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JP5243782B2 - 固体酸化物形燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池に関し、詳しくは、固体酸化物形燃料電池、その製造方法及び固体酸化物形燃料電池用電極材料に関する。
固体酸化物形燃料電池は、次世代エネルギー源として期待されるようになってきている。固体酸化物形燃料電池は、固体電解質、燃料極及び空気極を有するセルから構成されており、燃料極の内部に水素を主体とする燃料ガスを供給し、空気極に酸素を供給して600℃以上の高温で発電するものである。特に、650℃〜800℃程度の中温領域で作動する固体酸化物形燃料電池の高性能化には、固体電解質の高性能化と電極の高性能化が不可欠である。近年、中温領域で、高い電気電導率が期待できる固体酸化物形燃料電池電解質として、ランタンガリウムペロブスカイト型複合酸化物(La1-xSrx)(Ga1-yMgy)O3(以下、LSGMともいう。)などのランタンガレート系の電解質が注目されている。このランタンガレート系の電解質は、低温でも酸化物イオンの伝導性の低下が少ないという特徴を有している。
一方、ランタンガレート系電解質はその反応性が高いことがわかっている。このため、ランタンガレート系電解質とNi−セリア系のサーメット燃料電極を用いてセルを作製すると、燃料極側のNiと電解質側のLaとの相互熱拡散によって、燃料極と電解質との界面で反応が生じてしまい、その結果、燃料極/電解質界面に高抵抗相が形成されて発電特性が低下してしまうことが知られている。このため、ランタンがレート系の固体電解質と燃料極との間にはかかる反応を抑制するための中間層が導入されている(特許文献1〜4等)。中間層は、固体電解質のLSGMよりも低い濃度でLaを含有し、かつNi等の燃料極成分を含有しない組成となっている。
特開平11−228136号 特開2003−173802号 特開2005−166314号 特開2005−310737号
しかしながら、このような中間層の導入に関し以下の問題があった。すなわち、中間層の導入そのものがセル作製プロセスを煩雑化するものであるとともに、燃料極と熱膨張率が相違することから、セルの一体性や機械的強度を低下させることがあった。また、中間層は、反応抑制層であって燃料極としては機能しないものである以上、本来の発電特性を低下させる傾向があるのは否定できなかった。
そこで、本発明は、簡易な構成でランタンガレート系の固体電解質と燃料極との反応が抑制された固体酸化物形燃料電池及びその製造方法並びにそのための燃料極材料を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、こうした中間層がなくてもランタンガレート系の固体電解質と燃料極との反応が抑制された固体酸化物形燃料電池及びその製造方法並びにそのための燃料極材料を提供することを他の一つの目的とする。
本発明者らは、上記した課題に鑑み、燃料極材料について種々検討を行ったところ、意外にも、燃料極成分としてNiが存在していても、セリアにLaを導入しておくことで、セル作製時における高抵抗相の形成を抑制できるという知見を得た。さらに、本発明者らは、このようなこうした複合酸化物を複合微粒子化することで一層発電特性を向上させることができるという知見を得た。本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成した。本発明によれば以下の手段が提供される。
本発明によれば、固体電解質と、空気極と、Niとランタン(La)が固溶化されたセリアとを有する燃料極と、を備える、固体酸化物形燃料電池が提供される。この固体酸化物形燃料電池によれば、燃料極にランタンが固溶化されたセリアを備えているため、固体電解質としてランタンガレート系材料を用いても、固体電解質と燃料極との界面における高抵抗相の形成を抑制又は回避できる。このため、固体電解質と燃料極との間に反応抑制を目的とした中間層を導入しなくてすむ。したがって、中間層を導入することなく、発電特性に優れる固体酸化物形燃料電池を得ることができる。
