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JP4993440B2 - ろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材 - Google Patents

ろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材 Download PDF

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Description

この発明は、不活性ガス雰囲気中でフッ化物フラックスやセシウム化合物を含むフラックスを用いたろう付けによってラジエータやヒータコアなどのアルミニウム製熱交換器を製造する場合、その構造部材であるチューブ材(クラッド材を曲成し、溶接またはろう付けによりチューブ形状としたものを含む)として好適なろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材に関する。
自動車のラジエータやヒータコアなどのチューブ材には、JIS A3003 などのAl−Mn 系合金を心材とし、一方の面にAl−Si 系合金のろう材をクラッドし、場合によっては他方の面にAl−Zn 系合金やAl−Zn−Mg系合金からなる犠牲陽極材をクラッドした厚さ0.3mm程度の3層クラッド材が用いられている。
Al−Si 系合金のろう材は、チューブとフィンとの接合、チューブとヘッダープレートとの接合のためのもので、ろう付けは、フッ化物フラックスやセシウム化合物を含むフラックスを用いて不活性ガス雰囲気ろう付け、あるいは真空ろう付けにより行われる。また、チューブ材内面の犠牲陽極材は、使用中に作動流体と接し、犠牲陽極効果を発揮して心材の孔食や隙間腐食を防止し、チューブ材外面の犠牲陽極材は、使用中に犠牲陽極効果を発揮して心材の孔食を防止する。
ラジエータやヒータコアの製造は、従来、心材の片面にろう材、他の片面に犠牲陽極材をクラッドしたクラッド板材を曲成し、溶接することにより偏平チューブとし、ヘッダープレートに組み付けた後、一体にろう付けする(溶接型)ことにより行われていたが、近年、図1〜2に示すように、心材3の片面にろう材4、他の片面に犠牲陽極材5をクラッドしたクラッド板材を曲げ加工するだけで溶接することなくチューブ形状1、2とし、ヘッダープレートに組み付けて一体ろう付けする(ろう付け型)ことにより製造される手法が行われるようになっている。
近年、自動車の軽量化の要請に伴い、自動車熱交換器においても省エネルギー、省資源の観点からチューブ材を含む構成材料の薄肉化が要請され、そのために材料の高強度化が求められており、チューブ材の強度を高めるために、心材に多量のMn、Cu、Siなどを添加するとともに、これらの元素の含有により心材の耐食性が低下するため、犠牲陽極材に多量のZnを含有させて心材との電位差を確保し、確実に犠牲陽極効果が得られるようにした材料構成が提案されている(特許文献1参照)。
また、犠牲陽極材に多量のMgを添加して、犠牲陽極材と心材の界面にMgSiを微細析出させたり、心材に微量のMgを添加して心材中にMgSiを微細析出させ、さらに強度を高めた材料構成のものも提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、犠牲陽極材にMgを添加する場合、前記溶接型のチューブ材に関しては有効であるが、図1〜2に示すろう付け型のチューブ材に関しては、犠牲陽極材とろうが直接接合される面があり、Mgがフラックスと反応してMgFなどの化合物を形成してフラックスの機能が損なわれ、ろう付け欠陥が生じる問題がある。心材にMgを添加する場合、心材からろう材へMgが拡散し、同様にMgがフラックスと反応してMgFなどの化合物を形成してフラックスの機能が損なわれ、ろう付け欠陥が生じる問題があるため、Mgの添加量は0.2%以下に限定されており、ろう付け型のチューブ材の場合には、Mg添加による高強度化には限界がある。
そのため、図1〜2に示すように、犠牲陽極材とろうが直接接合する面を有するろう付け型のチューブ材の高強度化に関しては、心材に多量のMn、Cu、Siなどを添加するとともに、犠牲陽極材にもMn、Fe、Siを添加する手法が提案されている(特許文献3参照)が、この場合、MnとFeは、犠牲陽極材面に表層拡散してきたろう材のSiと反応し、Al−Mn−Si系やAl−Fe−Si系の金属間化合物を多数形成するため、これらの元素の添加によって犠牲陽極材面のろうの濡れ広がり性が低下し、ろう付け欠陥が生じるという問題がある。
