JP5171098B2 - 石英ガラス製品の製造方法、それに用いるシリカ顆粒とその生成方法 - Google Patents
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Description
この場合、高温で溶融した材料を加工するので、約1250℃のガラスに接触する成形金型の損耗は著しいだけでなく、ガラス中に含まれる成分材料が蒸発して金型表面へ付着することもあり、そのため転写性が悪くなり加工精度が著しく劣るものが混在するという問題があった。
また、加工温度が約2000℃と著しく高温であるため、エネルギーの消費量が多く、ひいては地球温暖化ガスであるCO2の大量発生につながるという懸念がある。
また、従来のシリカ顆粒を用いて厚さが4〜6mm程度の凹面反射鏡を製造する際に、石英ガラスを緻密化させ透光性を得るためには焼結時間を長くする必要があり、その結果、反射鏡の表面にクリストバライト結晶相ができてランプの点灯消灯の繰り返しによる熱応力で反射鏡にクラックが発生するものがあった。
このとき、シリカナノビーズは、シリカマイクロビーズを加圧充填したときにその隙間に入る粒径及び量に選定されているので、焼結用成形体を乾式プレス成形によりシリカマイクロビーズが互いに接する程度に最密充填されたときでも、シリカナノビーズはその隙間を埋めるように充填されることとなり、シリカマイクロビーズの最密充填を阻害することがない。
しかも、シリカナノビーズはその非表面積(BET値)が30〜500m2/gに選定されているので、吸着性に優れ、周囲のシリカマイクロビーズ同士を吸着される役割も果たす。
したがって、シリカマイクロビーズ間に液相が生成し拡散を高め、次いで毛細管力によりシリカマイクロビーズを引き寄せて粒子間の中心距離を接近させるので全体として融点が降下して低温・短時間で焼結が起こる。
しかも、シリカマイクロビーズ間の隙間に、シリカナノビーズによる液相が形成されて焼結されるので、焼結時に型崩れが起きたり、内部気泡が生じたりすることもなく、極めて緻密で、透明度の高い石英ガラス製品が得られる。
図1は本発明に係るシリカ顆粒を示す拡大模式図、図2はその製造方法を示す説明図、図3は石英ガラス製品の製造方法を示す説明図、図4はシリカマイクロビーズの熱変化を示す模式図である。
本例に係るシリカ顆粒1は、図1に示すように、体積平均粒径0.1〜2.0μmのシリカマイクロビーズ2Mと、これを加圧充填したときにその隙間に入る粒径及び量に選定された比表面積(BET値)30〜500m2/gのシリカナノビーズ2Nが有機系バインダ3を介して凝集されて顆粒状に形成されている。
このシリカ顆粒1は、有機系バインダ3の水溶液中に、シリカマイクロビーズ2M…とシリカナノビーズ2N…を均一分散させて混合スラリとし、該混合スラリを噴霧乾燥することにより有機系バインダ3を介してシリカマイクロビーズ2M…及びシリカナノビーズ2N…を凝集させて成る。
具体的には、図2に示すように、VCM法により生成されたシリカ微粒子を分級して、シリカマイクロビーズ2Mとシリカナノビーズ2Nを生成し、これらを有機系バインダ3の水溶液に入れて混合スラリ化し、これを噴霧乾燥して生成される。
本例では、金属粉末として、金属シリコン粉末を用いている。
そして、このように生成されたシリカ微粒子を精密分級器により分級して、体積平均粒径0.1〜2.0μm(100〜2000nm)のシリカマイクロビーズ2Mと、これを加圧充填したときにその隙間に入る粒径及び量に選定された比表面積(BET値)30〜500m2/gのシリカナノビーズ2Nを生成する。
一般に、比表面積(BET値)SAと粒径dには、以下の関係がある。
SA=2730/d
SA:比表面積(m2/g)
d :シリカ一次粒子径(nm)
したがって、この式によれば、シリカナノビーズ2Nの粒径は、概ね5〜90nm程度ということになる。
実際には、シリカマイクロビーズ2M及びシリカナノビーズ2Nの粒径は精密分級しても一定にはなり得ず、体積平均粒径にピークのあるガウシアン分布を呈するため、体積平均粒径Dのシリカマイクロビーズ2Mに対し、比表面積(BET値)30〜500m2/g、体積平均粒径d≦0.15Dのシリカナノビーズ2Nを用いている。