本発明の固体酸化物形燃料電池においては、前記セリアにはさらにランタン以外の希土類元素が固溶化されていてもよく、前記セリアは、Ce1-X-YLnXLaY2(ただし、Lnはランタン以外の希土類元素を表し、0≦x<0.3、0<y<0.4である。)において、LaがLa/Ce比で0.26以上0.76以下含まれるものであってもよい。また、前記希土類元素は、ガドリニウム(Gd)及びサマリウム(Sm)のいずれかあるいは双方とすることができる。本発明の固体酸化物形燃料電池においては、前記固体電解質は、ランタンガレート系固体電解質であることが好ましい。
本発明によれば、固体電解質材料と、空気極材料と、Niを含む第1の成分及びランタン(La)とランタン以外の希土類元素とが固溶化されたセリアを含む第2の成分とを含む燃料極材料と、を準備する工程と、前記固体電解質材料で作製する固体電解質材料又は固体電解質層と前記燃料極材料で作製する燃料極材料層又は燃料極層とを直接接合する工程と、を備える、固体酸化物形燃料電池の製造方法が提供される。前記固体電解質材料はランタンガレート系固体電解質であることが好ましい。この製造方法によれば、固体電解質と燃料極との間に中間層を介さず直接接合するため、セル作製プロセスを複雑化せずに発電特性の良好な固体酸化物形燃料電池を得ることができる。
本発明によれば、Niを含む第1の成分と、ランタン(La)及びランタン以外の希土類元素が固溶化されたセリアを含む第2の成分と、を含む、固体酸化物形燃料電池の燃料極材料が提供される。本発明の材料にあっては、前記第1の成分を主体とする相と、前記第2の成分を主体とする相とを有する複合粒子であることが好ましい。また、前記第2の成分において前記セリアは、Ce1-X-YLnXLaY2(ただし、Lnはランタン以外の希土類元素を表し、0≦x<0.3、0<y<0.4である。)において、LaがLa/Ce比で0.26以上0.76以下含まれることが好ましい。
本発明は、固体酸化物形燃料電池及びその製造方法並びに固体酸化物形燃料電池用の燃料極材料に関する。本発明は燃料極においてLaが固溶化されたセリア(CeO2)を備えている。従来、燃料極成分であるNiと固体電解質の構成成分であるLaとが反応して絶縁層を形成して分極値が高くなり、また、固体電解質中のLaが減少して固体電解質中に高抵抗物質が形成されることでセルの実抵抗値が低下するとされていた。したがって、Niと固体電解質との直接接触を回避し、かつ固体電解質中のLaの熱拡散をできるだけ抑制するため、Laを含みNiを含まない中間層が採用されてきた。本発明は、中間層の導入という従来の手法を採用せず、燃料極の組成によって、高抵抗相の形成を抑制しようとするものである。本発明者らは、あえてNiを有する状態での高抵抗相形成の抑制を試み、その結果、Niがあっても、セリアにLaが固溶化さえしていれば、高抵抗相の形成が抑制できるという知見を得、本発明に至った。以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の固体酸化物形燃料電池の構造の一例を示す図である。
(固体酸化物形燃料電池)
本発明の固体酸化物形燃料電池2は、図1に示すように、固体電解質4を燃料極6と空気極8とで挟むようにして構成されたセル10を有している。固体酸化物形燃料電池2においては、燃料極6と固体電解質4とは中間層を介することなく接合されている。すなわち、両者は相互に直接に接して接合されている。固体酸化物形燃料電池2は、こうしたセル10を、図示しない集電体によって、複数個直列及び/又は並列に配列させたものであってもよい。また、固体酸化物形燃料電池2は、こうした平板型に限定するものではなく、円筒型等ほか、各種形態を採ることができる。本発明の固体酸化物形燃料電池2おいては、固体電解質4、燃料極6及び空気極8のそれぞれの気孔率や厚み等は特に限定されない。これらは当業者が必要な範囲に適宜設定することができる。
(燃料極)
