JP5291568B2 - 鋼板成形品の耐遅れ破壊性の評価方法 - Google Patents
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Description
本発明の第1の実施形態に係る評価方法について説明する。本実施形態に係る評価方法は、図1に示すように、遅れ破壊を発生させるために試験片に水素を導入する試験片水素導入工程(ステップS1)と、試験片中の水素量を測定する試験片水素量測定工程(ステップS2)と、試験片の結晶粒の歪みを測定する試験片結晶粒歪み測定工程(ステップS3)と、試験片中の水素量及び結晶粒の歪みの対応関係を求めて遅れ破壊が発生する条件を抽出する遅れ破壊条件導出工程(ステップS4)と、鋼板成形品の結晶粒の歪みを測定する成形品結晶粒歪み測定工程(ステップS5)と、遅れ破壊が発生する条件に基づいて遅れ破壊が発生する水素量を推定する遅れ破壊水素量推定工程(ステップS6)と、を主な構成として有している。
本工程は、様々な成形加工が施された複数の試験片に水素を導入し、当該試験片に人為的に遅れ破壊を発生させる工程である。このように、予め複数の試験片を用いて遅れ破壊性を調査することで、遅れ破壊が発生する際の鋼材中の水素量、鋼材組織内における結晶粒の歪み等の見本・基準となるデータを得ることができる。本工程をより詳細に説明すると、以下の通りである。
試験片は、前記したように耐遅れ破壊性を評価するための見本・基準となるデータを得るためのものであるため、多様な条件で成形加工して作成することが好ましい。本実施形態に係る評価方法では、例として、3種の組成及び、プレス加工における4種の代表的な加工区分からなる試験片を作成するが、これ以上の組成・加工区分を用いることももちろん可能である。
次に、水素導入手段によって各試験片を構成する鋼材中に人為的に水素を導入する。この際、遅れ破壊特性は鋼材の残留応力の影響も受けるため、残留応力が互いに異なる複数の試験片を使用する。なお、試験片に与える残留応力と、鋼板成形品の評価部位の残留応力とを一致させる必要はなく、耐遅れ破壊性の評価は可能である。
本工程は、遅れ破壊が発生する際の試験片に含有される水素量と、結晶粒の歪み(加工歪み)を測定する工程である。本工程は、試験片水素量測定工程と、試験片結晶粒歪み測定工程と、試験片残留応力測定工程とに分けることができ、どちらの工程を先に行なっても構わない。またこれらの工程では、試験片測定手段として、試験片水素量測定工程では水素量測定手段を、試験片結晶粒歪み測定工程では加工歪み測定手段を、試験片残留応力測定工程では、残留応力測定手段を用いる。以下、各工程について説明する。
本工程は、水素量測定手段によって試験片中の水素量を測定する工程である。すなわち、前記したいずれかの方法で、試験片に割れ(遅れ破壊)が発生するまで水素を導入し、割れが発生したことが確認できた時点で水素の導入を中止する。なお、割れの有無の判断は、試験片の割れが線として目視で確認できるか否かによって行なうが、その他にも、割れ部近傍に歪みゲージを貼り、その値の変化で割れを判定する方法や、割れ発生時に生じる電位変化によって割れを判定する方法等を用いても良い。
本工程は、試験片の組織内における結晶粒の加工歪みを、加工歪み測定手段によって測定する工程である。このように、試験片の組織内における結晶粒の歪みを測定することで、加工に伴う結晶粒の歪み、転位、欠陥の増加、結晶粒及び組織形態の崩壊等を加味した、より緻密な耐遅れ破壊性の評価が可能となる。従って、単純な丸棒形状への加工や単純な曲げ加工以外にも、材料流入(深絞り加工)や材料流出(伸びフランジ加工、張出し加工)が生じる縦壁部や、打ち抜き加工を施した打ち抜き孔近傍、複数回の曲げ−曲げ戻し加工を受けた部位の耐遅れ破壊性を正確に評価することができる。
