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JP5166866B2 - 難燃性ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

難燃性ポリエステル樹脂組成物 Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、臭素、塩素系難燃剤およびアンチモン化合物を含有せず、初期の難燃性、長期熱老化後の燃焼性維持に優れた、難燃性ポリエステル樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレンテレフタレートなどに代表される熱可塑性ポリエステル樹脂は、その優れた特性から、電気および電子部品、自動車部品などに広く使用されている。近年、特に家電、電気およびOA関連部品では、火災に対する安全性を確保するため、高度な難燃性が要求される例が多く、このため、種々の難燃剤の配合が検討されている。
【0003】
熱可塑性ポリエステル樹脂に難燃性を付与する場合、一般的に、難燃剤としてハロゲン系難燃剤を使用し、必要に応じて三酸化アンチモン等の難燃助剤を併用することにより、高度な難燃効果と優れた機械的強度、耐熱性等を有する樹脂組成物が得られていた。しかしながら、今般、海外向け製品を中心として、ハロゲン系難燃剤に対する規制が発令されつつあり、難燃剤の非ハロゲン化が検討されている。
【0004】
リン系難燃剤による検討としては、本願と同じ構造を有する有機リン系難燃剤および熱可塑性ポリエステル樹脂からなる樹脂組成物に関する技術(特昭53−128195号公報)等があるが、該特許ではポリブチレンテレフタレート樹脂を用いて、3.2mm厚の圧縮成形品において、UL94基準にてV−1ないしV−0の難燃性が実現できることが開示されている。
【0005】
しかしながら、近年、特に家電、電気およびOA関連部品では、火災に対する安全性を確保するため、高度な難燃性が要求される一方で、製品は軽薄短小化している。すなわち、1/16インチなど、非常に薄い成形品でもUL94基準にてV−0を要求され、耐熱を有する構造材として有用な機械物性および耐熱性も同時に要求されている。また、製品に対する長期信頼性という観点より、例えば、長期耐熱促進試験としての160℃500hrでの熱老化試験後においても、1/16インチでの燃焼性がV−0を維持することも要求されている。これらの要求に対して、該特許では達成することができておらず、現状では満足するものは得られていない。
【特許文献1】
特開昭53−128195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記のような現状を鑑み、1/16インチなどの非常に薄い成形品においてもUL94基準にてV−0を実現し、さらに、160℃500hrでの熱老化試験後においても、1/16インチにおけるUL94基準での燃焼性がV−0を維持できる、ポリエステル系樹脂組成物を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成する為に鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)に対し、特定構造を有する有機リン系難燃剤(B)および窒素化合物(C)を特定割合で含有することにより、初期の燃焼性および、長期信頼性の優れた難燃性を特徴とする、難燃性ポリエステル樹脂組成物を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して、下記一般式(1)
【0009】
【化1】
Figure 0005166866
【0010】
で表される有機リン系難燃剤(B)10〜80重量部および窒素化合物(C)10〜100重量部を含有する難燃性ポリエステル樹脂組成物であり、1/16インチ厚みでの難燃性がUL94基準にてV−0である難燃性ポリエステル樹脂組成物に関する。
【0011】
160℃で500時間熱処理した後の、1/16インチ厚みでの難燃性がUL94基準にてV−0であることが好ましい。
【0012】
熱可塑性ポリエステル樹脂(A)がポリアルキレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。
【0013】
ポリアルキレンテレフタレート樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記の難燃性ポリエステル樹脂組成物を含む樹脂成形体にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して、下記一般式(1)
【0016】
【化2】
Figure 0005166866
【0017】
で表される有機リン系難燃剤(B)10〜80重量部および窒素化合物(C)10〜100重量部を含有する難燃性ポリエステル樹脂組成物であり、1/16インチ厚みでの難燃性がUL94基準にてV−0である難燃性ポリエステル樹脂組成物に関する。
【0018】
本発明で使用される熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とは、酸成分としてテレフタル酸などの2価の酸またはエステル形成能を持つそれらの誘導体を用い、グリコール成分として炭素数2〜10のグリコール、その他の2価のアルコールまたはエステル形成能を有するそれらの誘導体などを用いて得られる飽和ポリエステル樹脂をいう。これらの中でも、加工性、機械的特性、電気的性質、耐熱性などのバランスに優れるという点で、ポリアルキレンテレフタレート樹脂が好ましい。ポリアルキレンテレフタレート樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂があげられ、この中でも、耐熱性および耐薬品性が優れるという点で、特に、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0019】