燃料極6は、Niとセリアとを有している。Niは、少なくともNiを含有しているが、NiOを含むものであってもよい。また、燃料極には、FeやCoなどを含んでいてもよい。これらの金属は、Niによる触媒活性を向上させる場合がある。燃料極6におけるNiの比率は、特に限定しない。全てのNiをNiOとして換算したときのNiOとセリアとの総量に対してNiOの比率が30vol%以上90vol%以下であることが好ましい。より好ましくは、45vol%以上であり、また80vol%以下である。
セリアには、少なくともランタンが固溶化されている。ランタンは上述のように、高抵抗相の形成を抑制するために固溶化されている。ランタンがセリアに固溶化されることでIR損失が低下することがわかっている。ランタンがセリアに固溶化されていればNiが存在していても、高抵抗相の形成が抑制される理由は必ずしも理論的に明らかではないが、高抵抗相形成に関しNiとの反応よりもセリアとの反応との寄与が大きかったものと推論される。
ランタンは、セル10において高抵抗相の形成が抑制できる程度にセリアに固溶化されていればよい。また、セリアは、ランタンのみを固溶化したものとすることができるが、セリアの導電率向上の観点から、ランタン以外の希土類元素が固溶化されていることが好ましい。ランタン以外の希土類元素は、特に限定しないが、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc及びYから選択される1種又は2種以上とすることができる。ランタン以外の希土類元素は、これらの中でも、セリアの導電率向上の観点から、Sm及び/又はGdを含むことが好ましい。より好ましくは、ランタン以外の希土類元素は、Sm及び/又はGdのみである。なお、ランタン以外の希土類元素は、導電率向上等、その希土類元素が好ましい作用を発揮できる範囲でセリアに固溶化されていればよい。
ランタンが固溶化したセリアの組成は、Ce1-X-YLnXLaY2(ただし、Lnはランタン以外の希土類元素を表し、0≦x<0.3、0<y<0.4を表す。)とすることができる。セリアは、この組成式において、ランタン以外の希土類元素のモル比率は、0.3をこえないことが好ましい。0.3を超えるとセリアの導電率が低下する傾向が予想されるからである。また、ランタンのモル比率は、0.4未満であることが好ましい。0.4を超えるとランタンが固溶化されていることによる悪影響(発電特性の低下)が発生する傾向が予想されるからである。好ましくは、xは、0.2以上0.3以下である。ランタンは、また、La/Ce比で0.26以上0.76以下であることが好ましい。この範囲であるとLSGM電解質とLa添加セリアの間のLaの移動が抑制されるからである。また、また、0.26未満であるとLaの移動が抑制されないからであり、0.76を超えると導電率が低下すると予想されるからである。なお、この組成式において、酸素の価数は、「2」としているが、これは、例示であって、これに限定するものではない。すなわち、この組成式における酸素の価数は、本来、固溶化される希土類元素及びランタンの比率やその価数によって決定されるものであるが、セリア(CeO2)における酸素の価数を当初の基準として例示しているものである。この組成式における酸素の価数は、当業者であれば固溶化する希土類元素及びランタンの比率やその価数から容易に算出することができる。
セリアに固溶化されるランタンにつき、固体電解質6側においてより固溶率が低くなるような傾斜組成を有していてもよい。ランタンは、高抵抗相の低下抑制のために固溶化されるからであり、界面において特に有効であるが、高抵抗相の形成を抑制するのに効果のある範囲でCeO2相に固溶化されていればよい。燃料極6は、ランタン濃度について連続的な傾斜組成を有していてもよいし、断続的な傾斜組成を有していてもよい。例えば、燃料極6を、ランタンの固溶率が異なる複数の層で形成してもよい。典型的には、燃料極6を固体電解質4に直接接合するランタンの固溶率がより高い第1の燃料極層と、この第1の燃料極層に接合されランタンの固溶率がより低い(ランタンが固溶されていなくてもよい)第2の燃料極層を備えることもできる。燃料極6においては、全てのNiをNiOとして換算したときのNiO相とセリア相との総量に対してセリア相の比率が10vol%以上70vol%以下であることが好ましい。より好ましくは、20vol%以上であり、また55vol%以下である。
