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JP5160977B2 - 急硬性のpva短繊維配合モルタルおよびそれを用いた急硬性の高靭性frc材料 - Google Patents

急硬性のpva短繊維配合モルタルおよびそれを用いた急硬性の高靭性frc材料 Download PDF

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Description

本発明は、土木及び建築分野におけるコンクリート構造物の補修・補強工事で使用する急硬性の高靭性FRC材料に関する。
合理化施工を目指す際、超速硬性で自己充填性やセルフレベリング性をもつ高流動モルタルが必要となる場合が多い。従来、超速硬性で高流動なモルタルとしては、短時間で実用強度を発現する超速硬グラウトモルタルが提案されている(特許文献1〜特許文献4等)。しかしながら、従来の超速硬グラウトモルタルは、場合によっては硬化するまでに沈下が認められ、安定した初期膨張性が得られない場合があるという課題を有するものであった。また、最近では、新たなニーズへの対応がせまられている。
近年、特殊な短繊維を配合し、コンクリートやモルタル中に3次元にランダム配向させることにより、引張強度や曲げ強度を飛躍的に高めた一般的にHPFRCやECCと呼ばれるPVA繊維補強セメント複合材料が提案されている(特許文献5〜10)。この材料の特徴は1.0%以上の引張ひずみを示し、ひび割れを分散する点にもある。また、このPVA繊維補強セメント複合材料にカルシウムアルミネートと無水セッコウからなる急硬材をセメントに対して1/1000〜1/3加え、急硬性の高靭性FRC材料とすることも提案された(特許文献11)。しかしながら、PVA繊維補強セメント複合材料は繊維を多量に加えている上に、空気量も多いため、強度発現性に乏しい材料であった。また、これに特許文献11に記載されているように単に急硬材を加えたとしても、急硬性を付与することはできても、高い強度を発現することはできないものであった。すなわち、早く固まるが強度レベルは低いものであった。
PVA繊維補強セメント複合材料に急硬性を付与した高靭性FRC材料のニーズは高まりつつあり、高速道路の緊急補修にも検討が進んでいる。この場合、材齢3時間で20N/mm以上の圧縮強度を発現する必要がある。しかしながら、従来の技術では、材齢1日が経っても5N/mm程度の圧縮強度しか達成できていなかった。それほど、PVA繊維補強セメント複合材料の初期強度発現性を高めることは技術障壁が高いのである。
他方、ポルトランドセメントに急硬性を与える目的でカルシウムアルミネートを加えること、また、さらにセッコウ類を併用することが米国のSpackmanにより古くから検討されている(特許文献12)。しかし、カルシウムアルミネートとセッコウ類からなる急硬性成分を加えたセメント組成物は、温度依存性が大きく、低温では十分な急硬性が得られないものであった。また、カルシウムアルミネートとセッコウ類の混合割合や急硬材の添加量によっては、低温で過膨張する傾向もあり、その信頼性に欠けるものであった。
最近では、前記の急硬性セメント組成物の改良が検討され、ポルトランドセメントにカルシウムアルミネート、無水セッコウ、炭酸リチウムを配合した超速硬セメントや(特許文献13)、ポルトランドセメントにカルシウムアルミネート、無水セッコウ、炭酸リチウムおよび消石灰を配合したモルタル組成物も提案されている(特許文献14)。しかしながら、このモルタルは可使時間の確保が充分でない上に、流動性の保持性に難点があるなど単なる急硬性モルタルとして見ても課題があった。
何より、特許文献12〜14の技術はPVA繊維補強セメント複合材料に関する技術思想は全くなく、引張強度や曲げ強度を飛躍的に高めたものではなく、また、1.0%以上の引張ひずみを示すひび割れ分散型の材料でもなかった。

特開平03−12350号公報 特開平01−230455号公報 特開平11−21160号公報 特開平11−139859号公報 特開2000−7395号公報 特開2002−193653号公報 特開2005−238605号公報 特開2005−305682号公報 特開2005−1965号公報 特開2006−214080号公報 特開2007−63103号公報 米国特許第903019号 特開平01−290543号公報 特開2005−75712号公報
従来技術では、1.0%以上の引張ひずみを示すひび割れ分散型のPVA繊維補強セメント複合材料に、急硬性を付与することはできても、充分な可使時間の確保ができない上に、流動性の保持性にも難点があり、自己充填性やセルフレベリング性を得ることはできなかった。また、材齢3時間で20N/mm以上の圧縮強度を発現する高靭性FRC材料とすることもできなかった。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するものであり、優れた流動性と充分な可使時間と、モルタルが硬化するまでの沈下がなく、初期強度発現性に優れた、好ましくは、材齢3時間で20N/mm以上の圧縮強度を発現する急硬性のPVA短繊維配合モルタル、およびそれを用いた1.0%以上の引張ひずみを示すひび割れ分散型の高靭性FRC材料を提供することを課題とする。
本発明は、上記の課題を以下の手段により解決する。
