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JP5288153B2 - 糖アルコール誘導体およびアルケニル基含有糖アルコール誘導体の製造方法 - Google Patents

糖アルコール誘導体およびアルケニル基含有糖アルコール誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、糖アルコール誘導体の製造方法に関する。さらに詳しくは、水酸基を1個有するペンチトールジケタールまたはヘプチトールトリケタールを得る方法、及びアルケニル基を1個含有するペンチトールジケタール誘導体またはヘプチトールトリケタール誘導体を得る製造方法に関する。
1分子中に3個以上の奇数個の水酸基を有する多価アルコールは、ケタール化反応で隣接する水酸基を保護し、残った1個の水酸基に様々な官能基を導入することにより親水性の界面活性剤及び変性材料として使用することができる。多価アルコールとしては糖アルコール、グリセリン、ポリグリセリン等が用いられ、中でも糖アルコールを用いた誘導体はこれまでに界面活性剤やビニルモノマーとしての用途が提案されてきた。また、奇数個の水酸基を有する糖アルコールの偶数個の水酸基にケタール基を導入し、残った1個の水酸基をアリル基等のアルケニル基に置換した化合物は、共重合体原料や変性材料として利用できる。
これまでにケタール基含有化合物の製造方法は数多く提案されている。例えば、分子設計どおりに水酸基にケタール基を導入する方法として、パラトルエンスルホン酸等の触媒存在下で過剰のケトンを加えて反応させる方法が知られている。しかし、この反応は可逆反応であり、副生する水を系外へ留去しない限り、平衡状態に到達して反応はそれ以上進行しない。そこで、ケトンを大過剰量用いることに加え、トルエンや石油エーテル等の非極性溶媒を加えて溶媒還流中で反応を行い、油水分離管等にて水を分離することにより平衡状態になるのを抑制し、ケタール基含有化合物を得ている。しかし、この方法では大過剰量のケトンを使用しなくてはならないため、工業的に好ましくない。
また、酸性イオン交換樹脂を用いてアルコール溶媒の存在下でケタール基含有化合物を得る方法も知られている(例えば、特許文献1)。しかし、この方法においてもケトンを大過剰量必要とし、加えてケタール基置換率が低い。完全にケタール化されていないものは、次にアルケニル基を導入するときに、本来ケタール化されるべき水酸基までアルケニル基に置換されてしまうため、これを共重合体原料や変性原料として用いる場合、架橋して固化するなど好ましくない性能を引き起こす要因となり得る。
特開昭64−13080号公報
その他では硫酸銅とアセトンを用いたキシリトールのジイソプロピリデン化の方法が知られている(例えば、特許文献2)。しかし、この方法では反応が可逆反応で水が副生するため、アセトンを過剰量仕込むことで平衡状態への到達を抑制している。さらに、反応終了後に青色の硫酸銅を濾別しアセトンで洗浄を行うため、より過剰のアセトンが必要である。それに加えて、洗浄後に中和をしているため、操作が多段階に及び、それに伴う収率低下の問題がある。
特表2003−501519号公報
また、グリセリン及びポリグリセリンに、ケタール化剤となる化合物を理論当量に対して1.5〜4.0倍量使用し、さらに触媒としてのパラトルエンスルホン酸の使用量も一定範囲に調節することでジケタール体を得る方法が知られている(例えば、特許文献3)。しかし、この方法を糖アルコールに適用させようとすると、副生物である二量体の生成量が増加し、場合によっては増粘または固化してしまう恐れがある。二量体は、ケタール化に続く次の反応を行う際、反応に関与せずそのまま残存するため、好ましくない性能を引き起こす要因となり得る。
従って、高純度且つ高収率で効率良く糖アルコール誘導体を製造する方法はこれまでに見出されていなかった。
特開2001−261672号公報
本発明の課題は、ペンチトールジケタールまたはヘプチトールトリケタールを効率良く生成させ、未反応ペンチトール、未反応へプチトールなどの糖アルコール、ペンチトールモノケタール、ヘプチトールモノケタール、ヘプチトールジケタールなどの充分にケタール化されていない化合物及び二量体等の不純物の生成を低減させることである。
また、本発明の課題は、不純物の生成を低減させた、アルケニル基を1個有するペンチトールジケタール誘導体またはヘプチトールトリケタール誘導体の製造方法を提供することである。
