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JP5287824B2 - モータ - Google Patents

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Description

本発明は、自動車やトラック等に搭載される制御回路を含むモータに関する。また、産業用機器、家庭電化製品などへの適用も可能である。
3相交流モータは、従来より各種用途へ広く使用されている。その中でも近年になり、環状形状の巻線を持ち、モータ内の磁束の方向もロータ軸方向への経路を有する3相交流モータが提案されている。図49はその概略的な構成を示す縦断面図の例である。Q11はロータ軸、Q12はロータ表面に取り付けられたN極永久磁石およびS極永久磁石、Q13はU相ステータ磁極、Q14はV相ステータ磁極、Q15はW相ステータ磁極、Q1Aはステータ磁路のバックヨーク部、Q16は円周方向に環状形状のU相巻線、Q17とQ18は同環状形状のV相巻線、Q19は同環状形状のW相巻線、Q1Bはモータケース、Q1Cは軸受けである。
図50は前記永久磁石Q12の円周方向の表面形状を直線状に展開した図で、円周方向を紙面で水平方向として示し、角度を機械角で付記している。Q21はN極永久磁石、Q22はS極永久磁石であり、8極のロータの例である。
図51は図49に示すロータの永久磁石に対向するU、V、W各相のステータ磁極の円周方向形状を直線状に展開した図である。U相ステータ磁極Q13、V相ステータ磁極Q14、W相ステータ磁極Q15は相互に機械角で30°の位相差、電気角で120°の位相差を持たせて配置している。
ロータの永久磁石に対向する各相のステータ磁極の形状は種々の変形が可能である。例えば図52に示すように長方形の形状とすることもできる。Q31はU相ステータ磁極、Q32はV相ステータ磁極、Q33はW相ステータ磁極である。
また、図53に示すように、各相のステータ磁極の形状を台形と菱形の組み合わせとすることもできる。Q41はU相ステータ磁極、Q42はV相ステータ磁極、Q43はW相ステータ磁極である。各相ステータ磁極形状の面積は同じであり、相対的な位相差は電気角で120°である。この場合、各ステータ磁極を通過する磁束のロータ回転角θrと共に変化する値は、図52の場合が矩形形状であるのに比較して、より正弦波形状に近くなり、トルクリップルが低減する効果がある。
図54は図49に示した各相の環状形状の巻線の内、U相巻線Q16であり、同図(a)は正面図、同図(b)は側面図、図中の符号UはU相巻線Q16の一端、符号NはU相巻線Q16の他端である。なお、図49に示したV相巻線Q17、Q18およびW相巻線Q19の形状も図54に示すU相巻線Q16と同じである。
図55は図49に示した環状形状の各相巻線の円周方向形状を直線状に展開した図である。ここで、図49に示したU相巻線Q16とV相巻線Q17は同一のスロットに平行に巻回した巻線であり、1個の環状巻線に統合することが可能である。具体的には、図55の負のU相巻線Q16と正のV相巻線Q17を、図56の巻線Q71へ等価に置き換えることができる。但し、巻線Q71へ通電する電流はU相巻線Q16とV相巻線Q17へ通電する電流を加算した値の電流を通電する必要がある。
この時、図55と図56の該当するスロットに流れる電流値は同じであるので、電磁気的には全く等価である。図56のように巻線を統合した方が巻線を単純化できる点で有利である。また、U相巻線Q16へ通電する負のU相電流(−Iu)とV相巻線Q17へ通電する正のV相電流Ivとの位相差が電気角で60°なので、巻線Q71へ通電するそれらの和(−Iu+Iv)の電流実効値は統合する前の電流実効値の0.866倍であり、巻線のジュール熱換算では2乗となるので0.75倍となり25%の発熱低減となる。
同様に、図55のV相巻線Q18とW相巻線Q19も図56の巻線Q72へ置き換えることが可能であり、簡素化できる。図56の巻線の場合、図49のモータは巻線が2個の3相交流モータとなる。
図57に、3相交流インバータと接続する例を示す。
巻線Q71の一端45Eへ(−Iu+Iv)を通電し、巻線Q72の一端45Fへ(−Iv+Iw)を通電し、巻線Q71と巻線Q72の接続点45Gへ(−Iw+Iu)を通電する。3相電流Iu、Iv、Iwが相互に位相差が120°で同一振幅の正弦波であるとき、前記(−Iu+Iv)と(−Iv+Iw)と(−Iw+Iu)は相互に位相差が120°で同一振幅の正弦波となる。ここで、451、452、453、454、455、456は3相インバータを構成するトランジスタである。457、458、459、45A、45B、45Cは前記各トランジスタに逆並列に接続したダイオードである。
なお、特許文献1には図49のような構成のモータが示されている。特許文献2には図49のモータの巻線Q16、Q17、Q18、Q19が図56に示すように簡略化した巻線Q71、Q72で構成するモータが示されている。
特許第3944140号公報(図7) 特許第4007339号公報(図1、図13)
上記のように、図49および図56に示すようなモータは、巻線が環状形状の簡素な構成のモータである。しかし、このモータは3相交流電圧、電流を印加する必要があるため、その制御回路は図57のような構成となり、6個のトランジスタを必要とする。従って、コスト、大きさの問題がある。また、3相の各相電流の通電経路を考えると、直流電源2Eから2個のトランジスタが直列に接続されて各巻線へ電流が供給されるので、トランジスタの電圧降下に起因する発熱もその改善、低減が望まれる。
また、近年では、家電、自動車補機などに使用される量産のモータで、例えば直径で50mm程度の大きさのモータでは、モータを駆動する電源、制御回路、インバータなどが10mm×10mmより小さな1個の半導体チップに組み込まれ、モータの一部に一体的に組み込まれる構成の技術が実現している。
そして、モータシステムの低コスト化と小型化とが一体的に進められている。従って、その実現のための専用の回路技術、信号検出技術、温度変化対応技術、モータ一体化技術なども求められている。例えば、位置検出用のセンサが不要ないわゆるセンサレス制御技術、小型、低コストで発熱負担の小さな電流検出技術などである。
また、人間の耳に近いところで使用される各種のファンなどの用途では、極めて静粛であることを求められ、小型、低コストでありながら、高度なモータシステム特性が求められることも多くなっている。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、[背景技術]の欄に記載した従来のモータより、さらに簡素で低コストなモータを提供することにある。
請求項1に係る発明は、永久磁石を使用するブラシレスモータであって、ステータの円周方向に巻回する環状のA相巻線WAと、前記A相巻線WAに磁束φAが鎖交するように構成したステータ磁極群SPGAと、ステータの円周方向に巻回する環状のB相巻線WBと、前記B相巻線WBに磁束φBが鎖交するように構成したステータ磁極群SPGBと、第3のステータ磁極群SPGCと、ロータのN極磁極と、前記N極磁極の円周方向に配置したロータのS極磁極と、前記N極磁極の円周方向に配置し、磁気的にロータのN極磁極とS極磁極との間の特性を示す第3のロータ磁極であるX極磁極とを備え、前記X極磁極は、永久磁石のN極と永久磁石のS極とを混在させて構成するか、あるいは、非磁性体で構成し、少なくとも前記ステータ磁極群SPGAとSPGBの内の片方のステータ磁極の円周方向磁極幅SPHが電気角で180°以下であり、前記A相巻線WAあるいは前記B相巻線WBの片方だけで、直流電流により同一方向トルクを電気角で180°以上の間に渡って発生できることを特徴とするモータである。
この構成によれば、1個の巻線へある値の電流を通電することにより電気角で180°以上の範囲において一定方向のトルクTT1を発生することができる。そして、そのトルクTT1は、従来モータの発生トルクに匹敵する大きさのトルクを得ることができる。
なお、ロータのN極磁極とS極磁極の極性については、巻線の電流方向との関係で決まることであり、巻線の電流方向を逆向きとする場合は、N極磁極とS極磁極とを逆に言い換えることができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載したモータにおいて、前記A相巻線WAには片方向電流すなわち直流電流を増減して制御し、前記B相巻線WBには片方向電流すなわち直流電流を増減して制御することを特徴とするモータである。
この構成によれば、2個の巻線へロータ回転位置θrに応じてそれぞれにある一定方向の電流、すなわち直流電流を通電することにより、連続的な回転トルクを得ることができる。従って、巻線電流を通電する制御回路が簡単になり、低コスト化が可能である。
請求項3に係る発明は、請求項1に記載したモータにおいて、ロータの前記X極磁極は永久磁石のN極とS極とを組み合わせて構成することを特徴とするモータである。
この構成によれば、ロータの第3の磁極であるX極磁極が永久磁石のN極とS極とを組み合わせて構成しているので、ロータのX極磁極と各ステータ磁極との間に作用する吸引力FXが永久磁石のN極あるいはS極と各ステータ磁極との間に作用する吸引力FNSとほぼ同等であり、ステータのラジアル方向の吸引力に起因する変形量を小さくすることができ、静粛なモータを実現することができる。また、円周方向の吸引力についても、前記X極磁極とN極磁極、S極磁極との差異が小さく、コギングトルクを小さくすることができる。
請求項4に係る発明は、請求項1に記載したモータにおいて、前記ステータ磁極群SPGCを構成するC相のステータ磁極SPCの円周方向幅HSCは前記ステータ磁極群SPGAを構成するA相のステータ磁極SPAの円周方向幅HSAより小さく、前記円周方向幅HSCは前記ステータ磁極群SPGBを構成するB相のステータ磁極SPBの円周方向幅HSBより小さいことを特徴とするモータである。
この構成によれば、A相のステータ磁極SPAを通過する磁束φaおよびB相のステータ磁極SPBを通過する磁束φbを大きくすることができ、モータの発生トルクをより大きくすることができる。
請求項5に係る発明は、請求項1に記載したモータにおいて、ロータの前記N極磁極と前記S極磁極および前記X極磁極の少なくともいずれかのロータ磁極の特性が円周方向にN極特性とS極特性との中間の特性であり、永久磁石のN極と永久磁石のS極とを混在する比率が円周方向に徐々に変化する特性であることを特徴とするモータである。
この構成によれば、ロータ磁極のN極とS極との比率の円周方向変化が徐々に変化するので、ロータが回転している時に各ステータ磁極で発生するトルク脈動が滑らかな変化となり、モータの振動、騒音を低減することができる。
請求項6に係る発明は、請求項1に記載したモータにおいて、ロータの前記N極磁極と前記S極磁極との境界部を円周方向に反時計回転方向に移動した境界部RCCWと、ロータの前記N極磁極と前記S極磁極との境界部を円周方向に時計回転方向に移動した境界部RCWとを備え、ロータの円周方向の複数のロータ磁極の形状を電気角の0°〜360°に割り当てて見るとき、前記境界部RCCWと前記境界部RCWとの円周方向の間に位置する2つ以上のロータ磁極の磁気的特性を合成して前記第3のロータ磁極であるX極磁極を構成することを特徴とするモータである。
この構成によれば、第3のロータ磁極であるX極磁極を従来技術の延長として比較的容易に製作することができ、低コスト化が可能である。
請求項7に係る発明は、請求項1に記載したモータにおいて、ロータの前記X極磁極に軟磁性体を使用して構成することを特徴とするモータである。
この構成によれば、ステータ磁極に吸引されてトルクを生成するロータのX極磁極を軟磁性体だけで構成する、あるいは、軟磁性体と永久磁石の複合体として構成するので、永久磁石の磁束密度より珪素鋼板などの軟磁性体の方が大きな磁束密度を実現することができ、トルクを増加させることができる。また、使用する永久磁石の量を低減できるので低コスト化を実現できる。
請求項8に係る発明は、請求項1に記載したモータにおいて、ロータの前記S極磁極の表面にフェライト磁石のS極を使用し、前記X極磁極の表面にフェライト磁石のN極を使用し、N極磁極に飽和磁束密度の高い軟磁性体を使用することを特徴とするモータである。この構成によれば、S極磁極の表面をフェライト磁石のS極の−0.4テスラで構成し、X極磁極の表面をフェライト磁石のN極である+0.4テスラで構成し、N極磁極を飽和磁束密度の高い軟磁性体の+2テスラで構成することができる。各磁極の磁束密度の差分が0.8テスラと1.6テスラとなり、フェライト磁石だけで各磁極を構成するよりは高い磁束密度差を作り出すことができるので、トルクの向上ができる。
さらに、X極磁極をフェライト磁石のN極と軟磁性体混合して配置し、+0.8テスラの磁極を構成すれば、各磁極の磁束密度の差分が1.2テスラと1.2テスラとなり、磁束密度の差分を均一化することもできる。従って、トルク脈動の少ないモータを構成できる。安価なフェライト磁石を使用して高性能化を達成できる。
請求項9に係る発明は、請求項1に記載したモータにおいて、ロータの前記S極磁極の表面に磁束密度の高い希土類磁石のS極を使用し、前記X極磁極の表面に磁束密度は低いが安価なフェライト磁石のN極を使用し、前記N極磁極に飽和磁束密度の高い軟磁性体を使用することを特徴とするモータである。
この構成によれば、S極磁極の表面に磁束密度の高い希土類磁石(例えばネオジ磁石)の極を使用し、そのS極の−1.2テスラで構成し、X極磁極の表面をフェライト磁石のN極である+0.4テスラで構成し、N極磁極を飽和磁束密度の高い軟磁性体の+2テスラで構成することができる。各磁極の磁束密度の差分が1.6テスラと1.6テスラとなり、磁束密度の差分が大きく、かつ均一なモータ特性を実現でき、高トルクでトルク脈動の小さいモータを実現できる。また、高価な希土類磁石の使用量が少ない構成なので、比較的安価なモータ構成とすることができる。
2相の電流で回転駆動する本発明モータの縦断面を示す図である。 図1のモータの断面A−Aを示す図である。 図1のモータの断面B−Bを示す図である。 図1のモータの断面C−Cを示す図である。 図1のモータの断面D−Dを示す図である。 図1のモータの断面E−Eを示す図である。 図1のモータのステータ磁極とロータ突極との対向面の円周方向形状を直線状に展開した図である。 図1のモータ構成で、ステータとロータとが対向する部分のステータ磁極形状とロータ磁極の形状とについて、円周方向を直線状に展開して示す図である。 図8のモータの電圧Va、Vb、Vcと電流Ia、IbとトルクTmの例を示す図である。 図1のモータの巻線へ片方向の電流を通電する制御回路の例である。 図1のモータの巻線へ片方向の電流を通電する制御回路の例である。 ロータのX極磁極の形状例を示す図である。 図1のモータ構成で、ステータとロータとが対向する部分のステータ磁極形状とロータ磁極の形状とについて、円周方向を直線状に展開して示す図である。 図1のモータ構成で、ステータとロータとが対向する部分のステータ磁極形状とロータ磁極の形状とについて、円周方向を直線状に展開して示す図である。 図14のモータの電圧Va、Vb、Vcと電流Ia、IbとトルクTmの例を示す図である。 ロータのX極磁極の各種形状例を示す図である。 図16の(b)に示すロータ磁極で有る場合の電流Ia、IbとトルクTmの例を示す図である。 ステータ磁極形状が台形形状、あるいはスキューした形状の例である。 ロータ磁極の円周方向境界位置を円周方向にシフトし、ロータの一部の磁極特性を多極の平均値として得る構成である。 ロータの具体的な磁極構成の例である。 巻線の切り替え制御の構成例である。 図1のモータの磁路が電磁鋼板を折り曲げた構成となっているモータの縦断面図である。 円盤状の永久磁石を備える本発明モータの縦断面図の例である。 図23のモータのロータ軸方向片側の永久磁石形状とその対向するステータ磁極の形状を同一方向からみた形状例である。 図23のモータを、図24場合とは反対方向から、永久磁石形状とその対向するステータ磁極をみた形状の例である。 図23のモータの制御回路をステータの内径側に配置した構成の例である。 図23のモータのロータの永久磁石の外径が巻線の内径より大きな構成のモータの例である。 2個の直流電源と2個のトランジスタで駆動するモータである。 2個の直流電源と2個のトランジスタで駆動するモータである。 2個の直流電源と2個のトランジスタで駆動するモータである。 図1のモータの各スロットに、2個の環状の巻線を並行巻回するモータの例である。 図31の巻線に電流を通電する制御回路の例である。 図1などのモータの誘起電圧と円周方向の領域を示す図である。 図1などのモータの各回転位置領域における誘起電圧の区分等を示す表である。 誘起電圧を検出するブロックダイアグラムである。 センサレス位置検出のタイムチャートである。 センサレス位置検出で回転制御するモータである。 演算増幅器の例である。 図1などのモータをセンサレス制御する場合の制御のフローを示す図である。 シャント抵抗を集積回路のボンディングワイアで構成した例である。 定電流回路でシャント抵抗の温度変化を検出する構成の例である。 図1などのモータを両方向へ回転制御する制御のフローを示す図である。 図1などのモータの2相巻線へ両方向電流を通電可能な制御回路の例である。 図31のモータへ機能的に両方向の電流を通電可能な制御回路の例である。 片方向電流で駆動可能なモータを複数個備え、駆動回路の一部を共用して駆動する制御回路の例である。 片方向電流で駆動可能なモータを複数個備え、駆動回路の一部を共用して駆動する制御回路の例である。 ステータが電磁鋼板をロータ軸方向へ積層した構成の本発明モータである。 図47のモータ構成で、ステータとロータとが対向する部分のステータ磁極形状とロータ磁極の形状とについて、円周方向を直線状に展開して示す図である。 従来の環状巻線を備える3相交流モータの縦断面図である。 ロータの永久磁石の円周方向形状を直線状に展開した形状例である。 図49のモータのステータ磁極形状の例を直線状に展開して示す図である。 図49のモータのロータ磁極形状の例を直線状に展開して示す図である。 図49のモータのロータ磁極形状の例を直線状に展開して示す図である。 図49のU相巻線の正面図と側面図の例である。 図49の環状巻線を直線状に展開した形状の例である。 図49の環状巻線を直線状に展開した形状の例である。 図49、図56の構成の3相交流モータを制御する3相交流インバータの構成例である。
本発明では、制御回路を含め、簡素で低コストなモータシステムを提案する。また、生活の場に近いところで使用される各種のファンなどの用途では、静かさは重要であり、静粛なモータ構成も提案する。
(実施例1)
図1に本発明モータの縦断面図の例を示す。
10はロータで、11はロータ軸、12はロータ表面に配置した永久磁石を含むN極磁極、S極磁極、X極磁極である。13はA相のステータ磁極、14はB相のステータ磁極、15はC相のステータ磁極である。18はステータのバックヨークである。16はステータの円周方向に巻回した環状形状のA相巻線、17は環状形状のB相巻線である。これらの巻線16、17は、概略的に環状で、巻線の製作を容易化することが可能である。また、波状巻線、鼓状巻線、環状巻線などへの変形も可能である。