(1)本発明は、セメントと、急硬材と、炭酸リチウムと、凝結遅延剤と、流動化剤と、窒素ガス発泡物質と、増粘剤と、PVA短繊維とを含有してなるモルタルであって、前記急硬材中のカルシウムアルミネートと無水セッコウとの比率が、質量比で3/1〜5/4であり、セメントおよび急硬材からなる結合材100質量部に対して、前記流動化剤を固形分換算で3〜7質量部と前記窒素ガス発泡物質を0.005〜1質量部、並びに、モルタルに対して、繊維径が0.05mm以下で、繊維長が5〜20mmで、かつ、繊維引張強度が1500MPa〜2400MPaのPVA短繊維を1〜5体積%配合したことを特徴とする急硬性のPVA短繊維配合モルタルである。
(2)急硬材とセメントの割合が質量比で2/5〜1/1であることを特徴とする該急硬性のPVA短繊維配合モルタルであり、急硬材が、CaO/Alモル比0.75〜1.5のカルシウムアルミネートと、無水セッコウを含有することを特徴とする該急硬性のPVA短繊維配合モルタルである。
(3)最大粒子径0.8mm以下の細骨材を含有してなり、かつ、細骨材と、セメントおよび急硬材からなる結合材との質量比(S/B)が1.5以下である該急硬性のPVA短繊維配合モルタルであり、最大粒子径0.8mm以下の細骨材が、珪砂、石灰石粉末、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカフュームから選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする該急硬性のPVA短繊維配合モルタルである。
(4)炭酸リチウムが、結合材100質量部に対して0.5〜3質量部であることを特徴とする該急硬性のPVA短繊維配合モルタルであり、凝結遅延剤が、有機酸とリチウム以外のアルカリ金属炭酸塩を含有し、かつ、結合材100質量部に対して0.5〜3質量部であることを特徴とする該急硬性のPVA短繊維配合モルタルであり、窒素ガス発泡物質が、アゾ化合物、ニトロソ化合物、およびヒドラジン誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種である該急硬性のPVA短繊維配合モルタルであり、窒素ガス発泡物質が、結合材100質量部に対して0.005〜1質量部であることを特徴とする該急硬性のPVA短繊維配合モルタルであり、増粘剤が、結合材100質量部に対して0.01〜1質量部であることを特徴とする該急硬性のPVA短繊維配合モルタルである。
(5)さらに、該急硬性のPVA短繊維配合モルタルを用いて、水結合材比(W/B)30〜50%で練り混ぜて得られる、材齢3時間の圧縮強度が20N/mm以上で、材齢28日の硬化体の引張試験において引張ひずみが1.0%以上を示すことを特徴とする急硬性の高靭性FRC材料であり、該急硬性の高靭性FRC材料の製造方法であり、それを用いた補修工法である。
特定の材料を特定割合で組み合わせて調製した組成物を用いると、流動性に優れ、充分な可使時間を確保でき、モルタルが硬化するまでの沈下がなく、初期強度発現性に優れたPVA短繊維配合モルタルとなる。また、急硬性を付与した1.0%以上の引張ひずみを示すひび割れ分散型の高靭性FRC材料となり、高速道路の緊急補修等への適用が可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用するセメントとしては特に限定されるものではないが、JIS R 5210に規定されている各種ポルトランドセメント、JIS R 5211、JIS R 5212、およびJIS R 5213に規定された各種混合セメント、JISに規定された以上の混和材混入率で製造した高炉セメント、フライアッシュセメントおよびシリカセメント、石灰石粉末等を混合したフィラーセメントから選ばれる1種又は2種以上などが挙げられる。
本発明の急硬材は、カルシウムアルミネートと、無水セッコウを含有する。
本発明のカルシウムアルミネートとは、CaOとAlを主成分とする化合物を総称するものである。本発明では、CaO/Alモル比が0.75〜1.5のカルシウムアルミネートを用いる。カルシウムアルミネートの具体例としては、例えば、CaO・2Al、CaO・Al、12CaO・7Al、11CaO・7Al・CaF、3CaO・3Al・CaSOなどと表される結晶性のカルシウムアルミネート類や、CaOとAl成分を主成分とする非晶質の化合物が挙げられる。CaO/Alモル比が0.75未満では充分な強度発現性が得られない。また、逆に、CaO/Alモル比が1.5を超えると充分な流動性や可使時間が得られない。
カルシウムアルミネートを得る方法としては、CaO原料とAl原料をロータリーキルンや電気炉等によって熱処理して得る方法が挙げられる。カルシウムアルミネートを製造する際のCaO原料としては、例えば、石灰石や貝殻等の炭酸カルシウム、消石灰などの水酸化カルシウム、あるいは生石灰などの酸化カルシウムを挙げることができる。また、Al原料としては、例えば、ボーキサイトやアルミ残灰と呼ばれる産業副産物のほか、アルミ粉などが挙げられる。
カルシウムアルミネートを工業的に得る場合、不純物が含まれることがある。その具体例としては、例えば、SiO、Fe、MgO、TiO、MnO、NaO、KO、LiO、S、P、およびF等が挙げられる。これらの不純物の存在は本発明の目的を実質的に阻害しない範囲では特に問題とはならない。具体的には、これらの不純物の合計が10%以下の範囲では特に問題とはならない。
