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JP5199944B2 - ダイオキシン類の免疫測定方法 - Google Patents

ダイオキシン類の免疫測定方法 Download PDF

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JP5199944B2 JP2009117447A JP2009117447A JP5199944B2 JP 5199944 B2 JP5199944 B2 JP 5199944B2 JP 2009117447 A JP2009117447 A JP 2009117447A JP 2009117447 A JP2009117447 A JP 2009117447A JP 5199944 B2 JP5199944 B2 JP 5199944B2
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Description

本発明は、ダイオキシン類に特異的に反応する抗体を用いて、試料中のダイオキシン類濃度(毒性等量)を測定する方法に関する。より詳細には、試料中に含まれるダイオキシン類の異性体分布にかかわらず、毒性等量を算出する方法に関する。
ダイオキシン類とは、ポリクロロジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDDs)、ポリクロロジベンゾフラン(PCDFs)、およびコプラナーPCB(Co−PCBs)の総称である。ダイオキシン類には、多くの異性体があり、それぞれ毒性が異なるため、その排出規制は毒性等量(TEQ:Toxicity Equivalency Quantity)によって行われている。毒性等量は、ダイオキシン類の異性体の中で最も毒性の強い2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−パラ−ジオキシン(2,3,7,8−TeCDD)の毒性を1としたときの異性体ごとの毒性の強さを表した値(毒性等価係数:TEF:Toxicity Equivalency Factor)と各異性体濃度との積を総和したものである。
公定法(高分解能ガスクロマトグラフィー質量分析(HRGC/HRMS)法)では、29種類の各ダイオキシン類の異性体濃度を計測し、それぞれの濃度にTEF値をかけ、その総和をTEQ値として算出する。したがって、TEQ値を算出するためには個々のダイオキシン類の異性体を定量する必要があり、これには長時間を要するだけでなく、高度な分離・分析技術が必要になる。
従来、抗体を用いて試料中のダイオキシン類濃度を測定する場合には、毒性が最も高い2,3,7,8−TeCDDと、または2,3,4,7,8−ペンタクロロジベンゾフラン(2,3,4,7,8−PeCDF)のような五塩素化または六塩素化ジベンゾフラン類との反応性が高い抗体を測定に供していた。
ダイオキシン類の中で最も毒性が高い異性体である2,3,7,8−TeCDDに特異的反応性を示す抗体を測定に使うと、試料中の2,3,7,8−TeCDD濃度を知ることができるが、その試料の毒性等量を求めることはできない。なぜなら、同一試料における2,3,7,8−TeCDD濃度と毒性等量との間に有意な相関性がないからである。また、ダイオキシン類にかかる環境基準および排出基準は、媒体および排出施設などの規模ごとに毒性等量で規制値が設定されているため、2,3,7,8−TeCDD濃度を測定しても、その試料が規制基準を超過しているのか否か判断できない。一方、廃棄物焼却施設から排出される排出ガスおよびばいじんのHRGC/HRMS法による分析結果から、2,3,4,7,8−PeCDFなどの五塩素化および六塩素化ジベンゾフラン類が毒性等量と有意な相関性を有することが報告されており、これらの異性体をTEQ指標異性体と呼んでいる(非特許文献1および2)。
近年、この関係を利用して、2,3,4,7,8−PeCDFに特異的反応性を示す抗体を用いた方法が提案されている(特許文献1)。この方法では、まず、濃度既知の試料(数十検体)を事前に測定し、得られた反応量とGC/MS法で測定した毒性等量とから換算係数を算出する。次に、濃度未知試料を免疫測定法により測定し、得られた測定値(標準品換算濃度)に換算係数を乗じて毒性等量に変換する。排出ガスおよびばいじんの測定に2,3,4,7,8−PeCDFのような指標異性体と反応する抗体を使用すれば、GC/MS法で測定した毒性等量と良好に一致する測定結果を得ることができる。例えば、非特許文献3および4には、全種類の六塩素化PCDFsと1種類の六塩素化PCDDとのいずれにも約35〜46%の交差反応性を示し、さらに、TEF値を有する他のダイオキシン異性体にも約10%の反応性を示すダイオキシン類に広範な交差反応性を有する抗体が記載され、該抗体を用いて環境試料を測定した結果、GC/MS測定値との間に相関性が見られたことが報告されている。
また、より多種類のダイオキシン異性体を測定することまたは測定系での安定性を目的として、種々の抗ダイオキシン類モノクローナル抗体が開発されている(特許文献2および3)。さらに、定量のための毒性の低いダイオキシン類標準品も開発されている(特許文献4)。
しかし、排出ガスやばいじんのようにダイオキシン類の異性体分布が採取箇所にかかわらずほぼ一定である場合には良好な測定結果が得られるが、ダイオキシン類汚染土壌および底質のように試料の採取箇所によって異性体分布が大きく異なる試料を測定する際には、GC/MS法と良好に一致する測定結果が得られにくいという問題がある。特に、PCBが毒性等量の50%以上を占める試料を測定すると、GC/MS法よりも著しく低い測定結果が算出され、擬似陰性を招くことがある。
