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JP5102633B2 - 長いカーボン単層ナノチューブを成長させるための方法 - Google Patents

長いカーボン単層ナノチューブを成長させるための方法 Download PDF

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フェルナンデス,エレナ,モーラ
敏生 徳根
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Description

本発明の発明者は、ハルチュンヤン,アヴェティック、フェルナンデス,エレナ,モーラ及び徳根敏生である。
本出願は、2005年1月11日に出願された米国仮特許出願番号60/643,406と、2006年1月10日に出願された米国特許出願番号(未定)と、に基づいて優先権を主張するものであり、これらを参照により本明細書中に組み込むものとする。
本発明は、化学気相成長法を用いたカーボン単層ナノチューブの生成(合成)のための方法及びプロセスに関する。詳細には、本発明は、長いSWNTの合成に関する。
カーボンナノチューブは、フラーレン分子の半分で覆われた各端を有するシームレスなチューブを形成する炭素原子の六角形網状構造である。カーボンナノチューブは、最初、アーク放電内で炭素を蒸着することにより複層同心チューブすなわち複層カーボンナノチューブを製造したSumio Iijimaによって1991年に報告された。彼らは、最大で七つまでの壁を有するカーボンナノチューブを報告した。1993年には、Iijimaのグループ及びDonald Bethuneにより統率されたIBMチームが、単層ナノチューブがアーク生成器内で鉄、コバルト等の遷移金属とともに炭素を蒸着することにより生成可能であることを、それぞれ独立して発見した(Iijima et al. Nature 363:603 (1993); Bethune et al., Nature 363:605 (1993) and U.S.patent No.5,424,054 を参照)。当初の合成は、大量の煤及び金属粒子が混合された少量の不定形ナノチューブを製造するものであった。
現在、単層カーボンナノチューブ及び複層カーボンナノチューブを合成するための、三つの主要なアプローチが存在する。これらは、カーボンロッドの電気アーク放電(Journet et al. Nature 388:756 (1997))、炭素のレーザ切断(Thess et al. Science 273:483 (1996))及び炭化水素の化学気相成長(Ivanov et al. Chem.Phys.Lett 223:329 (1994); Li et al. Science 274:1701 (1996))である。単層カーボンナノチューブが未だにグラム規模で製造されるのに対し、複層カーボンナノチューブは、触媒による炭化水素の熱分解により商業規模で製造可能である。
一般的に、単層カーボンナノチューブは、固有の機械的特性及び電子特性を有するので、複層カーボンナノチューブよりも好ましい。複層カーボンナノチューブは不飽和炭素結合価間で架橋を形成することにより偶発的な欠陥を補償したものが残ってしまうのに対し、単層カーボンナノチューブは欠陥を補償するための隣接した壁を有していないので、単層カーボンナノチューブにおいて、欠陥が発生する可能性は低い。欠陥の無い単層ナノチューブは、チューブの直径、同心的な構造の数及びキラリティを変化させることにより調節可能な、顕著な機械的特性、電子特性及び磁気特性を有することが期待される。
多くの研究者は、化学気相成長を、大規模製造及びカーボン単層ナノチューブの制御可能な合成のための実行可能な唯一のアプローチとみなしている(Dai et al. Chem. Phys. Lett. 260:471 (1996), Hafner et al., Chem. Phys. Lett. 296:195 (1998), Su. M., et al. Chem. phys. Lett., 322:321 (2000))。一般的に、CVD法によるカーボンSWNTの成長は、温度550〜1200℃での酸化物粉末により担持された金属ナノ粒子(Fe,Ni,Co,…)上における炭化水素ガス(メタン、エチレン、アルコール等)の分解により誘導される。単層カーボンナノチューブの直径は、0.7nmから3nmと様々である。合成された単層カーボンナノチューブは、レーザ蒸発法又はアーク放電法から得られたものと同様、概ね束状構造に配列され、同時に作られる。また、鉄と、V族(V,Nb及びTa)、VI族(Cr,Mo及びW)、VII族(Mn,Tc及びRe)又はランタノイドの少なくとも一つと、を含む金属触媒の利用が提案されている(U.S. Patent No. 5,707,916)。
現在、供給される触媒の形状によって区別される、単層カーボンナノチューブの合成のための化学気相成長の二つのタイプが存在する。一つのタイプにおいて、触媒は、多孔質材に埋め込まれるか基板上に担持され、炉の固定された位置に配置され、炭化水素前駆体ガスの流れの中で加熱される。Cassell et al. J. Phys. Chem. B 103: 6484-6492は、異なる触媒の効果を研究したものであり、化学気相成長における、炭素源としてメタンを用いた単層カーボンナノチューブのバルク量の合成を支えている。彼らは、AL上に担持されたFe(NO、Al上に担持されたFe(SO、Al上に担持されたFe/Ru、Al上に担持されたFe/Mo、及び、Al−SiOハイブリッド担体上に担持されたFe/Moを系統的に研究した。ハイブリッド担体材料上に担持されたバイメタル触媒は、ナノチューブの最も高い収率を提供した。Su et al. (2000) Chem. Phys. Lett. 322: 321-326は、単層カーボンナノチューブを製造するための、酸化アルミニウムエアロゲル上に担持されたバイメタル触媒の利用を報告した。彼らは、ナノチューブの生成が用いられた触媒の重量の200%を超えることを報告した。相対的に、Al粉末に担持された同様の触媒は、最初の触媒の重量の約40%を生産する。したがって、エアロゲル担体の利用は、触媒の単位重量あたりに製造されるナノチューブの量を5倍に改善した。
炭素の気相成長の第二のタイプにおいて、触媒及び炭化水素前駆体ガスが、気相を用いて炉内に供給され、続いて気相における触媒反応が起こる。触媒は、大抵の場合、有機金属の形である。Nikolaev et al. (1999) Chem. Phys. Lett. 313:91は、単層カーボンナノチューブを形成するために、一酸化炭素(CO)ガスが有機金属プロトポルフィリン鉄(Fe(CO))と反応する高圧CO反応(HiPCO)法を開示している。当該文献では、一日につき400gのカーボンナノチューブが合成可能であることが主張されている。Chen. et al. (1998) Appl. Phys. Lett. 72: 3282は、単層カーボンナノチューブを合成するために、水素ガスを用いて運ばれたベンゼン及び有機金属フェロセン(Fe(C)を使用する。このアプローチの問題点は、金属触媒の粒径を制御することが困難なことである。有機金属の分解は、不規則な炭素に様々な粒径を有する(所望されていない)金属触媒を提供し、直径の分布が広く、収率が低いナノチューブを生じる。
