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JP4221119B2 - ドウモイ酸に対する特異的抗体及びドウモイ酸の免疫学的分析方法 - Google Patents

ドウモイ酸に対する特異的抗体及びドウモイ酸の免疫学的分析方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドウモイ酸に対する特異的モノクローナル抗体又はそのフラグメント、前記モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、及びドウモイ酸の免疫学的分析方法に関する。本明細書における「分析方法」には、標的物質の存在の有無を判定する「検出方法」と、標的物質の量を定量的又は半定量的に決定する「測定方法」とが含まれる。
【0002】
【従来の技術】
ドウモイ酸(domoic acid)は、式(I):
【化1】
Figure 0004221119
で表される化合物であり、中枢神経系の海馬のC3領域を選択的に破壊する強力な神経興奮毒である。1987年に、カナダ東海岸のプリンス・エドワート島周辺で養殖のムラサキイガイを摂取した人が記憶喪失症状等の神経障害を示す食中毒が発生した。そして、その原因が、珪藻のシュードニッチア・プンゲンス・ホルマ・マルチセリエス(Pseudonitzschia pungens forma multiseries)が産生するドウモイ酸であると同定された。この食中毒以来、世界各地で魚介類や海藻類からドウモイ酸が検出され、そのモニタリングの必要性が指摘されている。
【0003】
ドウモイ酸には各種の異性体が存在する。現在までに、天然に存在することが確認されている異性体として、式(Ia):
【化2】
Figure 0004221119
で表されるイソドウモイ酸A(isodomoic acid A)、式(Ib):
【化3】
Figure 0004221119
で表されるイソドウモイ酸B、式(Ic):
【化4】
Figure 0004221119
で表されるイソドウモイ酸C、式(Id):
【化5】
Figure 0004221119
で表されるイソドウモイ酸D、式(Ie):
【化6】
Figure 0004221119
で表されるイソドウモイ酸E、式(If):
【化7】
Figure 0004221119
で表されるイソドウモイ酸F、式(Ig):
【化8】
Figure 0004221119
で表されるイソドウモイ酸G、式(Ih):
【化9】
Figure 0004221119
で表されるイソドウモイ酸H、又は式(Ij):
【化10】
Figure 0004221119
で表されるC5’−ジアステレオマーの9種類が知られている。しかし、これらのドウモイ酸異性体の内、イソドウモイ酸A、イソドウモイ酸B、イソドウモイ酸C、イソドウモイ酸G、及びイソドウモイ酸Hは、非食用のハナヤナギという海藻にのみその存在が知られており、魚介類からは検出されていない。一方、イソドウモイ酸D、イソドウモイ酸E、イソドウモイ酸F、及びC5’−ジアステレオマーは、ドウモイ酸と共に魚介類中に検出されるが、その量は非常に微量で、毒性も低い。このようにドウモイ酸以外のドウモイ酸異性体は、前記食中毒の原因としては、重要ではないと考えられる。
【0004】
従来、ドウモイ酸及び/又はその異性体の分析には高速液体クロマトグラフィーが使用されていた。この方法は、精度の点では問題ないものの、試料の精製が煩雑で時間がかかること、並びに測定装置や設備等が高価で大型であるという問題点があった。また、大量の検体の測定に不向きで、測定に要する時間も長かった。
【0005】
一方、近年、高価な設備を必要とせず、簡便かつ迅速な分析法として、低分子化合物の測定に免疫学的分析方法が応用されるようになってきた。ドウモイ酸についても、ポリクローナル抗体を用いた免疫化学的測定法が最近報告されている(Smith,D.S et al.,J.Agric.Food Chem.,Vol43,367−371,1995)。しかし、この方法は、モニタリングに必要な感度が不足しており、かつポリクローナル抗体を使用しているために常に同じ特異性を持つ抗体が得られないので、再現性にも問題がある。
更に、前記ポリクローナル抗体は、毒性の高いドウモイ酸以外にも、食中毒の原因としては重要でないと考えられるドウモイ酸異性体とも反応する可能性が高く、例えば、ドウモイ酸を全く含まない検体に対しても反応してしまう恐れがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、従来技術の前記の欠点を解消し、高価な設備を必要とせず、食中毒の原因としては重要でないと考えられるドウモイ酸異性体の影響を実用上、受けることなく、毒性の高いドウモイ酸を、簡便かつ迅速に分析することのできる免疫学的分析方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、本発明による、受託番号FERM P−17441であるハイブリドーマから分泌されるモノクローナル抗体又はそのフラグメントによって解決することができる。
また、本発明は、受託番号FERM P−17441であるハイブリドーマに関する。