本発明で使用する熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、必要に応じ、熱可塑性ポリエステル樹脂を100重量部とした場合、好ましくは、20重量部以下、特に好ましくは10重量部以下の割合で、他の成分を共重合することができる。共重合の成分としては、公知の酸成分、アルコール成分および/またはフェノール成分、あるいは、エステル形成能を持つこれらの誘導体が使用できる。
【0020】
共重合可能な酸成分としては、例えば、2価以上の炭素数8〜22の芳香族カルボン酸、2価以上の炭素数4〜12の脂肪族カルボン酸、さらには、2価以上の炭素数8〜15の脂環式カルボン酸、およびエステル形成能を有するこれらの誘導体があげられる。共重合可能な酸成分の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボジフェニル)メタンアントラセンジカルボン酸、4−4’−ジフェニルカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、およびエステル形成能を有するこれらの誘導体があげられる。これらは、単独あるいは2種以上を併用して用いられる。これらのなかでも、得られた樹脂の物性、取り扱い性および反応の容易さに優れるという理由から、テレフタル酸、イソフタル酸およびナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0021】
共重合可能なアルコールおよび/またはフェノール成分としては、例えば、2価以上の炭素数2〜15の脂肪族アルコール、2価以上の炭素数6〜20の脂環式アルコール、炭素数6〜40の2価以上の芳香族アルコールまたは、フェノール、及びエステル形成能を有するこれらの誘導体があげられる。
【0022】
共重合可能なアルコールおよび/またはフェノール成分の具体例としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ハイドロキノン、グリセリン、ペンタエリスリトール、などの化合物、およびエステル形成能を有するこれらの誘導体、ε−カプロラクトン等の環状エステルがあげられる。これらの中でも、得られた樹脂の物性、取り扱い性、反応の容易さに優れるという理由から、エチレングリコールおよびブタンジオールが好ましい。
【0023】
さらに、ポリアルキレングリコール単位を一部共重合させてもよい。ポリオキシアルキレングリコールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、および、これらのランダムまたはブロック共重合体、ビスフェノール化合物のアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびこれらのランダムまたはブロック共重合体等)付加物等の変性ポリオキシアルキレングリコール等があげられる。これらの中では、共重合時の熱安定性が良好で、かつ、本発明の樹脂組成物から得られる成形品の耐熱性があまり低下しにくい等の理由から、分子量500〜2000のビスフェノールA型のポリエチレングリコール付加物が好ましい。
【0024】
これら熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は、単独で使用してもよく、または、2種以上併用してもよい。
【0025】
本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の製造方法は、公知の重合方法、例えば、溶融重縮合、固相重縮合、溶液重合等によって得ることができる。また、重合時に樹脂の色調を改良するために、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸トリメチル、リン酸メチルジエチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル等の化合物を、1種または2種以上添加してもよい。
【0026】
さらに、得られた熱可塑性ポリエステル樹脂の結晶化度を高めるために、重合時に通常よく知られた有機または無機の各種結晶核剤を、単独で添加してもよく、または、2種以上併用してもよい。
【0027】
本発明で使用される熱可塑性ポリエステル樹脂(A)の固有粘度(フェノール/テトラクロロエタンが重量比で1/1の混合溶液中、25℃で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、0.6〜1.0dl/gがより好ましい。前記固有粘度が0.4dl/g未満では、機械的強度や耐衝撃性が低下する傾向があり、1.2dl/gを超えると成形時の流動性が低下する傾向がある。
【0028】
本発明で使用される有機リン系難燃剤(B)とは、下記一般式(1)
【0029】
【化3】
Figure 0005166866
【0030】
