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JP5297770B2 - 酸化物超電導導体用基材の製造方法と酸化物超電導導体の製造方法及び酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置 - Google Patents

酸化物超電導導体用基材の製造方法と酸化物超電導導体の製造方法及び酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、酸化物超電導導体に用いられる基材の製造方法、酸化物超電導導体の製造方法及び酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置に関する。
RE−123系酸化物超電導体(REBaCu7−X:REはYを含む希土類元素)は、液体窒素温度以上で超電導性を示すことから実用上極めて有望な素材とされており、これを線材に加工して電力供給用の導体として用いることが強く要望されている。
このようなRE−123系酸化物超電導導体に用いる導体として、図3に示すように、テープ状の金属基材101上に、IBAD(Ion−Beam−Assisted Deposition)法によって成膜された中間層102と、その上にキャップ層103と、酸化物超電導層104とをこの順で積層形成した構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この酸化物超電導導体において中間層102及びキャップ層103は、酸化物超電導層104の結晶配向性を制御するために設けられている。
すなわち、酸化物超電導体は、その結晶軸のa軸方向とb軸方向には電気を流し易いが、c軸方向には電気を流し難いという電気的異方性を有している。したがって、この酸化物超電導体を用いて導体を構成する場合、酸化物超電導層104は、電気を流す方向にa軸あるいはb軸が配向し、c軸がその他の方向に配向している必要がある。
ここで、この種の酸化物超電導導体に用いられる中間層102の形成技術として、IBAD法が広く知られており、このIBAD法により形成される中間層とは、熱膨張率や格子定数等の物理的な特性値が金属基材101と酸化物超電導層104との中間的な値を示す材料、例えばMgO、YSZ(イットリア安定化ジルコニウム)、SrTiO等によって構成されている。
このような中間層102は、金属基材101と酸化物超電導層104との物理的特性の差を緩和するバッファー層として機能する。また、IBAD法によって成膜されることにより、中間層102の結晶は高い面内配向度を有しており、キャップ層103の配向性を制御する配向制御膜として機能する。以下、IBAD法により形成される中間層102の配向メカニズムについて説明する。
図4に示すように、IBAD法による中間層形成装置は、金属基材101をその長手方向に走行するための走行系と、その表面が金属基材1の表面に対して斜めに向いて対峙されたターゲット201と、ターゲット201にイオンを照射するスパッタビーム照射装置202と、金属基材101の表面に対して斜め方向からイオン(希ガスイオンと酸素イオンの混合イオン)を照射するイオン源203とを有しており、これら各部は真空容器(図示せず)内に配置されている。
この中間層形成装置によって金属基材101上に中間層102を形成するには、真空容器の内部を減圧雰囲気とし、スパッタビーム照射装置202及びイオン源203を作動させる。これにより、スパッタビーム照射装置202からターゲット201にイオンが照射され、ターゲット201の構成粒子が弾き飛ばされて金属基材101上に堆積する。これと同時に、イオン源203から、希ガスイオンと酸素イオンとの混合イオンが放射され、金属基材101の表面に対して所定の入射角度(θ)で入射する。
このように、金属基材101の表面に、ターゲット201の構成粒子を堆積させつつ、所定の入射角度でイオン照射を行うことにより、形成されるスパッタ膜の特定の結晶軸がイオンの入射方向に固定され、c軸が金属基材の表面に対して垂直方向に配向するとともに、a軸及びb軸が面内において一定方向に配向する。このため、IBAD法によって形成された中間層102は、高い面内配向度を有する。
一方、キャップ層103は、このように面内結晶軸が配向した中間層102表面に成膜されることによってエピタキシャル成長し、その後、横方向に粒成長して、結晶粒が面内方向に自己配向し得る材料、例えばCeOによって構成される。キャップ層103は、このように自己配向していることにより、中間層102よりも高い面内配向度を得ることができる。
したがって、金属基材101上に、このような中間層102及びキャップ層103を介して酸化物超電導層104を成膜すると、面内配向度の高いキャップ層103の結晶配向に整合するように酸化物超電導層104がエピタキシャル成長するため、面内配向性に優れ、臨界電流密度の大きな酸化物超電導層104を得ることができる。
特開2004−71359号公報
ところで、このような酸化物超電導導体を製造する場合、一般的にはキャップ層103をPLD(Pulsed Laser Deposition)法によって形成している。以下、PLD法によってキャップ層103を形成するPLD装置の一例について説明する。
図5に示すPLD装置301は、IBAD法によって中間層102が設けられたテープ状の基材(IBAD基材105)を走行させつつ、このIBAD基材105の表面に、キャップ層103を、長手方向に連続成膜する装置である。