燃料極6を作製するための原料については、焼成により上記組成が得られるものであれば特に限定されないが、より高い発電効率を得るためには、Ni相とCeO2相とをそれぞれ生成する原料が複合化された複合化粒子粉末を用いることが好ましい。この複合粒子粉末については後段で詳述する。
(固体電解質)
固体電解質4は、本発明では、燃料極6との間の高抵抗相の形成が抑制される観点から、ランタンガレート系固体電解質であることが好ましい。すなわち、ペロブスカイト型ランタンガレート系複合酸化物を含むことが好ましい。この複合酸化物は高い酸素イオン導電性を示し、高い発電効率を得ることができる。
ランタンガレート系複合酸化物としては、特に限定されないが、例えば、La1-aaGa1-bb3(ただし、0<a<0.3、0<b<0.3であり、AはSr、Ca及びBaから選択される1種又は2種以上であり、Xは、Mg、Al及びInから選択される1種又は2種以上である)が挙げられる。こうした複合酸化物であると、酸化物イオン導電率が高いだからである。また、例えば、La1-aaGa1-b-cbc3(ただし、0<a<0.3、0<b<0.3であり、AはSr、Ca及びBaから選択される1種又は2種以上であり、Xは、Mg、Al及びInから選択される1種又は2種以上であり、Zは、Co、Fe、Ni及びCuから選択される1種又は2種以上である)が挙げられる。こうした複合酸化物であるとさらに高い酸化物イオン導電率を有するだからである。
(空気極)
空気極8は、特に限定されず、固体酸化物形燃料電池において使用できる組成の空気極を使用できる。例えば、ABO型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスを含むことができる。かかるペロブスカイト型酸化物としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物、特にAサイトにLaを有するLaMnO系酸化物、LaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物の少なくとも1種が挙げられる。また、例えば、Sm0.5Sr0.5CoO(SSC)も用いることができる。
本発明の固体酸化物形燃料電池2によれば、燃料極6におけるセリアにランタンが固溶されているため、セル作製時における固体電解質4及び燃料極6相互におけるランタン等の熱拡散による高抵抗相の形成が抑制される。Niを含まない中間層を介在させることなく高抵抗相の形成を抑制できるため、固体電解質4と燃料極6との界面を十分に確保でき、高い発電効率を得ることができる。
(固体酸化物形燃料電池の製造方法及び燃料極材料)
本発明の固体酸化物形燃料電池の製造方法は、固体電解質材料、空気極材料及び燃料極材料を準備する工程と、固体電解質材料で作製する固体電解質材料層又は固体電解質層と前記燃料極材料で作製する燃料極材料層と燃料極層とを直接接合する工程と、を備えることができる。こうした工程を経て、固体電解質4を燃料極6及び空気極8で挟持した本発明の固体酸化物形燃料電池2を得ることができる。固体電解質4と燃料極6とが中間層を介することなく接合されるため、中間層導入のプロセスが排除されるほか、中間層の熱膨張率と固体電解質4及び燃料極6とのそれの相違に基づく不都合が排除される。また、得られた固体酸化物形燃料電池2も、良好な発電効率を発揮することができる。
(固体酸化物形燃料電池の各材料の準備)
(燃料極材料)
燃料極材料は、Niを含む第1の成分と、ランタンが固溶化されたセリアを含む第2の成分と、を含むことができる。第1の成分と第2の成分とを含むことで、高抵抗相の形成を抑制し、IR損失の低下を抑制して発電効率を向上させることができる。第1の成分と第2の成分との比率は、特に限定されないが、得ようとする燃料極6のNi相及びCeO2相との比率に応じて適宜設定することができる。
