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JP5140477B2 - エアバッグ装置、エアバッグ装置付オートバイ - Google Patents

エアバッグ装置、エアバッグ装置付オートバイ Download PDF

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JP5140477B2 JP2008096611A JP2008096611A JP5140477B2 JP 5140477 B2 JP5140477 B2 JP 5140477B2 JP 2008096611 A JP2008096611 A JP 2008096611A JP 2008096611 A JP2008096611 A JP 2008096611A JP 5140477 B2 JP5140477 B2 JP 5140477B2
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Description

本発明は、乗員が車両外部に露出した状態での車両操作を常態とした車両に搭載されるエアバッグ装置の構築技術に関するものである。
従来、オートバイ車両にエアバッグ装置を装着することによって乗員の拘束を図る種々の技術が知られている。例えば、自動二輪車において、前方衝突を起こした際に、車体フレームに取り付けられたケース内に収容されたエアバッグが膨張ガスによって展開膨張し、これにより乗員を拘束するという技術が公知である(例えば、特許文献1参照。)。
ところで、乗員が車両外部に露出した状態での車両操作を常態としたこの種の車両においては、エアバッグ装置の各構成部品が雨や湿度に起因する水分による影響を受け易いことから、エアバッグ装置内に持ち込まれた水をリテーナーの底部に設けた水抜き開口を通じてリテーナー内領域からリテーナー外領域へと排出する構成が有効とされる。一方では、エアバッグ装置自体がエンジンなどの振動による影響を受け易い過酷な条件に曝される構成上、当該振動がエアバッグの組み付け箇所においてリテーナー等の部材の変形を引き起こすことが想定されるところ、エアバッグ内のガスや残渣がリテーナー内領域及び水抜き開口を経てリテーナー外領域へと流出するのを防止することが要請される。
特開2002−137777号公報
そこで本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、乗員が車両外部に露出した状態での車両操作を常態とした車両に搭載されるエアバッグ装置に対し、リテーナーにおける水排出機能、及びエアバッグ内のガスや残渣のリテーナー外領域への流出防止機能を付与し、以ってエアバッグの適正な使用を可能とするのに有効な技術を提供することを課題とする。
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。これら各請求項に記載の発明は、典型的には、乗員が車両外部に露出した状態での車両操作を常態とした各種の車両に搭載されるエアバッグ装置の構成に適用することができる。なお、本明細書において、乗員が車両外部に露出した状態での車両操作を常態とした車両には、オートバイやスクーター等の自動二輪車をはじめ、三つ以上の走行輪を有しつつ乗員が鞍乗して着座する車両(例えば宅配等に用いられる三輪式バイク、悪路走破用の三輪ないし四輪バギー式バイク)、さらにはスノーモービル等のようにソリないし無限軌道帯によって走行しつつ乗員が鞍乗して着座する車両、更には屋根の無い、もしくは屋根を開放することの出来る車両(オープンカー、コンバーチブル或いはカブリオレ)等が広く包含されるものである。
本発明にかかるエアバッグ装置は、乗員が車両外部に露出した状態での車両操作を常態とした車両に搭載されるエアバッグ装置であって、エアバッグ、インフレータ、リテーナー、締め付け固定要素、水抜き開口及び介在部を少なくとも備える。
エアバッグは、車両事故の際、乗員拘束領域に展開膨張する袋状のエアバッグ或いはガスバッグとして構成される。このエアバッグは、所定の折り畳み態様においてリテーナーに収容される。ここでいう「乗員拘束領域」には、事故発生の際に拘束される乗員の乗員前方、乗員側方、乗員上方、乗員下方等、当該乗員に連接する乗員周辺領域が広く包含される。また、ここでいう「所定の折り畳み態様」に関しては、典型的には蛇腹状に折り畳むような蛇腹折り、ロール状に巻き取るようなロール折り、また機械折りなどのうちの1または複数を組み合わせた折り畳み態様等が包含される。