このPLD装置301は、IBAD基材105がレーストラック状の経路で複数周走行する走行系302と、IBAD基材105の中間層102表面と対向して配設されたCeOターゲット(酸化物ターゲット)303と、このCeOターゲット303にエキシマレーザ(パルスレーザ)を照射するレーザ光源304とを備えている。このPLD装置301では、CeOターゲット303にエキシマレーザを照射すると、CeOターゲット303から活性種(原子、分子、イオン、クラスタ等)が放出され、IBAD基材105の中間層102表面に堆積する。これにより、中間層102上にターゲット物質の堆積層(CeOキャップ層103)が形成される。
しかしながら、このCeOキャップ層103を形成するために用いられるPLD法は、以下のような欠点を有している。
まず、PLD法では、レーザとして吸収係数が大きい紫外線レーザが用いられるため、ターゲットが紫外線レーザを吸収するものに制限される。このため、CeOキャップ層103を形成する場合には、単体金属ターゲットを用いることができず、その酸化物をターゲットとして用いるしかない。しかしながら、CeOなどの酸化物ターゲットは、割れ易いため、取り扱いを慎重にする必要があり、例えば高い成膜レートを得るために、レーザの出力を上げ過ぎると、レーザにより酸化物ターゲットそのものを割ってしまう虞が高いなどの問題がある。
また、PLD法では、レーザ発振器の出力が最大で300W程度と限界があるため、成膜レートを現状のレート以上に上げることが難しい。このため、例えば0.5μm厚のCeOキャップ層103を形成する場合、IBAD基材105の走行速度を60m/h程度までしか上げることができず、これが原因となって酸化物超電導導体の生産効率をこれまで以上に高めることが困難な問題がある。
また、PLD装置は、レーザ用ガスとして用いる希ガスが経時劣化するため、その運転時間を数十時間程度に抑える必要があり、連続成膜を長時間行うことができない。このため、キャップ層103の成膜長をこれまで以上に長尺化するのが難しい問題がある。
さらに、レーザ発振器は、それ自体が非常に高価であるとともに、レーザ用ガスとし用いる希ガスも極めて高価である。このため、キャップ層103の形成方法としてPLD法を用いると、酸化物超電導導体の製造コストの増大を招いてしまう。
本発明は、酸化物超電導層とキャップ層と中間層と基材を具備してなる酸化物超電導導体を製造するに際し、配向度の高いキャップ層を長尺状に形成することができるとともに、キャップ層の形成に要する時間の短縮化及びコストの低減を図ることにより、酸化物超電導導体を生産性よく製造することができる酸化物超電導導体用基材の製造方法、これを用いる酸化物超電導導体の製造方法と酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために以下の構成を有する。
本発明の酸化物超電導導体用基材の製造方法は、基材と、該基材上にイオンビームアシスト(IBAD)法により蒸着した中間層と、該中間層上に形成したキャップ層とを備え、該キャップ層上に酸化物超電導層が形成される酸化物超電導導体用基材を製造するに際して、前記キャップ層を、金属ターゲットを用いる反応性DCスパッタ法によって形成することを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体用基材の製造方法は、前記キャップ層を形成する際、前記基材を500〜800℃に加熱することを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体用基材の製造方法は、前記キャップ層を形成する成膜空間に導入するガスを、キャリアガスと酸素ガスよりなる混合ガスとし、前記混合ガスの酸素濃度を5〜50%とすることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体用基材の製造方法は、前記キャップ層をCeOとすることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体の製造方法は、前記の如く得られたキャップ層上に酸化物超電導層を成膜することを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置は、長尺状の基材と、該基材上にイオンビームアシスト(IBAD)法により蒸着した中間層とを有するIBAD基材と、該IBAD基材の前記中間層上に形成したキャップ層と、該キャップ層上に形成した酸化物超電導層とを備える酸化物超電導導体の前記キャップ層を形成する酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置であって、前記IBAD基材が走行する走行系と、前記IBAD基材を送り出す基材送出手段と、前記走行系から排出される前記IBAD基材を巻取る基材巻取手段と、前記走行系を走行する前記IBAD基材の前記中間層表面と対向して配設された金属ターゲットと、前記金属ターゲットに直流電圧を印加する電源と、前記IBAD基材と前記金属ターゲットとの間に、キャリアガス及び反応ガスを供給するガス供給手段とを備え、前記IBAD基材の前記中間層上に、反応性DCスパッタ法によって前記キャップ層を形成することを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置は、前記キャップ層を形成中のIBAD基材を500〜800℃に加熱する加熱手段を有することを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置は、前記走行系としてIBAD基材の走行に往路と復路を形成する走行系を設け、前記金属ターゲットを少なくとも2つ備え、このうち1つのターゲットは、前記往路を走行する前記IBAD基材の前記中間層表面と対向して配設され、他の1つのターゲットは、前記復路を走行する前記IBAD基材の前記中間層表面と対向して配設したことを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置は、前記走行系として対になるリールの間に往路と復路とを具備するレーストラック状の走行路を複数、相互に離間して並設した走行系を構成し、前記往路が複数並設された領域に対向して往路用のターゲットを設置し、前記復路が複数併設された領域に対向して復路用のターゲットを設置するとともに、前記往路と復路の間の領域に前記往路を走行する基材と前記復路を走行する基材を加熱可能な加熱手段を設けたことを特徴とする。