EBSPとは、試験片表面に電子線を入射させたときに発生する反射電子から得られた菊池パターン(菊池線)のことであり、このパターンを解析することにより、電子線入射位置の結晶方位を決定することができるものである。また、菊池パターンとは、結晶に当たった電子線が散乱して回折された際に、白黒一対の平行線や帯状もしくはアレイ状に電子回折像の背後に現れるパターンのことを指す。
CIは、信頼性評価指数と呼ばれるパラメータであり、解析領域における結晶方位決定確度を示した数値である。結晶の方位決定は、与えられた結晶系の回折パターンと比較して最も一致する場合の方位を算出する。従って、方位決定の確度を信頼性評価指数(CI)として数値化(1〜0)することで、データの信頼性を統計的に評価することが可能となる。なお、CI値は、1に近いほど結晶方位決定確度が高く、0に近いほど結晶方位決定確度が低い。
IQは、EBSPの画像処理(ハフ変換)後の菊池パターンの強度に関する値で、測定部位における結晶の完全性をパラメータ化した数値である。結晶の完全性が高ければIQ値は高く、完全性が低ければIQ値は低くなる。IQ値の劣化は、解析領域におけるすべり線や転位セル境界における欠陥、弾性歪み場による結晶の完全性の低下等加工による因子に影響を受ける。なおIQは、EBSPにおける回折パターンの鮮明度を数値化したものであり、結果を示すマップではこの数値に対応して白(高)〜黒(低)のグラデーションで表示している。IQ分布はこの数値の分布状態を示しており、測定視野全体のIQ平均値を、加工によって組織に生じた変化の指標とした。
KAMは、局所的な方位変化に基づく歪分布を示すものであり、結果を示すマップにおいて、隣り合う6つのピクセル間の方位差の平均値によって表されるものである。前記した解析ソフトのOIMでは、ピクセル間の方位差を基準として、測定試験片の加工状況や内部の残留歪等に関連した特性を表現できないかを模索している。そして、ピクセル間に微小な角度変化がある場合は、結晶がその部分で加工による変形を受けており、残留歪に関連している、という仮定に基づいてマップを作図している。そこで、このマップにおけるピクセル間の方位差の平均を計算し、その平均値をKAM値として局所的な方位変化に基づく歪分布を表している。
本実施形態に係る評価方法では、前記したEBSPの他に、XRD(X線回折)によって鋼材中の結晶粒の歪みを直接測定することもできる。XRDは、X線が結晶格子によって回折される現象を利用して物質の結晶構造を解析する手法である。各試験片における歪みの測定部位としては、深絞り加工試験片(図2(a))は、縦壁部先端から10mm下の部分における鋼板表層部10、エリクセン試験片(同図(b))は、球形状頭頂部20、伸びフランジ試験片(同図(c))は、打ち抜き加工孔近傍30、U曲げ試験片(同図(d))は、曲げ加工の頭頂部40、である。
本実施形態に係る評価方法では、試験片残留応力測定工程をさらに行なうこともできる。試験片残留応力測定工程は、残留応力測定手段により、遅れ破壊が発生した試験片の残留応力を測定する工程である。ここで、残留応力とは、加工後の金属内部に残留する応力のことをいう。試験片の残留応力測定手段としては、XRDや歪みゲージを用いることができる。
本工程は、これまでの工程で測定した試験片中の水素量と、試験片の組織内における結晶粒の歪みと、試験片に付与された残留応力と、を対応付けた関係を用いて、試験片に遅れ破壊が発生すると推定される条件を導出する工程である。ここでは、遅れ破壊特性の評価対象となる鋼板成形品と同様に様々な成形加工が施された試験片から採取した測定データ、すなわち遅れ破壊が発生する際の水素量、結晶粒の歪み及び残留応力の関係を公知の算出手段を用いて関数化して対応関係を導出する。この工程により、遅れ破壊が発生する際の水素量と結晶粒の歪みと残留応力との対応関係を、水素量、結晶粒の歪み及び残留応力の3つの因子を変数として含む関数として得ることができる。
(4−1)成形品結晶粒歪み測定工程
本工程は、遅れ破壊特性の評価対象となる鋼板成形品において、評価部位の組織内における結晶粒の歪みを測定する工程である。鋼板成形品の結晶粒の歪みの測定は、前記試験片と同じ加工歪み測定手段(EBSP、XRD)を用いて行なう。