で表されるものであり、分子中にリン原子を含み、nの繰り返し単位の下限値はn=2であり、好ましくは、n=3、特に好ましくはn=5である。n=2未満であると、ポリエステル樹脂の結晶化を阻害したり、機械的強度が低下する傾向がある。一方、nの繰り返し単位の上限値の規定は特にないが、過度に分子量を高めると分散性等に悪影響を及ぼす傾向にある。そのため、nの繰り返し単位の上限値は、n=20であり、好ましくは、n=15、特に好ましくはn=13である。
【0031】
本発明に用いられる有機リン系難燃剤(B)の製造方法は、特に限定されず、一般的な重縮合反応によって得られるものであり、例えば、以下の方法で得られる。
【0032】
すなわち、下記一般式(2)
【0033】
【化4】
Figure 0005166866
【0034】
で表される9,10−ジヒドロー9−オキサー10−フォスファフェナントレンー10−オキシドに対し、等モル量のイタコン酸およびイタコン酸に対し2倍モル以上のエチレングリコールを混合し、窒素ガス雰囲気下、120〜200℃の間で加熱し、攪拌することにより、リン系難燃剤溶液を得る。得られたリン系難燃剤溶液に、三酸化アンチモン及び酢酸亜鉛を加え、1.33×10 Pa(1Torr以下の真空減圧下にて、さらに温度を220℃として維持し、エチレングリコールを留出しながら重縮合反応させる。約5時間重縮合反応を継続させ、エチレングリコールの留出量が極端に減少した時点で、反応終了とみなす。これらの条件により、分子量4000〜12000の固体であり、リン含有量が約8%程度である有機リン系難燃剤(B)を得ることができる。
【0035】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物における有機リン系難燃剤(B)含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、下限値としては10重量部が好ましく、20重量部がより好ましく、30重量部がさらに好ましい。有機リン系難燃剤(B)含有量の下限値が10重量部未満では、難燃性が低下する傾向がある。有機リン系難燃剤(B)含有量の上限値としては80重量部が好ましく、70重量部がより好ましい。有機リン系難燃剤(B)含有量の上限値が80重量部を超えると、機械的強度が低下し、成形性も悪化する傾向がある。
【0036】
本発明では、難燃性をさらに高める為、窒素化合物(C)を加えることを特徴とする。本発明における窒素化合物(C)としては、例えば、メラミン・シアヌル酸付加物、メラミン、シアヌル酸等のトリアジン系化合物やテトラゾール化合物等があげられる。あるいはメラミンの2量体及び/または3量体であるメラム及び/またはメレムがあげられる。これらのうちでは、機械的強度面の点から、メラミン・シアヌル酸付加物が好ましい。
【0037】
本発明におけるメラミン・シアヌル酸付加物とは、メラミン(2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン)とシアヌル酸(2,4,6−トリヒドロキシ−1,3,5−トリアジン)および/またはその互変異体が形成する化合物である。
【0038】
メラミン・シアヌル酸付加物は、メラミンの溶液とシアヌル酸の溶液を混合して塩を形成させる方法や一方の溶液に他方を加えて溶解させながら塩を形成させる方法等によって得ることができる。メラミンとシアヌル酸の混合比には特に限定はないが、得られる付加物が熱可塑性ポリエステル樹脂の熱安定性を損ないにくい点から、等モルに近い方がよく、特に等モルであることが好ましい。
【0039】
本発明におけるメラミン・シアヌル酸付加物の平均粒子径は、特に限定されないが、得られる組成物の強度特性、成形加工性を損なわない点から、0.01〜250μmが好ましく、0.5〜200μmが特に好ましい。
【0040】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物における窒素化合物(C)含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、下限値としては、10重量部が好ましく、20重量部がより好ましく、30重量部がさらに好ましい。窒素化合物(C)含有量の下限値が10重量部未満では、難燃性、耐トラッキング性が低下する傾向がある。窒素化合物(C)含有量の上限値としては、100重量部が好ましく、80重量部がより好ましい。窒素化合物(C)含有量の上限値が100重量部を超えると、押出加工性が悪化する、または、ウエルド部の強度、機械的強度および耐湿熱性が低下する傾向がある。
【0041】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物は、非常に薄い成形品において高度な難燃性を実現できる。
【0042】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物は、1/16インチ厚でのUL94基準において、V−0であることが好ましく、1/32インチ厚でのUL94基準において、V−0であることがより好ましい。
【0043】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物から形成される成形体は、後述する用途においては、長期間熱に晒される環境下で使用された場合でも、成形品の燃焼性の維持や表面外観の維持が特に重用視されるため、長期熱老化試験後においても難燃性が維持されていることが好ましい。
【0044】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物においては、1/16インチ厚みにおけるUL94基準での難燃性が、160℃にて500時間の熱老化試験後においてV−0が維持されることが好ましく、180℃にて500時間の熱老化試験後における維持がより好ましく、200℃にて500時間の熱老化試験後における維持がさらに好ましい。