本発明は、ペンチトールとヘプチトールとの少なくとも一方に式(1)で表される化合物を理論当量に対して1.2〜1.5倍量、酸触媒をペンチトールとヘプチトールとの合計量に対して5×10−6〜5×10−4モル比率で用いて反応させて、水酸基を1個有するペンチトールジケタールと水酸基を一個有するヘプチトールトリケタールとの少なくとも一方からなる糖アルコール誘導体を得ることを特徴とする。
Figure 0005288153
(式(1)において、R及びRは、それぞれ水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。R及びRは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
また、本発明は、前記のようにして得られた糖アルコール誘導体に、炭素数2〜5のアルケニルハライドをアルカリ触媒の存在下で反応させた後、酸またはアルカリ吸着能を有する吸着剤を用いてpHを5.0〜7.5に調整することを特徴とするアルケニル基含有糖アルコール誘導体の製造方法である。
本発明の方法により、不純物の生成を低減させて、高純度且つ高収率でペンチトールジケタールまたはヘプチトールトリケタールを得ることができる。併せて、不純物の生成を低減させて、高純度でアルケニル基を1個有するペンチトールジケタール誘導体またはヘプチトールトリケタール誘導体を得ることができる。
本発明のアルケニル基を1 個有するペンチトールジケタール誘導体またはヘプチトールトリケタール誘導体の製造方法について、以下に詳細に説明する。
本発明において、ケタール化反応に用いる糖アルコールとしては、ペンチトールやヘプチトールが用いられる。ペンチトールとは、五つの炭素をもつ糖アルコールであり、D−アラビトール、L−アラビトール、キシリトール、リビトールが挙げられる。へプチトールとは、七つの炭素を持つ糖アルコールであり、α−D−グルコヘプチトール、β−D−グルコヘプチトール、β−L−グルコヘプチトール、α−D−マンノヘプチトール、α−L−マンノヘプチトール、β−D−マンノヘプチトール、β−D−アルトロヘプチトール、β−L−アルトロヘプチトール、β−D−ガラヘプチトール、β−L−ガラヘプチトール、β−イドヘプチトール、β−イドヘプチトール、β−アロヘプチトール、α−D−アロヘプチトールが挙げられる。好ましくはD−アラビトール、L−アラビトール、キシリトール、リビトールであり、より好ましくはキシリトールである。これらは、天然物、合成物のいずれでもよく、また、単独で用いても2種以上の混合物で用いてもよい。
次に、本発明においては、ケタール化剤として、式(1)で表される化合物が用いられる。
Figure 0005288153
式(1)において、R及びRはそれぞれ水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。R及びRはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示す。但し、ここで、R、R、RおよびRが示す炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、これらは単独でも2種以上が混合したものでもよく、好ましくはメチル基、エチル基であり、より好ましくはメチル基である。
ペンチトールおよび/またはヘプチトールと、式(1)で表される化合物とを用いてケタール化反応を行う場合、用いられる式(1)で表される化合物の仕込み量は、理論当量に対して1.2〜1.5倍量であり、より好ましくは1.3〜1.5倍量であり、さらに好ましくは1.3〜1.4倍量である。
なお、理論当量とは、化学方程式上必要とされる式(1)の化合物の当量をいう。式(1)で表される化合物の理論当量は、ペンチトールに対して2当量、ヘプチトールに対して3当量である。具体的に説明すると、ペンチトールの場合、ペンチトール1 モルに対して式(1)で表される化合物の仕込み量は2.4〜3.0モルであり、より好ましくは2.6〜3.0モルであり、さらに好ましくは2.6〜2.8モルとなる。また、へプチトールの場合、ヘプチトール1モルに対して式(1)で表される化合物は3.6〜4.5モルであり、より好ましくは3.9〜4.5モルであり、さらに好ましくは3.9〜4.2モルとなる。原料にペンチトールAmolとヘプチトールBmolとが含まれている場合には、式(1)で表される化合物の仕込み量は、(2.4A+3.6B)〜(3.0A+4.5B)モルであり、より好ましくは(2.6A+3.9B)〜(3.0A+4.5B)モルであり、さらに好ましくは(2.6A+3.9B)〜(2.8A+4.2B)モルとなる。