他の方法において、触媒は、反応炉内にパルス状の液体として導入される。Ci et al. (2000) Carbon 38: 1933-1937は、少量のチオフェンを含む100mLのベンゼン内にフェロセンを溶解している。この溶液が水素雰囲気下で垂直反応炉内に注入される。この技術は、真っ直ぐなカーボンナノチューブを得るためには反応炉の底壁の温度が205−230℃の間に維持されることが必要である。Ago et al. (2001) J. Phys. Chem. 105: 10453-10456の方法では、コバルト:モリブデン(1:1)ナノ粒子のコロイド溶液が生成され、垂直に配列された炉内に注入され、炭素源として1%のチオフェン及びトルエンが加えられる。束状構造の単層カーボンナノチューブが合成される。このアプローチの問題点の一つは、製造されるナノチューブの収率が非常に低いことである。
このように、製造されたSWNTの直径が触媒粒子のサイズに比例することは公知である。小さい直径のナノチューブを合成するためには、非常に小さい粒径(約1nm未満)の触媒粒子が必要である。小さい粒径の触媒は合成することが困難であり、また小さい触媒粒子サイズであっても、触媒サイズの分布があるので、直径の幅を有するナノチューブが形成されることとなる。さらに、炭素源のカーボンナノチューブへの変換は低く、電子顕微鏡による研究は、製造されたカーボンナノチューブがたったの10μmの長さを有しており、あまり長くないことを示している。導電ケーブル、マイクロアクチュエータ等のいくつかのアプリケーションに関し、長くて連続的なチューブが合成されれば、カーボンSWNTの電子特性及び機械的特性が活用可能である。数cmの長さを有するカーボンSWNTの合成が、Zhu et al. (2002) Science 296: 884-886によって報告されている。Zhu et al.の手法は、触媒粒子が合成中にその場で形成される垂直フローティング法を用いている。
触媒粒子のその場形成は、SWNTの収率を最終的に制限する粒径分布に影響を及ぼす。したがって、長い全長を有するカーボン単層ナノチューブの合成のための方法及びプロセスが必要である。
本発明は、長い単層カーボンナノチューブを成長させるための方法及びプロセスを提供する。一態様において、炭素前駆体ガス及び担体上の金属触媒は、金属−炭素相の共融点(液相)近くの反応温度まで加熱される。さらに、反応温度は、金属触媒の融点未満である。炭素源の流量は、その全てが実質的にSWNTを形成するために反応するように制御される。本発明は、長いSWNTの合成を提供する。
本発明の一態様において、単層カーボンナノチューブ(SWNT)の生成のための化学気相成長法が提供される。本方法は、触媒の共融点近くの温度で炭素前駆体ガスを担体上の触媒と接触させており、炭素前駆体ガスが、当該炭素前駆体ガスが反応する割合と同じ割合で接触することにより、長いSWNTが形成されるステップを含む。炭素前駆体ガスの量は、触媒1mgに対して約0.05sccmから約1.2sccm、好ましくは触媒1mgに対して約0.1sccmから約0.8sccm、より好ましくは触媒1mgに対して約0.2sccmから約0.5sccmとすることができる。
本発明の他の態様において、単層カーボンナノチューブ(SWNT)を生成するための化学気相成長法は、触媒の融点未満であり、かつ、触媒の共融点より約5℃から約150℃高い温度で炭素前駆体ガスを担体上の触媒と接触させており、反応室に導入される炭素の量が、反応室から排出される炭素の量の約90%から約110%であることにより、長いSWNTが形成されるステップを含む。
本発明のこれらの態様及び他の態様が、以下の詳細な説明を参照することにより明らかになるであろう。さらに、より詳細な手順又は構成を記載した様々な参考文献が本明細書で説明されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
<1.定義>
特に指定しない限り、明細書及び特許請求の範囲を含む本出願において用いられる以下の用語は、以下で与えられる定義を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられている単数形は、文脈が特に明確に指示しなくても、複数形を含むことに留意されたい。標準的な化学用語の定義は、Carey and Sundberg (1992) "Advanced organic Chemistry 3rd. Ed" Vols. A and B, Plenum Press, New York及びCotton et al. (1999) "Advanced Inorganic Chemistry 6th Ed." Wiley, New Yorkを含む参考資料から入手可能である。
「単層カーボンナノチューブ」又は「一次元カーボンナノチューブ」という用語は、交換可能に用いられ、主として単層の炭素原子からなる壁を有し、黒鉛型の結合を有する六角結晶構造に配列された炭素原子の円筒形状の薄いシートを指す。
本明細書で用いられる「複層カーボンナノチューブ」という用語は、一よりも多い同心チューブからなるナノチューブを指す。
「金属有機物」又は「有機金属」という用語は、交換可能に用いられ、有機化合物と、金属、遷移金属又は金属ハロゲン化物と、からなる配位化合物を指す。
「共融点(共晶点ともいう)」という用語は、合金の凝固温度のうち、可能な最も低い温度を指し、異なる比率で同一成分からなる他の合金の凝固温度よりも低くすることができる。
<2.概説>
本発明は、長い全長を有するカーボン単層ナノチューブ(SWNT)の製造のための方法、装置及びプロセスを開示する。
本発明は、実質的に長い全長を有する単層カーボンナノチューブ(SWNT)の製造のための化学気相成長プロセスに関する。本発明によると、長いSWNTは、炭素含有ガスを担体上に担持された触媒と接触させることにより製造可能である。触媒粒子は、規定された直径の狭い幅を有するように選択されている。炭素含有ガスは、炭素含有ガスを分解してSWNTの成長を生じるのに十分な温度で触媒と接触する。大きい直径の触媒は、高い共融温度を有し、不活性であるので、反応温度は、最小の直径を有する触媒粒子が単層ナノチューブを成長させるために活性化(液化)する触媒−炭素相の共融点に近いことが望ましい。さらに、炭素含有ガスが触媒と接触する割合は、実質的に全てのカーボンがSWNTを形成することにより、長いSWNTを提供するように制御される。
<3.反応槽>
本発明の一態様において、カーボンナノチューブを製造するためのシステムが提供される。本システムは、少なくとも一つの温度帯、好ましくは複数の温度帯に対応し、炭素前駆体ガスの供給源と不活性ガスの供給源とが設けられた気密反応室を有することが可能な反応炉を備え、オプションとして、試料保持器が気密反応室内に設置可能であり、排出システムが反応室からガスを排出するために反応炉に接続される。
