JP5184112B2 - アルミニウム合金クラッド材 - Google Patents
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心材においてSiは0.25%以上、1.0%以下添加される。このSiは、心材の強度を向上させるために有効であり、特にMgと反応して、Mg2Si金属間化合物を析出させ、これにより心材の強度を向上させる。ここで、心材中のSi含有量が0.25%未満では心材の強度を充分に向上させることができず、一方、心材のSi含有量が1.0%を越えれば、心材の融点が低下するとともに、低融点相の増加に起因してろう付け性が低下する。そこで心材中のSi量は強度とろう付け性を両立させる観点から、0.25%以上、1.0%以下の範囲内とした。
心材において、Mnは0.6%以上、1.8%以下添加される。Mnは心材の耐食性および強度を向上させる元素であるが、Mn含有量が0.8%未満では、心材の強度を充分に向上させることができず、一方、Mn含有量が1.8%を越えれば、粗大金属間化合物が生成されるため、加工性および耐食性が低下する。そこで心材中のMn量は、強度、耐食性と加工性のバランスの観点から、0.8%以上、1.8%以下の範囲内に規定した。
心材においてCuは0.4%以上、0.8%以下添加される。Cuは心材の強度を向上させる元素であり、また皮材に対して心材の電位を相対的に上げる作用を示すため、犠牲防食効果による耐食性も向上させる。しかしながら、心材中のCu含有量が0.8%を越えれば、粒界腐食感受性が増大して、耐食性を低下させてしまい、また心材の融点が低下し、ろう付け性が低下してしまう。一方、心材のCu含有量が0.4%未満では、心材の強度を向上させる効果が充分に得られない。そこで心材中のCu量は、強度とろう付け性のバランスの観点から、0.4%以上、0.8%以下の範囲内とした。
心材においてZrは、0.01%以上、0.2%以下添加される。Zrは、心材の再結晶温度を上げて、加工組織を最終焼鈍後も残留させやすくし、それによりろう付け時のエロージョンを抑止する。但し、Zr含有量が0.2%を越えれば、鋳造時に巨大な金属化合物が晶出して、健全な材料の製造が困難となる。このように心材中のZr量は、心材の耐エロージョン性向上の観点から、0.01%以上、0.2%以下と規定した。
心材においてFe量は0.5%以下に規制される。Feは、材料製造時の最終仕上焼鈍において心材の再結晶を促進する元素である。この発明のクラッド材では、エロージョンの防止のために最終焼鈍後に心材の加工組織を残留させることが重要であるが、心材中のFe含有量が0.5%を越えれば、最終焼鈍後に充分な加工組織を残留させられず、耐エロージョン性が低下してしまう。そして心材中のFe量は、エロージョン防止の観点から、0.5%以下に規制することとした。
心材のアルミニウム合金においては、Mgを0.05%以上、0.4%以下添加しても良い。Mgは、心材に添加することで心材の強度を一層向上させる元素である。その一方では、心材にMgが含有されれば、Mgがフッ素系フラックスと反応してろう付け性を低下させるおそれがある。特にMg含有量が0.4%を越えれば、ノコロックろう付け法においてはろう付け性が著しく低下する。一方心材のMg含有量が0.05%未満では、心材の強度の向上への寄与が少ない。そこでMgを心材に添加する場合のMg量は、心材の強度向上とろう付け性のバランスから、0.05%以上、0.4%以下の範囲内とした。なお、より好ましいMg量は、0.1%以上、0.3%以下の範囲内である。
心材のアルミニウム合金においては、Tiを0.01%以上、0.2%以下添加しても良い。Tiは耐食性を向上させる元素であり、特に心材にTiが含有されていれば、心材中においてTiが層状に析出して、孔食が深さ方向に進行することを抑制する効果がある。またTiの添加は心材の電位を貴にする効果があり、さらにTiはアルミニウム合金中における拡散速度が小さいため、ろう付け時の拡散が少ない。そのためTiを含有させることにより、心材とろう材との間の電位差および心材と皮材との間の電位差を維持して、電気化学的に心材を防食することができる。但しTi含有量が0.2%を越えれば、粗大金属間化合物が生成されることに起因して、加工性および耐食性が低下してしまうおそれがある。またTi含有量が0.01%未満では、耐食性の向上に対し有意な効果が得られない。そこで心材にTiを添加する場合のTi量は、0.01%以上、0.2%以下とした。なお、より好ましいTi量範囲は、0.05%以上、0.18%以下である。