更に、本発明は、前記モノクローナル抗体又はそのフラグメントを用いることを特徴とする、ドウモイ酸の免疫学的分析方法にも関する。
【0008】
本明細書において、抗体の「フラグメント」とは、抗原と結合可能な抗体の一部分を意味し、例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、又はFvフラグメント等を挙げることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のモノクローナル抗体は、ドウモイ酸と特異的に反応する。ここで、前記「ドウモイ酸」には、前記式(I)で表される遊離のドウモイ酸と、その塩とが含まれる。
本発明の好ましいモノクローナル抗体は、ドウモイ酸と特異的に反応し、魚介類(特には貝類)に存在することが知られているドウモイ酸異性体(例えば、イソドウモイ酸E又はイソドウモイ酸F)とは反応しない。なお、本明細書において、「魚介類」には、海藻は含まれない。
従って、本発明の好ましいモノクローナル抗体を用いると、ドウモイ酸異性体の影響を実用上、受けることなく、魚介類(特には貝類)中のドウモイ酸のみを免疫学的に分析することができる。
【0010】
以下、本発明によるモノクローナル抗体の製造方法、すなわち、免疫用抗原の作製方法、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの分離方法、及びモノクローナル抗体の調製方法、並びに本発明による免疫学的分析方法について、この順に説明する。なお、これらの調製は、公知の方法、例えば、続生化学実験講座又は免疫生化学研究法(日本生化学会編)等に記載の方法に従って行うことができる。
【0011】
本発明のモノクローナル抗体は、これに限定されるわけではないが、例えば、ドウモイ酸をハプテンとして使用し、以下の手順により作製することができる。本明細書において「ハプテン」とは、抗体との結合能を有しているものの、それ単独では免疫原性を有さず、担体と結合することによって免疫原性を発現する物質を意味する。ここでは、ドウモイ酸そのものが「ハプテン」に該当する。
モノクローナル抗体の製造にあたっては、通常、少なくとも以下のような作業工程が必要である:
(a)免疫用抗原として使用するドウモイ酸と担体(シュレッパー)との結合体の作製;
(b)動物への免疫;
(c)血液の採取、アッセイ、及び抗体産生細胞の調製;
(d)ミエローマ細胞の調製;
(e)前記抗体産生細胞と前記ミエローマ細胞との細胞融合とハイブリドーマの選択的培養;
(f)目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングと細胞クローニング;
(g)ハイブリドーマの大量培養又は動物へのハイブリドーマの移植によるモノクローナル抗体の大量調製;及び
(h)調製されたモノクローナル抗体の反応性の測定。
【0012】
前記工程(a)では、免疫用抗原として使用するドウモイ酸(ハプテン)と担体(シュレッパー)との結合体を作製する。
前記結合体の作製に用いることのできる前記担体は、ハプテンであるドウモイ酸に免疫原性を付与することのできる高分子化合物である限り、特に限定されるものではなく、例えば、スカシガイヘモシアニン(以下、「KLH」と称する)、卵白アルブミン(以下、「OVA」と称する)、ウシ血清アルブミン(以下「BSA」と称する)、ウサギ血清アルブミン(以下、「RSA」と称する)、又はヒトイムノグロブリンG(以下「HGG」と称する)等を挙げることができる。
【0013】
ドウモイ酸と担体との結合は、公知の方法、例えば、活性化エステル法(A.E.KARU et al.,J.Agric.Food Chem.,42,301−309,1994)、又は混合酸無水物法(B.F.Erlangeret al.,J.Biol.Chem.,234,1090−1094,1954)等によって行うことができる。
【0014】
前記活性化エステル法は、一般に以下のようにして実施することができる。
すなわち、まず、ドウモイ酸を適当な有機溶媒に溶解し、適当なカップリング剤の存在下にてN−ヒドロキシコハク酸イミドと反応させ、N−ヒドロキシコハク酸イミド活性化エステルを生成させる。
前記カップリング剤としては、縮合反応に慣用されてる通常のカップリング剤を使用することができ、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、カルボニルジイミダゾール、又は水溶性カルボジイミド等を挙げることができる。
ドウモイ酸を溶解するのに使用する前記有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」と称する)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と称する)、又はジオキサン等を挙げることができる。
前記カップリング反応に使用するドウモイ酸とN−ヒドロキシコハク酸イミドとのモル比(ドウモイ酸:N−ヒドロキシコハク酸イミド)は、好ましくは1:10〜10:1、より好ましくは1:1である。反応温度は、好ましくは5℃〜50℃、より好ましくは22℃〜27℃であり、反応時間は、好ましくは30分〜6時間、より好ましくは1時間〜2時間である。