特開2005−194238号公報 特開2007−284392号公報 特許第3969878号公報 国際公開第2004/020397号パンフレット
柴山基ら、第11回環境化学討論会講演要旨集,2002年,136-137頁 松枝隆彦ら、第11回環境化学討論会講演要旨集,2002年,402-403頁 藤平弘樹ら、環境浄化技術,2003年,第2巻,63-66頁 藤平弘樹ら、資源環境対策,2003年,第39巻,62-68頁
本発明は、汚染源にかかわらず、GC/MS法と一致した測定結果(毒性等量)を算出するための方法を提供することを目的とする。
本発明は、ダイオキシン類の毒性等量の免疫測定方法を提供し、該方法は、
ダイオキシン類を含む試料と3,3’,4,4’,5,5’−ヘキサクロロビフェニルに親和性を有する抗ダイオキシン類抗体とを反応させる工程;
該抗ダイオキシン類抗体と結合したダイオキシン類の量または該ダイオキシン類と結合しなかった該抗ダイオキシン類抗体の量を検出する工程;および
該検出した量から該試料中の毒性等量を算出する工程;
を含み、
該抗ダイオキシン類抗体は、モノクローナル抗体である。
1つの実施態様では、上記抗ダイオキシン類抗体は、さらに2,3,4,7,8−ペンタクロロジベンゾフランに親和性を有する。
1つの実施態様では、上記検出工程は、酵素免疫測定法、放射性免疫測定法、および蛍光免疫測定法からなる群より選択される方法に基づいて行われる。
本発明の方法によれば、汚染源にかかわらず、公定法(GC/MS法)によるTEQ(毒性等量)と一致した測定結果を、迅速に算出することができる。この方法により、環境試料中のダイオキシン類の簡易分析、モニタリングなどが容易になる。
ELISAの測定原理および手順を示す模式図である。 土壌試料におけるELISA測定値(抗体A)とGC/MS値との相関関係を示すグラフである。 底質試料におけるELISA測定値(抗体A)とGC/MS値との相関関係を示すグラフである。 土壌試料におけるELISA測定値(抗体B)とGC/MS値との相関関係を示すグラフである。 底質試料におけるELISA測定値(抗体B)とGC/MS値との相関関係を示すグラフである。
本発明のダイオキシン類の毒性等量の免疫測定方法は、
ダイオキシン類を含む試料と3,3’,4,4’,5,5’−ヘキサクロロビフェニルに親和性を有する抗ダイオキシン類抗体とを反応させる工程;
該抗ダイオキシン類抗体と結合したダイオキシン類の量または該ダイオキシン類と結合しなかった該抗ダイオキシン類抗体の量を検出する工程;および
該検出した量から該試料中の毒性等量を算出する工程;
を含む。
(試料)
本発明の方法により測定される試料は特に限定されない。例えば、環境から採取した環境試料、生物試料、食品、実験用に調製したダイオキシン類溶液であってもよい。本発明の方法は、特に、試料として環境試料を用いる場合に好適である。環境試料としては、大気;自動車、機器、工場などからの排気ガス;土壌;河川、湖、港湾などの水;燃焼灰、飛灰などが挙げられる。生物試料としては、母乳、血液、尿などが挙げられる。
上記試料は、そのまま本発明の免疫測定方法に供してもよく、あるいは前処理(例えば、クリーンアップ)により試料からダイオキシン類を含む画分を抽出してもよい。好ましくは、試料に応じて前処理を行う。抽出には、トルエン、ヘキサン、ジクロロメタンなどの非極性有機溶媒が好適に用いられる。抽出した画分は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノールなどの水混和性有機溶媒が好適に用いられる。前処理方法を以下に例示するが、前処理方法はこれらに限定されない。
排気ガス試料の前処理は、公定法(JIS K0311)に準じて行われる。例えば、まず、任意の量(Nm)のガスを採取し、トルエン、ヘキサン、ジクロロメタンなどの非極性有機溶媒でガス中の物質を抽出し、20mlに定量して粗抽出液とする。この粗抽出液10mlを分取し、硫酸層の着色がなくなるまで硫酸で処理する。この溶液をヘキサンに転溶した後、硫酸ナトリウム1g、10%(w/v)硝酸銀シリカゲル1g、およびシリカゲル3gを積層した多層シリカゲルカラムに、ヘキサン200mlで流通させてクリーンアップを行い、最終的に1mlのDMSOに定量した溶液を免疫測定に供する。
土壌および飛灰試料の前処理については、以下のとおりである。まず、任意の量(g)の土壌または飛灰を採取し、トルエンで試料中の物質を抽出し、20mlに定量して粗抽出液とする。この粗抽出液1mlを分取してクリーンアップを行い、最終的に2mlのDMSOに定量した溶液を免疫測定に供する。
(抗ダイオキシン類抗体)
本発明の方法に使用する抗ダイオキシン類抗体は、3,3’,4,4’,5,5’−ヘキサクロロビフェニル(3,3’,4,4’,5,5’−HxCB)に親和性を有する。
本発明の方法で使用する抗ダイオキシン類抗体は、モノクローナル抗体である。これは、ダイオキシン誘導体を高分子化合物に結合させたコンジュゲートを免疫用抗原として免疫した哺乳動物(例えば、マウス)の脾臓細胞と、モノクローナル抗体作製に通常用いられるミエローマ細胞との融合細胞(ハイブリドーマ細胞)を作製し、このハイブリドーマ細胞が生産するモノクローナル抗体を精製することによって得られる。