式(1)で表される化合物の仕込み量が理論当量に対して1.2倍量より少ない場合、完全にケタール基に置換できず、ペンチトールの場合モノケタール体や未反応ペンチトールが、ヘプチトールの場合モノケタール体、ジケタール体、未反応ヘプチトールが残存する割合が多くなる。したがって、ケタール化されていない水酸基が多くなり、また、次のアルケニル化工程において1分子中にアルケニル基が複数個含まれた化合物の含有量が多くなる。これを更に共重合体原料や変性材料として用いる場合、架橋して固化するなど望ましくない性能を引き起こす要因となる恐れがある。一方、理論当量に対して1.5倍量を上回ると、過剰原料の回収に時間を要し効率的ではないことに加え、二量体が副生し、反応物は増粘または固化してしまう恐れがある。
このケタール化反応により、水酸基を1個有するペンチトールジケタール誘導体および/またはヘプチトールトリケタール誘導体が得られる。
なお、得られる水酸基を1個有するペンチトールジケタール誘導体は、下記に示す化合物(2)、(3)のように、残った水酸基の位置が異なる構造異性体や立体異性体の混合物として得られる。水酸基を1個有するヘプチトールトリケタール誘導体は、下記に示す化合物(4)、(5)のように、残った水酸基の位置が異なる構造異性体や立体異性体の混合物として得られる。いずれも、混合物をそのまま使用してもよく、蒸留等によりさらに高純度にしたものを使用してもよい。例えば、キシリトールを用いて上記のケタール化を行った場合、1,2,3,4−ジ−O−イソプロピリデン−DL−キシリトール(2)及び1,2,4,5−ジ−O−イソプロピリデン−DL−キシリトール(3)が約90:10の混合物で得られる。
Figure 0005288153

Figure 0005288153

Figure 0005288153

Figure 0005288153

(式(2)〜式(5)において、R及びRはそれぞれ水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。R及びRはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
ケタール化反応において使用する酸触媒としては、酢酸、塩酸、塩化亜鉛、塩化アンモニウム、リン酸、硝酸、硫酸、硫酸銅、パラトルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素エーテラート、五酸化二リン等の酸触媒が挙げられ、パラトルエンスルホン酸が特に好ましい。パラトルエンスルホン酸は無水物でも一水和物でもよい。酸触媒の使用量は、ペンチトールとヘプチトールとの合計量に対して、5×10−6〜5×10−4モル、より好ましくは7×10−6〜4×10−4モル、さらに好ましくは1×10−5〜3×10−4モルの比率である。酸触媒の使用量が5×10−6モルを下回ると、ケタール化反応が完全に進行しない。また、5×10−4モルを上回ると、反応副生物と過剰分の式(1)で表される化合物を回収中にケタール基の分解が起こり、また着色して色相が増加する。なお、反応に用いる式(1)で表される化合物は、いずれも中性であることが好ましい。
本発明の方法では、ケタール化反応における条件は特に制限はなく、状況に応じて適宜選定すればよいが、通常、反応温度は30〜90℃の範囲内で設定され、特に好ましくは60〜80℃である。反応温度が30℃未満になると、ペンチトールジケタールまたはヘプチトールトリケタールは高粘度のため、撹拌効率が低下する恐れがある。また、90℃を超えると、着色の原因となる場合がある。ケタール化反応後の副生物および過剰の式(1)の化合物の回収は、通常は常圧、不活性ガス気流下で行われるが、これらの化合物を完全に留去させるには、副生物および過剰の式(1)の化合物の留出が終了した時点で、減圧状態にしたのち、留去を行う。留出が継続している段階で減圧状態にすると、ケタール基が分解して、目的生成物のケタール基置換率が低下してしまうことがある。
本発明において用いられる酸触媒の使用量は極めて微量であるため、得られた水酸基を1個有するペンチトールジケタール誘導体またはヘプチトールトリケタール誘導体を、さらに別の反応用原料に用いる場合、中和処理や除去を行わなくても差し支えない。ただし、用途によっては触媒の失活や除去が必要な場合があるが、その場合には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど一般的に使用されるアルカリ中和剤や、酸吸着能を有する吸着剤を用いて処理を行うのが好ましい。酸吸着能を有する吸着剤の市販品としては、キョーワード100(MgO)、キョーワード300(2.5MgO・