一般的に、市販の「水平」反応炉は、本発明の様々な実施形態を実施するために利用可能である。反応炉は、加熱された反応室内のガスの流れを制御することができるように構成された従来の炉とすることができる。例えば、カーボライトモデルTZF12/65/550は、本発明の様々な態様を実施するために好適な水平3ゾーン炉である。
オプションとして、石英管が、反応室として機能するように反応炉内に設置可能である。反応炉がプロセスに必要な熱を提供する間、石英管は、反応炉の反応室として機能することができる。反応室は、石英管内での雰囲気の組成を制御可能とするために、一以上のガス吸気ポート及びガス排気ポートを有している。所与のプロセスの要求によると、さらなるガス吸気ポートが追加可能であり、不要なガス吸気ポートが閉鎖可能である。また、反応室は、真空ポンプをガス排気ポートに取り付けることによって低圧での動作を可能とするように構成可能である。本発明の利用に好適な他のタイプの反応室が、当業者にとって自明な事項である。反応炉の動作中、試料保持器が、石英ボート、石英基板、他タイプの反応槽又は反応基板等の石英管内に設置可能である。一般的に、試料保持器は、石英管又は他の反応室への材料の導入又は除去を容易にするために用いられる。所望のプロセスのガスフローステップ及び加熱ステップの間、処理される材料は、試料保持器の上又は中に配置される。
一般的な動作において、触媒を含む試料保持器が、反応室内に設置される。続いて、反応室内の圧力が、従来の真空ポンプである真空ポンプによって低減される。反応室の内圧が所望の圧力に到達すると、物理気相成長工程が、温度帯において温度を調節することによって開始される。
<4.触媒>
触媒組成は、化学気相成長プロセスで日常的に用いられている、当業者にとって知られた触媒組成とすることができる。カーボンナノチューブ成長プロセスにおける触媒の機能は、炭素前駆体を分解し、規則的な炭素の堆積を促進することである。本発明の方法、プロセス及び装置は、金属触媒として金属ナノ粒子を用いることが好ましい。触媒として選択された金属又は金属の組み合わせが、所望の粒径及び直径分布を得るために処理可能である。続いて、金属ナノ粒子は、後記する金属成長触媒を用いたカーボンナノチューブの合成中に、担体としての利用に好適な材料上に担持されることにより分離可能である。公知のように、担体は、触媒粒子を互いに分離することにより、触媒組成における広大な表面領域を触媒物質に提供するために利用可能である。このような担体材料としては、結晶シリコン、ポリシリコン、シリコン窒化物、タングステン、マグネシウム、アルミニウム及びこれらの酸化物が挙げられ、好ましくは、オプションとして添加元素により改質された、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化マグネシウム若しくは二酸化チタン又はこれらの組み合わせが、担体粉末として用いられる。シリカ、アルミナ及び他の公知の材料が担体として用いられてもよく、アルミナが担体として用いられることが好ましい。
金属触媒は、V、Nb等のV族金属及びこれらの混合物、Cr、W又はMoが挙げられるVI族金属及びこれらの混合物、Mn又はReが挙げられるVII族金属、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptが挙げられるVIII族金属及びこれらの混合物、Ce、Eu、Er、Yb等のランタノイド及びこれらの混合物、又は、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Sc、Y、La等の遷移金属及びこれらの混合物から選択可能である。本発明により採用可能な、バイメタル触媒等の触媒混合物の具体例としては、Co−Cr、Co−W、Co−Mo、Ni−Cr、Ni−W、Ni−Mo、Ru−Cr、Ru−W、Ru−Mo、Rh−Cr、Rh−W、Rh−Mo、Pd−Cr、Pd−W、Pd−Mo、Ir−Cr、Pt−Cr、Pt−W及びPt−Moが挙げられる。金属触媒は、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、又はFe−Mo、Co−Mo、Ni−Fe−Mo等のこれらの混合物であることが好ましい。
金属、バイメタル又は金属の組み合わせが、規定された粒径及び直径分布を有する金属ナノ粒子を生成するために利用可能である。金属ナノ粒子は、Harutyunyan et al., NanoLetters 2, 525 (2002)に記載された文献の手順を用いて生成可能である。また、金属ナノ粒子は、同時継続であり共同所有である米国特許出願第10/304,316号明細書に記載されたように、不活性塩に添加された、対応する金属塩の熱分解と、金属ナノ粒子を提供するために調節された溶剤の温度と、により生成可能であり、又は、公知の他の手法によっても生成可能である。金属ナノ粒子の粒径及び直径は、不活性溶剤内の好適な濃度の金属を用いること、及び、熱分解温度での反応が促進可能な時間の長さを制御することにより、制御可能である。約0.01nmから約20nm、より好ましくは約0.1nmから約3nm、最も好ましくは約0.3nmから2nmの粒径を有する金属ナノ粒子が生成可能である。すなわち、金属ナノ粒子は、0.1,1,2,3,4,5,6,7,8,9又は10nm、及び最大で約20nmまでの粒径を有することができる。他の態様において、金属ナノ粒子は、粒径の幅を有することができる。例えば、金属ナノ粒子は、大きさ約3nmから約7nm、大きさ約5nmから約10nm、又は、大きさ約8nmから16nmの幅の粒径を有することができる。オプションとして、金属ナノ粒子は、約0.5nmから約20nm、好ましくは約1nmから約15nm、より好ましくは約1nmから約5nmの直径分布を有することができる。すなわち、金属ナノ粒子は、約1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14又は15nmの直径分布を有することができる。
金属塩は、いかなる金属の塩であってもよく、金属塩の融点が不活性溶剤の沸点未満となるように選択可能である。したがって、金属塩は、金属イオン及び対イオンを備え、対イオンは、硝酸塩、窒化物、過塩素酸塩、硫酸塩、硫化物、酢酸塩、ハロゲン化物、メトキシドやエトキシド等の酸化物、アセチルアセトネート等となることができる。例えば、金属塩は、酢酸鉄(FeAc)、酢酸ニッケル(NiAc)、酢酸パラジウム(PdAc)、酢酸モリブデン(MoAc)等、及びこれらの組み合わせとすることが可能である。金属塩の融点は、好ましくは不活性溶剤の沸点よりも約5℃−50℃低く、より好ましくは沸点よりも約5℃−約20℃低い。
金属塩は、溶液、懸濁液又は分散液を提供するために不活性溶剤内に溶解可能である。溶剤は、有機溶剤であることが好ましく、選択された金属塩が比較的溶けやすくて安定化するものとすることができ、実験条件下で容易に蒸発するのに十分な高蒸気圧を有することが可能である。溶剤は、グリコールエーテル、2−(2−ブトキシトキシ)エタノール、H(OCHCHO(CHCH等のエーテルとすることができ、以下、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等の一般名を用いて呼ぶこととする。
