当該雨滴検出装置60の起動後において平均雨滴量に基づいて停止モードを選択し、且つ、雨滴検出領域10rに雨滴が検出された場合、停止前モードを選択する。ここで、停止前モードとは、ワイパブレード11a及び11bによる払拭終了からウインドシールド10の雨滴検出領域10rに雨滴が付着するまでの時間に応じて、払拭周期の異なる複数の払拭モード(停止モード、INTモード、連続LOモード、連続HIモード)から1つの払拭モードを選択する動作モードである。なお、この停止前モードについては公知であるため、ここでの詳しい説明を割愛する。
払拭指示出力部63は、上記払拭モード選択部62によって選択された払拭モードに応じてワイパ払拭指示をワイパ制御装置50に出力する。詳しくは、払拭指示出力部63は、上記払拭モード選択部62によって払拭モードが選択されると、その選択された払拭モードに対応する払拭周期情報を上記不揮発性内蔵メモリから読み出す。払拭指示出力部63は、払拭周期情報を読み出すと、次に、図示しない計時カウンタをその読み出した払拭周期にセットして計時を開始(すなわちカウントダウン)する。払拭指示出力部63は、その払拭周期が経過すると、ワイパ制御装置50にワイパ払拭指示を出力する。
また、払拭指示出力部63は、当該雨滴検出装置60の起動時において上記デフォルトの払拭モード(停止モード)を選択し、且つ、雨滴検出領域10rに雨滴が検出された場合、あるいは、当該雨滴検出装置60の起動後において平均雨滴量に基づいて停止モードを選択し、且つ、雨滴検出領域10rに雨滴が検出された場合、ワイパ制御装置50にワイパ払拭指示を出力する。
センサ側モード情報出力部64は、上記払拭モード選択部62によって払拭モードが選択されると、その選択された払拭モードの情報である払拭モード情報をワイパ制御装置50に出力する。
以上説明したワイパ制御システムにおいては、図2に示されるように、雨滴検出装置60からワイパ制御装置50へ、雨滴検出装置60によって選択された払拭モードの情報である払拭モード情報が入力されるとともに、その払拭モードに応じた払拭周期にてワイパ払拭指示が入力される一方、ワイパ制御装置50から雨滴検出装置60へ、モード情報記憶部51に記憶されている払拭モード情報が入力される。
図3を参照して、ワイパ制御システムを構成するワイパ制御装置50によって実行される払拭動作処理S1について説明する。なお、ワイパ制御装置50は、図示しないイグニッションスイッチ(図示略、以下IGスイッチとも記載)がオン操作され、車載バッテリ40から電源が供給されると、連続HIモードの払拭周期よりも十分短い所定時間毎にこの払拭動作処理S1を繰り返し実行する。
払拭動作処理S1を実行開始すると、ワイパ制御装置50は、まず、ステップS101の判断処理として、雨滴検出装置60からワイパ払拭指示が入力されたか否かを判断する。
ここで、ワイパ払拭指示が入力されたと判断した場合(ステップS101の判断処理で「Yes」)、車両はワイパブレード11a及び11bによりウインドシールド10を払拭する必要がある状況にあることを意味する。このとき、ワイパ制御装置50は、ワイパブレード11a及び11bによる払拭動作が行なわれるようにモータ駆動回路を介してワイパモータ12を制御し、続くステップS103の判断処理に移行する。
一方、上記ステップS101の判断処理において、ワイパ払拭指示が入力されたと判断しなかった場合(ステップS101の判断処理で「No」)、ワイパ制御装置50は、ステップS103の判断処理に移行する。
ワイパ制御装置50は、ステップS103の判断処理に移行すると、雨滴検出装置60から払拭モード情報が入力されたか否かを判断する。
ここで、払拭モード情報が入力されたと判断した場合(ステップS103の判断処理で「Yes」)、ワイパ制御装置50は、続くステップS104の処理として、雨滴検出装置60から入力された払拭モード情報をモード情報記憶部51に記憶し、続くステップS105の判断処理に移行する。
一方、上記ステップS103の判断処理において、払拭モード情報が入力されたと判断しなかった場合(ステップS103の判断処理で「No」)、ワイパ制御装置50は、続くステップS105の判断処理に移行する。
ワイパ制御装置50は、ステップS105の判断処理に移行すると、車載バッテリ40の供給電圧に基づいて雨滴検出装置60が起動したか否かを判断する。