なお、このモータの軸受け、モータのケース、ケースとステータとを固定する部材等は省略し、図示していない。
図2は図1の断面A−Aの形状である。
13はA相のステータ磁極で、円周上に等間隔に4個配置している。モータ全周は電気角で360°×4=1440°である。A相のステータ磁極13のロータに面する部分の円周方向幅は、機械角で30°、電気角で120°の例を示している。21はロータのN極磁極、22はS極磁極である。23はロータの第3の磁極であり、本発明ではX極磁極と称する。このX極磁極は、後に具体例で示すように、磁気的にN極磁極とS極磁極との中間の特性を示す磁極である。
30は電気的な切断部であり、ステータの軟磁性体の円周方向に流れる環状の電流を遮断する目的でこの切断部を作る。ステータの磁気回路を電磁鋼板の打ち抜きと折り曲げの加工で製作する場合などでは、電磁鋼板の電気的抵抗が無視できない。モータ電流により励起されるこの循環電流を低減することはモータ効率を改善するために有効である。この切断部30は図3以外の他の部分についても効果的である。
しかし、ステータの軟磁性体が鉄粉に絶縁膜を施し、金型でプレス成形して製作する圧粉磁心の場合には、圧粉磁心の電気抵抗が大きく、前記の電気的な切断部30を作る必要がない。また、電気抵抗の大きい電磁鋼板であれば、前記の環状電流が小さくなり、そのジュール損を実用上の問題がない程度に低減することも可能である。前記の環状電流を小さくするような形状の工夫も可能である。
図3は図1の断面B−Bの形状である。
14はB相のステータ磁極で、円周上に等間隔に4個配置している。モータ全周は電気角で360×4=1440°である。B相のステータ磁極14のロータに面する部分の円周方向幅は、機械角で30°、電気角で120°の例を示している。
図4は図1の断面C−Cの形状である。
15はC相のステータ磁極で、円周上に等間隔に8個配置している。モータのロータ軸方向の中間部に位置している。モータ全周は電気角で360×4=1440°である。C相のステータ磁極15のロータに面する部分の円周方向幅は、機械角で15°、電気角で60°の例を示している。なお、A相ステータ磁極13、B相ステータ磁極14、C相のステータ磁極の円周方向幅は電気角でそれぞれ120°、120°、60°と説明したが、実際にはステータ磁極間の隙間が漏れ磁束低減のため必要であり、隙間の分だけ少しずつ小さな円周方向幅の角度である。
図5は図1の断面D−Dの形状であり、スロット部分の断面図である。
16は環状形状のA相巻線である。このA相巻線16へ前記A相ステータ磁極13を通過するA相磁束φaが鎖交する。
図6は図1の断面E−Eの形状であり、スロット部分の断面図である。
17は環状形状のB相巻線である。このB相巻線17へ前記B相ステータ磁極14を通過するB相磁束φbが鎖交する。ただし、A相磁束φaとB相磁束φbとがそれぞれのA相巻線16とB相巻線17に鎖交する方向は相対的に逆であり、発生電圧が逆方向になるので、巻線接続は逆方向にする必要がある。
図7の(a)は図1のステータとロータとが対向する面の各ステータ磁極の形状と各ロータ磁極の形状を円周方向を直線状に展開した図である。それは、エアギャップ面の形状でもある。紙面で水平方向は、円周方向の回転角θrを電気角で示している。
図7の(a)の上側半分は各相のステータ磁極の内径側形状を示し、下側半分はロータの外周面形状を示している。図7の(a)に示す13はA相ステータ磁極の内周面形状である。14はB相ステータ磁極の内周面形状である。15はC相ステータ磁極の内周面形状である。図7の(a)の紙面において上下方向はロータ軸方向であり、全ステータのロータ軸方向長さはHsで、ロータのロータ軸方向長さはHrであり、図7の(a)ではHsとHrとが同じ値である例について示している。そして、A相ステータ磁極13、B相ステータ磁極14、C相ステータ磁極15ロータ軸方向長さは約Hs/3である。
ここで、図1のモータ構成例では、本発明モータの磁気回路構成が3次元形状であるため、表現が難しいので、比較的表現が容易なステータ磁極の形状例として図1と図7を図示した。しかし、これらのステータ磁極13、14、15は、図7の(b)に24で示すA相、B相、C相のステータ磁極の形状のように、ロータ軸方向の長さを約3倍に延長することが可能である。ステータ磁極のロータ軸方向長さを大きくすると、巻線に鎖交する磁束が増加し、トルクを増大することができる。このように、ステータ磁極形状は種々変形が可能である。
図7の(a)に示すロータは、図1のロータの円周方向形状を直線状に展開した形状を示している。円周方向にN極磁極21とS極磁極22とX極磁極23とを隣接して配置している。この23はX極磁極と称しており、永久磁石のN極とS極との中間の磁気特性である。21は永久磁石のN極であり、22は永久磁石のS極である。23のX極磁極の具体的な例は、後に図12に示し説明する。例えば、永久磁石のN極と永久磁石のS極とを同一比率で混在させて構成することができる。この時、X極磁極の平均的な磁気的特性は磁石が存在しないときと同じで、比透磁率は永久磁石と同じで、X極磁極とステータ磁極との間の磁気的吸引力はN極磁極およびS極磁極と同程度に大きい。
各ロータ磁極21、22、23の円周方向幅はそれぞれ電気角で120°である。また、図7のモータのトルク発生の方法、電流と電圧の定性的な関係は図8に示すモータと同じであり、図8のモータの説明で図7のモータの特性を兼ねて示す。
次に、図8に本発明モータの動作例を示し、説明する。
図8のモータは、図1のモータの各相ステータ磁極の内径側形状を変形し、ロータ表面形状を各ロータ回転位置θrの位置で示し、一定回転速度で回転するときの各相巻線の電圧を示す図である。図8の横軸はロータの回転角θrを電気角で−180°から720°まで示している。図8の(a)から(h)までの縦軸はロータ軸方向を示している。
図8の(a)は、A相のステータ磁極83、B相のステータ磁極84、C相のステータ磁極85、86を示している。これらの各ステータ磁極は、図7の(b)に示すステータ磁極24と同じものである。
A相のステータ磁極83は、電気角で0°から120°に配置し、対向する部分のロータの各永久磁石の磁束を通過させ、その通過磁束はA相磁束φaである。
B相のステータ磁極84は、電気角で180°から300°に配置し、対向する部分のロータの各永久磁石の磁束を通過させ、その通過磁束はB相磁束φbである。
C相のステータ磁極は85と86に分かれていて、電気角で120°から180°の部分と300°から360°の部分である。C相ステータ磁極に対向する部分のロータの各永久磁石の磁束を通過させ、その通過磁束はC相磁束φcである。この時、A相とB相の関係は、位相が180°円周方向にシフトされた相似の関係となっている。また、ロータからステータ側へ出入りする磁束の総和は零なので、次式が成立する。
φa+φb+φc=0 (1)
図8の(b)は、各ステータ磁極に対向するロータ磁極で、N極磁極21、S極磁極22、X極磁極23である。これらのロータ磁極の円周方向幅は電気角で120°の例である。図8の(b)に示すロータ回転位置はθr=0°の回転位置である。これは、図2のロータ回転位置の状態を示している。図8の(c)に示すロータ回転位置はθr=60°、図8の(d)に示すロータ回転位置はθr=120°、図8の(e)に示すロータ回転位置はθr=180°、図8の(f)に示すロータ回転位置はθr=240°、図8の(g)に示すロータ回転位置はθr=300°である。図8の(h)に示すロータ回転位置はθr=360°であり、図8の(b)に示すθr=0°と電磁気的作用は同じである。ロータ回転位置θrの変化に伴い、各ステータ磁極に対向するロータ磁極の位置が変化するので、各ステータ磁極を通過する磁束φa、φb、φcの大きさがロータの回転に伴って変化する。
ロータの回転方向は、図2では第1象限から第2象限側へ回転する方向であり、反時計回転方向CCWの回転方向を、ロータ回転位置θrの値が増加する正回転とする。この正回転方向は、図8では紙面で左側から右側へ移動する動きに対応させて説明する。
図8の(i)は、ロータが一定回転速度で回転する状態において、A相巻線16に発生する誘起電圧Vaを示す。このA相誘起電圧Vaは、A相巻線16の鎖交磁束であるA相磁束φaの時間変化率に比例し、A相巻線16とB相巻線17の巻き回数をNwとすると、次式となる。
Va=Nw×d(φa)/dt (2)
A相磁束φaは、A相ステータ磁極83が対向するロータのN極磁極21、S極磁極22、X極磁極23より供給される。従って、前記A相磁束φaは、ロータ回転位置θrの回転移動に伴い、変化する。
図8の(i)のA相誘起電圧Vaについて、ロータ回転位置θrの順に説明する。
θr=0°のロータ回転位置では、図8の(a)と(b)を対比して分かるように、A相ステータ磁極83はロータのS極磁極22にほぼ全面が対向している。従って、A相磁束φaは負の最大値−φmaxである。この状態でロータが正回転すると、すなわち、図8の(b)では、ロータが紙面で右側へ移動すると、ロータのX極磁極23が対向するようになり、A相磁束φaは負の最大値−φmaxから零に近づくことになり増加する。そして、A相誘起電圧Vaは(2)式より、N極磁極21、S極磁極22の磁束密度Bmに比例した値となり、A相磁束の回転変化率Δφa/Δθrに比例した正の値となる。
Va=Nw×d(φa)/dθr×dθr/dt (3)
ここで、θr=0°から120°の時、次式となる。
d(φa)/dθr≒Pn×Bm×Hr×R×Δθr/Δθr (4)
=Pn×Bm×Hr×R (5)
Pnはモータの極対数、Hrはロータ磁極である永久磁石のロータ軸方向長さ、Rはロータ半径である。また、dθr/dtはロータの回転速度である。
図8の(c)ではθr=60°であり、前記(3)、(4)、(5)式のA相誘起電圧Vaとなる。図8の(d)のθr=120°のロータ回転位置では、図8の(a)と(d)を対比して分かるように、A相ステータ磁極83はロータのX極磁極23にほぼ全面が対向している。従って、A相磁束φaはほぼ零の値となっている。この状態でロータが正回転すると、すなわち、図8の(d)では、ロータが紙面で右側へ移動すると、ロータのN極磁極21が対向するようになり、A相磁束φaは零から正の最大値φmaxに近づくことになり増加する。θr=120°から240°の時、次式となる。
d(φa)/dθr≒Pn×Bm×Hr×R×Δθr/Δθr (6)
=Pn×Bm×Hr×R (7)
X極磁極23の平均磁束密度が零であり、N極磁極21とS極磁極22の磁束密度が同じ大きさの場合には、(5)式と(7)式は同じ値となる。そして、A相誘起電圧Vaは前記(7)式より、正の値となる。
図8の(e)ではθr=180°であり、前記(6)、(7)式のA相誘起電圧Vaとなる。図8の(f)のθr=240°のロータ回転位置では、図8の(a)と(f)を対比して分かるように、A相ステータ磁極83はロータのN極磁極21にほぼ全面が対向している。従って、A相磁束φaはほぼ正の最大値φmaxとなっている。この状態でロータが正回転すると、すなわち、図8の(d)では、ロータが紙面で右側へ移動すると、ロータのS極磁極22が対向するようになり、A相磁束φaは正の最大値φmaxから負の最大値−φmaxに近づくことになり減少する。θr=240°から360°の時、次式となる。
d(φa)/dθr≒−Pn×2×Bm×Hr×R×Δθr/Δθr (8)
=−2×Pn×Bm×Hr×R (9)
このように、A相誘起電圧Vaは、θr=240°から360°の区間では、前記(5)、(7)式の2倍の負の値となる。なお、θr=0°から360°の全区間の平均値は零となる。
次に、図8の(j)は、ロータが一定回転速度で回転する状態において、B相巻線17に発生する誘起電圧Vbを示す。A相巻線16に発生する誘起電圧Vaとは対称的な特性となる。B相誘起電圧Vbは、B相巻線17の鎖交磁束であるB相磁束φbの時間変化率に比例し、次式となる。
Vb=Nw×d(φb)/dt (10)
なお、B相巻線17の鎖交磁束φbはA相巻線16の磁束φaとは鎖交する方向が逆なので、B相巻線17の接続を逆方向とする必要がある。このB相磁束φbは、B相ステータ磁極84が対向するロータのN極磁極21、S極磁極22、X極磁極23より供給される。従って、前記B相磁束φbは、ロータ回転位置θrの回転移動に伴い、変化する。
図8の(j)のB相誘起電圧Vbについて、ロータ回転位置θrの順に説明する。
θr=0°のロータ回転位置では、図8の(a)と(b)を対比して分かるように、B相ステータ磁極84はロータのX極磁極23とN極磁極21とがほぼ半分づつ対向している。従って、B相磁束φbは正の最大値φmaxの約1/2である。この状態でロータが正回転すると、すなわち、図8の(b)では、ロータが紙面で右側へ移動すると、ロータのN極磁極21が対向部分が増加するので、B相磁束φbはφmax/2から最大値φmaxに近づくことになり増加する。そして、B相誘起電圧Vbは(10)式より、N極磁極21、S極磁極22の磁束密度Bmに比例した値となり、B相磁束の回転変化率Δφb/Δθrに比例した正の値となる。
Vb=Nw×d(φb)/dθr×dθr/dt (11)
ここで、θr=0°から60°の時、次式となる。
d(φb)/dθr≒Pn×Bm×Hr×R×Δθr/Δθr (12)
=Pn×Bm×Hr×R (13)
図8の(c)に示すθr=60°のロータ回転位置では、図8の(a)と(c)を対比して分かるように、B相ステータ磁極84はロータのN極磁極21にほぼ全面が対向している。従って、A相磁束φaは、ほぼ正の最大値φmaxとなっている。この状態でロータが正回転すると、すなわち、図8の(c)では、ロータが紙面で右側へ移動すると、ロータのS極磁極22が対向するようになり、B相磁束φbは正の最大値φmaxから負の最大値−φmaxに近づくことになり減少する。θr=60°から180°の時、次式となる。
d(φb)/dθr≒−Pn×2×Bm×Hr×R×Δθr/Δθr (14)
=−2×Pn×Bm×Hr×R (15)
図8の(d)ではθr=120°であり、前記(14)、(15)式のB相誘起電圧Vbとなる。図8の(e)のθr=180°のロータ回転位置では、図8の(a)と(e)を対比して分かるように、B相ステータ磁極84はロータのS極磁極22にほぼ全面が対向している。従って、B相磁束φbはほぼ負の最大値−φmaxとなっている。この状態でロータが正回転すると、すなわち、図8の(e)では、ロータが紙面で右側へ移動すると、ロータのX極磁極23が対向するようになり、B相磁束φbは負の最大値−φmaxから零に近づくことになり増加する。θr=180°から300°の時、次式となる。
d(φb)/dθr≒Pn×Bm×Hr×R×Δθr/Δθr (16)
=Pn×Bm×Hr×R (17)
図8の(f)ではθr=240°であり、前記(16)、(17)式のB相誘起電圧Vbとなる。図8の(g)のθr=300°のロータ回転位置では、図8の(a)と(g)を対比して分かるように、B相ステータ磁極84はロータのX極磁極23にほぼ全面が対向している。従って、B相磁束φbはほぼ零となっている。この状態でロータが正回転すると、すなわち、図8の(g)では、ロータが紙面で右側へ移動すると、ロータのN極磁極21が対向するようになり、B相磁束φbは零から正の最大値φmaxに近づくことになり増加する。θr=300°から420°の時、次式となる。
d(φb)/dθr≒Pn×Bm×Hr×R×Δθr/Δθr (18)
=Pn×Bm×Hr×R (19)
次に、図8の(k)は、ロータが一定回転速度で回転する状態において、C相ステータ磁極を通過するC相磁束φcに鎖交する巻線の誘起電圧に相当する。このモータでは、C相巻線は存在しないが、A相巻線16とB相巻線17とを直列に接続した状態がC相巻線に相当する。ただし、極性は逆方向となる。仮想のC相誘起電圧Vcは次式となる。
Vc=−Nw×d(φa+φb)/dt=−Va−Vb (20)
従って、各相誘起電圧の和は零であり、次式も成立する。
Va+Vb+Vc=0 (21)
ただし、前記の各式では、巻線抵抗を零であるとして無視し、各相の漏れ磁束を零であるとして、モータを理想化している。
次に、図9において、ロータを正回転方向、すなわち、反時計回転方向CCWへ一定回転速度で回転する場合に、一定の回転トルクを発生させる電流の通電方法の具体的な例を示し、説明する。モータの特性は図1、図7、図8に示した特性を使用する。
基本的な構成は、A相ステータ磁極83を通るA相磁束φaはA相巻線16に鎖交し、B相ステータ磁極84を通るB相磁束φbはB相巻線17に鎖交する。モータの電気入力的には、A相電流IaとA相誘起電圧Vaの積PaとB相電流IbとB相誘起電圧Vbの積Pbとの和P1が一定値とすることができれば、機械的出力Pmも一定値となると考えることができ、次式となる。
P1=Pa+Pb
=Ia×Va+Ib×Vb (22)
=Tm×ω=Pm (23)
(23)式に(3)式、(11)式を代入して、モータトルクTmは次式となる。
Tm=1/ω×Ia×(Nw×d(φa)/dθr×dθr/dt)
+1/ω×Ib×(Nw×d(φb)/dθr×dθr/dt)
=Nw×(Ia×d(φa)/dθr+Ib×d(φb)/dθr)
ここで、ω=dθr/dtはモータ回転速度であり、モータ内部の損失は零と理想化している。例えば、A相誘起電圧Vaが正の値の時に、A相巻線16へ正のA相電流Iaを通電すれば、比例したトルクが発生する。B相についても同様である。
前記(22)式は電気的な側面であるが電磁気的に説明すると、前記(2)式でA相誘起電圧Vaが正の値の時、すなわち、A相磁束φaが増加しているときに、さらにA相磁束φaが増加するようにA相巻線16へ正のA相電流Iaを通電して、A相ステータ磁極とロータとの間に吸引力を発生させ、トルクを生成することを意味している。B相についても同様である。
図9の(a)は図8の(i)に示したA相誘起電圧Vaと同じである。A相誘起電圧Vaが電気角で240°に渡ってほぼ均一な正の電圧となっているので、この間に、A相巻線16へ直流電流を与えることにより、電気角で240°の間ほぼ均一な正のトルクを得ることができる。
同様に、図9の(b)は、図8の(j)に示したB相誘起電圧Vbと同じものである。B相誘起電圧Vbも電気角で240°に渡ってほぼ均一な電圧を効果的に得ている。これらのことから、A相巻線16とB相巻線17へ交互に直流電流を通電することにより、連続的な回転トルクが得られることになる。
図9の(c)は、電気角でおおよそ180°の幅の台形状の電流波形をしたA相電流Iaの例である。図9の(d)は、電気角でおおよそ180°の幅の台形状の電流波形をしたB相電流Ibの例である。図9の(e)はモータの発生トルクTmであり、A相電流IaとB相電流Ibとで丁度発生トルクが補間し、連続するように通電することにより均一なトルクTmを生成している。ただし、図8、図9で示した方法は片方向のトルク発生と回転駆動の方法である。なお、トルクリップルが多少増大しても大きな平均トルク出力が必要な場合は、各相電流の通電幅を広げることが可能であり、図9の(a)、(b)と同じく、電流の通電幅を電気角で240°まで広げることができる。勿論、電流値を大きくしてトルクを増大することもできる。