金属塩と不活性溶剤との相対量が、製造されるナノ粒子のサイズを制御する要因となっている。広い範囲のモル比、ここでは不活性溶剤1モルに対する金属塩の総モル量を指す、が金属ナノ粒子を形成するために利用可能である。不活性溶剤に対する金属塩の一般的なモル比は、低くて約0.0222(1:45)、高くて約2.0(2:1)の比率、又はこれらの間の比率である。したがって、例えば約5.75×10−5から約1.73×10−3モル(10−300mg)のFeAcが、約3×10−4から約3×10−3モル(50−500ml)のジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル内に溶解可能である。
他の態様において、二以上の金属塩が、対イオンが同じ又は異なる二以上の金属からなる金属ナノ粒子を形成するために反応槽に追加可能である。用いられる各金属塩の相対量は、結果物である金属ナノ粒子の組成を制御する要因となり得る。バイメタルに関して、第二の金属塩に対する第一の金属塩のモル比は、約1:10から約10:1、好ましくは約2:1から約1:2、より好ましくは約1.5:1から1:1.5、又はこれらの間の比率、とすることができる。したがって、例えば酢酸ニッケルに対する酢酸鉄のモル比は、1:2、1:1.5、1.5:1又は1:1とすることができる。当業者であれば、金属塩の他の組み合わせと、第二の金属塩に対する第一の金属塩の他のモル比とが、様々な組成を有する金属ナノ粒子を合成するために利用可能であることを認識するであろう。
不活性溶剤と金属塩との反応液は、均一な溶液、懸濁液又は分散液を提供するために混合可能である。反応液は、標準的な実験用攪拌器、混合器、超音波発生器等を用いて混合可能である。このようにして得られた均一な混合物は、金属ナノ粒子を形成するために熱分解を受けることができる。
熱分解反応は、反応槽の内容物を、反応槽内の一以上の金属塩の融点を超える温度まで加熱することによって開始する。加熱マントル、加熱板、ブンゼンバーナー等の標準的な実験用加熱器を含む任意の好適な熱源が利用可能であり、熱は還流可能である。熱分解の時間の長さは、所望のサイズの金属ナノ粒子が得られるように選択可能である。一般的な反応時間は、約10分から約120分、又はこれらの間の任意の整数分とすることができる。熱分解反応は、反応槽の内容物の温度を金属塩の融点未満の温度まで下げることにより、所望の時間で終了する。
製造される金属ナノ粒子のサイズ及び分布は、好適な手法によって検証可能である。検証の一手法が、透過型電子顕微鏡法(TEM)である。好適なモデルとしては、FEI Company of Hillsboro,ORから市販されているPhillips CM300 FEG TEMが挙げられる。金属ナノ粒子のTEM顕微鏡写真を撮影するために、一滴以上の金属ナノ粒子/不活性溶剤溶液が、TEM顕微鏡写真を得るために好適な炭素薄膜格子又は他の格子に設置される。続いて、TEM装置が、生成されたナノ粒子のサイズ分布を決定するために利用可能なナノ粒子の顕微鏡写真を得るために用いられる。
前記した熱分解により形成された金属ナノ粒子等の金属ナノ粒子は、固体の担体に担持される。固体の担体は、シリカ、アルミナ、MCM−41、MgO、ZrO、アルミニウム−安定化酸化マグネシウム、ゼオライト又は他の公知の酸化物担体、及びこれらの組み合わせとすることができる。例えば、Al−SiOハイブリッド担体が使用可能である。担体は、酸化アルミニウム(Al)又はシリカ(SiO)であることが好ましい。固体の担体として用いられる酸化物は、粉末状であり、小さい粒径及び大きい表面積を提供する。粉末状酸化物は、好ましくは約0.01μmから約100μm、より好ましくは約0.1μmから約10μm、さらに好ましくは約0.5μmから約5μm、最も好ましくは約1μmから約2μmの間の粒径を有する。粉末状酸化物は、約50−約1000m/gの表面積、より好ましくは約200−約800m/gの表面積を有する。粉末状酸化物は、新たに生成可能であり、市販もされている。
一態様において、金属ナノ粒子は、補助的な分散及び抽出を介して固体の担体に担持される。補助的な分散は、熱分解反応後に、酸化アルミニウム(Al)、シリカ(SiO)等の粉末状酸化物を反応槽内に導入することによって開始する。1−2μmの粒径及び300−500m/gの表面積を有する好適なAl粉末は、Alfa Aesar of Ward Hill, MA又はDegussa, NJから市販されている。粉末状酸化物は、粉末状酸化物と金属ナノ粒子を形成するために用いられる金属の初期量との間の所望の重量比を実現するために追加可能である。一般的に、重量比は、約10:1と約15:1との間とすることができる。例えば、100mgの酢酸鉄が始めの金属として用いられている場合には、約320−480mgの粉末状酸化物が溶液内に導入可能である。
粉末状酸化物と金属ナノ粒子/不活性溶剤混合物との混合物は、均一な溶液、懸濁液又は分散液を形成するために混合可能である。均一な溶液、懸濁液又は分散液は、超音波発生器、実験用攪拌器、機械的混合器又は他の好適な手法を用いて、オプションとして加熱しつつ、形成可能である。例えば、金属ナノ粒子、粉末状酸化物及び不活性溶剤の混合物は、まず、おおよそ80℃で2時間攪拌され、続いて、均一な溶液を提供するために実験用攪拌器を用いて80℃で30分間攪拌及び混合可能である。
補助的な分散の後、分散した金属ナノ粒子及び粉末状酸化物が不活性溶剤から抽出される。抽出は、濾過、遠心分離、減圧下での溶剤の除去、大気圧下での溶剤の除去等によるものとすることができる。不活性溶剤を蒸発させた後、粉末状酸化物及び金属ナノ粒子が反応槽の壁に膜又は残渣として残る。粉末状酸化物がAlである場合には、膜は一般的に黒い。金属ナノ粒子及び粉末状酸化物の膜は、反応槽から除去して微粉末を生成するために粉砕することができ、これにより混合物の入手可能な表面積を増大させる。混合物は、乳鉢及び乳棒を用いるか、市販されている機械的グラインダによるか、当業者にとって公知である、混合物の表面積を増大させる他の手法によって、粉砕することができる。
特定の理論にかかわらず、抽出プロセス中に粉末状酸化物が二つの機能を果たすと考えられる。粉末状酸化物は、多孔性であり、大きい表面積を有する。したがって、金属ナノ粒子は、補助的な分散中に粉末状酸化物の細孔内に定着する。粉末状酸化物の細孔への定着は、金属ナノ粒子を互いに分離し、抽出中の金属ナノ粒子の凝集を防止する。この効果は、用いられる粉末状酸化物の量によって補完される。前記したように、粉末状酸化物に対する金属ナノ粒子の重量比は、例えば、1:11、1:12、2:25、3:37、1:13:1:14等のように約1:10−1:15の間とすることができる。不活性溶剤が除去されるので、比較的大きい量の粉末状酸化物が、事実上、さらに金属ナノ粒子を分離又は「希薄化する」機能を果たす。このように、本プロセスは、規定された粒径の金属ナノ粒子を提供する。