また、化合物としては、4CaO・Al・Fe、6CaO・2Al・Fe、6CaO・Al・2Feなどのカルシウムアルミノフェライト、2CaO・FeやCaO・Feなどのカルシウムフェライト、ゲーレナイト2CaO・Al・SiO、アノーサイトCaO・Al・2SiOなどのカルシウムアルミノシリケート、メルビナイト3CaO・MgO・2SiO、アケルマナイト2CaO・MgO・2SiO、モンチセライトCaO・MgO・SiOなどのカルシウムマグネシウムシリケート、トライカルシウムシリケート3CaO・SiO、ダイカルシウムシリケート2CaO・SiO、ランキナイト3CaO・2SiO、ワラストナイトCaO・SiOなどのカルシウムシリケート、カルシウムチタネートCaO・TiO、遊離石灰、リューサイト(KO、NaO)・Al・SiO等を含む場合がある。本発明ではこれらの結晶質または非晶質が混在していても良い。
本発明のカルシウムアルミネート系化合物の粒度は、特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積値で3000〜9000cm/gの範囲にあり、4000〜8000cm/g程度のものがより好ましい。3000cm/g未満では強度発現性が充分でない場合があり、9000cm/gを超えるようなものは流動性や可使時間の確保が困難になる場合がある。
本発明で使用する無水セッコウとは、特に限定されるものではないが、II型の無水セッコウを使用することが好ましく、中でもpHが4.5以下の酸性無水セッコウを利用することが、可使時間の確保のしやすさと、その後の強度増進が良好なことから好ましい。ここで、無水セッコウのpHとは、純水100ccに無水セッコウ1gを入れて撹拌した際の上澄液のpHを意味する。
無水セッコウの粒度は、ブレーン比表面積で3000〜9000cm/gが好ましく、4000〜8000cm/gがより好ましい。3000cm/g未満では強度発現性が充分でない場合があり、9000cm/gを超えるようなものは流動性が悪くなる場合がある。
本発明の急硬材中のカルシウムアルミネートと無水セッコウの比率は、質量比で3/1〜5/4である。この範囲を超えてカルシウムアルミネートの比率が大きくなると、可使時間の確保が困難になる場合があり、無水セッコウの比率が大きくなると短時間での強度発現性が充分でない場合がある。
本発明の急硬材の使用量は、急硬材とセメントの割合が質量比で2/5〜1/1、すなわち、セメント100質量部に対して40〜100質量部が好ましく、50〜90質量部がより好ましい。40質量部未満では短時間での強度発現性が充分でない場合があり、100質量部を超えると可使時間の確保が困難になる場合がある。
本発明で使用する細骨材は、クラックの分散性の点で最大粒子径0.8mm以下が好ましく、特に0.4mm以下が好ましい。種類としては、珪砂、炭酸カルシウムを主成分とする石灰石粉砕物(石灰石微粉末)、フライアッシュが挙げられる。これらの一種又は二種以上の使用も可能である。また、材料特性に影響のない範囲で、シリカフューム、高炉スラグ微粉末に代表されるスラグ類、フェロクロム骨材、ガーネットに代表される重量骨材、ベントナイト、ヘクトライト、カオリン、ケイ藻土、セピオライト、アタパルジャイトなどの粘土鉱物、γ−C2Sなども使用することができる。
本発明の細骨材の使用量は、セメントおよび急硬材からなる結合材(以下、「結合材」という。)100質量部に対して150質量部以下が好ましく、50〜100質量部がより好ましい。150質量部を超えるとクラックの分散性が低下するおそれがある。
本発明で使用する炭酸リチウムは、カルシウムアルミネートの硬化を促進し、短時間での強度発現性を向上する役割を担う。炭酸リチウム以外のリチウム塩もカルシウムアルミネートの硬化を促進することは知られているが、炭酸リチウム以外のリチウム塩を使用すると、まず流動化することができず、また、可使時間も確保できない。
本発明の炭酸リチウムの使用量は、結合材100質量部に対して0.5〜3質量部が好ましく、0.7〜2.5質量部がより好ましい。0.5質量部未満では短時間での強度発現性が充分でない場合があり、3質量部を超えると可使時間の確保が困難になる場合がある。
本発明の凝結遅延剤は、有機酸とリチウム以外のアルカリ金属炭酸塩を含有する。
炭酸リチウム以外のアルカリ炭酸塩は、流動化および可使時間の確保に重要な役割を果たす。アルカリ炭酸塩は特に限定されるものではないが、その具体例としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウムなどが挙げられる。
有機酸は、炭酸塩とともに流動化および可使時間の確保に重要な役割を果たす。有機酸は特に限定されるものではないが、その具体例としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、コハク酸などのオキシカルボン酸およびそれらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、アルミニウム等の塩などが挙げられる。中でも、クエン酸やその塩が好ましい。本発明では、これらのうちの1種または2種以上を併用できる。
本発明の凝結遅延剤の使用量は、結合材100質量部に対して0.5〜3質量部が好ましく、0.7〜2.5質量部がより好ましい。0.5質量部未満では可使時間の確保が充分でない場合があり、3質量部を超えると凝結遅延が過剰となり、短時間での強度発現性に悪影響をおよぼす可能性がある。