次に、本発明モータの前記A相電流Iaと前記B相電流Ibを通電する制御回路の例を図10に示し、説明する。
電源部については、2Eは直流電圧源であり、例えば、自動車のバッテリである。VLはコモン電位で、VMは直流電圧源2Eの電位、VHは回生などが行われる第3の電位である。16は図1のA相巻線で、101はA相電流Iaを駆動するトランジスタ、107はA相巻線16に蓄積される磁気エネルギー等を回生するダイオードである。17は図1のB相巻線で、102はB相電流Ibを駆動するトランジスタ、108はB相巻線17に蓄積される磁気エネルギー等を回生するダイオードである。
トランジスタ101、102をパルス幅変調PWMで制御することなどにより所望の直流電流をA相巻線16、B相巻線17へ通電することができる。この時、トランジスタのオン損失についても、巻線16、17に直列なトランジスタは1個であり、制御回路の損失が小さく、高効率な駆動が可能であると言える。なお、3相交流モータの制御では、2個のオン損失が発生する。
前記トランジスタは種々の電力制御素子を使用することができ、例えば、小型のモータではパワーMOS FET、あるいは、IGBTなどが広く使用されている。最近では、スーパージャンクションMOS FET、あるいは、SiCなどの新たな素子が注目されている。
図10の破線部において、10Cはコンデンサで、10Aはトランジスタで、Ldccはチョークコイルで、10Bはダイオードである。破線で囲う10Eは、いわゆるDC−DCコンバータで、この制御回路ではモータ巻線から回生された磁気エネルギーが電荷としてコンデンサ10Cに蓄えられ、その後、チョークコイルLdccを利用して電荷のエネルギーを直流電圧源2Eへ移動させる。前記DC−DCコンバータ10Eの機能は、コンデンサ10Cの電荷を直流電圧源2Eへ移すことである。
また、直流電圧源2EおよびDC−DCコンバータ10Eは、複数のモータの駆動あるいは他の負荷に共用することができる。例えば、10個の本発明モータを駆動する場合、その制御回路は20個のトランジスタと20個のダイオードと1組のDC−DCコンバータ10Eで構成することができる。
本発明モータは、概略的に、2個のトランジスタと2個のダイオードで駆動できることになる。これらの結果、本発明モータとその制御回路は、共に簡素な構成で、低コスト、小型である。なお、破線で囲うDC−DCコンバータ10Eは、他のバッテリなどの直流電源に置き換えることもできる。また、電位VMとVH間でモータ電流を生成し、回生電力を電位VLとVM間に回生するなど、種々の変形が可能である。
次に、A相電流IaとB相電流Ibを通電する制御回路の他の例を図11に示し、説明する。
111と112はA相巻線16へA相電流Iaを通電するトランジスタで、115と116は巻線16に蓄積した磁気エネルギーなどを直流電圧源2Eに回生することが可能なダイオードである。また、電流を通電中に、トランジスタ111と112のどちらか片方をオンすることによりA相電流Iaを電源へ回生せず、フライホイール電流としてトランジスタとダイオードを介してフライホイール電流として通電することもできる。
図11の制御回路構成は、モータ1個当たりに4個のトランジスタでモータを駆動することができる。3相交流モータに比較して簡素な構成である。ここで、図10の構成では必要であったDC−DCコンバータ10Eは不要である。
しかし、図10の制御回路構成ではモータ1個当たりに2個のトランジスタであったことに比較して、図11の構成はトランジスタが4個と数が多い。どちらの制御回路を使用すべきかは、周辺で使用するモータ個数、製作の都合などで選択することもできる。
図10、図11に示したように、本発明モータは簡素で低コストな制御回路で駆動することができる。簡素化できる要因は、本発明モータが2個の巻線で駆動できる構成であり、かつ、電流が直流電流であるという点である。図57に示した従来の3相交流モータの制御回路に比較し、制御回路の素子数を少なくできる。また、図10の制御回路構成の場合、各相の巻線に直列に接続したトランジスタの数が1個であり、トランジスタのオン電圧降下による損失を低減することができ、制御回路の効率向上も期待できる。
次に、ロータの第3の磁極であり、図7、図8で示したX極磁極23の具体例を図12に示し説明する。
図12では、X極磁極のロータ表面形状を示しており、紙面で水平方向がロータの円周方向を示し、紙面で上下方向はロータ軸方向を示している。図1などに示したロータのX極磁極はN極とS極の中間の特性であり、例えば図12の(a)の構成である。ロータ軸方向に永久磁石のN極(以下、N極磁石と呼ぶ)121と永久磁石のS極(以下、N極磁石と呼ぶ)122とを配置している。このN極磁石121とS極磁石122は並列に配置されている。
ステータ磁極の形状が、図7の(b)、あるいは、図8の(a)の形状であれば、各ステータ磁極に対向し通過する磁束は、N極磁石121が対向する部分とS極磁石122が対向する部分とが相殺し、それらの中間の特性となる。その結果、図12の(a)のX極磁極がステータ磁極に及ぼす作用は、磁束が零のロータ磁極特性である。すなわち、ロータのN極磁極21とS極磁極22の中間の特性となる。
加えて重要なことは、図12の(a)のX極磁極は平均値としては磁気的に零であるが、このX極磁極と各ステータ磁極の間では磁束が各部で往復していることである。ロータのX極磁極と各ステータ磁極の間では、N極磁極およびS極磁極と同様に、吸引力が発生している。各ステータ磁極に作用するロータとの間の吸引力の変動は、モータの振動、騒音の主要原因となっていることが多く、大変重要なことである。X極磁極のラジアル方向吸引力を、N極磁極およびS極磁極と同様な吸引力特性とすることは、モータの振動、騒音を低減する上で重要である。
さらに、コギングトルク、トルクリップルの観点でも、ステータ磁極とロータのX極磁極との間の吸引力が重要な要素である。X極磁極の円周方向吸引力を、N極磁極およびS極磁極と同様な吸引力特性とすることは、モータのコギングトルク、トルクリップルを低減する上で重要である。
また、図8の(b)では、N極磁極21とS極磁極22とのロータ軸方向長さがほぼ同じである例を図示しているが、これらの長さの比率は、モータに求められる特性により、1:2など自在に選択できる。
なお、X極磁極は、前記のトルクリップル、振動等の問題を多少犠牲にしたり、他の方法で補うのであれば、その磁気的特性を多少N極特性に偏る、あるいは、S極特性に偏ることも可能である。さらには、X極磁極を空間で実現する。あるいは、X極磁極を樹脂などの非磁性体で実現する。あるいは、透磁率の低い磁性体で実現することも可能である。あるいは、異なる磁気特性の永久磁石を使用することもできる。
図12の(b)は、X極磁極として小さな形状のN極磁石123と小さな形状のS極磁石124を複数個配置して実現する例である。この場合には、N極磁石123とS極磁石124との間の漏れ磁束が増加しやすくなるので、ステータ磁極との吸引力がやや減少する恐れがあり、その点を配慮する必要がある。また、図12の(c)の様な3角形状のN極磁極125、127とS極磁極126、128の構成としてX極磁極を構成することもできる。このように種々構成で、磁気的に中性のX極磁極を構成することができる。
図12の(d)は、台形形状のN極磁石12AとS極磁石129でX極磁極を構成している。このX極磁極の特性は、紙面で左側から右側に向かってその磁気特性がN極特性からS極特性に変化する点である。
ロータのX極磁極は、N極およびS極と円周方向に隣接させて使用するので、2相の巻線で交互に駆動して回転トルクを得、スムーズな切り替えを実現する一手法として使用できる。コギングトルクを低減する点でも効果的である。N極磁石12AとS極磁石129とは対称形状でなくてもよく、台形以外の形状など種々の形状に変形することも可能である。また、ロータのX極磁極は、N極側の最も大きな磁束密度BnmaxとS極側の最も大きな磁束密度Bsmaxとの間の磁気特性を示す磁極であり、相対的な磁気特性の磁極を示している。従って、後に図12、図18、図19、図20に示すように、X極磁極はモータ設計の仕様により種々の形態で実現することができる。
次に、本発明モータの特徴について説明する。
図1から図12のモータ構成で説明したように、モータは小型、低コストである。図1に示す環状巻線は、単純な形状なので製作が容易で高占積化が容易であり、巻線抵抗値を下げることができるのでジュール熱を低減でき、モータは高効率である。
モータの磁気回路は比較的簡素な構成なので、小型モータの場合板金の折り曲げ構成で製作すれば、金型で高速に量産することができ、製作が容易である。組立についても、部品点数が少ないので効率の良い組立が可能である。
本発明モータは制御回路が簡単になる構成としているので、モータの巻線電流を通電するトランジスタの数を少なくすることができ、制御回路が低コストで小型である。
図10の制御回路で巻線電流を通電する場合、A相電流IaとB相電流Ibの2個の直流電流を制御するだけで連続回転トルクを生成することができる。複数のモータを駆動する場合、モータ1個あたりのトランジスタ数は2個である。
また、図10の制御回路構成とすることにより、トランジスタのオン電圧降下を低減することが可能であり、制御回路は高効率でもある。さらに、制御回路が高効率であれば、放熱設計の点でも小型化が可能である。
また、ステータがロータに対向する面の形状は図7の(b)の例に示すように、ロータに対する磁気的なインピーダンスを円周方向にほぼ均一にすることができる。
さらに、ロータの各相磁極のステータ磁極に対する磁気的な特性の均一化を実現することも可能である。そのことより、モータのラジアル方向の振動、騒音の低減が可能であり、コギングトルクの低減、トルクリップルの低減も可能である。これらの結果、静粛なモータを実現することが可能である。
これに対し、従来の集中巻きのブラシレスモータは、ステータの各歯に巻線を巻回する必要があり、巻線製作時間の問題と巻線占積率に起因するジュール熱増大の問題があり、コストと効率の問題がある。また、従来の集中巻きのブラシレスモータおよび図49の環状巻線構造のモータなどは、3相交流電圧、3相交流電流のモータであり、その駆動には図57に示すような6個のトランジスタが必要である。したがって、駆動回路のコストの問題、大きさの問題、効率の問題がある。なお、本発明モータは、3相交流モータに対して相対的に表現すると、2相の直流モータであると言える。
本発明モータの主な用途は片方向回転を想定しているが、ファン、ポンプなどの多くの用途がある。家電用、自動車用、産業用などの広範囲な機器に使用され、例えば、ファンは小型から大型までたくさん使用されている。特に人間の近くで使用されるファンは静粛であることが強く望まれる。
図9におけるA相電流IaとB相電流Ibによるトルクの乗り継ぎをよりスムーズにできるように、図示した台形状の電流波形を工夫し、トルクリップルの低減を行うことができる。また、後で述べるように静粛化のためには、コギングトルクの低減、ステータとロータのラジアル方向の吸引力の回転変化率を小さくすることも重要である。
また、従来の機械式の段階的な可変速ではなく、高品質なファンなどでは自在な可変速運転が必要となり、省電力の観点では高効率化の要求も強い。本発明モータは、低コスト、小型でありながらこれらの要求にも応えることができる。
また、ファンなどの用途の場合、ロータを外周側へ配置したアウターロータ構成が望まれることも多い。図1、図8のモータをアウターロータ構成に変形することも可能である。さらに、片方向回転の用途として各種のポンプがある。電気自動車の駆動用モータも前方向への駆動を主としているので、図1、図8などの片方向回転モータを大型化して使用することができる。超小型から大型モータまで、種々サイズのモータとして使用することができる。
次に、本発明の前記特徴を実現する技術について説明する。
図8のモータ構成の例では、ロータのN極磁極21、S極磁極22、X極磁極23の円周方向幅を電気角で120°とし、X極磁極23の磁気的特性をN極磁極21とS極磁極22の中間の特性としている。そして、ステータのA相磁極83の円周方向幅を電気角で120°としている。その結果、図8の(a)に示すように、A相電流として正の電流を通電することにより、電気角で240°の間に渡って一方向の一定トルクを発生させることを可能とした。X極磁極23を作ることにより、トルクは低下するが180°以上の範囲に渡って、直流電流で駆動できる構造とした。B相ステータ磁極84についても、A相ステータ磁極83に対して円周方向に180°の位相差を持つ特性とし、同様に電気角で240°の間に渡って一方向の一定トルクを発生させることを可能とした。
これらの結果、2相の直流電流を交互に通電することにより連続回転トルクを発生することが可能なモータとなっている。モータ電流を通電するトランジスタを2個にできるので制御回路を大幅に簡素化できる。ここで、2個の電流が直流であることが制御回路の簡素化の点で大変効果的である。後で述べるが、複数の本発明モータを制御する場合、さらに、モータ1個当たりのトランジスタの数を低減することも可能である。例えば、4個の本発明モータを制御する場合、6個のトランジスタで制御し、モータ1個当たりのトランジスタの数は1.5個とすることができる。
これに対し、従来の3相交流モータでは、一つの相の巻線へ直流電流を通電してトルクを発生可能な範囲は、電気角で180°以下である。家電で主に使用されている集中巻きのブラシレスモータでは、その駆動範囲は120°以下である。通常、ブラシレスモータは6個のトランジスタで制御されているが、3個のトランジスタで3個の直流電流により駆動することも可能である。この時、電流の波形率は(2/3)0.5 =0.816から(1/3)0.5 =0.577に小さくなるのでモータ効率は低下する。
図8に示す本発明モータの電流通電範囲は、電気角で180°から240°の範囲で制御することができ、電流の波形率では、(1/2)0.5 =0.707から(2/3)0.5 =0.816とすることができる。この場合には、ブラシレスモータの3個の直流電流と本発明モータの2個の直流電流とでは、モータ効率および制御回路の規模の点で大きな差となる。
次に、本発明モータの前記特徴が成立する条件について説明する。
一つの巻線に直流電流を通電して、電気角で180°以上の範囲に渡り同一方向のトルクを生成する必要がある。なお、ロータが従来のN極磁極とS極磁極である場合には、一つの巻線に直流電流を通電して一つのステータ磁極に起磁力を印加してトルクを発生できる範囲は電気角で180°以下となる。
本発明では、第3のロータ磁極であるX極磁極を作成すること、吸引側のロータ磁極の円周方向幅WRKと前記X極磁極との円周方向幅WXとの和(WRK+WX)を電気角で180°以上とすること、ステータとロータ磁極との間に吸引力を発生させるステータ磁極の円周方向幅WRKを180°以下とすることを基本条件としている。
WRK+WX>180° (24)
WRK<180° (25)
なお、ここでいうロータのX極磁極の構成は、種々形状が可能である。図12、図16だけでなく、後に図19に示すように、モータの全周が電気角で720°以上の多極のモータでは、平均値としてX極磁極を構成することができる。すなわち、全周のロータ磁極の内、同一の電気角の複数のロータ磁極の特性の平均値がその領域のロータ磁極特性として作用することを利用する方法である。前記のその同一電気角の領域を複数個合わせてX極磁極であると定義する。また、後に図20に示すように、ロータのX極磁極は、永久磁石だけでなく高磁束密度を得られる軟磁性体で構成することもできる。飽和磁束密度の異なる複数種の軟磁性体を使用してX極磁極を構成することもできる。
また、一つの巻線に直流電流を通電して一つのステータ磁極に起磁力を印加して連続的なトルクを電気角で180°以上の間に渡って生成できる条件は、ステータ磁極の円周方向幅WRKが前記X極磁極との円周方向幅WXより大きいことである。
WRK>WX (26)
そして、二つの巻線にそれぞれ直流電流を適宜通電して、モータの全周に渡って連続トルクを生成できる必要条件は、前記式(24)、(25)、(26)を満たすステータ磁極を2組備えることである。なお、ロータのX極磁極が隣接するロータ磁極との境界が定かでない図16の(d)、(e)などの場合は、(24)、(25)、(26)式を勘案して修正する必要がある。ステータ磁極とロータ磁極が対向する面の形状が略長方形ではなくスキューが加えられた形状、台形形状、菱形形状、正弦波形状などの異形形状である場合についても、(24)、(25)、(26)式を勘案して修正する必要がある。
また、直流電流を通電する2個の巻線で連続的な回転トルクを得る一つの方法は、片方のユニットUAが(180°+α)の範囲WUAで同一方向のトルクを生成することができれば、他方のユニットUBが同一方向のトルクを生成可能な範囲WUBは、(180°−α)より大きければ良く、ユニットUBの同一方向のトルクの生成範囲が180°以下であってもユニットUAとUBとで構成するモータは連続的な回転トルクの生成が可能である。
WUA+WUB>360° (27)
素直に考えれば、(180°+α)の範囲で同一方向のトルクを生成可能な前記ユニットUAを2組配置する方法が考えられるが、モータ用のセンサの配置、巻線端子を引き出す都合、モータ製作上の都合などにより前記ユニットUAと前記ユニットUBとの組み合わせの方が望ましいことも考えられる。
なお、現実的には、前記の連続トルクの条件を緩和することも可能であり、トルク発生がある程度不連続であっても、ロータの慣性を利用して一定速度の回転を実現することができ、回転速度制御を行うことができる。その意味では、前記(24)、(25)、(26)式は本発明モータの絶対条件ではなく、多少の条件の欠落があっても良い。
なお、ロータのN極磁極とS極磁極の極性については、巻線の電流方向との関係で決まることであり、巻線の電流方向を逆向きとする場合は前記のN極磁極とS極磁極とを逆にして言い換える必要がある。本発明は、ロータ磁極の極性と巻線の電流方向とを逆にした構成を含むものである。
本発明モータについて、片方向のトルク生成、片方向の回転に関する構成、動作を主に説明した。しかし、部分的には、逆方向トルクの発生、回生制動も可能である。例えば、図8の(i)、(j)で電圧が負である領域で電流を通電すれば負トルクが発生し、回生動作となる。また、負トルクを、断続的ではあっても、継続して通電すれば逆方向の回転も可能である。
また、後に説明するように、正負の両方向電流を通電制御すれば、モータの電流波形率が改善するのでモータ効率を改善することができる。また、正方向トルク、逆方向トルクの出力して回転駆動を実現することができ、力行と回生の動作も可能であることから、4象限運転が可能である。ただし、制御回路は複雑になる。