本発明では、キャップ層と中間層と基材とを具備してなる酸化物超電導導体用基材、及び、この酸化物超電導導体用基材のキャップ層上に酸化物超電導層が形成された酸化物超電導導体を製造するに際して、キャップ層を反応性DCスパッタ法によって形成する。
反応性DCスパッタ法では、ターゲットはイオン照射によってスパッタし得るものであればよく、金属ターゲットを用いることができる。金属ターゲットは、酸化物ターゲットに比べて割れ難いため、取り扱いを容易に行うことができ、また、破損によって無駄になる可能性が低い。このため、DCスパッタ法により高い成膜レートでキャップ層を形成することにより、酸化物超電導導体用基材及び酸化物超電導導体の製造コストの低減を図る上で有利である。
また、反応性DCスパッタ法で用いられる直流電源は、スパッタ電極に高出力(2kW〜16kW程度)を容易に供給することができるので、ターゲットのスパッタ効率を容易に上げることができる。このため、反応性DCスパッタ法では、PLD法に比べて大きな成膜レートを得ることができ、IBAD基材を比較的高速で走行させつつ、キャップ層を十分な膜厚で形成することができる。その結果、酸化物超電導導体用基材及び酸化物超電導導体の生産性の向上を図ることができる。
また、反応性DCスパッタ法では、このように成膜レートが大きいことにより、スパッタ膜が選択成長する過程で、その結晶粒を面方向に高速で粒成長できるため、より面内配向度に優れたキャップ層を形成することができる。このようなキャップ層上に酸化物超電導体を成膜すると、面内配向度の高いキャップ層の結晶配向に整合するように酸化物超電導層がエピタキシャル成長するため、面内配向性に優れ、臨界電流密度の大きな酸化物超電導層を得ることができる。
さらに、反応性DCスパッタ法では、レーザ発振器のような高価な部品を用いず、使用するガスもArや酸素ガスであるため、運転費用・メンテナンス費用が低額で済む。このため、酸化物超電導導体用基材及び酸化物超電導導体の製造コストの低減を図る上で有利である。
また、この反応性DCスパッタ法は、PLD法のようなガス劣化の問題がなく、長時間運転が可能である。このため、キャップ層を、長時間に亘って連続成膜することができ、長尺状のキャップ層を容易に形成することができる。その結果、酸化物超電導導体用基材及び酸化物超電導導体の長尺化を図ることができる。
本発明の実施の形態について、以下説明する。
<<酸化物超電導導体用基材及び酸化物超電導導体>>
まず、本発明の製造方法によって製造される酸化物超電導導体用基材及び酸化物超電導導体について説明する。
図1は、本発明の製造方法によって製造される酸化物超電導導体用基材及び酸化物超電導導体の概略縦断面構造を示す。
図1に示すように、本発明の酸化物超電導導体用基材1は、金属基材2上に成膜した中間層3を備えたIBAD中間層3と、その上のキャップ層4とを備えた積層構造を有しており、本発明の酸化物超電導導体5は、この酸化物超電導導体用基材1のキャップ層4の上に、酸化物超電導層6を形成した基本構造とされている。なお、金属基材2の上に拡散防止層や下地層などを一端形成した上でIBAD中間層3を形成した構造について本願発明を適用することができる。
以下、前記各層を構成する材料について詳述する。
<金属基材>
金属基材2を構成する材料としては、強度及び耐熱性に優れた、Cu、Ni、Ti、Mo、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Ag等の金属又はこれらの合金を用いることができる。特に、好ましいのは、耐食性及び耐熱性の点で優れているステンレス、ハステロイ、その他のニッケル系合金である。あるいは、これらに加えてセラミック製の基材、非晶質合金の基材などを用いても良い。
<中間層>
中間層3は、IBAD法によって形成された蒸着膜であり、金属基材2と酸化物超電導層6との物理的特性(熱膨張率や格子定数等)の差を緩和するバッファー層として機能するとともに、この上に形成されるキャップ層4の配向性を制御する配向制御膜として機能する。
この中間層3を構成する材料としては、これらの物理的特性が金属基材2と酸化物超電導導体膜6との中間的な値を示すものが用いられる。このような中間層3の材料としては、例えば、イットリア安定化ジルコニウム(YSZ)、MgO、SrTiO、GdZr等を挙げることができ、その他、パイロクロア構造、希土類−C構造、ペロブスカイト型構造又は蛍石型構造を有する適宜の化合物を用いることができる。これらの中でも、中間層3の材料としては、YSZ、GdZr、あるいはMgOを用いることが好ましい。特に、GdZrやMgOは、IBAD法における配向度を表す指標であるΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、中間層の材料として特に適している。