本発明においては、免疫用抗原に用いるダイオキシン誘導体は、公知の方法により調製することができる(Kun Chaeら、J. Agric. Food.,1977年,25巻,1207-1209頁;Simona G. Mericaら、Can. J. Chem.,1995年,73巻,826-834頁)。ダイオキシン誘導体はハプテン化合物であり、それ自体が免疫原性を有さないため、免疫原性を有する高分子化合物をキャリア化合物として結合させて複合体を形成させることにより、免疫原とすることができる。
ダイオキシン誘導体の免疫用抗原の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法により製造することができる。1,2−ジクロロ−4−フルオロ−3,5−ジニトロベンゼンと4,5−ジクロロカテコールとをアセトン中、炭酸カリウムおよびクラウンエーテル存在下、6時間還流することによって、1−ニトロ−2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−p−ダイオキシンを得る。この化合物を、ベンゼン中、亜鉛粉末および濃硫酸によって還元して、1−アミノ−2,3,7,8−テトラクロロジベンゾダイオキシンを得る。次いで、無水ジメチルホルムアミド(DMF)中、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)を塩基として60℃の加熱下にてエチルグルタリルクロリドと反応させることによってアシル化し、さらにアルカリ加水分解することにより、カルボン酸化されたダイオキシン誘導体が得られる。得られたカルボン酸化ダイオキシン誘導体は、以下の式
Figure 0005199944
(式中、Xは塩素または水素を示し、そしてnは1〜10の整数を示す)で表される。さらに、このカルボン酸化ダイオキシン誘導体とN−ヒドロキシスクシンイミドとを、有機溶媒中でジシクロヘキシルカルボジイミドや水溶性カルボジイミドなどのカップリング剤の存在下にて反応させて、イミドエステル体に変換する。このイミドエステル化ダイオキシン誘導体は、免疫用の抗原として用いられる。また、必要に応じて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや再結晶などの精製操作によって高純度化してもよい。
ハプテン化合物と結合させるためのキャリア化合物として用いられる高分子化合物は、1万以上の分子量であることが好ましく、例えば、ヘモシアニン、卵白アルブミン、ウシ血清アルブミン、ウサギ血清アルブミンなどのタンパク質、アガロースなどの多糖、不活性化した細菌が挙げられる。中でも、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびウシ血清アルブミン(BSA)が、操作性および免疫原性の点で好ましい。
上記のイミドエステル化したハプテン化合物とキャリア化合物との結合は、通常、含水有機溶媒中で行われる。まず、イミドエステル化ダイオキシン誘導体を、メタノール、DMSOなどの有機溶媒に溶解する。同様に、BSAやKLHなどのキャリア化合物を、リン酸緩衝液などのアミノ基を含有しない成分からなる緩衝液に溶解する。次いで、緩衝液に溶解したキャリア溶液をイミドエステル化ダイオキシン誘導体溶液中へ徐々に添加して反応させる。こうして得られた免疫用抗原は、必要に応じて、ゲル濾過、透析などによって適切な緩衝液に置換して精製される。
上記のようにして得られた免疫用抗原を用いて、公知の方法、例えば、Kohler G.およびMilstein C.(Nature,1975年,256巻,495-497頁)の方法に準じてモノクローナル抗体を作製することができる。以下に例を示すが、この方法に限定されるものではない。
上記のような可溶性物質を免疫用抗原として免疫する場合は、通常、免疫用抗原をアジュバントとともにエマルジョン状態にして動物に投与する。用いられるアジュバントとしては、フロイントアジュバント、ミョウバンアジュバント、百日咳死菌体などが挙げられる。
免疫する動物としては、通常BALB/cマウスが用いられる。あるいは、F1マウス、ハムスターなどを用いてもよい。1匹のマウスに免疫する抗原量は、免疫用抗原に毒性がある場合、通常5〜20μg/回程度である。具体的には、例えば、生理食塩水で100〜500μg/mlになるように調製した免疫用抗原と完全フロイントアジュバントとを等量ずつ混合してエマルジョンを調製し、0.05〜0.1ml/匹ずつ注射する。エマルジョンの投与は、腹腔内注射および皮下注射が好ましい。免疫用抗原は、通常、1〜2週間おきに数回投与される。免疫したマウスは、各投与の数日後に採血し、十分に抗体価が上昇したことを確認した後、同量の免疫用抗原を静脈内または腹腔内に注射し、その3〜4日後に脾臓を摘出し、抗体産生細胞を回収する。
細胞融合に用いられるミエローマ細胞は、特に限定されず、公知のものを使用できる。このようなミエローマ細胞としては、例えば、BALB/cマウス由来のNS−1、P3U1、SP2、X63.6.5.3などが挙げられる。
抗体産生細胞とミエローマ細胞との融合は、当業者に公知の方法で行えばよく、特に限定されない。融合操作が簡単である点で、ポリエチレングリコール(PEG)法が好ましい。一般的に用いられるPEGの平均分子量は、1000〜6000であり、通常30〜50%(v/v)の濃度で用いられる。
摘出した脾臓より回収した脾臓細胞は、対数増殖期にあるミエローマ細胞と混合して細胞融合を行う。具体的には、混合した脾臓細胞とミエローマ細胞とを遠心分離してペレットを得、これにPEG溶液を加えて、撹拌および振とうによって融合させる。