特開平11−293371号公報 特開平08−283891号公報 特開2003−293064号公報
発明者らは、ろう付け型ラジエーター用チューブ材について、上記従来のチューブ材よりさらに高強度を達成し、犠牲陽極材面のろうの濡れ広がり性を高めて向上したろう付け性を得るために、クラッド材の強度およびろう付け性と、クラッド材における心材と犠牲陽極材の組成とその組み合わせ、心材および犠牲陽極材の組織などとの関係について試験、検討を行った結果、つぎのことを見出した。
心材の強度を高めるためにはCu、Si、Mnの添加が有効であるが、Cu、Siを多量に添加すると、心材の融点が低下し、ろう付け加熱中に心材の一部が溶融するという問題がある。これは、ろう付け加熱中にろう材のSiが心材中に多量に拡散して、ろう材と心材の境界近傍の心材が局部溶融するためであり、従って、心材へのSiとCuの添加量は制限されなければならない。
犠牲陽極材については、チューブ材の強度を高めるために、Mn、Fe、Siなどの元素を含有させるのが有効であるが、前記のように、これらの元素の添加により犠牲陽極面のろうの濡れ性が低下して、ろう付け性が害される。犠牲陽極面の強度を高めることによりチューブ材の強度を向上させたとしても、熱交換器は使用中に犠牲陽極材が優先腐食して消失するため、犠牲陽極材そのものの強度向上は、熱交換器の使用中の強度耐久性向上に寄与せず、使用中に強度耐久性が急激に低下することとなる。
犠牲陽極材に、ろう付け性に影響しないSiを添加し、犠牲陽極材へのSiの添加量を心材のSi濃度以上とした場合、ろう付け加熱中にSiが犠牲陽極材から心材に拡散し、犠牲陽極材と心材との境界近傍の心材側でAl−Mn−Si化合物の微細析出が生じ、チューブ材の強度が向上し、この場合、犠牲陽極材が消失しても、心材側で強度が向上しているため、熱交換器の使用中の強度耐久性の低下は少なく、犠牲陽極材にMn、Fe、Siを合わせて添加した場合より強度耐久性が向上する。
但し、犠牲陽極材にSiを多量に添加した場合には、ろう材からの多量のSiの拡散によりろう材と心材の境界近傍の心材が溶融するように、犠牲陽極材と心材の境界近傍の心材が局部溶融するため、犠牲陽極材へのSiの添加量も限定されなければならない。なお、犠牲陽極材にMn、Fe、Siを合わせて添加した場合には、犠牲陽極材中のSiはAl−Mn−Si系やAl−Fe−Si系の化合物を形成するため、ろう付け加熱中に犠牲陽極材から心材へ拡散するSi量が少なく、心材の強度を高める効果はほとんどない。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その目的は、優れた強度耐久性とろう付け性をそなえ、熱交換器、とくに自動車用熱交換器のチューブ材として好適に使用することができる熱交換器用アルミニウム合金クラッド材を提供することにある。
上記目的を達成するための請求項1によるろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材は、少なくとも心材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドしてなるアルミニウム合金クラッド材であって、心材が、Si:0.7〜1.2%(質量%、以下同じ)、Cu:0.2%を超え1.0%以下、Mn:1.0〜1.8%、Ti:0.05〜0.35%を含有し、残部Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金で構成され、犠牲陽極材が、Si:1.0〜1.5%、Zn:1.0〜7.0%を含有し、残部Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金で構成され、犠牲陽極材のSi含有量が心材のSi含有量以上であることを特徴とする。
請求項2によるろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材は、請求項1において、前記心材の一方の面に犠牲陽極材がクラッドされ、他方の面にAl−Si系ろう材がクラッドされていることを特徴とする。
請求項3によるろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材は、請求項1において、前記心材の両面に犠牲陽極材がクラッドされていることを特徴とする。