前記のように、ロータの第3の磁極であるX極磁極の例を図12に示した。なお、X極磁極は、永久磁石の形状ではなく、X極磁極に相当する部分の永久磁石を無着磁とすることにより、N極とS極との中間の磁気特性とすることも可能である。ただし、この場合はロータのX極磁極と対向するステータ磁極の間での吸引力はほとんど発生しないので、ステータコアの振動、騒音には注意を要する。また、ロータのX極磁極を構成する他の方法の例は非磁性体で構成する方法である。樹脂等の非磁性体が活用でき、製作を容易にすることが可能である。ロータのX極磁極を空間で構成することもできる。
アルミ、ステンレスなどの金属の非磁性体を使用することもできる。金属の場合は、渦電流等の影響に注意を要する。
(実施例2)
次に、ステータ磁極の形状を変更した例を図13に示し、説明する。
図13のモータ構成は、図8のモータ構成の変形例である。図8の例と同様に、紙面の水平軸はロータの回転角θrを電気角で、−180°から720°まで示している。図1の様な円筒形状を水平展開した図としている。図13の(a)から(h)までの縦軸はロータ軸方向を示している。
図13の(a)は、A相のステータ磁極131、B相のステータ磁極132、C相のステータ磁極133を示している。各ステータ磁極は電気角で120°の位相差となっている。図8の(a)は、A相のステータ磁極83、B相のステータ磁極84は相対的に180°の位相差であり、図13の(a)のステータ磁極はこの点が異なる構成である。
A相のステータ磁極131は、電気角で0°から120°に配置し、対向する部分のロータの各永久磁石の磁束を通過させ、その通過磁束はA相磁束φaである。B相のステータ磁極132は、電気角で120°から240°に配置し、対向する部分のロータの各永久磁石の磁束を通過させ、その通過磁束はB相磁束φbである。C相のステータ磁極133は、電気角で240°から360°に配置し、対向する部分のロータの各永久磁石の磁束を通過させ、その通過磁束はC相磁束φcである。
図13の(b)は、各ステータ磁極に対向するロータ磁極で、N極磁極134、S極磁極135、X極磁極136である。これらのロータ磁極の円周方向幅は電気角で120°の例である。図13の(b)に示すロータ回転位置はθr=0°の回転位置である。これは、図2の回転位置の状態を示している。図13の(c)に示すロータ回転位置はθr=60°、図13の(d)に示すロータ回転位置はθr=120°、図13の(e)に示すロータ回転位置はθr=180°、図13の(f)に示すロータ回転位置はθr=240°、図13の(g)に示すロータ回転位置はθr=300°である。図13の(h)に示すロータ回転位置はθr=360°であり、図13の(b)のθr=0°と電磁気的作用は同じである。ロータ回転位置θrの変化に伴い、各ステータ磁極に対向するロータ磁極の位置が変化するので、各ステータ磁極を通過する磁束φa、φb、φcの大きさがロータの回転に伴って変化する。
ロータの回転方向は、図2では第1象限から第2象限側へ回転する方向であり、反時計回転方向CCWの回転方向を、ロータ回転位置θrの値が増加する正回転とする。この正回転方向は、図13では紙面で左側から右側へ移動する動きに対応させて説明する。
図13の(i)は、ロータが一定回転速度で回転する状態において、A相巻線16に発生する誘起電圧Vaを示す。このA相誘起電圧Vaは、A相巻線16の鎖交磁束であるA相磁束φaの時間変化率に比例し、A相巻線16とB相巻線17の巻き回数をNwとすると、前記の(2)式となる。A相磁束φaは、A相ステータ磁極131が対向するロータのN極磁極134、S極磁極135、X極磁極136より供給される。従って、前記A相磁束φaは、ロータ回転位置θrの回転移動に伴い、変化する。
図13の(i)のA相誘起電圧Vaについて、ロータ回転位置θrの順に説明する。
θr=0°のロータ回転位置では、図13の(a)と(b)を対比して分かるように、A相ステータ磁極131はロータのS極磁極135にほぼ全面が対向している。従って、A相磁束φaは負の最大値−φmaxである。この状態でロータが正回転すると、すなわち、図13の(b)では、ロータが紙面で右側へ移動すると、ロータのX極磁極136が対向するようになり、A相磁束φaは負の最大値−φmaxから零に近づくことになり増加する。そして、A相誘起電圧Vaは、(2)式より、N極磁極134、S極磁極135の磁束密度Bmに比例した値となり、A相磁束の回転変化率Δφa/Δθrに比例した正の値となり、前記(3)、(4)、(5)式となる。図13の(c)から図13の(h)においても、ステータ磁極131の動作は図8のA相ステータ磁極83と同様の動作である。図13の(i)と図8の(i)とは同じ特性となっている。
次に、図13の(j)は、ロータが一定回転速度で回転する状態において、B相巻線17に発生する誘起電圧Vbを示す。B相誘起電圧VbはB相巻線17の鎖交磁束であるB相磁束φbの時間変化率に比例し、前記(10)式となる。図13の(j)は、B相ステータ磁極132が図8のB相ステータ磁極84に比較して回転角位置が60°小さい。従って、図13の(j)は図8の(j)に比較して、紙面で左側へ60°シフトした特性となる。
次に、図13の(k)は、ロータが一定回転速度で回転する状態において、C相ステータ磁極を通過するC相磁束φcに鎖交する巻線の誘起電圧に相当する。このモータではC相巻線は存在しないが、A相巻線16とB相巻線17とを直列に接続した状態がC相巻線に相当する。ただし、極性は逆方向となる。仮想のC相誘起電圧Vcは前記(20)式となり、図13の(k)の通りである。ただし、巻線抵抗を零であるとして無視し、各相の漏れ磁束を零であるとして、モータを理想化した理論値を示している。
図13に示すモータ構成、モータ特性であるとき、A相巻線16のA相誘起電圧Vaである図13の(i)が正である区間でA相電流Iaを通電し、B相巻線17のB相誘起電圧Vbである図13の(j)が正である区間でB相電流Ibを通電し、交互に通電することにより連続回転トルクを得ることができる。なおここで、B相からA相へ乗り継ぐ部分の重なり角度がほぼ零であり、高速で精密な電流切り替えが必要となる特性のモータとなっている。図13では、図8のモータ構成の変形例を示した。このように、図8のモータ構成はある程度変形して使用することができる。
次に、図14に、図8のモータのトルク、出力を向上するモータ構成を示し、説明する。図14の水平軸はロータの回転角θrを電気角で、−180°から720°まで示している。図1の様な円筒形状を水平展開した図としている。図14の(a)から(h)までの縦軸はロータ軸方向を示している。
図14の(a)は、A相のステータ磁極141、B相のステータ磁極142、C相のステータ磁極143、147を示している。A相のステータ磁極141の円周方向幅は電気角で140°で、B相のステータ磁極142の円周方向幅は電気角で140°である。C相のステータ磁極は143と147の2個があり、円周方向幅はそれぞれ電気角で40°である。トルクを増加するため、図8のモータ構成に比較し、A相のステータ磁極141とB相のステータ磁極142の円周方向幅を広くし、C相のステータ磁極143、147の円周方向幅を狭くしている。
図14の(b)は、各ステータ磁極に対向するロータ磁極で、N極磁極144、S極磁極145、X極磁極146である。これらのロータ磁極の円周方向幅は電気角で120°の例である。N極磁極144の円周方向幅は電気角で150°で、S極磁極144の円周方向幅は電気角で150°で、X極磁極146の円周方向幅は電気角で60°である。トルクを増加するため、図8のモータ構成に比較し、N極磁極144とS極磁極144の円周方向幅を広くし、X極磁極146の円周方向幅を狭くしている。
図14の(b)に示すロータ回転位置はθr=0°の回転位置である。これは、図2の回転位置の状態を示している。図14の(c)に示すロータ回転位置はθr=60°、図14の(d)に示すロータ回転位置はθr=120°、図14の(e)に示すロータ回転位置はθr=180°、図14の(f)に示すロータ回転位置はθr=240°、図14の(g)に示すロータ回転位置はθr=300°である。図14の(h)に示すロータ回転位置はθr=360°であり、図14の(b)のθr=0°と電磁気的作用は同じである。ロータ回転位置θrの変化に伴い、各ステータ磁極に対向するロータ磁極の位置が変化するので、各ステータ磁極を通過する磁束φa、φb、φcの大きさがロータの回転に伴って変化する。
図14の(i)は、ロータが一定回転速度で回転する状態において、すなわち紙面でロータの各磁極144、145、146が左側から右側へ移動する状態において、A相巻線16に発生する誘起電圧Vaを示す。このA相誘起電圧Vaは、A相巻線16の鎖交磁束であるA相磁束φaの時間変化率に比例し、A相巻線16とB相巻線17の巻き回数をNwとすると、前記の(2)式となる。A相磁束φaは、A相ステータ磁極131が対向するロータのN極磁極144、S極磁極145、X極磁極146より供給される。従って、前記A相磁束φaは、ロータ回転位置θrの回転移動に伴い、変化する。
図14の(i)のA相誘起電圧Vaについて、ロータ回転位置θrの順に説明する。
θr=0°のロータ回転位置では、図14の(a)と(b)を対比して分かるように、A相ステータ磁極141はロータのS極磁極145にほぼ全面が対向している。従って、A相磁束φaは負の最大値−φmaxである。この状態でロータが正回転すると、すなわち、図14の(b)では、ロータが紙面で右側へ移動すると、ロータのX極磁極136が対向するようになり、A相磁束φaは負の最大値−φmaxから零に近づくことになり増加する。そして、A相誘起電圧Vaは(2)式より、N極磁極144、S極磁極145の磁束密度Bmに比例した値となり、A相磁束の回転変化率Δφa/Δθrに比例した正の値となり、前記(3)、(4)、(5)式となる。図14の(c)から図14の(h)においては、ステータ磁極141の動作は図8のA相ステータ磁極83の動作とは異なり、図14の(i)の特性となる。
次に、図14の(j)は、ロータが一定回転速度で回転する状態において、B相巻線17に発生する誘起電圧Vbを示す。このB相誘起電圧Vbは、B相巻線17の鎖交磁束であるB相磁束φbの時間変化率に比例し、前記(10)式となる。B相ステータ磁極142は、A相ステータ磁極141に対し電気角で180°の位相差があり、その形状は同じである。従って、図14の(j)は、図14の(i)に比較して、電気角で180°シフトした特性となる。
次に、図14の(k)は、C相ステータ磁極を通過するC相磁束φcに鎖交する巻線の誘起電圧に相当する。このモータではC相巻線は存在しないが、A相巻線16とB相巻線17とを直列に接続した状態がC相巻線に相当する。ただし、極性は逆方向となる。仮想のC相誘起電圧Vcは前記(20)式となり、図14の(k)の通りである。ただし、巻線抵抗を零であるとして無視し、各相の漏れ磁束を零であるとして、モータを理想化した理論値を示している。
図14に示すモータ構成、モータ特性であるとき、A相巻線16のA相誘起電圧Vaである図14の(i)が正である区間でA相電流Iaを通電し、B相巻線17のB相誘起電圧Vbである図14の(j)が正である区間でB相電流Ibを通電し、交互に通電することにより連続回転トルクを得ることができる。
図15に、電圧と電流とトルクの例を示す。図15の(a)、(b)は図14の(a)、(b)と同じであり、A相誘起電圧VaとB相誘起電圧Vbである。図15の(c)はA相誘起電圧Vaが正である区間で一定のA相電流Iaを通電している。図15の(d)はB相誘起電圧Vbが正である区間で一定のB相電流Ibを通電している。この時のトルクは図15の(e)となる。A相誘起電圧VaとB相誘起電圧Vbの値は、図8の(i)、(j)に比較して大きくなっているので、トルク平均値が大きくなることが分かる。
ステータのC相のステータ磁極143、147は、直接的にはトルク生成しないので、C相の円周方向幅を相対的に縮小することにより、A相とB相の円周方向磁極幅が大きくなり、平均トルクを向上させることができる。また、ロータのX極磁極146は、巻線に鎖交する磁束の回転変化率を向上するという観点では好ましくない面があり、X極磁極の円周方向幅を小さくすることによりトルクを向上することが可能である。なおその場合、トルクリップルは大きくなり易いので対応が必要である。
ここで、A相誘起電圧VaとB相誘起電圧Vbは正の値である領域において、その電圧が平坦な一定値とはなっていない。従って、トルクリップルを低減する必要がある場合には、何らかの改良が必要である。例えば、ステータ磁極の形状を長方形で示しているが、ロータ軸方向の形状を部分的に延長して変形し、同時に、ロータ磁極のロータ軸方向の形状を部分的に延長して変形することにより、各巻線の誘起電圧特性、トルク特性を改良することが可能である。また、A相電流IaとB相電流Ibとの通電方法をトルクリップルが低減するように電流値を工夫することもできる。通電電流の形状を変形する方法は、回路修正あるいはマイコンで制御する場合は制御ソフトウェア修正で行うことができるので、比較的容易である。
(実施例3)
次に、図16に、ロータ磁極の各種変形の例を示す。
図16の(a)は各相のステータ磁極のロータに対向する面の形状を直線展開した図で、図8の(a)と全く同じ形状である。図16の(b)は、図8の(b)において、X極磁極23に図12の(a)を適用した形状である。165がN極であり、166がS極である。図16の(c)は、図8の(b)において、X極磁極23に図12の(d)を適用した形状である。167がN極であり、168がS極である。図16の(d)は、図16の(c)において、N極とS極の片端を変形した例である。169がN極であり、16AがS極である。図16の(e)は、図16の(d)において、N極とS極の片端を変形した例である。16BがN極であり、16CがS極である。なお、図16の(e)のN極16BとS極16Cは三角形状となっている。
図17は、図16の(a)のステータ磁極と図16の(e)のロータ磁極を組み合わせたモータの誘起電圧と電流の例とトルクの例を示す図である。図17の(a)はA相誘起電圧Vaである。図17の(b)はB相誘起電圧Vbである。図17の(c)はC相誘起電圧Vcである。図17の(d)はA相電流Iaの例で、図17の(e)はB相電流Ibの例である。このように、各相電圧の平坦な部分で各相電流を交互に通電することにより、トルクリップルの小さい図17の(f)に示すトルクを得ることができる。
また、磁石形状が三角形状であることから、少なくともその部分においてステータとロータ間の磁石の変化に起因する吸引力の変化が滑らかとなり、低振動、低騒音で良好な特性となる。しかしここで、図16の(b)と図16の(e)とにおけるA相ステータ磁極161の鎖交磁束の最大値と最小値を考えると、図16の(e)は図16の(b)に比較しておおよそ2/3となるので、トルクの点では図16の(b)の方が大きい。
(実施例4)
次に、図18の(a)にステータの各磁極S01、S02、S03、S04の形状をスキューした例を示す。
図18の(c)にロータの各磁極S09、S0A、S0Bの形状をスキューした例である。このように、ステータあるいはロータの片方をスキューすることにより、ステータ磁極の円周方向端にロータ磁極の円周方向境界部が差し掛かるときのステータとロータ間の吸引力の回転変化率を低減することができる。その結果、ステータ及びロータの振動を低減でき、騒音を低減することができる。巻線の誘起電圧についても、電圧が正負に反転するときの変化率が低下する。なお、スキューの効果については、ステータとロータの相対的な関係なので、相対的にスキューした形状であればよい。例えば、ステータとロータとそれぞれ逆方向にα度スキューした場合、モータとしては2×α度スキューした効果が得られる。
次に、図18の(b)に各ステータ磁極がロータに対向する面の円周方向形状を水平展開した形状を示す。これらの形状S05、S06、S07、S08は、図8の(a)に示した長方形から、台形および菱形に変形している。
A相のステータ磁極S05は、図1、図2、図7の13に相当する。ロータからステータ側へ磁束が通る経路を考えると、図18の紙面で上側が広くなったS05の台形形状が磁路の磁気飽和を低減するために好ましい。B相のステータ磁極S06は、図1、図3、図7の14に相当する。ロータからステータ側へ磁束が通る経路を考えると、図18の紙面で下側が広くなったS06の台形形状が磁路の磁気飽和を低減するために好ましい。
A相のステータ磁極S05とB相のステータ磁極S06とが逆方向の台形形状としている。C相のステータ磁極S07、S08は、図1、図4、図7の14に相当する。S07、S08の形状はほぼ菱形となっている。C相のステータ磁極はロータ軸方向の中央に配置しているので、ロータ側からの磁束はロータ軸方向の両端側から中央側へ通ることになる。図18の(a)と(b)を比較して分かるように、両ステータ磁極を通過する磁束の回転変化率は同じになり、同一の誘起電圧特性となる。図18のステータ磁極の形状とロータ形状の変形例を示したが、正弦波形状などの種々形状に変形することができる。
なお、ステータ磁極の周辺では、ステータ磁極間の漏れ磁束も発生するので、図18で示すステータ磁極間の隙間も適切に設ける必要がある。モータがピークトルクを発生する時には、その漏れ磁束がステータ磁路の磁気飽和の一要因となる。
(実施例5)
次に、図19に、ロータのX極磁極を構成する他の方法について示し、説明する。
図19は図1のモータに類似したモータであり、ステータとロータとが対向する面の各ステータ磁極とロータ磁極の円周方向形状を直線に展開した図である。図19の水平軸はロータ回転位置θrで、縦軸はロータ軸方向位置である。図19ではモータ全周で、電気角で0°から720°のモータの例について示す。
図19の(a)は各相のステータ磁極で、図8の(a)で示した各相のステータ磁極と同じ形状、特性である。S21、S22はA相ステータ磁極であり、S23、S24はB相ステータ磁極であり、S25、S26、S27、S28はC相ステータ磁極である。
図19の(b)は、ロータの磁極形状である。S29とS2AはN極磁極であるが、同一形状ではなく、円周方向長さが電気角で120°と240°である。S2BとS2CはS極磁極であるが、同一形状ではなく、円周方向長さが電気角で240°と120°である。S2D、S2E、S2F、S2Gは各ロータ磁極の円周方向境界部である。2重線で示す境界部S2DとS2Eとは電気角で360°の間隔である。
一方、図19の(a)では、2個のA相のステータ磁極S21、S22が電気角で同一の位置に配置している。A相の巻線16に鎖交する磁束φaは、ロータ側からA相のステータ磁極S21へ通過する磁束φa1とステータ磁極S22へ通過する磁束φa2の和であり、φa=φa1+φa2となる。
従って、ロータの磁極形状は、電気角で0°から360°の形状R1と、360°から720°の形状R2とでは異なった形状であるが、A相巻線16の鎖交磁束φaは両形状R1、R2の平均値の形状から得られる磁束φaveの2倍である。