【0045】
160℃にて500時間でV−0が維持できない場合は、樹脂成形体の用途において、長期信頼性に支障を起たす場合がある。
【0046】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて、ガラス繊維、無機充填剤、顔料、熱安定剤、滑剤等の添加剤を添加することができる。
【0047】
ガラス繊維は、通常一般的に使用されている公知のガラス繊維を用いることができるが、作業性の観点から、集束剤にて処理されたチョップドストランドガラス繊維を用いるのが好ましい。
【0048】
本発明で使用されるガラス繊維は、樹脂とガラス繊維との密着性を高めるため、ガラス繊維の表面をカップリング剤で処理したものが好ましく、バインダーを用いたものであってもよい。前記カップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物好ましく使用され、また、バインダーとしては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が好ましく使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
上記ガラス繊維は、単独で使用してもよく、また、2種以上を併用してよい。ガラス繊維の繊維径は1〜20μmが好ましく、かつ、繊維長は0.01〜50mmが好ましい。繊維径が1μm未満であると、添加しても期待するような補強効果が得られない傾向があり、繊維経が20μmを超えると、成形品の表面性や流動性が低下する傾向がある。また、繊維長が0.01mm未満であると、添加しても期待するような樹脂補強効果が得られない傾向があり、繊維長が50mmを超えると、成形品の表面性、流動性が低下する傾向がある。
【0050】
本発明におけるガラス繊維の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部とした場合、下限値は、5重量部が好ましく、10重量部がより好ましく、15重量部がさらに好ましい。含有量が5重量部未満であると充分な機械的強度や耐熱性が得られない傾向がある。上限値は、100重量部が好ましく、90重量部がより好ましく、80重量部がさらに好ましい。100重量部を超えると成形品の表面性、押出加工性が低下する傾向がある。
【0051】
本発明で使用される無機充填剤は、繊維状および/または粒状の無機充填剤であれば、特に限定されないが、無機充填剤を添加することにより、強度、剛性、耐熱性などを大幅に向上させることができる。
【0052】
本発明で使用される無機充填剤の具体例としては、例えば、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカ、ワラストナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウムなどがあげられる、これらのなかでも、優れた電気的特性、特に優れた耐トラッキング性を得るには、粒子状の充填剤を、特にタルクを用いるのが好ましい。
【0053】
本発明における無機充填剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂を100重量部とした場合、下限値は、1重量部好ましく、3重量部がより好ましく、5重量部がさらに好ましい。無機充填剤の含有量が1重量部未満では、電気的特性、剛性等の改善効果が得られにくい傾向がある。上限値は、60重量部が好ましく、40重量部がより好ましく、20重量部がさらに好ましい。無機充填剤の含有量が60重量部を超えると成形品の表面性、機械的特性、押出加工性、成形性時の流動性が低下する場合がある。
【0054】
熱安定剤としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビス(2,6−ジーt−ブチルー4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などがあげられる。熱安定剤の配合量は、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.1〜3.0重量部が好ましく、0.5〜1.5がより好ましい。熱安定剤の配合量が、0.1重量部未満であると、加工時の熱劣化による機械的特性が低下する場合があり、3.0重量部を超えると、成形加工時にガス発生や金型汚染が起こる場合がある。
【0055】
また、顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタンなどの市販の顔料があげられ、滑剤としては、例えば、エチレンジアミン、ステアリン酸、セバシン酸等の重縮合物、モンタン酸等のエステルなどがあげられる。
【0056】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば、ポリエステル樹脂(A)、有機リン系難燃剤(B)および窒素化合物(C)を、種々の一般的な混練機を用いて溶融混練する方法をあげることができる。混練機の例としては、一軸押出機、二軸押出機などがあげられ、特に、混練効率の高い二軸押出機が好ましい。
【0057】
