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JP5114890B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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本発明は空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、乾燥路面での操縦安定性と雪上路面での操縦安定性及び旋回性とを同時に向上させるようにした非対称トレッドパターンを備えた空気入りタイヤに関する。
一般に、氷雪路用空気入りタイヤは、雪上路面での運動性能を確保するために、図5に例示するように、トレッドパターンとしてブロックパターンを採用し、その溝深さを深くしたり、溝面積を広く設定することが一般的に行われてきた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このように溝面積を広く設定したタイヤにあっては、パターン全体としてブロック (陸部)の表面積が小さくなるため、乾燥路面での操縦安定性に劣るという問題がある。
このように、雪上路面における運動性能と乾燥路面における運動性能とを同時に両立させることは非常に困難であった。この課題を解決するために、これまで多くの提案がなされてきたが、何れも一長一短あり、未だ改良の余地を残してきた。
特開2004−25954号公報
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解消するもので、雪上路面での操縦安定性及び旋回性と乾燥路面での操縦安定性とを同時に向上させるようにした空気入りタイヤを提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、トレッド面にタイヤ周方向に延びる複数の主溝とこれに交差するタイヤ周方向に傾斜して延びる複数のラグ溝とを形成し、これら主溝とラグ溝とによりトレッド面のタイヤ周方向に多数のブロックを区画形成した空気入りタイヤにおいて、前記主溝のうち最もショルダー側に位置する主溝とこれに隣接する主溝とによりタイヤ赤道線を跨ぐように区画した幅広陸部に、前記ラグ溝とはタイヤ周方向に対する傾斜方向を異ならせた複数の傾斜溝を、タイヤ赤道線を跨ぐことなく2本以上のラグ溝と連続的に交差してブロック内で終端するように形成すると共に、タイヤ周方向に隣接する前記傾斜溝の端部間を互いにオーバーラップするように配置し、かつ前記ブロックの表面に概ねタイヤ幅方向に延びるサイプを形成したことを要旨とする。
さらに、本発明の空気入りタイヤは、以下のように構成するとよい。
(1)前記幅広陸部の幅をタイヤ接地幅の25〜35%にする。
(2)前記幅広陸部のタイヤ赤道線側に隣接して、陸部の幅がタイヤ接地幅の8〜20%である幅狭陸部を配置する。
(3)前記幅広陸部において、前記傾斜溝がタイヤ周方向に占める領域の幅をX1、タイヤ赤道線側の領域の幅X2、タイヤショルダー側の領域の幅X3とするとき、それぞれの幅X1、X2、X3の領域における溝面積比率SX1、SX2、SX3の関係を、SX2<SX3<SX1、0.70×SX3≦SX2≦0.95×SX3、にする。
(4)タイヤ周方向に隣接する前記傾斜溝のオーバーラップ域における端末同士のタイヤ周方向間隔Lを前記ラグ溝のタイヤ周方向間隔Rよりも小さくする。
(5)前記ラグ溝が前記主溝と交差する鋭角側の交差角度αを50〜80°にする。
(6)前記傾斜溝のタイヤ周方向に対する鋭角側の傾斜角度βを15〜40°にする。
(7)前記主溝の総幅をタイヤ接地幅の15〜30%にする。
本発明の空気入りタイヤによれば、トレッド面に形成したタイヤ周方向に延びる複数の主溝のうち最もショルダー側に位置する主溝とこれに隣接する主溝とによりタイヤ赤道線を跨ぐように区画した幅広陸部に、2本以上のラグ溝と交差しタイヤ赤道線を跨ぐことなくブロック内で終端する複数の傾斜溝をラグ溝とは反対方向に傾斜させて設けると共に、タイヤ周方向に隣接する傾斜溝の端部間を互いにオーバーラップするように配置し、かつ前記ブロックの表面に概ねタイヤ幅方向に延びるサイプを形成したので、幅広陸部における傾斜溝のエッジ効果により雪上路面での操縦安定性及び旋回性を向上させることができると共に、この傾斜溝をタイヤ赤道線を跨がない領域で終端させたことによりトレッド中央域における剛性が確保されて乾燥路面での操縦安定性を向上させることができる。