細胞融合後、融合細胞(ハイブリドーマ細胞)について目的の抗体産生の有無をスクリーニングする。例えば、遠心分離によりハイブリドーマ細胞を洗浄した後、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン)添加増殖培地に移し、96ウェル培養プレートにて培養する。融合操作の数日後より、コロニーの増殖が認められたウェルの培養上清を採取し、ダイオキシン類を固相化したプレートを用いて、ダイオキシン類との反応性を酵素免疫測定法(EIA法)により確認する。スクリーニングは、例えば、20〜50%(v/v)濃度の有機溶媒(例えば、DMSO)中で短時間(10〜30分間)抗原抗体反応を行い、抗原結合活性を有するクローンを取得し、さらに該有機溶媒中での反応性評価を行ってクローンの選抜を行う。スクリーニング後、抗体産生が確認されたウェルを選び、限界希釈法にてクローニングを行い、単一の抗体産生クローンを樹立する。
樹立したクローンからモノクローナル抗体を調製するには、ハイブリドーマ細胞をプレートやフラスコで培養し、その培養上清を取得する。さらに、ハイブリドーマ細胞を、予めプリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)を投与したマウスの腹腔内に移植し、10〜14日後に腹腔に溜まった腹水を回収することによっても、モノクローナル抗体を得ることができる。
上記のようにして得られた培養液または腹水は、必要に応じて、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、あるいはプロテインAまたはプロテインGを固定化したアフィニティークロマトグラフィーなどにより精製し、モノクローナル抗体標品とすることができる。こうして得られたモノクローナル抗体は、30%(v/v)DMSO水溶液中で実質的な抗原結合能を保持する。
本発明の方法で使用する抗ダイオキシン類抗体は、3,3’,4,4’,5,5’−HxCBを認識するものであればよく、さらに2,3,4,7,8−PeCDFも認識することが好ましい。最も強い毒性を有する2,3,7,8−TeCDDに対する交差反応性は0.1%未満である。
(ダイオキシン類の測定)
本発明のダイオキシン類の毒性等量の免疫測定方法は、まず、ダイオキシン類を含む試料と上記抗ダイオキシン類抗体とを反応させ、次いで、該抗ダイオキシン類抗体と結合したダイオキシン類の量または該ダイオキシン類と結合しなかった該抗ダイオキシン類抗体の量を検出する。
試料中のダイオキシン類を免疫学的に検出する方法としては、検出手段に応じて、放射性免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA、ELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、免疫クロマトグラフィー、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)、免疫比濁法(TIA)、ラテックス免疫比濁法(LTIA)などが挙げられる。本発明においては、酵素免疫測定法(EIA)、放射性免疫測定法(RIA)、および蛍光免疫測定法(FIA)からなる群より選択される方法が好適に採用される。測定の簡便さから、EIAが特に好ましい。
上記の各測定方法には、競合型測定法、非競合型測定法、均質法などがある。ダイオキシン類は低分子化合物であるため、通常競合法により行われ得る。競合法には、マイクロプレートのウェル、チューブなどに抗原を固定化する間接競合法、ならびにウェルやチューブなどに抗体を固定化する直接競合法がある。EIAの場合を例に挙げて、間接競合法および直接競合法について説明する。
間接競合法においては、ウェルに固定化する競合用抗原として、ダイオキシン類またはこれらとキャリアタンパク質との複合体を用いる。樹脂製またはガラス製などの未処理の反応容器を用いる場合は、ダイオキシン類単独では容器に固定化するのが困難であるため、キャリアタンパク質との複合体を用いることが好ましい。また、アミノ基またはカルボキシル基のような反応性の高い官能基で表面が活性化された反応容器を使用する場合は、ダイオキシン類単独でもこれらの官能基を介して容器に固定化することができる。キャリアタンパク質の有無にかかわらず、ダイオキシン類にはリンカーを結合させることが好ましい。これにより、立体障害が緩和されて競合用抗原と抗ダイオキシン類抗体との反応性が良好になり、そのため試料中のダイオキシン類の測定感度が向上する。
競合用抗原として用いるダイオキシン類としては、測定に用いる抗ダイオキシン類抗体により認識されるものであれば特に限定されない。例えば、上記の免疫用抗原に用いたダイオキシン類が用いられ得る。あるいは、これらのダイオキシン類との構造上の共通性の低いダイオキシン類またはダイオキシン様化合物などの競合用抗原を用いることができる。このような競合用抗原を用いることにより、競合用抗原と抗ダイオキシン類抗体との反応性が被験試料中のダイオキシン類との反応性より低くなり、試料中のダイオキシン類濃度の検出感度が向上する。
キャリアタンパク質は特に限定されず、公知のキャリアタンパク質を使用できる。このようなキャリアタンパク質として、KLH、BSAなどが挙げられる。また、リンカーは、抗体との結合に立体障害を及ぼさないもの、反応過程において溶解性に支障をきたさないものが好ましく、例えば、ポリメチレン鎖などが挙げられる。リンカーは、ダイオキシン類もしくはダイオキシン様化合物またはこれらとキャリアタンパク質および/または容器との間に配置される。