当業者にとって自明であるように、このように生成された触媒は、後で利用するために保存可能である。他の態様において、金属ナノ粒子は、予め生成され、不活性溶剤から分離され、精製されており、その後、好適な量の同様又は異なる不活性溶剤内の粉末状酸化物に添加される。金属ナノ粒子及び粉末状酸化物は、前記したように、均一に分散され、不活性溶剤から抽出され、実質的な表面積を増大させるために処理される。金属ナノ粒子及び粉末状酸化物の混合物を生成するための他の方法は、当業者にとって自明である。
このように形成された金属ナノ粒子は、化学気相成長(CVD)プロセスによるカーボンナノチューブ、ナノファイバ及び他の一次元カーボンナノ構造体の合成のための成長触媒として利用可能である。
<5.炭素前駆体>
カーボンナノチューブは、炭素含有ガス等の炭素前駆体を用いて合成可能である。一般的に、最大で800℃−1000℃までの温度でも熱分解しない炭素含有ガスが利用可能である。炭素含有ガスの好適な例としては、一酸化炭素と、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、エチレン、アセチレン、プロピレン等の飽和脂肪族炭化水素及び不飽和脂肪族炭化水素と、メタノールと、アセトン等の含酸素炭化水素と、ベンゼン、トルエン、ナフタレン等の芳香族炭化水素と、例えば一酸化炭素及びメタンといった前記物質の混合物と、が挙げられる。一般的に、一酸化炭素及びメタンが単層カーボンナノチューブの形成のための供給ガスとして好ましいのに対し、アセチレンの利用は、複層カーボンナノチューブの形成を促進する。オプションとして、炭素含有ガスは、水素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン又はこれらの混合物等の希釈ガスと混合されてもよい。
<6.カーボンナノチューブの合成>
本発明の方法及びプロセスは、狭い直径分布を有するSWNTの合成を提供する。カーボンナノチューブ直径の狭い分布は、最も低い共融点を反応温度として選択することによって、合成中に小さい直径の触媒粒子を選択的に活性化させることによって得られる。
本発明の一態様において、Harutyunyan et al., NanoLetters 2, 525 (2002)に記載された文献の方法によって、粉末状酸化物に担持された金属ナノ粒子が反応温度で炭素源と接触可能である。また、酸化物粉末に担持された金属ナノ粒子は、エアロゾル化されて反応温度に維持された反応炉内に導入可能である。同時に、炭素前駆体ガスが、反応炉内に導入される。反応炉内における反応物質の流れは、反応炉の壁上の炭素製造物の堆積が減少するように制御可能である。このように製造されたカーボンナノチューブは、収集及び分離可能である。
酸化物粉末に担持された金属ナノ粒子は、公知の手法によりエアロゾル化可能である。一手法において、担持された金属ナノ粒子は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等の不活性ガスを用いてエアロゾル化される。好ましくは、アルゴンが用いられる。一般的に、アルゴン又は他のガスは、粒子インジェクタを介して反応炉内に強制的に流入される。粒子インジェクタは、担持された金属ナノ粒子を含むことが可能であり、担持された金属粒子を攪拌する手段を有する容器である。したがって、粉末状の多孔性酸化物基板に堆積した触媒は、機械的攪拌器が取り付けられたビーカ内に設置可能である。担持された金属ナノ粒子は、アルゴン等の搬送ガス内の触媒の同伴をアシストするために攪拌又は混合可能である。
したがって、ナノチューブ合成は、一般的には、2003年12月3日に出願された、同時継続及び共有出願である米国特許出願10/727,707号明細書に記載されたように発生する。一般的に、不活性搬送ガス、好ましくはアルゴンガス、は粒子インジェクタを経由する。粒子インジェクタは、粉末状の多孔性酸化物基板に担持された成長触媒を含むビーカ又は他の容器とすることができる。粒子インジェクタ内の粉末状の多孔性酸化物基板は、アルゴンガスフロー内の粉末状多孔性酸化物基板の同伴をアシストするために攪拌又は混合可能である。オプションとして、不活性ガスは、ガスを乾燥させる乾燥システムを経由可能である。アルゴンガスは、同伴された粉末状の多孔性酸化物を含んでおり、このガスフローの温度を約400℃から約500℃に上昇させるために予熱器を経由可能である。続いて、同伴された粉末状の多孔性酸化物は、反応室に供給される。メタン又は他の炭素源ガス及び水素の流れも、反応室に供給される。一般的な流量は、アルゴンで500sccm、メタンで400sccm、ヘリウムで100sccmとすることができる。さらに、500sccmのアルゴンが、反応室の壁上の炭素製造物の堆積を低減させるためにらせん流吸気口に向けて方向付けられてもよい。反応室は、加熱器を用いた反応中に、約300℃から900℃の間に加熱可能である。温度は、炭素前駆体ガスの分解温度未満に維持されることが好ましい。例えば、1000℃を超える温度では、メタンは、金属成長触媒を用いてカーボンナノ構造体を形成するよりもむしろ、直接煤に分解してしまうことが知られている。反応室で合成されたカーボンナノチューブ及び他のカーボンナノ構造体は、収集及び特徴付け可能である。
用いられる特定の反応温度は、触媒のタイプ及び前駆体のタイプに依存する。各化学反応に関するエネルギー平衡方程式が、カーボンナノチューブを成長させるための最適なCVD反応温度を分析的に決定するために利用可能である。このことが、必要な反応温度の幅を決定する。最適な反応温度は、選択された前駆体及び触媒の流量にも依存する。一般的に、本方法は、300℃から900℃の範囲のCVD反応温度を必要とする。
他の態様において、反応温度は、金属粒子と炭素との混合物のほぼ共融点であり、触媒粒子の融点未満となるように選択される。反応温度は、ほぼ共融点、好ましくは共融点よりも約5℃から約150℃高く、より好ましくは共融点よりも約10℃から約100℃高くなるように選択可能である。したがって、反応温度は、共融点+5℃、共融点+15℃、共融点+50℃、共融点+70℃、共融点+80℃等となるように選択可能である。他の態様において、反応温度は、共融点の約1%から約25%上、好ましくは共融点の約2%から約15%上、より好ましくは共融点の約2%から約10%上とすることができる。
共融点は、ある範囲の温度にわたり、二以上の元素の異なる混合物において形成された相を示す二成分相平衡状態図から得られる。公知のように、相平衡状態図の縦軸は温度であり、横軸は触媒100%から可能な混合物の全てを介して炭素100%までの範囲の組成である。組成は、A−X%炭素の形で与えられ、ここでAは触媒であり、重量パーセント又はモルパーセントが、金属触媒と炭素との割合を特定するために利用可能である。図1には、一般的な鉄−炭素相平衡状態図が示されている。図示されているように、炭素濃度が鉄−炭素ナノ粒子の液相線に影響を与える。Feの融点は1538℃である。A4.3重量%の炭素含有量は、鉄−炭素合金が液体のまま残る1140℃(共融点)まで融点を下げる。高い炭素濃度は、液化温度の鋭敏な上昇を導く(例えば、〜8重量%の炭素含有量において、液化温度は約2500℃である)。
