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JP5155016B2 - 吸音材用繊維構造体の製造方法および吸音材の製造方法 - Google Patents

吸音材用繊維構造体の製造方法および吸音材の製造方法 Download PDF

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JP5155016B2 JP2008139256A JP2008139256A JP5155016B2 JP 5155016 B2 JP5155016 B2 JP 5155016B2 JP 2008139256 A JP2008139256 A JP 2008139256A JP 2008139256 A JP2008139256 A JP 2008139256A JP 5155016 B2 JP5155016 B2 JP 5155016B2
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Description

本発明は、軽量性に優れ、かつ吸音特性が良好な吸音材用繊維構造体、および該吸音材用繊維構造体を用いてなる吸音材に関する。
従来、自動車の天井材、ドアパネル、フロアーマット、ボンネット、トランクルーム、建築材料等の分野で繊維からなる吸音材が広く使用されている。かかる吸音材としては、例えば、高密度層と低密度層とで吸音材を構成し膜吸音効果を利用した吸音材(例えば特許文献1参照)、メルトブロー不織布による極細繊維を利用した吸音材(例えば特許文献2参照)、反毛、落綿、フェノール樹脂を使用した吸音材(例えば特許文献3参照)、繊維が厚さ方向に配列しかつシート状物を貼り合せた吸音材(例えば特許文献4参照)などが提案されている。しかしながら、これらの吸音材では重量が重く、また、製造工程が複雑であるという問題があった。
また、特許文献4などでは、熱処理により表面が膜状になっている吸音材が提案されている。しかしながら、かかる吸音材では、表面を膜状とするために加圧加熱処理を施すと、厚みがへたり結果的に、吸音性が低下するという問題があった。
特許第3304264号公報 特開平6−259081号公報 特開平6−75579号公報 特開2008−68799号公報 特開2000−199161号公報
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、軽量性に優れ、かつ吸音特性が良好な吸音材用繊維構造体、および該吸音材用繊維構造体を用いてなる吸音材を提供することにある。
本発明者らは上記課題を達成するため鋭意検討した結果、繊維構造体に加圧加熱処理を施して表面を膜状とする際、繊維構造体の構成繊維を繊維構造体の厚さ方向に配列させておくと、厚みがへたらず良好な吸音性が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば「吸音材用繊維構造体の製造方法であって、非弾性捲縮短繊維と、該非弾性捲縮短繊維を構成するポリマーよりも40℃以上低い融点を有するポリマーが熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維とが重量比率で90/10〜30/70となるように混綿され、前記熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または前記熱接着性複合短繊維と前記非弾性捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点が散在し、かつ前記熱接着性複合短繊維と前記非弾性捲縮短繊維が繊維構造体の厚さ方向に配列してなる繊維構造体を、繊維構造体の厚さ方向に加圧しながら熱処理することにより繊維構造体の表面を膜状とすることを特徴とする吸音材用繊維構造体の製造方法。」が提供される。
その際、繊維構造体に不均一な熱処理を施すことにより繊維構造体の表面を膜状とすることが好ましい。また、前記非弾性捲縮短繊維がポリエステル系繊維からなることが好ましい。また、前記熱接着性複合短繊維の熱融着成分が共重合ポリエステルからなることが好ましい。また、かかる繊維構造体の厚さが5mm以上であることが好ましい。また、繊維構造体の平均密度が0.015〜0.2g/cmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明によれば、前記の製造方法により得られた吸音材用繊維構造体を用いて、自動車用天井材、自動車用ドアパネル、自動車用フロアーマット、自動車用ボンネット、自動車用トランクルーム、および建築材からなる群より選択されるいずれかの用途に使用される吸音材を得る、吸音材の製造方法が提供される。