中間層3の膜厚は、例えば、5〜2000nmの範囲、50〜1000nmの範囲から選択することができるが、これらの範囲に制限されるものではない。
中間層3の膜厚が1000nmを超えると、中間層3の成膜方法として用いるIBAD法の蒸着速度が比較的低速であることから、中間層3の成膜時間が長くなる。中間層3の膜厚が2000nmを超えると、中間層3の表面粗さが大きくなり、酸化物超電導導体5の臨界電流密度が低くなる可能性がある。
一方、中間層3の膜厚が5nm未満であると、中間層自身の結晶配向性を制御することが難しくなり、この上に形成されるキャップ層4の配向度制御が難しくなり、さらにキャップ層4の上に形成される酸化物超電導層6の配向度制御も難しくなる。その結果、酸化物超電導導体5は臨界電流が不十分となる可能性がある。
<キャップ層>
キャップ層4は、この上に設けられる酸化物超電導層6の配向性を制御する機能を有するとともに、酸化物超電導層6を構成する元素の中間層3への拡散や、成膜時に使用するガスと中間層3との反応を抑制する機能などを有する。
キャップ層4としては、中間層3の表面に対してエピタキシャル成長し、その後、横方向(面方向)に粒成長(オーバーグロース)して、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て成膜されたものであるものが好ましい。このように選択成長しているキャップ層4は、中間層3よりも高い面内配向度が得られる。
キャップ層4を構成する材料としては、このような機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、例えば、CeO、Y、Al等を用いるのが好ましい。
キャップ層4の構成材料としてCeOを用いる場合、キャップ層4は、全体がCeOによって構成されている必要はなく、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいてもよい。
キャップ層4の適正な膜厚は、その構成材料によって異なり、例えばCeOによってキャップ層4を構成する場合には、50〜5000nmの範囲、100〜5000nmの範囲などを例示することができる。キャップ層4の膜厚がこれらの範囲から外れると、十分な配向度が得られない場合がある。
本発明の製造方法では、このキャップ層4を金属ターゲットを用いる反応性DCスパッタ法によって形成するところに特徴がある。このキャップ層4の形成方法については後に詳述する。
<酸化物超電導層>
酸化物超電導層6の材料としては、RE−123系酸化物超電導体(REBaCu7−X:REはY、La、Nd、Sm、Eu、Gd等の希土類元素)を用いることができる。RE−123系酸化物として好ましいのは、Y123(YBaCu7−X)又はGd123(GdBaCu7−X)等である。
<<酸化物超電導導体用基材及び酸化物超電導導体の製造方法>>
次に、本発明に係る酸化物超電導導体用基材の製造方法について説明する。
まず、長尺状の金属基材2を用意し、この金属基材2上に、IBAD法によって中間層3を形成する。以下では、この金属基材2上に中間層3が形成された積層体を「IBAD基材7」と称する。
次に、このIBAD基材7の中間層3上に、金属ターゲットを用いる反応性DCスパッタ法によってキャップ層4を形成する。以下、キャップ層4の形成に用いられるキャップ層形成装置について説明する。
<キャップ層形成装置>
図2は、本発明に係る一実施形態のキャップ層形成装置(酸化物超導電体用キャップ層の形成装置)を示す概略斜視図である。
図2に示すキャップ層形成装置10は、IBAD基材7を長手方向に走行させつつ、その中間層3上に、キャップ層4を走行方向に連続成膜することができる装置である。
このキャップ層形成装置10は、真空チャンバ(図2に符号Aで略記する)に収容される形態で設けられる成膜装置であり、IBAD基材7が走行する走行系11と、走行系11にIBAD基材7を送り出す送出リールなどの(基材送出手段)12と、走行系11から排出されるIBAD基材7を巻き取る巻取リールなどの(基材巻取手段)13と、IBAD基材7に対してキャップ層4を形成する第1の成膜系14及び第2の成膜系15と、IBAD基材7を加熱するヒータ(加熱手段)16とを備えている。
この形態で用いる真空チャンバAは、外部と成膜空間とを仕切る容器であり、気密性を有するとともに、内部が高真空状態とされるため耐圧性を有するものとされる。この真空チャンバには、真空チャンバ内にキャリアガス及び反応ガスを導入するガス供給手段Bと、真空チャンバ内のガスを排気する排気手段Cが接続されているが、図2ではこれらガス供給手段Bと排気手段Cを略記している。
ガス供給手段Bは、キャリアガスと反応ガスとの混合ガスを供給するガス供給源と、ガス供給源と真空チャンバとを接続する配管と、配管の途中に設けられたマスフローコントローラ等よりなり、ガス供給源が供給する混合ガスを、マスフローコントローラによって流量調整しつつ真空チャンバA内に導入する。
キャリアガスとしては、不活性ガスであればよく、特に限定されないが、例えばアルゴンガスが使用される。
反応ガスとしては、目的とするキャップ層の組成に応じて適宜選択され、例えばCeO層のような酸化物層を成膜する場合には酸素ガスが使用される。
反応ガスとして酸素ガスを用いる場合、混合ガス中における酸素ガスの割合(容量比)は、5〜50%であるのが好ましく、10〜20%であるのがより好ましい。