請求項4によるろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記心材がさらに、Cr:0.02〜0.3 %、Zr:0.02〜0.3%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする。
請求項5によるろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記心材がさらに、V:0.01〜0.3%、B:0.01〜0.3%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする。
請求項6によるろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記犠牲陽極材がさらに、In:0.05%以下、Sn:0.05以下のうちの1種または2種を含有することを特徴とする。
請求項7によるろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材は、請求項1〜6のいずれかにおいて、400℃までの昇温速度を50℃/分とし、595℃までの到達時間を30分以内とする条件で加熱した場合において、犠牲陽極材表面の平均結晶粒度が0.13mm以下であることを特徴とする。
本発明によれば、優れた強度耐久性とろう付け性をそなえ、熱交換器、とくに自動車用熱交換器のチューブ材として好適に使用することができる熱交換器用アルミニウム合金クラッド材が提供される。
本発明に係るろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材における合金成分の意義およびそれらの限定理由について説明する。
(心材)
Si:Siは、固溶硬化とAl−Mn−Si系の化合物の微細析出硬化により、心材の強度を向上させる機能を有する。好ましい含有範囲は0.3〜1.2%であり、0.3%未満ではその効果が十分でなく、1.2%を超えて含有すると耐食性を低下させるとともに、心材の融点を下げ、ろう付け時に局部溶融が生じ易くなる。Siのさらに好ましい含有範囲は0.7〜1.2%である。
Cu:Cuは、心材の強度を向上させるとともに、心材の電位を貴にし、犠牲陽極材との電位差を大きくして、防食効果を向上させるよう機能する。さらに心材中のCuはろう付け加熱時に犠牲陽極材中に拡散して、なだらかな濃度勾配を形成させる結果、心材側の電位が貴となり、犠牲陽極材の表面側の電位が卑となって犠牲陽極材中になだらかな電位分布が形成され、腐食形態を全面腐食型にする。Cuの好ましい含有量は0.2〜1.0%の範囲であり、0.2%未満ではその効果が小さく、1.0%を超えると心材の融点が低下して、ろう付け時に局部的な溶融を生じ易くなる。Cuのさらに好ましい含有範囲は0.4〜0.7%である。
Mn:Mnは、心材の強度を向上させるとともに、心材の電位を貴にして犠牲陽極材との電位差を大きくして耐食性を高めるよう機能する。好ましい含有範囲は1.0%〜1.8%であり、1.0%未満ではその効果が小さく、1.8%を超えて含有すると、鋳造時に粗大な化合物が生成し、圧延加工性が害される結果健全な板材が得難い。Mnのさらに好ましい含有範囲は1.2〜1.7%である。
Ti:Tiは、心材の板厚方向に濃度の高い領域と低い領域とに分かれ、それらが交互に分布する層状となり、Ti濃度の低い領域が高い領域に比べ優先的に腐食することにより、腐食形態を層状にする効果を有し、それにより板厚方向への腐食の進行を妨げて材料の耐孔食性を向上させる。Tiの好ましい含有量は0.05〜0.35%の範囲であり、0.05%未満ではこの効果が少なく0.35%を超えると鋳造が困難となり、また加工性が劣化して健全な材料の製造が困難となる。Tiのさらに好ましい含有範囲は0.1〜0.2である。
CrとZr:CrとZrは、ろう付け加熱中の再結晶温度を高め、心材の結晶粒度を粗大化させ、ろう材中のSiの粒界拡散を抑制して、エロージョンを抑制し、その結果、ろう付け性を向上させるよう機能する。CrとZrの好ましい含有範囲はそれぞれ0.02〜0.3%であり、0.3%を超えて含有しても効果が飽和する。CrとZrのさらに好ましい含有範囲はそれぞれ0.05〜0.2%である。
VとB:VとBは、心材の結晶粒度を粗大化しろう付け加熱中のMgの粒界拡散を抑制する。好ましい含有範囲はそれぞれ0.01〜0.3%であり、0.3%を超えて含有しても効果が飽和する。
(犠牲陽極材)