本発明によれば、軽量性に優れ、かつ吸音特性が良好な吸音材用繊維構造体、および該吸音材用繊維構造体を用いてなる吸音材が得られる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明で使用する非弾性捲縮短繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリピバロラクトン、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸(PLA)、ステレオコンプレックスポリ乳酸(PLA)などのポリマーからなる短繊維、前記ポリマーの共重合体からなる短繊維、さらには、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、天然繊維、炭素繊維ないしそれら短繊維の混綿体、または上記ポリマー成分のうちの2種類以上からなる複合短繊維等を挙げることができる。これらの短繊維のうちリサイクル性等の観点から、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートからなる短繊維が特に好ましい。
この場合の、捲縮付与方法としては、熱収縮率の異なるポリマーをサイドバイサイド型に張り合わせた複合繊維を用いてスパイラル状捲縮を付与、異方冷却によりスパイラル状捲縮を付与、捲縮数が3〜40個/2.54cm(好ましくは7〜15個/2.54cm)となるように通常の押し込みクリンパー方式による機械捲縮を付与など、種々の方法を用いればよいが、嵩高性、製造コスト等の面から機械捲縮を付与するのが最適である。
ここで、前記非弾性捲縮短繊維において、単繊維径が6〜200μmの範囲内であることが好ましい。該単繊維径が6μmよりも小さいとカード等での製造が難しくなるおそれがある。逆に該単繊維径200μmよりも大きいと充分な吸音性が得られないおそれがある。
前記非弾性捲縮短繊維の単繊維横断面形状は、通常の丸断面でもよいし、三角、四角、扁平などの異型断面であってもよい。なお、単繊維横断面形状が異型の場合、前記単繊維径は丸断面に換算した値を使用するものとする。さらに、丸中空断面の場合は外径寸法を測定するものとする。
また、前記非弾性捲縮短繊維の繊維長としては30〜100mmの範囲内であることが好ましい。該繊維長が30mmよりも小さいと充分な剛性が得られないおそれがある。逆に該繊維長が100mmよりも大きいと工程安定性が損われるおそれがある。
次に、熱接着性複合短繊維の熱融着成分は、上記の非弾性捲縮短繊維を構成するポリマー成分より、40℃以上低い融点を有することが必要である。この温度が40℃未満では接着が不十分となる上、腰のない取り扱いにくい繊維構造体となり、本発明の目的が達せられない。
ここで、熱融着成分として配されるポリマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、非弾性ポリエステル系ポリマー及びその共重合物、ポリオレフィン系ポリマー及びその共重合物、ポリビニルアルコ−ル系ポリマー等を挙げることができ、ポリウレタン系エラストマーとしては、分子量が500〜6000程度の低融点ポリオール、例えばジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステル、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリエステルアミド等と、分子量500以下の有機ジイソシアネート、例えばp,p’−ジフェニールメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート水素化ジフェニールメタンイソシアネート、キシリレンイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネート等と、分子量500以下の鎖伸長剤、例えばグリコールアミノアルコールあるいはトリオールとの反応により得られるポリマーである。
これらのポリマーのうちで、特に好ましいのはポリオールとしてはポリテトラメチレングリコール、またはポリ−ε−カプロラクタムあるいはポリブチレンアジペートを用いたポリウレタンである。この場合の有機ジイソシアネートとしてはp,p’−ビスヒドロキシエトキシベンゼンおよび1,4−ブタンジオールを挙げることができる。
また、ポリエステル系エラストマーとしては熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステル共重合体、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオールあるいは1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンメタノール等の脂環式ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約400〜5000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−ポリプロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アルキレンオキサイド)クリコールのうち少なくとも1種から構成される三元共重合体を挙げることができる。