反応ガスの割合が5%未満である場合には、成膜されるスパッタ膜の酸化度が低くなり、所望の機能を有するキャップ層4が得られない可能性がある。また、反応ガスの割合が50%より大きい場合には、その分、キャリアガスの割合が小さくなるため、DCスパッタを行う場合に生成するべきプラズマの質が悪くなり、各ターゲット14a、15bのスパッタ効率が低くなり、キャップ層4を十分な厚さで形成するには、IBAD基材7を比較的低速で走行させることが必要となる。その結果、酸化物超電導導体用基材1の生産性が低下するおそれがある。
排気手段Cは、真空ポンプと、真空ポンプと真空チャンバとを接続する配管、バルブ等よりなり、その真空ポンプの作動により、真空チャンバ内を減圧状態にしたり、キャップ層4を形成する際及びキャップ層4を形成した後、真空チャンバ内のガスを所定に流量で排気する。
送出リール12及び巻取リール13は、互いに離間して配置されている、各リール12、13には、それぞれ、長尺状のIBAD基材7の端部が取り付けられており、初期状態においては、送り出しリール12の方にIBAD基材7が巻回されている。また、送出リール12と巻取リール13の間のIBAD基材7は、後述する走行系11の第1のロール17及び第2のロール18に複数周(本実施形態では7周)掛け渡されている。
本実施形態の装置において走行系11は、対向して配置された第1のロール17及び第2のロール18を有する。
第1のロール17は、送出リール12と巻取リール13との間に設けられ、第2のロール18は、第1のロール17と離間して対向配置されている。この形態において第1のロール17と第2のロール18はそれらの回転中心軸を鉛直向きとしてそれらのロール周面を横向きにして配置され、第1のロール17の周面と第2のロール18の周面にはテープ状のIBAD基材7が、これらの間を複数ターン相互に離間しながら周回するように巻き付けられ、この周回されたIBAD基材7は、中間層3の表面を外周側にして複数周(図2の例では7周)、各周がレーストラック状になるように並設した状態で掛け渡されている。
この例の走行系11では、送出リール12から送り出されるIBAD基材7が、第1のロール17の周面上に供給され、第1のロール17及び第2のロール18にガイドされて各周においてレーストラック状に複数周走行した後、巻取リール13に巻き取られるようになっている。この際、IBAD基材7には、レーストラック状に走行している間、第1の成膜系14及び第2の成膜系15によって、それぞれ、ターゲット物質と反応ガスとの化合物膜(スパッタ膜)が成膜される。
第1の成膜系14及び第2の成膜系15は、それぞれ、ガス供給手段によって導入される混合ガスを用いて、IBAD基材7の中間層3上にキャップ層4を形成する。
第1の成膜系14は、第1のロール17側から第2のロール18側に向かう直線経路[順方向(図2中A方向)の往路]を走行するIBAD基材7の中間層3表面と対向するように配設された第1のターゲット(金属ターゲット)14aと、第1のターゲット14に直流電圧を印加する第1の直流電源(図示せず)とを備え、第2の成膜系15は、第2のロール18側から第1のロール17側に向かう直線経路[逆方向(図2中B方向)の復路]を走行するIBAD基材7の中間層3表面と対向するように配設された第2のターゲット(金属ターゲット)15aと、第2のターゲット15aに直流電圧を印加する第2の直流電源(図示せず)が備えられている。
第1のターゲット14a及び第2のターゲット15aは、それぞれ、矩形板状をなし、目的とするキャップ層4の金属成分に応じた金属材料によって構成されている。
各成膜系14、15では、それぞれ、各直流電源によって第1のターゲット14a及び第2のターゲット15bに直流電圧が印加されると、第1のターゲット14aとIBAD基材7との間、及び、第2のターゲット15aとIBAD基材7との間に電位差が生じる。これにより、これら空間に供給されたガスが活性化(電離、イオン化、励起等)されてプラズマが発生する。そして、このプラズマ中に生成されたキャリアガスのイオンが、各ターゲット14a、15bに衝突し、各ターゲット14a、15bからターゲット物質(スパッタ粒子)が弾き出される。弾き出されたスパッタ粒子は活性化された反応ガスと反応し、IBAD基材7の表面に堆積して化合物膜を形成する。ここで化合物膜が自己配向するものである場合は、その成膜面に堆積する過程で、まず、結晶粒が各結晶軸を配向させてエピタキシャル成長し、その後、横方向(面方向)に結晶粒が急速に粒成長(オーバーグロース)して、結晶粒が面内方向に粗大化して選択成長する。このため、形成されるスパッタ膜は、その下地の成膜面の結晶構造よりも高い面内配向度を示す。
ヒータ(加熱手段)16は、第1のロール17と第2のロール18との間(走行系11の内側)に配設されており、順方向の直線経路を走行する往路のIBAD基材7及び逆方向の直線経路を走行する復路のIBAD基材7をそれらの背面側から目的の温度、例えば、500〜800℃に直接加熱することができる。
次に、上述のキャップ層形成装置の動作について説明する。
まず、排気手段が備える真空ポンプの作動により、真空チャンバ内を所定の減圧状態とする。次に、ガス供給手段を用いて、真空チャンバ内に、キャリアガスと反応ガスとの混合ガスを供給する。
また、回転駆動手段の作動により、各ロール17、18及び各リール12、13を、それぞれ、回転駆動する。これにより、送出リール12に巻回されているIBAD基材7を、第1のロール17の周面上に送り出す。この送り出されたIBAD基材7は、走行系11をレーストラック状に複数周走行した後、巻取リール13に巻き取られる。
次に、ヒータ16の作動により、走行系11を走行するIBAD基材7を加熱する。