さらに、競合用抗原として、例えば、特許文献4に開示されるクロロフェノール誘導体を用いることにより高感度にダイオキシン類を定量できる。このクロロフェノール誘導体は、検量線作成用の標準品としても使用され得る。この場合は、クロロフェノール誘導体の末端に結合しているアミノ酸またはペプチド部分をBSAなどのキャリアタンパク質に変えることにより固相化用抗原を作製することができる。
間接競合法は、例えば、次のようにして行われ得る。図1に測定原理の概略図を示す。まず、競合用抗原を、上記のようにマイクロプレートのような反応容器のウェル内に固相化し、固相化抗原とする。次いで、ウェル表面の抗原が結合していない部分をBSA、カゼインなどの市販のブロッキング剤でブロックする。このウェルに試料(好適には、前処理した試料)と一次抗体である抗ダイオキシン類抗体とを加えて、試料中のダイオキシン類と固相化抗原を抗ダイオキシン類抗体に対して競合反応させる。固相化抗原と結合しなかった抗ダイオキシン類抗体を洗浄除去後、同ウェルに二次抗体として、例えば、ヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体をペルオキシダーゼ(PEO)やアルカリホスファターゼ(ALP)などの酵素で標識した酵素標識抗体を加えて、固相化抗原と結合した一次抗体と結合させる。緩衝液で数回洗浄した後、標識酵素の基質を加え、発色した酵素反応生成物の吸光度を測定する。酵素としてPEO、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用いる場合は、基質として過酸化水素、そして発色剤としてo−フェニレンジアミン、テトラメチルベンジジンなどを使用すればよい。酵素としてALPを用いる場合は、通常、基質としてp−ニトロフェニルリン酸を用いる。
上述の間接競合法において、試料を添加しない反応溶液の吸光度に対する、試料を添加することによる反応溶液の吸光度の減少量の比率をダイオキシン類による阻害率として測定する。その際、例えば、上記のクロロフェノール誘導体をダイオキシン類標準品として用い、試料に代えてこの標準品の複数の既知濃度の溶液を用いること以外は同様の操作で競合反応を行う。標準品の濃度と阻害率との関係を示す検量線を作成し、得られた検量線と試料中のダイオキシン類による阻害率とを比較することにより、試料中のダイオキシン類濃度を標準品換算濃度として算出することができる。
試料中のダイオキシン類濃度が高い場合は、抗ダイオキシン類抗体とダイオキシン類との結合量が多くなるため、固相化抗原に結合する抗体量が減少する。そのため、酵素抗原に結合する酵素標識された二次抗体の量が減り、発色強度が弱くなる。これに対して、試料中のダイオキシン類濃度が低い場合は、固相化抗原に結合する抗体量が多くなるため、この抗体に結合する二次抗体の量が多くなり、その結果強く発色する。つまり、被験試料中のダイオキシン類濃度によって発色の強度が異なる。
直接競合法においては、容器のウェル内に上記の抗ダイオキシン類抗体を固相化し、固相化抗体とする。次いで、ウェルの抗体が結合していない部分を上記間接競合法の場合と同様にしてブロッキングする。次いで、このウェルに競合用の酵素標識抗原および検体を加えることにより、試料および酵素標識抗原を固相化抗体に対して競合反応させる。次いで、固相化抗体(抗ダイオキシン類抗体)と結合しなかった酵素標識抗原を洗浄除去し、標識に使用した酵素の基質を加えて反応生成物の吸光度を測定する。
酵素標識抗原は、間接競合法で使用する競合用抗原と同様のダイオキシン類もしくはダイオキシン様化合物に、PEOまたはALPのような酵素を結合することにより調製できる。また、特許文献4に開示されるクロロフェノール誘導体の末端に存在しているアミノ酸またはペプチド部分をPEOまたはALPのような酵素に変えたものを使用する場合は感度が向上する。
上記の任意の測定方法によって得られた試料(濃度未知試料)中のダイオキシン類濃度は、標準品換算濃度である。毒性等量が既知の複数の試料を測定することによって予め毒性等量と標準品換算濃度との関係を算出した換算係数を、試料の標準品換算濃度に乗じて毒性等量(TEQ)に変換する。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1:土壌試料および排出ガス試料における各ダイオキシン類異性体濃度とTEQ値の測定)
92検体の土壌をそれぞれ約25〜50g採取し、トルエン500mlで試料中の物質を抽出し、20mlに定量して粗抽出液とした。また、都市ごみ焼却場の煙道から排出ガス275検体について、各約4mNを、採取した。採取した試料を、公定法(JIS K0311)に準じて、ろ紙、樹脂、吸収液などの形態ごとにトルエンまたはジクロロメタンを用いて抽出した。これらの抽出液を合わせて20mlまで濃縮し、粗抽出液を得た。
土壌および排出ガスの粗抽出液から各1ml分取し、硫酸処理、多層シリカゲルクロマトグラフ処理および活性炭カラムクロマトグラフ処理を行って精製した。精製した各試料について、ガスクロマトグラフ質量分析計(Micromass社製)によって各ダイオキシン類異性体濃度を求めた。次に、各ダイオキシン類異性体濃度にその毒性等価係数(TEF)を乗じて、土壌および排出ガス試料中のダイオキシン類毒性等量(TEQ)を算出した。土壌試料および排出ガス試料における各ダイオキシン類異性体濃度と毒性等量(TEQ)との相関係数を、表1に示す。
Figure 0005199944