インフレータは、インフレータ本体、インフレータフランジ及びガス噴射口を少なくとも備える。インフレータ本体は、エアバッグ膨張用ガスを発生する円柱状の本体部分として構成される。このインフレータ本体は、典型的には、イグナイタ(点火装置)、着火剤、ガス発生剤、フィルタ等を収容する構成とされる。インフレータフランジは、インフレータ本体の周壁部分において立設するフランジ部分として構成される。ガス噴射口は、エアバッグのインフレータ挿入開口を通じてエアバッグ内に挿設されるガス噴射部分として構成される。
リテーナーは、エアバッグ及びインフレータを収容するとともに、インフレータ本体が挿設されるリテーナー開口を有する構成とされる。ここでいう「収容」に関しては、被収容体としてのエアバッグ及びインフレータのそれぞれの全部または一部が収容される形態を広く包含する主旨である。締め付け固定要素は、エアバッグのうちインフレータ挿入開口の開口縁部をリテーナーに締め付け固定する機能を果たす。この締め付け固定要素に関しては、ボルト・ナットによる締め付け構造や、リベットによる締め付け構造などを適宜採用することが可能である。
ところで、乗員が車両外部に露出した状態での車両操作を常態としたこの種の車両においては、エアバッグ装置の各構成部品が雨や湿度に起因する水分による影響を受け易いことから、エアバッグ装置内に持ち込まれた水をリテーナーの底部に設けた水抜き開口を通じてリテーナー内領域からリテーナー外領域へと排出する構成が有効とされる。一方では、エアバッグ装置自体がエンジンなどの振動による影響を受け易い過酷な条件に曝される構成上、当該振動がリテーナー等の部材の変形を引き起こすことが想定されるため、このような場合においてもエアバッグ内のガスや残渣がリテーナー内領域及び水抜き開口を経てリテーナー外領域へと流出するのを防止することが要請される。
そこで、このエアバッグ装置は、更なる構成要素として水抜き開口及び介在部を備える。水抜き開口は、リテーナーの底部において、エアバッグとリテーナーの間に形成されるリテーナー内領域とリテーナー外領域とを連通する水抜き用の部位として構成される。一方、介在部は、エアバッグ内に挿設されたガス噴射口からインフレータ挿入開口及びリテーナー内領域を経て水抜き開口へと向かう経路上に介在し、当該経路を流れる流体の流れを遮へいする部位として構成される。これにより、ガス噴射口から噴射されたガスや残渣(燃え滓)は、前記の経路上に介在する介在部によって例えば反射されることとなり、インフレータ挿入開口からリテーナー内領域へと流れるのを防止することが可能とされる。従って、エアバッグ内のガスや残渣がリテーナー外領域へと流出して、燃料貯留部に貯留された燃料に悪影響を及ぼすのを防止するのに有効とされる。ここでいう「リテーナー外領域」とは、エアバッグが収容される側をリテーナー内領域とした場合のこのリテーナー内領域以外の領域として規定される。
以上のように、本発明にかかるエアバッグ装置のこのような構成によれば、乗員が車両外部に露出した状態での車両操作を常態とした車両に搭載されるエアバッグ装置に対し、リテーナーにおける水排出機能、及びエアバッグ内のガスや残渣のリテーナー外領域への流出防止機能を付与し、以ってエアバッグの適正な使用が可能とされる。
また、本発明にかかる上記エアバッグ装置では、前記の介在部は、更にエアバッグ内に挿設されたガス噴射口とインフレータ挿入開口の開口縁部との間に介在する構成とされる。このような構成によれば、介在部は、ガス噴射口から噴射されたガスや残渣がインフレータ挿入開口からリテーナー内領域へと流れるのを防止する機能に加えて、更にエアバッグのうちインフレータ挿入開口の開口縁部を、ガスや残渣から保護する機能を備えることとなるため合理的である。
また、本発明にかかる更なる形態のエアバッグ装置では、前記の締め付け固定要素は、バッグリング、ボルト軸及びナットを用いて構成されるのが好ましい。バッグリングは、エアバッグ内においてエアバッグに被着される部材として構成される。ボルト軸は、バッグリングから前記エアバッグの開口縁部及びリテーナーを貫通して前記リテーナー外領域へと延在する長軸状のボルト部分として構成される。ナットは、リテーナー外領域からボルト軸に係合可能なナット部分として構成される。このような構成によれば、エアバッグ内のガスや残渣がリテーナー内領域及び水抜き開口を経てリテーナー外領域へと流出するのを防止する構造において、ボルト・ナットによる締め付け構造を採用したエアバッグ装置が提供される。