ここで、IBAD基材7の加熱温度は、500〜800℃であることが好ましく、600〜700℃の範囲であることがより好ましい。IBAD基材7をこの温度範囲で加熱することにより、中間層3の表面に、ターゲット物質と反応ガスとの化合物膜を高速かつ高配向性でエピタキシャル成長させることができる。
次に、第1の直流電源及び第2の直流電源により、第1のターゲット14a及び第2のターゲット15bに電圧を印加する。これにより、第1のターゲット14aとIBAD基材7との間に供給されたガス、及び、第2のターゲット15aとIBAD基材7との間に供給されたガスを、それぞれ、活性化(電離、イオン化、励起等)させてプラズマを発生させる。そして、このプラズマ中に生成されたキャリアガスのイオンが、各ターゲット14a、15bに衝突し、各ターゲット14a、15bからターゲット物質(スパッタ粒子)が弾き出される。弾き出されたターゲット物質は活性化された反応ガスと反応し、IBAD基材7の中間層3表面に堆積する。これにより、ターゲット物質と反応ガスとの化合物膜(スパッタ膜)を成膜することができる。
ここで、本実施形態では、2つの成膜系14、15を有するため、IBAD基材7には、走行系11を1周走行する度に、その中間層3上に、2層のスパッタ膜を積層形成することができる。
さらに、IBAD基材7は、走行系の2周目〜7周目を走行する。各周回を走行する度に、IBAD基材7は、第1のターゲット14aと対向する領域及び第2のターゲット15aと対向する領域を通過し、各領域を通過する度に、その表面上にターゲット物質と反応ガスとの化合物膜(第2のスパッタ膜〜第14のスパッタ膜)が成膜される。以上の過程により、走行系11を走行したIBAD基材7には、最終的に、第1のスパッタ膜〜第14のスパッタ膜の積層膜としてキャップ層4が形成される。
そして、キャップ層4が形成されたIBAD基材7は、巻取りリール13に巻き取られ、回収される。
以上の工程により、金属基材2上に中間層3及びキャップ層4を積層形成した酸化物超電導導体用基材1が得られる。
このようにして製造された酸化物超電導導体用基材1は、キャップ層4が高度な面内配向性を有している。このため、このキャップ層4上に酸化物超電導層6を成膜すると、面内配向度の高いキャップ層4の結晶配向に整合するように酸化物超電導層6がエピタキシャル成長するため、面内配向性に優れ、臨界電流密度の大きな酸化物超電導層6を得ることができる。
また、この実施形態のキャップ層形成装置10では、反応性DCスパッタ法によって中間層3上にキャップ層4を形成するので、ターゲットはイオン照射によってスパッタし得るものであればよく、金属ターゲットを用いることができる。金属ターゲットは、酸化物ターゲットに比べて割れ難いため、取り扱いを容易に行うことができ、また、破損によって無駄になる可能性が低い。このため、酸化物超電導導体用基材1の製造コストの低減を図る上で有利である。
また、反応性DCスパッタ法で用いられる直流電源は、スパッタ電極(第1のターゲット14a及び第2のターゲット15a)に高出力(2kW〜16kW程度)を供給することが容易にでき、ターゲットのスパッタ効率を容易に向上させることができる。このため、このキャップ層形成装置10では、PLD装置に比べて大きな成膜レートを得ることができるので、IBAD基材7を比較的高速で走行させつつ、キャップ層4を十分な膜厚で形成することができる。その結果、酸化物超電導導体用基材1の生産性の向上を図ることができる。
また、反応性DCスパッタ法では、このように成膜レートが大きいことにより、各スパッタ膜が中間層3に対し自己配向する過程で、その結晶粒を面方向に高速で粒成長させてスパッタ膜を生成できる。このため、より面内配向度に優れたキャップ層4を形成することができる。
さらに、このキャップ層形成装置10は、レーザ発振器のような高価な部品を用いていないためレーザ蒸着装置よりも安価に入手できる装置であり、使用するガスも、Arや酸素ガスであるため運転費用・メンテナンス費用も低額で済む。このため、酸化物超電導導体用基材1の製造コストの低減を図る上で有利である。
また、このキャップ層形成装置10では、PLD装置のようなガス劣化の問題がなく、長時間運転が可能である。このため、キャップ層4を、長時間に亘って連続成膜することができ、長尺の基材2上にキャップ層4を容易に形成することができる。その結果、酸化物超電導導体用基材1の長尺化を図ることができる。
そして、本発明の酸化物超電導導体の製造方法では、このようにして製造された酸化物超電導導体用基材1のキャップ層4上に酸化物超伝導体膜6を形成し、酸化物超電導導体5を得る。
酸化物超電導層6は、通常の成膜法によって成膜することができるが、生産性の点からPLD方、CVD法等を用いることが好ましい。
ここで、前述のように製造された酸化物超電導導体用基材1では、キャップ層4が高い面内配向度を有していることにより、面内配向度の高いキャップ層4の結晶配向に整合するように酸化物超電導体がエピタキシャル成長し、面内配向性に優れた酸化物超電導導体膜6が成膜される。その結果、臨界電流密度の大きな酸化物超電導導体5が得られる。
また、前述のように、酸化物超電導導体用基材1は低いコストで効率よく製造することができるため、酸化物超電導導体5の製造に際しても、酸化物超電導導体用基材1によって構成される部分は低いコストで効率良く製造することができる。その結果、酸化物超電導導体5を生産性良く製造することができる。
なお、前記実施の形態において、酸化物超電導導体用基材1の製造方法及び酸化物超電導導体5の製造方法の各工程、酸化物超電導導体用キャップ層4の形成層を構成する各部材は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