Al・ xHO)、キョーワード500(MgAl(OH)16CO・4HO)、キョーワード600(2MgO・
6SiO・ xHO)、キョーワード1000(MgAl(OH)13CO・3.5HO)(協和化学工業(株)製)、トミックスAD−100(MgO:97.8%)、トミックスAD−500(MgO:37.4%、Al:17.2%、CO:8.1%)、トミックスAD−800(SiO: 42.1%、CaO:31.5%)(富田製薬(株)製)などを例示することができる。
さらに、本発明においては、上記ケタール化反応によって得られた水酸基を1個有するペンチトールジケタールまたはヘプチトールトリケタールと、アルケニルハライドとを、アルカリ触媒の存在下で反応させて、アルケニル基を1個有するペンチトールジケタール誘導体またはアルケニル基を1個有するヘプチトールトリケタール誘導体を製造する。
本発明の方法における水酸基を1個有するペンチトールジケタールまたはヘプチトールトリケタールのアルケニル化反応は、公知の技術を用いて行うことができ、具体的には水酸基を1個有するペンチトールジケタールまたはヘプチトールトリケタールに、アルカリ触媒の存在下アルケニルハライドを作用させる。
アルケニル化反応において用いるアルカリ触媒としては、金属ナトリウム、金属カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド等が挙げられる。これらは単一または2種以上の混合物でもよく、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。
アルケニル化反応において用いる末端アルケニル基含有ハロゲン化合物としては、直鎖または分岐の炭素数3〜5の末端アルケニル基を有するハロゲン化物を用いる。具体例としては、アリルクロライド、アリルブロマイド、アリルアイオダイド、メタリルクロライド、メタリルブロマイド、メタリルアイオダイド、3−ブテニルクロライド、3−ブテニルブロマイド、3−ブテニルアイオダイド、3−メチル−3−ブテニルクロライド、3−メチル−3−ブテニルブロマイド、3−メチル−3−ブテニルアイオダイド等が挙げられ、好ましくはアリルクロライド、メタリルクロライドである。
アルケニル化反応における反応温度は、60〜140℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。60℃よりも低いと反応速度が低下し、反応時間の増加やペンチトールジケタールまたはヘプチトールトリケタールの残存量増加の原因となり、140℃よりも高いと二重結合の内部転位が起こる原因となる。
アルケニル化反応終了後の精製は、公知の技術である過剰のアルケニルハライドを留去後、水を加え塩析により分層させて過剰のアルカリ触媒および無機塩を分離除去させる方法を用いる。塩析工程に用いる水の量は、アルケニル化反応において用いたアルカリ触媒100重量部に対して、200〜500重量部が好ましい。条件としては、温度が60〜100℃、20分〜4時間静置させるのが好ましく、水層と有機層が分層した後、水層の抜き操作を行う。
水層の抜き操作後の有機層には若干のアルカリ分が残っているため、中和が行われる。通常は酸による中和が行われるが、本発明における水酸基を1個有するペンチトールジケタールまたはヘプチトールトリケタールやアルケニル基を1個有するペンチトールジケタール誘導体またはヘプチトールトリケタール誘導体は、水などの存在下、強酸性領域ではケタール基が加水分解されてしまう。
そのため、本発明においては、酸またはアルカリ吸着能を有する吸着剤を用いて中和を行うが、pHを調整することでケタール基が分解されることなくアルカリ分の除去が可能となる。
本発明において用いる酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸等、ピバル酸、シュウ酸、塩酸、リン酸、硝酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸無水物、パラトルエンスルホン酸一水和物、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸等が挙げられ、塩酸、リン酸、酢酸が好ましい。また、アルカリ吸着能を有する吸着剤としては、アルカリ吸着能を有するものであれば各種のものが使用可能であり、例えば活性白土、合成ゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、マグネシアなどが挙げられる。