ここで、雨滴検出装置60が起動したと判断した場合、すなわち、車載バッテリ40の供給電圧がセンサリセット電圧Vth2を一旦下回った後、このセンサリセット電圧Vth2を上回ったと判断した場合(ステップS105の判断処理で「Yes」)、雨滴検出装置60はリセットされたことを意味し、揮発性内蔵メモリに記憶されている情報が消去されたことを意味する。このとき、ワイパ制御装置50は、続くステップS106の処理として、モード情報記憶部51に記憶されている払拭モード情報を雨滴検出装置60に出力し、先のステップS101の判断処理を再度実行する。
一方、上記ステップS105の判断処理において、雨滴検出装置60が起動したと判断しなかった場合(ステップS105の判断処理で「No」)、すなわち、車載バッテリ40の供給電圧がセンサリセット電圧Vth2を下回らなかった場合、雨滴検出装置60は動作中またはワイパ制御装置50と雨滴検出装置60の両方がリセットした状態であることを意味する。このとき、ワイパ制御装置50は、先のステップS101の判断処理を再度実行する。
図4を参照して、ワイパ制御システムを構成する雨滴検出装置60によって実行される払拭指示処理S2について説明する。なお、雨滴検出装置60は、IGスイッチがオン操作されて車載バッテリ40から電源が供給されると、あるいは、車両発進時の電源瞬断によりリセットされて起動すると、この払拭指示処理S2を実行する。
払拭指示処理S2を実行開始すると、雨滴検出装置60は、まず、ステップS201の判断処理として、ワイパ制御装置50から払拭モード情報が入力されたか否かを判断する。
ここで、払拭モード情報が入力されたと判断した場合(ステップS201の判断処理で「Yes」)とは、車両発進時の電源瞬断に起因してワイパ制御装置50は動作継続していたものの雨滴検出装置60のみがリセットされ起動した状況を意味する。この場合、雨滴検出装置60は、その入力された払拭モードを選択する。なお、このとき入力された払拭モードは、雨滴検出装置60がワイパ制御装置50に対して車両発進時の電源瞬断前に出力した払拭モードのうち最新の払拭モードである。
一方、払拭モード情報が入力されたと判断しなかった場合(ステップS201の判断処理で「No」)とは、ワイパ制御装置50及び雨滴検出装置60の双方が起動した(IGスイッチがオンとされた)状況を意味する。この場合、雨滴検出装置60は、上記不揮発性内蔵メモリに記憶されているデフォルトの払拭モード、すなわち停止モードを選択する。これらステップS202の処理あるいはステップS203の処理において払拭モードを選択すると、ワイパ制御装置50は、続くステップS204の処理に移行する。
ステップS204の処理に移行すると、雨滴検出装置60は、発光素子65aの点消灯を制御するとともに、センサ部65から入力される検出信号に基づいて雨滴検出領域10rに付着した雨滴量を検出し、続くステップS205の判断処理に移行する。なお、雨滴検出装置60は、このステップS204の処理において検出した雨滴量の検出結果を払拭周期の順に揮発性内蔵メモリに記憶する。
ステップS205の判断処理に移行すると、雨滴検出装置60は、当該雨滴検出装置60が選択した払拭モードが停止モードであるか否かを判断する。
ここで、停止モードであると判断した場合(ステップS205の判断処理で「Yes」)とは、ワイパ制御装置50から入力された払拭モードが停止モードであった場合、ワイパ制御装置50及び雨滴検出装置60の双方が起動して上記ステップS203の処理においてデフォルトの払拭モードが選択された場合、ワイパ制御装置50及び雨滴検出装置60の双方が正常動作中に後述のステップS210の処理において停止モードが選択された場合、ワイパ制御装置50及び雨滴検出装置60の双方が正常動作中に後述のステップS208の処理において上記停止前モードが選択され、この停止前モードにて停止モードが選択された場合のいずれか1つの場合を意味する。
これらのうちいずれか1つの場合、雨滴検出装置60は、続くステップS206の判断処理において、先のステップS204の判断処理において雨滴が検出されていたか否かを判断する。ここで、雨滴が検出されていたと判断する場合(ステップS206の判断処理で「Yes」)、雨滴検出装置60は、続くステップS207の処理として、ワイパ制御装置50にワイパ払拭指示を出力するとともに、続くステップS208の処理として、停止前モードを選択し、ワイパブレード11a及び11bによる払拭終了からウインドシールド10の雨滴検出領域10rに雨滴が付着するまでの時間に応じて払拭周期の異なる複数の払拭モードから1つの払拭モードを選択する。そして、ステップS208の処理において払拭モードを選択すると、雨滴検出装置60は、続くステップS209の処理として、ワイパ制御装置50に払拭モード情報を出力する。