【0015】
前記カップリング反応に続いて、得られた反応液を、担体を溶解した溶液に加え、反応させる。例えば、前記担体が遊離のアミノ基を有する場合には、そのアミノ基と、ドウモイ酸のカルボキシル基とによって酸アミド結合が生成される。
反応温度は、好ましくは5℃〜40℃、より好ましくは22℃〜27℃であり、反応時間は、好ましくは1時間〜16時間、より好ましくは1時間〜2時間である。得られた反応物を、例えば、透析又は脱塩カラム等によって精製することにより、免疫用抗原として使用するドウモイ酸と担体との結合体を得ることができる。
【0016】
一方、前記混合酸無水物法において用いられる混合酸無水物は、通常のショッテン−バウマン反応により得られ、これを担体と反応させることにより、免疫用抗原として使用するドウモイ酸と担体との結合体を得ることができる。
前記ショッテン−バウマン反応は、塩基性化合物の存在下に行われる。塩基性化合物としては、ショッテン−バウマン反応において慣用されている化合物を使用することができる。例えば、有機塩基[例えば、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、N−メチルホルマリン、ピリジン、又はN,N−ジメチルアニリン]、あるいは無機塩基(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、又は炭酸水素ナトリウム等)等を挙げることができる。
前記ショッテン−バウマン反応は、通常、0℃〜50℃において行われ、反応時間は、通常、5分〜5時間である。
【0017】
前記混合酸無水物法における前記ショッテン−バウマン反応は、一般に溶媒中で行われる。前記溶媒としては、混合酸無水物法に慣用されているいずれの溶媒も使用可能であり、具体的には、エーテル類(例えば、ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、又はジメトキシエタン等)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、又はジクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、又はキシレン等)、エステル類(例えば、酢酸メチル又は酢酸エチル等)、非プロトン性極性溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、又はヘキサメチルリン酸トリアミド等)等を挙げることができる。
混合酸無水物法における前記ショッテン−バウマン反応において使用されるハロギ酸エステルとしては、例えば、クロロギ酸メチル、ブロモギ酸メチル、クロロギ酸エチル、ブロモギ酸エチル、又はクロロギ酸イソブチル等を挙げることができる。前記方法におけるハプテンとハロギ酸エステルと担体との使用割合は、広い範囲から適宜選択することができる。
【0018】
なお、後述する本発明の免疫学的分析方法に使用することのできるドウモイ酸と標識物質との結合体、又は抗体と標識物質との結合体は、ドウモイ酸と担体との結合体を作製する前記方法と同様に、活性化エステル法又は混合酸無水物法により、作製することができる。前記標識物質としては、免疫化学的測定方法において一般に使用することのできる公知の標識物質、例えば、標識酵素[例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ(以下、「HRP」と称する)又はアルカリホスファターゼ等]、蛍光物質(例えば、フルオレセインイソシアネート又はローダミン等)、放射性物質(例えば、32P又は125I等)、又は化学発光物質などを挙げることができる。
【0019】
動物への免疫を行う前記工程(b)は、前記工程(a)で得られた結合体を、例えば、リン酸ナトリウム緩衝液(以下、「PBS」と称する)に溶解し、フロイント完全アジュバント若しくは不完全アジュバント、又はミョウバン等の補助剤と混合したものを、マウス又はラットに接種することにより実施することができる。
前記工程(b)における免疫の際の投与法は、例えば、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、皮内注射、又は筋肉内注射のいずれでもよく、特に、皮下注射又は腹腔内注射が好ましい。免疫は、1回、あるいは、適当な間隔(好ましくは1週間〜5週間の間隔)で複数回行うことができる。
【0020】
前記工程(c)で調製される抗体産生細胞は、リンパ球であり、通常、脾臓、胸腺、リンパ節、若しくは抹消血液又はこれらの組み合わせから得ることができるが、脾細胞が最も一般的に用いられる。従って、最終免疫を実施した後に、抗体産生が確認されたマウスより、抗体産生細胞が存在する部位、例えば、脾臓を摘出し、抗体産生細胞を調製することができる。
【0021】