そして、φa=φa1+φa2=2×φaveと考えても等価である。そこで、図19の(c)に図19の(b)のロータ磁極を360°円周方向に移動した形状を示し、図19の(c)と図19の(b)を加えて2で割った平均値を図19の(d)に示す。図19の(c)のロータ磁極S2H、S2J、S2K、S2Lは、それぞれ、図19の(b)のS2C、S2A、S2B、S29と同じロータ磁極の形状、特性である。なお、図19の(c)に示すロータ磁極S2Mは、S2Hと同じ磁石である。
図19の(d)について、それぞれのロータ回転位置θrの角度の磁気特性を検証する。0°から120°の間は、S2BとS2Hとが共にS極磁極であり、それらの平均値もS2Nの0°から120°の間のS極と考えることができる。
120°から240°の間は、S29とS2Jとが共にN極磁極であり、それらの平均値もS2Pの120°から240°の間のN極と考えることができる。
240°から360°の間は、S2CはS極磁極であり、S2JはN極磁極であり、それらの平均値は、図19の(d)の240°から360°に示すように、S2QのS極が紙面の上側半分でS2PのN極が紙面の下側半分であると考えることができる。
360°から480°の間は、S2CとS2Kとが共にS極磁極であり、それらの平均値もS2Qの360°から480°の間のS極と考えることができる。
480°から600°の間は、S2AとS2Lとが共にN極磁極であり、それらの平均値もS2Rの480°から600°の間のN極と考えることができる。
600°から720°の間は、S2AはN極磁極であり、S2MはS極磁極であり、それらの平均値は、図19の(d)の600°から720°に示すように、S2SのS極が紙面の上側半分でS2RのN極が紙面の下側半分であると考えることができ、図示するロータ磁極形状、特性となる。また、B相のステータ磁極S23、S24についてもA相と同様である。
結局、図19の(a)に示す各相のステータ磁極と、図19の(b)に示す各ロータ磁極とで構成するモータの特性は、図19の(d)の各ロータ磁極とで構成するモータの特性と同じである。そして、この図19の(d)の各ロータ磁極は、図8の(b)に示すロータのX極磁極として図12の(a)のX極磁極の構成を適用したロータと全く同じである。従って、図19の(a)と(b)で構成するモータは、図8の(a)と(b)で示したN極磁極21、S極磁極22、X極磁極23の特性を実現していることになる。
すなわち、図19の(b)において、ロータの240°から360°の間と、600°から720°の間とで、等価的にX極磁極を構成していると言える。図19の(b)は、図12で示したX極磁極の構成例とは異なるX極磁極の実現技術であると言える。
図19の(a)と(b)で使用した技術は、ロータのN極とS極との円周方向境界の一部の位置を円周方向に移動する技術と、多極による同相ステータ磁極の平均化技術である。前記のように、2重線で示す磁極境界部S2DとS2Eとは電気角で360°の間隔で固定している。S2DとS2Eの間に配置している他の2個の磁極境界部については、磁極境界部S2Fは240°で、S2Gは720°としており、電気角での位置を相対的に120°シフトしている。S2Gは電気角的に360°の位置としている。その結果、電気角で240°から360°の間の磁気特性が平均化した特性を示していると考えることができる。その他の構成条件は、(24)、(25)、(26)、(27)式などで示した条件である。
また、図20で示すように、ロータ磁極の一部に飽和磁束密度の高い軟磁性体を使用し、モータのピークトルクを大きくすることもできる。永久磁石の量を削減できるので低コストでもある。永久磁石と軟磁性体を混合したロータ磁極としても良い。
(実施例6)
次に、ロータ磁極の一部に軟磁性体を使用する構成を図20に示し、説明する。
図20の(a)と(b)は各相のステータ磁極と各ロータ磁極で、図8の(a)と(b)で示した各相のステータ磁極と同じ形状、特性である。ロータ側からステータ側へ向かう磁束の方向をプラスとして、例えば、S極磁極22の磁束密度Bsが−1.0テスラで、X極磁極23の磁束密度Bxが0テスラで、N極磁極22の磁束密度Bnが+1.0テスラであるとする。希土類磁石などの高い磁束密度の永久磁石を使用する例である。
モータの各巻線の電圧と磁束密度とトルクなどの関係は、(2)、(3)、(4)式などのように示されるので、巻線の鎖交磁束φa、φbの回転変化率dφa/dθr、dφb/dθrおよびトルクTmは、各ロータ磁極の磁束密度の差(Bx−Bs)、(Bn−Bx)に比例することになる。具体的な磁束密度を代入して、(Bx−Bs)=1.0テスラ、(Bn−Bx)=1.0テスラとなる。A相誘起電圧VaとB相誘起電圧Vbは、図8の(i)、(j)の電圧波形形状となる。
このモータのトルクTmは、巻線の通電電流によりロータ側からステータ側へ起磁力を印加し、磁束を励起することにより生成しようとしている。従って、N極磁極21は永久磁石のN極に変え、珪素鋼板などの軟磁性体で置き換えることもできる。
図20の(c)にN極磁極21を軟磁性体磁極S41に置き換えた例を示す。珪素鋼板などの飽和磁束密度は2テスラ近い大きな値となるので、前記(Bn−Bx)は2テスラ近い値となり、最大トルクを向上することが可能である。同時に磁石量を減らすことができるのでコストを低減することも可能である。この時のA相誘起電圧VaとB相誘起電圧Vbは、図20の(i)、(j)の破線S4H、S4Kで示す電圧波形形状となる。破線が示されていない角度領域はS4G、S4Jで示す電圧波形形状となる。ただし、軟磁性体なので、励磁電流の負担は必要で、小さな電流領域ではむしろトルクが低減することもある。
次に、図20の(c)では、前記磁束密度の差(Bx−Bs)、(Bn−Bx)がアンバランスになるので、改良した例を図20の(d)に示す。
電気角で240°から360°の領域のX極磁極の磁束密度が+0.5テスラとなるように、永久磁石で平均磁束密度が零の部分S46と軟磁性体S44とが混在し組み合わせた構成としている。この領域で、軟磁性体のロータ軸方向幅が全長の1/4であれば、電流を通電したときの平均磁束密度は、おおよそ0.5テスラとなる。この時、Bs、Bx、Bnは、それぞれ、−1.0テスラ、+0.5テスラ、2.0テスラとなり、(Bx−Bs)=1.5テスラ、(Bn−Bx)=1.5テスラとなるので、凹凸の少ない誘起電圧波形を実現することができる。前記の図20の(b)の例に比較し、振幅が1.5倍で、図8の(i)、(j)の電圧波形形状となる。なお、S極磁極S45はS42と同じ構成である。
次に、フェライト磁石を活用したロータ磁極の構成例を図20の(e)に示し、説明する。S48はS極磁極でフェライト磁石のS極で構成し、その磁束密度Bsは−0.4テスラとする。S49はX極磁極でフェライト磁石のN極で構成し、その磁束密度Bxは+0.4テスラとする。S47はN極磁極で軟磁性体で構成し、その磁束密度Bnは+2.0テスラとする。この時、前記磁束密度の差(Bx−Bs)=0.8テスラ、(Bn−Bx)=1.6テスラとなる。この時のA相誘起電圧VaとB相誘起電圧Vbは、図20の(i)、(j)の破線S4H、S4Kで示す電圧波形形状となる。
フェライト磁石は磁束密度が低いが、飽和磁束密度の高い特性を活用してトルクの向上が可能である。なお、フェライト磁石は希土類磁石などに比較して安価で軽量という特徴がある。図20の(e)例では電圧バランスが少し崩れている。
次に、この電圧バランスを改善する方法を図20の(f)に示し、説明する。
図20の(f)の電気角で240°から360°の領域のX極磁極の磁束密度が+0.8テスラとなるように工夫する。電気角で240°から360°の領域で、3/4の範囲をフェライト磁石のN極S49で構成し、残りの1/4を軟磁性体S47で構成する。このときの平均磁束密度Bxは、おおよそ0.8テスラとなる。この時、Bs、Bx、Bnは、それぞれ、−0.4テスラ、+0.8テスラ、2.0テスラとなり、(Bx−Bs)=1.2テスラ、(Bn−Bx)=1.2テスラとなる。凹凸の少ない誘起電圧波形を実現することができる。図8の(i)、(j)の電圧波形形状となる。なお、S極磁極S4BはS48と同じ構成である。
また、他の方法として、X極磁極S49に希土類磁石粉と樹脂の成形体として使用されるいわゆるボンド磁石のN極で構成し、その磁束密度Bxが+0.8テスラとすることもできる。この場合、磁束密度Bsは−0.4テスラ、磁束密度Bnは+2.0テスラなので、前記磁束密度の差(Bx−Bs)=1.2テスラ、(Bn−Bx)=1.2テスラとなる。電圧バランスが改善し、この時のA相誘起電圧VaとB相誘起電圧Vbは、図8の(i)、(j)に示す電圧波形形状となる。
次に、磁束密度の高い希土類磁石などと安価なフェライト磁石と磁束密度が高く、安価な軟磁性体をバランスよく組み合わせる方法について図20の(g)に示し、説明する。 S4EのS極磁極は磁束密度が−1.2テスラの希土類磁石等で構成し、S4FのX極磁極はフェライト磁石のN極の+0.4テスラで構成し、S4DのN極磁極は軟磁性体で構成し、その磁束密度Bnは+2.0テスラとする。この時、前記磁束密度の差(Bx−Bs)=1.6テスラ、(Bn−Bx)=1.6テスラとなる。バランスが良いので、凹凸の少ない誘起電圧波形を実現することができる。
具体的には、図8の(i)、(j)の電圧波形形状となる。前記磁束密度の差が1.6テスラと大きく大きなトルク特性となる。また、磁束密度の大きい希土類磁石は効果であるが、図20の(g)の構成ではその量を少なくできるので、高性能なモータを比較的低コストで製作できることになる。
また、軟磁性体には飽和磁束密度の大きい材質から小さい材質まで種々の軟磁性体がある。これらを使い分けることもできる。小さい軟磁性体としては、種々の構成を使用できる。例えば、材質として飽和磁束密度が低い材質のロータ磁極構成、飽和磁束密度の大きい材質を隙間を設けながら配置するロータ磁極構成、非磁性材質のロータ磁極構成などである。
なお、図20で示した各磁極の形状は、図14などに示したステータ磁極形状、ロータ磁極形状に変形することも可能であり、さらに、トルクを向上することが可能である。図9に示した電流通電例においても、より大きな平均トルク出力が必要な場合は、A相電流IaとB相電流の通電幅を電気角で240°まで広げることによりができ、平均トルクを増加させることができる。
(実施例7)
次に、巻線の巻き回数を、巻線切り替え手段を用いて切り替え、高速回転の駆動を実現する方法を図21に示し、説明する。
S51、S52は、図1に示すモータ等の2相の巻線である。S54、S55はそれぞれの巻線の片端端子である。各巻線S51、S52の他端は、図示するように、3個所から巻線を取り出せる構造となっていて、巻線選択手段S53、S56により巻線のタップを選択できる構成としている。巻線S51、S52のタップを選択することにより、制御して通電する巻線S51、S52の巻き回数を変えることができる。S57、S58は選択した各巻線タップに接続された巻線S51、S52の端子である。
このような構成とすることにより、各巻線の巻回数は3通りの巻回数が選択できるので、巻線端子間S54とS57およびS55とS58の電圧を選択することができる。従って、一定電圧源を使用するモータ駆動回路で制御し、より広い回転数範囲で運転し、トルクを出力できる。
巻線電圧は巻線ターン数に比例するので、低速回転では全巻線ターンを使用し、高速回転では巻回数の少ないタップを使用する。定出力制御が必要な場合には、この巻線選択により定出力範囲を広げることができる。巻線切り替えのタップ数は、2個から必要に応じて多数のタップ数とすることができる。また、巻線タップを設ける方法についても、最も簡単な方法を示したが、例えば、同相の巻線を2個に分けて直列接続と並列接続に変えることにより巻き回数を変えるなど種々の巻線切り替え構成が適用できる。
なお、具体的な前記の巻線タップの切り替え手段S53、S56には、電磁接触器などが使用できる。接触器を使用した巻線の切り替え方法の場合は、電流を確実に遮断した状態で切り替えることにより接触器での火花を防止し、接触子を比較的小型化することができる。また、巻線タップの切り替え手段にトランジスタIGBT、サイリスタ、トライアックなどの半導体を使用することもできる。
また、モータ巻線の電圧を可変する方法として、ステータロータ間のエアギャップ長さを可変することもできる。具体的な方法は、例えば、ステータ軸方向長さLsよりロータの軸方向長さLrの方が2倍長い構造とし、ステータの内径が片端と他端とで10mm異なるテーパ状の形状とし、ロータの片端直径はステータの内径よりエアギャップ長の2倍だけ小さい直径とし、ロータのテーパは同一角度のテーパとする。そして、ロータに対するステータのロータ軸方向位置を相対的にステータの軸方向長さLsまで動かすことができる構造とする。このような構成で、ロータに対するステータのロータ軸方向位置を相対的にLs動かすと、エアギャップの量が直径で10mm大きくすることができる。片側のエアギャップ長で5mmを可変できることになる。このようにエアギャップ長を可変することにより、ステータとロータ間の磁束を可変し、モータの誘起電圧を可変し、モータ回転数の可変範囲を広げることもできる。また、ロータの有効長を機械的に変える方法もある。ロータの磁束の量を機械的に変える方法もある。
(実施例8)
次に、本発明モータの具体化構造の縦断面図の例を図22に示し、説明する。
図1などに示した本発明モータの電磁気的な機能を成す構成要素は、大別してステータの環状巻線とステータの磁気回路とロータの磁極である。
図22では、図1に示したモータのステータ磁気回路を電磁鋼板の打ち抜きと折り曲げで製作する方法について示している。自動車の補機、家電などの用途では小型のモータが多く使用されている。このようなモータは種々機構の隙間などに配置されることも多く、扁平で薄形の構造も求められることが多い。図22では、主に、トルクで0.5Nmより小さな領域のモータとして特徴を発揮するモータ構造である。
11はロータ軸、12はロータ磁極で永久磁石などである。16はA相巻線、17はB相巻線である。N01はA相のステータ磁極と磁路を構成し、その形状は、図2の13、18、図7の(b)の24、図8の83で示したような形状である。
この軟磁性体N01の製作方法は、平板状の電磁鋼板を適切な形状にプレス金型などで打ち抜き加工を行い、その後、折り曲げ加工あるいは絞り加工を金型などで行う。金型を使用した加工で製作することにより、加工時間の短縮、自動化が容易であり、大量生産、低コスト化が可能である。トルク出力の小さなモータの場合、その磁気回路を1枚の電磁鋼板で構成することができる。所望トルクが大きい場合は、電磁鋼板を2枚重ねあるいは3枚重ねにして通過磁束量を増加し、トルクを向上することも可能である。
N02はB相のステータ磁極と磁路を構成し、その形状は、図3の14、18、図7の(b)の24、図8の84で示したような形状である。この軟磁性体N02の製作方法は、前記軟磁性体N01と同様に製作することができる。
N03、N04はC相のステータ磁極と磁路を構成し、その形状は、図4の15、18、図7の(b)の24、図8の85、86で示したような形状である。この軟磁性体N03、N04の製作方法は、前記軟磁性体N01、N02と同様に製作することができる。ただし、軟磁性体N01、N02とはその配置場所、形状が異なるので、N03とN04を一体化するなどの形状の工夫も可能である。また、所望トルクが大きい場合に、電磁鋼板の枚数を変えることもできる。
なお、電磁鋼板の種類は、SPCC、珪素鋼板、電磁ステンレスなどがコスト、製作の容易さ、性能などの要求により使い分けることができる。トルクの大きさに応じて電磁鋼板を厚板化することもできる。なお、電磁ステンレスは成形加工が容易で、電気抵抗が大きいので、渦電流損が比較的小さい。また、このような形状の軟磁性体の場合、渦電流を低減するための対応も必要に応じて行う必要がある。まず、円周方向に誘起する電流を低減するためには円周方向の一部に切断面を設けて円周方向の電気抵抗を増大する対策が効果的である。
電磁鋼板各部の渦電流を低減するためには、電磁鋼板の場所に応じて切れ目を入れて渦電流が流れにくくする対策が効果的である。電磁鋼板を積層して使用する場合は、電磁鋼板表面に電気絶縁膜を設ける、あるいは、電気絶縁フィルムを挟むことが効果的である。また、ステータの磁路およびロータの磁路には、電磁鋼板の他に圧粉磁心、塊状鉄心、アモルファス薄体など種々の軟磁性体を活用することができる。圧粉磁心は粉体状の軟磁性体の表面に電気絶縁膜を施し、金型でプレス成形して自在な形状を作ることができる。従って、圧粉磁心では、渦電流損が小さく、各相の磁束φa、φbが大きく取れるように磁路断面積を大きくすることができる特徴がある。モータの大容量化も可能である。
(実施例9)
次に、円盤状形状の永久磁石を用いた本発明モータの例を図23に示し、説明する。
N12は図24の(a)および図25の(a)に示すような円盤状の永久磁石である。N11は永久磁石N12を指示する固定部である。16はA相巻線、N30はD相巻線である。実線で示すN13はA相のステータ磁極で、実線で示すN14はB相のステータ磁極で、破線で示すN15とN16はC相のステータ磁極である。N17はステータのバックヨーク部である。なお、ステータの軟磁性体部は、前記のように、電磁鋼板での製作、圧粉磁心での製作などが可能である。
永久磁石N12のA相ステータ磁極N13に対向する面の形状は、図23の紙面で上側から下側に見て、図24の(a)の形状である。N21はロータのN極磁極で、N22はS極磁極で、N23はX極磁極である。A相ステータ磁極N13の永久磁石N12に対向する面の形状は、図23の紙面で上側から下側に見て、図24の(b)の形状である。
C相のステータ磁極N15は、図24の(b)に示すように、A相ステータ磁極N13以外の全てのスペースである。この時、A相ステータ磁極N13の鎖交磁束φaの特性は、図8の(a)のA相ステータ磁極83の鎖交磁束φaの特性と、定性的に同じである。
永久磁石N12のD相ステータ磁極N14に対向する面の形状は、図23の紙面で上側から下側に見て、図25の(a)の形状である。N24はロータのN極磁極で、N25はS極磁極で、N26はX極磁極である。図25の(a)は円盤状永久磁石である図24の(a)の裏面なので、N極の裏面はS極になっていて、S極の裏面はN極になっていて、X極の裏面は平均磁束密度が零であることを前提にX極としている。この時気を付けたいのは、ロータが反時計回転方向CCWへ回転するとき、図25の(a)ではS極磁極、X極磁極、N極磁極の順であり、図25の(b)ではN極磁極、X極磁極、S極磁極の順であり、磁極の順番が逆になることである。
D相ステータ磁極N14の永久磁石N12に対向する面の形状は、図23の紙面で上側から下側に見て、図25の(b)の形状である。C相のステータ磁極N16は、図25の(b)に示すように、D相ステータ磁極N14以外の全てのスペースである。この時、D相ステータ磁極N14を通過するD相磁束φdの特性は、図8の(a)のB相ステータ磁極84を通過するB相磁束φbと符号が逆であり、φd=−φbである。符号が反対になる理由は、前記のように、図25の(a)と図24の(a)とは円盤状永久磁石の表裏の関係になっていることである。従って、D相磁束φdが鎖交するD相巻線N30の電流IdはB相電流Ibと符号を逆にし、Id=−Ibとする必要がある。この結果、巻線の電圧と電流との両方がB相とD相では逆になるので、発生するB相のトルク成分とD相のトルク成分の方向は同じ方向になる。