一方、停止モードであると判断しなかった場合(ステップS205の判断処理で「No」)とは、ワイパ制御装置50及び雨滴検出装置60の双方が正常動作中に後述のステップS209の処理において停止モード以外の払拭モードが選択された場合、ワイパ制御装置50及び雨滴検出装置60の双方が正常動作中に後述のステップS208の処理において停止前モードが選択され、この停止前モードにおいて停止モード以外が選択された場合、及び、車両発進時の電源瞬断に起因してワイパ制御装置50は動作継続していたものの雨滴検出装置60のみがリセットされ起動して、電源瞬断が生じる前にワイパ制御装置50に出力していた払拭モードがワイパ制御装置50から入力された場合のいずれか1つの場合を意味する。
これらのうちいずれか1つの場合、雨滴検出装置60は、続くステップS210の処理として、既に選択されていた払拭モード及び複数周期分における平均雨滴量に基づいて払拭周期の異なる複数の払拭モードから1つの払拭モードを選択する。ただし、雨滴検出装置60は、複数周期分の平均雨滴量を算出できない場合には、既に選択されていた払拭モードをそのまま選択する。このようにして払拭モードを選択すると、雨滴検出装置60は、続くステップS211の処理として、その選択した払拭モードに対応する払拭周期情報を不揮発性内蔵メモリから読み出し、上記計時カウンタにてその読み出した払拭周期にセットして計時を開始する。計時を開始すると、雨滴検出装置60は、続くステップS212の判断処理を通じて払拭周期が経過するまで待機し、払拭周期が経過すると、雨滴検出装置60は、続くステップS213の処理として、ワイパ制御装置50にワイパ払拭指示を出力する。そして、雨滴検出装置60は、続くステップS209の処理として、ワイパ制御装置50に払拭モード情報を出力する。
以上のように構成された本実施の形態のワイパ制御システムの動作例及び従来のワイパ制御システムの動作例について、図6及び図5を併せ参照して説明する。なお、図6(a)及び(b)は、本実施の形態のワイパ制御システムについて、雨滴検出装置60の動作状態の推移及び払拭モードの推移をそれぞれ示すタイミングチャートであり、図5(a)及び(b)は、従来のワイパ制御システムについて、雨滴検出装置60の動作状態の推移及び払拭モードの推移をそれぞれ示すタイミングチャートである。
以下、動作例を説明するにあたり、アイドリングストップシステムが適用された車両にワイパ制御システムが搭載されたものとし、その車両はワイパブレードによる払拭動作を「連続LOモード」にて行うのが相当な降雨状態にあるものとする。また、図5及び図6中、時刻t11において、車両のIGスイッチがオン操作されワイパ制御システムが動作開始し、時刻t12において、車両は停車し、時刻t13において、車両は発進したものとする。
こうした仮定の下、時刻t11においてワイパ制御システムが動作開始すると、雨滴検出装置は、平均雨滴量に基づいて、「停止モード」から「INTモード」、さらに「INTモード」から「連続LOモード」へ、払拭モードを選択し、その選択した払拭モードにてワイパ制御装置に対しワイパ払拭指示を出力し、ワイパ制御装置は、雨滴検出装置から入力されたワイパ払拭指示に従ってウインドシールドを払拭する。
そして、従来のワイパ制御システムでは、時刻t13の車両の発進時、すなわち車載エンジンの運転開始時に、車載バッテリの供給電圧に急激な低下が発生し、このバッテリ電圧の急激な低下に起因して、雨滴検出装置がリセットされてしまうことがある。そして、雨滴検出装置がリセットされると、停車前の払拭モード情報が雨滴検出装置の揮発性記憶部から消去されてしまい、雨滴検出装置は、その起動後、ワイパ制御装置に対しデフォルトの払拭モード(停止モード)にてワイパ払拭指示を出力することになる。
そのため、図5(b)に示すように、車両はワイパブレードによる払拭動作を「連続LOモード」にて行うのが相当な降雨状態にあるにもかかわらず、雨滴検出装置は、その起動直後(車両の発進当初、時刻t13)にワイパ制御装置に対してワイパ払拭指示を出力せず、ワイパブレードによる払拭が停止してしまう。
その後、雨滴検出装置は、平均雨滴量に基づいて、「停止モード」から「INTモード」、さらに「INTモード」から「連続LOモード」へ、払拭モードを選択し、その選択した払拭モードにてワイパ制御装置に対しワイパ払拭指示を出力し、ワイパ制御装置は、雨滴検出装置から入力されたワイパ払拭指示に従ってウインドシールドを払拭することになるものの、「INTモード」を経由することから、ウインドシールドに付着する雨滴量にワイパブレードによる払拭が追従できなくなってしまう。したがって、車両の発進時である時刻t13から連続LOモードが選択される時刻t14までの期間Tだけ、車両発進時の電源瞬断に起因するワイパブレードの払拭遅れが生じている。