表1は、種々の汚染源由来の土壌試料92検体および廃棄物焼却炉由来の排出ガス275検体のGC/MS測定結果から算出した、各ダイオキシン類異性体濃度と毒性等量(TEQ)との相関係数を示す。排出ガス試料では、2,3,4,7,8−PeCDFなどの五塩素化および六塩素化ジベンゾフラン類とのTEQ相関性が高い。一方、土壌試料においては、3,3’,4,4’,5,5’−HxCB(PCB#169)濃度が最もTEQと相関性が高い。この結果から、GC/MSと相関性の高いELISA測定値を得るには、排出ガス試料に対しては、五塩素化および六塩素化ジベンゾフラン類との反応性が高い抗体を用いればよく、一方、汚染源が異なる土壌試料については、PCB#169と反応性の高い抗体を測定に供すればよいことが見出された。
(実施例2:抗ダイオキシン類モノクローナル抗体の作製)
(1)免疫原用抗原の調製
以下の式
Figure 0005199944
で表されるハプテン化合物を用いて、活性エステル法により免疫用抗原を作製した。
まず、上記ハプテン化合物を、DMF中、1.2当量のヒドロキシスクシンイミドおよび1.5当量の1−エチル−3−(3−ジエチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩と室温にて16時間反応させた。反応液を塩化メチレンで抽出した後、減圧下にて溶媒を留去して、活性エステル体を得た。次いで、15mgのBSAを50mMリン酸緩衝液(pH8.0)1mlに溶解し、1mlのDMSOに溶解した4.98mg(40当量)の活性エステル体溶液を滴下し、室温にて1時間反応させた。反応後、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で平衡化したゲル濾過カラム(PD−10:アマシャムバイオサイエンス株式会社製)で精製し、免疫用抗原を得た。得られた免疫用抗原のハプテン導入率は、吸光スペクトルの解析により、BSAの分子量を66000とし、BSA1分子当たりに結合したハプテンの分子数として算出したところ、40個であった。なお、本抗原は、抗体を選抜する際の固相化抗原としても使用可能である。
(2)マウスの免疫
上記(1)で調製した免疫用抗原2mgを、1mlのPBSに溶解し、等量の完全フロイントアジュバントと混和し、1mg/mlのエマルジョンを作製した。このエマルジョンを5匹のBALB/cマウスに、1匹当たり5〜15μgの抗原量となるように腹腔内投与した。同様の操作で、2週間おきに6回追加免疫した。各回の免疫の1週間後に採血し、血液を室温にて1時間放置した後、血餅を分離して抗血清を得、動物の抗体価を求めた。
(3)抗体価の測定
上記(1)で得られた免疫用抗原を、PBSで0.84μg/mlになるように希釈した。この希釈液を、96ウェルアッセイプレート(Costar社製:カタログ番号3590)の各ウェルに50μlずつ分注し、プレートを密閉して37℃にて1時間静置した。各ウェルをTween20を0.005%(v/v)含むPBSで3回洗浄した後、1%(w/v)ゼラチン(BIO−RAD社製:カタログ番号170−6537)を含むPBSを300μlずつウェルに分注し、プレートを密閉して37℃にて2時間静置した。各ウェルをTween20を0.005%(v/v)含むPBSで3回洗浄した後、最終濃度10−6〜10−8Mの3,3’,4,4’,5,5’−HxCB(PCB#169)および2,3,4,7,8−PeCDFを含む50%(v/v)DMSO水溶液25μlを各ウェルに添加した。添加後直ちに、1mg/mlのBSAを含むPBSで1000倍希釈した抗血清(上記(2)で得られた抗血清)を各ウェルに25μlずつ添加し、プレートを軽く振とう撹拌した後、室温にて1時間静置した。各ウェルを、Tween20を0.005%(v/v)含むPBSで3回洗浄した後、1%(w/v)ゼラチンを含むPBSで2000倍に希釈したヤギ抗マウスIgG(H+G)HRP標識抗体(アフィニティー精製)50μlを分注した。プレートを室温にて1時間静置した後、Tween20を0.005%(v/v)含むPBSで3回洗浄し、各ウェルにHRPの基質であるTMB(KPL社製)50μlを分注し、室温にて10分間静置した。各ウェルに1Mリン酸溶液を50μlずつ添加し、マイクロタイター用分光光度計で波長450nm(対照630nm)の吸光度を測定した。非特異的吸着によるバックグラウンドを考慮し、抗原を固相化したウェルの測定値から、抗原を固相化していないウェルの測定値を差し引いて抗体価を求めた。
(4)抗ダイオキシン類モノクローナル抗体の作製
上記(3)の測定により高い抗体価を有することを確認したマウスについて、尾静脈に、滅菌PBSで希釈した免疫原(BSAに結合させた上記式の化合物(ハプテン化合物))をブースターとして50μg(50μl)投与した。最終投与の3日後に、当業者が通常用いる方法に従って、無菌的にマウスより脾臓を摘出し、脾臓細胞を分離して、RPMI1640培地にて3回洗浄し、脾臓細胞浮遊液を調製した。細胞数をカウントし、予め培養していたSP2/0ミエローマ細胞(BALB/cマウス由来骨髄腫細胞)と脾臓細胞とが1:10の割合の細胞数になるように混合し、遠心分離して上清を除去した。上清除去後、PEG1500溶液を加えて細胞を撹拌し、さらにRPM1640培地を加えて細胞融合を行った。次いで、遠心分離により上清を除去し、HAT培地を加えて細胞を浮遊させ、96ウェル培養プレートに1〜2×10細胞/mlの濃度で100μlを撒種し、炭酸ガス培養器内で37℃にて培養を行った。10〜14日後にコロニーが出現したウェルより上清100μlを採取し、希釈せずに上記(3)の方法により抗体価を測定した。抗体価を検出したクローンを24ウェル培養プレートに移して培養を継続し、継続した抗体産生を確認するために、数日おきに抗体価を測定した。高い抗体価を継続して維持しているクローンを選抜し、HT添加10%(w/v)FCS含有RPMI1640培地を用いて限界希釈法によるクローニングを3〜5回行って、複数の抗体産生株を得た。