また、本発明にかかる更なる形態のエアバッグ装置では、前記のリテーナーは、車両の各部位のうちエンジン駆動用の燃料を貯留する燃料貯留部の周辺領域に配設される構成であるのが好ましい。ここでいう「燃料貯留部」には、燃料の殆どを一括して貯蔵する燃料タンクをはじめ、燃料タンクに対する流入側の流通経路、燃料タンクに対する流通側の流通経路、またこれら各流通経路上に配置される各種の機器類が広く包含される。また、ここでいう「燃料貯留部の周辺領域」には、燃料貯留部の上部、側部、前部、後部に近接ないし連接する領域が広く包含される。このような構成によれば、燃料貯留部の周辺領域にリテーナーが配設されたエアバッグ装置において、エアバッグ内のガスや残渣がリテーナー外領域へと流出して、燃料貯留部に貯留された燃料に悪影響を及ぼすのを防止することが可能となる。
本発明にかかるエアバッグ装置付オートバイは、乗員が車両外部に露出した状態での車両操作を常態とし、車両の前方衝突の際、エアバッグにエアバッグ膨張用ガスが供給されることで、当該エアバッグが乗員前方の乗員拘束領域に展開膨張して乗員を拘束するエアバッグ装置が搭載されたエアバッグ装置付オートバイとされる。ここでいう、「前方衝突」には、オートバイ車両がその前方側において走行状態或いは静止状態の衝突対象物、例えば別車両、歩行者、障害物等に衝突する形態が広く包含される。また、ここでいう「乗員拘束領域」は、前方衝突時の運動エネルギーによって乗員がオートバイ車両前方に向かって移動しようとする場合に、当該乗員の前方移動方向上に延在し、オートバイ車両前方に投げ飛ばされようとする当該乗員を拘束するための空間として定義される。このエアバッグ装置付オートバイでは、エアバッグ装置として前述の各エアバッグの構成を採用するのが好ましい。このような構成によれば、エアバッグ内のガスや残渣がリテーナー外領域へと流出するのを防止するのに効果的なエアバッグ装置を搭載したエアバッグ装置オートバイが提供される。
以上のように、本発明によれば、乗員が車両外部に露出した状態での車両操作を常態とした車両に搭載されるエアバッグ装置において、特にエアバッグとリテーナーの間に形成されるリテーナー内領域とリテーナー外領域とを連通する水抜き用の水抜き開口と、エアバッグ内に挿設されたガス噴射口からインフレータ挿入開口及びリテーナー内領域を経て水抜き開口へと向かう経路上に介在し当該経路を流れる流体の流れを遮へいする介在部を設けるとともに、前記介在部は、更に前記エアバッグ内に挿設された前記ガス噴射口と前記開口縁部との間に介在することによって、エアバッグ装置に対しリテーナーにおける水排出機能、及びエアバッグ内のガスや残渣のリテーナー外領域への流出防止機能を付与し、以ってエアバッグの適正な使用が可能となった。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、図1を用いて、自動二輪車100の全体構成を説明する。ここで、図1は、本発明の「車両」或いは「エアバッグ装置付オートバイ」の一実施の形態に係る自動二輪車100を側面から視た図であって、当該自動二輪車100の車両にエアバッグ装置110を搭載した様子を示す。
図1に示すように、自動二輪車100は、乗員Rが車両外部に露出した状態での車両操作を常態とした車両とされ、エンジンやメインフレーム等により構成される車体構成部101、乗員が跨って着座可能なシート103、ハンドル104、前輪106および後輪107、エンジン109等を主体とする、いわゆるツーリングタイプのオートバイとして構成される。
自動二輪車100の車体構成部101上方であって、シート103に着座した乗員の前方側領域は、自動二輪車100が前方衝突を起こした際に乗員Rを適正に拘束するための乗員拘束領域140として規定される。ここでいう乗員拘束領域140が、本発明における「乗員拘束領域」に相当する。本実施の形態において「前方衝突」には、自動二輪車100が前方側の各種の衝突対象物(便宜上、特に図示しないが、例えば他の自動二輪車、自動二輪車以外の各種車両、自転車、歩行者、障害物、ガードレールなどの衝突対象物)に対し衝突する形態を広く包含する。また、本実施の形態における「乗員拘束領域140」は、本発明における「乗員拘束領域」に対応する領域であり、シート103に着座した乗員Rが、前方衝突時の運動エネルギーによって車両前方に向かって移動しようとする場合に、当該乗員の前方移動方向線上に延在し、車両前方へと投げ飛ばされようとする当該乗員を拘束するための空間として定義される。