前記工程(d)で調製されるミエローマ細胞としては、例えば、Balb/cマウス由来骨髄腫細胞株のP3/X63−Ag8(X63)(Nature,256,495−497,1975)、P3/X63−Ag8.U1(P3U1)(CurrentTopics.in Microbiology and Immunology,81,1−7,1987)、P3/NSI1Ag4−1(NS−1)(Eur.J.Immuno.Meth.,35,1−21,1980)、MPC−11、X63.653、若しくはS194等の骨髄腫株化細胞、又はラット由来の210、RCY3.Ag1.2.3.(Y3)(Nature.277,131−133,1979)等を挙げることができる。
通常、前記ミエローマ細胞をウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)又はイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)で継代培養し、細胞融合を実施する当日に約3×103以上の細胞数を確保する。
【0022】
前記工程(e)における細胞融合は、公知の方法、例えば、ミルスタイン(Milstein)らの方法(Methods in Enzymology,73,3,1981)等に準じて行うことができる。現在最も一般的に行われているのは、ポリエチレングリコール(PEG)を用いる方法である。PEG法については、例えば、細胞組織化学、山下修二らに記載されている。
別の融合方法としては、電気処理(電気融合)による方法(大河内悦子ら,実験医学,5,1315−1319,1987)を採用することもできるし、あるいは、その他の方法を適宜採用することもできる。また、細胞の使用比率も公知の方法と同様でよく、例えば、ミエローマ細胞に対して脾細胞を通常、3倍〜10倍程度用いて実施することができる。
【0023】
脾細胞とミエローマ細胞とが融合し、抗体分泌能及び増殖能を獲得したハイブリドーマ群の選択は、例えば、ミエローマ細胞株としてヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損株を使用した場合には、例えば、前記のDMEM又はIMDMにヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを添加して調製したHAT培地の使用により行うことができる。
【0024】
ハイブリドーマのスクリーニング及び細胞クローニングを行う前記工程(f)では、最初に、選択されたハイブリドーマ群を含む培養上清の一部をとり、例えば、後述するELISA法により、ドウモイ酸に対する抗体活性を測定する。
続いて、前記工程(f)では、測定によりドウモイ酸に反応する抗体を産生することが判明したハイブリドーマの細胞クローニングを行う。この細胞クローニング法としては、例えば、限界希釈法(すなわち、限界希釈により1ウェルに1個のハイブリドーマが含まれるように希釈する方法)、軟寒天培地上に撒きコロニーをとる方法、マイクロマニピュレーターによって1個の細胞を取り出す方法、又はソータークローン法(すなわち、セルソーターによって1個の細胞を分離する方法)等を挙げることができる。このうち、限界希釈法が簡単であり、よく用いられる。
【0025】
抗体価が認められたウェルについて、例えば、限界希釈法によりクローニングを1〜4回繰り返して安定した抗体価の得られたものを、抗ドウモイ酸モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。ハイブリドーマを培養する培地としては、例えば、ウシ胎児血清(FCS)を含むDMEM又はIMDM等を用いることができる。ハイブリドーマの培養は、例えば、二酸化炭素濃度5〜7%程度、且つ37℃(100%湿度の恒温器中)で行うのが好ましい。
【0026】
前記工程(g)で抗体を調製するための大量培養は、例えば、ホローファイバー型の培養装置等によって行うことができる。あるいは、同系統のマウス(例えば、前記のBalb/c)又はNu/Nuマウスの腹腔内でハイブリドーマを増殖させ、腹水液より抗体を調製することも可能である。
これらにより得られた培養上清液又は腹水液を抗ドウモイ酸モノクローナル抗体含有溶液として使用することができるが、更に、例えば、透析、硫酸アンモニウムによる塩析、ゲル濾過、又は凍結乾燥等を行い、抗体画分を集め、精製することにより、抗ドウモイ酸モノクローナル抗体を得ることができる。更に、精製が必要な場合には、例えば、イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの慣用されている方法を組み合わせることにより実施することができる。
このようにして得られた抗ドウモイ酸モノクローナル抗体は、例えば、後述するELISA法などの公知の方法を使用して、サブクラス及び抗体価等を決定することができる。
【0027】
本発明によるドウモイ酸の免疫学的分析方法においては、ドウモイ酸に特異的に反応する本発明によるモノクローナル抗体又はそのフラグメントを用いること以外は、公知の免疫学的分析方法をそのまま適用することができる。公知の免疫学的分析方法としては、一般に抗原の検出に使用されている種々の方法(「ハイブリドーマ法とモノクローナル抗体」,株式会社R&Dプラニング発行,第30頁〜第53頁,昭和57年3月5日)を用いることができ、例えば、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Engvall,E.,Methods in Enzymol.,70,419−439,1980)、蛍光抗体法、プラーク法、スポット法、凝集法、又はオクタロニー(Ouchterlony)等を挙げることができる。この内、感度及び簡便性等の観点からELISA法が汎用されている。