得られた各抗体産生株を、プリスタン前投与BALB/cマウスの腹腔に移植し、細胞の増殖とともに腹腔内に溜まった腹水を回収した。回収した腹水を、Protein G−Sepharose(BIO−RAD社製)を担体としたアフィニティークロマトグラフィーにかけて抗体含有画分を集め、PBSに対して透析して、各精製モノクローナル抗体を得た。
(5)モノクローナル抗体のダイオキシン類異性体に対する特異性評価
上記(4)で得られた各モノクローナル抗体について、ダイオキシン類異性体に対する特異性評価を行った。まず、上記(1)で得られた免疫用抗原を、PBSで1μg/mlになるように希釈した。この希釈液を、96ウェルアッセイプレート(Costar社製:カタログ番号3590)の各ウェルに50μlずつ分注し、プレートを密閉して37℃にて1時間静置した。各ウェルを、Tween20を0.005%(v/v)含むPBSで3回洗浄した後、蒸留水で25%(v/v)に希釈したブロックエース(雪印社製)300μlを各ウェルに分注し、プレートを密閉して37℃にて2時間静置した。各ウェルを、Tween20を0.005%(v/v)含むPBSで3回洗浄した後、Triton X100を0.01%(v/v)含む20%(v/v)DMSOで最終濃度5×10−7Mに希釈したダイオキシン類化合物または希釈に用いた溶媒を25μlずつ各ウェルに添加した。添加後直ちに、1mg/mlのBSAを含むPBSで0.1μg/mlになるように希釈した抗体溶液を各ウェルに25μlずつ添加し、プレートを軽く振とう撹拌した後、室温にて1時間静置した。各ウェルを、Tween20を0.005%(v/v)含むPBSで3回洗浄した後、10%(v/v)ブロックエースで2000倍に希釈したヤギ抗マウスIgG(H+L)HRP標識抗体(アフィニティー精製)50μlを分注した。プレートを室温にて1時間静置した後、Tween20を0.005%(v/v)含むPBSで3回洗浄し、各ウェルにHRPの基質であるTMB(KPL社製)50μlを分注し、室温にて10分間静置した。各ウェルに1Mリン酸溶液を50μlずつ添加し、マイクロタイター用分光光度計で波長450nm(対照630nm)の吸光度を測定した。反応評価は、ダイオキシン類化合物未添加時(希釈用溶媒)の吸光度を100とし、各ダイオキシン類添加時の吸光度を阻害率(%)として算出した。得られた各モノクローナル抗体の特異性評価の結果を表2に示す。
Figure 0005199944
表2からわかるように、いずれも同様の特異性を有しており、1,2,3,6,7,8−HxCDDおよび3,3’,4,4’,5,5’−HxCBに対して反応性が高いことがわかった。一方、2,3,7,8−TeCDDに対する反応性は低かった。
(6)モノクローナル抗体のサブクラスの決定
上記(4)で得られた各モノクローナル抗体について、各培養上清を用い、そして二次抗体としてBIO−RAD社製タイピングキットに添付のタイピング用抗体パネルを用いて、サブクラスの決定を行った。タイピングの結果、モノクローナル抗体はいずれもIgG1(L鎖、κ)であった。
(実施例3:交差反応性の検討)
非特許文献3および4に開示された抗体(抗体Aという;ダイオキシン類測定キットであるダイオクイッカー(東洋紡績株式会社製)に含まれる抗体)および上記実施例2で作製したモノクローナル抗体(抗体Bという)について、TEFを有する29種類のダイオキシン異性体との交差反応性を、以下に記載のELISA(特許文献3および4に開示された測定方法)によって検討した。
測定には、所定量の競合用抗原(2,4,5−トリクロロフェノールグリシルグリシン:以下、TCP−グリシルグリシンという)をBSAに結合させて固相化(固相化抗原)した96ウェルマイクロプレートを用いた。まず、試料をクリーンアップ処理し、DMSOに転溶した。このDMSOに転溶した試料25μlに、リン酸緩衝液25μlおよびと一次抗体である抗ダイオキシン類抗体50μlを加えて撹拌し、次いでこの混合液をウェルに入れて1時間放置した。このとき、抗ダイオキシン類抗体と試料中のダイオキシン類とが優先的に結合し、過剰量の抗ダイオキシン類抗体が、固相化抗原と結合する。
次いで、固相化抗原と結合しなかった抗ダイオキシン類抗体を洗浄除去後、同ウェルに二次抗体としてヤギ抗マウスIgG(H+L)HRP標識抗体(アフィニティー精製)100μlを加え、室温で1時間放置して、固相化抗原と結合した一次抗体と結合させた。ウェル内を緩衝液で数回洗浄した後、発色基質であるテトラメチルベンジジン(TMB)100μlを加え、暗所にて室温で30分間反応させた。次いで、0.5mol/lの硫酸100μlをウェルに加えて酵素反応を停止させ、青色から黄色に変色させた。この発色波長である450nmにおける吸光度を、マイクロプレートリーダーにて測定した。また、試料を添加しない反応溶液の吸光度(ブランク吸光度)も測定し、このブランク吸光度に対する、試料を添加したことによる反応溶液の吸光度の減少量の比率を、試料による阻害率として測定した。