本発明の方法に用いられる好適な吸着剤の市販品としては、キョーワード600(2Mg・6SiO・xHO)、キョーワード700(Al・9SiO・HO)(協和化学工業(株)製)、トミックスAD−300(MgO:13.2%、Al:31.0%、SiO:30.5%)、トミックスAD−600(MgO:14.2%、SiO:63.2%)、トミックスAD−700(Al:11.2%、SiO:68.0%)(富田製薬(株)製)等を例示することができる。これら用いる酸やアルカリ吸着能を有する吸着剤は、単一でも2種以上の混合物でもよい。また、酸については、そのまま用いてもよく、水等で希釈したものでもよい。
本発明において、pHは、好ましくは5.0〜7.5、より好ましくは5.3〜7.2、さらに好ましくは5.5〜7.0の範囲に調整するのが好ましい。pHが5.5を下回ると、ケタール基の分解が起こるので好ましくない。また、pHが7.5を超えると、アルカリ金属化合物が残存し、共重合体原料や変性材料として利用する際に副反応を引き起こしたり、末端二重結合の内部転位を引き起こしたりする原因となるので好ましくない。酸またはアルカリ吸着能を有する吸着剤による処理温度は、一義的には定められないが、通常は50〜100℃、好ましくは60〜90℃である。添加量については、残存するアルカリ触媒の量や種類により異なるが、原料仕込量に対し0.5〜5質量%の範囲を目安とすればよい。添加量が少なすぎると、アルカリ分を完全に中和することができず、一方、多すぎると、ケタール基が分解されてしまう恐れがある。アルカリ吸着能を有する吸着剤または酸による中和後、析出した塩や処理後の吸着剤を濾過または遠心分離などにより除去すればよい。
また、上記の方法により得られた水酸基を1個有するペンチトールジケタール誘導体またはヘプチトールトリケタールや、アルケニル基を1個有するペンチトールジケタール誘導体またはヘプチトールトリケタール誘導体は、蒸留等によりさらに純度を向上させることも可能である。
このようにして得られた水酸基を1個有するペンチトールジケタールまたはヘプチトールトリケタールおよびアルケニル基を1個有するペンチトールジケタール誘導体またはヘプチトールトリケタール誘導体は、未反応物や副生成物などの不純物の含有量の少ない高純度なものであり、共重合体原料や、変性材料として利用するために有用な材料である。
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、合成品の分析は下記に記す方法で行った。
(実験方法)
pH:JIS K−1557 6.9
動粘度:JIS K−2283
不飽和度:JIS K−1557 6.2
水酸基価:JIS K−1557 6.4
ガードナー色数:JIS K−6901 5.2
(ガスクロマトグラフィー(以下、GCと省略する)測定による純度測定方法)
サンプル:0.1wt%トルエン溶液
サンプル注入量:1μL
カラム:J&W 123−7033 DB−WAX(30m×320μm×0.5μm)
キャリヤーガス:He 3mL/min
カラム温度:160℃で30分後、240℃まで5℃/minで昇温
検出器:FID
純度:ケタール化後の純度については、10minおよび17minに観測される下記に示す化合物(6)および(7)の混合物の合計であり、アリルエーテル化後の純度については、8minおよび9minに観測される下記に示す化合物(8)および(9)の混合物の合計である。
Figure 0005288153

Figure 0005288153

Figure 0005288153

Figure 0005288153

(実施例1)
温度計、窒素ガス吹き込み管、かき混ぜ装置、冷却管および油水分離管を付した500ミリリットル容量の四ツ口フラスコにキシリトール(ヘプチトール)(和光純薬工業(株)試薬)126.8g、2,2−ジメトキシプロパン(式(1)の化合物)208.0g(関東化学(株)試薬)とパラトルエンスルホン酸一水和物4.8mg(関東化学(株)試薬)を仕込み、反応系内を窒素ガスで置換後60〜90℃に保持し、2時間ケタール化反応を行った。ケタール化反応終了後、副生したメタノールおよび過剰分の2,2−ジメトキシプロパンを常圧窒素気流下で加熱留去させ、留出物は冷却管、油水分離管を経由して凝縮後、回収した。留出物が止まったことを確認して、80〜100℃、−0.097MPa(ゲージ圧力)で1時間微量の副生物および過剰原料を除去し、ジイソプロピリデンキシリトール183.6gを得た。性状は室温で3日後でも液状であり、動粘度(25℃)は540mm/s、ガードナー色数は1以下、GC測定による純度は92%であった。