しかしながら、本実施の形態のワイパ制御システムでは、時刻t13の車両の発進時、すなわち車載エンジンの運転開始時に、車載バッテリ40の供給電圧に急激な低下が発生し、このバッテリ電圧の急激な低下に起因して、雨滴検出装置60がリセットされてしまっても、ワイパ制御装置50がリセットされることは少ない。ワイパリセット電圧Vth1がセンサリセット電圧Vth2よりも低くなるように構成されているためである。
雨滴検出装置60は、リセットされる時刻t13よりも前の動作中に、連続LOモードが選択されていた旨を示す払拭モード情報をワイパ制御装置50に対して出力しており(ステップS209の処理)、この払拭モード情報はモード情報記憶部51に記憶されている(ステップS106の処理)。リセットされることなく動作中のワイパ制御装置50は、雨滴検出装置60の起動時である時刻t13に、そのモード情報記憶部51に記憶されている払拭モード情報(連続LOモードが選択されていた旨)を雨滴検出装置60に出力する(ステップS104の処理)。
そして、雨滴検出装置60は、ワイパ制御装置50から入力された払拭モード情報に基づいて払拭モードを選択し(ステップS202の処理)、ワイパ制御装置50に対してワイパ払拭指示を出力する(ステップS213の処理)。
これにより、雨滴検出装置60は、車両発進時の電源瞬断に起因するリセットからの起動時、リセット前に選択していた連続LOモードを選択することから、従来のワイパ制御システムよりも迅速にワイパ払拭指示をワイパ制御装置50に出力することができ、ひいては、車両発進時の電源瞬断に起因するワイパブレード11a及び11bの払拭遅れを低減することができるようになる。
また、上記実施の形態のワイパ制御システムでは、車両発進時の電源瞬断対策として上記対策を採用しているのであって、上記課題の欄に記載した「車載バッテリ40からの電源供給ラインに大容量コンデンサを接続する」等の対策を採用しているのではないことから、雨滴検出装置60の体格の大型化を招くことはない。
したがって、本実施の形態のワイパ制御システムによれば、雨滴検出装置60の体格の大型化を招くことなく、車両発進時の電源瞬断に起因するワイパブレード11a及び11bの払拭遅れを低減することができるようになる。
なお、本発明に係るワイパ制御システム及びワイパ制御装置は、上記実施の形態にて例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々に変形して実施することが可能である。すなわち、上記実施の形態を適宜変更した例えば次の形態として実施することもできる。
また、上記実施の形態では、ワイパ制御装置50がリセットされる電圧であるワイパリセット電圧Vth1は、雨滴検出装置60がリセットされる電圧であるセンサリセット電圧Vth2よりも低くなるように構成されていたが、これに加え、次のように構成してもよい。すなわち、ワイパ制御装置50は、当該ワイパ制御装置50に電力を供給する車載バッテリ40の供給電圧がワイパリセット電圧Vth1を下回った場合に、車載バッテリ40に代わって当該ワイパ制御装置50に電力を供給する蓄電部(例えば大容量コンデンサ、図示略)をさらに備えることとしてもよい。これにより、車両発進時の電源瞬断が、車載バッテリ40の供給電圧がセンサリセット電圧Vth2どころかワイパリセット電圧Vth1をも下回るほどであっても、雨滴検出装置60の体格の大型化を招くことなく、車載バッテリ40からの電源瞬断に起因するワイパブレード11a及び11bの払拭遅れを低減することができるようになる。
また、上記実施の形態のワイパ制御システムでは、ワイパ制御装置50の起動判断部52は、当該ワイパ制御装置50及び雨滴検出装置60の双方に電力を供給する車載バッテリ40の当該ワイパ制御装置50への供給電圧に基づいて、雨滴検出装置60の起動時を判断し(ステップS103の判断処理)、ワイパ制御装置50のワイパ側モード情報出力部53は、雨滴検出装置60の起動時に、リセットされる直前にモード情報記憶部51に記憶された払拭モード情報を雨滴検出装置60に出力していた(ステップS104の処理)が、これに限らない。他に例えば、雨滴検出装置60は当該雨滴検出装置60の起動時にワイパ制御装置50に対して払拭モード情報を要求し、ワイパ制御装置50は、この要求が入力されると、モード情報記憶部51に記憶されている払拭モード情報をただちに出力してもよい。あるいは、車載バッテリ40のワイパ制御装置50への供給電圧を監視する電圧監視部をさらに車両に備え、この電圧監視部が雨滴検出装置60の起動時を判断するとともに、雨滴検出装置60が起動した旨をワイパ制御装置50に出力し、ワイパ制御装置50は、雨滴検出装置60が起動した旨が入力されると、モード情報記憶部51に記憶されている払拭モード情報をただちに出力してもよい。