一方、標準品としてTCP−グリシルグリシンを用い、その複数の既知濃度溶液を用いて同様の操作で競合反応させ、標準品の濃度と阻害率との関係を示す検量線を作成した。得られた検量線と試料による阻害率とを比較することにより、試料中のダイオキシン類濃度を標準品換算濃度として算出した。なお、TCP−グリシルグリシンの測定は、試料の測定と同一のプレート上で同時に行った。最終的に、毒性等量が既知の複数の試料を測定することによって、予め毒性等量と標準品換算濃度との関係を算出した換算係数を、試験試料(濃度未知試料)の測定によって得られた標準品換算濃度に乗じて毒性等量(TEQ)に変換した。
各抗体が最も反応する異性体(抗体Aでは1,2,3,7,8−PeCDF、抗体Bでは1,2,3,6,7,8−HxCDD)のIC50値(抗原抗体反応を50%阻害する濃度:ng/ml)を100として、それに対する各異性体のIC50値より、交差反応率(%)を算出した。結果を表3に示す。
Figure 0005199944
抗体Aは、五塩素化および六塩素化ジベンゾフラン類との反応性が高いという特性を有する。一方、抗体Bは、五塩素化および六塩素化ジベンゾフラン類だけでなく、3,3’,4,4’,5,5’−HxCB(PCB#169)との反応性も高いことがわかった。したがって、抗体Aは、廃棄物焼却施設由来の排出ガス試料におけるTEQ測定に有効であるが、PCBsとの反応性を有さないため、試料の採取箇所によって異性体分布の異なる土壌試料の測定には適さない。一方、抗体Bは、五塩素化および六塩素化ジベンゾフラン類だけでなく、PCB#169との反応性も高いという特性を有するため、土壌試料のTEQ測定に適することが予測される。
(実施例4:GC/MS法との相関性の検討)
種々の汚染源によって汚染された土壌試料および底質試料中のダイオキシン類濃度を、上記抗体Aおよび上記実施例2で作製した抗体Bを用いて、ELISAによって測定した。測定した土壌試料は、焼却汚染、PCB汚染および農薬汚染の3種16検体であった。また、底質試料は、農薬汚染、PCB汚染および工場排水汚染由来の3種12検体であった。
土壌試料および底質試料をそれぞれ約8〜10g採取し、トルエン500mlで試料中の物質を抽出し、20mlに定量して粗抽出液とした。粗抽出液から各1ml分取し、硫酸処理、多層シリカゲルクロマトグラフ処理および活性炭カラムクロマトグラフ処理を行ってクリーンアップした。各クリーンアップした試料について、上記のELISAによる測定手順に従ってダイオキシン類濃度を測定し、TEQ値に変換した。また、同じ試料について、クリーンアップを行った後、ガスクロマトグラフ質量分析計(Micromass社製)によりTEQ値を測定した。結果を、図2〜5に示す。
図2〜5のグラフでは、横軸に各試料のGC/MS値(pg−TEQ/g)、縦軸に各抗体を用いて測定したELISA値(pg−TEQ/g)を示す。太線は、GC/MS値とELISA値の1:1の関係を示し、その上下に0.5〜2倍範囲を点線で併記した。
図2および図3は、抗体Aを用いたELISA測定系での土壌試料および底質試料の測定した結果を示す。抗体Aは、五塩素化および六塩素化ジベンゾフラン類と特異的に反応する特性を有するため、焼却汚染および農薬汚染由来の試料ではGC/MS値と相関性の高い結果が得られた。しかし、PCBsとは反応しないため、PCB汚染由来の土壌試料の測定結果は、GC/MS値よりも極めて低く算出された。
図4および図5は、抗体Bを用いたELISA測定系での土壌試料および底質試料の測定した結果を示す。抗体Bは、五塩素化および六塩素化ジベンゾフランだけでなく、PCB#169とも高い反応性を有する特性を有するため、汚染源にかかわらずGC/MS値と相関性の高い結果が得られた。このことから、3,3’,4,4’,5,5’−HxCB(PCB#169)に高い親和性を有する抗体を用いれば、土壌や底質の汚染源にかかわらず、GC/MS値と相関性の高い測定値を得ることができることがわかった。特に、五塩素化および六塩素化ジベンゾフラン類とPCB#169との両方に高い親和性を有すれば、排出ガスや土壌などの試料の種類にかかわらず、GC/MS値と相関性の高い測定値を得ることができることがわかった。
本発明の方法によれば、汚染源にかかわらず、公定法(GC/MS法)によるTEQ(毒性等量)と一致した測定結果を、迅速に算出することができる。この方法により、環境試料中のダイオキシン類の簡易分析、モニタリングなどが迅速かつ簡易になる。

Claims (3)

  1. 土壌または底質試料中のダイオキシン類の毒性等量の免疫測定方法であって、
    該土壌または底質試料と3,3’,4,4’,5,5’−ヘキサクロロビフェニルに親和性を有する抗ダイオキシン類抗体とを反応させる工程;
    該抗ダイオキシン類抗体と結合したダイオキシン類の量または該ダイオキシン類と結合しなかった該抗ダイオキシン類抗体の量を検出する工程;および
    該検出した量から該試料中の毒性等量を算出する工程;
    を含み、
    該抗ダイオキシン類抗体が、モノクローナル抗体である、
    方法。
  2. 前記抗ダイオキシン類抗体が、さらに2,3,4,7,8−ペンタクロロジベンゾフランに親和性を有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記検出工程が、酵素免疫測定法、放射性免疫測定法、および蛍光免疫測定法からなる群より選択される方法に基づいて行われる、請求項1または2に記載の方法。
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