本発明は血液,尿等の生体成分の定性・定量分析を自動で行う自動分析装置に係り、特により多くの試薬を搭載でき、かつ時間あたりの処理能力の高い自動分析装置に関する。
自動分析の分野では、複数の反応ラインをランダムに使用するランダムアクセス方式の自動分析装置が開発され、分析の処理能力が飛躍的に向上した。それにともない試薬消費のスピードも速くなり、試薬の切り替え作業の機会が増えてきた。試薬容器は試薬ディスクと呼ばれる回転する円板上に複数個載置し、該試薬ディスクを回転させることにより目的の試薬容器から目的の試薬を試薬分注プローブを用いて分取する方式が一般的である。この場合、多く使われる試薬種の試薬容器を複数個試薬ディスク上にセットし、一方の試薬容器中の試薬が不足した時に他の試薬容器から試薬を分取することができるようにして、試薬不足による分析の中段を防止した自動分析装置が特許文献1に記載されている。また、試薬の交換に当たって、試薬の使用開始後の有効期間を示す情報を設定し、試薬が使用開始されてからの経過時間が、該有効期間を超過した場合には、警告を発する自動分析装置が特許文献2に記載されている。
実用新案登録公報第2503751号
特開2000−310643号公報
従来の技術では、分析前の試薬のセット,残量のチェック,試薬がバーコード管理されていない場合は試薬の登録等様々な作業をオペレータがしなければならない。また、試薬バーコード管理により試薬保管庫内に試薬をセットすれば、後は装置が試薬を管理してくれるシステムを使用したとしても、分析中に試薬切れを起こした場合、オペレータは分析を中断し、新しい試薬ボトルを用意し試薬保管庫にセット、必要があれば試薬登録の作業をしなければならない。更に搭載可能な試薬量を増やす為に複数の試薬保管庫を有する装置や試薬保管庫内の試薬の配置によって分析処理能力が変わるようなシステムの場合、オペレータは試薬の配置についても管理しなければならないという問題がある。
本発明の目的は、試薬登録,試薬交換等の作業によるオペレータの負担を軽減するとともに、分析中の試薬不足を発生させず、分析中断を最小化する自動分析装置を提供することにある。
上記目的を達成する為の本発明の構成は以下の通りである。
複数の試薬容器を保管可能な第1の試薬容器保管部と、該第1の試薬容器保管部に保管された試薬容器から試薬を分取する試薬分取機構と、複数の試薬容器を保管可能な第2の試薬容器保管部と、前記第2の試薬容器保管部に保管されている試薬容器の中から選択された試薬容器を前記第1の試薬容器保管部に移送可能な試薬容器移送機構と、を備えた自動分析装置であって、予め定められた優先順位に基づいて、前記試薬容器移送機構が前記第2の試薬容器保管部から前記第1の試薬容器保管部へと試薬容器を移送する機構を備えた自動分析装置。
前記予め定められた試薬移動優先順位は予め記憶させた分析開始に必要な試薬量と前記試薬保管手段にある試薬残数との差が順に決定されても良い。
また、優先順位はオペレータによって登録させる機能を備えても良い。この場合、登録画面を表示できる表示装置があることが好ましい。
以上に示したように、本発明においては分析用試薬保管手段の他に、補充用の試薬保管手段と、試薬ボトル搬送手段をもつことにより、試薬管理によるオペレータの負担を軽減するとともに、試薬登録,交換による分析中断を最小にし、多くの試薬を搭載し、時間あたりの処理能力の高い自動分析装置を提供することが可能である。
実施例の分析装置の上面図。
実施例の試薬投入優先度。
実施例の試薬投入フロー図。
試薬残量の計算例を示す図。
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1実施例の上面図である。筐体62上の反応ディスク36には反応容器35が円周上に並んでいる。反応ディスク36の内側に試薬ディスク42が、外側に試薬ディスク41が配置されている。試薬ディスク41,42にはそれぞれ複数の試薬容器40が円周上に載置可能である。1つの試薬容器40には2つの試薬が入る。反応ディスク36の近くにサンプル容器10を載せたラック11を移動する搬送機構12が設置されている。試薬ディスク41と試薬ディスク42の上にレール25,26が配置され、レール25にはレールと平行な方向および上下方向に移動可能な試薬プローブ20,21が、レール26にはレールと3軸方向に移動可能な試薬プローブ22,23が設置されている。試薬プローブ20,21,22,23はそれぞれ図には明示されていない試薬用ポンプと接続している。反応容器35と搬送機構12の間には、回転及び上下動可能なサンプルプローブ15,16が設置されている。サンプルプローブ15,16はそれぞれ図には明示されていないサンプル用ポンプに接続している。36の周囲には、攪拌装置30,31,光源50,検出光学装置51,容器洗浄機構45が配置されている。容器洗浄機構45は図には明示されていない洗浄用ポンプに接続している。サンプルプローブ15,16,試薬プローブ20,21,22,23,攪拌装置30,31のそれぞれの動作範囲に洗浄ポート54が設置されている。試薬ディスク41の上に補充用試薬保管庫71が設置されている。