本工程は、遅れ破壊特性の評価対象となる鋼板成形品において、評価部位の組織内における残留応力を測定する工程である。鋼板成形品の残留応力の測定は、前記試験片と同じ加工歪み測定手段(XRD、歪みゲージ)を用いて行なう。
本工程は、遅れ破壊条件導出工程で導出した関係を用いて、成形品結晶粒歪み測定工程で測定した鋼板成形品の結晶粒の加工歪みまたは、それに加えて、成形品残留応力測定工程で測定した鋼板成形品の残留応力に対応した水素量を求め、遅れ破壊を発生させる水素量(鋼板成形品に蓄積することが予想される水素量)を推定する工程である。
本実施形態に係る評価方法では、各工程で求めた値、関係を元に、耐遅れ破壊性評価マップを作成することもできる。耐遅れ破壊性評価マップを作成することにより、耐遅れ破壊性をより視覚的に評価することができる。
まず、図5(a)に示すように、試験片測定工程で測定した遅れ破壊が発生する際における試験片中の水素量、結晶粒の歪み及び残留応力を3次元グラフに▲でプロットし、各点を結び、図に濃い色で示された遅れ破壊発生境界領域8を作成する。ここで、遅れ破壊発生境界領域8とは、遅れ破壊が発生する条件を視覚的に示したものであり、鋼板成形品中の水素量がこの領域内にあるか、あるいは、この領域よりZ軸方向における上方にあれば(水素量が多ければ)、遅れ破壊が発生すると考えることができる。なお、図5(a)では測定した試験片を9個とし、9点を▲でプロットしているが、より多くの測定値をプロットしても構わない。
次に、図5(c)に示すように、成形品測定工程で測定した鋼板成形品中の評価部位における結晶粒の歪み及び残留応力、ならびに、鋼板成形品に蓄積することが予想される水素量に対応する点を3次元グラフにプロットする。ここで、○のプロット点は、鋼板成形品の測定値が、遅れ破壊発生境界領域8及び遅れ破壊推定境界領域9の内部に含まれず、かつ、これらの領域のZ軸方向における下方に位置することを示している。すなわち、遅れ破壊が発生しない鋼板成形品の測定値を示している。なお、○のプロット点は、図上において遅れ破壊発生境界領域8または遅れ破壊推定境界領域9に含まれるように見える場合であっても、実際にはこれらの領域の下に位置している。
本発明の第2の実施形態に係る評価方法について説明する。本実施形態に係る評価方法は、図1のステップS1〜S4については前記した第1の実施形態と同じである。従って、ステップS4以降について説明する。
本実施例で用いる試験片及び鋼板成形品を構成する鋼板としては、表1に示す1180〜1470MPa級の強度レベルを有する3種類の鋼板(A〜C鋼)を用いた。なお3種の鋼板は、従来公知の方法を用いて製造した。
A〜C鋼をプレス加工した鋼板成形品(以下、プレス成形品という)において、加工によって鋼板が受ける材料組織の変化を模擬するため、前記した図2(a),(b),(d)に示す試験片を作成した。すなわち、A〜C鋼ごとに(a)深絞り加工試験片、(b)エリクセン試験片、(d)U曲げ試験片、の3種類を作成した。ここで、後記する比較例1では、従来の評価方法(曲げ半径に着目した評価方法)との比較のために、(d)の試験片のみを使用した。一方、後記する実施例1〜4では、本発明に係る評価方法の効果を示すために、(a),(b),(d)の3種類の試験片を使用した。各試験片の詳細な作成方法は以下の通りである。
各試験片に対する水素の導入法については、試験時間及び鋼材中水素量を容易に制御することができるという観点から、陰極チャージを用いた。陰極チャージの条件については、試験溶液を0.5M−H2SO4+0.01M−KSCNとし、0.1mA/mm2の電流密度で試験片に割れ(遅れ破壊)が発生するまで電流を印加した。
割れ部分を含むように試験片を切り出した後、大気圧イオン化質量分析計(API−MS)で鋼材中の水素量を測定した。大気圧イオン化質量分析計の昇温速度は、12℃/minとした。