なお、シリカマイクロビーズ2Mは、真球度が優れていることから、VCM法により製造されたアドマファイン(アドマテックス社の商品名)SO−E2又はSO−C2を用いた。
体積平均粒径が比較的小さければ、より高密度に充填できるため、多量に添加可能であるが、体積平均粒径が比較的大きい場合に、多量に添加すると、シリカマイクロビーズ2Mの隙間にシリカマイクロビーズ2Nが入りきらないため、シリカマイクロビーズ2Mが最密充填できなくなる。
この隙間に、シリカナノビーズ2Nが一つずつ充填されると考えると、シリカナノビーズ2Nの個数は隙間の数kに等しく、ひいては、シリカマイクロビーズ2Mの数に等しくなる。
W=ρπD3/6
となり、同様に、シリカマイクロビーズ2Nの一個あたりの重量wは、
w=ρπd3/6
となる。
ここで、シリカナノビーズ2Nの直径d=0.15Dのとき、その重量比w/Wの最適値は、
w/W=d3/D3=0.003=0.3重量%
となり、また、d<0.15Dの場合は、シリカマイクロビーズ2Mに対するシリカナノビーズ2Nの個数比が1:1より大きくなるので、重量比の最適値もこれより大きい。
また、シリカマイクロビーズ2M及びシリカナノビーズ2Nの重量比が最適値よりも小さくても、シリカマイクロビーズ2Mのみを用いる場合よりは、その隙間が少なくなるので十分に効果は期待できる。
本例では、シリカマイクロビーズ2Mに対しシリカナノビーズ2Nを0.1〜10重量%の比率で混合したものを用いた。
この場合、シリカビーズ2M、2Nを大気中に放置すると、凝集粒子を作りやすいので、所定量のシリカビーズ2M、2Nを予め個別に水に分散させてスラリ化させておく。
有機系バインダ3は、混合するシリカビーズ2M及び2Nの総重量に対して約1.5〜3.0重量%となるように混合され、本例では、ファインセラミックの成形助剤となるパラフィン系バインダを0.6重量%(融点=55℃)及びステアリン酸系バインダを0.2重量%(融点=100℃)、ポリエーテルを0.4重量%(熱分解温度=250〜300℃)、アクリル樹脂を1.3重量%(熱分解温度=350〜400℃)とし、その総量をシリカビーズ2M及び2Nの約2.5重量%となるように添加した。
このように得られた混合スラリに含まれるシリカビーズ2M及び2Nの粒径分布は、シリカマイクロビーズ2Mの体積平均粒径と、シリカナノビーズ2Nの体積平均粒径の二箇所の粒径にピークを有する。
図1はこのように製造したシリカ顆粒1の模式図であって、シリカマイクロビーズ2…が有機系バインダ3を介して凝集している様子がわかる。
図3はこのように生成したシリカ顆粒1を用いて、透明石英ガラス製品(ガラス焼結品)を製造する方法を示す説明図である。
まず、シリカ顆粒1を胴型11を構成するダイ12,固定パンチ13,インナーパンチ14に擦切り充填し(図3(a))、上パンチ15を降下させ、その挿通孔15aに胴型11の中心にあるコアロッド16を挿入させながら多軸プレス機を用いて、上パンチ15とインナーパンチ14を圧力制御して、反射鏡成形体Fのどの部位に対しても0.5〜1.0t/cm2以上となるように加圧して焼結用成形体Fを成形する(図3(b))。
その後、上パンチ15を引き上げて、ダイ12を下降させながらインナーパンチ14を上昇させ、金型から焼結用成形体Fを抜き出す(図3(c))。
この場合に、400℃以上の所定温度に維持することにより有機系バインダを除去する予備加熱を行った後、さらに昇温を行い、1000℃を超え焼結温度TMAXに至るまでの昇温速度を90〜130℃/hrとし、焼結温度で所定時間維持した後、冷却過程において少なくとも焼結温度から1000℃までを−500〜−600℃/hrの降温速度で急冷する。
そして、焼成炉18の炉内温度が徐々に上昇していき400℃程度に達するまでに、図4(b)に示すように、成形体の表面側から有機系バインダ3が熱分解が開始され、熱分解された有機系バインダ3はガス化されて外部に排出される。その部分は空洞4となるため外層側から多孔質化されていき、その空洞4の部分は内部に酸素を供給する流路になると同時に、その酸素により成形体Fの内側にある有機系バインダ3が熱分解されたときに発生する分解ガスの流路となって、順次、内側の有機系バインダ3が熱分解されていく。