500ミリリットル容量の四ツ口フラスコに、上記のケタール化反応で得たジイソプロピリデンキシリトール102.5g、水酸化カリウム51.1g、アリルクロライド38.7gを仕込み、系中を窒素で置換した後、撹拌しながら120℃まで昇温し、3時間アリルエーテル化反応を行った。アリルエーテル化反応終了後、反応物を500mL分液ロートに移送し、水を添加して塩析を行い、水抜き操作後の有機層にキョーワード700(協和化学工業(株)製)を6.2g添加し、よく攪拌した。イソプロピルアルコール溶液のpHは5.6であった。これを90℃、−0.097MPa(ゲージ圧力)以下、窒素バブリング中で2時間精製し、濾過してジイソプロピリデンキシリトールモノアリルエーテル97.5gを得た。水酸基価は19KOHmg/g、動粘度(25℃)は18mm/s、不飽和度は3.5meq/g、GC測定による純度は88%であった。
(実施例2)
実施例1と同様にして、2,2−ジメトキシプロパン225.2gを用いてケタール化反応を行った。得られたジイソプロピリデンキシリトールの性状は室温で3日後でも液状であり、動粘度(25℃)は460mm/s、ガードナー色数は1以下、GC測定による純度は97%であった。
続けてこれを実施例1と同様にして、水酸化カリウム51.1gの代わりに水酸化ナトリウム36.4gを用いてアリルエーテル化反応を行い、塩析後に取り出した有機層にキョーワード700を6.2g添加してよく撹拌した。イソプロピルアルコール溶液のpHは6.0であった。これを90℃、−0.097MPa(ゲージ圧力)以下、窒素バブリング中で2時間精製し、濾過してジイソプロピリデンキシリトールモノアリルエーテルを得た。水酸基価は20KOHmg/g、動粘度(25℃)は19mm/s、不飽和度は3.3meq/g、GC測定による純度は94%であった。
(実施例3)
実施例1と同様にして、2,2−ジメトキシプロパン242.6gを用いてケタール化反応を行った。得られたジイソプロピリデンキシリトールの性状は室温で3日後でも液状であり、動粘度(25℃)は530mm/s、ガードナー色数は1以下、GC測定による純度は96%であった。
続けてこれを実施例1と同様にアリルエーテル化反応を行い、塩析後に取り出した有機層にキョーワード700を6.2g添加してよく撹拌した。イソプロピルアルコール溶液のpHは5.8であった。これを90℃、−0.097MPa(ゲージ圧力)以下、窒素バブリング中で2時間精製し、濾過してジイソプロピリデンキシリトールモノアリルエーテルを得た。水酸基価は14KOHmg/g、動粘度(25℃)は19mm/s、不飽和度は3.4meq/g、GC測定による純度は93%であった。
(実施例4)
実施例1と同様にして、2,2−ジメトキシプロパン260.0gを用いてケタール化反応を行った。得られたジイソプロピリデンキシリトールの性状は室温で3日後でも液状であり、動粘度(25℃)は550mm/s、ガードナー色数は1以下、GC測定による純度は90%であった。
続けてこれを実施例1と同様にアリルエーテル化反応を行い、塩析後に取り出した有機層にキョーワード700を6.2g添加してよく撹拌した。イソプロピルアルコール溶液のpHは5.7であった。これを90℃、−0.097MPa(ゲージ圧力)以下、窒素バブリング中で2時間精製し、濾過してジイソプロピリデンキシリトールモノアリルエーテルを得た。水酸基価は19KOHmg/g、動粘度(25℃)は18mm/s、不飽和度は3.2meq/g、GC測定による純度は85%であった。
(実施例5)
実施例3と同様にしてアリルエーテル化反応まで行い、塩析後に取り出した有機層に19%塩酸を1.2g添加してよく撹拌した。イソプロピルアルコール溶液のpHは5.7であった。これを90℃、−0.097MPa(ゲージ圧力)以下、窒素バブリング中で2時間精製し、濾過してジイソプロピリデンキシリトールモノアリルエーテルを得た。水酸基価は15KOHmg/g、動粘度(25℃)は19mm/s、不飽和度は3.4meq/g、GC測定による純度は93%であった。
(実施例6)
実施例3と同様にしてアリルエーテル化反応まで行い、塩析後に取り出した有機層に10%リン酸を1.2g添加してよく撹拌した。イソプロピルアルコール溶液のpHは6.0であった。これを90℃、−0.097MPa(ゲージ圧力)以下、窒素バブリング中で2時間精製し、濾過してジイソプロピリデンキシリトールモノアリルエーテルを得た。水酸基価は12KOHmg/g、動粘度(25℃)は19mm/s、不飽和度は3.3meq/g、GC測定による純度は93%であった。