第1の成分としては、特に限定されないが、Niのほか、Niの酸化物、水酸化物、NiにFe、Coのいずれかあるいは双方の金属など添加された合金あるいは複合酸化物等が挙げられる。典型的にはNiOである。第2の成分としては、ランタンが固溶されたCeO2であるセリア系複合酸化物が挙げられる。既に説明したように、セリア系複合酸化物は、ランタンのみを固溶化したものとすることができるが、ランタン以外の希土類元素が固溶化されたものであってもよい。すなわち、前記希土類元素の1種又は2種以上が固溶化された複合酸化物であってもよい。また、セリア系複合酸化物の組成は、既に説明したCe1-X-YLnXLaY2(ただし、Lnはランタン以外の希土類元素を表し、0≦x<0.3、0<y<0.4を表す。ランタンは、La/Ce比で0.26以上0.76以下であることが好ましい。)とすることができる。
燃料極材料は、こうした第1の成分と第2の成分との混合粉末であってもよいが、第1の成分を主体とする相(第1の成分相)と第2の成分を主体とする相(第2の成分相)とを有する複合粒子であることが好ましい。こうした複合粒子を用いることで、意外にも過電圧成分が低下して一層発電効率が向上されることがわかっている。複合化により過電圧成分が低下することの理由は必ずしも明らかではないが、微細な燃料極構造を構築可能であるために、電極反応場が増加することによって過電圧損が低下すると推測される。複合粒子における第1の成分相と第2の成分相との複合形態は特に限定されない。相互に分散されてもよいし、一方の相がコアで他方の相がシェルという形態(コア−シェル構造)であってもよい。コア−シェル構造の場合、セリア相がシェルでNi相がコアであると、電解質との反応抑制に対してより効果的であると考えられる。なお、混合粉末であるとき、各粒子の平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、複合粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。こうした粉末粒子の粒子径は、SEM法によって測定することができる。
複合粒子を製造する方法は特に限定されない。噴霧熱分解法、メカノケミカル法等、従来公知の複合粒子作製方法を適宜選択して用いることができる。粒子形状及び粒子径分布等の観点から噴霧熱分解法を用いることが好ましい。また、こうした複合粒子を得るための出発原料としては、第1の成分であるNiOなどを合成により生成する各種のNi塩や酸化物等や第2の成分である複合酸化物を合成できるこれらの構成金属の塩や酸化物等を用いることができる。
その他、固体電解質材料及び空気極材料については、それぞれ既に説明した組成のセラミックス粉末等を用いることができる。
(固体電解質と燃料極との接合工程)
固体電解質4と燃料極6とが中間層を介することなく直接接して一体化されるように接合する。すなわち、どういった手法や順序によらず、最終的に固体電解質4と燃料極6とが直接接合した形態が得られるように実施されればよい。一つの形態としては、固体電解質材料を含む層と燃料極材料を含む層とは、中間層を介することなく直接接合する形態が挙げられる。接合順序等や方法は、特に限定されない。予め固体電解質材料を含有する層と燃料極材料を含有する層との積層体を形成し、その後一括焼成して接合してもよいし、別個に層状体を形成し焼成した上、その後、積層して接合のために焼成してもよい。積層体を形成するには、固体電解質材料を含むシート状体や燃料極材料を含むシート状体を、適当な溶媒やバインダのほか必要に応じて分散剤を用いて作製し、これらを積層してもよいし、固体電解質材料を含むシート状体に燃料極材料を塗布して積層体を形成してもよいし、この逆であってもよい。接合のための焼成に先んじて、バインダの除去のための加熱工程を行うこともできる。
他の形態としては、既に焼成により焼結された固体電解質4の層と既に焼成された燃料極6の層とを再焼成することにより直接接合する形態が挙げられる。さらに他の形態として、未焼成である固体電解質材料を含む層と既焼成の燃料極6の層とを直接接合する形態が挙げられる。さらに、この逆の形態も挙げられる。