以下に、本発明の具体的実施例について説明するが、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<キャップ層の形成方法の評価>
(実施例1)
まず、長尺テープ状のハステロイ金属基材上に、IBAD法により厚さ1μmのGdZr膜(GZO中間層)を形成した。このGZO中間層のX線回折法で測定されたΔΦは15°であった。
次に、このGZO中間層上に、図2に示すキャップ層形成装置を用いて厚さ0.2μmのCeO層(キャップ層)を形成した。CeO層の成膜条件は以下の通りである。
ターゲット:金属セリウム、ターゲットの数:1、直流電源の出力:2kW、IBAD基材の走行速度:150m/h、IBAD基材の温度:600℃、混合ガスに含まれる酸素ガスの濃度:10%。以上の条件により、超電導導体用基材を製造した。
(実施例2〜実施例9)
CeO層の成膜条件を表1に示すように変えた以外は、前記実施例1と同様にして、超電導導体用基材を製造した。
(比較例1)
厚さ0.5μmのCeO層をPLD法によって形成した以外は、前記実施例1と同様にして、超電導導体用基材を製造した。CeO層の成膜条件は以下の通りである。
蒸着源:直径3cmのCeOペレット、蒸着源の数:1、レーザ:KrFエキシマレーザ、レーザ出力:0.3kW、レーザ密度:3J/cm、レーザ周波数:17Hz、IBAD基材の走行速度:60m/h、IBAD基材の温度:650℃、酸素ガス圧力:約4Pa。
(比較例2)
CeO層の成膜条件を表1に示すように変えた以外は、前記比較例1と同様にして、超電導導体用基材を製造した。
[評価]
各実施例及び各比較例で製造した超電導導体用基材について、CeO層の膜厚を測定するとともに、X線回折法によりΔΦ(FWHM:半値全幅)を測定した。ここで、ΔΦは、試料の面内配向度の指標となるものであり、この値が小さい程、面内配向度が高いことを意味する。この測定結果を、CeO層の成膜条件と併せて表1に示す。
Figure 0005297770
表1において、キャップ層の厚さが等しい実施例2、5、8と比較例1を対比し、実施例3、6、9と比較例2を対比し、それぞれ比較すると、各実施例で形成したキャップ層の方が、各比較例で形成したキャップ層よりも面内配向度が高いことがわかる。
このことから、キャップ層の形成方法として金属ターゲットを用いた反応性DCスパッタ法を用いることにより、PLD法を用いる場合に比べて、より面内配向度の高いキャップ層が得られることがわかった。
また、PLD法では、一般市販のものにおいて現状では出力0.3kWの装置が限界であり、また、レーザ発振器やこれに用いる希ガスが高価であることから、レーザ光源を増設するのが困難であり、このため、蒸着源も、その数を増やすのが難しい。
一方、反応性DCスパッタ法では、直流電源の出力及びターゲットの数を上述の例より容易に増大させることができる。
ここで、表1に示すように、ターゲットの数を2個とした実施例4〜実施例6、直流電源の出力を8kWとした実施例7〜実施例9では、比較例1及び比較例2よりも、IBAD基材を高速で走行させながら、これら各比較例と同じ膜厚で同等の結晶配向性のキャップ層を形成することができる。
すなわち、反応性DCスパッタ法を用いると、直流電源の出力及びターゲットの数を増大させることができるため、PLD法を用いる場合よりも、IBAD基材を高速で走行させながら所望の厚さの、目的の結晶配向性のキャップ層を形成することができる。このことから、キャップ層の形成方法として反応性DCスパッタ法を用いることにより、超電導導体用基材の生産性の向上を図ることができることがわかった。
<反応性DCスパッタ法における酸素濃度の検討>
実験例1〜実験例9
CeO層を形成する際、混合ガスの酸素濃度を表2に示すように変えた以外は、前記実施例1と同様にして超電導導体用基材を製造した。
[評価]
各実験例で製造した超電導導体用基材について、CeO層の厚さ及び面内配向度(ΔΦ)を測定した。その結果を、CeO層の成膜条件と併せて表2に示す。
Figure 0005297770
表2に示すように、酸素濃度を3%未満とした実験例1で形成されたキャップ層は、部分的にCeOが形成できず、キャップ層としての機能が十分に得られないものと推測される。また、酸素濃度を20%より高くした実験例6、7では、形成されたCeO層の厚さが薄く、適正な厚さのキャップ層を形成するにはIBAD基材の走行速度をさらに遅くしなければならない。このことは、超電導導体用基材の生産性を現状以上に向上させる上で不利となるが、酸素濃度50%までは膜厚として適度な厚さを確保でき、濃度60%では膜厚が不純分となる傾向となった。O濃度を勘案すると、O濃度が低いとCeO層自体が形成できなくなる傾向があり、逆にO濃度が高すぎると面内配向性が低くなると推定できる。
これらのことから、キャップ層を反応性DCスパッタ法によって形成する際、混合ガスの酸素濃度は5〜50%とするのが好ましいことがわかった。この範囲の中でも10〜20%の範囲がより好ましいと思われる。
<キャップ層を成膜する際の基材温度の検討>
実験例10〜実験例16
CeO層を形成する際、IBAD基材の温度を表3に示すように変えた以外は、前記実施例1と同様にして超電導導体用基材を製造した。
[評価]
各実験例で製造した超電導導体用基材について、CeO層の厚さ及び面内配向度(ΔΦ)を測定した。その結果を、CeO層の成膜条件と併せて表3に示す。
Figure 0005297770