本発明で使用する流動化剤は、モルタルの練り混ぜを容易にし、各材料の分散を助けるとともに練りあがったモルタルの流動性を付与する役割を担う。流動化剤は特に限定されるものではないが、その具体例としては、例えば、ナフタレン系としては、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP−9シリーズ」、花王社製商品名「マイティ2000シリーズ」、および日本製紙社製商品名「サンフローHS−100」等が挙げられる。また、メラミン系としては、日本シーカ社製商品名「シーカメント1000シリーズ」や日本製紙社製商品名「サンフローHS−40」などが挙げられる。さらに、アミノスルホン酸系としては、フローリック社製商品名「FP−200シリーズ」などが挙げられる。ポリカルボン酸系としては、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP−8シリーズ」、グレースケミカルズ社製商品名「ダーレックススーパー100PHX」、および竹本油脂社製商品名「チューポールHP−8シリーズ」や「チューポールHP−11シリーズ」等が挙げられる。本発明ではこれら流動化剤のうちの一種又は二種以上が使用可能である。
上記の流動化剤には粉末状のものも存在する。具体的には、ポリアルキルアリルスルホン酸塩の縮合物としては、第一工業製薬社製商品名「セルフロー110P」や出光石油化学社製商品名「IPC」などが、また、ナフタレンスルホン酸塩の縮合物としては、花王社製商品名「マイティ100」や三洋化成工業社製商品名「三洋レベロンP」などが、メラミン系のものとしては、シーカ社製「シーカメントFF」などが、さらに、ポリカルボン酸系としては、例えば、三菱化学社製商品名「クインフロー750」、花王社製商品名「CAD9000P」、およびBASFポゾリス社製商品名「CASTAMENT FW10」等が挙げられる。
流動化剤の使用量は、結合材100質量部に対して、固形分換算で3〜7質量部であり、4〜6質量部が好ましい。3質量部未満では、流動性が充分でなく、7質量部を超えると材料分離を起す場合がある。
本発明で使用する窒素ガス発泡物質は、モルタルが硬化するまでの沈下を防止する役割を担う。本発明の急硬性のPVA短繊維配合モルタルは、硬化時間が短いため、一般に利用されているアルミニウム粉末や炭素物質等のガス発泡物質では、充分な沈下防止効果が得られない。窒素ガス発泡物質は、セメントが水と共に練混ぜた際に生成するアルカリとの反応により、窒素ガスを発生する化合物を含有するもので、一酸化炭素、二酸化炭素、およびアンモニア等のガスを副生してもよい。
窒素ガス発泡物質は、本発明の急硬性のPVA短繊維配合モルタルを、躯体と一体化させるために、また、まだ固まらない状態のモルタルが沈下や収縮するのを抑止するために、さらには、乾燥状態に置かれた際のひび割れ抵抗性を向上させるために使用できるものであれば特に限定されるものではない。
その具体例としては、アゾ化合物、ニトロソ化合物、およびヒドラジン誘導体からなる群から選ばれた一種又は二種以上が使用可能であり、例えば、アゾ化合物としては、アゾジカルボンアミドやアゾビスイソブチルニトリルなどが挙げられ、ニトロソ化合物としては、N、N’−ジニトロペンタメチレンテトラミンなどが挙げられ、ヒドラジン誘導体としては、4、4’−オキシビスやヒドラジンカルボンアミドが挙げられ、本発明では、これらの一種又は二種以上が使用可能である。
窒素ガス発泡物質の使用量は、結合材100部質量部に対して、0.005〜1質量部であり、0.01〜0.5質量部が好ましい。0.005質量部未満では充分な初期膨張効果を付与することができなくなるおそれがあり、1質量部を超えると強度発現性が悪くなるおそれがある。
本発明で使用する増粘剤は、モルタルに適度な粘性を付与し、PVA短繊維の分散性を良好にするものであり、通常市販されているものが使用できる。たとえば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロースなどのセルロースエーテル系増粘剤、グアーガム、デュータンガム、ウエランガムなどのバイオサッカライド系増粘剤、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール等の合成高分子類などが挙げられる。
増粘剤の使用量は、結合材100質量部に対して、0.01〜1質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましい。0.01質量部未満では、粘性が付与できずPVA短繊維の分散性が悪くなるおそれがあり、1質量部を超えると粘性が強くなりすぎ施工性に支障をきたすおそれがある。
本発明で使用する短繊維はPVA繊維であり、繊維径が0.05mm以下、繊維長が5〜20mm、繊維引張強度が1500MPa〜2400MPaである性質のものが使用される。
繊維径が0.05mmを超えると、繊維が均一に分散することができずに多数のクラックが発生し難い。
繊維の長さが5mm未満であると練混ぜ時において、繊維がだまになりやすく均一に分散することができずに多数のクラックが発生し難い。20mmを超えた場合でも、同様に練混ぜ時において、繊維がだまになりやすく均一に分散することができずに、上記繊維配合量では多数のクラックが発生しなくなる場合があり、また、ポンプで圧送するときに圧送性が悪くなる。