なお、図1のロータの永久磁石12であり、図2の21、22、23に示すような永久磁石は、精度良く円弧状に作る必要がある。その製作、組立は簡単ではなく、コスト負担が小さくない。この点では、図23、図24、図25に示したロータの永久磁石N12、N21、N22、N23、N24、N25、N26は、簡単な円板状の永久磁石となっている。従って、磁石の製作及びロータの組立が容易なので、モータの低コスト化が可能である。また、円盤状磁石の表裏両面を活用できるので、C相のステータ磁極N15、N16が広いスペースとなっている。従って、A相ステータ磁極N13、D相ステータ磁極N14、ロータ磁極の円周方向幅の変形などの自由度が高く、モータ特性の改良なども容易である。なお、永久磁石N12が回転するときには、遠心力、振動、吸引力などが加わり、信頼性上その強度が問題となることもある。その観点で、永久磁石N12の表面などを非磁性物質で保護し、強化することもできる。
(実施例10)
次に、モータの制御回路を含めたモータ全体の小型化について、図26に示し、説明する。図23、図26に示すように、円板形状の永久磁石N12を採用することによりロータ周辺の形状自由度が増加している。実線で示すN33はA相ステータ磁極で、実線で示すN34はD相ステータ磁極で、破線で示すN35とN36はC相のステータ磁極である。N37はモータの制御回路である。この制御回路N37のスペースを確保するために、図23のモータ形状を変形している。図26の配置構成とすることにより、制御回路N37を含めてモータ形状を簡潔な構成とし、小型化を実現している。
(実施例11)
次に、ロータの配置、形状を変えることにより高トルク化する方法を図27に示し、説明する。
モータのトルクTmは、(22)、(23)式に示したようにA相誘起電圧Va、B相誘起電圧Vbに比例し、(2)、(10)式に示したようにA相鎖交磁束φa、B相鎖交磁束φbに比例する。限られたモータ形状の中でモータを高トルク化する方法として、図27に示すようにロータ直径を大きくする方法がある。
N52に示すような円板形状の永久磁石の場合、磁束の量が直径の2乗に比例するので、例えば、ロータ直径を1.5倍に大きくすればトルクは2.25倍に大きくなる。
図27の円板状永久磁石N52の外径形状は、図23の永久磁石N12の外径形状の約1.5倍としているので、約2.25倍のトルクが期待できる。実線で示すN55はS相ステータ磁極で、実線で示すN56はD相ステータ磁極で、破線で示すN56とN57はC相のステータ磁極である。N58はステータのバックヨークで、図23のバックヨークN17に比較してロータ軸方向長さが大きくなっている。
図1の構成のモータの場合は、その構造上、ロータ直径を大きくすることには限界がある。このような円筒形状のロータの場合、巻線への鎖交磁束を大きくする手段としてアウターロータのモータ構成とすることが知られている。しかし、アウターロータ構成のモータは外径側が回転するので、その方が都合の良いファンなどの特定用途では積極的に活用されている。図27に示すモータは、磁束とトルクの点では、図1のモータをアウターロータ構成のモータとしたことに匹敵する。しかも、インナーロータ構造なので一般的な広範囲の用途に使用することができる。なお、図27に示すモータは、円板状の永久磁石N52によりモータ構造の自由度が増加したことにより実現可能となったと考えることもできる。
(実施例12)
次に、本発明モータの制御回路の例について、図28に示し、説明する。
図28は図10に示したDC−DCコンバータ10Eを直流電圧源11Fに置き換えた構成である。特に、この直流電圧源11Fを周辺の装置で使用していて、それを流用することができるのであれば、モータ制御回路は図示するように部品点数が少なく、コスト的には大変有利である。また、この直流電圧源11Fを複数のモータで共用することもできる。
(実施例13)
次に、図29に直流電圧源が1個でトランジスタの数が2個である制御回路の例を示す。16はA相巻線、11BはA相電流Iaを通電するトランジスタ、11AはA相巻線16の磁気エネルギーを直流電圧源2Eへ回生するダイオードである。17はB相巻線、119はB相電流Ibを通電するトランジスタ、11CはB相巻線17の磁気エネルギーを直流電圧源2Eへ回生するダイオードである。
11D、11Eはコンデンサであり、両巻線16、17への電力の供給と回生を行う。この場合、中間の電位VMは、直流電圧源2Eの電圧のほぼ中間の電位となる。なお、片側のコンデンサを省略することも可能である。
図29の制御回路は、コンデンサ11D、11Eの負担はあるが、直流電圧源を1個とし、トランジスタを2個にすることができる。
(実施例14)
次に、図30に直流電圧源が2個でトランジスタの数が2個である制御回路の例を示す。図29で示した中間の電位VMを、直流電圧源2Eと11Fとで作っている。
(実施例15)
次に、直流電圧源が1個でトランジスタの数が2個である本発明モータと制御回路の例を図31と図32に示す。
図31は、図1のモータの巻線16、17をそれぞれ2個の巻線としている。A相巻線16を巻線N61とN62とし、B相巻線17を巻線N63とN64としている。同一のスロットに2個の巻線を巻回しているので、同一のスロットの2巻線の鎖交磁束はほぼ等しい。
A相巻線N61とN62の巻き回数がそれぞれNwで、両巻線の電流がそれぞれIa1、Ia2で、両巻線の鎖交磁束は理想的に一致するとして、そのインダクタンスがLaで、A相巻線とB相巻線との相互インダクタンスがLmabで、ロータ各極の永久磁石がA相ステータ磁極に作用する鎖交磁束成分がφamgであるとき、これらの電圧、電流は次式となる。
Va=La×d(Ia1+Ia2)/dt−Lmab×d(Ib1+Ib2)/dt +Nw×dφamg/dt (28)
=Nw×d(φai)/dt−Nw×d(φamu)/dt
+Nw×dφamg/dt (29)
ここで、φaiはA相の両巻線の電流(Ia1+Ia2)と、それらのインダクタンスLaにより生成する鎖交磁束成分で、φamuはB相電流(Ib1+Ib2)によりA相巻線に鎖交する磁束成分である。
また、(28)式、(29)式に示したように、A相巻線のインダクタンスLaの磁束成分は次式となる。
La×(Ia1+Ia2)=Nw×φai (30)
図32に示すように、電流Ia1の向きは電位VMから電位VLの方向でありトランジスタN71を通じて通電する。電流Ia2の向きは電位VLから電位VMの方向であってダイオードN73を通じて通電する。A相巻線N61の電圧とA相巻線N62の電圧は逆向きであって、大きさは同じである。
なお、A相巻線N61とN62の両巻線の鎖交磁束(φai+φamu+φamg)をより共通化するために、いわゆるバイファイラ巻きを採用することもできる。バイファイラ巻きは、2本の巻線をできるだけ添わせながら巻線をスッロトに巻回する巻き方である。現実には、A相巻線N61とN62との鎖交磁束は完全には一致せず、小さい値ではあるが巻線の漏れ磁束成分が発生する。また、(28)式、(29)式では巻線抵抗を零とし、無視した。正確には、巻線抵抗と電流の積である電圧降下分を付加すればよい。
B相巻線N63とN64についても、A相巻線と同様の関係である。巻き回数がそれぞれNwで、両巻線の電流がそれぞれIb1、Ib2で、両巻線の鎖交磁束は理想的に一致するとして、そのインダクタンスがLbで、A相巻線とB相巻線との相互インダクタンスがLmabで、ロータ各極の永久磁石がB相ステータ磁極に作用する鎖交磁束成分がφbmgであるとき、これらの電圧、電流は次式となる。
Vb=Lb×d(Ib1+Ib2)/dt−Lmab×d(Ia1+Ia2)/dt +Nw×dφbmg/dt (31)
=Nw×d(φbi)/dt−Nw×d(φbmu)/dt
+Nw×dφbmg/dt (32)
ここで、φbiはB相の両巻線の電流(Ib1+Ib2)と、それらのインダクタンスLbにより生成する鎖交磁束成分で、φbmuはA相電流(Ia1+Ia2)によりB相巻線に鎖交する磁束成分である。
また、(31)式、(32)式に示したように、B相巻線のインダクタンスLbの磁束成分は次式となる。
Lb×(Ib1+Ib2)=Nw×φbi (33)
図32に示すように、電流Ib1の向きは電位VMから電位VLの方向でありトランジスタN72を通じて通電する。電流Ib2の向きは電位VLから電位VMの方向であってダイオードN74を通じて通電する。
これらの4巻線の電圧、電流は図32に示す制御回路で制御することができる。N71はA相巻線N61に電圧、電流を供給するトランジスタである。N73はA相巻線N62に(VM−VL)以上の電圧が誘起されようとするときに直流電圧源2Eへ電流を通電するダイオードである。N72はB相巻線N63に電圧、電流を供給するトランジスタである。N74はB相巻線N63に(VM−VL)以上の電圧が誘起されようとするときに直流電圧源2Eへ電流を通電し、回生するダイオードである。
ここで、A相巻線N61の電流Ia1とN62の電流Ia2について考えてみる。最初に、電流Ia1とIa2が零であり、ロータの回転速度dθr/dtが零であり、B相電流Ib1、IB2も零であると仮定する。従って、(28)式、(29)式の右辺の第2項、第3項は零である。トランジスタN71をオンすると、直流電圧源2Eの電圧(VM−VL)が巻線N61に印加され、(28)式に従って電流Ia1が増加する。例えば、電流Ia1が5Aに増加したところでトランジスタN71をオフすると、Ia1は一瞬にして零となり、同時にIa2が0Aから5Aとなる。その後、(28)式に従って電流Ia2が減少する。このようなA相電流(Ia1+Ia2)の増減の動作を繰り返すことにより、A相巻線N61の電流Ia1を自在に制御することができる。
図1のモータのA相巻線16のA相電流Iaは、図31、図32のA相電流(Ia1+Ia2)に匹敵する。Ia1とIa2の両方がA相の電流である。この時、A相の磁束φaiは(30)式の関係となる。この時、B相電流が通電されていれば、(28)式、(29)式の右辺の第2項の電圧成分がA相誘起電圧Vaに重畳する。
また、ロータが回転している場合には、(28)式、(29)式の右辺の第3項の電圧成分がA相誘起電圧Vaに重畳する。その時には、トランジスタN71によるA相の電圧制御にそれらの重畳する電圧成分を付加する必要がある。
また、B相巻線N63、N64の電圧Vb、電流Ib1、Ib2についても同様の関係である。N72はB相巻線N63に電圧、電流を供給するトランジスタである。N74はB相巻線N64に(VM−VL)以上の電圧が誘起されようとするときに直流電圧源2Eへ電流を通電するダイオードである。N72はB相巻線N63に電圧、電流を供給するトランジスタである。N74はB相巻線N63に(VM−VL)以上の電圧が誘起されようとするときに直流電圧源2Eへ電流を通電し、回生するダイオードである。
ここで、B相巻線N63の電流Ib1とN64の電流Ib2について考えてみる。
最初に、電流Ib1とIb2が零であり、ロータの回転速度dθr/dtが零であり、A相電流Ia1、Ia2も零であると仮定する。従って、(31)式、(32)式の右辺の第2項、第3項は零である。トランジスタN72をオンすると、直流電圧源2Eの電圧(VM−VL)が巻線N63に印加され、(31)式に従って電流Ib1が増加する。例えば、電流Ib1が5Aに増加したところでトランジスタN72をオフすると、Ib1は一瞬にして零となり、同時にIb2が0Aから5Aとなる。その後、(31)式に従って電流Ib2が減少する。このようなB相電流(Ib1+Ib2)の増減の動作を繰り返すことにより、B相巻線N63の電流Ia1を自在に制御することができる。
図1のモータのB相巻線17のB相電流Ibは、図31、図32のB相電流(Ib1+Ib2)に匹敵する。Ib1とIb2の両方がB相の電流である。この時、B相の磁束φbiは(33)式の関係となる。この時、A相電流が通電されていれば、(31)式、(32)式の右辺の第2項の電圧成分がB相誘起電圧Vbに重畳する。
また、ロータが回転している場合には、(31)式、(32)式の右辺の第3項の電圧成分がB相誘起電圧Vbに重畳する。その時には、トランジスタN72によるB相の電圧制御にそれらの重畳する電圧成分を付加する必要がある。
以上、図31、図32に示したように、1個の直流電圧源と2個のトランジスタと2個のダイオードで制御する方法を示した。制御素子の電圧降下成分についても、1個の半導体での電圧降下であり、図57に示した3相交流での電圧降下の1/2となり、損失の低減、高効率化が可能である。図32では制御を簡素にできるので、その低コスト化、小型化、高効率化が可能である。なお、図31に示したモータについても、図23、図26、図27などの種々形状へ変形が可能である。
(実施例16)
次に、位置検出器としてのいわゆるエンコーダなどを使用しないモータ制御方法、装置について説明する。小型のファンなどを駆動する場合、モータは制御回路などの全てを含んだコンポーネントとして扱われることが多い。従って、モータは位置検出機能および制御機能を含んだコンポーネントとして、商品としての競争力を問われる。量産する製品では、センサレス回路とその他のパワートランジスタを含む全ての制御回路を1個のシリコンチップに集積することも珍しくない。その場合には従来のプリント基板などはコスト問題もあり使用せず、直接配線することが多い。そして、モータの1部品として実装している。その観点で、本発明モータが従来モータとは異なる構成であり、特有なセンサレス位置検出機能が必要である。
図33の(a)にA相誘起電圧Va、(b)にB相誘起電圧Vbを示す。これらは図8の(i)、(j)と同じである。このような場合、図33の(c)に示すように、電気角で0°から360°までを領域SA、SB、SC、SDとして、領域判別してロータ位置を検出することができる。
図34に論理的な判定関係を示す。例えば、A相誘起電圧Vaが正の値で”H”で、B相誘起電圧Vbが負の値で”L”である場合は領域SBと判定し、ロータ回転位置θrは60°から180°として検出する。A相誘起電圧VaとB相誘起電圧Vbが共に正で”H”である場合にはロータ回転位置θrを特定できないが、モータが一方向に回転し続けるファンなどの用途では、その前後関係からロータ回転位置θrを特定でき、センサレス位置検出を実現できる。相電圧の具体的な検出回路は、図35に示す相電圧検出回路などで実現することができる。
(実施例17)
次に、より精密なモータのセンサレス位置検出の方法を図35に示し、説明する。
モータは、図1、図8などの構成を想定している。A相巻線16の端子間電圧をVat、誘起電圧をVar、A相巻線16のインダクタンスがLa、A相巻線16とB相巻線との相互インダクタンスがLmab、A相巻線16とB相巻線の巻線抵抗をRとすると、電圧、電流の関係は次式となる。
Vat=Var+Ia×R+La×dIa/dt
−Lmab×dIb/dt (34)
B相についても同様に、B相巻線17の端子間電圧をVbt、誘起電圧をVbr、B相巻線のインダクタンスがLb、とすると、電圧、電流の関係は次式となる。
Vbt=Vbr+Ib×R+Lb×dIb/dt
−Lmab×dIa/dt (35)
(34)式、(35)式を変形して次式となる。
Var=Vat−Ia×R−La×dIa/dt
+Lmab×dIb/dt (36)
Vbr=Vbt−Ib×R−Lb×dIb/dt
+Lmab×dIa/dt (37)
(36)式、(37)式の未知数は、A相電流Ia、B相電流Ib、A相巻線16の端子間電圧Vat、B相巻線17の端子間電圧Vbtである。
図35に前記未知数を検出し、ロータ回転位置θrを検出する構成を示す。
A相巻線16にはA相電流Iaを通電するので、直列にシャント抵抗NB1を接続し、電圧検出手段NB5によりA相電流Iaの値を検出する。A相巻線16の端子間電圧Vatを電圧検出手段NB3で検出する。
B相についても同様に、B相巻線17にはB相電流Ibを通電するので、直列にシャント抵抗NB2を接続し、電圧検出手段NB6によりB相電流Ibの値を検出する。B相巻線17の端子間電圧Vbtを電圧検出手段NB4で検出する。
NB7はA相電流Iaの微分値dIa/dtを演算する微分器である。NB8はB相電流Ibの微分値dIb/dtを演算する微分器である。
NB9は(36)式の通りに4項目Vat、−Ia×R、−La×dIa/dt、Lmab×dIb/dtの信号を加算してA相誘起電圧Varを計算する加減算器であり、その出力NBHはA相誘起電圧Varである。NBAは(37)式の通りに4項目Vbt、−Ib×R、−Lb×dIb/dt、Lmab×dIa/dtの信号を加算してB相誘起電圧Vbrを計算する加減算器であり、その出力NBJはB相誘起電圧Vbrである。
前記のA相の端子間電圧VatおよびB相の端子間電圧Vbtは、巻線電流Ia、Ibの値を正確に通電するために、トランジスタによりパルス幅変調PWMなどが行われるので、直流電圧源の電圧Vpと−Vpとを繰り返す電圧波形となる。しかし、(36)式、(37)式に従って検出することにより、図33に示すようなA相誘起電圧Var、B相誘起電圧Vbrを検出することができる。
なお、NBBはノイズなどの高周波成分を除去するためのフイルターである。このフイルターNBBは単純原理的には不要であるが、必要に応じて制御回路各部にフィルターを追加しても良い。ここで、電流検出するための電圧検出手段NB5、NB6に使用する高周波フィルターHF1と端子間電圧を検出するための電圧検出手段NB3、NB4に使用する高周波フィルターHF2との特性を合わせておくことは、(36)式、(37)式の計算を矛盾無く行うために効果的である。
NBCは図34に示す論理回路で、A相誘起電圧Var、B相誘起電圧Vbrを入力とし、NBD、NBE、NBF、NBGを出力する。これらは、SA、SB、SC、SDの回転領域情報である。SAとSCの領域については、回転方向情報と事前の回転位置情報から回転領域の判定を行う。本発明モータでは、主要な回転方向を特定しているので、事前の回転位置情報すなわちSAとSCの領域に入る直前の回転位置情報により、SAとSCのどちらであるかを判定することができる。
なお、大型のモータの場合、巻線抵抗の値Rが小さいので、(36)式、(37)式の第2項を無視しても、ある程度の精度で誘起電圧Var、Vbrの値が得られる。小型モータの場合は、巻線インピーダンスの内、相対的に巻線抵抗Rが大きくなるので、(36)式、(37)式の第2項を無視できなくなる。(36)式、(37)式の第4項は相互インダクタンスLmabに関わる電圧成分であり、フェライト磁石を使用した表面磁石ロータのモータの場合、相対的に小さな電圧成分となる。モータの構成により(36)式、(37)式の第4項を無視できる場合もある。
次に、図36にモータの電圧、電流、トルク、端子電圧、回転領域信号の一連の関係を示す。横軸は電気角で表したロータ回転位置θrである。