中間層において、Znは1%以上、4%以下添加される。Znは、心材と比して中間層の自然電位を相対的に下げる作用をもたらし、犠牲防食効果により材料の耐食性を向上させる。しかしながら4%を越えてZnが添加されれば、中間層の腐食の進行が早くなり過ぎ、材料の耐食性が低下してしまうおそれがある。一方中間層のZn量が1%未満では、Zn添加による耐食性向上の効果が充分に得られない。そこで中間層におけるZn量は、耐食性のバランスの観点から、1%以上、4%以下の範囲内と規定した。なおZnの添加量は、上記の範囲内でも特に1.5%以上、2.5%以下が好ましい。
中間層において、Mnは0.6%以上、1.8%以下添加される。Mnは中間層の耐食性、および強度を向上させる元素である。但しMn量が0.6%未満ではその効果が充分に得られない。一方Mn含有量が1.8%を越えれば、粗大金属間化合物が生成されるため、加工性および耐食性が低下する。そこで中間層にMnを添加する場合のMn量は、中間層の強度向上の観点から、0.6%以上、1.8%以下の範囲内とした。なおその範囲内でも特に0.7%以上、1.6%以下が好ましい。
中間層において、Zrは0.01%以上、0.2%以下添加される。Zrは、中間層の再結晶温度を上げて、加工組織を最終焼鈍後も残留しやすくし、ろう付け時のエロージョンを抑止する。但し、Zr含有量が0.2%を越えれば、鋳造時に巨大な金属化合物が晶出し、健全な材料の製造が困難となる。一方中間層のZr量が0.01%未満では、Zr添加によるエロージョン抑止効果が充分に得られない。そこで中間層におけるZr量は、中間層の耐エロージョン性向上の観点から0.01%以上、0.2%以下の範囲内とした。
中間層において、Fe量は0.5%以下に規制される。Feは、材料製造時の最終仕上焼鈍において中間層の再結晶を促進してしまう元素である。この発明では、エロージョンの防止のため、最終焼鈍後において心材と同様に中間層にも加工組織を残留させることが重要であるが、中間層のFe含有量が0.5%を越えれば、最終焼鈍後に充分な加工組織が残留させられず、耐エロージョン性が低下してしまう。そこで中間層のFe量は、エロージョン防止の観点から、0.5%以下に規制することとした。
中間層のアルミニウム合金においては、Siを0.01%以上、0.8%以下添加していても良い。Siは、中間層の強度をより向上させる元素であり、特に心材から拡散するMgもしくは中間層に添加したMgと反応して、Mg2Si金属間化合物を析出させ、これにより中間層の強度を向上させるために寄与する。但し、Si量が0.01%未満ではその効果が充分に得られない。一方、中間層のSi含有量が0.8%を越えれば、中間層の融点が低下し、ろう付け中に中間層のエロージョンが発生することに起因して、ろう付け後の犠牲防食作用による耐食性が低下してしまうおそれがある。そこで中間層にSiを添加する場合のSi量は、中間層の強度および耐食性の観点から、0.01%以上、0.8%以下とした。なお中間層のSi量は、特に0.4%以上、0.8%以下の範囲内が好ましい。
中間層のアルミニウム合金としては、Mgを0.01%以上、0.15%以下添加していても良い。Mgは、中間層に添加することにより中間層の強度を一層向上させる元素である。但し、Mg添加量が0.01%未満ではその効果が充分に得られない。一方、Mgが中間層に添加されれば、ノコロックろう付け法においてろう付け性が低下し、特に0.15%を越えてMgが添加されれば著しくろう付け性が低下するおそれがある。そこで中間層にMgを添加する場合のMg量は、強度とろう付け性のバランスの観点から、0.01%以上、0.15%以下の範囲内とした。
中間層のアルミニウム合金としては、Tiを0.01%以上、0.2%以下添加していても良い。Tiは材料の耐食性をより一層向上させる元素であり、その効果は0.01%以上のTi添加によって得られる。しかしながら、Ti含有量が0.2%を越えれば、粗大金属間化合物生成されることに起因して、加工性および耐食性が低下してしまうおそれがある。そこで中間層にTiを添加する場合のTi量は、0.01%以上、0.2%以下の範囲内とした。なお中間層のTi添加量は、特に0.05%以上、0.18%以下の範囲内が好ましい。