二成分相平衡状態図によると、コバルト−炭素バルクの共融点及びニッケル−炭素バルクの共融点が、それぞれ〜2.7重量%(1321℃)の炭素含有量及び〜2重量%(1326℃)の炭素含有量に相当する。これらの共融温度は、鉄−炭素相の共融温度よりも高く、二倍未満である。共融点を超える炭素含有量の増加は、鉄−炭素相と比べた場合に、コバルト−鉄相及びニッケル−鉄相の液相線の鋭敏な上昇をもたらす。すなわち、コバルト触媒及びニッケル触媒は、高い合成温度を必要とするであろう。
他の態様において、共融点は、公知の式を用いて計算可能である。小さい粒子に関して、粒径を用いて融解温度の依存度を理論的に決定するための多くの異なる技術的アプローチが存在する。ギブス−トンプソン効果によると、半径(r)を有する金属粒子の融点は、式
Tm(r)=T bulk[1−2γK(r)/ΔH]
により近似可能である。ここで、T bulk及びΔHは、それぞれバルクの融解温度及び単位体積あたりの潜熱である。γは、粒子とその環境との間の界面張力であり、K〜1/rは、ナノ粒子の曲率に関連する特性である。理論的な推定が、遷移金属の融点が金属バルクから100nm未満の直径を有する粒子に向かうにつれて減少することを示した。この減少は、10nm以下の粒子にとって大きく(〜30%)、〜1−3nmの場合には、〜700℃未満の温度で液体となってしまう。したがって、1.5nm未満の平均直径を有する鉄ナノ粒子は、約800℃から約850℃(合成温度)で液体になると期待される。
特定の理論にかかわらず、触媒ナノ粒子の溶解温度がSWNTの合成における重要なパラメータであると考えられる。炭素フィラメント成長のための一般的に認められたメカニズムによって、金属粒子中における炭素の拡散が生じる。このメカニズムによって、初期触媒の溶解点以下の温度であってもSWNTの成長中における触媒粒子の炭素起因の液化が生じる。すなわち、鉄ナノ粒子等の触媒ナノ粒子を介した炭素原子の拡散によって、初期触媒の溶解点以下の温度でのSWNTの成長中における触媒粒子の液化が生じる。したがって、炭化水素ガスは、金属ナノ粒子の表面で分解して水素及び炭素を放出し、炭素はナノ粒子に溶け込む。溶け込んだ炭素は、融点未満の触媒ナノ粒子を介して拡散し、ナノ粒子の液化をもたらす。SWNTは、この液化した金属触媒から成長する。共融点を超えた、吸収された炭素濃度のさらなる増大は、液化温度の上昇をもたらし、最終的にナノ粒子の凝固を生じる。固体鉄−炭素相を介した炭素の拡散は、非常にゆっくりとしており、例えば、FeCに関して、拡散係数は、650℃でD=6×10−12cm/sである。ちなみに、液相状態において3nm未満のrを有する鉄ナノ粒子を介した炭素原子の拡散は、D≒10−5cm/sである。したがって、チューブ成長中における鉄−炭素相の形成は、炭素原子の拡散を減少させ、遅くなり最終的に成長を終了する。したがって、触媒が液相状態である場合にSWNTが成長すると考えられる。炭素の触媒ナノ粒子への拡散は、低温での金属ナノ粒子の液化をもたらし、ほぼ共融点でのSWNTの合成を可能とする。
本発明の一態様において、炭素源の反応室への流量は、触媒に拡散する炭素の量がカーボンSWNTの成長に寄与する炭素の量とほぼ等しくなるように制御可能である。したがって、所与の温度に関して、反応室内に導入される炭素の量は、触媒1mgに対して0.05sccmから1.2sccm、好ましくは、触媒1mgに対して約0.1sccmから0.8sccm、より好ましくは、触媒1mgに対して0.25,0.275,0.3,0.345,0.378,0.4sccm等、触媒1mgに対して0.2sccmから0.5sccmとすることができる。この量は、重量、モル、又は他の測定単位で測定可能である。したがって、反応速度が約0.1モルの炭素を消費する場合には、約0.095モルから約0.105モルの炭素が反応室内に流れる。理論にかかわらず、前記した炭素の流量制御が触媒粒子上における炭化物の形成を抑制することがわかる。触媒粒子上における炭化物の形成は、SWNTの全長が長くならないことの原因となり得る。したがって、反応室に導入されて排出される炭素の流量は、炭化物の形成が最小化されるか所与の合成温度において抑制されるように制御される。
反応室内への炭素の流量は、炭素源の融点、触媒粒子内への炭素の拡散係数及び触媒粒子の直径に基づいて推定可能である。例えば、触媒粒子が鉄を含む場合には、バルク鉄に関する係数が推定値を得るために利用可能である。したがって、炭素源は、触媒粒子と接触する全ての炭素原子がカーボンナノチューブの形成に加わるような割合で反応室内に導入される。したがって、例えば、反応室から排出される炭素に対する反応室に導入される炭素の割合は、約0.85から約1.2、好ましくは、約0.9から約1.1、より好ましくは、約0.95から約1.05、最も好ましくは、約0.97から約1.03とすることができる。
他の態様において、触媒サイズの分布内の粒子直径の範囲は、SWNTの製造が実行される温度を選択することにより、SWNTの合成のために選択可能である。触媒ナノ粒子の合成は、一般的に、粒径のガウス分布をもたらす。したがって、例えば、1nmのFe触媒の合成は、1nmを中心とする多数の粒子直径を有し、約0.01nmから約5nmまでの範囲の粒子直径の分布を有することができる。通常、触媒は、触媒粒径のより狭い分布を得るためにさらに処理されていた。一方、本発明の方法及びプロセスは、さらなる処理が無くても、触媒粒子の狭い分布の選択を可能とする。本発明の方法において、反応温度は、当該反応温度が共融点の近く又は共融点を超えて、平均よりも小さいサイズの触媒粒子が始めにSWNTの合成に用いられるように選択可能である。これらの触媒が排出されるので、反応温度は、平均に近いサイズの触媒粒子がSWNTの合成に用いられるように上昇可能である。反応温度は、上のほうの範囲近くのサイズの触媒粒子がSWNTの合成に用いられるようにさらに上昇可能である。このように、本発明の方法及びプロセスは、触媒の合成中に触媒の粒径が厳重に制御される必要がなく、SWNTの経済的な製造を提供することができるといった利点を有している。
本発明の一態様において、合成されたSWNTの直径分布は、実質的に均一である。したがって、SWNTの約90%が、平均直径の約25%内、より好ましくは平均直径の約20%内、さらに好ましくは平均直径の約15%内の直径を有する。したがって、合成されたSWNTの直径分布を、平均直径の約10%から約25%、より好ましくは平均直径の約10%から約20%、さらに好ましくは平均直径の約10%から約15%とすることができる。
前記した方法及びプロセスによって製造されたカーボンナノチューブ及びカーボンナノ構造体は、電界放出素子、メモリ素子(高密度メモリアレイ、メモリ論理スイッチングアレイ)、ナノMEM、AFM撮像プローブ、分散型診断センサ及び歪みセンサを含むアプリケーションに利用可能である。他の主要なアプリケーションとしては、熱制御材、超強力及び軽量強化材並びにナノ複合材料、EMIシールド材、触媒担体、ガス貯蔵物質、高表面積電極、軽量導体ケーブル及びワイヤ等が挙げられる。