次いで、焼成炉が500℃程度に達すると、図4(c)に示すように、成形体Fの外層側から粒子間が接近し、昇温時間の経過と共に、外部空間と連通していた個々の空洞4が独立して外部空間から鎖されていく。
さらに温度が上昇され、1100℃程度に達すると、シリカマイクロビーズ2M、シリカナノビーズ2Nで表面拡散が生じ、図4(d)に示すように、シリカマイクロビーズ2M…、シリカナノビーズ2N…同士が付着する。さらに1200℃を超えると体積拡散と粘性流動により焼結が進行するが、図4(e)に示すように、シリカナノビーズ2Nが先に粘性流動を起こし焼結を加速する。
そして、最終的には図4(f)に示すように気泡がなく、透明で吸湿性のない緻密な非晶質の石英ガラスとなる。
したがって、これらの炭素やナトリウム成分が残存してクリストバライト化することもなく、非晶質の透明石英ガラス製品を製造することができた。
この反射鏡基体Mの表面を数千倍の顕微鏡で観察したが、どこを観察しても粗面となる部分が見当たらず、凹凸がなく極めて緻密で良好な透明石英ガラス製品を製造することができた。
次いで、その内面に多層反射膜を形成して反射鏡を形成し、定格150Wの高圧水銀蒸気放電ランプと組み合わせた光源ユニットを作成したところ、熟練者が作成した同じ形状寸法の試作反射鏡と組み合わせた光源ユニットに比して同等の明るさが得られた。
反射鏡の内面形状を三次元計測機を用いて調査したところ、設計値からのズレが10μm以下に抑えられており、優れた反射特性が得られた。
さらに、その反射鏡の強度は、ランプに封入した水銀蒸気圧が、安定点当時には凡そ20MPaにもなると言われる超高圧水銀放電ランプの、万が一の破裂時の衝撃に充分耐え得ることから、実用化レベルの最密な反射面を作ることができた。
2M シリカマイクロビーズ
2N シリカナノビーズ
3 有機系バインダ
Claims (7)
- シリカ顆粒を成形用金型に充填して乾式プレス成形することにより得られた焼結用成形体を加熱焼結する石英ガラス製品の製造方法であって、
体積平均粒径0.1〜2.0μmのシリカマイクロビーズに対し、これを加圧充填したときにその隙間に入る粒径及び量に選定された比表面積(BET値)30〜500m2/gのシリカナノビーズを混合したものを有機系バインダの水溶液に均一分散させて混合スラリとし、該混合スラリを噴霧乾燥することにより前記有機系バインダを介してシリカマイクロビーズ及びシリカナノビーズを凝集させてなる顆粒を前記シリカ顆粒として用いることを特徴とする石英ガラス製品の製造方法。 - 前記シリカ顆粒は、シリカマイクロビーズに対しシリカナノビーズが0.1〜10重量%の比率で混合されてなる請求項1記載の石英ガラス製品の製造方法。
- 前記石英ガラス製品が凹面反射鏡基体である請求項1又は2記載の石英ガラス製品の製造方法。
- 成形用金型に充填して乾式プレス成形することにより得られた焼結用成形体を焼結して石英ガラス製品を製造する際に使用するシリカ顆粒であって、
体積平均粒径0.1〜2.0μmのシリカマイクロビーズと、これを加圧充填したときにその隙間に入る粒径及び量に選定された比表面積(BET値)30〜500m2/gのシリカナノビーズが有機系バインダを介して凝集されたことを特徴とするシリカ顆粒。 - シリカマイクロビーズに対しシリカナノビーズが0.1〜10重量%の比率で混合されてなる請求項4記載のシリカ顆粒。
- 成形用金型に充填して乾式プレス成形することにより得られた焼結用成形体を焼結して石英ガラス製品を製造するシリカ顆粒の生成方法であって、
体積平均粒径0.1〜2.0μmのシリカマイクロビーズに対し、これを加圧充填したときにその隙間に入る粒径及び量に選定された比表面積(BET値)30〜500m2/gのシリカナノビーズを混合したものを有機系バインダの水溶液に均一分散させて混合スラリとし、該混合スラリを噴霧乾燥させて形成することを特徴とするシリカ顆粒の生成方法。 - シリカマイクロビーズに対しシリカナノビーズが0.1〜10重量%の比率で混合されてなる請求項6記載のシリカ顆粒の生成方法。
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