補充用試薬保管庫71には、複数個の試薬容器40が搭載可能である。補充用試薬保管庫71の上にレール72が配置され、レール72にはレール72と3軸方向に移動可能な試薬保持機構73と試薬キャップ開栓機構74が設置されている。補充用試薬保管庫71の手前には試薬容器40架設口75が設置されている。試薬容器40架設口75の近傍には、試薬バーコードを読み取るためにバーコードリーダ76が設置されている。補充用試薬保管庫71近傍には試薬キャップ及び使用済試薬容器40を廃棄するための廃棄口77が設置されている。図には明示されていないサンプル用ポンプ,試薬用ポンプ,洗浄用ポンプ,検出光学装置51,反応容器35,試薬ディスク41,試薬プローブ20,21,22,23,サンプルプローブ15,16,試薬保持機構73,試薬キャップ開栓機構74,試薬容器架設口75はそれぞれコントローラ60に接続している。
この装置を用いての分析手順を説明する。
分析に入る前にまず装置のメンテナンスを実施する。メンテナンスには、検出光学装置51の点検,反応容器35の洗浄,サンプルプローブ15,16等各種プローブの洗浄等の他に最も重要なのは、試薬ディスク41,42に搭載されている試薬容器40内の試薬の点検である。試薬容器40の情報は試薬ディスク41,42内の試薬の搭載位置,ロット,使用期限,試薬残量等が図には明示されていない制御コンピュータ内に記憶されている。オペレータは図には明記されていないCRT等により試薬ディスク41,42内の試薬容器40の状態を点検する。試薬残量がわずかで、1日の分析中に無くなる恐れのある試薬は、試薬容器40架設口75にセットする。セットされた試薬は、バーコードリーダ76にて試薬情報が読み取られ、試薬保持機構73にて補充用試薬保管庫71に搬送される。読み取られた試薬情報と補充用試薬保管庫71に搭載された搭載位置は図には明示されていない制御コンピュータに出力される。
続いて補充用試薬保管庫71から試薬ディスク41,42に試薬を搬送する方法を図2および図3に示す。補充用試薬保管庫71には複数の試薬を搭載することが可能である。当該装置は予め装置に記憶された分析開始に必要な試薬および試薬量を、予め分析開始に必須な試薬および試薬量を図には明示されていない制御コンピュータに記憶させておく。記憶させる手段はオペレータが、明示されていない制御コンピュータから入力しても構わないし、外部記憶媒体によって記憶させても良い。また、装置の使用頻度に応じて装置の判断で記憶された試薬及び試薬量を自動的に変更することも出来る。当該装置は予め装置に記憶された試薬および試薬量に対して、例えば、図2に示した優先順位に従って試薬を投入する。図4に分析開始に必須な試薬の優先順位の計算に関する一例を示す。図4において最初にオペレータが投入を指示する(109)。装置は、予め記憶させておいた分析開始に必要な試薬量と試薬ディスク41,42にある試薬量の差分を計算する(110,111)。図3に投入のフロー図を示す。当該装置は、試薬の投入を指示された後に補充用試薬保管庫71内の試薬について投入する試薬の優先順位を算出する(102)。続いて、試薬ディスク41,42内の空きポジションの有無を確認する(103)。空きポジションが無い場合には当該試薬は補充用試薬保管庫71内に108の条件が発生するまで留まる(107)。一方、103の条件により試薬ディスク41,42内の試薬配置ポジションに空きがあった場合には当該装置は、試薬保持機構73により試薬を補充用試薬保管庫71から試薬ディスク41もしくは42に搬送する(104)。搬送終了後にも補充用試薬保管庫71内に更に試薬ディスクに搬送すべき試薬があった場合(105)には103以降のフローを繰り返し実行する。補充用試薬保管庫71内に試薬が無い場合には、動作を終了する(106)。
サンプル容器10には血液等の検査対象の試料が入れられ、ラック11に載せられて搬送機構12によって運ばれる。サンプルプローブ15によって採取された試料は、一定量反応ディスク36に並べられている反応容器35に分注され、一定量の試薬が試薬ディスク41又は42に設置された試薬容器40から試薬プローブ21又は22から分注され、攪拌装置30,31にて攪拌し、一定時間反応した後検出光学装置51により測定され、測定結果として、図には明示されていない制御コンピュータに出力される。測定項目がさらに依頼されている場合は上記のサンプリングを繰り返す。同様にラック11上にある全ての試料について、設定されている測定項目のサンプリングが終了するまで繰り返される。
10…サンプル容器、11…ラック、12…搬送機構、14…サンプル用ポンプ、15,16…サンプルプローブ、20,21,22,23…試薬プローブ、24…試薬用ポンプ、25,26,72…レール、30,31…攪拌装置、35…反応容器、36…反応ディスク、40…試薬容器、41,42…試薬ディスク、45…容器洗浄機構、46…洗浄用ポンプ、50…光源、51…検出光学装置、54…洗浄ポート、60…コントローラ、62…筐体、71…補充用試薬保管庫、73…試薬保持機構、74…試薬キャップ開栓機構、75…試薬容器架設口、76…バーコードリーダ、77…廃棄口、78…試薬搭載口。