繊維引張強度が1500MPa未満であると1%以上の引張ひずみが得られず、多数のクラックが発生し難く、2400MPaを超えても、効果が頭打ちとなる。
本発明において、PVA短繊維添加量は、セメントと、急硬材と、炭酸リチウムと、凝結遅延剤と、流動化剤と、窒素ガス発泡物質と、増粘剤を含有するモルタル(細骨材を含有する場合には、細骨材を含むモルタル)に対して、1〜5体積%とするが、1〜3体積%が好ましい。1体積%未満では、多数のクラックが発生し難く、3体積%を越えても効果が頭打ちとなる。
引張ひずみとは、材齢28日の硬化体の引張試験で得られる応力−歪曲線において、最大引張応力値での歪量(%)をいう。実際には、材齢28日での引張試験(例えば、実施例に示すように断面30mm×13mmの試験体を80mmの試験区間で引張試験を行う)における引張歪に代表される。この引張ひずみが1.0%以上であることは、載荷方向(応力方向)とほぼ直角方向に多数クラックが発生するクラック分散型の破壊現象が生じていることを意味する。PVA繊維の性質とPVA繊維以外のマトリックスの性質をうまく組み合わせることで引張ひずみ1%以上を達成できる。
本発明のPVA繊維を配合するマトリックスは、水結合材比(W/B)30〜50%、細骨材と結合材との質量比(S/B)が1.5以下、細骨材の最大粒子径が0.8mmであることが好ましい。
水結合材比が30%未満では、この繊維にとってはマトリックスの弾性係数と破壊じん性が高くなって多数のクラックが発生せず、1%以上の引張ひずみが発生しない場合がある。50%を超えると圧縮強度が小さくなる。
細骨材と結合材との質量比が1.5を超えると、この繊維にとってはマトリックスの弾性係数と破壊じん性が高くなって多数のクラックが発生せず、1%以上の引張ひずみが発生しない場合がある。細骨材の最大粒子径が0.8mmを超えると、同様に多数のクラックが発生せず、1%以上の引張ひずみが発生しない場合がある。
本発明の急硬性のPVA短繊維配合モルタルには、更なる短時間強度発現性の向上を目的に、硫酸カリウム、ミョウバン類および水酸化カルシウム等を配合することも可能である。
本発明では、目的とする性能に害を及ぼさない範囲で、一般に市販されているセメント混和剤が使用できる。たとえば、防凍剤、抗菌剤、保水剤、AE剤、起泡剤、発泡剤、撥水剤、防錆剤、保水剤、水和熱低減剤、エフロレッセンス防止剤、ポリマー混和剤などが使用できる。
本発明において、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、あらかじめ一部を、あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
粉体の混合装置としては、既存のいかなる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、およびナウタミキサ等の使用が可能である。
モルタルの練り混ぜに使用できるミキサとしては、底部が球状曲面形状を持つボールを有するモルタルミキサ、オムニミキサ、パン型ミキサ、パン型で自転する羽根を有するダマカットミキサ、コンクリートの練り混ぜで使用する二軸ミキサーなどがある。
本発明では、施工後の材料の表面に、エマルジョン系の皮膜養生剤、シラン系あるいはケイ酸塩系の含浸剤、エポキシやアクリル樹脂に代表される樹脂系表面被覆材などを塗布することも可能である。
以下、実施例にて詳細に説明する。
各種のカルシウムアルミネートを使用し、表1に示す割合で無水セッコウと混合して急硬材を作製した。セメント100質量部に対して、急硬材80質量部、細骨材aを130質量部、炭酸リチウムを2質量部、凝結遅延剤αを2質量部、流動化剤を9質量部、窒素ガス発泡物質イを0.09質量部、増粘剤を0.2質量部、PVA短繊維(1)をモルタル1mに対して2体積%となる量を加え、水量をセメントと急硬材からなる結合材×50%としてモルタルを調整した。モルタルの流動性、繊維の分散性、可使時間、圧縮強さ、引張ひずみ、クラック分散性を測定した。結果を表1に併記する。
(使用材料)
セメント:普通ポルトランドセメント 市販品
カルシウムアルミネートA:CaO/Alモル比0.75、結晶質、CaO・AlとCaO・2Alを主成分とする。ブレーン比表面積5000cm/g
カルシウムアルミネートB:CaO/Alモル比1.00、結晶質、CaO・Alを主成分とする。ブレーン比表面積5000cm/g
カルシウムアルミネートC:CaO/Alモル比1.50、結晶質、CaO・Alと12CaO・7Al、を主成分とする。ブレーン比表面積5000cm/g
カルシウムアルミネートD:CaO/Alモル比1.00、非晶質、カルシウムアルミネートBに試薬1級のシリカを5%添加して、1650℃で溶融後、急冷して合成。ブレーン比表面積5000cm/g
カルシウムアルミネートE:CaO/Alモル比1.50、非晶質、カルシウムアルミネートCに試薬1級のシリカを3%添加して、1650℃で溶融後、急冷して合成。ブレーン比表面積5000cm/g
無水セッコウ:II型無水セッコウ、pH3.0。ブレーン比表面積5000cm/g
細骨材a:フライアッシュと石灰石粉砕物の1:1混合物、平均粒径0.025mm、フライアッシュは碧南火力製JISII種品、石灰石粉砕物は鋼管鉱業社製石灰石微粉末
炭酸リチウム:試薬1級
凝結遅延剤α:試薬1級の酒石酸25質量部と試薬1級の炭酸カリウム75質量部の混合物