しかも、トレッド面をタイヤ幅方向に対して非対称のパターン構成に形成したので、雪上路面における操縦安定性及び旋回性を重視する場合には、幅広陸部側が車両の外側になるようにタイヤを装着し、乾燥路面における操縦安定性を重視する場合には、幅広陸部側が車両の内側になるようにタイヤを装着することにより、所望の要求特性に応じたタイヤの使用を可能にする。
以下、本発明の構成につき添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態による空気入りタイヤのトレッド面を示す一部平面図である。図1において、トレッド面1には、タイヤ周方向に延びる複数(図では3本)の主溝2a、2b、2cと、これに交差するタイヤ周方向に傾斜して延びる複数のラグ溝3とが形成され、これら主溝2a、2b、2cとラグ溝3とによって、トレッド面1のタイヤ周方向に多数のブロック4が区画形成されている。これにより、トレッド面1は、4つの陸部5a、5b、5c、5dに区画されている。なお、本発明において、主溝2a、2b、2cとは、溝幅を4〜20mmとしてタイヤ周方向にストレート状に延びる溝をいう。
主溝2a、2b、2cのうち最もショルダー側(図では右側)に位置する主溝2aとこれに隣接する主溝2bとにより区画された陸部5は幅広陸部(以下、幅広陸部5bという)はタイヤ赤道線CLを跨るように形成されている。そして、幅広陸部5bにはラグ溝3とは傾斜方向を異ならせた複数の傾斜溝6が形成され、これら傾斜溝6は2本以上(図では3本)のラグ溝3と連続的に交差してブロック4内で終端すると共に、タイヤ周方向に隣接する傾斜溝6の端部6a、6b間が互いにオーバーラップするように配置されている。さらに、各陸部5a、5b、5c、5dにおけるブロック4には、図4に示すように、概ねタイヤ幅方向に延びるサイプを形成している。
これにより、幅広陸部5bにおける傾斜溝6のエッジ効果により雪上路面における操縦安定性及び旋回性を向上させると共に、傾斜溝6を赤道線CLを跨がない領域で終端させたことによりトレッド中央域における剛性が確保されて乾燥路面における操縦安定性を向上させることができる。
しかも、トレッド面1をタイヤ幅方向に対して非対称のパターン構成に形成したので、雪上路面における操縦安定性及び旋回性を重視する場合には、幅広陸部5b側が車両の外側になるようにタイヤを装着し、乾燥路面における操縦安定性を重視する場合には、幅広陸部5b側が車両の内側になるようにタイヤを装着することにより、所望の要求特性に応じたタイヤの使用を可能にする。
本発明の空気入りタイヤにおいて、幅広陸部5bの幅Xはタイヤ接地幅Wの25〜35
%、好ましくは28〜32%に設定するとよい。これにより、幅広陸部5bにおけるブロック剛性を適正に確保することができ、乾燥路面における操縦安定性を一層向上させることができる。幅広陸部5bの幅Xがタイヤ接地幅Wの25%未満では幅広陸部5bの剛性が低下して乾燥路面での走行性が低下し、35%超では隣接する他陸部との剛性差が大きくなり過ぎて耐摩耗性が低下する。なお、図中の点線Pはタイヤ接地端の位置を示している。
図1の実施形態のようにトレッド面1に3本の主溝2a、2b、2cを形成した場合には、幅広陸部5bのタイヤ赤道線CL側に隣接する陸部5cを幅狭陸部(以下、幅狭陸部5cという)に形成し、この幅狭陸部5cの幅Yをタイヤ接地幅Wの8〜20%、好ましくは10〜15%に設定するとよい。これにより、幅狭陸部5cにおけるブロック剛性を適正に保持することができ、乾燥路面における操縦安定性を確実に向上させることができる。幅狭陸部5cの幅Yがタイヤ接地幅Wの8%未満では、幅狭陸部5cのブロック剛性が不足して乾燥路面での操縦安定性が低下すると共に、幅狭陸部5cのブロック4に偏摩耗が発生し易くなり、20%超では、幅狭陸部5cのゴム量が増加し過ぎて、高速走行時の発熱により耐久性が低下することになる。
なお、本発明において、タイヤ接地幅Wとは、タイヤにJATMA規定の空気圧を充填し、JATMA規定の最大荷重の80%に相当する荷重を負荷させた状態におけるタイヤの接地幅をいう。
本発明の幅広陸部5bにおいて、図2に示すように、傾斜溝6がタイヤ幅方向に対して占める領域の幅をX1、タイヤ赤道線CL側の領域の幅をX2、タイヤショルダー側(図
の右側)の領域の幅をX3としたとき、それぞれの幅X1、X2、X3の領域における溝
面積比率SX1、SX2、SX3が、SX2<SX3<SX1、0.70×SX3≦SX