【0028】
本発明によるドウモイ酸の免疫学的分析方法における分析対象は、ドウモイ酸を含む可能性がある限り、特に限定されるものではないが、例えば、魚介類、特には貝類を挙げることができる。なお、前記魚介類には、海藻は含まれない。
本発明方法においては、例えば、前記分析対象の全部又は一部の破砕液、懸濁液、抽出液、又は培養液などを、被検試料として用いることができる。
【0029】
ドウモイ酸の測定は、各種ELISA法の内、例えば、間接競合阻害ELISA法により、以下のような手順により実施することができる。すなわち、
(イ)まず、ドウモイ酸と前記担体(シュレッパー)との結合体を、固相化用担体に固相化抗原として固相化する。
(ロ)固相化抗原が吸着していない固相化用担体の表面を、ブロッキング剤(例えば、抗原と無関係なタンパク質)によりブロッキングする。
(ハ)これに、各種濃度のドウモイ酸を含む可能性のある試料と、抗ドウモイ酸モノクローナル抗体とを加え、前記モノクローナル抗体を前記固相化抗原と前記ドウモイ酸とに競合的に反応させて、固相化抗原−モノクローナル抗体複合体と、ドウモイ酸又はイソドウモイ酸A−モノクローナル抗体複合体とを生成させる。
(ニ)固相化抗原−モノクローナル抗体複合体の量を測定することにより、予め作成した検量線から試料中のドウモイ酸の量を決定することができる。
【0030】
前記工程(イ)において、固相化抗原[すなわち、ドウモイ酸と担体との結合体]を固相化する固相化用担体としては、特別な制限はなく、ELISA法において常用されるものであれば、いずれの固相化用担体も使用することができる。例えば、ポリスチレン製の96ウェルのマイクロタイタープレートを挙げることができる。
【0031】
固相化用抗原を固相化させるには、例えば、前記固相化抗原を含む緩衝液を固相化用担体上に分注し、インキュベーションすることにより行うことができる。前記緩衝液としては公知の緩衝液を使用することができ、例えば、リン酸緩衝液を挙げることができる。緩衝液中の固相化抗原の濃度は広い範囲から選択することができるが、通常、0.01μg/ml〜50μg/ml程度、好ましくは、0.05μg/ml〜5μg/mlが適している。また、固相化用担体として96ウェルのマイクロタイタープレートを使用する場合には、300μl/ウェル以下が好ましく、20μl/ウェル〜150μl/ウェル程度がより好ましい。更に、インキュベーションの条件にも特に制限はないが、通常、4℃で一晩インキュベーションすることが好ましい。
【0032】
前記工程(ロ)におけるブロッキングは、固相化抗原[すなわち、ドウモイ酸と担体との結合体]を固相化した固相化用担体において、ドウモイ酸又はイソドウモイ酸Aを固相化した部分以外の部分に、後で添加するモノクローナル抗体が吸着され得る部分が存在する場合があるので、もっぱらそれを防ぐ目的で行われる。前記ブロッキング剤としては、例えば、BSA又はスキムミルク溶液を使用することができる。あるいは、ブロックエース(「Block・Ace」,大日本製薬社製,コードNo.UK−25B)等のブロッキング剤として市販されている市販品を使用することもできる。
【0033】
前記ブロッキングは、具体的には、これに限定されるわけではないが、例えば固相化抗原を固相化した部分にブロッキング剤を含む緩衝液[例えば、1%BSA及び60mM−NaClを添加した85mMホウ酸緩衝液(pH8.0)]を適量加え、約4℃から室温で、1時間〜5時間インキュベーションした後に、洗浄液で洗浄することにより行うことができる。前記洗浄液としては、例えば、60mM−NaClを添加したホウ酸緩衝液を用いることができる。
【0034】
次いで、前記工程(ハ)において、ドウモイ酸を含む可能性のある試料とモノクローナル抗体とを固相化抗原に接触させると、ドウモイ酸が存在する場合には、前記モノクローナル抗体が前記固相化抗原あるいは前記ドウモイ酸と競合的に反応し、固相化抗原−モノクローナル抗体複合体及びドウモイ酸又はイソドウモイ酸A−モノクローナル抗体複合体が生成する。
【0035】
この際、前記モノクローナル抗体としては、例えば、第一抗体として本発明の抗ドウモイ酸モノクローナル抗体を加え、更に、第二抗体として標識酵素を結合した抗第一抗体モノクローナル抗体(すなわち、前記第一抗体に対するモノクローナル抗体)を順次加えて反応させることができる。
この場合には、前記第一抗体は、通常、緩衝液に溶解して添加する。これに限定されるわけではないが、反応は、37℃程度で約1時間行えばよい。反応終了後、緩衝液で固相化用担体を洗浄し、固相化抗原に結合しなかった第一抗体を除去する。洗浄液としては、例えば、60mM−NaClを添加したホウ酸緩衝液を用いることができる。