図36の(a)、(b)は、一定回転速度で回転している時のA相誘起電圧Var、B相誘起電圧Vbrである。図8の(i)、(j)および図33の(a)、(b)と同じである。図36の(c)、(d)は、A相電流IaとB相電流Ibの例であり、交互に通電することにより図36の(e)に示す一定トルクを作っている。図36の(f)は(34)式の右辺の第3項であるLa×dIa/dtの電圧成分である。この電圧成分は、実際には、トランジスタでPWM制御を行うので、直流電圧源の電圧Vpと−Vpとを繰り返す電圧波形となる。図36の(c)は、同様に、(35)式の右辺の第3項であるLb×dIb/dtの電圧成分である。図36の(h)は、回転領域SAを示す信号である。図36の(i)は、回転領域SBを示す信号である。図36の(j)は、回転領域SCを示す信号である。図36の(k)は、回転領域SDを示す信号である。
(実施例18)
次に、図37にモータとその制御の全体の例を示す。
NC9はモータで、16はA相巻線、17はB相巻線である。NB1はA相電流Iaを検出するシャント抵抗で、NB2はB相電流Ibを検出するシャント抵抗である。NCBは図35に示したセンサレス位置検出のための演算回路である。その出力NCCは回転位置θrの情報で、NCEは巻線の電流情報である。
ωrcは速度指令で、NCDは回転位置情報NCCからモータ速度ωrを検出する速度演算器で、NC1は速度誤差NC2を検出する。NC3は補償器でトルク指令NC4を出力する。NC5は電流指令手段で、トルク指令NC4と回転位置情報NCCからA相電流指令NC6とB相電流指令NC7を演算し出力する。NC8は電流制御手段で、A相電流指令NC6とB相電流指令NC7と巻線の電流情報NCEとを入力とし、A相電流IaとB相電流Ibを制御してモータのトルクを生成する。
なお、モータの電流制御、速度制御、回転位置制御には種々の方法が提案されており、図37の構成とは異なる構成とすることもできる。また、図35で示した電圧検出手段NB3〜NB6、加減算器などは、図38に示す演算増幅器ND5を使用することができる。演算増幅器は種々用途に広く使用されていて、この場合、VSGがコモン電位で、IN1、IN2が入力で、OUTが出力となる差動増幅器である。例えば、RR1、RR3が10kΩの抵抗器で、RR2、RR4が50kΩである場合、OUT=5×(IN1−IN2)の関係の差動増幅器となる。
なお、前記のセンサレス技術は、演算増幅器などのアナログ回路を多用して構成する方法、あるいは、各信号をデジタル化してデジタル回路で構成する方法、マイコンを利用してソフトウェア技術で実現する方法などがあり、それぞれの手法で実現が可能である。また、センサレス技術は、モータの電流制御と速度制御などと並行して行われるので、全体で都合の良いシステム構成を選択することができる。
また、図35で示したセンサレス位置検出の方法は、モータの誘起電圧を検出する原理なので、零回転近傍の低速回転で位置検出はできない。低速回転領域では、同期電動機の特性を利用し、ステッピングモータのように巻線電流Ia、Ibを交互に通電し、起動、低速回転駆動を行うことができる。所定回転数に達したところで、図35で示したセンサレス位置検出の制御に切り替えて、任意の回転数制御を行うことができる。
図39にそのフローチャートを示し説明する。
最初にモータの回転起動が指示されると、図39のSTARTからM11へ進む。M12では各巻線の誘起電圧の変動から回転速度dθr/dtを求める。M13では、図35で示したセンサレス制御が可能な回転速度ωcs以上か以下かを判定する。起動時あるいは起動直後など、まだ回転数が低い場合はM14へ進む。M14では、回転位置θrが検出できていないので、それまでの回転速度指令ωc1より大きい回転速度指令ωc1とする。そして、回転速度指令ωc1の累積値である回転位置指令値θc1を求める。従って、M14を通過するたびに、徐々に回転速度指令ωc1が大きくなり、回転位置指令値θc1も累積していく。
M15では、回転位置指令値θc1に従い各相の電圧指令値Vcom、を決定し、各相巻線へ電圧を供給する。M15における制御は、その時のロータの回転位置θrが特定できていないので、ステッピングモータの駆動のようなオープンループ制御である。M16では回転指令が終了であるかどうかを判定する。回転終了でなければ、M11に戻り、回転制御を継続する。
M13において、回転速度dθr/dtがセンサレス制御が可能な回転速度ωcs以上であれば、M17へ進む。モータへの速度指令値ωcomとモータ回転速度dθr/dtの差として速度誤差(ωcom−dθr/dt)を求め、トルク指令値Tcを計算する。M18では、トルク指令値Tcと回転位置情報NCCより各相の電圧指令値Vcomを求め、各相巻線へ電圧を供給する。M16では回転指令が終了であるかどうかを判定する。回転終了でなければ、M11に戻り、回転制御を継続する。M16で回転が終了の場合は、M19で電流を遮断し、モータ制御を終了する。
図39では、モータ制御の例を示したが、種々変形も可能である。例えば、M15およびM18では、検出した電流値を使用して精密な電流制御、トルク制御を行うこともできる。ファン、ポンプなどの用途では、このような片方向回転で使用することができる。
また、本発明モータで、位置検出用センサーを用いて位置検出を行い、モータの回転制御することも勿論可能である。また、電流検出手段として、ホール素子を使用した方法、カーレントトランスを使用した方法など、シャント抵抗以外の他の方法で行うことも可能である。図35で示したセンサレス位置検出の位置情報を計測することにより速度検出を行うこともできる。
(実施例19)
次に、ファンなどの量産用途でモータ制御回路を1個のチップに高集積化して低コスト化、小型化する場合などにおける、電流検出の具体化方法を示す。
このような場合、低コスト化のためプリント基板などを設けない場合も多く、電流検出用のシャント抵抗の種々問題がある。シャント抵抗の大きさ、発熱量に関わる取り付け場所の問題、シャント抵抗に関わるコストの問題がある。シャント抵抗の抵抗精度の問題、抵抗値の温度係数の問題がある。
図40にモータ制御用の集積回路NE5の例を示す。
NE1はモールド樹脂で、NE2は入出力線のリードフレームで、NE3はシリコンチップで、NE4はボンディングワイアである。シリコンチップNE3にモータ巻線の電流制御用パワートランジスタまで含まれるような場合には、リードフレームNE2へモータ巻線を直接接続する場合もある。その場合に、電流検出を行う方法として、ボンディングワイアNE4を使用することができる。パワー線の場合、ボンディングワイアにはアルミ線が使用されることが多く、電流容量が大きい場合は並列に複数のボンディングワイアが接続される。
集積回路の製造装置は高度化されているので、このボンディングワイアの長さ、太さを比較的精度良く管理することができ、シャント抵抗としての抵抗値精度を得ることができる。通常、ボンディングワイアの抵抗値は小さいが、その近傍に演算増幅回路などを設けることが可能であり、電流検出を行うことができる。また、ボンディングワイアの抵抗値が小さ過ぎる場合は、シリコンチップ上あるいは近傍に中継点を設け、複数のボンディングワイアを直列に接続し、シャント抵抗として機能する抵抗値を大きくすることも可能である。またシャント抵抗としての抵抗値には、前記中継点の一部の抵抗やリードフレームNE2の抵抗が加わっても良い。また、モータ制御用の集積回路でボンディングワイアを使用せず、ボンディングワイアと同等の機能をもつ電気的接続手段を使用する場合は、その電気的接続手段をシャント抵抗として活用することができる。
次に、温度変化の影響とその対応方法について説明する。
通常、シャント抵抗の材料として抵抗値の温度係数の小さい材料が使用されている。しかし、ボンディングワイアのアルミ線をシャント抵抗として使用する場合は、アルミニュームの抵抗値温度係数が0.42%/℃なので、100℃の温度変化で抵抗値が42%変化することになる。モータの制御精度の点で問題である。
図41にシャント抵抗の抵抗値を検出する方法を示す。16はA相巻線で、NL1はシャント抵抗で、モータ回転時はこれらにA相電流Iaが通電されている。NL2、NL3はトランジスタで、NL4は抵抗値を検出するときにハイとなり、それ以外ではローとなる抵抗値計測信号の入力端子で、NL6は一定電圧を作り出すツェナーダイオードで、NL7はチェナーダイオードNL6と共に一定電流を作り出す抵抗である。
これらは定電流回路を構成している。例えば、NL6が2ボルトのツェナーダイオードでNL7が2Ωであれば、トランジスタNL2、NL3がオンの時、抵抗NL7に約1Aの電流が通電される。従って、シャント抵抗NL1の両端電圧は1Aの電流が通電する時の電圧降下になっており、シャント抵抗NL1のその時の温度における抵抗値RR5を示していることになる。
シャント抵抗の抵抗値RR5が計測されたので、その後は、その時の温度におけるA相電流Iaの値をシャント抵抗NL1の両端電圧から測定することができる。なお、シャント抵抗NL1の抵抗値の計測はモータを駆動していない時間帯に計測し、モータの回転制御に支障のない様に行う。モータの回転中であっても、数msec程度の間だけ計測しても問題ない用途は多い。ごく短時間で抵抗値を計測できるので、計測用の素子の電流容量等は短時間定格で良く、小型の素子で製作できる。
また、トランジスタNL2、NL3は、A相電流Iaを通電するトランジスタと共通化し、流用することも可能である。なお、B相のシャント抵抗値の計測などについても、A相と同様に行うことができる。
また、接続NL8をNL9の変更すれば、図35の計測回路を接続しているので、シャント抵抗の電圧降下だけでなく、A相巻線16のその温度における抵抗値RR6も計測することができる。A相巻線16の基準温度における抵抗値RR7は既知であるので、逆算してA相巻線16の温度を計算することも可能である。なお、金、銀、銅、アルミニュームの抵抗値の温度係数は、いずれも0.4%/℃の近傍である。
次に、図35で示したセンサレス位置検出をより正確に行う方法を説明する。
A相誘起電圧Varは(36)式で示される。(36)式の第2項の電圧降下成分は巻線温度における電圧降下とする必要がある。インダクタンスの温度変化は比較的小さいので、(36)式の第3項と第4項の電流値は温度の影響を補正した正確な電流値である必要がある。このように、モータの巻線抵抗の温度変化を補正し、測定した電流値の温度の影響を補償することにより、(36)式の値を正確に求めることができる。(37)式のB相誘起電圧Vbrについても同様である。
(実施例20)
次に、図1、図8、図10などのモータ構成で、2相の片方向電流制御でありながら、逆方向へも回転させる方法を図42に示し、説明する。
これは、正回転を主な回転方向として、非定常時に逆回転を必要とするような用途を想定している。特に、逆回転方向のトルクは、図8の(i)(j)から分かるように、不連続なトルクしか発生できない。従って、起動は特殊な起動を行い、定常の逆方向回転動作においても惰性回転を利用した制御方法とする必要がある。
最初に、図42のSTARTからM21へ進む。M22では、正回転方向の回転指令か、あるいは、逆回転方向の回転指令かを判断する。正回転方向の回転指令の場合はM2Aへ進み、図39のフローチャートで示した正回転制御を行う。その後、M28へ進む。
M22で逆回転方向の回転指令である場合にはM23へ進む。M23では、逆方向回転への起動かどうかを判定し、起動時である場合にはM24へ進む。M24では、A相電流Iaを通電し、図8の(i)(j)において特定位置である電気角で240℃の回転位置へ位置決めする。次にM25で、B相電流Ibを特定の短時間Δt1の間だけ通電して、ロータを正回転方向へΔθだけ回転させる。電気角で(240°+Δθ)の回転位置θrは、A相電流Iaを通電すると逆回転方向のトルクが発生する領域である。
M26では、特定の時間Δt2の間だけA相電流Iaを通電して逆回転方向へ加速し、駆動する。この加速は、その後の惰性回転が次回の回転制御まで続くように大きく加速する。M27では、起動を行ったことを記憶する。
M28では、回転指令が終了であるかどうかを判定する。回転終了でない場合は最初のM21へ戻る。回転終了の場合はM29へ進み、電流を遮断して終了する。
M23の判定で、逆方向への回転が起動済みで有る場合はM2Bへ進む。M2Bでは、巻線の誘起電圧から回転速度dθr/dtを求め、M2Cへ進む。M2Cでは、逆方向回転を継続的に制御可能な回転速度ωsp以上であるか以下であるかを判定する。
まだ、低速回転である場合にはM2Dへ進む。M2Dでは、起動直後などの低速回転速度であるので、巻線誘起電圧の正負を判断し、負から正に変化するタイミングで特定の時間Δt3の間だけその巻線へ電流を通電し、さらに加速する。なお、巻線誘起電圧が正の値である時間領域だけその巻線へ電流を通電するようにしても良い。図36の(i)、(j)の時間領域に相当する。
M2Cで、逆方向回転を継続的に制御可能な回転速度ωsp以上である場合にはM2Eへ進む。M2Eでは、モータへの速度指令値ωcomとモータ回転速度dθr/dtの差として速度誤差(ωcom−dθr/dt)を求め、トルク指令値Tcを計算する。M2Fでは、トルク指令値Tcと回転位置情報NCCより各相の電圧指令値Vcomを求め、各相巻線へ電圧を供給する。なお、検出した電流値を使用して、断続的ではあるが、精密な電流制御、トルク制御を行うこともできる。
以上、図42で示したように、図10、図11に示すような2相の片方向電流であっても、正方向回転だけでなく逆方向回転の運転を行うことができる。限定的な回転位置ではあるが、逆方向のトルクを生成することが可能である。
また、この逆方向トルクは正方向回転時の減速トルクに相当する。従って、モータを正方向に回転している状態で、急速に減速させたい場合には、前記の逆方向のトルクを発生させて減速させることができる。この減速トルクは、エネルギー的には回生であり、回生動作を行うことができる。以上示したように、本発明モータは、2相の片方向電流による簡素の制御でありながら、正逆の両方向回転制御と、それぞれにおける力行制御と回生制御を行うことができる。4象限の運転ができると言える。
(実施例21)
次に、図43に正負の両方向の電流を通電できる制御装置の例を示す。
図1、図8などに示すモータを想定し、16はA相巻線、17はB相巻線である。トランジスタ451と454をオンすることによりA相巻線16へ正の電圧を印加し、トランジスタ453と452をオンすることによりA相巻線16へ負の電圧を印加することができる。45A、45B、45C、45Dは、各トランジスタの逆方向電流を通過させるダイオードである。同様に、トランジスタ455と458をオンすることによりB相巻線17へ正の電圧を印加し、トランジスタ457と456をオンすることによりB相巻線17へ負の電圧を印加することができる。
45E、45F、45G、45Hは、各トランジスタの逆方向電流を通過させるダイオードである。各トランジスタのオン、オフによるPWM制御により両巻線16、17へ任意の電流を通電することができる。
図43の制御回路のトランジスタの数は8個と多くなるが、正方向トルクと同様に逆方向トルクを生成できるので、モータの制御性は向上する。ただし、モータ電流は2個のトランジスタを通して通電されるので、制御回路のトランジスタのオン電圧降下は2個分となり損失は増加する。
(実施例22)
次に、4個のトランジスタで2個の正負の電流を通電し制御する構成を図44に示す。 図44の構成は、図32の構成にトランジスタM41、M43とダイオードM42、M44を追加した構成である。モータ構成は図31のような構成で、A相巻線のN61とN62はバイファイラ巻きが好ましい。B相巻線のN63とN64もバイファイラ巻きが好ましい。(28)式から(33)式に示した電磁気的な関係が図44の構成においても成り立つ。
A相巻線N61、N62の電流制御について、先に図32で説明したように、トランジスタN71のオン、オフ制御により(Ia1+Ia2)の電流を制御することができる。この時、(Ia1+Ia2)の値は正である。A相巻線N61、N62へ負の電流制御を行うときは、トランジスタN71とM41は対称構造に配置しているので、同様にトランジスタM41をオン、オフ制御することにより(Ia1+Ia2)を制御することができる。この時、(Ia1+Ia2)の値は負である。
B相巻線N63、N64の電流制御についても、同様に、トランジスタN72のオン、オフ制御により(Ib1+Ib2)の電流を制御することができる。B相巻線N63、N64へ負の電流制御を行うときは、トランジスタM43をオン、オフ制御することにより(Ib1+Ib2)を制御することができる。この時、(Ib1+Ib2)の値は負である。
図44の様なモータ構成、制御回路構成とすることにより、トランジスタが4個の簡素な制御回路構成でありながら、正のトルクと負のトルクを自在に制御することができる。但し、このモータ構成の場合は、同一のスロットに2個の巻線を巻回することになり、同一スペースであれば単純に巻線抵抗値が2倍になる。スロット断面積を広くし、巻線の太さを大きくすることによりこの問題を軽減することができる。
(実施例23)
次に、複数の本発明モータを制御するときに、巻線電流Ia、Ibを駆動するトランジスタの個数を少なくし、コストを低減する方法を図45に示す。
自動車、家電、OA(office automation )などの用途では、一つの装置に多数個のモータが使用されることが多く、それらのモータが同時には駆動されないことも多い。このような用途において全体をトータルで低コスト化、小型化する構成である。具体的には、制御回路を共用することにより実現する
図45のR82、R83は本発明の第1のモータMM1のA相巻線とB相巻線である。R88、R89は本発明の第2のモータMM2のA相巻線とB相巻線である。R8E、R8Fは本発明の第3のモータMM3のA相巻線とB相巻線である。R8L、R8Mは本発明の第4のモータMM4のA相巻線とB相巻線である。
R81はモータMM1のA相巻線R82とB相巻線R83を選択するトランジスタである。ダイオードR84はトランジスタR81がオフしたときに電流が流れる経路を構成している。R87はモータMM2のA相巻線R88とB相巻線R89を選択するトランジスタである。ダイオードR8AはトランジスタR87がオフしたときに電流が流れる経路を構成している。R8DはモータMM3のA相巻線R8EとB相巻線R8Fを選択するトランジスタである。ダイオードR8GはトランジスタR8Dがオフしたときに電流が流れる経路を構成している。R8KはモータMM4のA相巻線R8LとB相巻線R8Mを選択するトランジスタである。ダイオードR8NはトランジスタR8Kがオフしたときに電流が流れる経路を構成している。
M61は巻線R82、R88、R8E、R8Lに流れる電流を通電する共用のトランジスタである。ダイオードM64はトランジスタM61がオフしたときに電流が流れる経路を構成している。M67はトランジスタM61が駆動する電流を計測するシャント抵抗等の電流計測手段である。M62は巻線R83、R89、R8F、R8Mに流れる電流を通電する共用のトランジスタである。ダイオードM65はトランジスタM62がオフしたときに電流が流れる経路を構成している。M68はトランジスタM62が駆動する電流を計測するシャント抵抗等の電流計測手段である。