特に、接着性や温度特性、強度の面からすればポリブチレン系テレフタレートをハード成分とし、ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルエステルが好ましい。この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分がブチレングリコール成分であるポリブチレンテレフタレートである。むろん、この酸成分の一部(通常30モル%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていても良く、同様にグリコール成分の一部(通常30モル%以下)はブチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置換されていても良い。また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル部分はブチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルであってよい。
共重合ポリエステル系ポリマーとしては、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類および/またはヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環式ジカルボン酸類と、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、パラキシレングリコールなどの脂肪族や脂環式ジオール類とを所定数含有し、所望に応じてパラヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類を添加した共重合エステル等を挙げることができ、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとにおいてイソフタル酸および1,6−ヘキサンジオールを添加共重合させたポリエステル等が使用できる。
また、ポリオレフィンポリマーとしては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。
上記の熱融着成分の中でも、共重合ポリエステル系ポリマーが特に好ましい。なお、上述のポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消し剤、着色剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていても良い。
熱接着性複合短繊維において、熱融着成分の相手側成分としては前記のような非弾性のポリエステルが好まして例示される。その際、熱融着成分が、少なくとも1/2の表面積を占めるものが好ましい。重量割合は、熱融着成分と非弾性ポリエステルが、複合比率で30/70〜70/30の範囲にあるのが適当である。熱接着性複合短繊維の形態としては、特に限定されないが、熱融着成分と非弾性ポリエステルとが、サイドバイサイド、芯鞘型であるのが好ましく、より好ましくは芯鞘型である。この芯鞘型の熱接着性複合短繊維では、非弾性ポリエステルが芯部となり、熱可塑性エラストマーが鞘部となるが、この芯部は同心円状、若しくは、偏心状にあってもよい。
かかる熱接着性複合短繊維において、単繊維径としては10〜50μmの範囲内であることが好ましい。かかる熱接着性複合短繊維Aは、繊維長が3〜100mm(より好ましくは30〜100mm)に裁断されていることが好ましい。
本発明においては、単繊維径が上記非弾性捲縮短繊維と上記熱接着性複合短繊維を混綿させ、加熱処理することにより、該熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点及び該熱接着性複合短繊維と該非弾性捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在してなる繊維構造体が形成される。
この際、非弾性捲縮短繊維と熱接着複合短繊維との重量比率は90/10〜30/70である必要がある。熱接着複合短繊維の比率がこの範囲より少ない場合は、固着点が極端に少なくなり、繊維構造体の腰がなく、成型性が不良となる。一方、熱接着複合短繊維の比率がこの範囲より多い場合は、接着点が多くなり過ぎ、熱処理工程での取扱い性、成型性などが低下する。