また、本発明は、前記の難燃性ポリエステル樹脂組成物を含む樹脂成形体にも関する。該樹脂成形体はその全部が難燃性ポリエステル樹脂組成物からなるものであってもよく、一部だけ含有していてもよい。樹脂成形体を形成する難燃性ポリエステル樹脂組成物以外の樹脂組成物としては、目的とする成形品によって異なるが、例えば、例えば、ポリカーボネート樹脂組成物、ポリアミド樹脂組成物、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物、ポリアセタール樹脂組成物、ポリアリレート樹脂組成物、ポリスルホン樹脂組成物、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、ポリエーテルエーテルケトン樹脂組成物、ポリエーテルスルフォン樹脂組成物、ポリエーテルイミド樹脂組成物、ポリオレフィン樹脂組成物、ポリエステルカーボネート樹脂組成物、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物、熱可塑性ポリイミド樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物、ポリスチレン樹脂組成物などがあげられる。
【0058】
本発明で得られる難燃性ポリエステル樹脂組成物は、非常に薄い成形品においても、高度な難燃性を有し、長期熱老化試験後の燃焼性も維持されることから、特に、形状が複雑な家電、OA機器等の電気・電子部品、OA機器部品の定着ユニットハウジング等のハウジング、ガイド部品、軸シャフト、家電精密部品、照明部品などに好適に使用される。
【実施例】
【0059】
次に、具体例をあげて本発明の組成物を具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0060】
以下に、実施例および比較例において使用した樹脂および原料類を示す。
【0061】
熱可塑性ポリエステル樹脂(A):
・対数粘度(フェノール/テトラクロロエタンが重量比で1/1である混合溶媒中、25℃で測定、以下同様)0.65dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET;カネボウ合繊株式会社製、EFG−70)を、140℃にて3時間乾燥を行ったもの
・ポリブチレンテレフタレート(PBT;KOLON製、KP−210)
有機リン系難燃剤(B):(製造例1)にて作製したもの
窒素化合物(C):メラミンシアヌレート(日産化学株式会社製、MC440)
【0062】
安定剤:
・ビスフェノールAジグリシジルエーテル,ブチルグリシジルエーテル(旭電化工業株式会社製、EP−22)、・ビス(2,6−ジーt−ブチルー4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(商品名:旭電化工業株式会社製、アデカスタブPEP−36)、
・ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジーt−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティーケミカルズ製、IRGANOX1010)
【0063】
(製造例1)
蒸留管、精留管、窒素導入管および攪拌機を有する縦型重合機に、下記一般式(2)
【0064】
【化5】
Figure 0005166866
【0065】
で表される9,10−ジヒドロー9−オキサー10−フォスファフェナントレンー10−オキシド100重量部に対し、等モル量のイタコン酸60重量部およびイタコン酸に対し2倍モル以上のエチレングリコール160重量部を投入し、窒素ガス雰囲気下、120〜200℃まで徐々に昇温加熱し、約10時間攪拌することによってリン系難燃剤溶液を得た。得られたリン系難燃剤溶液に対し、三酸化アンチモン0.1重量部および酢酸亜鉛0.1重量部を加え、1Torr以下の真空減圧下にて、さらに温度を220℃として維持し、エチレングリコールを留出しながら重縮合反応させる。約5時間後、エチレングリコールの留出量が極端に減少したことで、反応終了とみなした。得られた有機リン系難燃剤(B)の分子量7000の固体であり、リン含有量は8.3%であった。
【0066】
なお、本明細書における評価方法は、以下に示すとおりである。
【0067】
<難燃性>
UL94基準V−0試験に準拠し、得られた厚さ1/16インチ、1/32インチのバー形状試験片を用いて、初期難燃性および160℃500hrの長期熱老化試験後における燃焼性を評価した。
【0068】
<成形加工性>
得られたペレットを用いた、縦:127mm、横:12.7mm厚み1/16インチバーの成形加工において、以下の基準により、成形加工性を評価した。
:離型性、充填性が問題無く、良品が得られる。
:離型不良、または、充填不良が発生。
【0069】
<押出加工性>
混合物からの押出機によるペレット化工程において、以下の基準により、押出加工性を評価した。
:発泡、ストランド切れ、カッティング不良も無く、良好なペレットが得られる。
:ダイスからの発泡、ストランド切れ、カッティング時の砕けが発生。
【0070】
(実施例1〜7)
原料(A)〜(C)を、表1に示した配合組成(単位:重量部)に従い、予めドライブレンドした。ベント式44mmφ同方向2軸押出機(日本製鋼所株式会社製、TEX44)を用い、前記混合物をホッパー孔から供給し、シリンダー設定温度250〜280℃にて溶融混練を行い、ペレットを得た。
【0071】
得られたペレットを140℃で3時間乾燥後、射出成形機(型締め圧:35トン)を用い、シリンダー温度280℃〜250℃および金型温度120℃の条件にて射出成形を行い、縦:127mm、横:12.7mm、厚み1/16インチ、1/32インチのバー成形品を得た。得られた試験片を用い、上記基準に従って燃焼性評価を行った。