ダイオードR85、R86、R8B、R8C、R8H、R8J、R8P、R8Qは、他の巻線の電圧が印加されないように逆方向電圧を阻止している。
今、前記モータMM1を回転制御するために、A相巻線R82とB相巻線R83へ交互に電流を通電する。トランジスタR81とM61をオンすることによりA相巻線R82へ電圧が印加し、電流Iaが通電する。トランジスタR81とM61をオフすることにより、電流IaがダイオードR84とM64を通って流れ、電流Iaは減少する。この時、A相巻線R82には負の電圧がかかっている。このように、トランジスタR81とM61をオン、オフすることにより、A相巻線R82にかかる電圧を制御し、A相電流Iaを制御することができる。B相巻線R83の電圧、電流についても、A相巻線R82と同様に、トランジスタR81とM62をオン、オフして制御することができる。
前記モータMM2の回転制御についても同様に、A相巻線R88の電圧、電流をトランジスタR87とM61をオン、オフして制御する。B相巻線R89の電圧、電流をトランジスタR87とM62をオン、オフして制御する。
前記モータMM3の回転制御についても同様に、A相巻線R8Eの電圧、電流をトランジスタR8DとM61をオン、オフして制御する。B相巻線R8Fの電圧、電流をトランジスタR8DとM62をオン、オフして制御する。
前記モータMM4の回転制御についても同様に、A相巻線R8Lの電圧、電流をトランジスタR8KとM61をオン、オフして制御する。B相巻線R8Mの電圧、電流をトランジスタR8KとM62をオン、オフして制御する。
これらの結果、4個のモータMM1、MM2、MM3、MM4を駆動するために必要なトランジスタはR81、R87、R8D、R8K、M61、M62の6個である。平均すると、1個のモータを駆動するために1.5個のトランジスタが使用されていることになる。モータをさらに1個追加する場合に必要なトランジスタの個数は1個である。同時に駆動する必要のないモータの個数が多くなると、モータ1個の回転制御をトランジスタ1個でできることになる。
前記の図45の説明の中で部分的な問題点もある。例えば、モータMM1のA相電流Iaが減少しB相電流Ibが増加する時に、トランジスタR81が共通であるために、Iaの減少とIbの増加が矛盾し、同時にはできない問題がある。また両電流が重なる場合は、トランジスタR81の電流容量を大きくする必要がでてくる。両電流が重ならないように制御する必要がある。
この問題を解決する方法は、同一のモータのA相巻線の電流を流すトランジスタとB相巻線の電流を流すトランジスタとが重ならないように、図45における各巻線の配置を工夫すればよい。具体的な巻線の配置例は次の通りである。
第1のモータMM1のA相巻線をR83とし、B相巻線R88とする。第2のモータMM2のA相巻線をR89とし、B相巻線R8Eとする。第3のモータMM3のA相巻線をR8Fとし、B相巻線R8Lとする。第4のモータMM4のA相巻線をR8Mとし、B相巻線R82とする。図45における巻線配置を右へ一つずらすことにより、電位VM側に接続しているトランジスタがA相巻線とB相巻線とで異なっている。
この巻線配置で前記モータMM1のA相巻線R83はトランジスタR81とM62でオン、オフして制御し、B相巻線R88はトランジスタR87とM61でオン、オフして制御することになる。この時、A相巻線R83の電流IaとB相巻線R88の電流Ibは干渉することがなく、それぞれ独立に、自由に制御することができる。他のモータMM2、MM3、MM4の各巻線電流についても同様な関係である。
なお、前記の図45の制御回路の共用化は、モータの巻線電流が片方向電流であることにより、その実現が容易になっている。交流電流で駆動する交流電動機の場合には制御回路の共用化が難しくなる。
さらに、図45の構成は種々の変形も可能である。例えば、トランジスタM61とM62に並行して破線で記載しているM63と記載していないトランジスタを追加し、トランジスタR81とR87とR8DとR8Kのエミッタとの間に各4個の巻線を配置すれば4×4=16個の巻線を接続できることになる。そして、前記例のように、一つのトランジスタには同一モータのA相巻線とB相巻線とが繋がらないような配置とすれば、一つのモータのA相電流IaとB相電流Ibとを独立に制御することができる。この場合、8個のモータを8個のトランジスタで制御できることになる。モータ1個あたりのトランジスタ数は1個である。低コスト化と小型化を実現できる。
また、図45において、3相の片方向電流で制御するモータについても、図45の破線で示した構成のように追加することができる。R8Rが第3相の巻線で、R8Sは逆方向阻止用のダイオードで、M69は電流検出手段で、M63はその電流を制御するトランジスタで、M66は回生用のダイオードである。また、図45に適用するモータの一つとしてDCモータを制御することもできる。このように、1相、2相、3相などの片方向電流で制御できるモータの制御回路を共用化することができる。
なお、前記モータMA相巻線をR82とし、B相巻線R83とする方法の場合、A相巻線とB相巻線の片端が相互に接続されているので、巻線接続と配線の簡略化ができる長所がある。また、R8Tの破線矢印で示すように、さらに追加することもできる。
図45の構成で、複数のモータの同時回転制御を行うこともできる。その方法は、モータおよび負荷は慣性が有ることを利用して、トルク発生を時分割制御で行う方法である。例えば、最初の10msecはモータMM1の電流を制御し、次の10msecはモータMM2の電流を制御し、交互に繰り返すことにより2個のモータの速度制御が可能となる。また、図42で示したように、片方向電流の制御により、正回転だけでなく、間欠的ではあるが逆方向のトルク発生、逆方向の速度制御も可能である。このように、任意の複数のモータを同時に速度制御することが図45の構成で可能である。
(実施例24)
次に、複数の本発明モータを制御するときに、巻線電流Ia、Ibを駆動するトランジスタの個数を少なくし、コストを低減する他の方法を図46に示す。
図46のR92、R95は本発明の第1のモータMM1のA相巻線とB相巻線である。R98、R9Bは本発明の第2のモータMM2のA相巻線とB相巻線である。R9E、R9Hは本発明の第3のモータMM3のA相巻線とB相巻線である。R9M、R9Qは本発明の第4のモータMM4のA相巻線とB相巻線である。
R91はモータMM1のA相巻線R92を選択し通電するトランジスタであり、ダイオードR93はトランジスタR91がオフしたときに電流が流れる経路を構成している。
R94はモータMM1のB相巻線R95を選択し通電するトランジスタであり、ダイオードR96はトランジスタR94がオフしたときに電流が流れる経路を構成している。
R97はモータMM2のA相巻線R98を選択し通電するトランジスタであり、ダイオードR99はトランジスタR97がオフしたときに電流が流れる経路を構成している。
R9AはモータMM2のB相巻線R9Bを選択し通電するトランジスタであり、ダイオードR9CはトランジスタR9Aがオフしたときに電流が流れる経路を構成している。
R9DはモータMM3のA相巻線R9Eを選択し通電するトランジスタであり、ダイオードR9FはトランジスタR9Dがオフしたときに電流が流れる経路を構成している。
R9GはモータMM3のB相巻線R9Hを選択し通電するトランジスタであり、ダイオードR9JはトランジスタR9Gがオフしたときに電流が流れる経路を構成している。
R9LはモータMM4のA相巻線R9Mを選択し通電するトランジスタであり、ダイオードR9NはトランジスタR9Lがオフしたときに電流が流れる経路を構成している。
R9PはモータMM4のB相巻線R9Qを選択し通電するトランジスタであり、ダイオードR9RはトランジスタR9Pがオフしたときに電流が流れる経路を構成している。
今、図46に示す前記モータMM1を回転制御するために、A相巻線R92とB相巻線R95へ交互に電流を通電する。トランジスタR91とM61をオンすることによりA相巻線R92へ電圧が印加し、電流Iaが通電する。トランジスタR91とM61をオフすることにより、電流IaがダイオードR93とM64を通って流れ、電流Iaは減少する。この時、A相巻線R92には負の電圧がかかっている。このように、トランジスタR91とM61をオン、オフすることにより、A相巻線R92にかかる電圧を制御し、A相電流Iaを制御することができる。
B相巻線R95の電圧、電流についても、A相巻線R92と同様に、トランジスタR94とM62をオン、オフして制御することができる。
図46に示す前記モータMM2の回転制御についても同様に、A相巻線R98の電圧、電流をトランジスタR97とM61をオン、オフして制御する。B相巻線R9Bの電圧、電流をトランジスタR9AとM62をオン、オフして制御する。
図46に示す前記モータMM3の回転制御についても同様に、A相巻線R9Eの電圧、電流をトランジスタR9DとM61をオン、オフして制御する。B相巻線R9Hの電圧、電流をトランジスタR9GとM62をオン、オフして制御する。
図46に示す前記モータMM4の回転制御についても同様に、A相巻線R9Mの電圧、電流をトランジスタR9LとM61をオン、オフして制御する。B相巻線R9Qの電圧、電流をトランジスタR9PとM62をオン、オフして制御する。
これらの結果、4個のモータMM1、MM2、MM3、MM4を駆動するために必要なトランジスタはR91、R94、R97、R9A、R9D、R9G、R9L、R9P、M61、M62の10個である。平均すると、1個のモータを駆動するために2.5個のトランジスタが使用されていることになる。モータをさらに1個追加する場合に必要なトランジスタの個数は2個である。同時に駆動する必要のないモータの個数が多くなると、モータ1個の回転制御をトランジスタ2個でできることになる。図46の構成は、図45に比較して、トランジスタの数が4個多くなるが、ダイオードの数は4個少なくなる。
また、3相の片方向電流で制御するモータについても、図45の破線で示した構成のように、図46の構成に追加することができる。4相、5相などの片方向電流で制御するモータについても同様である。
また、図46の構成においても、複数のモータの電流を時分割して順次制御することにより、複数のモータの速度制御を同時に並行して行うことができる。また、図42で示したように、片方向電流の制御により、正回転だけでなく、間欠的ではあるが逆方向のトルク発生、逆方向の速度制御も可能である。このように、任意の複数のモータを同時に速度制御することが図46の構成でも可能である。
また、図45、図46において、各巻線に直列に接続されたトランジスタの内の片方のトランジスタだけをオンして、巻線電流をフライホイールとしての通電モードを持つこともできる。すなわち、当然であるが、前記両トランジスタのオン、オフモードの組み合わせが可能であり、PWM制御など各種の制御モードも適用することができる。
(実施例25)
次に、図47に本発明モータの変形例を示す。モータ全周すなわち、機械角で360°は電気角で360°×4=1440°の例である。
図1に示したモータは、その磁束の経路がロータ軸方向にも存在するのに比較し、従来の3相交流モータのように平面的な磁路の経路を成し、図47に示すステータ形状の電磁鋼板をロータ軸方向に積層した構成となっている。P31はA相の歯で、P32はB相の歯で、P33とP34はC相の歯である。各歯の先端部形状、すなわち、ステータがロータに面する部分の円周方向形状を直線状に展開した形状を図48の上側の図に示す。これらは各相のステータ磁極形状でもある。
A相のステータ磁極形状P31とB相のステータ磁極形状P32の円周方向幅は、機械角で30°、電気角で120°の例である。C相のステータ磁極形状P33とP34はそれぞれ機械角で15°、電気角で60°である。図48の上側の図は、図7の(b)に示すステータ磁極24と同じ形状である。
P35はA相の電流Iaを通電する巻線を配置するスロットで、P36はA相の負の電流−Iaを通電する巻線を配置するスロットである。P37はB相の電流Ibを通電する巻線を配置するスロットで、P38はB相の負の電流−Ibを通電する巻線を配置するスロットである。各ロットに巻回する巻線は、波巻き、環状巻、鼓状巻など種々の巻線方法で巻回することができる。
ロータは、図1、図2などに示したロータと同じである。21はN極磁極、22はS極磁極、23はX極磁極である。ロータがステータに面する部分の円周方向形状を直線状に展開した形状を図48の下側の図に示す。このロータ形状は、図7の(a)に示すロータ形状と同じである。
A相の電圧Va、電流IaおよびB相の電圧Vb、電流Ibの電流値は、図8、図9などと同じである。2個の片方向電流、すなわち、直流電流を通電することにより回転駆動することができる。この場合には駆動回路を簡素化することができる。勿論、正と負の電流である交流電流で交流モータとして動作させることもできる。
図47、図48に示すように、本発明モータのステータは、電磁鋼板をロータ軸方向に積層したコアで製作することもできる。
(変形例)
以上、2個の直流電流で回転制御できるモータシステムについて説明したが、種々の変形、応用が可能である。例えば、円周方向のステータ突極、ロータ突極の幅は種々の値が選択できる。また、各突極の形状についても図示した単純の矩形形状だけでなく、角部が丸みのある形状あるいはテーパ形状なども可能である。
巻線形状について波形の環状形状など、変形することが可能である。巻線形状が簡単なので、アルミニュームを導体として使用することも生産技術的に容易である。アウターロータモータ、アキシャルギャップ型モータ、リニアモータ、各種モータの複合化されたモータ等への応用が可能である。
制御的には、モータ巻線の電流、電圧の形状などについても種々変形が可能であり、高調波電流成分を重畳させることもできる。
また、変速機と組み合わせて、トルクと回転速度の範囲をより広範囲に変速することもできる。モータの大きさについても、トルクが0.1Nm以下の小型のモータから100Nm以上の中型、大型のモータまで製作可能である。これらの種々変形、応用したモータについても、本発明モータの主旨に含まれる変形技術は本発明に含むものである。
本発明の制御回路を含むモータは、直流電流で駆動可能であることから制御回路を簡素化することができるので、低コスト、小型である。モータの巻線は環状の2個の巻線で構成しており、モータの製作が容易で、巻線形状が単純であることから巻線占積率を高くできる。環状巻線であることから、モータのコイルエンドが無く、小型化が可能である。
モータの磁気回路構成についても電磁鋼板の切断とプレス成形により製作することができ、量産が比較的容易に行える。このように、低コスト化、小型化が可能なので、自動車用、家電用、OA用、産業用などの各種用途に利用することができる。
10 ロータ
11 ロータ軸
12 ロータ表面に配置した永久磁石
13 A相のステータ磁極
14 B相のステータ磁極
15 C相のステータ磁極
16 ステータの円周方向に巻回した環状のA相巻線
17 ステータの円周方向に巻回した環状のB相巻線
18 ステータのバックヨーク

Claims (9)

  1. 永久磁石を使用するブラシレスモータであって、
    ステータの円周方向に巻回する環状のA相巻線WAと、
    前記A相巻線WAに磁束φAが鎖交するように構成したステータ磁極群SPGAと、
    ステータの円周方向に巻回する環状のB相巻線WBと、
    前記B相巻線WBに磁束φBが鎖交するように構成したステータ磁極群SPGBと、
    第3のステータ磁極群SPGCと、
    ロータのN極磁極と、
    前記N極磁極の円周方向に配置したロータのS極磁極と、
    前記N極磁極の円周方向に配置し、磁気的にロータのN極磁極とS極磁極との間の特性を示す第3のロータ磁極であるX極磁極とを備え、
    前記X極磁極は、永久磁石のN極と永久磁石のS極とを混在させて構成するか、あるいは、非磁性体で構成し、
    少なくとも前記ステータ磁極群SPGAとSPGBの内の片方のステータ磁極の円周方向磁極幅SPHが電気角で180°以下であり、
    前記A相巻線WAあるいは前記B相巻線WBの片方だけで、直流電流により同一方向トルクを電気角で180°以上の間に渡って発生できることを特徴とするモータ。
  2. 請求項1に記載したモータにおいて、
    前記A相巻線WAには片方向電流すなわち直流電流IAを増減して制御し、
    前記B相巻線WBには片方向電流すなわち直流電流IBを増減して制御することを特徴とするモータ。
  3. 請求項1に記載したモータにおいて、
    ロータの前記X極磁極は永久磁石のN極と永久磁石のS極とを使用して構成することを特徴とするモータ。
  4. 請求項1に記載したモータにおいて、
    前記ステータ磁極群SPGCを構成するC相のステータ磁極SPCの円周方向幅HSCは前記ステータ磁極群SPGAを構成するA相のステータ磁極SPAの円周方向幅HSAより小さく、
    前記円周方向幅HSCは前記ステータ磁極群SPGBを構成するB相のステータ磁極SPBの円周方向幅HSBより小さいことを特徴とするモータ。
  5. 請求項1に記載したモータにおいて、
    ロータの前記N極磁極と前記S極磁極および前記X極磁極の少なくともいずれかのロータ磁極の特性が円周方向にN極特性とS極特性との中間の特性であり、永久磁石のN極と永久磁石のS極とを混在する比率が円周方向に徐々に変化する特性であることを特徴とするモータ。
  6. 請求項1に記載したモータにおいて、
    4極以上のモータであって、
    ロータの前記N極磁極と前記S極磁極との境界部を円周方向に反時計回転方向に移動した境界部RCCWと、
    ロータの前記N極磁極と前記S極磁極との境界部を円周方向に時計回転方向に移動した境界部RCWとを備え、
    ロータの円周方向の複数のロータ磁極の形状を電気角の0°〜360°に割り当てて見るとき、前記境界部RCCWと前記境界部RCWとの円周方向の間に位置する2つ以上のロータ磁極の磁気的特性を合成して前記第3のロータ磁極であるX極磁極を構成することを特徴とするモータ。
  7. 請求項1に記載したモータにおいて、
    ロータの前記X極磁極に軟磁性体を使用して構成することを特徴とするモータ。
  8. 請求項1に記載したモータにおいて、
    ロータの前記S極磁極の表面にフェライト磁石のS極を使用し、
    前記X極磁極の表面にフェライト磁石のN極を使用し、
    前記N極磁極に飽和磁束密度の高い軟磁性体を使用することを特徴とするモータ。
  9. 請求項1に記載したモータにおいて、
    ロータの前記S極磁極の表面に磁束密度の高い希土類磁石のS極を使用し、
    前記X極磁極の表面に磁束密度は低いが安価なフェライト磁石のN極を使用し、
    前記N極磁極に飽和磁束密度の高い軟磁性体を使用することを特徴とするモータ。
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