2≦0.95×SX3、の関係となるように調整するとよい。これにより、トレッド面1
の中央域における剛性を適正に確保することを可能にして、乾燥路面での操縦安定性及び雪上路面での制動性能を確実に向上させることができる。
なお、上述する傾斜溝6のタイヤ幅方向に対して占める領域の幅X1とは、傾斜溝6の
両端部6a、6b間のタイヤ幅方向の最大間隔をいい、タイヤ周方向に配置された傾斜溝6の両端部がタイヤ幅方向に対して不揃いである場合には、タイヤ周方向に配置された傾斜溝6の両端部6a、6bのうち最も主溝2a、2b側に位置する端部同士を結ぶタイヤ幅方向の間隔をいう。
本発明の幅広陸部5bにおいて、タイヤ周方向に隣接する傾斜溝6、6のオーバーラップ領域における端末6a、6b同士のタイヤ周方向間隔L(図2参照)を、ラグ溝3、3のタイヤ周方向間隔Rよりも小さくなるように設定するとよい。この間隔Lが間隔Rよりも大きくなると、幅広陸部5bにおけるブロック4が小さくなり過ぎて、乾燥路面での操縦安定性及びブロック4の耐偏摩耗性が低下することになる。なお、上述するラグ溝3、3のタイヤ周方向間隔Rとは、傾斜溝6のタイヤ幅方向に対して占める領域の中間位置におけるタイヤ周方向の間隔をいう。
本発明において、ラグ溝3が主溝2a、2b、2cと交差する鋭角側の交差角度α(図2参照)を50〜85°、好ましくは60〜80°に設定するとよい。交差角度αが50°未満ではブロック4の周方向における剛性が不足して、乾燥路面における操縦安定性及びブロック4の耐偏摩耗性が低下することになる。また、85°超ではタイヤ回転時における接地外郭ラインとラグ溝3とが周期的に一致して騒音発生の原因となる。
さらに、傾斜溝6のタイヤ周方向に対する鋭角側の傾斜角度βを15〜40°、好ましくは20〜30°に設定するとよい。傾斜角度βが15°未満では雪上路面における操縦安定性及び旋回性が低下することになり、40°超では幅広陸部5bの幅とその周囲の陸部5a及び幅狭陸部5cとの幅のバランスが崩れて、各陸部におけるブロック剛性が不均一となり、各陸部におけるブロック4の耐偏摩耗性が低下する。
本発明において、主溝2a、2b、2cの総幅をタイヤ接地幅Wの15〜30%、好ましくは18〜25%になるように調整するとよい。主溝2a、2b、2cの総幅がタイヤ接地幅Wの15%未満では雪上路面における湿潤性能が低下することになり、30%超では操縦安定性が低下することになる。
本発明の空気入りタイヤのトレッド面1には、2〜4本、最も好ましくは3本の主溝が形成される。トレッド面1に2本の主溝2a、2bを形成する場合には、図1の主溝2cに代えてタイヤ周方向に連続する溝を形成し、幅狭陸部5c及び陸部5dのパターン構成を変更させる。この場合のパターン構成は、特に限定されるものではなく、乾燥路面での操縦安定性と雪上路面での操縦安定性及び旋回性とを阻害しない限度において、タイヤの種類やサイズに応じて設定される。
図3は、トレッド面1に4本の主溝2a、2b、2c、2dを形成した実施形態を示すもので、本実施形態では、図1における主溝2cのショルダー側(図の左側)に主溝2dを形成して、トレッド面1を5つの陸部5a、5b、5c、5d、5eに区画している。本実施形態にあっても、陸部5dの幅はタイヤ赤道線CL側の陸部5c(幅狭陸部5c)と同様に、タイヤ接地幅Wの8〜20%に設定するとよい。本実施形態による空気入りタイヤは、特に広幅のトレッド面を有するタイヤや扁平タイヤに採用される。
なお、本発明の空気入りタイヤでは、各陸部5a、5b、5c、5d、5eには図示しないタイヤ周方向に延びる細溝が形成される場合がある。また、各陸部5a、5b、5c、5d、5eにおけるブロック4には、図4に示すように、概ねタイヤ幅方向に延びるサイプを形成している。
上述するように、本発明の空気入りタイヤは、トレッド面をタイヤ幅方向の左右において非対称のパターン構成にしているので、車両への装着位置の選択により、所望の要求特性が得られる利点を有していることから、乗用車用タイヤをはじめとした各種のタイヤに幅広く適用することができる。
タイヤサイズを205/55R16として、トレッドパターンを図5とした従来タイヤとトレッドパターンを図4とした本発明タイヤとをそれぞれ製作した。
これら2種類のタイヤを6.5Jのリムに組み付け、200kPaの内圧を充填して2000ccの後輪駆動車の前後4輪に装着し、以下の方法により乾燥路面での操縦安定性と、雪上路面での操縦安定性及び旋回性との評価を行い、その結果を従来タイヤを100とする指数により表1に記載した。数値が大きいほど優れていることを示している。