(a),(b),(d)の各試験片について、XRDによって残留応力を測定した。また、割れ(遅れ破壊)が発生した各試験片に対して、EBSPによる結晶粒の歪みの組織解析(CI≦0.1となる面積率の評価、IQ、KAM)及び、XRDによる結晶粒の歪みの測定を行なった。なお、(d)U曲げ試験片については、加工後組織の解析例として、前記したように曲げ半径5mm−付加応力1500MPa、曲げ半径10mm−付加応力1000MPa、曲げ半径15mm−付加応力500MPaの3種類について解析を実施した。
次に、従来公知の製造方法を用いて、表1に記載の鋼板A〜Cから図6に示すような実際のプレス成形品101,102,103を作成した。図6(a)のプレス成形品101は、表1のA鋼を形状イにプレス加工したものである。また、図6(b)のプレス成形品102は、表1のB鋼を形状ロにプレス加工したものである。また、図6(c)のプレス成形品103は、表1のC鋼を形状ハにプレス加工したものである。
プレス成形品101,102,103は、その大きさから陰極チャージによる水素導入が困難なため、3%HCl溶液に100時間浸漬し、鋼材組織内に水素を導入した。そして、割れの有無を目視にて確認し、割れが確認された時点でプレス成形品101,102,103を3%HCl溶液から取り出し、大気圧イオン化質量分析計(API−MS)で部位1〜7中の水素量を測定した。その際の大気圧イオン化質量分析計の昇温速度は、12℃/minとした。
プレス成形品101,102,103の部位1〜7について、XRDによって残留応力を測定した。また、従来技術と本願発明との比較のために、従来公知の方法により、プレス成形品101,102,103の部位1〜7の曲げ半径を測定した。表3の「測定結果」の欄に、プレス成形品101,102,103の部位1〜7の水素量、割れの有無、残留応力、曲げ半径を測定した実測値を示す。なお、「割れの有無」の項目では、○は当該部位に割れが生じていないことを、×は当該部位に割れが生じていることを示している。
プレス成形品101,102,103の部位1〜7について、EBSPによる結晶粒の歪みの組織解析(CI≦0.1となる面積率の評価、IQ、KAM)及び、XRDによる結晶粒の歪みの測定を行なった。ここで、測定機器、測定方法、測定条件は、前記した試験片の場合と同様である。表3に測定結果を示す。
前記測定結果に基づいて、耐遅れ破壊性評価マップを作成した。具体的には、各試験片中の水素量、曲げ半径または結晶粒の歪み、残留応力を3次元グラフにプロットし、マトリクス状に各点を結び、遅れ破壊発生境界領域8を作成した。また、試験片中の水素量、曲げ半径または結晶粒の歪み、残留応力から求めた関数を元に、遅れ破壊発生境界領域8の外側に、遅れ破壊推定境界領域9を作成した。そして、鋼板成形品中の水素量、曲げ半径または結晶粒の歪み、残留応力を3次元グラフにプロットした。
図7は、従来の評価方法において、「曲げ半径」を耐遅れ破壊性の指標に用いた評価結果に基づいて作成した耐遅れ破壊性評価マップである。図7(a)、(b)、(c)において、X軸は曲げ半径、Y軸は残留応力、Z軸は水素量(拡散性水素量)である。ここで、図7(a)、(b)、(c)を参照すると、いずれのマップにおいても、○及び×の測定点の合計が、6つ以下であることが分かる。ここで、マップにおける○及び×の測定点は、プレス成形品101,102,103の部位1〜7に対応している。従って、「曲げ半径」を耐遅れ破壊性の指標として用いると、プレス成形品101,102,103の部位1〜7の一部の部位について、耐遅れ破壊性を適切に評価できないことがわかる。
図8は、本発明に係る評価方法において、「CI≦0.1となる面積率」を耐遅れ破壊性の指標に用いた評価結果に基づいて作成した耐遅れ破壊性評価マップである。図8(a)、(b)、(c)において、X軸はCI≦0.1となる面積率、Y軸は残留応力、Z軸は水素量(拡散性水素量)である。ここで、図8(a)、(b)、(c)を参照すると、いずれのマップにおいても、○及び×の測定点の合計が7つであることが分かる。従って、「CI≦0.1となる面積率」を耐遅れ破壊性の指標に用いることで、全ての部位の耐遅れ破壊性を評価できることが分かる。また、表3の「評価結果」の欄の「実施例1」の列を参照すると、いずれの評価結果においても、表3の「測定結果」と同様であることが分かる。従って、「CI≦0.1となる面積率」を耐遅れ破壊性の指標に用いた評価方法が、正確であることが分かる。