(実施例7)
実施例3と同様にしてアリルエーテル化反応まで行い、塩析後に取り出した有機層に酢酸を0.3g添加してよく撹拌した。イソプロピルアルコール溶液のpHは6.2であった。これを90℃、−0.097MPa(ゲージ圧力)以下、窒素バブリング中で2時間精製し、濾過してジイソプロピリデンキシリトールモノアリルエーテルを得た。水酸基価は7KOHmg/g、動粘度(25℃)は20mm/s、不飽和度は3.2meq/g、GC測定による純度は95%であった。
(比較例1)
実施例1と同様にして、2,2−ジメトキシプロパン173.4gを用いてケタール化反応を行った。得られた反応物の性状は室温で3日後でも液状であり、動粘度(25℃)は1000mm/s、ガードナー色数は1以下、GC測定による純度は70%であった。
(比較例2)
実施例1と同様にして、2,2−ジメトキシプロパン346.6gを用いてケタール化反応を行った。得られた反応物の性状は、動粘度(25℃)は1200mm/s、ガードナー色数は1以下、GC測定による純度は57%であり、室温で3日後に固化していた。
(比較例3)
実施例1と同様にして、パラトルエンスルホン酸一水和物0.2mgを用いてケタール化反応を行った。得られた反応物の性状は室温で3日後でも液状であり、動粘度(25℃)は1100mm/s、ガードナー色数は1以下、GC測定による純度は60%であった。
(比較例4)
実施例1と同様にして、パラトルエンスルホン酸一水和物140mgを用いてケタール化反応を行った。得られた反応物の性状は室温で3日後でも液状であり、動粘度(25℃)は470mm/s、ガードナー色数は3、GC測定による純度は80%であった。
Figure 0005288153
Figure 0005288153
実施例からは、ジイソプロピリデンキシリトール及びジイソプロピリデンキシリトールモノアリルエーテルを得ることができた。
比較例1では、2,2−ジメトキシプロパンの仕込み量が理論当量に対して1.2倍量よりも少ないために、未反応キシリトール、モノケタール体の含有量が多く、反応物中の水酸基含有量が多くなって増粘した。
比較例2では、2,2−ジメトキシプロパンの仕込み量が理論当量に対して1.5倍量よりも多いために2量体の生成量が多くなり、増粘し、3日後に固化していた。
比較例3ではパラトルエンスルホン酸一水和物の仕込み量がキシリトールに対して5×10−6モルよりも少ないため、未反応キシリトール、モノケタール体の含有量が多くなり増粘した。
比較例4ではパラトルエンスルホン酸一水和物の仕込み量がキシリトールに対して5×10−4モルよりも多いため、着色した。

Claims (4)

  1. ペンチトールとヘプチトールとの少なくとも一方に式(1)で表される化合物を理論当量に対して1.2〜1.5倍量、酸触媒をペンチトールとヘプチトールとの合計量に対して5×10−6〜5×10−4モル比率で用いて反応させて、水酸基を1個有するペンチトールジケタールと水酸基を一個有するヘプチトールトリケタールとの少なくとも一方からなる糖アルコール誘導体を得ることを特徴とする、糖アルコール誘導体の製造方法。
    Figure 0005288153

    (式(1)において、R及びRは、それぞれ水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRの少なくとも1つは炭素数1〜4のアルキル基である。R及びRは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
  2. ペンチトールに式(1)で表される化合物を反応させて、水酸基を1個有するペンチトールジケタールからなる糖アルコール誘導体を得ることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. ペンチトールがキシリトールであることを特徴とする、請求項2記載の方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の方法によって得られた糖アルコール誘導体に、炭素数2〜5のアルケニルハライドをアルカリ触媒の存在下で反応させた後、アルカリ吸着能を有する吸着剤または酸を用いてpHを5.0〜7.5に調整することを特徴とする、アルケニル基含有糖アルコール誘導体の製造方法。
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