流動化剤:BASFポゾリス社製、ポリカルボン酸系、粉末
窒素ガス発泡物質イ:アゾジカルボンアミド、市販品
増粘剤:デュータンガム、バイオサッカライド系増粘剤、市販品
PVA短繊維(1):クラレ社製、繊維径0.04mm、繊維長12mm、繊維引張強度1650MPa
(試験方法)
流動性:JIS R 5201に準拠した。ただし、15回打撃は与えず、静置でのフローを測定した。
繊維の分散性:フロー測定の際、判定した。フローの先端まで繊維が行き届いていたら○、フローの先端まで繊維が行き届かず、中心部付近に多く残っていたら×とした。
可使時間:JIS A 1147に準拠した。プロクター貫入抵抗値の終結時間を可使時間とした。
圧縮強さ:JIS R 5201に準拠した。材齢3時間。
引張ひずみ:土木学会 コンクリートライブラリー127「複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料設計・施工指針(案)」強度試験用供試体の作り方および一軸直接引張試験方法に準拠した。材齢28日。
クラック分散性:直接引張試験を実施したときに微細なクラックが複数入れば分散性は良いことになる。従って、引張ひずみが1.0%以上あれば○、そうでなければ×とした。
Figure 0005160977
表1より、CaO/Alモル比0.75〜1.5のカルシウムアルミネート(CA)と、無水セッコウを含有する急硬材を使用した場合、充分な流動性や可使時間があり強度発現性に優れたモルタルが得られることが分かる(実験No.1-1〜No.1-5)。また、急硬材中のCAと無水セッコウの比率が質量比で4/1になりCAの量が多くなると可使時間がやや短くなり(実験No.1-6)、前記の比率が1/1になり無水セッコウの量が多くなると短時間での強度発現性が充分でない場合がある(実験No.1-7)ので、前記の比率は3/1〜5/4が好ましい。
カルシウムアルミネートB100質量部に、無水セッコウ65質量部を添加し、混合して急硬材を作製した。セメント100質量部に対して、急硬材の配合割合を表2に示すように変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
Figure 0005160977
表2より、急硬材を含有させた場合、繊維の分散性が良く、強度発現性に優れたモルタルが得られる(実験No.2-2〜No.2-7)が、急硬材を含有させない比較例のモルタルでは、繊維の分散性が悪くなり、また、短時間での強度発現性が得られないことが分かる(実験No.2-1)。強度発現性や可使時間からみて、急硬材の使用量は、セメント100質量部に対して40〜100質量部が好ましく、50〜90質量部がより好ましい(実験No.2-2〜No.2-6)。
カルシウムアルミネートB100質量部に、無水セッコウ65質量部を添加し、混合して急硬材を作製した。セメント100質量部に対して、急硬材80質量部を加え、表3に示すように細骨材を変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
(使用材料)
細骨材b:フライアッシュ、碧南火力製JISII種品、平均粒径0.022mm、最大粒子径0.1mm
細骨材c:石灰石微粉末、鋼管鉱業社製、平均粒径0.028mm、最大粒子径0.11mm
細骨材d:珪砂、市販品、平均粒径0.15mm、最大粒子径0.38mm
細骨材e:細骨材と細骨材の1:1混合物(質量比)
Figure 0005160977
表3より、最大粒子径0.8mm以下の細骨材を、セメントおよび急硬材からなる結合材100質量部に対して50超〜150質量部含有させた場合、繊維の分散性が良く、引張ひずみが1.0%以上を示し、クラック分散性に優れたモルタルが得られることが分かる(実験No.2-4、No.3-3〜3-8)。細骨材の含有量が、結合材100質量部に対して50質量部以下(0を含む)の場合には、繊維の分散性は充分でないが、引張ひずみは大きく、クラック分散性は優れている(実験No.3-1、No.3-2)。
カルシウムアルミネートB100質量部に、無水セッコウ65質量部を添加し、混合して急硬材を作製した。セメント100質量部に対して、急硬材80質量部を加え、表4に示すように炭酸リチウムを変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
Figure 0005160977
表4より、炭酸リチウムを含有させた場合、強度発現性に優れたモルタルが得られる(実験No.4-2〜No.4-6、No.2-4)が、炭酸リチウムを含有させない比較例のモルタルでは、短時間での強度発現性が得られないことが分かる(実験No.4-1)。炭酸リチウムは、使用量が多すぎると可使時間が短くなる(実験No.4-6)ので、結合材100質量部に対して3質量部以下が好ましい。
カルシウムアルミネートB100質量部に、無水セッコウ65質量部を添加し、混合して急硬材を作製した。セメント100質量部に対して、急硬材80質量部を加え、表5に示すように凝結遅延剤を変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表5に併記する。
(使用材料)
凝結遅延剤β:試薬1級のクエン酸25質量部と試薬1級の炭酸カリウム75質量部の混合物。