図9は、本発明に係る評価方法において、「IQ」を耐遅れ破壊性の指標に用いた評価結果に基づいて作成した耐遅れ破壊性評価マップである。図9(a)、(b)、(c)において、X軸はIQ、Y軸は残留応力、Z軸は水素量(拡散性水素量)である。ここで、図9(a)、(b)、(c)を参照すると、いずれのマップにおいても、○及び×の測定点の合計が7つであることが分かる。従って、「IQ」を耐遅れ破壊性の指標に用いることで、全ての部位の耐遅れ破壊性を評価できることが分かる。また、表3の「評価結果」の欄の「実施例2」の列を参照すると、いずれの評価結果においても、表3の「測定結果」と同様であることが分かる。従って、「IQ」を耐遅れ破壊性の指標に用いた評価方法が、正確であることが分かる。
図10は、本発明に係る評価方法において、「KAM」を耐遅れ破壊性の指標に用いた評価結果に基づいて作成した耐遅れ破壊性評価マップである。図10(a)、(b)、(c)において、X軸はKAM、Y軸は残留応力、Z軸は水素量(拡散性水素量)である。ここで、図10(a)、(b)、(c)を参照すると、いずれのマップにおいても、○及び×の測定点の合計が7つであることが分かる。従って、「KAM」を耐遅れ破壊性の指標に用いることで、全ての部位の耐遅れ破壊性を評価できることが分かる。また、表3の「評価結果」の欄の「実施例3」の列を参照すると、いずれの評価結果においても、表3の「測定結果」と同様であることが分かる。従って、「KAM」を耐遅れ破壊性の指標に用いた評価方法が、正確であることが分かる。
図11は、本発明に係る評価方法において、「XRD歪み(X線回折による結晶粒の歪み)」を耐遅れ破壊性の指標に用いた評価結果に基づいて作成した耐遅れ破壊性評価マップである。図11(a)、(b)、(c)において、X軸はXRD歪み、Y軸は残留応力、Z軸は水素量(拡散性水素量)である。ここで、図11(a)、(b)、(c)を参照すると、いずれのマップにおいても、○及び×の測定点の合計が7つであることが分かる。従って、「XRD歪み」を耐遅れ破壊性の指標に用いることで、全ての部位の耐遅れ破壊性を評価できることが分かる。また、表3の「評価結果」の欄の「実施例4」の列を参照すると、いずれの評価結果においても、表3の「測定結果」と同様であることが分かる。従って、「XRD歪み」を耐遅れ破壊性の指標に用いた評価方法が、正確であることが分かる。
2 部位
3 部位
4 部位
5 部位
6 部位
7 部位
8 遅れ破壊発生境界領域
9 遅れ破壊推定境界領域
10 鋼板表層部
20 球形状頭頂部
30 打ち抜き加工孔近傍
40 頭頂部
100 試験片
101 プレス成形品(A鋼−形状イ)
102 プレス成形品(B鋼−形状ロ)
103 プレス成形品(C鋼−形状ハ)
A 歪み
B ボイド
C セル壁
a 測定値
b 測定値
c 測定値
d 測定値
e 測定値
f 測定値
S1 試験片水素導入工程
S2 試験片水素量測定工程
S3 試験片結晶粒歪み測定工程
S4 遅れ破壊条件導出工程
S5 成形品結晶粒歪み測定工程
S6 遅れ破壊水素量推定工程
Claims (10)
- 鋼板成形品の耐遅れ破壊性の評価方法であって、
遅れ破壊が発生する際の鋼材に含有される水素量と、前記遅れ破壊が発生する際の鋼材の組織内における結晶粒の歪みと、を対応付けた関係を用いて、前記鋼板成形品の評価部位の組織内における結晶粒の歪みに対応した水素量を求めることで、前記評価部位に前記遅れ破壊を発生させる水素量を推定する遅れ破壊水素量推定工程を行なうことを特徴とする鋼板成形品の耐遅れ破壊性の評価方法。 - 鋼板成形品の耐遅れ破壊性の評価方法であって、