さらに、本発明においては、前記熱接着性複合短繊維と前記非弾性捲縮短繊維が繊維構造体の厚さ方向に配列していることが肝要である。ここで、「厚さ方向に配列している」とは、繊維構造体の厚さ方向に対して平行に配列されている繊維の総本数を(B)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に配列されている繊維の総本数を(A)とするとき、B/Aが1.5以上であることである。
すなわち、従来の吸音材を構成する繊維が、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直、すなわち面方向に配列されていたのに対し、本発明においては、構成繊維が繊維構造体の厚さ方向に対して平行に配列されているため、繊維構造体を製造する際に、熱風による厚み低下が小さく、かつ、表面を膜状とするために加圧加熱処理を施しても、厚みがへたらず、しかも、繊維構造体の表面において、繊維が折れ曲がった状態にあるため、表面が重点的に溶融して厚み変化が小さく表面を膜状にすることが可能となる。通常、吸音性は厚みが大きいほうが良好となるので、軽量で良好な吸音性が得られる。なお、吸音性を高めるために細繊度繊維を使用した場合、繊維構造体の厚さ方向に対して直角方向に配列している繊維構造体と比較してその効果が顕著となる。
このような繊維構造体を製造する方法には特に限定はなく、従来公知の方法を任意に採用すれば良いが、例えば非弾性捲縮短繊維と熱接着性複合短繊維とを混綿し、ローラーカードにより均一なウエブとして紡出した後、特開2008−68799号公報の図1に示すような熱処理機を用いて、図2のようにウエブをアコーディオン状に折りたたみながら加熱処理し、熱融着による固着点を形成させる方法などが好ましく例示される。例えば特表2002−516932号公報に示された装置(市販のものでは、例えばStruto社製Struto設備など)などを使用するとよい。
次いで、繊維構造体の厚さ方向に加圧しながら熱処理することにより繊維構造体の表面を膜状とする。表面を膜状にすることで、空気の通気度が低下し、吸音性をアップすることができる。ここで、表面とは、配列繊維の端部が露出する面であり、片面でもよいし両面でもよい。なお、本発明にいう膜状とは繊維構造体表面の繊維が完全に溶融し、文字通りの膜状、板状になっている意味に限定されず、繊維同士の融着が実質膜状とみなせる程度まで強固になっているものも含まれる。
また、加圧しながら熱処理する方法としては、熱カレンダーロールや加熱された平板金型で熱プレスする方法、所定形状を持つモールドに所定量のウエブを詰め込んで加圧しながら熱処理する方法、ベルトを介した熱処理などが例示される。ここで、熱板または熱ローラが直接接触しない繊維構造体中央部や他方表面などでは融着の度合いが漸次低下するため、膜状の融着するのは表面部分のみである。その際、繊維構造体に不均一な熱処理を施すことにより、表面の融着の程度を内層部より高めると、表面の近傍のみを膜状とすることができ好ましい。このような不均一な熱処理を施す方法としては、2枚の加熱された平板金型で繊維構造体を熱プレスする際に、2枚の加熱された平板金型の温度を互いに異ならせるとよい。なお、繊維構造体の厚さ方向に加圧しながら熱処理する前に、繊維構造体の表面をスライスしないことが好ましいがスライスしてもよい。
かくして得られる繊維構造体において、繊維構造体の厚さが5mm以上(好ましくは10〜200mm)であることが好ましい。該厚さが5mmよりも小さいと十分な吸音性が得られないおそれがある。また、繊維構造体の平均密度が0.015〜0.2g/cmの範囲内にあることが好ましい。該密度が0.015g/cmよりも小さいと取扱いが難しくなるおそれがある。逆に、該密度が0.2g/cmよりも大きいと、繊維構造体が板状となり、その後の成型が困難になるだけでなく、音が反射するようになり、吸音材として使用できなくなるおそれがある。さらには、重量増加となり自動車用途等に適さないおそれがある。
前記の繊維構造体は前記の繊維構造体単独で吸音材として使用することが好ましい。その際、膜状となった表面が音源側に配されることが好ましい。また、必要に応じて前記の繊維構造体にシート状物を貼り合せてもよい。かかるシート状物は、スパンボンドもしくはメルトブローンもしくはフラッシュボンド等の直接紡糸法による不織布や、スパンレースもしくはエアレイドもしくはカード法による短繊維構造体による不織布で、強度や経済性、壁材としての使用時の作業性を考慮すると厚さが0.01mm以上5mm以下が好ましい。更に好ましくは、0.1mm以上2mm以下である。使用する素材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)やこれらの共重合体に代表されるポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、その他ポリオレフィン、アクリル、モダクリル等の合成繊維やレーヨン、および絹、綿、麻、羊毛等の天然繊維が挙げられる。