車体構成部101のうち車両前方側のフロント部102には、ヘッドライト、各種のメーター類、スイッチ類、ウインドシールド等が設けられている。このフロント部102と、シート103との間の領域には、燃料タンク105及びエアバッグ装置(「エアバッグモジュール」ともいう)110が搭載されている。燃料タンク105は、エンジン109の駆動用の燃料を貯留するタンクとされる。エアバッグ装置110は、この燃料タンク105の車両上方に(また燃料タンク105の給油口よりも車両後方に)配設されており、車両事故の際、乗員拘束領域140に展開膨張するエアバッグ(後述するエアバッグ121)によって乗員を拘束する装置として構成される。このエアバッグ装置110が、本発明における「エアバッグ装置」に対応している。
上記エアバッグ装置110の具体的な構成に関しては、図2及び図3が参照される。ここで、図2には図1中のエアバッグ装置110の断面構造が示される。また、図3には、図2中のA領域の部分拡大図が示される。
図2に示すように、本実施の形態のエアバッグ装置110は、エアバッグ121、リテーナー111、インフレータ113、ウェビング117及びモジュールカバー120等を主体として構成される。
エアバッグ121は、自動車用のエアバッグ布と同様の素材の基布を用い、当該基布の複数片を互いに縫合することによって立体袋状とされている。このエアバッグ121は、所定の折り畳み態様で折り畳まれて有底箱状のリテーナー111に収容される。ここでいう「所定の折り畳み態様」とは、典型的には蛇腹状に折り畳むような蛇腹折り、ロール状に巻き取るようなロール折り、また機械折りなどのうちの1または複数を組み合わせた折り畳み態様とされる。このエアバッグ121は、その折り畳み状態においてウェビング117との縫合部117aが上向きに配置される、すなわち当該縫合部117aがリテーナー111のエアバッグ開口111c側に向かうように配置されるのが好ましい。このエアバッグ開口111cは、有底箱状のリテーナー111の上部においてエアバッグ121のリテーナー111外への展開ないし突出動作を許容する開口部分として構成される。これにより、リテーナー111に収容されたエアバッグ121が、リテーナー111のエアバッグ開口111cを通じてリテーナー111外へと展開ないし突出する際に、このエアバッグ121の展開動作ないし突出動作がウェビング117によって阻害されにくい。ここでいうエアバッグ121が本発明における「エアバッグ」に相当する。
ウェビング117は、長尺状の繋留体として構成され、その一端部がエアバッグ121に縫合される一方、その他端部が車体側の留め具(図示省略)に連結されている。このウェビング117は、エアバッグ121を自動二輪車100の車体側に繋ぎ留める機能を果たす。これにより、エアバッグ121が展開膨張する際の挙動を安定化させることが可能となり、且つ展開膨張したエアバッグ121が乗員Rを拘束する際の拘束安定性をウェビング117によって確保することが可能とされる。このウェビング117は、必要に応じて1本または複数本のウェビングによって構成することが可能である。また、このウェビング117は、典型的には自動車用のシートベルトと同様のウェビング素材(樹脂繊維糸を用いてベルト状に加工されたもの)、或いはエアバッグ布と同様の素材を用い、ベルト状ないし紐状に加工することによって形成することが可能である。また、エアバッグ121自体によって乗員Rを拘束する際の拘束安定性を確保する構成においては、エアバッグ121を車体側に繋ぎ留めるこのウェビング117を省略することもできる。
モジュールカバー120は、リテーナー111のエアバッグ開口111cを上方から覆うことで、収容状態の折り畳まれたエアバッグ121を被覆する部材として構成され、天板部120a及び立設部120bを少なくとも有する。このモジュールカバー120は、典型的には樹脂材料を用いた金型成形によって成形される。このモジュールカバー120の天板部120aは、リテーナー111のエアバッグ開口111cの領域にて開口面方向にほぼ水平状に延在することで、エアバッグ装置110の上面を規定する板状の部位として構成される。また、特に図示しないもののこの天板部120aには、エアバッグ121からの展開膨張力を受ける際に開裂する開裂予定線としてのテアラインが形成されている。