また、空気極8との一体化方法については特に限定されない。固体電解質材料含有層と燃料極材料含有層と空気極材料含有層とからなる積層体を形成して一括焼成してもよいし、固体電解質4と燃料極6とが接合された後、この積層体に空気極材料層を積層し別途焼成してもよい。
焼成条件は特に限定されない。焼成温度は、組成によるが、通常、1000℃以上、典型的には1200℃以上1400℃以下程度とすることができる。また、焼成雰囲気は、酸化雰囲気でも還元雰囲気であってもよい。第1の成分であるNiは、作動時Niである必要があるが、最終的にセル作動時において還元雰囲気となってNiに還元されるほか、適宜還元処理をすればNiとすることができる。
こうした接合工程を経て、図1に示すセル10を得ることができる。必要に応じ、集電体などの必要な要素を付加することでこうしたセル10をスタックした固体酸化物形燃料電池とすることもできる。
以上説明したように、本発明の固体酸化物形燃料電池及びその製造方法並びに燃料極材料によれば、簡易な構成でランタンガレート系の固体電解質と燃料極との反応が抑制された固体酸化物形燃料電池を得ることができる。また、中間層がなくてもランタンガレート系の固体電解質と燃料極との反応が抑制された固体酸化物形燃料電池を得ることができる。
なお、本発明は、固体酸化物形燃料電池及びその製造方法並びに燃料極材料という実施形態のほか、上記した説明の範囲内における各種実施形態を採ることができる。例えば、本発明は、固体酸化物形燃料電池の一部であるセル10の製造方法の実施形態も採ることができる。また、本発明は、固体酸化物形燃料電池2の一部であるセル10としての実施形態も採ることができる。さらに、本発明は、燃料極材料の製造方法の実施形態も採ることができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、以下の実施例は本発明をより具体的に説明するものであって、本発明を限定するものではない。
本実施例では、燃料極材料として、Ni/SLDC混合粉末(SLDC:Ce0.66Sm0.17La0.17O2aNi:SLDC=6/4(体積比))(試料1)及びNi/SLDC混合粉末(SLDC:Ce0.57Sm0.14La0.29O2、Ni:SLDC=6/4(体積比))(試料2)を調製し、ランタンガレート系電解質(LSGMLa0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O3-x(組成式))の固体電解質と組み合わせて単セル発電特性を評価した。なお、単セル発電特性のための単セルは、上記燃料極材料を重合度400のポリエチレングリコールでペースト化してスクリーン印刷法により固体電解質表面に塗布し、1250℃で2時間焼成し焼成して得た焼成積層体に空気極材料(Sm0.5Sr0.5CoO3(SSC))を塗布して、1000℃で4時間焼成して作製した。電極面積は、燃料極及び空気極とも0.287cm2であり、電解質は、直径14mm、厚さ0.2mmであった。評価は、750℃、燃料ガスとしてH2-3%H2Oを5cc/min、酸化剤として空気を50cc/min供給条件下で評価した。なお、比較例として、Ni/SDC(SDC:Ce0.8Sm0.2O2、Ni:SDC=6/4(体積比))混合粉末(比較例1)を準備し、試料1及び2と同様にして単セルを作製し、単セル発電特性を評価した。また、単セル発電特性評価時における電圧降下をIR損成分及び過電圧成分に分離して評価した。単セル発電特性の評価結果を図2に示し、分離評価結果を図3に示す。
図2に示すように、SDC中にLaを固溶化させたSLDCを用いた試料1及び2は、比較例よりも優れた発電特性を示した。また、図3に示す結果よりLaの固溶化による発電特性の向上は、IR損の低減が主因であることがわかった。