また、シート状物がフィルムでも良い。フィルムを全面に積層した場合、壁構造体の通気止めとしてそのまま使用できる。厚さは、前記と同様の理由で0.01mm以上5mm以下が好ましい。更に好ましくは、0.05mm以上1mm以下である。使用する素材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリ乳酸(PLA)やこれらの共重合体に代表されるポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、その他ポリオレフィン、アクリル、モダクリル等の合成繊維が挙げられる。
前記の吸音材用繊維構造体において、優れた吸音・効果が得られる理由は、繊維が繊維構造体の厚み方向に配列しているので、繊維構造体のクッション性が向上し音波を吸収しやすいためであろうと推定している。また、膜状となった表面が音源側に配されている場合は、前記のように通常の繊維集合体部分による吸音効果とは別に、シート(膜)が特定周波数領域で共振するという「膜吸音」という効果があらわれる。また、前記のように繊維構造体を加圧しながら加熱する際、繊維が厚さ方向に配列しているため繊維構造体の厚みがあまりへたらず良好な吸音性が得られる。また、単層でも優れた吸音性を有するので、軽量性にも優れる。
前記の吸音材用繊維構造体には、通常の染色加工や起毛加工が施されていてもよい。さらには、撥水加工、防炎加工、難燃加工、マイナスイオン発生加工など公知の機能加工が付加されていてもさしつかえない。
次に、本発明の吸音材は、前記の吸音材用繊維構造体を用いてなり、自動車用天井材、自動車用ドアパネル、自動車用フロアーマット、自動車用ボンネット、自動車用トランクルーム、および建築材からなる群より選択されるいずれかの用途に使用される吸音材である。また、かかる吸音材は、通常、膜状となった表面が音源側に配されて使用され、軽量で良好な吸音性を有するだけでなく、優れた成型性をも有する。なお、前記吸音材用繊維構造体はこれら以外の用途にも使用可能である。
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)融点
Du Pont社製 熱示差分析計990型を使用し、昇温20℃/分で測定し、融解ピークをもとめた。融解温度が明確に観測されない場合には、微量融点測定装置(柳本製作所製)を用い、ポリマーが軟化して流動を始めた温度(軟化点)を融点とする。なお、n数5でその平均値を求めた。
(2)捲縮数
JIS L 1015 7.12に記載の方法により測定した。なお、n数5でその平均値を求めた。
(3)B/A
繊維構造体を厚さ方向に切断し、その断面において、厚さ方向に対して平行に配列されている繊維(図1において0°≦θ≦45°)の総本数を(B)とし、繊維構造体の厚さ方向に対して垂直に配列されている繊維(図1において45°<θ≦90°)の総本数を(A)としてB/Aを算出した。なお、本数の測定は、任意の10ヶ所について各々30本の繊維を透過型光学顕微鏡で観察し、その数を数えた。
(4)吸音特性(吸音率)
吸音率を、JIS−A1405による垂直入射吸音率であって、Bruel&Kjar社製マルチチャンネル分析システム3550型(ソフトウェア:BZ5087型2チャンネル分析ソフトウェア)による2マイクロフォン法で測定した。なお、実施例1,2では、膜状となった表面が音源側に位置するよう試料を配して測定した。
(5)繊維構造体の厚さ(mm)
JIS K6400により測定した。
(6)ウエブの目付け(g/cm
JIS L1906によりウエブの目付け(g/cm)を測定した。
(7)繊維構造体の密度(g/cm
下記式により密度(g/cm)を求めた。
密度(g/cm)=ウエブの目付け(g/cm)/繊維構造体の厚さ(cm)
(8)単繊維径(μm)
電子顕微鏡で350倍に拡大し、n数10で単繊維径を測定し、その平均値を算出した。
[実施例1,2、比較例1,2]
熱接着性成分の共重合ポリエステルとしてテレフタル酸とイソフタル酸とを60/40(モル%)で混合した酸成分と、エチレングリコールとジエチレングリコールとを80/15(モル%)で混合したジオール成分とから共重合ポリエステルを得た。該共重合ポリエステルの軟化点は110℃であったので110℃をもって融点とした。そしてペレットを減圧乾燥した後、鞘部に用いた。一方、ガラス転移点67℃、融点256℃のポリエチレンテレフタレーからなるペレットを減圧乾燥した後、芯部に用いた。そして、これらを芯鞘型複合溶融紡糸装置に供給し、芯部:鞘部の体積比50:50の複合比率で、紡糸温度290℃、吐出量650g/分で紡糸孔数450の紡糸口金から溶融紡出した。そして油剤を付与し、900m/分で引き取って未延伸芯鞘型複合繊維を得た。