このモジュールカバー120の立設部120bは、天板部120aの下面(裏面)から当該天板部120aの延在面と交差する垂直方向に、リテーナー111の立設壁面に沿って延在する板状の部位として構成される。また、この立設部120bの車両後方側(乗員側)には、モジュールカバー120の内部と外部とを連通するウェビング通し孔120cが形成されており、このウェビング通し孔120cを通じて、ウェビング117をモジュールカバー120のカバー内部とカバー外部との間にわたって延在させることが可能となる。この立設部120bが、リテーナー111の立設壁面に留め具(図示省略)を介して取り付け固定されることで、モジュールカバー120とリテーナー111とが連結される。
インフレータ113は、車両衝突の際、折り畳み状態のエアバッグ121がリテーナー111から展開しつつ膨張するように、エアバッグ膨張用ガスを発生させる機能を少なくとも備える。本実施の形態では、このインフレータ113は、シリンダ状のインフレータ本体113aが横置きに配置される、いわゆるシリンダタイプのインフレータとして構成されている。このインフレータ113には、インフレータ本体113aからエアバッグ膨張用ガスが流出するガス噴射口113bが設けられるとともに、このガス噴射口113bがエアバッグ121の内側のエアバッグ内領域121aに配設されており、発生した膨張用ガスを直にエアバッグ内領域121aに供給する構成となっている。ここでいうインフレータ113、インフレータ本体113a及びガス噴射口113bが、それぞれ本発明における「インフレータ」、「インフレータ本体」及び「ガス噴射口」を構成する。
また、特に図示しないものの、このインフレータ113のインフレータ本体113aにはイグナイタ(点火装置)、着火剤、ガス発生剤、フィルタ等が収容されている。このイグナイタ(点火装置)は、インフレータ113のケース底部のコネクタにおいて長尺状のハーネスと電気的に接続され、このハーネスが車両側の制御部(図示省略)に接続されている。このような構成において、車両衝突が検知されると車両側の制御部からの制御信号がハーネスを通じてインフレータ113のイグナイタ(点火装置)に伝達され、エアバッグ膨張用ガスが発生する。
リテーナー111は、上述の折り畳み態様で折り畳まれたエアバッグ121及びインフレータ113を収容するケース体として構成される。ここでいうリテーナー111が、本発明における「リテーナー」に相当する。具体的には、リテーナー111の底部に凹み状に形成された第1の空間部111aと、第1の空間部111a以外の第2の空間部111bとによって、リテーナー111のリテーナー内領域130が形成されている。第1の空間部111aは、インフレータ113を主体として収容する空間部分とされ、第2の空間部111bは、エアバッグ121を主体として収容する空間部分とされる。また、このリテーナー111の底部には、エアバッグ121とリテーナー111の間に形成されるリテーナー内領域130とリテーナー外領域131とを連通する水抜き用の水抜き開口115が設けられている。乗員が車両外部に露出した状態での車両操作を常態とした自動二輪車100では、エアバッグ装置110の各構成部品が雨や湿度に起因する水分による影響を受け易いことから、エアバッグ装置110内に持ち込まれた水を水抜き開口115を通じてリテーナー内領域130からリテーナー外領域131へと排出することが可能となる(図3中の水排出方向を示す矢印参照)。ここでいう水抜き開口115が、本発明における「水抜き開口」に相当する。
本実施の形態では、このリテーナー111は、燃料タンク105を含む燃料貯留部の周辺領域に配設されている。ここでいう燃料タンク105が、本発明における「燃料貯留部」を構成する。すなわち、この「燃料貯留部」には、燃料の殆どを一括して貯蔵する燃料タンク105をはじめ、燃料タンク105に対する流入側の流通経路、燃料タンク105に対する流通側の流通経路、またこれら各流通経路上に配置される各種の機器類が広く包含される。リテーナー111に収容されたエアバッグ121及びインフレータ113は、締め付け固定要素123を介してリテーナー111に取り付け固定される。ここでいう締め付け固定要素123が、本発明における「締め付け固定要素」に相当する。