凝結遅延剤γ:試薬1級のクエン酸20質量部と試薬1級のグルコン酸ナトリウム10質量部と試薬1級の炭酸カリウム70質量部の混合物。
Figure 0005160977
表5より、凝結遅延剤を含有させた場合、充分な流動性や可使時間があるモルタルが得られる(実験No.5-2〜No.5-7、No.2-4)が、凝結遅延剤を含有させない比較例のモルタルでは、充分な可使時間が得られないことが分かる(実験No.5-1)。
カルシウムアルミネートB100質量部に、無水セッコウ65質量部を添加し、混合して急硬材を作製した。セメント100質量部に対して、急硬材80質量部を加え、表6に示すように流動化剤を変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表6に併記する。
Figure 0005160977
表6より、流動化剤を含有させた場合、充分な流動性があるモルタルが得られる(実験No.6-2〜No.6-6、No.2-4)が、流動化剤を含有させない比較例のモルタルでは、充分な流動性が得られないことが分かる(実験No.6-1)。流動化剤は、使用量が多すぎると繊維の分散性に悪影響を及ぼす(実験No.6-6)ので、結合材100質量部に対して7質量部以下が好ましい。
カルシウムアルミネートB100質量部に、無水セッコウ65質量部を添加し、混合して急硬材を作製した。セメント100質量部に対して、急硬材80質量部を加え、表7に示すように窒素ガス発泡物質を変化し、初期膨張率を測定したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表7に併記する。
(使用材料)
窒素ガス発泡物質ロ:主成分4、4’−オキシビス、市販品
窒素ガス発泡物質ハ:主成分N、N’−ジニトロソメンタメチレンテトラミン、市販品
アルミ粉:アルミニウム粉末、市販品
(試験方法)
初期膨張率:φ5×10cmの型枠に練混ぜたモルタルを型詰し光センサーにて打設直後から材齢3時間までの鉛直方向の長さ変化率を測定、表中の−は収縮側、+は膨張側
Figure 0005160977
表7より、窒素ガス発泡物質を含有させた場合、初期膨張効果の優れたモルタルが得られる(実験No.7-2〜No.7-8、No.2-4)が、窒素ガス発泡物質を含有させない比較例のモルタル、発泡物質としてアルミ粉を含有させた比較例のモルタルでは、充分な初期膨張が得られないことが分かる(実験No.7-1、No.7-9)。窒素ガス発泡物質は、使用量が多すぎると短時間での強度発現性に悪影響を及ぼす(実験No.7-6)ので、結合材100質量部に対して1質量部以下が好ましい。
カルシウムアルミネートB100質量部に、無水セッコウ65質量部を添加し、混合して急硬材を作製した。セメント100質量部に対して、急硬材80質量部を加え、表8に示すように増粘剤を変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表8に併記する。
Figure 0005160977
表8より、増粘剤を含有させた場合、繊維の分散性の優れたモルタルが得られる(実験No.8-2〜No.8-6、No.2-4)が、増粘剤を含有させない比較例のモルタルでは、繊維の分散性が悪いことが分かる(実験No.8-1)。増粘剤は、使用量が多すぎると短時間での強度発現性に悪影響を及ぼす(実験No.8-6)ので、結合材100質量部に対して1質量部以下が好ましい。
カルシウムアルミネートB100質量部に、無水セッコウ65質量部を添加し、混合して急硬材を作製した。セメント100質量部に対して、急硬材80質量部を加え、モルタル1mに対して表9に示すようにPVA短繊維の種類と添加量を変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表9に併記する。
(使用材料)
PVA短繊維(1):クラレ社製、繊維径0.04mm、繊維長12mm、繊維引張強度1650MPaPVA短繊維(2):繊維径0.014mm、繊維長12mm、繊維引張強度1650MPa
PVA短繊維(3):繊維径0.04mm、繊維長12mm、繊維引張強度2000MPa
PVA短繊維(4):繊維径0.04mm、繊維長6mm、繊維引張強度1650MPa
PVA短繊維(5):繊維径0.04mm、繊維長18mm、繊維引張強度1650MPa
PVA短繊維(6):繊維径0.04mm、繊維長12mm、繊維引張強度1200MPa
PVA短繊維(7):繊維径0.04mm、繊維長12mm、繊維引張強度2200MPa
PVA短繊維(8):繊維径0.014mm、繊維長4mm、繊維引張強度1650MPa
PVA短繊維(9):繊維径0.04mm、繊維長25mm、繊維引張強度1650MPa
Figure 0005160977
表9より、繊維径が0.05mm以下、繊維長が5〜20mm、繊維引張強度が1500MPa〜2400MPaであるPVA短繊維を含有させた場合、引張ひずみが1.0%以上を示し、クラック分散性に優れたモルタルが得られる(実験No.9-2〜No.9-8、No.9-10、No.2-4)が、PVA短繊維を含有させない比較例のモルタル、繊維引張強度が1500MPa未満のPVA短繊維や繊維長が5mm未満であるPVA短繊維を含有させた比較例のモルタルは、引張ひずみが1.0%未満であり、クラック分散性が悪いことが分かる(実験No.9-1、No.9-9、No.9-11)。PVA短繊維は、使用量を多くしても効果が頭打ちになる(実験No.9-4)ので、3体積%以下が好ましい。