Si:Siは、犠牲陽極材の強度を向上させる。さらに、ろう付け加熱中に心材に拡散し、心材中にAl−Si−Mn系化合物の微細析出が生成して心材の強度を向上させる。好ましい含有範囲は1.0〜1.5%の範囲であり、1.0%未満ではその効果が小さく、1.5%を超えて含有すると、ろう付け加熱中の心材への拡散量が多くなり、心材に局部溶融が生じ易くなる。Siのさらに好ましい含有範囲は1.1〜1.4%である。
Zn:Znは犠牲陽極材の電位を卑にし、心材に対する犠牲陽極効果を保持させる。その結果、心材の孔食やすき間腐食を防止する。Znの好ましい範囲は1.0〜7.0%であり、1.0%未満ではその効果が小さく、7.0%を超えて含有すると犠牲陽極材の自己腐食性が増大する。Znのさらに好ましい含有範囲は2.0〜5.0である。
In、Sn:InとSnは、微量の添加により犠牲陽極材の電位を卑にし、心材に対する犠牲陽極効果を確実にし、心材の孔食やすき間腐食を防止する。InとSnの好ましい範囲はそれぞれ0.05%以下(0%を含まず)であり、0.05%を超えて含有すると犠牲陽極材の自己腐食性が増大する。InとSnのさらに好ましい含有範囲はそれぞれ0.01〜0.03%である。
(ろう材)
Si:ろう材としてはAl−Si系合金が適用され、通常7〜13%のSiを含む合金が用いられる。含有量が7%未満では流動性が低下しろうとして有効に作用せず、13%を超えると健全な材料の製造が難しくなる。心材にMgを含む材料のろう付けをより確実にするためには、Siの含有範囲を9.5〜12.0%とするのが好ましい。Siが9.5%未満ではろう材量が不足する場合があり、12.0%を超えるとろう材中にSiの粗大な晶出物が生じて、ろうの溶融が不均一になり、ろう付け欠陥が生じ易くなる。
なお、ろう材中には、Fe:0.15〜2.0%、Zn:0.5〜5.0%、In:0.05%以下、Sn:0.05%以下、Cu:0.5〜5.0%、Sr:0.005〜0.1%、Na:1〜100ppm、Sb:0.001〜0.5%の範囲で含有されていても本発明の効果が損なわれることはない。
本発明によるアルミニウム合金クラッド材は、上記の組成を有し、400℃までの昇温速度を50℃/分とし、595℃までの到達時間を30分以内とする条件で加熱した場合において、犠牲陽極材の表面の結晶粒度が0.13mm以下(130μm以下)であることを特徴とする。上記の加熱条件、すなわち、ろう付け加熱において、犠牲陽極材の表面の結晶粒径が0.13mm以下の性状をそなえることによって、犠牲陽極材面のろうの濡れ広がり性が高められ、向上したろう付け性が得られる。
犠牲陽極材表面へろうが濡れ広がる場合、結晶粒界が優先的にろうの濡れ広がる経路になり、その後、ろうは結晶粒界から粒内方向へ濡れ広がる。従って、結晶粒度が小さい場合、濡れ広がる経路が多くなり、ろうは均一に濡れ広がる。一方、結晶粒度が大きい場合、濡れ広がる経路が少なく、ろうの濡れ広がりは不均一になり、濡れ性が低下する。ろうの犠牲陽極材表面の濡れ性が良好である犠牲陽極材の結晶粒度は、犠牲陽極材の表面からみて0.13mm以下の範囲であり、0.13mmを超えると濡れ広がり性は低下する。
本発明によるアルミニウム合金クラッド材は、連続鋳造により心材用合金、犠牲陽極材用合金およびろう材用合金を造塊し、例えば、得られた鋳塊のうち、心材用合金と犠牲陽極材用合金については均質化処理を行い、犠牲陽極材用合金およびろう材用合金を熱間圧延して所定の厚さとし、これらと心材用合金の鋳塊とを組み合わせて熱間圧延してクラッド材とする。
その後、クラッド材を冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延して所定厚さのアルミニウム合金クラッド材とする。この場合、中間焼鈍後の冷間圧延の加工度は、ろう付け加熱後の犠牲陽極材の平均結晶粒度を0.13mm以下に微細化するために、20%以上にするのが望ましい。
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明し、その効果を実証する。これらの実施例は本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例
連続鋳造により表1に示す組成を有する心材用合金、表2に示す組成を有する犠牲陽極材用合金、および表3に示す組成を有するろう材用合金を造塊し、得られた鋳塊のうち、心材用合金と犠牲陽極材用合金については均質化処理を行い、犠牲陽極材用合金およびろう材用合金を熱間圧延して所定の厚さとし、これらと心材用合金の鋳塊とを組み合わせて熱間圧延してクラッド材を得た。