図3に示すように、エアバッグ121は、インフレータ挿入開口縁部121bを有し、このインフレータ挿入開口縁部121bには、インフレータ113のガス噴射口113bをエアバッグ内領域121aに挿設するためのインフレータ挿入開口122が設けられている。ここでいうインフレータ挿入開口縁部121b及びインフレータ挿入開口122が、それぞれ本発明における「開口縁部」及び「インフレータ挿入開口」に相当する。
また、上記構成のインフレータ113及びエアバッグ121の締め付け固定ないし組み付けに用いる締め付け固定要素123は、当該組み付け状態においてエアバッグ121のインフレータ挿入開口縁部121bに対しエアバッグ121の内側から被着されるバッグリング124と、このバッグリング124から延在する長軸状のボルト軸125と、このボルト軸125に係合可能なナット126を用いて構成されている。この締め付け固定要素123のボルト軸125は、エアバッグ121のインフレータ挿入開口縁部121b及びリテーナー111を共通して貫通する貫通穴127に挿入可能とされている。ここでいうバッグリング124、ボルト軸125及びナット126が、それぞれ本発明における「バッグリング」、「ボルト軸」及び「ナット」に相当する。
ところで、上記構成のエアバッグ装置110は、各構成部品が雨や湿度に起因する水分による影響を受け易いことに対応してリテーナーに水抜き開口115を設ける上述のような対策が有効である一方、エアバッグ装置110自体がエンジン109などの振動による影響を受け易い過酷な条件に曝される構成上、当該振動がエアバッグ121の組み付け箇所においてリテーナー111の変形を引き起こすことが想定されるため、このような場合にはエアバッグ内領域121aのガスや残渣が、リテーナー内領域130及び前述の水抜き開口115を経てリテーナー外領域131へと流出することが懸念される。ここでいうリテーナー内領域130及びリテーナー外領域131が、それぞれ本発明における「リテーナー内領域」及び「リテーナー外領域」に相当する。
そこで、本実施の形態では、一方では水抜き開口115における水排出機能を維持しつつ、他方ではエアバッグ内領域121aのガスや残渣のリテーナー外領域131への流出防止機能を確保するべく、前記のバッグリング124を用いる構造を採用している。具体的には、このバッグリング124は、本体部124a及び介在部124bを少なくとも備える。バッグリング124の本体部124aは、リテーナー111に対しエアバッグ内領域121aからエアバッグ121のインフレータ挿入開口縁部121bを押し付ける、バッグリング本来の機能を果たす。一方、バッグリング124の介在部124bは、本体部124aに連接して本体部124aと交差状に延出する部位として構成される。ここでいう介在部124bが、本発明における「介在部」に相当する。
この介在部124bは、エアバッグ内領域121aに挿設されたインフレータ113のガス噴射口113bからインフレータ挿入開口122及びリテーナー内領域130を経て水抜き開口115へと向かう経路上に介在し、当該経路を流れる流体の流れを遮へいする機能を果たす。すなわち、この介在部124bによって、バッグリング124本来の機能に、更にガスや残渣の流出防止機能が付与された合理的な構造が実現される。これにより、ガス噴射口113bから噴射されたガスや残渣は、例えば図3中に示す白抜き矢印のように介在部124bによって反射されることとなり、インフレータ挿入開口122からリテーナー内領域130へと流れるのを防止することが可能とされる。従って、水抜き開口115を設けて水排出機能を確保した構成においても、ガス噴射口113bから噴射されたガスや残渣がこの水抜き開口115を通じてリテーナー外領域131へと流れるのが防止される。これにより、エアバッグ内のガスや残渣がリテーナー外領域へと流出して、燃料タンク105等の燃料貯留部に貯留された燃料に悪影響を及ぼすのを防止することが可能となる。
また、この介在部124bは、更にエアバッグ内に挿設されたガス噴射口113bとインフレータ挿入開口122のインフレータ挿入開口縁部121bとの間に介在する構成となっている。これにより、この介在部124bは、ガス噴射口113bから噴射されたガスや残渣がインフレータ挿入開口122からリテーナー内領域130へと流れるのを防止する機能に加えて、更にエアバッグ121のうちインフレータ挿入開口122のインフレータ挿入開口縁部121bを、ガスや残渣から保護する機能を備えることとなるため合理的である。