カルシウムアルミネートB100質量部に、無水セッコウ65質量部を添加し、混合して急硬材を作製した。セメント100質量部に対して、急硬材80質量部を加え、表10に示すように水を変化したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表10に併記する。
Figure 0005160977
表10より、本発明のPVA短繊維配合モルタルを用いて、水結合材比30〜50%で練り混ぜると、材齢3時間の圧縮強さが20N/mm以上で、材齢28日の硬化体の引張試験において引張ひずみが1.0%以上を示す高靭性FRC材料が得られることが分かる(実験No.10-1、No.2-4)。
本発明の急硬性のPVA短繊維配合モルタルは、流動性に優れ、充分な可使時間を確保でき、モルタルが硬化するまでの沈下がなく、材齢3時間で20N/mm以上の圧縮強度を発現する。したがって、急硬性を付与した1.0%以上の引張ひずみを示すひび割れ分散型の高靭性FRC材料となり、変形性能が求められる高速道路等の変形追従性が求められる連結部の緊急補修等に適する。

Claims (13)

  1. セメントと、急硬材と、炭酸リチウムと、凝結遅延剤と、流動化剤と、窒素ガス発泡物質と、増粘剤と、PVA短繊維とを含有してなるモルタルであって、前記急硬材中のカルシウムアルミネートと無水セッコウとの比率が、質量比で3/1〜5/4であり、セメントおよび急硬材からなる結合材100質量部に対して、前記流動化剤を固形分換算で3〜7質量部と前記窒素ガス発泡物質を0.005〜1質量部、並びに、モルタルに対して、繊維径が0.05mm以下で、繊維長が5〜20mmで、かつ、繊維引張強度が1500MPa〜2400MPaのPVA短繊維を1〜5体積%配合したことを特徴とする急硬性のPVA短繊維配合モルタル。
  2. 急硬材とセメントの割合が質量比で2/5〜1/1であることを特徴とする請求項1記載の急硬性のPVA短繊維配合モルタル。
  3. 前記急硬材が、CaO/Alモル比0.75〜1.5のカルシウムアルミネートと、無水セッコウを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の急硬性のPVA短繊維配合モルタル。
  4. 最大粒子径0.8mm以下の細骨材を含有してなり、かつ、細骨材と、セメントおよび急硬材からなる結合材との質量比(S/B)が1.5以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載の急硬性のPVA短繊維配合モルタル。
  5. 前記最大粒子径0.8mm以下の細骨材が、珪砂、石灰石微粉末、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、およびシリカフュームから選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項記載の急硬性のPVA短繊維配合モルタル。
  6. 前記炭酸リチウムが、前記結合材100質量部に対して0.5〜3質量部であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載の急硬性のPVA短繊維配合モルタル。
  7. 前記凝結遅延剤が、有機酸とリチウム以外のアルカリ金属炭酸塩を含有し、かつ、前記結合材100質量部に対して0.5〜3質量部であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載の急硬性のPVA短繊維配合モルタル。
  8. 前記窒素ガス発泡物質が、アゾ化合物、ニトロソ化合物、およびヒドラジン誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載の急硬性のPVA短繊維配合モルタル。
  9. 前記窒素ガス発泡物質が、前記結合材100質量部に対して0.005〜1質量部であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載の急硬性のPVA短繊維配合モルタル。
  10. 前記増粘剤が、前記結合材100質量部に対して0.01〜1質量部であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載の急硬性のPVA短繊維配合モルタル。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項記載の急硬性のPVA短繊維配合モルタルを用いて、水結合材比(W/B)30〜50%で練り混ぜて得られる、材齢3時間の圧縮強度が20N/mm以上で、材齢28日の硬化体の引張試験において引張ひずみが1.0%以上を示すことを特徴とする急硬性の高靭性FRC材料。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項記載の急硬性のPVA短繊維配合モルタルを用いて、水結合材比(W/B)30〜50%で練り混ぜ、材齢3時間の圧縮強度が20N/mm 以上で、材齢28日の硬化体の引張試験において引張ひずみが1.0%以上を示す急硬性の高靭性FRC材料の製造方法。
  13. 請求項11記載の急硬性の高靭性FRC材料を使用することを特徴とする補修工法。
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