以下は、本発明を実施するための特定の実施形態の例である。実施例は、説明を目的としてのみ言及されており、本発明の範囲を限定することを何ら意図したものではない。実施例は、用いられた数(例えば、量、温度等)に関連する正確さを保証するために実施されたが、当然、実験誤差及び偏差は許容されるべきである。
<実施例1>
≪担持された触媒の作成≫
触媒は、A. R. Harutyunyan, B. K. Pradhan, U. J. Kim, G. Chen, and P. C. Eklund, NanoLetters 2, 525 (2002)に記載されたように、担体材料を金属塩溶液内に含浸させることにより作成された。〜84m−1BET表面積を有するアルミナ粉末(Al)に担持された鉄(Fe)触媒が作成された。硫酸鉄(H)七水和物(ALDRICH)が、メタノールに溶解され、酸化アルミニウムのメタノール懸濁液(DEGUSSA Corporation)と十分に混合され、Fe:Al=1:15のモル比となった。反応液は、室温で15分間攪拌され、続いて150℃で3時間加熱された。反応液は、溶剤を除去するため、混合物上にNの流れを吹かせた状態で90℃まで冷却された。反応フラスコの壁上に黒い固形物が形成された。結果物である固形物が、100−120℃で3時間加熱され、瑪瑙乳鉢で粉砕された。続いて、微粉末が、Arガスフローを用いて820℃で30分間加熱処理され、最終的に、CVD装置内に装填される前に再度粉砕された。最終的な触媒のBET表面積は、43m−1であった。触媒の組成は、走査型電子顕微鏡におけるエネルギー分散型X線(EDX)分析を用いて確認された。
最大で6Tまでの場、温度5K及び300Kにおいて、SQUID磁力計(MPMS, Quantum Design)を用いて磁力測定が行われた。初期の触媒は、研究された全ての温度において常磁性挙動を示し、820℃での触媒の加熱処理の後も、磁気特性の変化は見られなかった(図2)。
≪DSC測定≫
Arガス(200sccm)下、温度範囲20−1100℃、10℃min−1の加熱速度で、STA 449C(NETZSCH)及びSDT 2960(TA Instruments)の機器に基づいて、示差走査熱量測定(DSC)が行われた(図3)。るつぼは、それぞれ、蓋を有するPt/Rh及びアルミナ製のカップであった。一般的に、サンプルの重量は20〜45mgの間であった。
≪ラマン測定≫
CCD検出器及び785nmのレーザ励起を有するThermoNicolet分光器で、ラマンスペクトルが収集された。
<実施例2>
≪カーボンナノチューブの合成≫
カーボンナノチューブが、Harutyunyan et al., NanoLetters 2, 525 (2002)に記載された実験装置を用いることによって合成された。カーボンSWNTの合成温度は、触媒粉末と同じ場所において、反応室内に配置された熱電温度計を用いて測定された。触媒を用いたSWNTのCVD成長は、炭素源としてメタンを用いた(T=820℃、メタンガス流量60sccm)。全ての場合において、カーボンSWNTは、約15重量%(鉄/アルミナ触媒に対する炭素の重量%)の収率で成功裏に合成された。
1.5,2,3,5,7,20及び90分のSWNT合成継続期間を有する個別のサンプルが研究された。ここで、合成継続期間は、メタンガスが820℃で触媒に供給される期間として定義される。サンプルのTEM画像は、多くの独立したチューブと同様の、3〜10nmの範囲の直径を有するSWNTの束状構造を示した。全ての場合において、0.8から2nmまでの直径分布を有するSWNTが観察された。この結果は、ラマン分光により観察された半径方向への振動モード(RBM)によっても確認された。
初期の触媒と、異なる合成継続期間を有するSWNT成長後の触媒と、に関して、DSC曲線が示されている(図3)。初期の触媒に関して、〜890℃を中心とした、弱くて広い(800−1000℃)吸熱ピークが観察される。このピークは、担体の走査ではなく、鉄ナノ粒子の融解に起因するものであった。さらに、SWNT成長後のサンプルに関するDSC測定は、異なる合成継続期間に対応する粒子に基づく鉄の融点にそれぞれ対応する、異なる吸熱ピークを示した(図3)。
SWNT成長に関する時間の効果を示すため、ラマンスペクトル(785nmのレーザ励起)の発生が研究された(図4)。合成継続期間の変化は、半導体(E33遷移)チューブ及び金属(E11遷移)チューブにそれぞれ対応する、〜165cm−1及び〜231cm−1での半径方向への振動モード(RBM)の相対的な強度に主に影響を及ぼす。Gバンドの強度とDバンドの強度との間の比(I/I)は、カーボン堆積物に整列された黒鉛の測定値であり、5分までは成長時間に伴い増加する。このサンプルは、I/I≒15という最も高い比を示すだけでなく、最も大きいRBM信号を示した。さらに、触媒が液相である場合に、約70重量%の全体的な炭素収率(鉄/アルミナ触媒に対する炭素の重量%)が、7分まで得られた。7から20分の間では、I/I比の変化は僅かであり、このことから整列されたカーボン構造体の形成がまだ継続していることは明らかである。90分に関して、触媒の凝固後、I/I比は、欠陥を有する複層カーボン堆積物の形成によって劇的に減少し、このことが炭素収率において観察される僅かな増加の原因となる。したがって、20分後に、SWNT成長がほぼ終了したとみなすことができる。
<実施例3>
≪カーボンナノチューブの合成に関する温度の効果≫
触媒が常に固相である場合(共融点未満の温度)のSWNTの成長を研究するため、90分間で温度が650から820℃まで変化する場合を除き、実施例2に記載されたようにカーボンナノチューブが合成された。図5には、合成温度を有するラマンスペクトルの発生が示されている。図示されているように、695℃までの温度では、SWNTに関する特性ラマン信号(RBM及び直交モード)は検出されない。しかし、僅かな合成温度の上昇により、大きいRBM信号を有する強いGバンド及び弱いDバンド(I/I=14.3)が現れる。これらの結果に基づいて、この特定の触媒系に関して、共融点は−700℃であり、触媒ナノ粒子が固相である場合にはカーボンSWNTは成長しないことがわかる。
以上、本発明について、特に好ましい実施形態及び様々な代替案としての実施形態を参照して説明したが、本発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲で、形状及び細部において様々な変更が可能であることが、当業者にとって理解されるであろう。本明細書内で言及された全ての発行された特許及び刊行物が、参照により本明細書に組み込まれる。