次いで、第二抗体を添加する。例えば、第一抗体としてマウスモノクローナル抗体を用いる場合には、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ又はアルカリスファターゼ等)を結合した抗マウス−ヤギ抗体を用いるのが適当である。担体に結合した第一抗体に約500倍〜約1000倍、好ましくは最終吸光度が4以下、より好ましくは0.5〜3.0となるように希釈した第二抗体を反応させるのが望ましい。希釈には緩衝液を用いる。限定されるわけではないが、反応は室温で約1時間行い、反応後、緩衝液で洗浄する。以上の反応により、第二抗体が第一抗体に結合する。
あるいは、このように第一抗体及び第二抗体を用いる代わりに、標識した第一抗体を用いてもよく、その場合には、第二抗体は不要である。
【0036】
次いで、前記工程(ニ)において、固相化用担体に結合した第二抗体の標識物質と反応する発色基質溶液を加え、吸光度を測定することによって、検量線からドウモイ酸の量を算出することができる。
第二抗体に結合する標識物質(酵素)としてペルオキシダーゼを使用する場合には、例えば、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン又はo−フェニレンジアミン(以下、「OPD」と称する)と過酸化水素とを含む発色基質溶液を使用することができる。これに限定されるわけではないが、発色基質溶液を加え、室温で約10分間反応させた後、1N硫酸を加えることにより、酵素反応を停止させる。3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを使用する場合には、450nmの吸光度を測定する。OPDを使用する場合には、490nmの吸光度を測定する。
一方、第二抗体に結合する標識物質(酵素)としてアルカリスファターゼを使用する場合には、例えば、p−ニトロフェニルリン酸を基質として発色させ、2NのNaOHを加えて酵素反応を止め、415nmでの吸光度を測定する方法が適している。
【0037】
検量線は、ドウモイ酸を含有しない反応溶液を用いて前記の測定系で得られた吸光度と、既知濃度のドウモイ酸を含有する反応溶液を用いて前記の測定系で得られた吸光度とを比較し、阻害率から作成しておくことができる。この検量線を用いて、試料中のドウモイ酸の濃度を算出することができる。
【0038】
あるいは、ドウモイ酸の測定は、前記間接競合阻害ELISA法に代えて、例えば、以下に述べるような本発明のモノクローナル抗体を用いた直接競合阻害ELISA法によっても行うことができる。すなわち、
(1)まず、本発明のモノクローナル抗体を、固相化用担体に固相化する。
(2)モノクローナル抗体が固相化されていない固相化用担体表面をブロッキング剤(例えば、抗原と無関係なタンパク質)によりブロッキングする。
(3)前記工程とは別に、各種濃度のドウモイ酸を含む可能性のある試料に、ドウモイ酸に酵素を結合させた酵素結合体を添加して混合物を調製する。
(4)前記混合物を前記のモノクローナル抗体固相化担体と反応させる。
(5)固相化モノクローナル抗体−酵素結合体複合体の量を測定することにより、予め作成した検量線から試料中のドウモイ酸の量を決定することができる。
【0039】
前記工程(1)において、モノクローナル抗体を固相化する固相化用担体としては、特別な制限はなく、ELISA法において常用されるものをいずれも使用することができる。例えば、ポリスチレン製の96ウェルのマイクロタイタープレートが挙げられる。モノクローナル抗体の固相化は、例えば、モノクローナル抗体を含む緩衝液を担体上に載せ、インキュベーションすることによって行うことができる。緩衝液の組成及び濃度は、前記の間接競合阻害ELISA法と同様のものを採用することができる。
【0040】
前記工程(2)におけるブロッキングは、モノクローナル抗体を固相化した固相化用担体において、後に添加する酵素結合体が吸着される部分が存在する場合があるので、それを防ぐ目的で行う。ブロッキング剤及びブロッキング方法は、前記の間接競合阻害ELISA法と同様のものを使用することができる。
【0041】
前記工程(3)において用いる酵素結合体の調製は、ドウモイ酸を酵素に結合する方法であれば特に制限はなく、いかなる方法で行ってもよい。例えば、前述した活性化エステル法を採用することができる。調製した酵素結合体は、ドウモイ酸を含む可能性のある試料と混合する。
【0042】
前記工程(4)において、ドウモイ酸を含む可能性のある試料及び酵素結合体の混合物を、モノクローナル抗体固相化担体に接触させると、ドウモイ酸が存在する場合には、ドウモイ酸と酵素結合体との競合阻害反応により、酵素結合体又はドウモイ酸若しくはイソドウモイ酸Aと固相化モノクローナル抗体との複合体が生成する。ドウモイ酸を含む可能性のある試料は、適当な緩衝液で希釈して使用する。限定されるわけではないが、前記反応は、例えば、室温でおよそ1時間行う。反応終了後、緩衝液で担体を洗浄し、固相化モノクローナル抗体と結合しなかった酵素結合体を除去する。洗浄液は、例えば、NaClを添加したホウ酸緩衝液を使用することができる。
【0043】
次いで、前記工程(5)において、酵素結合体の酵素に反応する発色基質溶液を前記の間接競合阻害ELISA法と同様に加え、吸光度を測定することにより検量線からドウモイ酸の量を算出することができる。