本実施例では、実施例1の試料1及び試料2の燃料極材料を噴霧熱分解法により複合粒子(試料3及び4)として作製し準備した点以外は、実施例1と同様にして単セル発電特性を評価した。複合粒子は原料塩として、硝酸ニッケル、酸化サマリウム、硝酸セリウム及び硝酸ランタンを用いた。これらの原料塩を、実施例1における試料1及び試料2における組成と同じ比率となるように調製し、これらを硝酸に溶解した後、さらに純水を加えて濃度を調製して、噴霧熱分解用の試料液を調製した。噴霧熱分解法は、熱分解温度1000℃(200℃、400℃、800℃及び1000℃の順に加熱した電気炉の中に反応管をいれ、その中に試料溶液のミストを低温側から導入して合成した。)、キャリアガスとして1リットル/minの空気を用いて行った。試料3についての単セル発電特性及び試料3及び4についての分離評価結果を図4、図5A、図5B及び図5Cにそれぞれ示す。なお、図4及び図5A〜図5Cには、実施例1における比較例、試料1及び試料2の結果も併せて示す。
図4及び図5Aに示すように、同様にLaを固溶化しても複合粒子化することによって、混合粉末を用いるよりも一層発電特性が向上することがわかった。また、図5B及び図5Cに示すように、複合粉末化することによって、過電圧成分が低下することによって、発電特性が向上していることがわかった。
本発明の固体酸化物形燃料電池の概要を示す図である。 実施例1における単セル発電特性の評価結果を示す図である。 実施例1における単セル発電特性評価における電圧降下をIR損成分及び過電圧成分に分離して評価した結果を示す図である。 実施例2における単セル発電特性の評価結果を示すグラフ図(比較例、試料2及び試料4)である。 実施例2における単セル発電特性評価を示す棒グラフ図を示す図である。 実施例2における発電評価時における電圧降下をIR損成分に分離して評価した結果を示す図である。 実施例2における発電評価時における電圧降下を過電圧成分に分離して評価した結果を示す図である。
符号の説明
2 固体酸化物形燃料電池、4 固体電解質、6 燃料極、8 空気極、10 セル

Claims (9)

  1. 固体酸化物形燃料電池であって、
    固体電解質と、
    空気極と、
    Niとランタン(La)及びランタン以外の希土類元素が固溶化されたセリアとを有する燃料極と、
    を備える、電池。
  2. 前記セリアは、Ce1-X-YLnXLaY2(ただし、Lnはランタン以外の希土類元素を表し、0x<0.3、0<y<0.4である。)において、LaがLa/Ce比で0.26以上0.76以下含まれる、請求項1に記載の電池。
  3. 前記希土類元素は、ガドリニウム(Gd)及びサマリウム(Sm)のいずれかあるいは双方である、請求項又はに記載の電池。
  4. 前記固体電解質は、ランタンガレート系固体電解質である、請求項1〜のいずれかに記載の電池。
  5. 固体酸化物形燃料電池の製造方法であって、
    固体電解質材料と、空気極材料と、Niを含む第1の成分少なくともランタン(La)及びランタン以外の希土類元素が固溶化されたセリアを含む第2の成分を含む燃料極材料と、を準備する工程と、
    前記固体電解質材料で作製する固体電解質材料層又は固体電解質層と前記燃料極材料で作製する燃料極材料層又は燃料極層とを直接接合する工程と、
    を備える、製造方法。
  6. 前記固体電解質材料はランタンガレート系固体電解質である、請求項に記載の製造方法。
  7. 固体酸化物形燃料電池の燃料極材料であって、
    Niを含む第1の成分と、
    少なくともランタン(La)が固溶化されたセリアを含む第2の成分と、
    を含み、
    前記セリアにはさらにランタン以外の希土類元素が固溶化されている、材料。
  8. 前記第1の成分を主体とする相と、前記第2の成分を主体とする相とを有する複合粒子である、請求項に記載の材料。
  9. 前記第2の成分において前記セリアは、Ce1-X-YLnXLaY2(ただし、Lnはランタン以外の希土類元素を表し、0x<0.3、0<y<0.4である。)において、LaがLa/Ce比で0.26以上0.76以下含まれる、請求項又はに記載の材料。
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