遅れ破壊が発生する際の鋼材に含有される水素量と、前記遅れ破壊が発生する際の鋼材の組織内における結晶粒の歪みと、を対応付けた関係を用いて、前記鋼板成形品の評価部位に含有される水素量に対応した結晶粒の歪みを求めることで、前記評価部位に前記遅れ破壊を発生させる結晶粒の歪みを推定する遅れ破壊結晶粒歪み推定工程を行なうことを特徴とする鋼板成形品の耐遅れ破壊性の評価方法。 - 前記遅れ破壊水素量推定工程において、
前記遅れ破壊が発生する際の鋼材に含有される水素量と、前記遅れ破壊が発生する際の鋼材の組織内における結晶粒の歪みと、前記遅れ破壊が発生する際の鋼材の残留応力と、を対応付けた関係を用いて、前記鋼板成形品の評価部位の組織内における結晶粒の歪み及び当該評価部位の残留応力に対応した水素量を求めることを特徴とする請求項1に記載の鋼板成形品の耐遅れ破壊性の評価方法。 - 前記遅れ破壊結晶粒歪み推定工程において、
前記遅れ破壊が発生する際の鋼材に含有される水素量と、前記遅れ破壊が発生する際の鋼材の組織内における結晶粒の歪みと、前記遅れ破壊が発生する際の鋼材の残留応力と、を対応付けた関係を用いて、前記鋼板成形品の評価部位に含有される水素量及び当該評価部位の残留応力に対応した結晶粒の歪みを求めることを特徴とする請求項2に記載の鋼板成形品の耐遅れ破壊性の評価方法。 - 前記遅れ破壊水素量推定工程または前記遅れ破壊結晶粒歪み推定工程の前に、
成形加工を施した試験片を作成し、当該試験片に遅れ破壊が発生するまで、その内部に水素を導入する試験片水素導入工程と、
前記遅れ破壊が発生する際における前記試験片の水素量及び結晶粒の歪みを測定する試験片測定工程と、
前記試験片測定工程で測定した前記試験片の水素量及び結晶粒の歪みを対応付けて、前記関係を導出する遅れ破壊条件導出工程と、
を行なうことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋼板成形品の耐遅れ破壊性の評価方法。 - 前記遅れ破壊水素量推定工程または前記遅れ破壊結晶粒歪み推定工程の前に、
成形加工を施した試験片を作成し、当該試験片に残留応力を付与するとともに、当該試験片に遅れ破壊が発生するまで、その内部に水素を導入する試験片水素導入工程と、
前記遅れ破壊が発生する際における前記試験片の水素量及び結晶粒の歪みを測定する試験片測定工程と、
前記試験片測定工程で測定した前記試験片の水素量及び結晶粒の歪み並びに前記試験片に付与された残留応力を対応付けて、前記関係を導出する遅れ破壊条件導出工程と
を行なうことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の鋼板成形品の耐遅れ破壊性の評価方法。 - 前記結晶粒の歪みは、EBSPにおける方位決定のCI(Confidence Index)が0.1以下となる面積率によって表されたものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の鋼板成形品の耐遅れ破壊性の評価方法。
- 前記結晶粒の歪みは、EBSPにおける方位決定のIQ(Image Quality)によって表されたものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の鋼板成形品の耐遅れ破壊性の評価方法。
- 前記結晶粒の歪みは、EBSPにおける方位決定のKAM(Kernel Average Misorientation)によって表されたものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の鋼板成形品の耐遅れ破壊性の評価方法。
- 前記結晶粒の歪みは、XRD(X-ray diffraction)によって測定される歪みによって表されたものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の鋼板成形品の耐遅れ破壊性の評価方法。
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