鉄−炭素の相平衡状態図である。 異なるFe:Alモル比を有する、アルミナ担体上の鉄ナノ粒子の磁化曲線を示す図である。a、b、d及びeは、初期の触媒に対応する。c及びfは、Arガス下、820℃で90分間処理された後の触媒に対応する。磁化値はFe1グラムに対して表されている。 初期の触媒及び異なる合成継続期間のSWNT成長後の触媒のDSC曲線を示す図である。 1.5,2,3,5,7,20及び90分の継続期間で合成されたFeナノ粒子を用いて成長したカーボンSWNTのラマンスペクトル(λ=785nm励起)を示す図である。 695,700,730,750,760及び820℃の温度で合成されたFeナノ粒子を用いて成長したカーボンSWNTのラマンスペクトル(λ=785nm励起)を示す図である。

Claims (31)

  1. 単層カーボンナノチューブ(SWNT)の生成のための化学気相成長方法であって、
    鉄の融点未満であり、しかも鉄−炭素二成分相の共融点よりも5℃から150℃高い温度で、炭素前駆体ガス、不活性ガス及び水素を担体上の鉄触媒と接触させ、
    前記炭素前駆体ガスを前記鉄触媒1mgに対して0.2sccmから0.5sccmの流量で接触させることにより、SWNTが形成されることを特徴とする方法。
  2. 前記炭素前駆体ガスは、メタンである
    ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記不活性ガスは、アルゴンまたはヘリウムである
    ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 前記触媒は、1nmから10nmの間の粒径を有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  5. 前記触媒は、5nmの粒径を有する
    ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 前記触媒は、3nmの粒径を有する
    ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
  7. 前記触媒は、1nmの粒径を有する
    ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
  8. 前記担体は、粉末状酸化物である
    ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  9. 前記粉末状酸化物は、Al、SiO、MgO及びゼオライトからなるグループ
    から選択される
    ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 前記粉末状酸化物は、Alである
    ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
  11. 前記触媒と前記担体とは、1:10から1:15の重量比率である
    ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  12. 前記炭素前駆体ガスは、触媒1mgに対して0.3sccmの流量で接触する
    ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  13. 前記温度は、前記共融点よりも5℃から50℃高い
    ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  14. 前記温度は、前記共融点よりも10℃から50℃高い
    ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  15. 前記温度は、前記共融点よりも50℃高い
    ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. 前記温度は、前記共融点よりも15℃高い
    ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
  17. 単層カーボンナノチューブ(SWNT)の生成のための化学気相成長方法であって、
    鉄の融点未満であり鉄−炭素二成分相の共融点よりも5℃から50℃高い温度で、炭素前駆体ガス、不活性ガス及び水素を担体上の鉄触媒と接触させ、前記炭素前駆体ガスは、前記鉄触媒と接触する全ての炭素原子がSWNTを形成するような割合で導入される
    ことを特徴とする方法。
  18. 前記炭素前駆体ガスは、メタンである
    ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
  19. 前記不活性ガスは、アルゴンまたはヘリウムである
    ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
  20. 前記触媒は、1nmから10nmの間の粒径を有する
    ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
  21. 前記触媒は、1nmの粒径を有する
    ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
  22. 前記触媒は、3nmの粒径を有する
    ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
  23. 前記触媒は、5nmの粒径を有する
    ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
  24. 前記担体は、Al、SiO、MgO及びゼオライトからなるグループから選択
    された粉末状酸化物である
    ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
  25. 前記粉末状酸化物は、Alである
    ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
  26. 前記触媒と前記担体とは、1:10から1:15の重量比率である
    ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
  27. 前記重量比率は、1:11から1:15である
    ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
  28. 前記重量比率は、1:12から1:15である
    ことを特徴とする請求項27に記載の方法。
  29. 前記温度は、前記共融点よりも10℃から50℃高い
    ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
  30. 前記温度は、前記共融点よりも50℃高い
    ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
  31. 前記温度は、前記共融点よりも15℃高い
    ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
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