この未延伸芯鞘型複合繊維を集束し、11万dtex(10万デニール)のトウにして、まず72℃の温水中で2.5倍に延伸した後、80℃の温水中でさらに1.15倍に延伸し油剤を付与した後、35℃まで自然に冷却された押し込み式クリンパーで捲縮を付与し、繊維長51mmに切断して単糸繊度2.2dtex(単繊維径14μm)の熱接着性複合短繊維を得た。このときの捲縮数は14個/2.54cmであった。
一方、非弾性捲縮短繊維として、帝人ファイバー(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(単繊維繊度1.7dtex、単繊維径12μm、繊維長64mm、捲縮数13個/2.54cm、単繊維断面形状:中空率32%の丸中空、ポリエチレンテレフタレートの融点256℃)を用意した。
次いで、前記熱接着性複合短繊維30重量%と、前記非弾性捲縮短繊維70重量%とをカードにより混綿し、ローラーカードとStruto社製Struto設備(特表2002−516932号公報に示された装置と同様のもの)を使用し、駆動ローラにより、温度が170℃に設定された熱風サクション式熱処理機内へ押し込むことで、図2に示すようにウエブをアコーデオン状に折り畳み繊維を厚さ方向に配列させ、加熱処理を施し、繊維が厚さ方向に配列した繊維構造体を得た(実施例1,2)。一方、同様の繊維配合にてローラーカード後のウエブをクロスレイアーおよびエアースルータイプの加熱設備にて熱処理し、繊維が厚さ方向に配列していない繊維構造体(比較例1)を得た。得られた繊維構造体の評価結果を表1に示す。
次いで、これらの繊維構造体を、上部平板温度180℃、下部平板温度80℃に加熱された金属製平板の間にはさみ、熱プレスした後、室温にて冷却し、図3に模式的に示すように一方の表面のみが膜状となった吸音材用繊維構造体を得た。評価結果を表1に示す。
また比較例2として、反毛とよばれる、繊維屑を再利用して接着繊維または樹脂により得られた繊維構造体の評価結果も表1に示す。
表1に示すとおり本発明の実施例1,2は非常に軽量であり、吸音性が良好であった。また、実施例1で得られた繊維構造体を用いて膜状となった表面がボディー側となるよう自動車用フロアーシートを得たところ、成型が容易であり成型性に優れるものであった。
Figure 0005155016
本発明によれば、軽量性に優れ、かつ吸音特性が良好な吸音材用繊維構造体、および該吸音材用繊維構造体を用いてなる吸音材が得られ、その工業的価値は極めて大である。
B/Aの測定方法を説明するための模式図である。 ウエブをヒダ折りにしている様子を模式的に示す図である。 本発明に係る繊維構造体の一例の側面図である。
符号の説明
1:ウエッブ
2:コンベア
3:ヒーター
4:繊維構造体
5:ウエブ
6:膜状となった表面
7:繊維構造体

Claims (7)

  1. 吸音材用繊維構造体の製造方法であって、
    非弾性捲縮短繊維と、該非弾性捲縮短繊維を構成するポリマーよりも40℃以上低い融点を有するポリマーが熱融着成分としてその表面に配された熱接着性複合短繊維とが重量比率で90/10〜30/70となるように混綿され、前記熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点および/または前記熱接着性複合短繊維と前記非弾性捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点が散在し、かつ前記熱接着性複合短繊維と前記非弾性捲縮短繊維が繊維構造体の厚さ方向に配列してなる繊維構造体を、繊維構造体の厚さ方向に加圧しながら熱処理することにより繊維構造体の表面を膜状とすることを特徴とする吸音材用繊維構造体の製造方法
  2. 繊維構造体に不均一な熱処理を施すことにより繊維構造体の表面を膜状とする、請求項1に記載の吸音材用繊維構造体の製造方法
  3. 前記非弾性捲縮短繊維がポリエステル系繊維からなる、請求項1または請求項2に記載の吸音材用繊維構造体の製造方法
  4. 前記熱接着性複合短繊維の熱融着成分が共重合ポリエステルからなる、請求項1〜3のいずれかに記載の吸音材用繊維構造体の製造方法
  5. 繊維構造体の厚さが5mm以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の吸音材用繊維構造体の製造方法
  6. 繊維構造体の平均密度が0.015〜0.2g/cmの範囲内である、請求項1〜5のいずれかに記載の吸音材用繊維構造体の製造方法
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られた吸音材用繊維構造体を用いて、自動車用天井材、自動車用ドアパネル、自動車用フロアーマット、自動車用ボンネット、自動車用トランクルーム、および建築材からなる群より選択されるいずれかの用途に使用される吸音材を得る、吸音材の製造方法
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