また、これまで説明した間接競合阻害ELISA法又は直接競合阻害ELISA法により、本発明のモノクローナル抗体の交差反応性を調べることもできる(例えば、後述する実施例6)。
【0044】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
《ドウモイ酸と担体との結合体の作製》
免疫原及びスクリーニング用抗原として、ドウモイ酸とBSAとの結合体、ドウモイ酸とOVAとの結合体、及びドウモイ酸とHGGとの結合体を、活性化エステル法を用いてそれぞれ作製した。
まず、ドウモイ酸1mgをDMSO50μlに溶解させた。その中に、N−ヒドロキシコハク酸イミドを30mg/mlの濃度で溶解させたDMSO溶液10μlを加えた。更に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を25mg/mlの濃度で溶解させた溶液10μlを加え、室温にて1.5時間反応させた。
その後、前記反応溶液に、85mMホウ酸緩衝液(pH8.0)250μlに溶解したBSA、OVA、又はHGG5mgを加え、再び室温にて1.5時間反応させた。反応終了後、脱塩カラム(PD・10カラム)により、結合体と未反応のドウモイ酸とを分離し、ドウモイ酸とBSAとの結合体、ドウモイ酸とOVAとの結合体、及びドウモイ酸とHGGとの結合体を各々調製した。
【0045】
【実施例2】
《免疫感作》
免疫には、Balb/cマウス(7週齢・メス)を用いた。前記実施例1で調製したドウモイ酸とBSAとの結合体、ドウモイ酸とOVAとの結合体、又はドウモイ酸とHGGとの結合体100μgを、それぞれ、ダルベッコのリン酸緩衝液[以下、PBS(−)と称する]50μlに溶解した。等量のフロイント完全アジュバントと乳化混合した後、マウスの腹腔内に接種した。その3週、5週、7週、9週、及び11週後に、初回免疫量と同量の前記結合体と等量のフロイント不完全アジュバントとの乳化混合液を追加免疫し、更にその6週後に追加免疫と同量を最終免疫した。
【0046】
【実施例3】
《抗血清によるドウモイ酸の反応性》
前記実施例2で免疫したマウス眼窩静脈叢から採血した抗血清を希釈調製し、以下に詳述する間接競合阻害ELISA法にてドウモイ酸に対する親和性を測定し、抗血清を評価した。
すなわち、まず、50mM炭酸緩衝液(pH9.6)に溶解したドウモイ酸とBSAとの結合体、ドウモイ酸とOVAとの結合体、又はドウモイ酸とHGGとの結合体(濃度=1μg/ml)を96ウェルのマイクロタイタープレート(住友ベークライト社製)の各ウェルに100μl/ウェルで加え、4℃で1晩静置することによって固相化した。
次に、0.05%ツイーン20を含むPBS(以下、PBS−Tと称する)で3回洗浄した後、このウェルに希釈液(10%ウマ血清を含むPBS−T)で適当な濃度に段階的に希釈したドウモイ酸を50μl/ウェルで加えた。その後、直ちに同じ希釈液で適当な濃度に希釈した抗体溶液を加えて混合し、室温で1時間反応させた。洗浄液(PBS−T)で3回洗浄した後、2次抗体希釈液(10%ウマ血清を含むPBS−T)で1000倍希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG(Fab特異的)抗体(シグマ社製)を100μl/ウェルで添加し、室温で1時間反応させた。再び、洗浄液で3回洗浄後、ペルオキシダーゼの基質溶液[100μg/mlの3,3’5,5’−テトラメチルベンジジン及び0.006%過酸化水素を添加した0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)]で10分間発色させ、1N硫酸で反応停止後、450nmの吸光度を測定した。
【0047】
結果を図1に示す。図1に示す結合率(%)は以下の計算式で求めた。
B={(−Ab)/(Ao−Ab)}×100
Bは結合率(%)であり、Aoは、ドウモイ酸未添加の場合の吸光度であり、Abは、バックグラウンドの吸光度であり、Aは、各濃度における吸光度である。
図1において、折れ線a及びbは、ドウモイ酸とOVAとの結合体を固相化し、ドウモイ酸とBSAとの結合体を用いて免疫したマウスから採血した抗血清を用いた場合の結果を示す。以下、同様に、
折れ線c及びdは、ドウモイ酸とBSAとの結合体を固相化し、ドウモイ酸とOVAとの結合体を用いて免疫したマウスから採血した抗血清を用いた場合の結果を示し、
折れ線e及びfは、ドウモイ酸とOVAとの結合体を固相化し、ドウモイ酸とHGGとの結合体を用いて免疫したマウスから採血した抗血清を用いた場合の結果を示す。
【0048】
ドウモイ酸とBSAとの結合体を用いて免疫したマウスから採血した抗血清が、ドウモイ酸と高い親和性を示した(折れ線a及びb)。以下、ドウモイ酸とBSAとの結合体で免疫したマウスを用いて、モノクローナル抗体の作製を行った。
【0049】
【実施例4】
《モノクローナル抗体の作製》