表1〜3に示すこの発明の規定組成の心材用合金A〜L、中間層用合金a〜n、およびろう材(イ)、(ロ)用の合金をそれぞれ金型鋳造し、心材用鋳塊は厚さ30mmに面削し、中間層用鋳塊は、面削後、熱間圧延して厚さ6.2mmの板とし、ろう材(イ)用鋳塊は、面削後、熱間圧延して厚さ2.1mmの板とし、ろう材(ロ)用鋳塊は、面削後、熱間圧延して厚さ3.1mmの板とした。前記ろう材(イ)用板、中間層用板、心材用鋳塊、ろう材(ロ)用板をこの順に重ね、460℃にて熱間圧延して、全厚み3.5mmの4層クラッド材とし、これを厚さ0.2mmに冷間圧延し、次いで280℃で2時間加熱する仕上げ焼鈍を施して、全厚み0.2mmのアルミニウム合金クラッド材を製造した。ろう材(イ)、中間層、心材、およびろう材(ロ)の組合わせは表4、表5中に示す通りとした。なお、表4、表5には、各合金クラッド材の中間層および心材の組織についても記載した。ここで、表4、表5中において、ファイバー組織のみであったものは「加工組織」、再結晶による組織が見られたものは「再結晶組織」と記載した。
表1のM〜R、表2のp〜sに示すこの発明の成分組成範囲外の心材用合金、中間層合金を表3に示すろう材(イ)、(ロ)用合金を、表5中に示すように組合せ、前述の実施例と同じ方法によりアルミニウム合金クラッド材を製造した。なお表5には、各合金クラッド材の中間層および心材の組織についても併せて記載した。
各アルミニウム合金クラッド材(ブレージングシート;ろう付け前)からJIS5号引張試験片を切出し、引張試験を行なって、ろう付け前の伸びを調べ、成形性評価とした。評価基準は、伸びが10%以下であるものを「×」、10%以上であるものを「○」、15%以上であるものを「◎」とした。
外部ろう付け性の評価を、フィン接合率、フィン融け、チューブエロージョンの各項目について、次のように行なった。
各アルミニウム合金クラッド材を、長さ80mm幅16mmに切出し、これに板厚70μmのA3003合金フィン材を図1のようにミニコアとして組み合わせた後、ノコロックろう付けを行った。ろう付けの際の加熱温度は600℃、加熱時間は3分間とし、フラックスはフッ化物系フラックスを使用した。ろう付け後のミニコアは、コルゲートフィン13が接していない側の全面をテープでマスキングして腐食試験片とした。
ろう付け前の伸び、ろう付け後の強度、フィン接合率、フィン融け、心材の溶融、腐食試験の各評価結果について、「◎」を3点、「○」を2点、「△」を0点、「×」を−15点とし、各評価の合計点数が12点以上のものを「◎」、9点以上のものを「○」、0点以上のものを「△」、0点未満のものを「×」とした。
13 コルゲートフィン材
Claims (5)
- Mnを0.6%(mass%、以下同じ)以上、1.8%以下、Siを0.25%以上、1.0%以下、Cuを0.4%以上、0.8%以下、Zrを0.01%以上、0.2%以下含有し、かつFe量が0.5%以下に規制され、残部がAlおよび不可避不純物よりなるアルミニウム合金が心材とされ、その心材の一方の面に、Znを1%以上、4%以下、Mnを0.6%以上、1.8%以下、Zrを0.01%以上、0.2%以下含有し、かつFe量が0.5%以下に規制され、残部がAlおよび不可避不純物よりなるアルミニウム合金が、中間層としてクラッドされ、その中間層における心材に接しない側の面に、Al−Si系合金からなるろう材がクラッドされ、さらに心材の他方の面にAl−Si系合金からなるろう材がクラッドされており、全板厚が0.3mm以下、0.15mm以上であって、しかも中間層の厚さが15μm以上、50μm未満であることを特徴とする、アルミニウム合金クラッド材。
- 請求項1に記載のアルミニウム合金クラッド材において、
前記心材のアルミニウム合金が、さらにMgを0.05%以上、0.4%以下含有することを特徴とする、アルミニウム合金クラッド材。 - 請求項1もしくは請求項2に記載のアルミニウム合金クラッド材において、
前記心材のアルミニウム合金が、さらにTiを0.01%以上、0.2%以下含有することを特徴とする、アルミニウム合金クラッド材。 - 請求項1〜請求項3のうちのいずれかの請求項に記載のアルミニウム合金クラッド材において、
前記中間層のアルミニウム合金が、さらにSi0.01%以上、0.8%以下、Mg0.01%以上、0.15%以下、Ti0.01%以上、0.2%以下からなる群から選択された少なくとも1種以上を含有することを特徴とする、アルミニウム合金クラッド材。 - 請求項1〜請求項4のうちのいずれかの請求項に記載のアルミニウム合金クラッド材において、
前記ろう材のいずれか一方もしくは双方のアルミニウム合金が、さらにNa0.1%以下を含有することを特徴とする、アルミニウム合金クラッド材。
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