表3に示すように、IBAD基材の温度を500℃未満とした実験例10、11及び800℃より高くした実験例16で形成されたキャップ層は、面内配向度が低くなる傾向があり、キャップ層としての機能が不足になる傾向となるものと推定される。温度に関して言えば、低すぎるとCeOが形成できなくなり、高すぎると膜表面粗さが生じてエピタキシャル成長できなくなると推定できる。
これらのことから、キャップ層を反応性DCスパッタ法によって形成する際、IBAD基材の温度は500〜800℃とするのが好ましいことがわかった。
本発明の製造方法によって製造される酸化物超電導導体用基材及び酸化物超電導導体を示す概略縦断面図である。 本発明の酸化物超電導導体用基材及び酸化物超電導導体の各製造方法で用いられるキャップ層形成装置を示す概略斜視図である。 酸化物超電導導体の一般的な層構成を示す模式的な斜視図である。 中間層をIBAD法によって成膜する成膜装置を示す模式図である。 キャップ層をPLD法によって成膜する成膜装置を示す斜視図である。
符号の説明
1・・・酸化物超電導導体用基材、2・・・金属基材、3・・・中間層、4・・・キャップ層、5・・・酸化物超電導導体、6・・・酸化物超電導層、7・・・IBAD基材、10・・・キャップ層形成装置(酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置)11・・・走行系、12・・・送出リール(基材送出手段)、13・・・巻取リール(基材巻取手段)、14…第1の成膜系、14a・・・第1のターゲット(金属ターゲット)、15・・・第2の成膜系、15a・・・第2のターゲット(金属ターゲット)、16・・・ヒータ(加熱手段)、17・・・第1のロール、18・・・第2のロール。

Claims (9)

  1. 基材と、該基材上にイオンビームアシスト(IBAD)法により蒸着した中間層と、該中間層上に形成したキャップ層とを備え、該キャップ層上に酸化物超電導層が形成される酸化物超電導導体用基材を製造するに際して、
    前記キャップ層を、金属ターゲットを用いる反応性DCスパッタ法によって形成することを特徴とする酸化物超電導導体用基材の製造方法。
  2. 前記キャップ層を形成する際、前記基材を500〜800℃に加熱することを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導導体用基材の製造方法。
  3. 前記キャップ層を形成する成膜空間に導入するガスを、キャリアガスと酸素ガスよりなる混合ガスとし、前記混合ガスの酸素濃度を5〜50%とすることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物超電導導体用基材の製造方法。
  4. 前記キャップ層をCeOとすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物超電導導体用基材の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法により得られたキャップ層上に酸化物超電導層を成膜することを特徴とする酸化物超電導導体の製造方法。
  6. 長尺状の基材と、該基材上にイオンビームアシスト(IBAD)法により蒸着した中間層とを有するIBAD基材と、該IBAD基材の前記中間層上に形成したキャップ層と、該キャップ層上に形成した酸化物超電導層とを備える酸化物超電導導体の前記キャップ層を形成する酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置であって、
    前記IBAD基材が走行する走行系と、前記IBAD基材を送り出す基材送出手段と、前記走行系から排出される前記IBAD基材を巻取る基材巻取手段と、前記走行系を走行する前記IBAD基材の前記中間層表面と対向して配設された金属ターゲットと、
    前記金属ターゲットに直流電圧を印加する電源と、前記IBAD基材と前記金属ターゲットとの間に、キャリアガス及び反応ガスを供給するガス供給手段とを備え、
    前記IBAD基材の前記中間層上に、反応性DCスパッタ法によって前記キャップ層を形成することを特徴とする酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置。
  7. 前記キャップ層を形成中のIBAD基材を500〜800℃に加熱する加熱手段を有することを特徴とする請求項6に記載の酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置。
  8. 前記走行系としてIBAD基材の走行に往路と復路を形成する走行系を設け、前記金属ターゲットを少なくとも2つ備え、このうち1つのターゲットは、前記往路を走行する前記IBAD基材の前記中間層表面と対向して配設され、他の1つのターゲットは、前記復路を走行する前記IBAD基材の前記中間層表面と対向して配設したことを特徴とする請求項6または7に記載の酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置。
  9. 前記走行系として対になるリールの間に往路と復路とを具備するレーストラック状の走行路を複数、相互に離間して並設した走行系を構成し、前記往路が複数並設された領域に対向して往路用のターゲットを設置し、前記復路が複数併設された領域に対向して復路用のターゲットを設置するとともに、前記往路と復路の間の領域に前記往路を走行する基材と前記復路を走行する基材を加熱可能な加熱手段を設けたことを特徴とする請求項8に記載の酸化物超電導導体用キャップ層の形成装置。
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