【0072】
実施例1〜7における評価結果を、表1に示す。
【0073】
【表1】
Figure 0005166866
【0074】
(比較例1〜6)
原料(A)〜(C)を、表2に示した配合組成(単位:重量部)に従い、実施例と同様に、ペレット化および射出成形を行い、試験片を得、同様の評価方法にて実験を行った。
【0075】
比較例1〜6における評価結果を、表2に示す。
【0076】
【表2】
Figure 0005166866
【0077】
実施例および比較例の比較から、本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂(A)に対する有機リン系難燃剤(B)および窒素化合物(C)の配合比率の規定により、1/16インチ厚みにおいて、初期燃焼性および160℃500時間の熱老化試験後の燃焼性に優れることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物は、1/16インチなどの非常に薄い成形品においてUL94基準にてV−0を実現し、さらに、160℃500hrでの長期熱老化試験後においても、1/16インチにおけるUL94基準での燃焼性をV−0に維持できる。本発明の難燃性ポリエステル樹脂組成物は、家電、電気、OA部品等の成形材料として好適に使用でき、工業的に有用である。

Claims (9)

  1. 熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100重量部に対して、下記一般式(1)
    Figure 0005166866
    で表される有機リン系難燃剤(B)10〜80重量部および窒素化合物(C)10〜100重量部を含有する難燃性ポリエステル樹脂組成物であり、前記窒素化合物(C)が、メラミン・シアヌル酸付加物、メラミン、シアヌル酸のトリアジン系化合物、メラミン、シアヌル酸のテトラゾール化合物、メラミンの2量体であるメラム及びメラミンの3量体であるメレムから選ばれる少なくとも1つであり、1/16インチ厚みでの難燃性がUL94基準にてV−0であり、かつ160℃で500時間熱処理した後の、1/16インチ厚みでの難燃性がUL94基準にてV−0である難燃性ポリエステル樹脂組成物。
  2. 熱可塑性ポリエステル樹脂(A)がポリアルキレンテレフタレート樹脂である請求項1に記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物。
  3. ポリアルキレンテレフタレート樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂である請求項2に記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物を含む樹脂成形体。
  5. 前記有機リン系難燃剤(B)の分子量は4000〜12000の範囲であり、かつ固体である請求項1に記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物。
  6. 前記有機リン系難燃剤(B)は、9,10−ジヒドロー9−オキサー10−フォスファフェナントレンー10−オキシドに対し、等モル量のイタコン酸およびイタコン酸に対し2倍モル以上のエチレングリコールを混合し、窒素ガス雰囲気下、120〜200℃の間で加熱し、攪拌することにより、リン系難燃剤溶液とし、次いで重縮合反応することにより得る請求項5に記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物。
  7. 前記熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、さらにガラス繊維を5重量部以上100重量部以下含む請求項1に記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物。
  8. 前記熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、さらに炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカ、ワラストナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、及び酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも1つの無機充填剤を、1重量部以上60重量部以下含む請求項1に記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物。
  9. 前記熱可塑性ポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、さらにビスフェノールAジグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビス(2,6−ジーt−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、及びペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]から選ばれる少なくとも1つの熱安定剤を0.1〜3.0重量部含む請求項1に記載の難燃性ポリエステル樹脂組成物。
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