〔乾燥路面での操縦安定性〕
アスファルト路面からなるテストコースを平均時速120km/hで走行させ、熟練したテストドライバーによりレースチェンジ特性やコーナリング特性を主体にしたフィーリングによる総合評価を実施した。
〔雪上路面での操縦安定性〕
平坦な雪上路面からなるテストコースを平均時速60km/hで走行させ、熟練したテストドライバーによりレースチェンジ特性やコーナリング特性を主体にしたフィーリングによる総合評価を実施した。
〔雪上路面での旋回性〕
平坦な雪上路面からなる半径15mの円旋回コースを平均時速30km/hで走行させ、熟練したテストドライバーによりフィーリングによる評価を実施した。
Figure 0005114890
この結果、本発明タイヤは従来タイヤに比して、乾燥路面での操縦安定性と雪上路面での操縦安定性及び旋回性とが同時に向上していることがわかる。
本発明の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッド面を示す一部平面図である。 図1のトレッド面の構成を説明するための図1に相当する一部平面図である。 本発明の他の実施形態からなる空気入りタイヤのトレッド面を示す一部平面図である。 評価の対象とした本発明の空気入りタイヤのトレッド面を示す一部平面図である。 従来の空気入りタイヤのトレッド面を示す一部平面図である。
符号の説明
1 トレッド面
2a、2b、2c、2d 主溝
3 ラグ溝
4 ブロック
5a、5d、5e 陸部
5b 陸部(幅広陸部) 5c 陸部(幅狭陸部)
6 傾斜溝 6a、6b 傾斜溝の端部
CL タイヤ赤道線
P トレッド接地端

Claims (8)

  1. トレッド面にタイヤ周方向に延びる複数の主溝とこれに交差するタイヤ周方向に傾斜して延びる複数のラグ溝とを形成し、これら主溝とラグ溝とによりトレッド面のタイヤ周方向に多数のブロックを区画形成した空気入りタイヤにおいて、
    前記主溝のうち最もショルダー側に位置する主溝とこれに隣接する主溝とによりタイヤ赤道線を跨ぐように区画した幅広陸部に、前記ラグ溝とはタイヤ周方向に対する傾斜方向を異ならせた複数の傾斜溝を、タイヤ赤道線を跨ぐことなく2本以上のラグ溝と連続的に交差してブロック内で終端するように形成すると共に、タイヤ周方向に隣接する前記傾斜溝の端部間を互いにオーバーラップするように配置し、かつ前記ブロックの表面に概ねタイヤ幅方向に延びるサイプを形成した空気入りタイヤ。
  2. 前記幅広陸部の幅がタイヤ接地幅の25〜35%である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記幅広陸部のタイヤ赤道線側に隣接して、陸部の幅がタイヤ接地幅の8〜20%である幅狭陸部を配置した請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記幅広陸部において、前記傾斜溝がタイヤ幅方向に占める領域の幅をX1、タイヤ赤道線側の領域の幅をX2、タイヤショルダー側の領域の幅をX3とするとき、それぞれの幅X1、X2、X3の領域における溝面積比率SX1、SX2、SX3を以下の関係にした請求項1、2又は3に記載の空気入りタイヤ。
    SX2<SX3<SX1
    0.70×SX3≦SX2≦0.95×SX3
  5. タイヤ周方向に隣接する前記傾斜溝のオーバーラップ域における端末同士のタイヤ周方向間隔Lが前記ラグ溝のタイヤ周方向間隔Rよりも小さい請求項1、2、3又は4に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記ラグ溝が前記主溝と交差する鋭角側の交差角度αが50〜85°である請求項1、2、3、4又は5に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記傾斜溝のタイヤ周方向に対する鋭角側の傾斜角度βが15〜40°である請求項1、2、3、4、5又は6に記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記主溝の総幅がタイヤ接地幅の15〜30%である請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の空気入りタイヤ。
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