上記構成の自動二輪車100が、その進行方向側にて衝突事故を起こした場合、乗員は自動二輪車100の前方へ向けて移動し(投げ飛ばされ)ようとする。本実施の形態では、この前方衝突の検知により、車両側の制御部からの制御信号がハーネスを通じてエアバッグ装置110のインフレータ113に伝達されると、このインフレータ113が作動し、当該インフレータ113にて発生したエアバッグ膨張用ガスがエアバッグ121内へと供給開始されることとなる。これにより、例えば作動前の状態である図2中のエアバッグ装置110において、矢印10方向に向かってエアバッグ121の展開動作ないし突出動作が開始される。そして、インフレータ113のガス噴射口113bからエアバッグ121内にエアバッグ膨張用ガスが送り込まれ続けることにより、エアバッグ121内側から順次膨張部が形成されていくことになる。
エアバッグ装置110の作動開始直後では、エアバッグ121は、その展開膨張力によってモジュールカバー120の天板部120aを下面から押圧する。モジュールカバー120は、天板部120aがエアバッグ121からの展開膨張力を受けると開裂予定線としてのテアライン(図示省略)に沿って開裂し、立設部120bの車両前方側をヒンジとして車両前方へと展開されて、リテーナー111のエアバッグ開口111cの被覆状態を解除するように動作する。これによって、エアバッグ121の展開膨張動作が許容され、このエアバッグ121はリテーナー111のエアバッグ開口111cを通じてリテーナー111の外部へと展開ないし突出することとなる。なお、天板部120aにおけるテアラインの形状や位置、またモジュールカバー120の展開時におけるヒンジの形成部位等に関しては、必要に応じた変更が可能とされる。例えば、天板部120aの各部位のうち車両の前後方向に関する中央領域にテアラインを設け、天板部120aが当該テアラインに沿って車両前方へと展開する部位と車両後方へと展開する部位に開裂するように構成することもできる。
また、エアバッグ121の展開膨張動作の開始によって、当該エアバッグ121に縫合されたウェビング117には一端部を介して引っ張り荷重の作用が開始され、当該エアバッグ121の所望の位置における展開膨張動作がウェビング117を介して補助される。そして、エアバッグ121が完全に展開され膨張した展開膨張完了状態が形成されると、膨張したこのエアバッグ121は、乗員Rの前方に形成される乗員拘束領域(図1中の乗員拘束領域140)に充溢し、これにより車両衝突時の運動エネルギーによって前方移動方向へ移動しようとする乗員Rは、膨張した当該エアバッグ121によって拘束される。
以上のように、上記実施の形態によれば、乗員が車両外部に露出した状態での車両操作を常態とした自動二輪車100に搭載されるエアバッグ装置に対し、リテーナー111における水排出機能、及びエアバッグ内領域121aのガスや残渣のリテーナー外領域131への流出防止機能を付与し、以ってエアバッグ121の適正な使用を可能とするエアバッグ装置110及び当該エアバッグ装置110を搭載した自動二輪車100が提供される。
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
上記実施の形態では、介在部124bを備えるバッグリング124によって、バッグリング124本来の機能に、更にガスや残渣の流出防止機能が付与された構成について記載したが、本発明では、介在部124bに相当する部位を、バックリング124とは別の構成要素として準備することもできる。また、本発明では、この介在部124bは、インフレータ113のガス噴射口113bからインフレータ挿入開口122及びリテーナー内領域130を経て水抜き開口115へと向かう経路上に少なくとも介在すれば足りる。また、介在部124bに相当する部位を設ける構造は、上記実施の形態のようにシリンダタイプのインフレータを備えるエアバッグ装置に適用されてもよいし、或いは円柱状、円筒状ないし円盤状のインフレータ、いわゆるディスクタイプのインフレータを備えるエアバッグ装置に適用されてもよい。
また、上記実施の形態では、ボルト・ナットによる締め付け構造を採用する場合について記載したが、本発明ではリベットによる締め付け構造などの別の締め付け構造を採用することもできる。
また、上記実施の形態では、いわゆるツーリングタイプの自動二輪車100について記載したが、ハンドルとシートの間に乗員脚部の横移動を許容する空間を有するスクータータイプのような他の種類のオートバイ、また自動二輪車100以外の二輪以上の車輪構造を有するオートバイ車両、更には屋根の無い、もしくは屋根を開放することの出来る車両(オープンカー、コンバーチブル或いはカブリオレ)に対し、本発明を適用することもできる。