ついで、クラッド材を冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延して厚さ0.20mmのアルミニウム合金クラッド材(H14)とした。クラッドの構成は、犠牲陽極材を0.040mm、ろう材を0.030mm、残りを心材とした。中間焼鈍温度は350℃、保持時間は3時間とした。中間焼鈍後の冷間圧延の加工度は30%とした。
Figure 0004993440
Figure 0004993440
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得られたアルミニウム合金クラッド材を試験材として、以下の方法によって、ろう付け加熱後の局部溶融の有無を観察し、ろう付け加熱後の犠牲陽極材表面の平均結晶粒度を測定し、犠牲陽極材表面のろうの濡れ広がり性を評価した。また、ろう付け加熱後の強度特性(引張強さ)を評価した。結果を表4〜5に示す。
局部溶融の有無の観察:クラッド材のろう材面だけにフッ化物フラックスを塗布し、窒素ガス中、595℃(材料温度)で3分間加熱した。昇温は50℃/分、595℃(材料温度)までの到達時間を30分以内とする条件で加熱した。加熱後の試験材について、常法に従って樹脂埋め研磨し、圧延方向に対し直角方向の断面をケラー氏液でエッチングした後、光学顕微鏡を用いて400倍で局部溶融の有(○)無(×)を観察した。
犠牲陽極材の平均結晶粒度測定:クラッド板材のろう材面だけにフッ化物フラックスを塗布し、窒素ガス中、595℃(材料温度)で3分間加熱した。昇温は50℃/分、595(材料温度)までの到達時間を30分以内とする加熱条件で行い、加熱後の試験材について、犠牲陽極材面(L−LT方向)をエメリー紙(1000〜2400)で数μm研磨して、バフ研磨で鏡面に仕上げた。さらに、純水500ml、フッ酸27ml(46%)、ホウ酸11gを混合した溶液中で、電圧25〜30Vで45〜60秒電解した。その後、光学顕微鏡を用いて犠牲陽極材表面の偏光ミクロ組織を撮影し、比較法により結晶粒度を測定した。比較にはASTM(E112−61)の標準結晶粒度組織図を用い、標準結晶粒度組織図に示されているグレインサイズを平均結晶粒度の指標とした。
犠牲陽極材表面のろうの濡れ広がり性の評価:得られたアルミニウム合金クラッド材を用いて、20mm×60mmの板を切り出し、シェーパ加工により端面(4面全て)を切削して15mm×55mmのサイズに仕上げた。この板をフラックスを塗布することなく、犠牲陽極材面を上にして炉内に水平に設置し、窒素ガス中、595℃(材料温度)で3分間加熱した。加熱後の犠牲陽極材面を光学顕微鏡を用いて16倍で撮影した写真(ネガポジ反転撮影)(図3)上からろう周り長さの平均値L(例えば、図3においては、L=(L1+L2)/2)を測定した。ろうの濡れ広がり性の評価は、ろう周り長さの平均値Lが1.5mm以上を良好(○)、1.5mm未満を不良(×)と評価した。
強度特性(引張強さ)の評価:得られたアルミニウム合金クラッド材のろう材面だけにフッ化物系フラックスを3g/m塗布した後、窒素ガス中、595℃(材料温度)で3分間加熱し、その後、引張試験(JIS Z2241に準拠)を行った。
Figure 0004993440
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表4〜5にみられるように、本発明に従う試験材No.1〜13、No.15〜24、No.26〜39はいずれも、ろう付け加熱時の局部溶融は観察されず、犠牲陽極材面のろうの濡れ広がり性に優れ、ろう付け加熱後十分な強度を有していることが認められた。
比較例1
連続鋳造により表6に示す組成を有する心材用合金、表7に示す組成を有する犠牲陽極材用合金を造塊した後、均質化処理を行い、犠牲陽極材用合金を熱間圧延して所定の厚さとし、前記心材用合金の鋳塊と実施例1で造塊後所定厚さまで熱間圧延した犠牲陽極用合金B1、前記犠牲陽極用合金と実施例1で造塊した心材用合金A1の鋳塊とを組み合わせ、さらに実施例1で造塊後所定厚さまで熱間圧延したろう材用合金C1を組み合わせて熱間圧延しクラッド材を得た。また、実施例1で造塊した心材用合金A1の鋳塊と実施例1で造塊後所定厚さまで熱間圧延した犠牲陽極用合金B1と実施例1で造塊後所定厚さまで熱間圧延したろう材用合金C1とを組み合わせて熱間圧延してクラッド材を得た。