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得るための細胞融合は、最終免疫後4日目のマウスの脾臓細胞を用いて行った。摘出した脾臓からイスコフ改変ダルベッコ培地(以下、「IMDM」と称する)中に脾臓細胞を取り出し、IMDMにて3回洗浄した。次いで、前記脾臓細胞と、マウスのミエローマ細胞P3−X63−Ag8.U1を、細胞数の比で10:1(脾細胞:ミエローマ細胞)となるように混合し、遠心(1,200rpm、5分間)して細胞沈査を集めた。この細胞沈査へ予め37℃に加温しておいた50%ポリエチレングリコール(分子量1500)1mlを加え、細胞を融合した。細胞融合は、IMDM10mlを徐々に添加し、ウシ胎児血清(以下、「FBS」と称する)1mlを更に添加することにより、停止した。
融合した細胞を、IMDMに10%FBS、ヒポキサンチン(100μM)、アミノプテリン(0.4μM)、及びチミジン(16μM)を添加したHAT培地に懸濁した。これを96ウェルのマイクロプレートの各ウェルに2×105細胞/ウェルで分注し、37℃にて5%二酸化炭素存在下で10〜14日間培養した。培養後、ウェルに産生されたドウモイ酸と反応する抗体の有無を、前記実施例3と同様にして間接競合阻害ELISA法を用いて調べた。
【0050】
ドウモイ酸と反応性を示したウェル中のハイブリドーマを選抜し、限界希釈法によって細胞クローニングした。その結果、抗ドウモイ酸モノクローナル抗体を産生する細胞として、ハイブリドーマDA−3を得た。更に、FBSを10%添加したIMDM中でハイブリドーマDA−3を培養し、培養上清からモノクローナル抗体を得た。このモノクローナル抗体をモノクローナル抗体DA−3とする。
作製したモノクローナル抗体DA−3のクラスはIgG1,κであった。ハイブリドーマDA−3は工業技術院生命工学研究所に平成11年6月29日から寄託されている。その受託番号はFERM P−17441である。
【0051】
【実施例5】
《ドウモイ酸に対するモノクローナル抗体の反応性》
前記実施例4で得られたモノクローナル抗体DA−3のドウモイ酸に対する反応性を、前記実施例3と同様にして間接競合阻害ELISA法によって調べた。結果を図2に示す。図2に示すように、モノクローナル抗体DA−3は、0.1ng/ml〜10ng/mlの濃度範囲でドウモイ酸と高い反応性を示した。
【0052】
【実施例6】
《モノクローナル抗体DA−3の交差反応性》
前記実施例5で示した間接競合阻害ELISA法により、モノクローナル抗体DA−3と、ドウモイ酸若しくはその異性体又は或る種のアミノ酸との交差反応性を調べた。その結果を、IC50値と交差反応率として表1に示す。
表1においてIC50値は、モノクローナル抗体DA−3とドウモイ酸との反応を50%阻害する化合物の濃度(単位=ng/ml)である。交差反応率とは、
{(ドウモイ酸のIC50値)/(対象化合物のIC50値)}×100
から算出した値(単位=%)である。
【0053】
表1より明らかなように、モノクローナル抗体DA−3は、ドウモイ酸との反応性を100%とすると、イソドウモイ酸Aと71.4%の交差反応性を示し、その他のドウモイ酸異性体(すなわち、イソドウモイ酸B、イソドウモイ酸E、イソドウモイ酸F、イソドウモイ酸G、及びイソドウモイ酸H)に対しては2%以下の交差反応率しか示さなかった。
前記モノクローナル抗体DA−3は、ドウモイ酸以外にもイソドウモイ酸Aと反応するものの、イソドウモイ酸Aは、非食用のハナヤナギという海藻にのみその存在が知られており、魚介類(特には貝類)からは検出されていない。従って、前記モノクローナル抗体を用いると、食中毒の原因として重要でないと考えられるドウモイ酸異性体の影響を実用上、受けることなく、魚介類(特には貝類)中のドウモイ酸のみを免疫学的に分析することができる。
【0054】
《表1》
化合物 IC 50 値 交差反応率
ドウモイ酸 0.5 100.0
イソドウモイ酸A 0.7 71.4
イソドウモイ酸B 38.4 1.3
イソドウモイ酸E 73.0 0.7
イソドウモイ酸F 36.0 1.4
イソドウモイ酸G 501.7 0.1
イソドウモイ酸H 629.8 0.1
カイニン酸 219.2 0.2
L−アスパラギン酸 >100000 −
L−グルタミン酸 >100000 −
【0055】
【発明の効果】
本発明のモノクローナル抗体によれば、高価な設備を必要とせず、食中毒の原因としては重要でないと考えられるドウモイ酸異性体の影響を実用上、受けることなく、毒性の高いドウモイ酸を、簡便かつ迅速に分析することのできる免疫学的分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各種結合体を用いて免疫したマウスから採血した抗血清の、ドウモイ酸に対する反応性を示すグラフである。
【図2】モノクローナル抗体DA−3のドウモイ酸に対する反応性を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 託番号FERM P−17441であるハイブリドーマから分泌されるモノクローナル抗体又はそのフラグメント。
  2. 受託番号FERM P−17441であるハイブリドーマ。
  3. 請求項1に記載のモノクローナル抗体又はそのフラグメントを用いることを特徴とする、ドウモイ酸の免疫学的分析方法。
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