また、上記実施の形態では、エアバッグ装置110を燃料タンク105の車両上方に(また燃料タンク105の給油口よりも車両後方に)配設する場合ついて記載したが、車両衝突の際、エアバッグ121が所望の領域に展開膨張することが可能であれば、車体におけるエアバッグ装置110の配設箇所は適宜変更可能である。エアバッグ装置110を、例えば図1中に示す位置よりも車両後方或いは車両前方にずれた位置に配設することもできる。
本発明の「車両」或いは「オートバイ」の一実施の形態に係る自動二輪車100を側面から視た図であって、当該自動二輪車100の車両にエアバッグ装置110を搭載した様子を示す。 図1中のエアバッグ装置110の断面構造を示す図である。 図2中のA領域の部分拡大図である。
100…自動二輪車
101…車体構成部
102…フロント部
103…シート
104…ハンドル
105…燃料タンク
106…前輪
107…後輪
109…エンジン
110…エアバッグ装置
111…リテーナー
111a…第1の空間部
111b…第2の空間部
111c…エアバッグ開口
112…リテーナー開口
113…インフレータ
113a…インフレータ本体
113b…ガス噴射口
115…水抜き開口
117…ウェビング
117a…縫合部
120…モジュールカバー
120a…天板部
120b…立設部
120c…ウェビング通し孔
121…エアバッグ
121a…エアバッグ内領域
121b…インフレータ挿入開口縁部
122…インフレータ挿入開口
123…締め付け固定要素
124…バッグリング
124a…本体部
124b…介在部
125…ボルト軸
126…ナット
127…貫通穴
130…リテーナー内領域
131…リテーナー外領域
140…乗員拘束領域
R…乗員

Claims (4)

  1. 乗員が車両外部に露出した状態での車両操作を常態とした車両に搭載されるエアバッグ装置であって、
    車両事故の際、乗員拘束領域に展開膨張する袋状のエアバッグと、
    エアバッグ膨張用ガスを発生するインフレータ本体と、前記エアバッグのインフレータ挿入開口を通じてエアバッグ内に挿設され、前記インフレータ本体にて発生したエアバッグ膨張用ガスを噴射するガス噴射口を有するインフレータと、
    前記エアバッグ及びインフレータを収容するリテーナーと、
    前記エアバッグのうち前記インフレータ挿入開口の開口縁部を前記リテーナーに締め付け固定する締め付け固定要素と、
    前記リテーナーの底部において、前記エアバッグと前記リテーナーの間に形成されるリテーナー内領域とリテーナー外領域とを連通する水抜き用の水抜き開口と、
    前記エアバッグ内に挿設された前記ガス噴射口から前記インフレータ挿入開口及びリテーナー内領域を経て前記水抜き開口へと向かう経路上に介在し、当該経路を流れる流体の流れを遮へいする介在部と、を備え
    前記介在部は、更に前記エアバッグ内に挿設された前記ガス噴射口と前記開口縁部との間に介在する構成であることを特徴とするエアバッグ装置。
  2. 請求項1に記載のエアバッグ装置であって、
    前記締め付け固定要素は、前記エアバッグ内において前記エアバッグに被着されるバッグリングと、前記バッグリングから前記エアバッグの前記開口縁部及び前記リテーナーを貫通して前記リテーナー外領域へと延在する長軸状のボルト軸と、前記リテーナー外領域から前記ボルト軸に係合可能なナットを含み、前記バッグリングが前記介在部を構成することを特徴とするエアバッグ装置。
  3. 請求項1または2に記載のエアバッグ装置であって、
    前記リテーナーは、前記車両の各部位のうちエンジン駆動用の燃料を貯留する燃料貯留部の周辺領域に配設される構成であることを特徴とするエアバッグ装置。
  4. 乗員が車両外部に露出した状態での車両操作を常態とし、車両の前方衝突の際、エアバッグにエアバッグ膨張用ガスが供給されることで、当該エアバッグが乗員前方の乗員拘束領域に展開膨張して乗員を拘束するエアバッグ装置が搭載されたエアバッグ装置付オートバイであって、
    前記エアバッグ装置として請求項1からのうちのいずれか一項に記載のエアバッグ装置が用いられていることを特徴とするエアバッグ装置付オートバイ。
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