ところで、例えば特開2007−240186号公報等、車両始動直後に始動時雨滴判定を行なう技術が公知である。上記課題の欄に記載した従来のワイパ制御システムにこの技術を適用すると、ワイパ制御システム全体の起動時(すなわち、車両始動時、IGスイッチオン時)であれ、車両発進時の電源瞬断に起因する雨滴検出装置60のみの起動時であれ、始動時雨滴判定を行なうことになる。換言すれば、車両発進時の電源瞬断に起因する雨滴検出装置60のみの起動時に、始動時雨滴判定を不要に実行してしまう。
そこで、上記実施の形態のワイパ制御システムを構成する雨滴検出装置60は図4に対応する図として図7に示す払拭指示処理S2aを実行することとして、始動時雨滴判定を行なう技術に適用してもよい。
詳しくは、雨滴検出装置60は、ステップS201の判断処理において、払拭モード情報が入力されたと判断しなかった場合、ステップS203aの処理として、上記不揮発性内蔵メモリに記憶されているデフォルトの払拭モード、すなわち停止モードを選択する。なお、この際、デフォルトの払拭モードには初回である旨が含まれる。ステップS202の処理あるいはステップS203aの処理において払拭モードを選択すると、ワイパ制御装置50は、続くステップS224の処理に移行する。
ステップS224の処理に移行すると、雨滴検出装置60は、払拭モードに初回である旨が含まれているか否かを判断する。ここで、初回である旨が含まれていると判断する場合(ステップS224の処理で「Yes」)、雨滴検出装置60は、続くステップS225の処理に移行する。
ステップS225の処理に移行すると、雨滴検出装置60は、発光素子65aの点消灯を制御するとともに、センサ部65から入力される検出信号に基づいて雨滴検出領域10rに付着した雨滴量を検出し、続くステップS226の判断処理に移行する。なお、雨滴検出装置60は、このステップS225の処理において検出した雨滴量の検出結果を払拭周期の順に揮発性内蔵メモリに記憶する。
雨滴検出装置60は、続くステップS226の判断処理において、ステップS225の判断処理において雨滴が検出されていたか否かを判断する。ここで、雨滴が検出されていたと判断する場合(ステップS226の判断処理で「Yes」)、雨滴検出装置60は、続くステップS227の処理として、ワイパ制御装置50にワイパ払拭指示を出力するとともに、続くステップS228の処理として、停止前モードを選択し、先のステップS204の処理に移行する。
一方、上記ステップS224の判断処理において、初回である旨が含まれていると判断しない場合、上記ステップS226の判断処理において、ステップS225の判断処理において雨滴が検出されていたと判断しない場合、先のステップS204の処理に移行する。
既述したように、払拭モード情報が入力されたと判断した場合(ステップS201の判断処理で「Yes」)とは、車両発進時の電源瞬断に起因してワイパ制御装置50は動作継続していたものの雨滴検出装置60のみがリセットされ起動した状況を意味する。これも既述したように、払拭モード情報が入力されたと判断しなかった場合(ステップS201の判断処理で「No」)とは、ワイパ制御装置50及び雨滴検出装置60の双方が起動した(ワイパ制御システム全体が起動した)状況を意味する。
そこで、払拭指示処理S2aのように変形して実施することとすれば、今回の起動がワイパ制御システム全体の起動時(初回)であるか、車両発進時の電源瞬断に起因する起動時であるか、起動の要因を切り分けることができるようになる。
また、上記実施の携帯では、ワイパ制御装置50が雨滴検出装置60の起動を判断して、払拭モード情報を出力しているが、雨滴検出装置60は当該雨滴検出装置60の起動時にワイパ制御装置50に対して払拭モード情報を要求してもよい。あるいは、車載バッテリ40のワイパ制御装置50への供給電圧を監視する電圧監視部をさらに車両に備え、この電圧監視部が雨滴検出装置60の起動時を判断するとともに、雨滴検出装置60が起動した旨をワイパ制御装置50に出力してもよい。