ついで、クラッド材を冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延して厚さ0.20mmのアルミニウム合金クラッド材(H14)(試験材No.101〜105)とした。クラッドの構成は、犠牲陽極材を0.040mm、ろう材を0.030mm、残りを心材とした。中間焼鈍温度は350℃、保持時間は3時間とした。中間焼鈍後の冷間圧延の加工度は30%とした。なお、試験材No.105については、中間焼鈍後の冷間圧延の加工度を15%とした。
Figure 0004993440
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得られたアルミニウム合金クラッド材を試験材として、実施例1と同じ方法によって、ろう付け加熱後の局部溶融の有無を観察し、ろう付け加熱後の犠牲陽極材表面の平均結晶粒度を測定し、犠牲陽極材表面のろうの濡れ広がり性を評価した。また、ろう付け加熱後の強度特性(引張強さ)を評価した。結果を表8に示す。
Figure 0004993440
表8に示すように、試験材No.101および102は、それぞれ心材のCu量および心材のSi量が多いため、心材とろう材との境界に局部溶融と激しいエロージョンが生じた。試験材No.103は犠牲陽極材のSi量が多いため、犠牲陽極材と心材との境界近傍に局部溶融が発生した。試験材No.104は犠牲陽極材のSi量が少ないため、十分な強度が得られなかった。試験材No.105は、鋳塊焼鈍後の加工度が低いため、ろう付け加熱後の犠牲陽極材表面の平均結晶粒径が粗大化して犠牲陽極材表面のろうの濡れ広がり性が低下した。
ろう付け型のチューブ形状の実施例を示す断面図である。 ろう付け型のチューブ形状の他の実施例を示す断面図である。 犠牲陽極材面のろうの濡れ広がり性評価におけるろう周り長さを示す図である。
符号の説明
1 チューブ形状
2 チューブ形状
3 心材
4 ろう材
5 犠牲陽極材

Claims (7)

  1. 少なくとも心材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドしてなるアルミニウム合金クラッド材であって、心材が、Si:0.7〜1.2%(質量%、以下同じ)、Cu:0.2%を超え1.0%以下、Mn:1.0〜1.8%、Ti:0.05〜0.35%を含有し、残部Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金で構成され、犠牲陽極材が、Si:1.0〜1.5%、Zn:1.0〜7.0%を含有し、残部Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金で構成され、犠牲陽極材のSi含有量が心材のSi含有量以上であることを特徴とするろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材。
  2. 前記心材の一方の面に犠牲陽極材がクラッドされ、他方の面にAl−Si系ろう材がクラッドされていることを特徴とする請求項1記載のろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材。
  3. 前記心材の両面に犠牲陽極材がクラッドされていることを特徴とする請求項1記載のろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材。
  4. 前記心材がさらに、Cr:0.02〜0.3 %、Zr:0.02〜0.3%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材。
  5. 前記心材がさらに、V:0.01〜0.3%、B:0.01〜0.3%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材。
  6. 前記犠牲陽極材がさらに、In:0.05%以下、Sn:0.05以下のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材。
  7. 400℃までの昇温速度を50℃/分とし、595℃までの到達時間を30分以内とする条件で加熱した場合において、犠牲陽極材表面の平均結晶粒度が0.13mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のろう付け性に優れた熱交換器用高強度アルミニウム合金クラッド材。
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